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特開2023-26403試験測定装置及び被試験デバイスの試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026403
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】試験測定装置及び被試験デバイスの試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
G01R13/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128676
(22)【出願日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】63/232,580
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/876,817
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】カン・タン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジェイ・ピカード
(57)【要約】
【課題】TDECQ測定による合否判定のプロセスを高速化する。
【解決手段】試験測定装置10には、機械学習ネットワーク30があり、予めトレーニングされる。試験測定装置10は、被試験デバイス14から信号を受けて波形として取り込み、波形に基づいて1つ以上のテンソル・アレーを生成する。次に、機械学習をテンソル・アレーに適用することで、迅速にイコライザ・タップ値を生成できる。更に、イコライザ・タップ値を使用して波形を等化処理して等化波形を生成し、等化波形を測定して被試験デバイスのTDECQ測定値を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスから信号を受けるように構成された入力部と、
メモリと、
ユーザが試験測定装置の設定を入力できるようにするユーザ・インタフェースと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、該1つ以上のプロセッサが、
被試験デバイスから受けた信号を表す波形を取り込む処理と、
上記波形に基づいて1つ以上のテンソル・アレーを生成する処理と、
機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してイコライザ・タップ値を生成する処理と、
上記イコライザ・タップ値を使用して上記波形に等化処理を適用して等化波形を生成する処理と、
上記等化波形について測定を実行して上記被試験デバイスの性能要件に関する値を生成する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される試験測定装置。
【請求項2】
上記1つ以上のプロセッサは、上記性能要件に関する値が、上記被試験デバイスが上記性能要件を満たしていることを示すか否かを判断する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記等化波形について測定を実行させる処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記等化波形についてTDECQ測定を実行してTDECQ測定値を生成する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項1の試験測定装置。
【請求項4】
上記1つ以上のプロセッサは、機械学習ネットワークをトレーニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成され、該プログラムは、
トレーニング波形を受ける処理と、
上記トレーニング波形を使用してトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理と、
上記トレーニング波形から1つ以上のトレーニング・テンソル・アレーを生成する処理と、
上記1つ以上のトレーニング・テンソル・アレー及び上記トレーニング・イコライザ・タップ値を上記機械学習ネットワークにトレーニング・データ・セットとして供給する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせる請求項1の試験測定装置。
【請求項5】
上記トレーニング・イコライザ・タップ値を生成させる処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、FFE用のトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項4の試験測定装置。
【請求項6】
被試験デバイスから受けた信号を表す波形を取り込む処理と、
上記波形に基づいて1つ以上のテンソル・アレーを生成する処理と、
機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してイコライザ・タップ値を生成
する処理と、
上記イコライザ・タップ値を上記波形に適用して等化波形を生成する処理と、
上記等化波形について測定を実行して上記被試験デバイスの性能要件に関する値を生成する処理と
を具える被試験デバイスの試験方法。
【請求項7】
機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してイコライザ・タップ値を生成する処理が、機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してFFEタップ値を生成する処理を含む請求項6の被試験デバイスの試験方法。
【請求項8】
上記等化波形について測定を実行する処理が、上記等化波形のTDECQを測定する処理を含む請求項6の被試験デバイスの試験方法。
【請求項9】
機械学習ネットワークをトレーニングする処理を更に具え、該トレーニングする処理が、
トレーニング波形を受ける処理と、
上記トレーニング波形を使用してトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理と、
上記トレーニング波形から1つ以上のトレーニング・テンソル・アレーを生成する処理と、
上記1つ以上のトレーニング・テンソル・アレー及び上記トレーニング・イコライザ・タップ値を上記機械学習ネットワークにトレーニング・データ・セットとして供給する処理と
を有する請求項6の被試験デバイスの試験方法。
【請求項10】
上記トレーニング波形を使用して上記トレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理が、上記トレーニング波形を使用してFFE用のトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理を含む請求項9の被試験デバイスの試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置及び被試験デバイスの試験方法に関し、特に被試験デバイスの特性の測定を迅速に行うための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
信号速度が上がると、トランスミッタとレシーバは、通常、イコライザを使用してシステムの性能を向上させる。例えば、IEEE 100G/400G イーサネット規格では、5タップFFE(feed-forward equalizer)による測定が定義されている。これについては、例えば「IEEE802.3cd-2018」(非特許文献1)、「IEEE802.3bs-2017」(非特許文献2)を参照されたい。
【0003】
多くの規格には、被試験デバイスが満たさなければならない性能測定がある。一部の規格では、規格を満たすために行われる測定を等化処理した信号に対して実行する必要がある。例えば、IEEE802.3 の 100G/400G 規格では、26ギガ・ボー(GBaud)及び53ギガ・ボーのPAM4光シグナリングの重要な合否基準として、TDECQ(transmitter and dispersion eye closure)測定が規定されている(「IEEE802.3cd-2018」及び「IEEE802.3bs-2017」参照)。TDECQ測定には、5タップFFEが含まれる。FFEタップの最適化により、デバイスの性能が向上し、デバイスが規格の仕様要件を満たす可能性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-059912号公報
【特許文献2】米国特許公開第2022/0247648号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「IEEE802.3cd-2018」、IEEE、[online]、[2022年8月10日検索]、インターネット<https://standards.ieee.org/ieee/802.3cd/6754/>
【非特許文献2】「IEEE802.3bs-2017」、IEEE、[online]、[2022年8月10日検索]、インターネット<https://standards.ieee.org/ieee/802.3bs/6748/>
【非特許文献3】「8シリーズ・サンプリング・オシロスコープ」、2020年8月18日リリース、テクトロニクス、[online]、[2022年8月10日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes/8-series-sampling-oscilloscope>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TDECQ測定による合否判定のプロセスを高速化すれば、時間を節約し、コストを削減できる。被試験デバイス(DUT)の数が、数万個にのぼる一部の生産ラインでは、試験を完了するのに数秒かかることがある。その時間を1秒以下に短縮できれば、生産は増加し、コストが削減されることになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
機械学習技術は、例えば、TDECQ(Transmitter and Dispersion Eye Closure Quaternary)測定などの複雑な測定の速度を大幅に向上させることができる。測定速度の向上は、例えば、製造ラインでの生産スループットの向上につながる。高速信号試験では、測定結果を得るに、信号のアイ・ダイアグラムが機械学習で利用されてきた。測定のためには、完全又は部分的なパターン波形も、機械学習に利用されている。2022年5月18日に出願された本願出願人による米国特許出願第17/747,954号は、測定用の機械学習のためのショート・パターン波形データベースを使用する代替技術を記載している。この米国特許出願に記載された方法に基づいて、本願の実施形態は、機械学習を使用して測定で最も時間のかかる工程をスピードアップし、全体的な測定時間を短縮する新しい方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、試験測定装置の一実施形態を示す。
図2図2は、TDECQ測定の説明図を示す。
図3図3は、性能測定のためにFFEタップを最適化するためのプロセスの一例を示す。
図4図4に、FFEの適用前と適用後のアイ・ダイアグラムの例を示す。
図5図5は、出力FFEタップのグラフ表示を示す。
図6図6は、波形からテンソル・アレーを生成する方法の一実施形態を示す。
図7図7は、FFEタップ最適化処理を実行するために機械学習ネットワークをトレーニングする方法の一実施形態を示す。
図8図8は、機械学習を用いて複雑な測定用に最適化されたFFEタップを提供する方法の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、理解を容易にするため、5タップFFEに焦点を当てているが、本願で説明する手法は、任意のタイプのイコライザの任意の数のイコライザ(又はフィルタ)のタップの最適化に適用できる。同様に、以下の説明で使用される性能測定では、具体的な1例としてTDECQ測定に言及するが、等化波形に対して行われる任意の性能測定に、本願の実施形態を適用すれば、メリットが得られるであろう。なお、本願でいう「等化波形」とは、イコライザを適用した後の波形を意味する。
【0010】
本願の実施形態には、被試験デバイス(DUT)の試験に用いられるオシロスコープなどの試験測定装置が含まれる。以下で説明する1例では、光トランシーバ又は光トランスミッタを含むDUTを試験するためのプロセスを含むが、本願の実施形態は、信号を生成する任意のDUTに適用されても良いことが理解できよう。
【0011】
図1は、DUTとして光トランスミッタ14が例の場合における試験セットアップの実施形態を示す。試験セットアップは、オシロスコープなどの試験測定装置10を有していても良い試験測定システムを含む。試験測定装置10は、その入力部において、典型的には、測定プローブ16を介して、DUT14からの信号を受ける。DUTが光トランスミッタの場合、プローブは、典型的には、光電気変換器18に結合された試験ファイバを備える。光電気変換器18は、光信号を電気信号に変換して、試験測定装置10に提供する。信号は、試験測定装置10によってサンプリングされ、デジタル化されて波形データ(単に「波形」とも呼ぶ)として取り込まれる。試験測定装置10が、例えば、等価時間サンプリングを行うサンプリング・オシロスコープの場合、クロック・リカバリ・ユニット(CRU)20が、波形からクロック信号をリカバリしても良い。試験測定装置10は、プロセッサ12によって表される1つ以上のプロセッサ、メモリ22及びユーザ・インタフェース(U/I)26を有する。メモリ22は、実行可能な命令をコード(プログラム)の形式で記憶し、プロセッサによって実行されると、プロセッサにタスクを実行させる。メモリ22は、また、1つ以上の取り込まれた波形を記憶しても良い。試験測定装置10のユーザ・インタフェース26は、ユーザが、試験測定装置10をインタラクティブに操作して、設定の入力、試験の設定などを行うことを可能にする。試験測定装置は、また、基準イコライザ及び分析モジュール24を含んでもよい。
【0012】
本願の実施形態は、深層学習(ディープ・ラーニング)ネットワークのような機械学習ネットワーク30の形態の機械学習を採用する。機械学習ネットワークは、機械学習ネットワークでプログラムされたプロセッサを有していても良く、これは、試験測定装置の一部であっても良いし、又は、ネットワークを介するなどして試験測定装置からアクセスできるものであっても良い。試験測定装置の能力及びプロセッサを発展させて、プロセッサ12が、これらの両方を有するようにしても良い。
【0013】
上述したように、イコライザを使用した複雑な測定例としては、5タップのFFEを使用したTDECQ測定がある。図2にTDECQ測定の説明図を示す。この図は、5タップFFEから生じたもので、1ユニット・インターバル(1UI)のタップ間隔は、TDECQ値を最小限に抑えるように最適化されている。
【0014】
TDECQ値は、次の式で計算される。
【数1】
ここで、OMAouterは、光信号のパワーと関係している。Qrは、定数値である。σG 2は、図2に示すアイ・ダイアグラムに加えられることがある加重(weighted:重み付け)ガウス・ノイズの標準偏差であり、0.1UI離れた2つの垂直スライサーでのシンボル・エラー比は、まだ比較的大きく、4.8e-4である。σSの値は、光電変換器(O/E)に信号が供給されないときに記録されるオシロスコープ又は試験測定装置のノイズである。
【0015】
コンプライアンス・パターンSSPRQ(short stress pattern random quaternary)に対する単一のTDECQ測定は、従来の方法を使用すると、完了するまでに数秒かかる。この測定で最も時間のかかる工程は、FFEタップを適応させる処理である。IEEE仕様では、FFEタップを使ってTDECQ値を計算するプロセスを明示的に定義している。図3は、このプロセスのブロック図を示している。
【0016】
試験測定装置は、1つ以上のプロセッサを有し、波形40を受けて、FFEタップ値をFFEタップ最適化ブロック42で最適化して、最適化されたFFEタップ44を生成する。このプロセスは、最適化されたタップを決定するための多種多様な方法のうちの1つを採用しても良い。例えば、本願出願人による8シリーズ・サンプリング・オシロスコープとソフトウェア「TSOVu」の組み合わせでは、IEEE802.3規格に定めるTDECQ測定を行うことができ、その過程で、最適なFFEタップを見つける機能がある(非特許文献3参照)。得られたタップは、図4に示すようにアイ・ダイヤグラムを改善する。図4は、左側にFFE適用前のアイ・ダイアグラム、右側にFFE適用後のアイ・ダイアグラムを示している。FFE適用後のアイ・ダイアグラムは、より大きなアイ開口部を有する。
【0017】
図3に戻り、測定プロセス46は、最適化されたタップを波形に適用し、TDECQ測定部46が多くの従来の方法の中のいずれかを用いて、測定を実行する。そうした従来の方法の一例としては、上述した本願出願人による8シリーズ・サンプリング・オシロスコ
ープと組み合わせたソフトウェア「TSOVu」によるものがあり、これは、IEEE802.3規格に定めるTDECQ測定を行うことができる(非特許文献3参照)。上述のように、測定は、TDECQ値のように、測定のレンジ(範囲)又は特定の値など、性能要件に基づく任意の測定であっても良い。測定値によって、DUTが性能要件を満たしているか(pass:合格か)、又は、不合格(fail)かが決定される。
【0018】
コンプライアンス・パターンSSPRQ(short stress pattern random quaternary)に対するTDECQ測定は、全体で、DUTごとに完了するまでに数秒かかることがある。何万個もの光トランシーバをDUTとして試験する製造ラインの場合、この時間を短縮することは、生産速度に大きな影響を与える。上述したように、特定の波形に対するタップの最適化(即ち、イコライザを適応させる処理)は、測定全体の中で最も多くの時間を占有する。従って、最適化時間を短縮することで、生産がスピードアップし、コストが削減されることになる。
【0019】
本願の実施形態は、機械学習ネットワークを使用して波形のFFEタップを決定し、時間を1DUT当たり1秒未満に短縮する。このアプローチの1つの態様では、上記で参照した米国特許出願第17/747,954号に開示されるショート・パターン波形データベース・テンソル生成機能を使用する。図6は、こうした処理の一実施形態を示す。DUTから受信した波形40は、ショート・パターン波形データベース・テンソル生成部50によって複数のテンソル画像から成るアレー(array:配列)、即ち、テンソル・アレーに変換される。テンソル生成部50は、2次元(2D)ヒストグラム画像のアレー(配列)を作成し、この2Dヒストグラム画像は、波形パターン中の短い部分又は短いパターン(ショート・パターン)をカバーしている。テンソル・アレーの各要素は、異なる画像であり、波形40内の特定の短いパターンの複数のインスタンスのオーバーレイ(重ね合わせ)を含む。パターンは、アレー内のテンソルごとに異なる。例えば、テンソル・アレーのある1つの要素は、波形40中のシンボル0、1、0の短い3シンボル長パターンの全てのインスタンスの画像のオーバーレイであっても良く、また、このテンソル・アレーの別の要素は、波形40中のシンボル0、2、0の短い3シンボル長パターンの全てのインスタンスの画像のオーバーレイであっても良い、などである。図6は、得られるテンソル・アレー52の例も示している。
【0020】
このプロセスは、図7に示すようにパターン波形ごとに最適化されたFFEタップが得られる。つまり、最適化されたFFEタップは、入力されるテンソルに関連付けられるが、これは、入力テンソルが、同じパターン波形に基づくからである。入力テンソル及びその対応するFFEタップは、トレーニング・データとしてラベルが付され、機械学習ネットワーク56に供給される。入力波形40は、既存の任意の方法を用いて、FFEタップ最適化ブロック42でFFEタップ最適化処理を受け、その波形に関するトレーニングFFEタップ44を生成する。ショート・パターン波形データベース・テンソル生成部50は、トレーニング・テンソル・アレー52を生成する。これらは、次いで、機械学習ネットワーク56に送られ、テンソル・アレーの入力に基づいて、最適化されたフィルタ・タップ値を生成するようにネットワークをトレーニングする。
【0021】
機械学習ネットワークがトレーニングを受けると、最適化されたフィルタ・タップ値を従来の方法よりもはるかに迅速に生成できる。図8は、ランタイム・プロセスの実施形態を示す。ショート・パターン波形データベース・テンソル生成部50は、波形40を受けて、テンソル・アレー52を生成する。トレーニングされた機械学習ネットワーク56は、テンソル・アレー52を受けて、それを使用して、予測最適化FFEタップ58を生成する。これらのタップは、従来の方法ではなく、機械学習システムから生じるため、上述のようなトレーニング中に使用された以前のFFEタップとは異なる。次いで、TDECQ測定部46は、予測最適化FFEタップ58を受けて波形40に適用し、その上で、その波形に関するTDECQの測定を行う。
【0022】
近年、FFE、DFE(Decision Feedback Equalizer:判定帰還型イコライザ)やその他のイコライザを適応させる処理を高速化するのに、機械学習の利用が検討されている。本願の実施形態は、様々な入力を使用し、次いで、機械学習からの出力が、測定結果を得るために用いられる。図8に示す例では、TDECQ測定を用いているが、上述したように、同じアプローチを他の測定にも適用できる。
【0023】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0024】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0025】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0026】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外
線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0027】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0028】
明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0029】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。

実施例
【0030】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0031】
実施例1は、試験測定装置であって、被試験デバイスから信号を受けるように構成された入力部と、メモリと、ユーザが試験測定装置の設定を入力できるようにするユーザ・インタフェースと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、被試験デバイスから受けた信号を表す波形を取り込む処理と、上記波形に基づいて1つ以上のテンソル・アレーを生成する処理と、機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してイコライザ・タップ値を生成する処理と、上記イコライザ・タップ値を使用して上記波形に等化処理を適用して等化波形を生成する処理と、上記等化波形について測定を実行して上記被試験デバイスの性能要件に関する値を生成する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【0032】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記性能要件に関する値が、上記被試験デバイスが上記性能要件を満たしていることを示すか否かを判断する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成される。
【0033】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかの試験測定装置であって、機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記1つ以上のプロセッサに、上記試験測定装置とは別のデバイス上の機械学習ネットワークに上記テンソル・アレーを送信させる処理を行わせるプログラムを含む。
【0034】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定装置であって、機械学習を1つ以上のテンソル・アレーに適用してイコライザ・タップ値を生成する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、FFE(feed-forward equalizer)のFFEタップ値を生成させる処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0035】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの試験測定装置であって、上記等化波形につい
て測定を実行させる処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記等化波形についてTDECQ(transmitter and dispersion eye closure quaternary)測定を実行して、TDECQ測定値を生成する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0036】
実施例6は、実施例1から5のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記1つ以上のプロセッサに機械学習ネットワークをトレーニングさせるプログラムを実行するように更に構成され、該プログラムは、トレーニング波形を受ける処理と、上記トレーニング波形を使用してトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理と、上記トレーニング波形から1つ以上のトレーニング・テンソル・アレーを生成する処理と、上記1つ以上のトレーニング・テンソル・アレー及び上記トレーニング・イコライザ・タップ値を上記機械学習ネットワークにトレーニング・データ・セットとして供給する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせる。
【0037】
実施例7は、実施例6の試験測定装置であって、上記トレーニング・イコライザ・タップ値を生成させる処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、FFE用のトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0038】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定装置において、プローブを更に具え、上記被試験デバイスは、上記プローブによって上記入力部に結合される。
【0039】
実施例9は、実施例8の試験測定装置であって、上記プローブが、光ファイバを含む。
【0040】
実施例10は、実施例1から9のいずれかの試験測定装置であって、上記プローブが、光電変換部を含む。
【0041】
実施例11は、実施例8から10のいずれかの試験測定装置であって、上記プローブは、IEEE 802.3 規格の下で動作する装置に接続するように構成されている。
【0042】
実施例12は、被試験デバイスを試験する方法であって、被試験デバイスから受けた信号を表す波形を取り込む処理と、上記波形に基づいて1つ以上のテンソル・アレーを生成する処理と、機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してイコライザ・タップ値を生成する処理と、上記イコライザ・タップ値を上記波形に適用して等化波形を生成する処理と、上記等化波形について測定を実行して上記被試験デバイスの性能要件に関する値を生成する処理とを具える。
【0043】
実施例13は、実施例12の方法であって、上記性能要件に関する値が、上記被試験デバイスが上記性能要件を満たしていることを示すか否かを決定する処理を更に具える。
【0044】
実施例14は、実施例12又は13の方法であって、機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してイコライザ・タップ値を生成する処理が、機械学習を上記1つ以上のテンソル・アレーに適用してFFEタップ値を生成する処理を含む。
【0045】
実施例15は、実施例14の方法であって、上記FFEタップ値は、5タップのFFEに関するものである。
【0046】
実施例16は、実施例12から15のいずれかの方法であって、上記等化波形について測定を実行する処理が、上記等化波形のTDECQ(transmitter and dispersion eye closure quaternary)を測定する処理を含む。
【0047】
実施例17は、実施例12から16のいずれかの方法であって、機械学習ネットワークをトレーニングする処理を更に具え、該トレーニングする処理が、トレーニング波形を受ける処理と、上記トレーニング波形を使用してトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理と、上記トレーニング波形から1つ以上のトレーニング・テンソル・アレーを生成する処理と、上記1つ以上のトレーニング・テンソル・アレー及び上記トレーニング・イコライザ・タップ値を上記機械学習ネットワークにトレーニング・データ・セットとして供給する処理とを有する。
【0048】
実施例18は、実施例17の方法であって、上記トレーニング波形を使用して上記トレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理が、上記トレーニング波形を使用してFFE用のトレーニング・イコライザ・タップ値を生成する処理を含む。
【0049】
実施例19は、実施例12から18のいずれかの方法であって、上記被試験デバイスから受けた信号を表す波形を取り込む処理が、上記被試験デバイスの動作によって生成された光信号を試験ファイバを介して受信する処理を含む。
【0050】
実施例20は、実施例19の方法であって、上記光信号を電気信号に変換する処理を更に含む。
【0051】
説明の都合上、本発明の具体的な実施形態を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0052】
10 試験測定装置
12 プロセッサ
14 被試験デバイス(DUT)
16 試験ファイバ/プローブ
18 光電変換器
20 クロック・リカバリ・ユニット(CRU)
22 メモリ
24 基準イコライザ及び分析モジュール
26 ユーザ・インタフェース(U/I)
30 機械学習ネットワーク
40 波形
42 FFEタップ最適化ブロック
44 FFEタップ
46 TDECQ測定部
50 ショート・パターン波形データベース・テンソル生成部
52 テンソル・アレー
56 機械学習FFEタップ最適化ブロック
58 予測最適化FFEタップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8