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特開2023-26805熱伝導性シリコーン組成物及び熱伝導性シリコーン硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026805
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物及び熱伝導性シリコーン硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20230221BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230221BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230221BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/013
C08L83/05
C08L83/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132174
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】北沢 啓太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 瞳子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP03X
4J002CP04Y
4J002CP05W
4J002CP14X
4J002DA096
4J002DA118
4J002DE106
4J002DE146
4J002DF016
4J002EC037
4J002FD016
4J002FD14Y
4J002FD158
4J002FD207
(57)【要約】
【課題】高温に長時間曝された場合の組成物の粘度上昇を抑制可能であるか、組成物の硬化物が高温に長時間曝された場合にその硬度上昇を抑制可能な熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、(B)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、並びに(C)金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び炭素の同素体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性充填剤を含有し、(A)成分及び(B)成分の合計の配合量が、組成物全体に対し3~90質量%であり、(C)成分の配合量が、組成物全体に対し10~97質量%のものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
【化1】
SiO(4-b)/2 (2)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
【化1】
(式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、Rは、オキシラン環を有する基であり、Xは、ヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~20のアルキレン基であり、aは5~200の整数である。)
(B)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、
SiO(4-b)/2 (2)
(式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、bは1.8~2.2の数である)、及び
(C)金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び炭素の同素体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性充填剤、
を含有し、
(A)成分及び(B)成分の合計の配合量が、組成物全体に対し3~90質量%であり、
(C)成分の配合量が、組成物全体に対し10~97質量%のものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、1分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~18の脂肪族不飽和炭化水素基を有し、さらに、
(D)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B)成分中の脂肪族不飽和炭化水素基の個数の合計に対するケイ素原子に結合した水素原子の個数が0.5~5となる量、及び
(E)白金族金属触媒:有効量
を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
さらに、(F)アセチレン化合物、窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物からなる群より選択される1種以上の付加硬化反応制御剤を含有することを特徴とする請求項2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とする熱伝導性シリコーン硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物及び熱伝導性シリコーン硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品パッケージやパワーモジュールに共通する課題として、動作中の発熱及びそれによる性能の低下が広く知られており、これを解決するための手段として様々な放熱技術が用いられている。とりわけ、発熱部の付近に冷却部材を配置して両者を密接させたうえで、冷却部材から効率的に放熱する技術が一般的である。
【0003】
その際、発熱部と冷却部材との間に隙間があると、熱伝導率の悪い空気が介在することにより伝熱性が低下し、発熱部材の温度が十分に下がらなくなってしまう。このような空気の介在を防ぎ、熱伝導を向上させるため、熱伝導率がよく、部材の表面に追随性のある放熱材料、例えば放熱グリースや放熱シートが用いられている(例えば、特許文献1~9)。
【0004】
実際の電子部品パッケージやパワーモジュールの熱対策としては、薄く圧縮可能であり発熱部と冷却部材との隙間への侵入性に優れる放熱グリースが、放熱性能の観点から好適である。一方で放熱グリースは、発熱部での発熱と冷却を反復する熱履歴による膨張・収縮に起因する流れ出し(ポンピングアウト)を発生する場合があるが、付加硬化型の放熱グリースを採用し、所望の厚みに圧縮後に加熱硬化させることでポンピングアウトを発生しづらくし、電子部品パッケージやパワーモジュールの信頼性を高めることもできる(例えば、特許文献10)。
【0005】
近年、電子部品パッケージやパワーモジュールの高出力・高性能化、自動運転車両用半導体やIoTといった新しいアプリケーションへ対応するため、放熱グリースには一層の高熱伝導率化の要求がある。高熱伝導率化達成のためには熱伝導性充填剤を多量に配合する必要があるが、多量の熱伝導性充填剤を配合した放熱グリースが発熱部に長期間実装されると、非硬化型の場合には粘度が上昇、硬化型の場合には硬度が上昇し、発熱部から剥離してしまい電子部品パッケージやパワーモジュールの信頼性を低下させるおそれがある。
【0006】
上記の背景から、多量の熱伝導性充填剤を配合して高熱伝導率を有しながらも、高温に長時間曝された場合の組成物の粘度または硬化物の硬度上昇を抑制可能な熱伝導性シリコーン組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-327116号公報
【特許文献2】特開2004-130646号公報
【特許文献3】特開2009-234112号公報
【特許文献4】特開2009-209230号公報
【特許文献5】特開2010-095730号公報
【特許文献6】特開2008-031336号公報
【特許文献7】特開2007-177001号公報
【特許文献8】特開2008-260798号公報
【特許文献9】特開2009-209165号公報
【特許文献10】特開2016-053140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高温に長時間曝された場合の組成物の粘度上昇を抑制可能であるか、又は、組成物の硬化物が高温に長時間曝された場合にその硬度上昇を抑制可能な熱伝導性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
【化1】
(式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、Rは、オキシラン環を有する基であり、Xは、ヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~20のアルキレン基であり、aは5~200の整数である。)
(B)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、
SiO(4-b)/2 (2)
(式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、bは1.8~2.2の数である)、及び
(C)金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び炭素の同素体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性充填剤、
を含有し、
(A)成分及び(B)成分の合計の配合量が、組成物全体に対し3~90質量%であり、
(C)成分の配合量が、組成物全体に対し10~97質量%のものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
【0010】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物であれば、高温に長時間曝された場合の組成物の粘度上昇又は硬化物の硬度上昇を抑制可能である。そのため、実装される電子部品パッケージやパワーモジュールの信頼性を向上することができる。
【0011】
また、本発明は、前記(B)成分が、1分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~18の脂肪族不飽和炭化水素基を有し、さらに、
(D)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B)成分中の脂肪族不飽和炭化水素基の個数の合計に対するケイ素原子に結合した水素原子の個数が0.5~5となる量、及び
(E)白金族金属触媒:有効量
を含むことができる。
【0012】
この場合、本発明の熱伝導性シリコーン組成物は付加硬化型となり、この付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物を硬化して得られる熱伝導性シリコーン硬化物は、高温に長時間曝された場合の硬度上昇を抑制可能である。そのため、実装される電子部品パッケージやパワーモジュールの信頼性を向上することができる。
【0013】
前記付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物は、さらに、(F)アセチレン化合物、窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物からなる群より選択される1種以上の付加硬化反応制御剤を含有することが好ましい。
【0014】
このような付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物によれば、保存安定性および作業性を向上することができる。
【0015】
また本発明では、前記付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とする熱伝導性シリコーン硬化物を提供する。
【0016】
本発明の熱伝導性シリコーン硬化物は、高温に長時間曝された場合の硬度上昇が小さく、放熱材料として有効である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、非硬化型の場合には高温に長時間曝された場合の組成物の粘度上昇を抑制することができ、また、硬化型の場合には本発明の熱伝導性シリコーン組成物から得られる熱伝導性シリコーン硬化物は、高温に長時間曝された場合の硬度上昇が小さい。このため、非硬化型、硬化型いずれの熱伝導性シリコーン組成物であっても高い信頼性が求められる電子部品パッケージやパワーモジュールに使用する放熱材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、オキシラン環を有するオルガノポリシロキサン、所定の構造のオルガノポリシロキサン及び熱伝導性充填剤を所定の割合で含有する熱伝導性シリコーン組成物が、高温に長時間曝された場合の組成物の粘度上昇を抑制可能であり、また、高温に長時間曝された場合の硬度上昇の小さい硬化物を与えることを見出し、本発明を成すに至った。
【0019】
即ち、本発明は
(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
【化2】
(式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、Rは、オキシラン環を有する基であり、Xは、ヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~20のアルキレン基であり、aは5~200の整数である。)
(B)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、
SiO(4-b)/2 (2)
(式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、bは1.8~2.2の数である)、及び
(C)金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び炭素の同素体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性充填剤、
を含有し、
(A)成分及び(B)成分の合計の配合量が、組成物全体に対し3~90質量%であり、
(C)成分の配合量が、組成物全体に対し10~97質量%のものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
熱伝導性シリコーン組成物
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、後述する(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有し、(A)成分及び(B)成分の合計の配合量が、組成物全体に対し3~90質量%であり、(C)成分の配合量が、組成物全体に対し10~97質量%のものであることを特徴とする。この熱伝導性シリコーン組成物は、上記(A)~(C)成分、及び必要に応じて加える他の成分の構成及びその比率を調整することで、後述するように非硬化型にも、硬化型にもすることもできる。
例えば、(B)成分が、1分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~18の脂肪族不飽和炭化水素基を有し、さらに、(D)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B)成分中の脂肪族不飽和炭化水素基の個数の合計に対するケイ素原子に結合した水素原子の個数が0.5~5となる量、及び(E)白金族金属触媒:有効量、を含むものである場合には、付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物とすることができる。
以下、各成分について説明する。
【0022】
[(A)成分]
(A)成分は、下記一般式(1)で表される、オキシラン環含有基(エポキシ基)を有するオルガノポリシロキサンであり、後述する熱伝導性充填剤の表面を処理することにより組成物への熱伝導性充填剤の高充填化を補助する役割を担う成分である。
【化3】
(式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、Rは、オキシラン環を有する基であり、Xは、ヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~20のアルキレン基であり、aは5~200の整数である。)
【0023】
前記Rとしては、好ましくは炭素原子数1~10、さらに好ましくは炭素原子数1~8の、非置換又は置換の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。特にはメチル基であることが好ましい。
【0024】
なお、上記Rは非置換または置換の1価炭化水素基であって、Rが結合するケイ素原子は、Rを構成する炭素原子と直接結合している。つまり、Rはアルコキシ基やアリーロキシ基とならず、これら基と明確に区別される。
【0025】
前記Rのオキシラン環を有する基は特に限定されないが、オキシラン(エチレンオキサイド)や、オキシラン環を1つ以上有する直鎖、分岐又は環状の炭化水素から水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。前記炭化水素は、更にハロゲン原子、シアノ基、フェニル基などの芳香族基などの置換基で置換されていてもよい。
このようなオキシラン環を有する炭化水素基としては、例えば、エポキシプロパン、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、3-メチル-1,2-エポキシブタン、などのエポキシアルカン、エポキシシクロペンタン、エポキシシクロヘキサン、エポキシシクロヘプタン、エポキシシクロオクタン、エポキシシクロノナン、エポキシシクロデカン、エポキシシクロウンデカン、エポキシシクロドデカンなどのエポキシシクロアルカン、エポキシシクロペンテン、エポキシシクロヘキセン、エポキシシクロヘプテンなどのエポキシシクロアルケン、エポキシエチルベンゼン、1-フェニル-1,2-エポキシプロパンなどの芳香族含有炭化水素のエポキシドから水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。
また、オキシラン環を有する基は、その中に2つ以上のオキシラン環を有してもよく、さらに、酸素原子や窒素原子などのヘテロ原子で置換されていてもよいし、ヘテロ原子が炭素-炭素結合間や炭素-水素結合間に介在してもよい。このようなオキシラン環を有する基としては、ジエポキシシクロヘキサン、エポキシシクロヘキサノール、エポキシシクロヘキサノン、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロパンジオールモノグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類、エポキシピペリジンなどから水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。
【0026】
前記Rのオキシラン環を有する基としては、例えば下記式(3)及び(4)で示されるものが挙げられる。
【化4】
【0027】
Xは、ヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~8のアルキレン基であり、Xの構造は直鎖状、分岐鎖状等、特に限定されるものではないが、好ましくは直鎖状である。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子や硫黄原子などが挙げられる。Xとして、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル基、アミド基などを有してもよいアルキレン基が挙げられ、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【0028】
-(CH
(xは1~20の整数である。)
-CHCHCHOCH
【0029】
-X基全体としては、例えば3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、5,6-エポキシヘキシル基、9,10-エポキシデシル基などが挙げられる。
【0030】
aは、5~200、好ましくは10~100の整数である。aの値が5より小さいと、(A)成分が組成物からブリードしやすくなり、信頼性が低下するおそれがある。また、200より大きいと、熱伝導性充填剤との濡れ性が不足するおそれがある。
【0031】
(A)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
(A)成分は、上記一般式(1)で表されるオキシラン環を有するオルガノポリシロキサンであり、ケイ素原子に結合する1価炭化水素基(R)はアルコキシ基やアリーロキシ基とならず、エポキシ基含有シランカップリング剤とは異なる。エポキシ基含有シランカップリング剤は、水単独又は水とアルコールでは加水分解が進まないため触媒が必要であるが、(A)成分は、アルコキシ基を含まずとも、また、触媒(加水分解触媒やエポキシ開環触媒)が共存しなくとも、熱伝導性充填剤の表面を処理することが可能である。このため(A)成分は、組成物への熱伝導性充填剤の高充填化を補助する役割を十分に担うことができる。
【0033】
[(B)成分]
(B)成分は、下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサンであり、本発明の熱伝導性シリコーン組成物の粘度を調整し、粘着性を付与する。また、後述する(D)成分を配合する場合には架橋を形成するベースオイルとしての役割を担う成分である。
【0034】
SiO(4-b)/2 (2)
(式中、Rは独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、bは1.8~2.2の数である)
【0035】
は、独立に非置換または置換の炭素原子数1~18の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1~10、さらに好ましくは炭素原子数1~8の、非置換又は置換の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0036】
また、Rは、炭素原子数2~18の脂肪族不飽和炭化水素基でもよい。脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、及びオクテニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0037】
以上の中でも、Rとしては、特にはメチル基、ビニル基であることが好ましい。
【0038】
bは、1.8~2.2の数であり、作業性の観点から1.9~2.1の数であることが好ましい。
【0039】
(B)成分の25℃での動粘度は特に限定されるものではないが、好ましくは60~1,000,000mm/s、より好ましくは100~100,000mm/sである。動粘度が60mm/s以上であれば、シリコーン組成物の物理的特性が良好であり、1,000,000mm/s以下であれば、シリコーン組成物の伸展性が良好になる。
本発明において、動粘度は、オストワルド粘度計により測定した25℃における値である(以下、同じ)。
【0040】
(B)成分は、上記性質を有するものであればその分子構造は特に限定されず、直鎖状構造、分岐鎖状構造、一部分岐状構造又は環状構造を有する直鎖状構造等が挙げられる。特には、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状構造を有するのが好ましい。該直鎖状構造を有するオルガノポリシロキサンは、部分的に分岐状構造又は環状構造を有していてもよい。なお、(B)成分は、オキシラン環(エポキシ基)を有さない。この点で、(A)成分と(B)成分は明確に区別される。
【0041】
(B)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
(A)成分及び(B)成分の合計の配合量は、組成物全体に対し3~90質量%であり、7~20質量%が好ましい。90質量%以下であれば熱伝導性に優れたものとなり、3質量%以上であれば作業性が良好なものとなる。一方、上記範囲以外では熱伝導性が不十分であったり、作業性が悪かったりする。
【0043】
[(C)成分]
(C)成分は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び炭素の同素体からなる群より選ばれる1種以上の熱伝導性充填剤である。例えば、アルミニウム、銀、銅、金属ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化セリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、大粒子成分と小粒子成分を組み合わせたもの(異なる平均粒径を有する成分の組み合わせ)であることが好ましい。
【0044】
大粒子成分の平均粒径は、0.1~300μmの範囲が好ましく、より好ましくは10~200μmの範囲、更に好ましくは10~150μmの範囲である。小粒子成分の平均粒径は、0.01μm~10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1~5μmである。このような範囲であれば、組成物の粘度が高くなりすぎず、伸展性に優れ、また、得られる組成物が均一なものとなる。
【0045】
大粒子成分と小粒子成分の割合は特に限定されず、9:1~1:9(質量比)の範囲が好ましい。また、大粒子成分及び小粒子成分の形状は、球状、不定形状、針状等、特に限定されるものではない。
【0046】
なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法による粒度分布測定における体積基準の平均値(メジアン径)として求めることができる。
【0047】
(C)成分の配合量は、組成物全体に対し10~97質量%であり、40~95質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。97質量%より多いと、組成物が伸展性の乏しいものとなるし、10質量%より少ないと熱伝導性に乏しいものとなる。
【0048】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、上記(B)成分が、1分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~18の脂肪族不飽和炭化水素基を有する場合、上記成分の他に、必要に応じてさらに下記(D)成分および(E)成分を添加することにより、付加硬化型の熱伝導性シリコーン組成物とすることができる。以下、このような組成物を付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物ともいう。
【0049】
[(D)成分]
(D)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に2個以上、特に好ましくは2~100個、さらに好ましくは2~50個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のSiH基が、上記(B)成分が脂肪族不飽和炭化水素基を有する場合に、白金族金属触媒(後述の(E)成分)の存在下に付加反応(ヒドロシリル化)し、架橋構造を形成できるものであればよい。
【0050】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記性質を有するものであればその分子構造は特に限定されず、直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造、一部分岐状構造又は環状構造を有する直鎖状構造等が挙げられる。好ましくは直鎖状構造、環状構造である。
【0051】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃での動粘度が、好ましくは1~1,000mm/s、より好ましくは10~300mm/sである。前記動粘度が1mm/s以上であれば、シリコーン組成物の物理的特性が低下するおそれがなく、1,000mm/s以下であれば、シリコーン組成物の伸展性が乏しいものとなるおそれがない。
【0052】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子に結合した有機基としては、脂肪族不飽和炭化水素基以外の非置換又は置換の1価炭化水素基が挙げられる。特には、炭素原子数1~12、好ましくは炭素原子数1~10の、非置換又は置換の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基、これらの水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有有機基(グリシジル基又はグリシジルオキシ基置換アルキル基)等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、及び4-グリシドキシブチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、3-グリシドキシプロピル基が好ましい。
【0053】
なお、エポキシ環含有有機基を持つオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiH基を有するから、SiH基を有さない上記(A)及び(B)成分と明確に区別される。
【0054】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0055】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(B)成分中の脂肪族不飽和炭化水素基の個数の合計に対する(D)成分中のSiH基の個数が0.5~5となる量、好ましくは0.7~4.5となる量、より好ましくは1~4となる量である。(D)成分の量が上記下限値以上であれば付加反応が十分に進行して架橋が十分になる。また、上記上限値以下であれば、架橋構造が不均一となったり、組成物の保存性が著しく悪化したりすることもない。
【0056】
[(E)成分]
(E)成分は白金族金属触媒であり、上記脂肪族不飽和炭化水素基を有する(B)成分と上記(D)成分との付加反応を促進するために機能する。白金族金属触媒は、付加反応に用いられる従来公知のものを使用することができる。例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系の触媒が挙げられるが、中でも比較的入手しやすい白金又は白金化合物が好ましい。例えば、白金の単体、白金黒、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金配位化合物等が挙げられる。白金族金属触媒は1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
(E)成分の配合量は触媒としての有効量、即ち、付加反応を促進して本発明の熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物を硬化させるために必要な有効量であればよい。好ましくは、組成物全体に対し、白金族金属原子に換算した質量基準で0.1~500ppm、より好ましくは1~200ppm、さらに好ましくは10~100ppmである。触媒の量が上記下限値以上であれば触媒としての効果が十分得られる。また上記上限値以下であれば経済的である。
【0058】
[(F)成分]
本発明の付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物は、(F)アセチレン化合物、窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物からなる群より選択される1種以上の付加硬化反応制御剤を含有することが好ましい。
【0059】
(F)成分は室温でのヒドロシリル化反応の進行を抑える反応制御剤であり、シェルフライフ、ポットライフを延長させるために添加することができる。該反応制御剤は、付加硬化型シリコーン組成物に使用される従来公知の反応制御剤を使用することができる。これには、例えば、アセチレンアルコール類(例えば、エチニルメチルデシルカルビノール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール)等のアセチレン化合物、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の各種窒素化合物(オキシム化合物を除く)、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0060】
(F)成分を配合する場合の配合量は、(B)成分のうち脂肪族不飽和炭化水素基を有する成分の合計100質量部に対し、0.05~5質量部が好ましく、より好ましくは0.1~2質量部である。反応制御剤の量が0.05質量部以上であれば、所望とする十分なシェルフライフ、ポットライフが得られ、また、5質量部以下であれば、シリコーン組成物の硬化性が低下するおそれがない。
【0061】
また反応制御剤は、シリコーン組成物への分散性を良くするために、オルガノ(ポリ)シロキサンやトルエン等で希釈して使用してもよい。
【0062】
[その他の成分]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、さらに、必要に応じて上記(A)~(F)成分と異なるその他の成分を含むことができる。例えば、熱伝導性充填剤の充填性を向上する目的や、組成物に接着性を付与する目的で、加水分解性オルガノポリシロキサンや各種変成シリコーン、加水分解性オルガノシランを配合してもよい。さらに、組成物の粘度を調整するための溶剤を配合してもよい。さらに、シリコーン組成物の劣化を防ぐために、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等の、従来公知の酸化防止剤を必要に応じて含有してもよい。さらに、染料、顔料、難燃剤、沈降防止剤、又はチクソ性向上剤等を、必要に応じて配合することができる。なお、上記加水分解性オルガノポリシロキサン、変成シリコーン及び加水分解性オルガノシランは、上記(A)、(B)及び(D)成分のいずれとも異なる。
【0063】
シリコーン組成物を作製する工程
本発明におけるシリコーン組成物の製造方法について説明する。本発明におけるシリコーン組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、上述の(A)~(C)成分、ならびに必要によりこれらに加えて(D)~(F)成分およびその他の成分を、例えば、トリミックス、ツウィンミックス、プラネタリーミキサー(いずれも(株)井上製作所製混合機の登録商標)、ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機の登録商標)、ハイビスミックス(プライミクス株式会社製混合機の登録商標)等の混合機等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0064】
また本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、加熱しながら混合してもよい。加熱条件は特に制限されるものでないが、温度は通常25~220℃、好ましくは40~200℃、特に好ましくは50~170℃であり、時間は通常3分~24時間、好ましくは5分~12時間、特に好ましくは10分~6時間である。また加熱時に脱気を行ってもよい。
【0065】
(D)~(F)成分を混合する場合は、予め(A)~(C)成分を25~220℃で加熱混合し、その後、(D)~(F)成分を混合することが好ましい。また、いずれか又は両方の混合時に脱気を行ってもよい。
【0066】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、25℃にて測定される絶対粘度が、好ましくは10~1,000Pa・s、より好ましくは20~700Pa・s、さらに好ましくは30~500Pa・sである。絶対粘度が、10Pa・s以上であれば、形状保持が容易となり、熱伝導性充填剤の沈降を抑制することができ、作業性が悪くなるおそれがない。また絶対粘度が1,000Pa・s以下であれば、吐出や塗布が容易となる等、作業性が悪くなるおそれがない。前記絶対粘度は、上述した各成分の配合量を調整することにより得ることができる。前記絶対粘度は、例えばマルコム粘度計(タイプPC-1T)を用いて25℃で測定できる。
【0067】
また本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、通常、0.5~20W/m・Kの熱伝導率を有することができる。なお熱伝導率はホットディスク法で測定した25℃での値である。
【0068】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、以上のように、各成分の構成及びその比率を調整することで、非硬化型にも、硬化型にもすることもできる。非硬化型熱伝導性シリコーン組成物は、高温に長時間曝された場合の組成物の粘度上昇を抑制可能である。また、硬化型熱伝導性シリコーン組成物は、その硬化物が高温に長時間曝された場合の硬度上昇を小さくすることができる。
【0069】
このように本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、多量の熱伝導性充填剤を配合した放熱グリースが発熱部に長期間実装されても、非硬化型の場合には組成物の粘度が上昇せず、硬化型の場合には硬化物の硬度が上昇しないため、形成された熱伝導体が発熱部から剥離してしまうことはなく、電子部品パッケージやパワーモジュールの信頼性を十分に維持できる。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、動粘度はオストワルド粘度計による25℃での値である。平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における体積基準の平均値(メジアン径)である。
【0071】
下記実施例および比較例に用いられている(A)~(F)成分を下記に示す。
【0072】
(A)成分
A-1:下記式(5)で示されるオルガノポリシロキサン(25℃における動粘度=35mm/s)
【化5】
【0073】
A-2:下記式(6)で示されるオルガノポリシロキサン(25℃における動粘度=30mm/s)
【化6】
【0074】
A-3:下記式(7)で示されるオルガノポリシロキサン(25℃における動粘度=70mm/s)
【化7】
【0075】
A-4(比較例):下記式(8)で示されるオルガノポリシロキサン
(25℃における動粘度=30mm/s)
【化8】
【0076】
(B)成分
B-1:両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が2,000mm/sのジメチルポリシロキサン
B-2:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が600mm/sのジメチルポリシロキサン
B-3:両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、分子鎖中にビニル基を2個有する25℃における動粘度が600mm/sのジメチルポリシロキサン
【0077】
B-4:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が400mm/sのジメチルポリシロキサン
B-5:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が30mm/sのジメチルポリシロキサン
【0078】
(C)成分
C-1:平均粒径20μmのアルミニウム粉末:平均粒径2μmのアルミニウム粉末=60:40(質量比)の混合物
C-2:平均粒径0.3μmの酸化亜鉛粉末
C-3:平均粒径75μmの酸化アルミニウム粉末:平均粒径45μmの酸化アルミニウム粉末:平均粒径10μmの酸化アルミニウム粉末:平均粒径1μmの酸化アルミニウム粉末=22:22:22:34(質量比)の混合物
C-4:平均粒径60μmの窒化アルミニウム粉末、平均粒径20μmの窒化アルミニウム粉末、平均粒径1μmの窒化アルミニウム粉末=50:20:30(質量比)の混合物
【0079】
(D)成分
D-1:下記式(9)で示されるメチルハイドロジェンジメチルポリシロキサン
(25℃における動粘度=30mm/s)
【化9】
【0080】
D-2:下記式(10)で示されるメチルハイドロジェンジメチルポリシロキサン
(25℃における動粘度=40mm/s)
【化10】
【0081】
D-3:下記式(11)で示されるメチルハイドロジェンジメチルポリシロキサン
(25℃における動粘度=130mm/s)
【化11】
【0082】
D-4:下記式(12)で示されるメチルハイドロジェンジメチルポリシロキサン
(25℃における動粘度=25mm/s)
【化12】
【0083】
(E)成分
E-1:白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を上記B-2と同じジメチルポリシロキサンに溶解した溶液(白金原子含有量:1質量%)
【0084】
(F)成分
F-1:下記式(13)で示される1-エチニル-1-シクロヘキサノール
【化13】
【0085】
F-2:下記式(14)で示されるエチニルメチルデシルカルビノール
【化14】
【0086】
熱伝導性シリコーン組成物の調製
上記(A)~(F)成分を、下記表1に示す配合量で、下記に示す方法で配合して熱伝導性シリコーン組成物(非硬化型及び付加硬化型)を調製した。
【0087】
(非硬化型熱伝導性シリコーン組成物)
[実施例1,2、比較例1]
5リットルのプラネタリーミキサー(井上製作所(株)製)に、(A)、(B)および(C)成分を加え、170℃で脱気しながら1時間混合した。40℃以下になるまで冷却した後、25℃混合し、非硬化型熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
【0088】
(付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物)
[実施例3~7、比較例2~4]
5リットルのプラネタリーミキサー(井上製作所(株)製)に、(A)、(B)および(C)成分を加え、170℃で脱気しながら1時間混合した。40℃以下になるまで冷却した後、(F)、(E)および(D)成分を加え、25℃で混合し、付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物を調製した。なお、SiH/SiViは(B)成分中のアルケニル基の個数の合計に対する(D)成分のSiH基の個数の合計の比である。
【0089】
得られた組成物の絶対粘度、熱伝導率および硬化物の硬度を下記の方法に従い測定した結果を表1に示した。
【0090】
[絶対粘度]
各シリコーン組成物の絶対粘度を、マルコム粘度計(タイプPC-1T)を用いて25℃で測定した(ロータAで10rpm、ズリ速度6[1/s])。
また、実施例1,2および比較例1の非硬化型の熱伝導性シリコーン組成物について、各組成物を100mlガラスビーカーに充填し、150℃の環境に250時間曝した後の絶対粘度を測定した。
【0091】
[熱伝導率]
各組成物をキッチンラップで包み、熱伝導率を京都電子工業(株)製TPS-2500Sを用いてホットディスク法(ISO 22007-2)で測定した。
【0092】
[硬度]
実施例3~7および比較例2~4の付加硬化型熱伝導性シリコーン組成物を150℃で1時間加熱硬化して作成した6mm厚の硬化物を2枚重ねた試験片について、150℃の環境に250時間曝した前後の硬度をアスカーC硬度計を用いて測定した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1の結果より、本発明の要件を満たす実施例1~7の熱伝導性シリコーン組成物(実施例1,2は非硬化型、実施例3-7は付加硬化型)では、多量の熱伝導性充填剤を配合することで高熱伝導率を有しながらも、150℃で250時間保持後の粘度または硬度上昇が小さいことがわかる。即ち、電子部品パッケージやパワーモジュール実装時に高い信頼性が得られる。
【0095】
一方、(A-1)~(A-3)成分(本発明の(A)成分)を含まない比較例1~4の熱伝導性シリコーン組成物では、150℃で250時間保持後の粘度または硬度上昇が大きいことがわかる。即ち、電子部品パッケージやパワーモジュール実装時の信頼性が低下する恐れがある。
【0096】
従って、本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、非硬化型の場合は高温に長時間曝された場合であっても組成物の粘度上昇を抑制可能であり、また硬化型の場合は高温に長時間曝された場合であっても硬化物の硬度上昇を抑制可能である。このような特性を有するため、高い信頼性が求められる電子部品パッケージやパワーモジュールに使用する放熱グリースとして特に好適に利用することができる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。