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特開2023-25706基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025706
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230215BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188195
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2021039421の分割
【原出願日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2020057564
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】上村 大義
(72)【発明者】
【氏名】谷山 智志
(72)【発明者】
【氏名】白子 賢治
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 寛哲
(72)【発明者】
【氏名】堀井 明
(72)【発明者】
【氏名】中田 高行
(72)【発明者】
【氏名】山島 規裕
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フットプリントの低減を図りつつ、排気効率の向上を図る基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】基板処理装置は、処理室と、処理室を排気する排気装置としての第1のブースタポンプ38Aと、処理室と排気装置とを連通させる排気管34Aと、排気管を支持する配管筐体40Aと、配管筐体と排気管との接続部81Aに設けられるゴムや樹脂等の制振部材で形成された制振性の締結具90Aと、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、該処理室を排気する排気装置と、前記処理室と前記排気装置とを連通させる排気管と、該排気管を支持する配管筐体と、該配管筐体と前記排気管との接続部に設けられる制振部とを備える基板処理装置。
【請求項2】
前記配管筐体は、フレームと、該フレームの外側を覆うパネルとを有し、前記制振部は前記フレームと前記排気管との接続部に挾んで設けられる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記排気管は、該排気管の端部の変位を許容する可撓部を有し、前記接続部は、前記可撓部よりも前記処理室側に複数設けられる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記可撓部は、前記排気管の前記排気装置側に設けられる請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記可撓部は、該可撓部の両端部の間を固定する固定部材を取付け可能に構成された請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記排気装置と前記配管筐体は、それぞれ床に設置されると共に、前記排気装置と前記配管筐体との間が制振性の締結具により連結される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理室と、該処理室の下方で該処理室と接続される移載室とで処理モジュールが構成され、前記配管筐体は前記移載室と制振性の締結具により連結される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制振部は、力学的な振動を吸収する制振合金製であり、前記制振性の締結具は樹脂又はゴム製である請求項6又は請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記排気管は、分割可能な複数の区間を有し、該区間の間は弾性シールを介して接続され、前記接続部は前記区間毎に少なくとも1つに設けられる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記排気管は、前記フレームの取付け面と平行に形成された取付け板を有し、前記接続部は前記取付け面と前記取付け板との間に前記制振部を挟んだ状態でボルト締めして接続する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制振部は板状であり、前記排気管にかかる重力の少なくとも一部を前記制振部の板状の面に平行な方向のせん断荷重として支持する請求項1,8,9,10のうちのいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制振部は、複数の共振点を周波数軸上で分散させる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制振部は、二相混合組織の相境界での粘体流動、強磁性体内の磁区の回転や移動、結晶中の転移の移動、及び双晶界面の移動のうちのいずれか1つ以上に基づき振動を熱に変換する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
処理室に基板を提供する工程と、前記処理室内に処理ガスを供給する工程と、配管筐体に制振部を介して設けられ、前記処理室と排気装置とを連通させる排気管を介して前記排気装置が前記処理室内を排気する行程とを有する半導体装置の製造方法。
【請求項15】
処理室に基板を提供する工程と、前記処理室内に処理ガスを供給する工程と、配管筐体に制振部を介して設けられ、前記処理室と排気装置とを連通させる排気管を介して前記排気装置が前記処理室内を排気する行程とを有する基板処理方法。
【請求項16】
処理室に基板を提供する手順と、前記処理室内に処理ガスを供給する手順と、配管筐体に制振部を介して設けられ、前記処理室と排気装置とを連通させる排気管を介して前記排気装置が前記処理室内を排気する手順とを基板処理装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に薄膜の生成等の処理を行う基板処理装置半導体装置の製造方法、基板処理方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法に於いて、基板(以下、ウェーハと称す)に酸化膜や金属膜を形成する為の装置として、縦型基板処理装置が使用される場合がある。又、ウェーハを保持するボート、ウェーハを処理する処理室を複数備え、各処理室に対してボートを順次搬入出し、ウェーハを処理する基板処理装置がある。
【0003】
従来の基板処理装置では、基板処理装置の周辺、例えば側方に各機構のメンテナンスを行う為のメンテナンスエリアを確保する必要がある。従って、メンテナンスエリアも考慮して設置する必要がある為、基板処理装置の設置に必要なフットプリントが大きくなり、COO(Cost of Owenership)も高くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6484601号公報
【特許文献2】WO2019/172274号公報
【特許文献3】特開2012-99763号公報
【特許文献4】WO2018/3072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、フットプリントの低減を図りつつ、排気効率の向上を図る構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、処理室と、該処理室を排気する排気装置と、前記処理室と前記排気装置とを連通させる排気管と、該排気管を支持する配管筐体と、該配管筐体と前記排気管との接続部に設けられる制振部とを備える構成に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の基板処理装置の間での排気特性のばらつき(機差)を抑制しつつ排気効率(排気速度)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施例に係る基板処理装置の一例を示す上面図である。
図2】本開示の実施例に係る基板処理装置の一例を示す縦断面図である。
図3】本開示の実施例に係る基板処理装置の一例を示す横断面図である。
図4】本開示の実施例に係る処理炉の一例を示す縦断面図である。
図5】本開示の実施例に係るユーティリティ系の一例を示す斜視図である。
図6】本開示の実施例に係るブースタポンプの一例を示す縦断面図である。
図7】(A)(B)は、本開示の実施例に係るブースタポンプの一例を示す斜視図である。
図8】本開示の実施例に係る基板処理装置の変形例1を示す上面図である。
図9】本開示の実施例に係る基板処理装置の変形例2を示す上面図である。
図10】本開示の実施例に係る排気系及び周辺部の一例を示す正面図である。
図11】本開示の実施例に係る排気系及び周辺部の一例を示す平面図である。
図12】本開示の実施例に係る接続部の一例を示す斜視図である。
図13】(A)は接続部に制振板を設けなかった場合の振動と周波数の関係を示すグラフであり、(B)は接続部に制振板を設けた場合の振動と周波数の関係を示すグラフである。
図14】本開示の実施例に係る基板処理装置の変形例3を示す上面図である。
図15】本開示の実施例に係る基板処理装置の変形例4を示す上面図である。
図16】基板処理装置の変形例4を示す横断面図である。
図17】本開示の実施例に係る基板処理装置の変形例5を示す上面図である。
図18】基板処理装置の変形例5を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本開示の限定的でない例示の実施例を説明する。尚、以下の説明に於いて用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。又、複数の図面の相互間に於いても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。又、全図面中、同一又は対応する構成については、同一又は対応する符号を付し、重複する説明を省略する。又、後述する収納室13側を正面側(前側)、後述する第1のユーティリティ系54A、第2のユーティリティ系54B側を背面側(後側)とする。更に、後述する第1の処理モジュール2A、第2の処理モジュール2Bの境界線(隣接面)に向う側を内側、境界線から離れる側を外側とする。
【0010】
本実施例に於いて、基板処理装置は、半導体装置(デバイス)の製造方法に於ける製造工程の一工程として、熱処理等の基板処理工程を実施する縦型基板処理装置(以下、基板処理装置と称する)1として構成されている。
【0011】
図1図2に示される様に、基板処理装置1は、第1の処理モジュール2Aと、第2の処理モジュール2Bとを備えている。処理モジュール2A及び2Bは、おおよそ直方体の輪郭を有する筐体又は躯体を有し、それぞれの一側面が互いに平行に密着又は隣接して配置されている。処理モジュール2Aは、第1の処理炉4A(処理炉4A)と第1の搬送室5A(搬送室5A)により構成される。処理モジュール2Bは、第2の処理炉4B(処理炉4B)と第2の搬送室5B(搬送室5B)により構成される。
【0012】
処理炉4Aと処理炉4Bの下方には、搬送室5Aと搬送室5Bがそれぞれ配置されている。搬送室5Aと搬送室5Bの正面側に隣接して、移載室11が配置されている。移載室11は、おおよそ直方体の外形の筐体を有し、ウェーハ8を移載する移載機9が備えられる。移載室11の正面側には、ウェーハ8を複数枚収納するポッド(フープ)12を収納する収納室13が連結されている。収納室13、処理モジュール2A、2B、移載室11は、互いに直交する面からなる多面体を基調とした外径を有し、それぞれ着脱可能に構成され、その接続部は適切な気密性を有する。収納室13の前面には、I/Oポート14が設置され、I/Oポート14を介して基板処理装置1の内外にポッド12が搬入出される。又収納室13には、移載室11の正面に接続されたFIMS(Front-opening Interface Mechanical Standard)等のロードポート16が設けられ、ポッド12の開閉を行う。ポッド12から取出されたウェーハ8は、ミニエンバイロメントを構成する移載室11と搬送室5A、5Bの中で取扱われる。
【0013】
搬送室5A、5Bと移載室11との境界壁(隣接面)には、両者の間でウェーハ(基板)8を搬入する為の第1のゲートバルブ15A(ゲートバルブ15A)と第2のゲートバルブ15B(ゲートバルブ15B)がそれぞれ設置される。移載室11内及び搬送室5A、5B内には圧力検知器がそれぞれ設置されており、移載室11内の圧力は、搬送室5A、5B内の圧力よりも低くなる様に設定されている。又、移載室11内及び搬送室5A、5B内には酸素濃度検知器がそれぞれ設置されており、移載室11内及び搬送室5A、5B内の酸素濃度は大気中に於ける酸素濃度よりも低く維持されている。移載室11の天井部には、移載室11内にクリーンエアを供給するクリーンユニット17が設置されており、移載室11内にクリーンエアとして、例えば不活性ガスを循環させる様に構成されている。移載室11内を不活性ガスにて循環パージすることにより、移載室11内を清浄な雰囲気とすることができる。この様な構成により、移載室11内に搬送室5A、5B内のパーティクル等が混入することを抑制することができ、移載室11内及び搬送室5A、5B内でウェーハ8上に自然酸化膜が形成されるのを抑制することができる。
【0014】
処理モジュール2Aと処理モジュール2Bは細部を除き略同一(面対称)の構成を備える為、以下に於いては、代表して第1の処理モジュールについてのみ説明する。
【0015】
図4に示される様に、処理炉4Aは、円筒形状の第1の処理容器18A(反応管18A)と、反応管18Aの外周に設置された加熱手段(加熱機構)としての第1のヒータ19A(ヒータ19Aとを備える。反応管18Aは、例えば石英(Si)やシリコンカーバイド(SiC)によって形成される。反応管18Aの内部には、基板としてのウェーハ8を処理する第1の処理室21A(処理室21A)が形成される。又、反応管18Aには、温度検出器としての第1の温度検出部22Aが反応管18Aの内壁に沿って立設されている。
【0016】
基板処理に使用されるガスは、ガス供給系としての第1のガス供給機構23Aによって処理室21A内に供給される。ガス供給機構23Aが供給するガスは、成膜される膜の種類に応じて換えられる。ここでは、ガス供給機構23Aは、原料ガス供給部、反応ガス供給部及び不活性ガス供給部を含む。ガス供給機構23Aは、後述する第1の供給ボックス24A(ガスボックス)に収納されている。
【0017】
原料ガス供給部は、ガス供給管25aを備え、ガス供給管25aには、上流方向から順次、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)26a及び開閉弁であるバルブ28aが設けられている。ガス供給管25aは第1のマニホールド27A(マニホールド27A)の側壁を貫通するノズル29aに接続されている。ノズル29aは、反応管18A内に上下方向に沿って立設し、第1のボート31A(ボート31A)に保持されるウェーハ8に向って開口する複数の供給孔が形成されている。ノズル29aの供給孔を通してウェーハ8に対して原料ガスが供給される。
【0018】
以下、同様の構成にて、反応ガス供給部からは、ガス供給管25b、MFC26b、バルブ28b及びノズル29bを介して、反応ガスがウェーハ8に対して供給される。不活性ガス供給部からは、ガス供給管25c,25d、MFC26c,26d、バルブ28c,28d、及びノズル29a,29bを介して、ウェーハ8に対して不活性ガスが供給される。
【0019】
反応管18Aの下端開口部には、円筒形のマニホールド27Aが、Oリング等のシール部材を介して連結され、反応管18Aの下端を支持している。マニホールド27Aの下端開口部は、搬送室5Aの天井に対応して配置されており、円盤状の第1の蓋部32A(蓋部32A)によって開閉される。蓋部32Aの上面にはOリング等のシール部材が設置されており、これにより反応管18Aと外気とが気密にシールされる。蓋部32A上には、第1の断熱部33A(断熱部33A)が載置される。
【0020】
マニホールド27Aには、軸心に対して直交する方向、即ち反応管18Aの管軸に対して直交する方向に延出する第1の排気ポート30A(排気ポート30A)が形成され、排気ポート30Aを介して第1の排気管34Aが取付けられている。排気管34Aには、処理室21A内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての第1の圧力センサ35A(圧力センサ35A)と、圧力調整器(圧力調整部)としての第1のコンダクタンス可変バルブ36Aを介して、真空排気装置としての第1のブースタポンプ38Aに接続されている。尚、コンダクタンス可変バルブ36Aは、APC(AutoPressure Controller)バルブとゲートバルブの2つのバルブを直列に接続して構成された2段構成のバルブとなっている。又、APCバルブは、排気管34Aの断面積と同等若しくはそれ以上の流路断面積で開放可能なバタフライバルブとなっている。この様な構成により、処理室21A内の圧力を処理に応じた処理圧力とすることができる。主に、排気管34A、圧力センサ35A、コンダクタンス可変バルブ36Aにより、第1の排気系としての排気系39Aが構成される。排気系39Aは、後述する第1の排気ボックス40A(排気ボックス40A)に収納されうる。
【0021】
処理室21Aは、複数枚、例えば10~150枚のウェーハ8を垂直に棚状に支持する基板保持具としてのボート31Aを内部に収納する。ボート31Aは、蓋部32A及び断熱部33Aを貫通する第1の回転軸41A(回転軸41A)により、断熱部33Aの上方に支持される。回転軸41Aは、蓋部32Aの下方に設置された第1の回転機構42A(回転機構42A)に接続されており、回転軸41Aは反応管18Aの内部を気密にシールした状態で回転可能に構成される。蓋部32Aは、昇降機構としての第1のボートエレベータ43A(ボートエレベータ43A)により上下方向に駆動される。これにより、ボート31A及び蓋部32Aが一体的に昇降され、反応管18Aに対してボート31Aが搬入出される。
【0022】
ボート31Aへのウェーハ8の移載は搬送室5Aで行われる。図3に示される様に、搬送室5Aの一側面(搬送室5Aの外側側面、搬送室5Bに面する側面と反対側の側面)には、第1のクリーンユニット44A(クリーンユニット44A)が設置されており、搬送室5A内にクリーンエア(例えば、不活性ガス)を循環させる様に構成されている。搬送室5A内に供給された不活性ガスは、ボート31Aを挟んでクリーンユニット44Aと対面する側面(搬送室5Bに面する側面)に設置された第1の排気部45A(排気部45A)によって搬送室5A内から排気され、クリーンユニット44Aから搬送室5A内に再供給される(循環パージ)。搬送室5A内の圧力は移載室11内の圧力よりも常に低くなる様に設定されている。これにより、搬送室5A内のパーティクルや汚染源を移載室11に持ち込んで汚染が広がることを防いでいる。又、搬送室5A内の酸素濃度は、大気中に於ける酸素濃度よりも低くなる様に設定されている。
【0023】
回転機構42A、ボートエレベータ43A、ガス供給機構23AのMFC38a~38d、バルブ28a~28d及びコンダクタンス可変バルブ36Aには、これらを制御するコントローラ46が接続される。コントローラ46は、例えばCPUを備えたマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなり、処理モジュール2A、2Bの動作を制御する様に構成される。コントローラ46には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置47が接続されている。コントローラ46は、処理モジュール2Aと処理モジュール2Bとでそれぞれに1つずつ設置されてもよいし、共通して1つ設置されてもよい。
【0024】
コントローラ46には記憶媒体としての記憶部48が接続されている。記憶部48には、基板処理装置1の動作を制御する制御プログラムや、処理条件に応じて基板処理装置1の各構成部に処理を実行させる為のプログラム(レシピとも言う)が、読出し可能に格納される。
【0025】
記憶部48は、コントローラ46に内蔵された記憶装置(ハードディスクやフラッシュメモリ)であってもよいし、可搬性の外部記憶装置(磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)であってもよい。又、コンピュータへのプログラムの提供は、インターネットの専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。プログラムは、必要に応じて、入出力装置47からの指示等にて記憶部48から読出され、読出されたレシピに従った処理をコントローラ46が実行することで、基板処理装置1はコントローラ46の制御のもと、所望の処理を実行する。コントローラ46は、基板処理装置1の任意の場所に設けたコントロールボックス(図示せず)に収納される。
【0026】
次に、基板処理装置1の背面構成について説明する。
【0027】
図1に示される様に、搬送室5A、5Bの背面側には、第1のメンテナンス口51A、第2のメンテナンス口51B(メンテナンス口51A、51B)がそれぞれ形成されている。メンテナンス口51Aは、搬送室5B側に偏って形成され、反応管18A及びボート31Aを搬入出可能な幅及び高さを有している。メンテナンス口51Bは、搬送室5A側に偏って形成され、反応管18B及びボート31Bを搬入出可能な幅及び高さを有している。メンテナンス口51A、51Bは、第1のメンテナンス扉52A(メンテナンス扉52A)、第2のメンテナンス扉52B(メンテナンス扉52B)により開閉される。メンテナンス扉52A、52Bは、第1のヒンジ53A(ヒンジ53A)、第2のヒンジ53B(ヒンジ53B)を基軸として回動可能に構成される。ヒンジ53Aは搬送室5Aの搬送室5B側に設置され、ヒンジ53Bは搬送室5Bの搬送室5A側に設置される。即ち、ヒンジ53A及びヒンジ53Bは、搬送室5A及び搬送室5Bの背面側の隣接面に位置する内側角部付近に互いに隣接する様に設置される。而して、搬送室や処理炉等のメンテナンスを実施する為のメンテナンスエリア、処理モジュール2Aの背面に於ける処理モジュール2B側と、処理モジュール2Bの背面に於ける処理モジュール2A側とに形成される。
【0028】
メンテナンス扉52A、52Bがヒンジ53A、53Bを中心にして搬送室5A、5Bの背面側後方に水平に回動されることにより、メンテナンス口51A、51Bが開かれる。メンテナンス扉52A、52Bは、90度以上、より好ましくは約180°回動可能な様に構成される。180°近く回動することにより、開放時にメンテナンス扉52A及び52Bの一方は他方に重なり、メンテナンス作業の邪魔にならない。
【0029】
処理モジュール2A、2Bの背面に近接して、後方に伸びる第1のユーティリティ系54A(ユーティリティ系54A)及び第2のユーティリティ系54B(ユーティリティ系54B)が設置されている。ユーティリティ系54A、54Bは、メンテナンスエリアを介在して対向して面対称に配置される。ユーティリティ系54A、54Bのメンテナンスを行なう際は、ユーティリティ系54A、54Bの内側、即ちユーティリティ系54A、54Bの間の空間(メンテナンスエリア)から行う。ユーティリティ系54A、54Bは、供給ボックス24A、24B、排気ボックス40A、40B、ブースタポンプ38A、38Bを有する。ユーティリティ系54A、54Bの各ボックスのメンテナンス口は、それぞれ内側(メンテナンスエリア側)に形成されている。即ち、ユーティリティ系54A、54Bの各ボックスのメンテナンス口は、互いに向かい合う様に形成されている。
【0030】
ユーティリティ系54A、54Bは、細部を除き略同一の構成を備える為、以下に於いては、代表してユーティリティ系54Aについてのみ説明する。供給ボックス24Aは、搬送室5Aの背面の外側寄りの部分に隣接して配置される。排気ボックス40Aは、処理炉4Aの背面の外側寄りの部分に隣接して配置される。即ち、供給ボックス24A及び排気ボックス40Aの外側の側面は、搬送室5Aの外側側面と、実質的に連続して接続する様、平坦に(滑らかに)位置決めされる。又、供給ボックス24A及び排気ボックス40Aは、上下方向に於いて互いに隣接している。供給ボックス24Aと排気ボックス40Aのそれぞれの背面は、実質的に同一平面である。
【0031】
ブースタポンプ38Aは、供給ボックス24A及び排気ボックス40Aの背面に隣接して配置される。ブースタポンプ38Aは、おおよそ直方体の輪郭を有する筐体(枠体)に収納され、所定の高さを有する第1の架台55A(架台55A)上に設置されうる。架台55Aは底面に4個のスイベルキャスター64Aを有し、床の上を移動可能に構成される。尚運用中は、架台55Aは床面にボルトで固着されるとともに、ブースタポンプ38Aは架台55Aにボルトで固着される。ブースタポンプ38Bも同様である。
【0032】
ブースタポンプ38Aと架台55Aは、積み重ねられた状態に於ける設置面積(フットプリント)は500×500mmに満たない一方、高さは2500mmに達しうる。図7(A)に示される例では、設置面積が450×450mmとなる様構成され、その幅は、ユーティリティ系54Aの最大幅と実質的に等しい。又、ブースタポンプ38A、38Bの外側側面は、ユーティリティ系54A、54Bの外側側面、即ち排気ボックス40A、40Bの外側側面と供給ボックス24A、24Bの外側側面よりも外側に突出しない様に配置されている。尚、架台55A、55Bはそれぞれ高さが変更できる様な構成としてもよい。又、架台55A、55Bには、ブースタポンプ38A、38Bからの振動や地震等の振動を吸収する対策(振動対策)が施されうる。
【0033】
図1図3及び図5から認識される様に、供給ボックス24Aの厚さ(基板処理装置1の正面から見た時の横幅)は、前側から後ろ側に向かって階段状に広がり、その最大幅は排気ボックス40Aの厚さよりも小さいか等しくなっている。一方で、排気ボックス40Aの厚さは、前側から後ろ側に亘って一定であり、直方体の外形を有し、その中を排気管34Aが前後方向に水平に貫通している。言い換えれば、供給ボックス24A、24Bよりも排気ボックス40A、40Bの方が、メンテナンスエリア側に突出している。幅の広い排気ボックス40Aを搬送室5Aよりも実質的に上方に設置することにより、搬送室5Aのメンテナンス扉52Aの後方のメンテナンスエリアの横幅を広く確保することができる。即ち、上面視に於いて、排気ボックス40A、40Bとの間の距離よりも供給ボックス24A、24Bとの間の距離の方が大きくなっている為、開放したメンテナンス扉52Aから反応管18Aを取出すのに十分な幅のメンテナンスエリアが確保される。フロアボックス67Aは、メンテナンスエリア全域の床に設置され、排気ダクト、冷却水設備、電気ケーブル等を収容する。フロアボックス67Aの上面は平面であり、メンテナンス扉の下端よりも低い。フロアボックス67Aは、重量物のメンテナンス時に支点となるハードポイントを1つ以上有しうる。
【0034】
図3及び図5に示される様に、供給ボックス24Aは、排気ボックス40Aよりも下方に於いて、第1のガス供給機構23Aの大部分を収容する。ガス供給管25a、25bは、供給ボックス24Aの外に迄伸び、排気ボックス40Aと排気管34Aの間を通って、排気ボックス40A内に配置されたバルブ28a、28bに接続し、更にその先はノズル29a、29b迄引き回されている。別の構成では、ガス供給機構23Aはバルブ28a、28bを収容しうる高さを有し、内側側面に、排気ボックス40A(排気管34A)との干渉を避ける様窪みが形成されてもよい。或は、排気ボックス40Aを廃し、排気管34Aは、供給ボックス24Aを貫通して配置してもよい。つまり排気ボックス40Aは、箱状である必要はなく、周囲が覆われている必要はなく、他のボックス等との明確な境界も必須ではない。その意味に於いて、排気ボックス40Aは排気系を収容する空間でありされすればよい。その場合であっても、排気管34Aは、メンテナンス扉52Aを避けた高さに於いて、外側寄りに配置される。排気ボックス40Aは、尚、図5中では、排気管34Aがメンテナンス扉52Aよりも上方に設けられているが、排気管34Aはメンテナンス扉52Aよりも下方に設けてもよい。
【0035】
ここで、後方を向いた排気ポート30Aと、ブースタポンプ38Bに前方を向いて形成された第1の吸気口56Aは対向又は略対向している。又、排気ポート30Aと吸気口56Aの高さは一致又は略一致している。従って、排気管34Aは、ユーティリティ系54Aの内部を略直線状に、且つ略水平に貫通して、排気ポート30Aと第1の吸気口56Aを接続する。排気ポート30Aと第1の吸気口56Aのそれぞれの延伸軸がオフセットしている場合、排気管34Aは、緩やかに曲がりうる。本例の排気管34Aは、約100mmの呼び径を有する排気ポート30Aから真後ろに僅かに伸びた後、基板処理装置1の外側に向いた緩やかなカーブ区間、呼び径が100mmから200mmに拡大するテーパー区間、基板処理装置1の内側に向いた緩やかなカーブ区間、及び吸気口56Aの延伸軸に一致する直管区間とが順次連結して構成される。直管区間には、200mmの呼び径に対応したAPCバルブ、遮断用ゲートバルブ、保守用ゲートバルブ、排気管34Aをブースタポンプ38Aの振動から隔離する為のベローズ、及び第1の吸気口56Aに着脱可能に接続する為のアダプターが、上流から下流の順に配置される。この様に排気管34を略水平に配置することで、排気管34の配管長を短くすることができる為、コンダクタンスを向上させることができる。本例の排気ボックス40Aは、縦長のゲートバルブを収容する為に、横幅よりも高さが大きくなる様に形成され、排気管34Aの直管区間のみを収容する。つまり、処理炉4Aと排気ボックス40Aの間には隙間があり、排気管34Aの排気ポート30Aから直管区間の間の部分は露出しうる。
【0036】
次に、図6図7に於いて、ブースタポンプ38Aについて更に説明する。本実施例に於けるブースタポンプ38Aは、縦置きに設置する様に構成されている。縦置きに設置することで、フットプリント(設置面積)を小さくしている。
【0037】
ブースタポンプ38Aは、内部に空間(ロータ室)を有する本体(ケーシング)61Aと、本体61A内で回転する1乃至複数のロータ59Aと、排気管34Aと接続され本体61Aの上部側面に設けられた吸気口56Aと、本体61Aの側面下部に設けられ、ガスを排気する第1の排気口62Aと、ロータ59Aの回転軸57Aを回転するモータ58Aと、モータ58Aを制御する第1のポンプコントローラ63Aと、バラストガスや冷却水等を供給する為の付属設備(不図示)とから構成されている。尚、ポンプコントローラ63Aや付属設備は例えば架台55A内に設けられ、それらの操作部や表示部が側面に設けられうる。
【0038】
又、吸気口56A内、排気口62A内、及び本体61Aとロータ59Aとの間の移動する中間室によって、第1のガス流路65A(ガス流路65A)が形成されている。又、吸気口56Aから導入されたガスは、ガス流路65Aを流通して排気口62Aから排出される様に構成されている。吸気口56Aは、ロータ室を直接臨む様に回転軸57Aと直交して開口し、排気口62Aは、吸気口56Aと同じ若しくは反対側の側面に開口し、ロータリポンプ等の補助排気装置(不図示)の吸気口に接続される。
【0039】
回転軸57Aが上下方向に延伸して配置されている為、本体61Aは縦長である。本体61Aは鋳鉄製であり、大きな重量を有する。モータ58Aを本体61Aの上に設けたことにより、ブースタポンプ38Aの重心を極力低くでき、ブースタポンプ38Aを安定して設置できる様構成されている。
【0040】
回転軸57Aで駆動されるロータ59Aは、複数のロータ、例えば2つのロータからなる2段ルーツ式となっている。排気管34Aを介して吸気口56Aから吸引されるガスは、ロータ59Aの回転と共にガス流路65A内を回転しながら排気口62Aに導入される。ここで、吸気口56Aが本体61Aの上部側面に設けられ、排気ポート30Aと吸気口56Aは、同一又は略同一高さとなっている。従って、排気管34Aの形状を直線状とし、且つ水平に配置することができるので、排気ポート30Aと吸気口56Aとの距離を最短とすることができ、ブースタポンプ38Aの排気能力を最大限に活かすことができる。一方で排気口62Aを本体61Aの下部に設けることで、例えば下のフロアに設置されたメインポンプ迄の配管の引回しを短くすることができる。尚、排気ポート30Aと排気口62Aが同一高さ又は略同一高さである場合には、排気口62Aを吸気口とし、吸気口56Aを排気口としてもよい。
【0041】
又、吸気口56Aにゲートバルブを設ける様にしてもよい。これにより、メンテナンス時に、排気管34A内の雰囲気が開放され、膜種によっては大気、水分と反応してHCl等の危険性の高いガスが出てしまう場合であっても、吸気口56Aを閉じることができるので、メンテナンス時の危険性を防止することができる。
【0042】
又、ブースタポンプ38Aは架台55A上に設けられているので、高さの異なる架台55Aを適宜選択することで、或は架台55Aの高さを調整することで、吸気口56Aの中心高さを排気ポート30Aの中心高さと同一高さとすることができる。これにより高さを変える為の屈曲が無く、供給ボックス24Aの奥行きの長さによって隔てられた排気ポート30Aと吸気口56Aの間を最短距離で接続する最大コンダクタンスの排気管34A(排気系39A)を実現しうる。
【0043】
次に、上述の基板処理装置1を用い、基板上に膜を形成する処理(成膜処理)について説明する。ここでは、ウェーハ8に対して、原料ガスとしてガスAと、反応ガスとしてガスBとを供給することで、ウェーハ8上に膜を形成する例について説明する。尚、以下の説明に於いて、基板処理装置1を構成する各部の動作はコントローラ46により制御される。
【0044】
(ウェーハチャージ及びボートロード)
ゲートバルブ15Aを開き、ボート31Aに対してウェーハ8を搬送する。複数枚のウェーハ8がボート31Aに装填(ウェーハチャージ)されると、ゲートバルブ15Aが閉じられる。ボート31Aは、ボートエレベータ43Aによって処理室21A内に搬入(ボートロード)され、反応管18Aの下部開口は蓋部32Aによって気密に閉塞(シール)された状態となる。
【0045】
(圧力調整及び温度調整)
処理室21Aが所定の圧力(真空度)となる様に、ブースタポンプ38Aによって真空排気(減圧排気)される。処理室21A内の雰囲気は、排気管34内を直線状又は略直線状に流通し、ブースタポンプ38A内を通って排気される。処理室21A内の圧力は、圧力センサ35Aで測定され、この測定された圧力情報に基づき、コンダクタンス可変バルブ36Aがフィードバック制御される。又、処理室21A内のウェーハ8が所定の温度となる様に、ヒータ19Aによって加熱される。この際、処理室21Aが所定の温度分布となる様に、温度検出部22Aが検出した温度情報に基づき、ヒータ19Aへの通電具合がフィードバック制御される。又、回転機構42Aによるボート31A及びウェーハ8の回転を開始する。
【0046】
(成膜処理)
[原料ガス供給工程]
処理室21A内の温度が予め設定された処理温度に安定すると、処理室21A内のウェーハ8に対してガスAを供給する。ガスAは、MFC26aにて所望の流量となる様に制御され、ガス供給管25a及びノズル29aを介して処理室21A内に供給される。
【0047】
[原料ガス排気工程]
次に、ガスAの供給を停止し、ブースタポンプ38Aにより処理室21A内を真空排気する。処理室21A内のガスAは、排気管34A内を直線状又は略直線状に流通し、ブースタポンプ38Aを介して排気される。この時、不活性ガス供給部から不活性ガスとしてN2 ガスを処理室21A内に供給してもよい(不活性ガスパージ)。
【0048】
[反応ガス供給工程]
次に、処理室21A内のウェーハ8に対してガスBを供給する。ガスBは、MFC26bにて所望の流量となる様に制御され、ガス供給管25b及びノズル29bを介して処理室21A内に供給される。
【0049】
[反応ガス排気工程]
次に、ガスBの供給を停止し、ブースタポンプ38Aにより処理室21A内を真空排気する。処理室21A内のガスBは、排気管34A内を直線状又は略直線状に流通し、ブースタポンプ38Aを介して排気される。この時、不活性ガス供給部から不活性ガスとしてN2 ガスを処理室21A内に供給してもよい(不活性ガスパージ)。
【0050】
上述した4つの工程を行うサイクルを所定回数(1回以上)行うことにより、ウェーハ8上に、所定組成及び所定膜厚の膜を形成することができる。
【0051】
(ボートアンロード及びウェーハディスチャージ)
所定膜厚の膜を形成した後、不活性ガス供給部からN2 ガスが供給され、処理室21A内がN2 ガスで置換されると共に、処理室21A内の圧力が常圧に復帰される。その後、ボートエレベータ43Aにより蓋部32Aが降下され、ボート31Aが反応管18Aから搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウェーハ8は、ボート31Aより取出される(ウェーハディスチャージ)。
【0052】
その後、ウェーハ8はポッド12に収納され、基板処理装置1外に搬出されてもよいし、処理炉4Bへ搬送され、例えばアニール等の基板処理が連続して行われてもよい。処理炉4Aでのウェーハ8の処理後に連続して処理炉4Bでウェーハ8の処理を行う場合、ゲートバルブ15A及び第2のゲートバルブ15Bを開とし、ボート31Aから第2のボート31B(ボート31B)へウェーハ8が直接搬送される。その後の処理炉4B内へのウェーハ8の搬入出は、上述の処理炉4Aによる基板処理と同様の手順で行われる。又、処理炉4Bでの基板処理は、例えば上述の処理炉4Aによる基板処理と同様の手順にて行われる。
【0053】
ガスA又はガスBにシリコン含有ガスを用い、ウェーハ8にシリコン又はシリコン化合物を成膜する際の処理条件としては、例えば下記が例示される。
処理温度(ウェーハ温度):300℃~700℃
処理圧量(処理室内圧力):1Pa~4000Pa
【0054】
尚、処理モジュール2Aと2Bで、膜Aと膜Bの様に異なる膜を形成させる様に構成することができる。その場合、ガス供給機構23Aと23Bの構成も相違するが、供給ボックス24A、24Bや排気ボックス40A、40Bの対称性は維持される。
【0055】
次に、基板処理装置1のメンテナンスについて説明する。搬送室5A内が不活性ガスで循環パージされている場合、メンテナンス扉52Aを開放できない様にインターロックが設定されている。搬送室5A内の酸素濃度が大気圧に於ける酸素濃度よりも低い場合でも、メンテナンス扉52Aを開放できない様にインターロックが設定されている。メンテナンス扉52Bに関しても同様である。更に、メンテナンス扉52A、52Bを開いている時は、ゲートバルブ15A、15Bを開放できない様にインターロックが設定されている。メンテナンス扉52A、52Bが開の状態でゲートバルブ15A、15Bを開とする場合には、基板処理装置1全体をメンテナンスモードとした上で、別途設置されているメンテナンススイッチをオンとすることにより、ゲートバルブ15A、15Bに関するインターロックが解除され、ゲートバルブ15A、15Bを開とすることができる。
【0056】
メンテナンス扉52Aをあける際には、搬送室5A内の酸素濃度を大気中に於ける酸素濃度以上、好ましくは大気中に於ける酸素濃度迄上昇させる為に、クリーンユニット44Aから搬送室5A内に大気雰囲気を流入させる。この時、搬送室5A内の圧力が、移載室11内の圧力よりも高くならない様に、搬送室5A内の循環パージを解除し、搬送室5A内の雰囲気を搬送室5A外に排気すると共に、クリーンユニット44Aのファンの回転数を循環パージ時の回転数よりも落とし、搬送室5A内への大気の流入量を制御する。この様に制御することで、搬送室5A内の酸素濃度を上昇させつつ、搬送室5A内の圧力を移載室11内の圧力よりも低く維持することができる。
【0057】
搬送室5A内の酸素濃度が大気圧中に於ける酸素濃度と同等となると、インターロックが解除され、メンテナンス扉52Aを開けることができる。この時、搬送室5A内の酸素濃度が大気圧中に於ける酸素濃度と同等であっても、搬送室5A内の圧力が移載室11内の圧力よりも高い場合は、メンテナンス扉52Aを開放できない様に設定されている。メンテナンス扉52Aが開放されると、クリーンユニット44Aのファンの回転数を、少なくとも循環パージ時の回転数よりも大きくする。より好適には、クリーンユニット44Aのファンの回転数を最大とする。
【0058】
メンテナンス扉52Aを解放後、例えばメンテナンス口51Aを介して台車のステージを搬送室5A内に進入させ、台車を介して反応管18Aやボート31Aが搬送室5A内に搬入出される。この時、排気ポート30A及び排気管34Aは、メンテナンス口51Aよりも上方に位置し、搬入出される台車や反応管18Aと干渉しない様になっている。
【0059】
移載室11内のメンテナンスは、移載室11の前方であって、ポッドオープナが設置されていない部分に形成されたメンテナンス口50から行われる。メンテナンス口50は図示しないメンテナンス扉によって開閉される様構成されている。上述の様に、基板処理装置1全体をメンテナンスモードとした際は、ゲートバルブ15A、15Bを開として、ゲートバルブ15A、15B側よりメンテナンスすることも出来る。即ち、移載室11内のメンテナンスは、装置正面からでも装置背面からでも、どちらからでも実施することができる。
【0060】
上述の様に、本実施例では、排気ボックス40A、40Bと隣接した位置に、排気ポート30A、30Bと吸気口56A、56Bとがそれぞれ対向又は略対向する様に、且つ同一高さとなる様に、ブースタポンプ38A、38Bを設けている。従って、直線状の排気管34A、34B(図示せず)を水平に配置し、最短距離でブースタポンプ38A、38Bを反応管18A、18Bを接続できるので、ブースタポンプ38A、38Bの排気能力を最大限に発揮させることができ、機差低減を抑制しつつ排気効率(排気速度)を向上させることができると共に、COOの低減も図ることができる。
【0061】
又、直線状の排気管34A、34Bを用いているので、反応管18A、18Bから排気されたガスは、排気ポート30A、30Bと吸気口56A、56Bとの間を略直線的に流体連通する。従って、排気管34A、34Bを流通する過程で、排気されたガスに圧力損失を生じることがなく、排気効率を向上させることができる。
【0062】
又、ブースタポンプ38A、38Bは、補助排気装置の排気速度が減少する圧力領域(例えば、1Pa~1kPa)に於いて、排気速度を向上させる。容積移送式ポンプをブースタポンプに用いた場合、その排気速度は、到達真空度付近を除き、ロータの回転速度により決まるので、補助排気装置のみ用いた場合に比べて排気速度のばらつきも軽減される。尚ブースタポンプ38A、38Bとして、ルーツ型の他、回転翼型(軸流型)、スクリュー型、スクロール型等の各種のメカニカルブースタポンプが使用でき、更にはターボ分子ポンプ、イジェクタ等の運動量輸送式のポンプも使用されうる。
【0063】
又、ブースタポンプ38A、38Bは、縦置きで設置面積が500×500未満となる様に構成され、且つユーティリティ系54A、54Bの外側側面から外側に突出しない様に配置されているので、基板処理装置1のフットプリントを低減させることができる。
【0064】
又、ブースタポンプ38A、38Bは、架台55A、55B上に設けられている。従って、高さの異なる架台55A、55Bを適宜選択するか、或は架台55A、55Bの高さを調整することで、吸気口56A、56Bの高さを調整することができる。又、ボルト等の固着具により架台55A、55Bやブースタポンプ38A、38Bが床面に固定されるので、ブースタポンプ38A、38Bの転倒を防止することができる。
【0065】
又、基板処理装置1の背面にメンテナンスエリアを設け、メンテナンスエリアからユーティリティ系54A、54Bのメンテナンスが可能となっている。従って、基板処理装置1の両側にメンテナンスエリアを確保する必要がない為、基板処理装置1のフットプリントを低減し、クリーンルームの使用面積を抑制させることができる。
【0066】
又、処理モジュール2A、2Bのユーティリティ系54A、54Bを基板処理装置1の両外側側面に互いに対面して設置することにより、基板処理装置1の背面の空間を左右の処理モジュール2A、2B共通のメンテナンスエリアとして使用することが可能となる。例えば、従来の装置に於いては、装置背面の両端に供給ボックスと排気ボックスとを対面する様に設置していることがある。この様な構成の装置を2つ並べた場合、2つの装置の境界線で、一方の排気ボックスと他方の供給ボックスとが隣接することになる。これに対して本実施例では、2つの処理モジュール2A、2Bの境界線に於いて、ユーティリティ系が配置されていない為、メンテナンスエリアを広く確保することができる。
【0067】
又、ゲートバルブ15A、15Bを備えたことで、一方の処理モジュール2A、2Bで基板処理を行いつつ、他方の処理モジュール2A、2Bや移載室11内のメンテナンスをすることが可能となる。これにより、成膜処理を停止せずにメンテナンスができる為、基板処理装置1の稼働率を上昇させることができ、生産性を向上させることができる。
【0068】
次に、図10図11を参照し、ブースタポンプ38A、排気系39A、処理炉4Aの周辺部の詳細について説明する。尚、ブースタポンプ38Aとブースタポンプ38B、排気系39Aと排気系39B、処理炉4Aと処理炉4Bは同様の構成であるので、以下ではブースタポンプ38A、排気系39A、処理炉4Aについてのみ説明し、ブースタポンプ38B、排気系39B、処理炉4Bの説明は省略する。又、以下に於いて、Aという部材について説明する場合、同様の構成のBという部材も存在するものとする。
【0069】
配管筐体としての排気ボックス40Aがブースタポンプ38Aに隣接して配設され、処理炉4Aが排気ボックス40Aに隣接して配設される。又、排気ボックス40Aと処理炉4Aは排気系39Aを介して接続され、排気系39Aは排気ボックス40Aに収納され、支持される。
【0070】
排気系39Aは、排気管34Aと、分岐排気管68Aと、第1のゲートバルブ69Aと、第2のゲートバルブ71Aと、第1のAPCバルブ72Aと、第2のAPCバルブ73Aとを有している。尚、第1のAPCバルブ72Aと第2のAPCバルブ73Aとでコンダクタンス可変バルブ36Aが構成される。
【0071】
排気管34Aの一端は、可撓部としてのベローズ74Aを介してブースタポンプ38Aの吸気口56Aに接続されている。又、排気管34Aは、他端側で中途部から縮径された縮径部77Aとなっており、縮径部77Aは可撓部としてのベローズ70Aを介して処理容器18Aの排気ポート30Aに接続されている。即ち、前記ブースタポンプ38Aと処理炉4A内部の処理室21Aとが、排気管34Aを介して連通する様構成される。又、排気管34Aには、ブースタポンプ38A側から順に、第1のゲートバルブ69A、第2のゲートバルブ71A、第1のAPCバルブ72Aが設けられている。
【0072】
分岐排気管68Aは、排気管34Aの第1のゲートバルブ69Aと第2のゲートバルブ71Aとの間から上側に向って延出し、処理炉4Aに向って排気管34Aと平行に屈曲され、更に第2のAPCバルブ73Aを介して下方に延出し、排気管34Aの第1APCバルブ72Aと縮径部77Aとの間に接続されている。即ち、分岐排気管68Aの中途部には、第2のAPCバルブ73Aが設けられている。従って、第2のゲートバルブ71Aの開閉により、排気管34A及び第1のAPCバルブ72Aを介して排気するか、分岐排気管68A及び第2のAPCバルブ73Aを介して排気するかを制御することができる。
【0073】
尚、排気管34Aと分岐排気管68Aは、それぞれ所定の形状の配管を複数組合わせた分割構造となっている。即ち、排気管34Aと分岐排気管68Aは、分割可能な複数の区間を有する。各配管は、配管同士の接続部の周囲を囲繞する様設けられた弾性シール部材80Aを介して接続される。
【0074】
ベローズ70Aは蛇腹構造となっており、処理容器18Aに対する排気管34Aの周方向及び軸心方向の変位を吸収し、許容する。同様にベローズ74Aは蛇腹構造となっており、ブースタポンプ38Aに対する排気管34Aの周方向及び軸心方向の変位を吸収し、許容する。又、ベローズ74Aは、両端部に半径方向に突出するフランジ部75Aを有し、各フランジ部75A間に円周所定間隔でシャフト状の固定部材76A(図11)を掛渡して取付け可能となっている。固定部材76Aは例えばボルトであり、メンテナンス時等に、任意の位置でベローズ74Aの変位を拘束する為に用いられうる。又、ベローズ70Aは、縮径部77A側の端にフランジ91Aを有し、フランジ91A若しくは縮径部77Aと、排気ポート30A若しくは処理炉4のフレームとの間には、保持具92Aが架け渡されうる。保持具92Aは、ベローズ70A内が真空になった時にその両端の間に生じる引っ張り荷重を負担するものであり、高分子樹脂やゴム、圧縮バネ等の制振部材若しくは後述の制振合金で構成される制振性の締結具である。
【0075】
排気ボックス40Aは、排気ボックス40A内で上下左右に掛渡る様設けられたフレーム79Aと、フレーム79Aに取付けられ、その外側の一部又は全部を覆うケーシング78Aとを有する。ケーシング78Aは、ブースタポンプ38A及び処理炉4Aのケーシングと略面一となる側壁パネルを含む。フレーム79Aは、排気ボックス40Aに収納される様々なコンポーネントが取付けられ、特に排気管34A及び分岐排気管68Aを固定する為に、排気管34Aに向って突出して設けられた複数の梁を含みうる。
【0076】
排気管34A及び分岐排気管68Aは、後述する取付け金具81Aを介してフレーム79Aと接続され、フレーム79Aに支持される。尚、排気管34Aは、主に分岐排気管68Aとの2箇所の分岐部分周辺で、取付け金具81Aを介してフレーム79Aに固定される。又、分岐排気管68Aは、主に排気管34Aから上方への延出部分、第2のAPCバルブ73Aから下方への延出部分で、取付け金具81Aを介してフレーム79Aの梁に固定される。即ち、排気管34Aとフレーム79Aの接続部及び分岐排気管68Aとフレーム79Aの接続部は、それぞれベローズ74A及び第1のゲートバルブ69Aよりも処理室21A側で、且つ分割された各区間毎に複数箇所設けられている。
【0077】
尚、排気ボックス40Aとブースタポンプ38A、排気ボックス40Aと処理炉4A、及び処理炉4Aと搬送室5Aとは、ゴムや樹脂等の制振部材で形成された制振性の締結具90Aにより連結されてもよい。又ブースタポンプ38Aは床の上にゴムや樹脂等の制振部材を介して設置されうる。又、排気管34A及び分岐排気管68Aは、内部に於ける副生成物の蓄積を防止する為、高温に維持されることが望ましい場合があり、電熱線が装着され、保温カバーで覆われうる。
【0078】
図12を参照して、排気管34Aとフレーム79Aとの接続部の詳細について説明する。尚、図12中では、排気管34Aを例示しているが、分岐排気管68Aについても排気管34Aと同様にフレーム79Aに接続される。
【0079】
排気管34の外周面の所定位置には、半径方向に延出する取付け板82Aが形成されている。取付け板82Aには、その延伸方向(上下方向)に長い長孔83Aが例えば2つ形成されている。又、フレーム79Aの先端には、断面L字形状の取付け金具81Aが設けられ、取付け板82Aと平行でネジ孔が設けられた取付け面84Aが形成されている。
【0080】
取付け板82Aと取付け面84Aとの間に、制振部としての1枚以上の制振板87Aが設けられている。制振板87Aは、長孔83Aと対応する数と大きさを有し、下端が解放された長孔88Aを有する金属製の板材である。排気管34Aをフレーム79Aに接続する際には、取付け面84Aのネジ孔にボルト86Aを緩く螺合させた状態で、制振板87Aの長孔88Aをボルト86Aに被せた後、排気管34を適切な高さに保持しながらボルト86Aを締め付ける。これにより、制振板87Aは取付け板82Aと一体に取付け面84Aにネジ止めされる。
【0081】
制振板87Aは、フレーム79Aと排気管34Aとを接続した際に、取付け面84A(取付け金具81A)と取付け板82Aとの間に挾まれて設けられる。従って、制振板87Aは、排気管34の重量の全部又は一部を制振板87Aの面と平行な方向のせん断荷重として支持する。つまりせん断荷重は制振板87Aの厚み方向と垂直である。排気管34の重量の残りの一部はボルト86Aによって支持されうるがそれはわずかであり、制振板87Aが実質的に全荷重を支えている。
【0082】
制振板87Aの制振性は、対数減衰率δや固有減衰容量Ψ、共振の鋭さQ、損失係数η等によって表現でき、それぞれ以下の様に定義される:
Ψ=ΔW/W,
Q=ω0 /(ω2 1 )
η=f1 /f2
ここで、Wは振動に係る力学的エネルギー、ΔWは1周期あたりの損失エネルギーである。又ω0 、ω1 、ω2 はそれぞれ共振ピークでの共振周波数、共振ピークの左側に於いて振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数、共振ピークの右側に於いて振動エネルギーが半値となる周波数である。又、f1 とf2 はそれぞれ、応力・歪み線図で表されるヒステリシスループの最大変位に於ける力と零変位に於ける力である。対数減衰率はδ、振幅が減衰する場合、隣り合う振幅の比で定義される。対数減衰率の小さい場合(δ<0.01)には、δ≒2Ψ≒πη≒2π/Q の関係が成り立つ。対数減衰率は通常、振幅や周波数に依存するが、本実施例の制振板87Aの最大の対数減衰率は、半導体製造装置用の素材として一般的なSUS304ステンレスの対数減衰率(約0.02)よりも大きく、好ましくは減衰させるべき振幅や周波数の振動に対して0.1以上の対数減衰率を有する。制振板87Aは、振動の共振点を周波数軸上で分散させ、力学的な振動を減衰させる特性を有する。
【0083】
尚、制振板87Aの材質としては、例えば複合型、強磁性型、転移型、双晶型の制振合金が使用可能である。鋳鉄やアルミニウム-亜鉛合金等の複合型の制振合金は、二相混合組織の相境界を覆う粘弾性体により振動を熱に変換し、吸収緩和する性質を有している。
【0084】
ニッケルやクロム綱等の磁歪を示す合金に見られる強磁性型の制振合金は、各磁区内で結晶がランダムに自発磁化の方向にひずんでおり、外力の付与により応力を緩和する方向に磁区が回転して材料の弾性限内でひずみを生じ、外力の除荷により収縮する性質を有している。振動が生じた際には、外力の付与を除荷の繰返しにより制振合金が伸縮することで、ヒステリシスループを生じて振動を熱へと変換し、振動を減衰することができる。又、強磁性型の制振合金の場合、熱処理により結晶粒を粗大化させ、磁区壁の移動を容易とすることでも振動減衰の効果を高めることができる。
【0085】
マグネシウム合金等の転移型の制振合金は、合金中の転移と不純物原子との相互作用により振動を減衰する性質を有している。不純物原子によりピン止めされた状態の転移に外力が付与されることで合金中の転移が張出し移動し、外力が除荷されると転移は元の位置に移動する。振動が生じた際には、外力の付与と除荷の繰返しによる結晶中の転移が移動することで、ヒステリシスループを生じて振動を熱へと変換し、振動を減衰することができる。
【0086】
双晶型の制振合金は、熱処理によるマルテンサイトを緩和する為に生じるすべり及び双晶変形のうち、双晶に起因して振動を減衰させる性質を有している。又、双晶型の制振合金は、双晶銅-マンガン合金等の緩和型と、銅-アルミニウム-ニッケル合金等のヒステリシス型の2種類に更に分類することができる。緩和型の場合、マルテンサイト中の双晶界が複合型の相境界と類似の作用により、双晶界面で振動を熱に変換し、吸収減衰する性質を有している。又、ヒステリシス型は、転移型に類似した機構で双晶界面が外力により非可逆的に移動することで、ヒステリシスループを生じて振動を熱へと変換し、振動を減衰する性質を有している。
【0087】
図13(A)は、フレーム79Aと排気管34Aとの接続部に制振板87Aを設けなかった場合の振動と周波数の関係を示すグラフであり、図13(B)はフレーム79Aと排気管34Aとの接続部に、鉄アルミ合金製の制振板87Aを設けた場合の振動と周波数との関係を示すグラフである。それぞれのグラフに於いて、上位8個のピークに長方形のマーカーが付加されている。
【0088】
図13(A)に示される様に、制振板87Aを設けない場合、振動の共振点89Aが周波数軸上の特定の狭い範囲に集中し、共振が生じて振幅が増大する虞れがある。一方で、図13(B)に示される様に、振動板87Aを設けた場合、振動の共振点89Aが周波数軸上で分散されるので、振幅を減少させることができる。
【0089】
上述の様に、本実施例では、フレーム79Aに排気管34Aを取付ける際に、前記排気管34Aの取付け板82Aと、フレーム79Aの取付け面84Aとの間に制振部としての制振板87Aを設けている。従って、ブースタポンプ38Aから排気管34Aに伝達された振動は、フレーム79Aとの接続部へと到達した際に制振板87Aにより減衰されるので、振動がブースタポンプ38Aから排気管34Aを介して処理炉4Aへと伝達される過程で、振動を充分に減衰させることができる。
【0090】
又、排気管34Aとブースタポンプ38Aとの間にベローズ74Aが設けられ、且つベローズ74Aのフランジ部75A間が固定されない様になっている。ベローズ74Aがブースタポンプ38Aに対する排気管34Aの変位を吸収可能であるので、ブースタポンプ38Aから排気管34Aに伝達される大振幅の振動を抑制することができる。
【0091】
又、ブースタポンプ38Aと排気ボックス40Aとが制振性の締結具90Aによって接続されているので、ブースタポンプ38Aから排気ボックス40Aへと伝達される振動を抑制することができる。
【0092】
又、制振板87Aは耐熱金属製であるので、制振板を劣化させることなく処理炉4Aからの排気温度を上昇させることができる。或は、排気管34Aに対する加熱温度を上昇させることができる。
【0093】
更に、制振板87Aは、下端が解放された長孔88Aを有しており、懸架器具を用いることなく垂直面に対して直接取付けることができる。従って、ゴムや樹脂では耐えられない大きなせん断荷重が作用する場合であっても、制振板87Aを適用することができる。
【0094】
尚、本実施例では、2つの処理モジュール2A、2Bを有する基板処理装置1について説明したが、処理モジュールは1つであってもよいし、3つであってもよい。図8は、3つの処理モジュール2A、2B、2Cを有する変形例1の基板処理装置101を示している。尚、図示はしないが、処理モジュール2Cに対しても処理モジュール2A、2Bと同様のユーティリティ系が設けられている。
【0095】
処理モジュール2Cは、移載室11に対して処理モジュール2Bと対称な位置に設けられている。処理モジュール2Cと移載室11とは、ゲートバルブ15Cを介して連通されている。又、処理モジュール2Cと収納室13とはメンテナンス口51Cを介して連通され、メンテナンス口51Cはメンテナンス扉52Cにより気密に閉塞可能となっている。基板処理装置101では、収納室13が処理モジュール2Cのメンテナンスエリアとなる様に構成される。
【0096】
又、図9は1つの処理モジュール2を有する変形例2の基板処理装置を示している。この基板処理装置の場合、搬送室5の背面近傍に第1のユーティリティ系としての供給ボックス24が設けられ、第2のユーティリティ系としての排気ボックス40及び電装ボックス(不図示)がメンテナンスエリアを介在して供給ボックス24に対向して設けられる。尚、供給ボックス24と排気ボックス40のメンテナンス口は、互いに向かい合う様に形成されている。
【0097】
供給ボックス24の搬送室5に隣接する側と反対側に隣接してブースタポンプ38が配置される。排気ボックス40とブースタポンプ38とは空中に水平に配置された直線状の排気管34により接続されている。この基板処理装置の場合、ブースタポンプ38の吸気口はマニホールドの排気ポートとは対向していないが、高さは同一となる様構成される。
【0098】
図14は3つの処理モジュールを有する変形例3に係る基板処理装置131を示している。3つの処理モジュール2A、2B、2Cは、移載室11の背面側で横方向に連続的に並んで配置される。処理モジュール2Aと2B、及び対応するユーティリティ系54Aと54Bは、面対称に配置されている。処理モジュール2Bと2C、及び対応するユーティリティ系54Bと54Cは、メンテナンスエリアに面しない側面で互いに隣接する様にして面対称に配置される。移載室11は、3つの処理モジュール2A、2B、2Cの横幅の和に対応する横幅を有する。
【0099】
基板処理装置131は、図14に示した配置(配置Aと呼ぶ)と鏡像関係にある配置(配置Bと呼ぶ)でも構成することができ、配置Aと配置Bの装置を交互に横方向に配列にすることで、配置Aの基板処理装置131の処理モジュール2C後方のメンテナンスエリアと、配置Bの基板処理装置131の処理モジュール2C後方のメンテナンスエリアとが、連続した1つの空間を形成し、その空間は、ユーティリティ系54Aと54Bの間のメンテナンスエリアと同様に、メンテナンス扉51Cを介して処理モジュール2Cの取外しや取付を行うのに十分な幅を有する。この様にクラスター型の基板処理装置131は、配置Aと配置Bとで対をなした時、1対単位で装置側面からのアクセスが不要な構成が実現され、フットプリント当たりの生産性が改善されうる。
【0100】
図15及び図16は3つの処理モジュールを有する変形例4の基板処理装置141を示している。3つの処理モジュール2A、2B及び142は、実質的に等しい横幅若しくは1m以下の横幅を有し、移載室11の背面側で横方向に並んで配置される。処理モジュール142は、1枚ずつ収容したウェーハ8をラジカルで処理する枚葉チャンバを収納する筐体144と、枚葉チャンバと連通しウェーハ8を枚葉チャンバに搬入出する為の空間を形成する下部チャンバ145とを有する。サセプタ146は、ウェーハ8を載せながら枚葉チャンバと下部チャンバ145との間を上下に運動する。
【0101】
処理モジュール142は、ウェーハ8を例えば酸素、窒素、水素或いは希ガス等のラジカルに曝露し、等方性酸化等の改質又はトリートメント処理を行うことができる。例えば、ウェーハ8上に処理モジュール2Aで酸化膜形成した後、処理モジュール2Bで窒化膜形成を行う連続処理に於いて、窒化膜形成の前に処理モジュール142による短時間の処理を介在させて、膜の界面の性質を改善することができる。この時、ウェーハ8は移載室11を出ることなく、処理モジュール2A、142、2Bの順に搬送されうる。尚、移載室11内で搬送に用いられない空間に、ウェーハ8を一時的に保持するカセットや冷却ステーションを設置しても良い。基板処理装置141は、高い搬送効率によって高いスループットを実現することができる。
【0102】
ユーティリティ系143は、処理モジュール142の付帯設備であり、縦長の箱状の外形を有し、筐体144の背面に隣接して配置される。ユーティリティ系143には、枚葉チャンバにガスを供給する為のバルブ等を格納する供給ボックス147と、枚葉チャンバ内でプラズマを発生させる高周波電力を供給する高周波電源148と、枚葉チャンバ及び下部チャンバ145を真空排気する為の排気管等を含む排気系149とが、収容される。ユーティリティ系143は、底にスイベルキャスター等の車輪を有し、前後方向に移動可能に構成されうる。
【0103】
枚葉チャンバのクラスターを有する一般的な装置は、各枚葉チャンバをメンテナンス可能にする為に、枚葉チャンバ全体を角に設けた垂直ピボットで回転可能に支える構造がしばしば用いられる。単独で設置された基板処理装置141の処理モジュール142は、背面及び1つの側面が十分な広さの空間に面しており、ピボットは省略可能である。又、基板処理装置151も、図15に示した配置(配置Aと呼ぶ)と、それと鏡像関係にある配置(配置Bと呼ぶ)の装置を交互に横方向に配列することができる。
【0104】
図17及び図18は3つの処理モジュールを有する変形例5のクラスター型の基板処理装置151を示している。3つの処理モジュール2A、2B及び152は、実質的に等しい横幅若しくは1m以下の横幅を有し、移載室11の背面側で横方向に並んで配置される。処理モジュール152は、複数のウェーハ8を電磁波でアニールするキャビティを収納する筐体154を有する。
【0105】
ユーティリティ系155は、処理モジュール152の付帯設備であり、筐体154の背面及び底面に隣接して配置され、マイクロ波発生器155、供給ボックス157と、電源装置158と、排気系159とを収納する。マイクロ波発生器155は、2.45から27GHz迄の間のマイクロ波を発生させキャビティ内に放射する。供給ボックス157は、枚葉チャンバに処理ガスを供給する為のバルブ等を格納する。電源装置158は、マイクロ波発生器155に必要な電力を供給する。排気系159は、キャビティ内を排気する為の排気管や排気弁を含む。
【0106】
処理モジュール152は、キャビティ内でウェーハ8を1又は2つの回転するボート156に保持した状態で、キャビティ内にマイクロ波の定在波を生じさせる。マイクロ波はウェーハ8に形成された特定の固相膜又は不純物を特異的に且つ急速に加熱するので、それ以外の膜やウェーハ8が高温になりすぎるのを避けつつ、アニール等の所定の熱処理を行うことができる。例えば、ウェーハ8上に処理モジュール2Aで膜Aの形成した後、処理モジュール2Bで膜Bの形成を行う連続処理に於いて、膜Bの形成の前に処理モジュール152によるアニールを介在させて、ウェーハ8に既に形成された膜の性質を修正することができ、又はこれから形成する膜の品質が改善されうる。
【0107】
処理モジュール152は、ユーティリティ系143の上に搭載されうる。ユーティリティ系143は、底にスイベルキャスター等の車輪を有し、処理モジュール152を搭載したまま前後方向に移動可能に構成されうる。作業員は、メンテナンス口50から移載室11に入り、移載室11とゲートバルブ15Cとを分離及び連結させることができる。
【0108】
以上、本開示の実施例を具体的に説明した。然し乍ら、本開示は上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0109】
例えば、上述の実施例では、原料ガスとしてシリコン含有ガスを用いる例について説明したが、本開示は、この様な態様に限定されない。シリコン含有ガスとしては、MCS(SiH3 Cl:モノクロロシラン)ガス、DCS(ジクロロシラン)ガス、TCS(SiHCl3 :トリクロロシラン)ガス、HCD(Si2 Cl6 :ヘキサクロロジシラン)ガス、等の無機系ハロシラン原料ガスや、3DMAS(Si[N(CH3 )2 ]3H:トリスジメチルアミノシラン)ガス、BTBAS(SiH2 [NH(C4 H9 )]2 :ビスターシャリブチルアミノシラン)ガス等のハロゲン基非含有のアミノ系(アミン系)シラン原料ガスや、MS(SiH4 :モノシラン)ガス、DS(Si2 H6 :ジシラン)ガス等のハロゲン基非含有の無機系シラン原料ガスを用いることができる。
【0110】
又、反応ガスとしては、酸素又はオゾンガス等の酸素含有ガス(酸化ガス)、アンモニア(NH3 )ガス等の窒素(N)含有ガス(窒化ガス)、プロピレン(C3 H6 )ガス等の炭素(C)含有ガス、三塩化硼素(BCl3 )ガス等の硼素(B)含有ガス等から選ばれる1つ以上のガスを用い、SiN膜、SiON膜、SiOCN膜、SiOC膜、SiCN膜、SiBN膜、SiBCN膜等を形成することができる。これらの成膜を行う場合に於いても、上述の実施例と同様な処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施例と同様の効果が得られる。
【0111】
又例えば、本開示は、ウェーハ8上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む膜、即ち、金属系膜を形成する場合に於いても、好適に適用可能である。
【0112】
上述の実施例では、ウェーハ8上に膜を堆積させる例について説明したが、本開示は、この様な態様に限定されない。例えば、ウェーハ8やウェーハ8上に形成された膜等に対して、酸化処理、拡散処理、アニール処理、エッチング処理等の処理を行う場合にも、好適に適用可能である。
【0113】
又、上述の実施例や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。この時の処理条件は、例えば上述の実施例や変形例と同様な処理条件とすることができる。
【0114】
(付記)
又、本開示は以下の実施の態様を含む。
【0115】
(付記1)基板処理用の第1の処理容器と、正面側に設けられた基板の搬入口とを有する第1の処理モジュールと、該第1の処理モジュールの側面側に近接して配置され、基板処理用の第2の処理容器を有する第2の処理モジュールと、前記第1の処理容器内に処理ガスを供給する第1の供給系を含み、前記第1の処理モジュールの背面に近接して配置される第1のユーティリティ系と、前記第2の処理容器内に処理ガスを供給する第2の供給系を含み、前記第2の処理モジュールの背面に近接して配置される第2のユーティリティ系と、前記第1の処理モジュールの後方に配置され、前記第1の処理容器内を排気する第1の真空排気装置と、前記第2の処理モジュールの後方に配置され、前記第2の処理容器内を排気する第2の真空排気装置とを備え、前記第1の真空排気装置と前記第2の真空排気装置のそれぞれの外側の側面は、前記第1のユーティリティ系と前記第2のユーティリティ系のそれぞれの外側の側面よりも外側に突出しない様構成された基板処理装置。
【0116】
(付記2)第1の排気ポートは、前記第1の処理容器の管軸と直交する方向に排気が取出される様に形成される付記1に記載の基板処理装置。
【符号の説明】
【0117】
1 基板処理装置
2 処理モジュール
4 処理炉
5 搬送室
8 ウェーハ
18 反応管
24 供給ボックス
30 排気ポート
34 排気管
36 コンダクタンス可変バルブ
38 ブースタポンプ
40 排気ボックス
51 メンテナンス口
54 ユーティリティ系
55 架台
56 吸気口
68 分岐排気管
69 第1のゲートバルブ
71 第2のゲートバルブ
72 第1のAPCバルブ
73 第2のAPCバルブ
74 ベローズ
78 側壁パネル
79 フレーム
82 取付け板
85 取付け部
87 制振板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18