(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025926
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】金属樹脂複合体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
H01L23/50 H
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131388
(22)【出願日】2021-08-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青柳 慎
(72)【発明者】
【氏名】若松 基貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 良聡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康則
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067AA04
5F067BB04
5F067DC13
5F067DE02
(57)【要約】
【課題】樹脂部材による内部スペースの密閉性を向上させることができる金属樹脂複合体を提供する。
【解決手段】金属板2と、前記金属板2に固着した樹脂部材3を備え、前記樹脂部材3を含む封止部材により内部スペースが区画される金属樹脂複合体1であって、前記樹脂部材3が、前記金属板2上で内部スペースの周囲を取り囲んで延びる枠状を有し、枠状の当該樹脂部材3の周方向に一箇所又は二箇所のウェルドライン7が存在し、前記金属板2が前記樹脂部材3で覆われた樹脂被覆面に、該樹脂被覆面の平面視にて一方向及びその直交方向の各方向で交互に並ぶ矩形凹部5a及び矩形凸部5bにより形成される粗化凹凸面を有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、前記金属板に固着した樹脂部材を備え、前記樹脂部材を含む封止部材により内部スペースが区画される金属樹脂複合体であって、
前記樹脂部材が、前記金属板上で内部スペースの周囲を取り囲んで延びる枠状を有し、枠状の当該樹脂部材の周方向に一箇所又は二箇所のウェルドラインが存在し、
前記金属板が前記樹脂部材で覆われた樹脂被覆面に、該樹脂被覆面の平面視にて一方向及びその直交方向の各方向で交互に並ぶ矩形凹部及び矩形凸部により形成される粗化凹凸面を有する金属樹脂複合体。
【請求項2】
前記粗化凹凸面の表面粗さRaが0.2μm以上である請求項1に記載の金属樹脂複合体。
【請求項3】
前記矩形凹部及び矩形凸部がそれぞれ、前記樹脂被覆面の平面視で長方形状である請求項1又は2に記載の金属樹脂複合体。
【請求項4】
前記矩形凸部が、前記樹脂部材側に凸状の曲面を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の金属樹脂複合体。
【請求項5】
金属板と、前記金属板に固着した樹脂部材を備え、前記樹脂部材を含む封止部材により内部スペースが区画される金属樹脂複合体であって、
前記樹脂部材が、前記金属板上で内部スペースの周囲を取り囲んで延びる枠状を有し、枠状の当該樹脂部材の周方向に一箇所又は二箇所のウェルドラインが存在し、
前記金属板が前記樹脂部材で覆われた樹脂被覆面に、粗化めっき層を含む金属樹脂複合体。
【請求項6】
前記粗化めっき層がニッケルを含む請求項5に記載の金属樹脂複合体。
【請求項7】
枠状の前記樹脂部材が、周方向の一部で前記金属板を板厚方向の両側から挟み込んで設けられており、
前記ウェルドラインが、枠状の前記樹脂部材の周方向で、当該樹脂部材の内側に前記金属板の存在しない箇所に形成された請求項1~6のいずれか一項に記載の金属樹脂複合体。
【請求項8】
前記樹脂部材のウェルドラインが形成された箇所に、切断跡が存在する請求項1~7のいずれか一項に記載の金属樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、金属板と、金属板に固着した樹脂部材とを備える金属樹脂複合体に関する技術を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
インサート成形等により製造される金属樹脂複合体では、金属板と樹脂部材との密着性を高めることが求められる。
【0003】
これに関連して、たとえば特許文献1には、「平板状の金属に対し、第1の所定の曲率を有し、格子状の複数の第1の凸部を備える第1のパンチによって第1のプレスを行う工程と、前記第1のプレスと交差する方向に、前記第1のパンチによって第2のプレスを行う工程と、第2の所定の曲率を有し、格子状の複数の第2の凸部を備える第2のパンチによって第3のプレスを行う工程と、前記第3のプレスと交差する方向に、前記第2のパンチによって第4のプレスを行う工程と、を有し、前記第3のプレス及び前記第4のプレスは、前記第1のプレス及び前記第2のプレスがなされていない箇所に対して行われる、表面に凹凸を有する金属部材の製造方法」及び、「第1の凹部と、前記第1の凹部とは異なる位置に配置され、前記第1の凹部とは異なる形状の第2の凹部と、が格子状に配列した凹凸面を有するヒートスプレッダ」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属樹脂複合体には、金属板に固着した樹脂部材にさらに他の樹脂部材を設けること等により、当該樹脂部材を含む封止部材で内部スペースが区画されるものがある。たとえば、金属板をリードフレームとし、半導体デバイスに用いられる金属樹脂複合体では、その内部スペースに半導体チップが封入される。
【0006】
樹脂部材等による内部スペースの密閉性が十分に確保されていない場合、外部から内部スペースに水分を含んだ空気が浸透し、発熱している半導体チップの水分との接触による動作不良等の不具合が発生し得る。特に、半導体デバイスに用いられる金属樹脂複合体においては内部スペースに封入された半導体チップのオンオフだけでなく、外部環境の変化により繰り返しの温度変化にさらされる。特許文献1に記載された技術は、内部スペースの密閉性の更なる向上の観点から改善の余地がある。
【0007】
この明細書では、樹脂部材による内部スペースの密閉性を向上させることができる金属樹脂複合体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この明細書で開示する一の金属樹脂複合体は、金属板と、前記金属板に固着した樹脂部材を備え、前記樹脂部材を含む封止部材により内部スペースが区画されるものであって、前記樹脂部材が、前記金属板上で内部スペースの周囲を取り囲んで延びる枠状を有し、枠状の当該樹脂部材の周方向に一箇所又は二箇所のウェルドラインが存在し、前記金属板が前記樹脂部材で覆われた樹脂被覆面に、該樹脂被覆面の平面視にて一方向及びその直交方向の各方向で交互に並ぶ矩形凹部及び矩形凸部により形成される粗化凹凸面を有するものである。
【0009】
この明細書で開示する他の金属樹脂複合体は、金属板と、前記金属板に固着した樹脂部材を備え、前記樹脂部材を含む封止部材により内部スペースが区画されるものであって、前記樹脂部材が、前記金属板上で内部スペースの周囲を取り囲んで延びる枠状を有し、枠状の当該樹脂部材の周方向に一箇所又は二箇所のウェルドラインが存在し、前記金属板が前記樹脂部材で覆われた樹脂被覆面に、粗化めっき層を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
上述した金属樹脂複合体によれば、樹脂部材による内部スペースの密閉性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一の実施形態の金属樹脂複合体を示す平面図である。
【
図2】
図1の金属樹脂複合体が備える金属板を示す平面図である。
【
図3】
図1の金属樹脂複合体を、半導体チップを搭載した状態で示す平面図である。
【
図5】
図2の金属板の凹凸面の一部を示す斜視図である。
【
図6】
図2の金属板の凹凸面及び、その変形例の平面図である。
【
図7】金属板の樹脂被覆面上への凹凸面の形成例を示す平面図である。
【
図8】
図6(a)のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図9】他の実施形態の金属樹脂複合体が備える金属板を示す平面図である。
【
図11】さらに他の実施形態の金属樹脂複合体を示す平面図である。
【
図12】実施例で金属樹脂複合体を用いて作製した供試体を示す断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、上述した金属樹脂複合体の実施の形態について詳細に説明する。
図1に例示する金属樹脂複合体1は、たとえば長方形状等の平面外輪郭形状を有する金属板2と、金属板2に固着した樹脂部材3とを備える。
【0013】
図示の金属板2は、
図1、2に示すように、中央に板厚方向に貫通するほぼ長方形状の貫通孔4が形成されている。金属樹脂複合体1では、金属板2の貫通孔4の周囲に、一例として平面視の内外輪郭形状がともに長方形状等である枠状の樹脂部材3が設けられており、その内側に、たとえば
図3に示すような半導体チップ51が配置される。この場合、金属板2は、半導体チップ51を支持して外部配線と接続するリードフレームとして機能し、金属樹脂複合体1は、半導体デバイスに用いられる。金属板2は、たとえば、銅、アルミニウムもしくは鉄又はそれらの合金等で構成される。
【0014】
枠状の樹脂部材3の内側の空間は、当該樹脂部材3及び図示しない他の樹脂部材等の封止部材で取り囲まれ、半導体チップ51が配置されて封入される内部スペースが区画される。この金属樹脂複合体1は、樹脂部材3を含む封止部材により、貫通孔4が一部を形成する内部スペースが区画されるものであり、樹脂部材3は、その内部スペースを取り囲んで延びるように設けられている。
【0015】
なお、金属板2に設ける貫通孔4は、図示のような長方形状に限らず、そこに配置される半導体チップ51の形状、構成等の条件に応じて、正方形もしくはその他の多角形状又は円形状等といった様々な形状とすることができる。また、金属板2の平面外輪郭形状も、図示のような長方形状以外の形状に変更され得る。枠状の樹脂部材3の平面視の内外輪郭形状についても、長方形状以外の形状に適宜変更することができる。
【0016】
ここで、金属樹脂複合体1にその後に区画される内部スペースは、密閉性を十分に確保することが求められることがある。たとえば、内部スペースに半導体チップ51が封入される場合、内部スペースが十分に密閉されていなければ、外部から内部スペースに水分を含む空気が浸透し、これが半導体チップ51の動作不良を引き起こすおそれがある。
【0017】
内部スペースの密閉性を高めるため、この実施形態では、金属板2の、樹脂部材3で覆われる樹脂被覆面に、
図4に拡大図で例示するような凹凸面5を設ける。この凹凸面5は、
図5に斜視図で示すように、樹脂被覆面の平面視にて、一方向及び、当該一方向に直交する方向である直交方向の各方向で交互に並んで位置する矩形凹部5a及び矩形凸部5bによって形成される。凹凸面5は平面視で、いわゆる市松模様を呈する。
【0018】
このように樹脂被覆面に凹凸面5を設けた金属板2に対して、一体成形等により当該樹脂被覆面上に樹脂部材3を設けると、凹凸面5によって外部から内部スペースへの空気の通り道が遮断される。それにより、樹脂部材3と樹脂被覆面との間での水分の浸透が有効に抑制され、その結果として、内部スペースの密閉性を大きく向上させることができる。
【0019】
凹凸面5の並ぶ方向に関し、この例では、「一方向」は、長方形状の金属板2の長辺に沿う方向(
図2、4では左右方向)とし、「直交方向」は、金属板2の短辺に沿う方向(
図2、4では上下方向)としている。但し、「一方向」及び「直交方向」をそれぞれ長辺又は短辺に対して傾斜する方向として、矩形凹部5a及び矩形凸部5bを長辺ないし短辺に対して斜め向きで並べて配置することで、凹凸面5を形成することもできる。
【0020】
凹凸面5を形成する矩形凹部5a及び矩形凸部5bの平面形状は、図示のような長方形状とすることができる他、正方形状としてもよい。平面視にて、矩形凹部5aと矩形凸部5bの寸法ないし形状を互いに相違させることもでき、また複数個の矩形凹部5aどうしの形状ないし寸法、及び/又は、複数個の矩形凸部5bの形状ないし寸法を相互に異なるものとしてもよい。
図5に示すところでは、平面視の形状及び寸法がいずれもほぼ同一である矩形凹部5a及び矩形凸部5bにより、凹凸面5を形成している。
【0021】
凹凸面5の矩形凹部5a及び矩形凸部5bは、一方向及び直交方向のそれぞれについて並べて設けるに当り、その並ぶ方向と直交する方向に少しでもずれて位置していれば、各方向で交互に並んでいるものとみなすことができる。つまり、互いに隣接する矩形凹部5aどうし及び、互いに隣接する矩形凸部5bどうしの、一方向及び直交方向の各方向の形成位置が一致していなければ、それらの矩形凹部5a及び矩形凸部5bは各方向で交互に並んでいるものとする。たとえば、
図6(a)の凹凸面5では、矩形凹部5a及び矩形凸部5bを、一方向(
図6の左右方向)及び直交方向(
図6の上下方向)のそれぞれで、その並ぶ方向と直交する方向に互いに重複せずに交互に並べて設けている。一方、
図6(b)の凹凸面15では、矩形凹部15a及び矩形凸部15bはそれぞれ、一方向に並ぶ方向で見て、それと直交する方向に部分的に重複して、交互に並んで設けられている。但し、内部スペースの密閉性向上という観点からは
図6(a)のように、矩形凹部5a及び矩形凸部5bを、一方向(
図6の左右方向)及び直交方向(
図6の上下方向)のそれぞれで、その並ぶ方向と直交する方向に互いに重複せずに交互に並べて設けることが好ましい。これにより、外部から内部スペースへの空気の侵入経路において、比較的平坦な矩形凸部5bが連なることがなくなるためである。
【0022】
矩形凹部5a及び矩形凸部5bの平面形状を長方形状とする場合、矩形凹部5a及び矩形凸部5bのそれぞれの長辺の長さLaは0.17mm~0.25mm、短辺の長さLbは0.04mm~0.10mmとすることが好ましい。長辺や短辺の長さが長すぎると凹凸の数が減り、内部スペースの密閉性低下となるおそれがあり、短すぎるとプレス時のパンチ先端の強度不足による破損リスクの増大と、矩形凹部5aに入り込む樹脂が少なくなり樹脂強度が下がり、密閉性低下となることが懸念される。
また、矩形凹部5aの長辺方向のピッチPaは0.38mm~0.46mm、短辺方向のピッチPbは0.11mm~0.17mmとすることが好ましい。ピッチPa、Pbが大きすぎると隣接する矩形凹部5aによって挟まれる矩形凸部5bの肉の盛り上がりが足りなくなり、平面が多く残り密閉性低下となる可能性がある。一方、ピッチPa、Pbが小さすぎると隣の矩形凹部5aを押しつぶして変形させ、そこの樹脂強度が低下し密閉性低下となる場合がある。ピッチPa、Pbは、一方向ないし直交方向に矩形凸部5bを隔てて隣り合う矩形凹部5aの、一方向ないし直交方向の中央点間の距離を意味する。
【0023】
樹脂被覆面に、矩形凹部5a及び矩形凸部5bで形成される凹凸面5を形成するには、たとえば、樹脂被覆面にプレス加工を施すことにより行うことができる。このプレス加工では、図示は省略するが、先端面に、矩形凹部5aと対応する形状の突起部を複数個並べて設けたパンチを用いることができる。
【0024】
比較的小さいピッチPa及び/又はPbの凹凸面5を形成する場合、第一プレス工程及び第二プレス工程を含む複数段階のプレス工程を行うことが好ましい。具体的には、はじめに、
図7(a)に示すように、樹脂被覆面に、先端面に複数個の突起部があるパンチを押し当てて第一プレス工程を行う。これにより、樹脂被覆面上に第一凹部群R1が形成される。次いで、
図7(b)に示すように、樹脂被覆面上にて一方向及び直交方向等の所定の方向にずらした位置に、先端面に複数個の突起部があるパンチを押し当てて第二プレス工程を行う。第二プレス工程で用いるパンチは、第一プレス工程のパンチと同一とすることもできるが、異なる形状のものとしてもよい。第二プレス工程では、樹脂被覆面上に、第二凹部群R2が第一凹部群R1と少なくとも一部で重複し、第一凹部群R1の矩形凹部5aの相互間に、第二凹部群R2の矩形凹部5aが形成される。矩形凸部5bは、隣り合う矩形凹部5aの間に設けられる。その結果、樹脂被覆面上に、矩形凹部5a及び矩形凸部5bを密集させて形成することができる。
【0025】
凹凸面5を設ける場合、矩形凸部5bの、最も樹脂部材3側(金属板2の板厚方向の外側)に突出する部分の頂面5cは、平坦面とすることも可能であるが、
図8に板厚方向に沿う断面図で示すように、樹脂部材3側に凸状の曲面とすることが好ましい。それにより、樹脂の平面方向のせん断強度が向上し、繰り返しの温度変化にさらされることによる密閉性悪化を緩和する。また、外部から内部スペースへの空気の侵入経路において、平坦な矩形凸部5bが連なることがなくなることで、内部スペースの密閉性を向上することが出来る。このような樹脂部材3側に凸状の曲面を有する矩形凸部5bは、上述したように、先端面に複数個の突起部を設けたパンチを用いて凹凸面5を形成した場合に、矩形凹部5aに相当する窪みの形成に伴って当該矩形凹部5a間の肉が板厚方向の外側(
図8の上方側)に盛り上がることにより得られることがある。
ここで、矩形凹部5aの深さ(凹部深さ)は0.20mm以下が好ましく、0.10mm以下がより好ましい。凹部深さが大きすぎると板厚方向への延びが大きくなり後工程(成形)で影響が出るほど歪んでしまうおそれがある。凹部深さは、板厚方向で、当該矩形凹部5aの底面の最も深い位置から、その矩形凹部5aと隣り合う矩形凸部5bの頂面5cの最も高い位置までの距離を指す。矩形凹部5aを設ける場合、凹部深さは0.02mm~0.20mmが好ましく、0.04mm~0.10mmがより好ましい。
【0026】
内部スペースの密閉性を高めるため、樹脂被覆面に設けた凹凸面5は、エッチング又はめっき等により、表面粗さRaを粗くする粗化処理を施すことが望ましい。これにより、凹凸面5は粗化凹凸面になり、その粗化凹凸面での樹脂のアンカー効果と、そこに形成された矩形凹部5a及び矩形凸部5bとが相俟って、内部スペースの密閉性が大きく向上する。
【0027】
具体的には、粗化凹凸面の表面粗さRaは、0.2μm以上であることが好適である。この表面粗さRaは、JIS B0601:2001に準拠する算術平均粗さを意味する。粗化凹凸面の表面粗さRaは、当該粗化凹凸面を構成する矩形凸部5bの頂面5cの位置で測定した算術平均粗さとする。なお、粗化凹凸面の粗化面は、実体顕微鏡やSEM、レーザー顕微鏡により確認可能である。粗化条件が同じならば、粗化凹凸面の表面粗さと、凹凸面5が無い粗化面の表面粗さとは同等である。粗化処理が施されていない場合は光沢面になり、粗化処理を施すと非光沢面になるので、目視でも判別可能である場合がある。
【0028】
樹脂被覆面には、上述した凹凸面5を設けることに代えて又は加えて、
図9に示す実施形態のように、粗化めっき層6を設けることができる。樹脂被覆面に粗化めっき層6を設けることで、樹脂部材3が粗化めっき層6を介して樹脂被覆面に十分に密着するので、この場合、樹脂被覆面に凹凸面5を設けることは必ずしも必要ではない。但し、樹脂被覆面に凹凸面5を設け、その上にさらに粗化めっき層6を設けて粗化凹凸面としたときは、内部スペースの密閉性をより一層高めることが可能になる。粗化めっき層6の有無は、光学顕微鏡により確認することができる。
【0029】
樹脂被覆面に設ける粗化めっき層6のめっき厚みは、好ましくは2.0μm~6.0μmであり、より好ましくは3.0μm~5.0μmである。粗化めっき層6のめっき厚みが薄すぎる場合は、樹脂被覆面への樹脂部材3の密着が不十分になることが懸念される。一方、粗化めっき層6のめっき厚みが厚すぎる場合は、コストアップとなるおそれがある。
【0030】
粗化めっき層6は、銅又は銀等とすることも可能であるが、好ましくはニッケルめっきであり、ニッケルが含まれ得る。ニッケルを含む粗化めっき層6の場合、粗化形状、粗化度合いを制御しやすいという利点がある。また、粗化めっき層6には、ニッケル、銅及び銀からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがある。
【0031】
金属板2の樹脂被覆面に粗化めっき層6を形成するには、たとえば、図示は省略するが、金属板2の粗化めっき層6を形成しない表面をマスクで覆った状態で、粗化めっき層6のめっき金属を含むめっき液中にて、金属板2に対して電気めっきを施すことにより行うことができる。他の実施形態において、マスクを用いることなく金属板2全面に粗化めっき層6を形成してもよい。
【0032】
なお、樹脂被覆面の一部に凹凸面5及び/又は粗化めっき層6が存在しない箇所があってもよいが、凹凸面5及び/又は粗化めっき層6は、樹脂被覆面の全体に設けることが、樹脂部材3と金属板2との密着性を十分に確保するとの観点から好ましい。
【0033】
以上に述べたような粗化めっき層6又は粗化凹凸面を設けた金属板2に、枠状の樹脂部材3を設けるため、インサート成形を行うことができる。
【0034】
インサート成形では、金属板2を、その樹脂部材3の形状に応じたキャビティを有する射出成形金型内に配置し、射出成形金型のゲートから当該キャビティに樹脂材料を射出する。ゲートからキャビティに流入した樹脂材料は、枠状の樹脂部材3に対応する形状を有するキャビティを流れ、その途中で合流してキャビティに充填される。その後、キャビティで樹脂材料を冷却して固化させる。それにより、金属板2に樹脂部材3が固着した金属樹脂複合体1が得られる。
【0035】
ここで、成形後の樹脂部材3では、射出時にキャビティを流れる樹脂材料が合流した位置に、ウェルドライン7が形成される。図示の実施形態では、一例として、平面視の内外輪郭形状がともに長方形状である枠状の樹脂部材3の二つの長辺の中央位置に対応するキャビティの各位置に、二箇所のゲートを設けたことに起因して、樹脂材料が各ゲートからキャビティで二股に分かれて流れて合流した結果として、樹脂部材3の二つの短辺の中央位置に、二箇所のウェルドライン7が形成されている。あるいは、ゲートが一箇所である場合、枠状の樹脂部材3の周方向で、そのゲートから最も離れた位置に、一箇所のウェルドライン7が形成され得る。ウェルドライン7は、枠状の樹脂部材3を幅方向に横断する直線もしくは曲線等の線状に形成されることがあり、樹脂部材3の外面を目視あるいは光学顕微鏡で観察することにより確認可能である。
【0036】
上記のウェルドライン7は、枠状の樹脂部材3の周方向に一箇所又は二箇所であることが好ましい。金属板2に先述した粗化凹凸面又は粗化めっき層6を設けることに加えて、ウェルドライン7を二箇所以下とすることにより、内部スペースの密閉性が大きく高まるからである。言い換えれば、三箇所以上のウェルドライン7が存在すると、内部スペースの密閉性が低下し、そこから水分を含む空気が内部スペースに浸透しやすくなる可能性が高まる。
【0037】
なお、樹脂部材3の材料としては、特に限定されないが、たとえば、液晶ポリマー、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。
【0038】
ところで、図示の金属板2は、貫通孔4の外側に向けて延びる複数箇所の切欠き部8a~8cが設けられている。より詳細には、この例では、長方形状の金属板2の長手方向(
図1では左右方向)の外側のそれぞれに、貫通孔4につながって樹脂部材3の配置箇所を通って外側に向けて延びて拡幅する長方形状の切欠き部8a及び、それよりも大きな面積を有する多角形状の切欠き部8bと、金属板2の長手方向の中央位置で幅方向(
図1で上下方向)の外側のそれぞれに、貫通孔4につながって外側に向けて延びてやや細長い長方形状に拡幅する切欠き部8cとの、計六箇所の切欠き部8a~8cがある。各切欠き部8a~8cは、金属板2の板厚方向に貫通して形成されている。
【0039】
そして、樹脂部材3は、金属板2の表面Sf側のみならず、
図10に示すように金属板2の裏面Sb側の両面側で、各切欠き部8a~8cと貫通孔4との連結箇所である空所を通って貫通孔4の周囲に枠状に設けられている。それにより、枠状の樹脂部材3の周方向の一部では、当該樹脂部材3で金属板2が両側から挟み込まれているが、上記の空所がある残部では、当該樹脂部材3の内側に金属板2が存在しないことになる。
【0040】
このように枠状の樹脂部材3が、周方向の一部で金属板2を板厚方向の両側から挟み込んで設けられている場合、先に述べたウェルドライン7は、枠状の樹脂部材3の周方向で、当該樹脂部材3の内側に金属板2が存在しない箇所に形成されていることが好ましい。樹脂部材3の内側に金属板2が存在せず樹脂部材3が金属板2で支持されていない箇所に、ウェルドライン7が存在することにより、内部スペースの密閉性をさらに向上させることができる。樹脂部材3の内側に金属板2が存在する箇所にウェルドライン7が存在すると、樹脂部材3の当該ウェルドライン7が形成された箇所と金属板2との界面から、水分を含んだ空気が内部スペースに浸透するおそれがある。
【0041】
なお、金属板2は、表面Sf側に樹脂部材3よりも貫通孔4側に突出する内縁部2aを有し、その内縁部2aで、半導体チップ51とボンディングワイヤ52によって接続される。
【0042】
図11に、他の実施形態の金属樹脂複合体1を示す。
図11の金属樹脂複合体1では、枠状の樹脂部材3の周方向でウェルドライン7が形成された箇所に、その樹脂部材3の外側に突出する突出部9が設けられていることを除いて、
図1に示すものとほぼ同様の構成を有する。この突出部9は、金属板2の表面とほぼ平行な方向に樹脂部材3から突出している。図示は省略するが、突出部9は、樹脂部材3の内側(貫通孔側)に突出するように設けることもできる他、樹脂部材3上に板厚方向に突出させて設けてもよい。
【0043】
樹脂部材3に突出部9が設けられるキャビティを有する射出成形金型を用いて、樹脂部材3を成形すると、キャビティに射出された樹脂材料は、突出部9が形成される箇所で合流する際に側方へ流れが変更され、ウェルドの層が若干破壊される。その結果、樹脂部材3の強度が向上し、それに伴って内部スペースの密閉性も高まる。
【0044】
突出部9はその後、切断されて除去されることがある。この場合、樹脂部材3のウェルドライン7が形成された箇所に、切断跡が形成されて存在する。切断跡は、目視により確認可能である。樹脂部材3のウェルドライン7が形成された箇所に切断跡が存在すれば、以前はそこに突出部9が形成されていて、それによってウェルドライン7に起因する脆弱部分の補強が行われたと推認することができる。
【実施例0045】
次に、上述したような金属樹脂複合体を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0046】
(凹凸面)
図1に示すような金属樹脂複合体を作製した。
実施例1~4並びに比較例3及び4では、
図6を用いて説明したように、金属板の樹脂被覆面に、それぞれ先端面に複数個の突起部を設けた各パンチを用いて第一プレス工程及び第二プレス工程を行い、一方向及びその直交方向の各方向で交互に並ぶ長方形状の矩形凹部及び矩形凸部を形成し、凹凸面(矩形凹凸面)を設けた。各矩形凹部の長辺の長さLaは0.21mm、短辺の長さLbは0.07mm、長辺方向のピッチPaは0.42mm、短辺方向のピッチPbは0.14mmとした。矩形凹部と矩形凸部の平面視の寸法は実質的に同じとした。矩形凹部の深さ(凹部深さ)は、表1に示すとおりである。
【0047】
比較例2では、金属板の樹脂被覆面に、一方向に延びる線状凹部を直線方向に直交する方向に間隔をおいて複数本形成した凹凸面(線状凹凸面)を設けた。線状凹部の幅は0.04mm、線状凹部のピッチは0.1mmとした。隣り合う線状凹部間には、線状凸部が形成された。
【0048】
実施例5及び6並びに比較例1及び5では、金属板の樹脂被覆面に凹凸面を設けなかった。
【0049】
(表面処理)
実施例1及び2並びに比較例2及び4では、表1に示す表面粗さRaになるように、樹脂被覆面ないし凹凸面に対し、メック株式会社社製のCZ-8101を用いて、処理温度30℃の条件にて粗化処理(エッチング)を施した。
【0050】
実施例3~6及び比較例5では、金属板の樹脂被覆面にニッケル粗化めっきを施した。めっき浴組成:Niメタル分130g/L、ホウ酸25g/LでpH3.3であった。ここで、Niメタル分は、Ni塩としてスルファミン酸ニッケル四水和物及び塩化Niで構成されたものとした。より具体的には、スルファミン酸ニッケル四水和物:Ni(NH2SO3)2・4H2O=294g/L(約300g/L)、Ni量で53.5g/L、塩化ニッケル六水和物:NiCl2・6H2O=約310g/L、Ni量で76.5g/Lとした。めっき液温度は60℃とし、電流密度は10A/dm2とした。処理時間は、表1の表面粗さRaになるように調整した。
【0051】
比較例1及び3では、金属板の樹脂被覆面に表面処理を施さなかった。
【0052】
なお、表1に示す表面粗さRaの測定は三鷹光器株式会社製の非接触表面性状測定装置(PF-60)で行い、凹凸面がある粗化凹凸面の場合は矩形凸部又は線状凸部の頂面の位置を観察した。観察倍率は1000倍、スポット径はφ1.0μm、分解能はX軸0.1μmm、Y軸0.1μmm、Z1軸(測定用のZ軸)0.01μmとした。測定設定は次のとおりである。
測定ピッチ:1μm
測定範囲:8.0mm(直線での走査)(凹凸面の凸部の測定の場合には後からその部分を抽出)
測定精度:X軸2μm、Y軸2μm、Z1軸0.3μm
測定方式:スキャン
スキャン速度:100μm/s
AFゲイン:Standard
対物レンズ:SL100×(100倍)
【0053】
(射出成形)
樹脂材料を液晶ポリマー(ENEOS液晶株式会社製のM-350B)とし、射出成形金型を用いたインサート成形により、金属板に樹脂部材を固着させて形成した。いずれの実施例及び比較例でも射出圧力は150MPaとし、比較例5を除き、スプルーブッシュ温度は360℃とした。比較例5では、スプルーブッシュ温度を170℃とした。
【0054】
実施例1~6並びに比較例1及び3では、射出成形金型のキャビティに周方向に二箇所のゲートを設けたことにより、樹脂部材の周方向に二箇所のウェルドラインが金属板の存在しない箇所に形成されていた。比較例2、4及び5では、ゲートを四箇所としたので、樹脂部材に形成されたウェルドラインは周方向に四箇所であった。実施例2では、樹脂部材に
図11に示すような二個の突出部をウェルドラインが形成される位置に設けた。
【0055】
(レッドチェック試験)
金属樹脂複合体に対し、レッドチェック試験を行い、樹脂部材と金属板との間を赤色の試験液が浸透するかどうかを検証した。具体的には、金属樹脂複合体の金属板の貫通孔の周囲で樹脂部材の内側の内縁部に、試験液を針金の先端で微量塗布し、0.5時間放置した。放置後、試験液が樹脂部材の外側に漏れなければ、試験液が樹脂部材を浸透していないので、密閉性が良好であると評価することができる。
【0056】
試験は、加熱していない金属樹脂複合体及び、260℃で2時間加熱した後の金属樹脂複合体に対して行った。非加熱の金属樹脂複合体及び加熱後の金属樹脂複合体について、実施例1~6並びに比較例2及び4では各5個を試験に供した。比較例1、3及び5では、1個の非加熱の金属樹脂複合体について試験を行った。表1に、試験に供した総個数(5個又は1個)のうち、試験液の漏れがなかった個数(n個)の割合(n/5又はn/1)を示す。
【0057】
(樹脂剥離試験)
ブロック治具を使用し、金属樹脂複合体の樹脂部材に対して金属板に水平な方向で外側から内側に向かって力を作用させて金属板から樹脂部材を引き剥がし、樹脂部材を引き剥がした後、金属板上に付着している樹脂の残留を確認した。樹脂が金属板上に残留するということは、剥離の形態が金属板と樹脂部材との界面から剥がれたものではなく、樹脂部材の内部の凝集破壊によって生じたものであることを意味し、金属板と樹脂部材との密着性が良好であると判断することができる。ブロック治具のパンチブロックは、幅8.3mm×厚み1.8mm×長さ26.0mmの寸法とした。この樹脂剥離試験も、非加熱の金属樹脂複合体及び加熱(260℃、2時間)後の金属樹脂複合体のそれぞれについて行った。
【0058】
その結果を表1に示す。ここでは、樹脂の残留が樹脂被覆面の面積の10%未満であった場合を「×」、樹脂の残留が樹脂被覆面の面積の10%以上かつ50%未満、または樹脂の残留が途切れて内側と外側が繋がっている場合を「△」、樹脂の残留が樹脂被覆面の面積の50%以上で、樹脂残りで内側と外側が遮断されている場合を「○」としている。
【0059】
(ヒートサイクル試験)
実施例1~6の各金属樹脂複合体について、
図12に示すように、金属樹脂複合体71の樹脂部材73の両側に、蓋体81a、81bを接着剤82で接着させ、半導体デバイスを模擬した供試体91を作製した。但し、この供試体91は、内部の空洞に半導体チップを有しないものである。樹脂部材73並びに蓋体81a、81bは、液晶ポリマー(ENEOS液晶株式会社製のM-350B)からなるものとした。
【0060】
上記の供試体91を、-65℃~160℃の昇温・降温を繰り返すヒートサイクル試験に供した後に、供試体91を水中に沈めて、空気の漏れの有無を確認した。その結果を表1に示す。表1には、ヒートサイクル試験を100回、200回、500回行った場合のそれぞれについて、試験に供した供試体91の総個数のうち、空気の漏れが無かった供試体91の個数の割合を示している。
【0061】
(密閉性評価)
上述したレッドチェック試験、樹脂剥離試験及びヒートサイクル試験の結果より、金属樹脂複合体の内部スペースの密閉性を評価した。その結果を表1に示す。表1中、密閉性について「〇」は、密閉性が良好であることを示し、「△」は、ある程度の密閉性を有することを示し、「×」は、密閉性が不十分であることを示す。
【0062】
【0063】
(考察)
表1に示すところから、実施例1~6は、樹脂部材のウェルドラインを二箇所以下とし、樹脂被覆面に粗化凹凸面又は粗化めっき層を設けたことにより、比較例1~5に比して、内部スペースの密閉性が高かったことが解かる。矩形凹凸面に対してエッチング又は粗化めっきを施して粗化凹凸面とした実施例1~4だけでなく、樹脂被覆面に凹凸面を形成せずに粗化めっきを施した実施例5及び6でも、内部スペースの高い密閉性が確保されていた。
【0064】
一方、比較例1は、樹脂被覆面に凹凸面及び粗化めっき層のいずれも設けなかったことにより、密閉性が低かった。比較例3より、樹脂被覆面に矩形凹凸面を設けても、粗化処理を施さなければ、十分な密閉性が確保されないことが解かる。また、比較例2、4及び5より、樹脂部材に形成されたウェルドラインが多くなると、密閉性が低下することが解かる。
【0065】
以上より、先述した金属樹脂複合体によれば、樹脂部材による内部スペースの密閉性を向上できることが解かった。
【0066】
(樹脂密着性)
ニッケルめっき処理を施した銅製の金属板と、何の処理も施さなかった銅製の金属板のそれぞれについて、樹脂部材を固着させた後、樹脂部材を引き剥がしてシェア強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
表2より、樹脂被覆面の表面粗さRzが同程度であるにも関わらず、処理なしの金属板のほうが高いシェア強度を有することが解かる。この表面粗さRzは、JIS B0601:2001に準拠する最大高さを意味する。また、ニッケルめっきは樹脂密着性が一般的に低いことが知られている。なお、表面粗さRzの測定はキーエンス社製レーザー顕微鏡(VK-X150)で行い、観察倍率は1000倍、スポット径はφ0.8mmで測定した。対物レンズは100倍とした。測定範囲(測定面積)は、当該レーザー顕微鏡で測定した後に取り込まれる画像のサイズである105.737μm×141.029μmとした。解析は、線粗さ測定で水平線(垂直線)をひいて算出することにより行った。
【0069】
このことから、樹脂密着性が低いニッケル粗化めっき層を樹脂被覆面に設けた場合であっても、表1に示すように内部スペースの十分な密閉性が確保されるので、樹脂被覆面にニッケル以外の粗化めっき層を設けた場合も、高い密閉性が発揮されるといえる。
この明細書で開示する他の金属樹脂複合体は、金属板と、前記金属板に固着した樹脂部材を備え、前記樹脂部材を含む封止部材により内部スペースが区画されるものであって、前記樹脂部材が、前記金属板上で内部スペースの周囲を取り囲んで延びる枠状を有し、枠状の当該樹脂部材の周方向に一箇所又は二箇所のウェルドラインが存在し、前記金属板が前記樹脂部材で覆われた樹脂被覆面に、粗化めっき層を含み、枠状の前記樹脂部材が、周方向の一部で前記金属板を板厚方向の両側から挟み込んで設けられており、前記ウェルドラインが、枠状の前記樹脂部材の周方向で、当該樹脂部材の内側に前記金属板の存在しない箇所に形成されたものである。