(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026843
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20230221BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230221BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20230221BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230221BHJP
C23C 16/04 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 C
H01L21/90 S
H01L21/28 301R
C23C16/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132242
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】河野 有美子
(72)【発明者】
【氏名】倪 澤遠
(72)【発明者】
【氏名】東雲 秀司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輝
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
5F033
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA14
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4K030BA10
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5F058BF37
(57)【要約】
【課題】金属膜と絶縁膜の中で金属膜に選択的にSAMを形成する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、下記(A)~(C)を含む。(A)絶縁膜が露出する第1領域と、金属膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備する。(B)前記基板の前記表面に対して自己組織化単分子膜の原料であるイソチオシアネート基(NCS基)を頭部基に含む有機化合物を供給し、前記第1領域及び前記第2領域の中で、前記第2領域に選択的に、前記有機化合物を吸着し、前記自己組織化単分子膜を形成する。(C)前記基板の前記表面に対して第2絶縁膜の原料である原料ガスを供給し、前記自己組織化単分子膜を用い前記第2領域における前記第2絶縁膜の形成を阻害しつつ、前記第1領域に前記第2絶縁膜を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜が露出する第1領域と、金属膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備することと、
前記基板の前記表面に対して自己組織化単分子膜の原料であるイソチオシアネート基(NCS基)を頭部基に含む有機化合物を供給し、前記第1領域及び前記第2領域の中で、前記第2領域に選択的に、前記有機化合物を吸着し、前記自己組織化単分子膜を形成することと、
前記基板の前記表面に対して第2絶縁膜の原料である原料ガスを供給し、前記自己組織化単分子膜を用い前記第2領域における第2絶縁膜の形成を阻害しつつ、前記第1領域に前記第2絶縁膜を形成することと、
を含む、成膜方法。
【請求項2】
前記絶縁膜は、前記基板の前記表面に凹部を有し、
前記金属膜は、前記凹部に形成される、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記基板は、前記表面に、バリア膜が露出する第3領域を更に有し、
前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域の中で、前記第2領域及び前記第3領域に選択的に、前記有機化合物を吸着し、前記自己組織化単分子膜を形成することと、
前記自己組織化単分子膜を用い前記第2領域及び前記第3領域における前記第2絶縁膜の形成を阻害しつつ、前記第1領域に前記第2絶縁膜を形成することと、
を含む、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記バリア膜は、TaN膜又はTiN膜である、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記基板は、前記表面に、ライナー膜が露出する第4領域を更に有し、
前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域及び前記第4領域の中で、前記第2領域、前記第3領域及び前記第4領域に選択的に、前記有機化合物を吸着し、前記自己組織化単分子膜を形成することと、
前記自己組織化単分子膜を用い前記第2領域、前記第3領域及び前記第4領域における前記第2絶縁膜の形成を阻害しつつ、前記第1領域に前記第2絶縁膜を形成することと、
を含む、請求項3又は4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記ライナー膜は、Co膜又はRu膜である、請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記凹部の内部には、前記金属膜とは異なる金属で形成される第2金属膜が埋め込まれ、
前記金属膜は、前記第2金属膜を覆うキャップ膜である、請求項2~6のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第2金属膜は、Cu膜であり、
前記金属膜である前記キャップ膜は、Co膜又はRu膜である、請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記金属膜は、Cu膜又はW膜である、請求項2~6のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記絶縁膜は、SiN膜、SiO膜、SiOC膜、SiON膜、又はSiOCである、請求項2~9のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記有機化合物を、気体の状態で、前記基板の前記表面に対して供給することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項12】
処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給機構と、
前記処理容器の内部からガスを排出するガス排出機構と、
前記処理容器に対して前記基板を搬入出する搬送機構と、
前記ガス供給機構、前記ガス排出機構及び前記搬送機構を制御し、請求項1~11のいずれか1項に記載の成膜方法を実施する制御部と、
を備える、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板の表面に自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)を形成することと、SAMの原料である有機化合物の頭部基の一例としてイソチオシアネート基を用いることと、が記載されている。特許文献2にも同様の内容が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10,782,613号明細書
【特許文献2】特表2013-508989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、金属膜と絶縁膜の中で金属膜に選択的にSAMを形成する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、下記(A)~(C)を含む。(A)絶縁膜が露出する第1領域と、金属膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備する。(B)前記基板の前記表面に対して自己組織化単分子膜の原料であるイソチオシアネート基を頭部基に含む有機化合物を供給し、前記第1領域及び前記第2領域の中で、前記第2領域に選択的に、前記有機化合物を吸着し、前記自己組織化単分子膜を形成する。(C)前記基板の前記表面に対して第2絶縁膜の原料である原料ガスを供給し、前記自己組織化単分子膜を用い前記第2領域における第2絶縁膜の形成を阻害しつつ、前記第1領域に前記第2絶縁膜を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、金属膜と絶縁膜の中で金属膜に選択的にSAMを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2(A)は一実施形態に係る基板のステップS1を示す図、
図2(B)は一実施形態に係る基板のステップS2を示す図、
図2(C)は一実施形態に係る基板のステップS3を示す図である。
【
図3】
図3(A)は第1変形例に係る基板のステップS1を示す図、
図3(B)は第1変形例に係る基板のステップS2を示す図、
図3(C)は第1変形例に係る基板のステップS3を示す図である。
【
図4】
図4(A)は第2変形例に係る基板のステップS1を示す図、
図4(B)は第2変形例に係る基板のステップS2を示す図、
図4(C)は第2変形例に係る基板のステップS3を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る成膜装置を示す平面図である。
【
図7】
図7は、実験例1で得られたCu基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す図である。
【
図8】
図8は、実験例2で得られたCu基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す図である。
【
図9】
図9は、実験例3で得られた各種基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す図である。
【
図15】
図15は、参考例1で得られた各種基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
先ず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば
図1に示すステップS1~S3を含む。なお、成膜方法は、ステップS1~S3以外のステップを含んでもよい。また、成膜方法は、ステップS2~S3を複数回繰り返し含んでもよい。
【0010】
先ず、
図1のステップS1では、
図2(A)に示すように、基板1を準備する。基板1を準備することは、例えば、
図5に示す成膜装置100にキャリアCを搬入することを含む。キャリアCは、複数の基板1を収容する。
【0011】
基板1は、シリコンウェハ又は化合物半導体ウェハ等の下地基板10を有する。化合物半導体ウェハは、特に限定されないが、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0012】
基板1は、下地基板10の上に形成される絶縁膜11を有する。絶縁膜11と下地基板10の間に、導電膜等が形成されてもよい。絶縁膜11は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。
【0013】
絶縁膜11は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、又はSiOCN膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は1:1には限定されない。SiN膜、SiOC膜、SiON膜、及びSiOCN膜について同様である。絶縁膜11は、基板1の表面1aに、凹部を有する。凹部は、トレンチ、コンタクトホール又はビアホールである。
【0014】
基板1は、凹部の内部に充填される金属膜12を有する。金属膜12は特に限定されないが、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、又はW膜である。
【0015】
基板1は、凹部に沿って形成されるバリア膜13を更に有する。バリア膜13は、金属膜12から絶縁膜11への金属拡散を抑制する。バリア膜13は、特に限定されないが、例えば、TaN膜、又はTiN膜である。ここで、TaN膜とは、タンタル(Ta)と窒素(N)を含む膜という意味である。TaN膜におけるTaとNの原子比は1:1には限定されない。TiN膜について同様である。
【0016】
表1に、絶縁膜11と、金属膜12と、バリア膜13との具体例をまとめて示す。
【0017】
【0018】
なお、絶縁膜11と、金属膜12と、バリア膜13との組み合わせは、特に限定されない。
【0019】
図2(A)に示すように、基板1は、その表面1aに、絶縁膜11が露出する第1領域A1と、金属膜12が露出する第2領域A2とを有する。また、基板1は、その表面1aに、バリア膜13が露出する第3領域A3を更に有してもよい。第3領域A3は、第1領域A1と第2領域A2の間に形成される。なお、基板1の構造は、後述するように、
図2(A)に示す構造には限定されない。
【0020】
基板1は、
図1のステップS2に供される前に、自然酸化膜を除去するステップに供されてもよい。自然酸化膜は、金属膜12の表面に形成される。自然酸化膜の除去は、例えば、基板1の表面1aに対して水素(H
2)ガスを供給することを含む。水素ガスは、自然酸化膜を還元し、除去する。水素ガスは、化学反応を促進すべく、高温に加熱されてもよい。また、水素ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。
【0021】
自然酸化膜の除去は、基板1の表面1aに対してドライ処理には限定されず、ウェット処理であってもよい。例えば、自然酸化膜の除去は、基板1の表面1aに対してクエン酸(C(OH)(CH2COOH)2COOH)等の溶液を供給してもよい。その後、基板1は、純水等で洗浄され、乾燥される。
【0022】
次に、
図1のステップS2では、
図2(B)に示すように、基板1の表面1aに対してSAM17の原料であるイソチオシアネート基を頭部基に含む有機化合物を供給する。イソチオシアネート基は、絶縁膜11に比べて金属膜12に化学吸着しやすい。それゆえ、第1領域A1及び第2領域A2の中で、第2領域A2に選択的に、有機化合物を化学吸着でき、SAM17を形成できる。
【0023】
イソチオシアネート基は、絶縁膜11に比べてバリア膜13にも化学吸着しやすい。それゆえ、
図2(B)に示すように、第1領域A1、第2領域A2及び第3領域A3の中で、第2領域A2及び第3領域A3に選択的に、有機化合物を化学吸着でき、SAM17を形成できる。このように、イソチオシアネート基を頭部基に含む有機化合物は、複数の領域(例えば第2領域A2及び第3領域A3)に亘ってSAM17を形成できる。
【0024】
イソチオシアネート基を頭部基に含む有機化合物は、一般式「R-NCS」で表される。Rは、例えば、炭化水素基、又は炭化水素基の水素の少なくとも一部をハロゲン元素に置換したものである。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等を含む。そのような有機化合物の具体例として、CF3(CF2)5CH2CH2NCSが挙げられる。
【0025】
上記の有機化合物は、気体の状態で基板1の表面1aに対して供給されてもよいし、液体の状態で基板1の表面1aに対して供給されてもよい。但し、前者は、後者よりも、緻密なSAM17を形成できる。詳しくは、後述する。
【0026】
次に、
図1のステップS3では、
図2(C)に示すように、基板1の表面1aに対して第2絶縁膜18の原料である原料ガスを供給し、SAM17を用い第2領域A2における第2絶縁膜18の形成を阻害しつつ、第1領域A1に第2絶縁膜18を形成する。第2絶縁膜18は、絶縁膜11の上に形成され、金属膜12の上には形成されない。
【0027】
SAM17は、上記の通り、第2領域A2だけではなく、第3領域A3にも形成される。この場合、ステップS3では、SAM17を用い第2領域A2及び第3領域A3における第2絶縁膜18の形成を阻害しつつ、第1領域A1に第2絶縁膜18を形成する。第2絶縁膜18は、絶縁膜11の上に形成され、金属膜12とバリア膜13の上には形成されない。本実施形態によれば、第2絶縁膜18がバリア膜13の上に形成されてしまう場合に比べて、基板1の配線抵抗を低減できる。
【0028】
第2絶縁膜18は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、又はALD(Atomoic Layer Deposition)法で形成される。第2絶縁膜18は、特に限定されないが、例えばAlO膜、SiO膜、SiN膜、ZrO膜、又はHfO膜等である。ここで、AlO膜とは、アルミニウム(Al)と酸素(O)を含む膜という意味である。AlO膜におけるAlとOの原子比は1:1には限定されない。SiO膜、SiN膜、ZrO膜、及びHfO膜について同様である。第2絶縁膜18は、絶縁膜11と同じ材質の膜でもよいし、異なる材質の膜でもよい。
【0029】
AlO膜をALD法で形成する場合、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスなどのAl含有ガスと、水蒸気(H2Oガス)などの酸化ガスとが、基板1の表面1aに対して交互に供給される。水蒸気は疎水性のSAM17に吸着しないので、AlOは第1領域A1に選択的に堆積する。Al含有ガス及び酸化ガスの他に、水素ガス等の改質ガスが基板1に対して供給されてもよい。これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。また、これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、加熱されてもよい。
【0030】
HfO膜をALD法で形成する場合、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH:Hf[N(CH3)2]4)ガス等のHf含有ガスと、水蒸気(H2Oガス)等の酸化ガスとが、基板1の表面1aに対して交互に供給される。水蒸気は疎水性のSAM17に吸着しないので、HfOは第1領域A1に選択的に堆積する。Hf含有ガス及び酸化ガスの他に、水素ガス等の改質ガスが基板1に対して供給されてもよい。これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。また、これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、加熱されてもよい。
【0031】
次に、
図3(A)~
図3(C)を参照して、第1変形例に係る基板1の処理について説明する。本変形例の基板1は、
図3(A)に示すように、その表面1aに、ライナー膜14が露出する第4領域A4を更に有する。第4領域A4は、第2領域A2と第3領域A3の間に形成される。ライナー膜14は、バリア膜13の上に形成され、金属膜12の形成を支援する。金属膜12は、ライナー膜14の上に形成される。ライナー膜14は、特に限定されないが、例えば、Co膜、又はRu膜である。
【0032】
表2に、絶縁膜11と、金属膜12と、バリア膜13と、ライナー膜14との具体例をまとめて示す。
【0033】
【0034】
なお、絶縁膜11と、金属膜12と、バリア膜13と、ライナー膜14との組み合わせは、特に限定されない。
【0035】
ところで、SAM17の原料である有機化合物のイソチオシアネート基は、絶縁膜11に比べてライナー膜14にも化学吸着しやすい。
【0036】
それゆえ、本変形例のステップS2では、
図3(B)に示すように、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4の中で、第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4に選択的に、有機化合物を化学吸着でき、SAM17を形成できる。SAM17は、第1領域A1には形成されない。
【0037】
また、本変形例のステップS3では、
図3(C)に示すように、SAM17を用い第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4における第2絶縁膜18の形成を阻害しつつ、第1領域A1に第2絶縁膜18を形成する。第2絶縁膜18は、絶縁膜11の上に形成され、金属膜12とバリア膜13とライナー膜14の上には形成されない。本変形例によれば、第2絶縁膜18がバリア膜13及びライナー膜14の上に形成されてしまう場合に比べて、基板1の配線抵抗を低減できる。
【0038】
次に、
図4(A)~
図4(C)を参照して、第2変形例に係る基板1の処理について説明する。本変形例の基板1は、
図4(A)に示すように、金属膜12がキャップ膜である。絶縁膜11の凹部には、金属膜12とは異なる金属で形成される第2金属膜15が埋め込まれる。第2金属膜15の上に金属膜12が形成され、金属膜12は第2金属膜15を覆う。
【0039】
表3に、絶縁膜11と、金属膜(キャップ膜)12と、バリア膜13と、ライナー膜14と、第2金属膜15との具体例をまとめて示す。
【0040】
【0041】
なお、絶縁膜11と、金属膜12と、バリア膜13と、ライナー膜14と、第2金属膜15との組み合わせは、特に限定されない。
【0042】
本変形例のステップS2では、
図4(B)に示すように、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4の中で、第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4に選択的に、有機化合物を化学吸着でき、SAM17を形成できる。SAM17は、第1領域A1には形成されない。
【0043】
また、本変形例のステップS3では、
図4(C)に示すように、SAM17を用い第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4における第2絶縁膜18の形成を阻害しつつ、第1領域A1に第2絶縁膜18を形成する。第2絶縁膜18は、絶縁膜11の上に形成され、金属膜12とバリア膜13とライナー膜14の上には形成されない。本変形例によれば、第2絶縁膜18がバリア膜13及びライナー膜14の上に形成されてしまう場合に比べて、基板1の配線抵抗を低減できる。
【0044】
次に、
図5を参照して、上記の成膜方法を実施する成膜装置100について説明する。
図5に示すように、成膜装置100は、第1処理部200Aと、第2処理部200Bと、搬送部400と、制御部500とを有する。第1処理部200Aは、
図1のステップS2を実施する。第2処理部200Bは、
図1のステップS3を実施する。第1処理部200Aと、第2処理部200Bは、同様の構造を有する。従って、第1処理部200Aのみで、
図1のステップS2~S3の全てを実施することも可能である。搬送部400は、第1処理部200A、及び第2処理部200Bに対して、基板1を搬送する。制御部500は、第1処理部200A、第2処理部200B、及び搬送部400を制御する。
【0045】
搬送部400は、第1搬送室401と、第1搬送機構402とを有する。第1搬送室401の内部雰囲気は、大気雰囲気である。第1搬送室401の内部に、第1搬送機構402が設けられる。第1搬送機構402は、基板1を保持するアーム403を含み、レール404に沿って走行する。レール404は、キャリアCの配列方向に延びている。
【0046】
また、搬送部400は、第2搬送室411と、第2搬送機構412とを有する。第2搬送室411の内部雰囲気は、真空雰囲気である。第2搬送室411の内部に、第2搬送機構412が設けられる。第2搬送機構412は、基板1を保持するアーム413を含み、アーム413は、鉛直方向及び水平方向に移動可能に、且つ鉛直軸周りに回転可能に配置される。第2搬送室411には、異なるゲートバルブGを介して第1処理部200Aと第2処理部200Bとが接続される。
【0047】
更に、搬送部400は、第1搬送室401と第2搬送室411の間に、ロードロック室421を有する。ロードロック室421の内部雰囲気は、図示しない調圧機構により真空雰囲気と大気雰囲気との間で切り換えられる。これにより、第2搬送室411の内部を常に真空雰囲気に維持できる。また、第1搬送室401から第2搬送室411にガスが流れ込むのを抑制できる。第1搬送室401とロードロック室421の間、及び第2搬送室411とロードロック室421の間には、ゲートバルブGが設けられる。
【0048】
制御部500は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)501と、メモリ等の記憶媒体502とを有する。記憶媒体502には、成膜装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部500は、記憶媒体502に記憶されたプログラムをCPU501に実行させることにより、成膜装置100の動作を制御する。制御部500は、第1処理部200Aと第2処理部200Bと搬送部400とを制御し、上記の成膜方法を実施する。
【0049】
次に、成膜装置100の動作について説明する。先ず、第1搬送機構402が、キャリアCから基板1を取り出し、取り出した基板1をロードロック室421に搬送する。その後、第1搬送機構402が、ロードロック室421から退出する。次に、ロードロック室421の内部雰囲気が大気雰囲気から真空雰囲気に切り換えられる。その後、第2搬送機構412が、ロードロック室421から基板1を取り出し、取り出した基板1を第1処理部200Aに搬送する。
【0050】
次に、第1処理部200Aが、ステップS2を実施する。その後、第2搬送機構412が、第1処理部200Aから基板1を取り出し、取り出した基板1を第2処理部200Bに搬送する。この間、基板1の周辺雰囲気を真空雰囲気に維持でき、基板1の酸化を抑制できる。
【0051】
次に、第2処理部200Bが、ステップS3を実施する。その後、第2搬送機構412が、第2処理部200Bから基板1を取り出し、取り出した基板1をロードロック室421に搬送する。その後、第2搬送機構412が、ロードロック室421から退出する。続いて、ロードロック室421の内部雰囲気が真空雰囲気から大気雰囲気に切り換えられる。その後、第1搬送機構402が、ロードロック室421から基板1を取り出し、取り出した基板1をキャリアCに収容する。そして、基板1の処理が終了する。
【0052】
次に、
図6を参照して、第1処理部200Aについて説明する。なお、第2処理部200Bは、第1処理部200Aと同様に構成されるので、図示及び説明を省略する。
【0053】
第1処理部200Aは、略円筒状の気密な処理容器210を備える。処理容器210の底壁の中央部には、排気室211が設けられている。排気室211は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室211には、例えば排気室211の側面において、排気配管212が接続されている。
【0054】
排気配管212には、圧力制御器271を介して排気源272が接続されている。圧力制御器271は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管212は、排気源272によって処理容器210内を減圧できるように構成されている。圧力制御器271と、排気源272とで、処理容器210内のガスを排出するガス排出機構270が構成される。
【0055】
処理容器210の側面には、搬送口215が設けられている。搬送口215は、ゲートバルブGによって開閉される。処理容器210内と第2搬送室411(
図5参照)との間における基板1の搬入出は、搬送口215を介して行われる。
【0056】
処理容器210内には、基板1を保持する保持部であるステージ220が設けられている。ステージ220は、基板1の表面1aを上に向けて、基板1を水平に保持する。ステージ220は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材221によって支持されている。ステージ220の表面には、例えば直径が300mmの基板1を載置するための略円形状の凹部222が形成されている。凹部222は、基板1の直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部222の深さは、例えば基板1の厚さと略同一に構成される。ステージ220は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ220は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部222の代わりにステージ220の表面の周縁部に基板1をガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0057】
ステージ220には、例えば接地された下部電極223が埋設される。下部電極223の下方には、加熱機構224が埋設される。加熱機構224は、制御部500(
図5参照)からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ220に載置された基板1を設定温度に加熱する。ステージ220の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ220の全体が下部電極として機能するので、下部電極223をステージ220に埋設しなくてよい。ステージ220には、ステージ220に載置された基板1を保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン231が設けられている。昇降ピン231の材料は、例えばアルミナ(Al
2O
3)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン231の下端は、支持板232に取り付けられている。支持板232は、昇降軸233を介して処理容器210の外部に設けられた昇降機構234に接続されている。
【0058】
昇降機構234は、例えば排気室211の下部に設置されている。ベローズ235は、排気室211の下面に形成された昇降軸233用の開口部219と昇降機構234との間に設けられている。支持板232の形状は、ステージ220の支持部材221と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン231は、昇降機構234によって、ステージ220の表面の上方と、ステージ220の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0059】
処理容器210の天壁217には、絶縁部材218を介してガス供給部240が設けられている。ガス供給部240は、上部電極を成しており、下部電極223に対向している。ガス供給部240には、整合器251を介して高周波電源252が接続されている。高周波電源252から上部電極(ガス供給部240)に450kHz~100MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部240)と下部電極223との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマを生成するプラズマ生成部250は、整合器251と、高周波電源252と、を含む。なお、プラズマ生成部250は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。
【0060】
ガス供給部240は、中空状のガス供給室241を備える。ガス供給室241の下面には、処理容器210内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔242が例えば均等に配置されている。ガス供給部240における例えばガス供給室241の上方には、加熱機構243が埋設されている。加熱機構243は、制御部500からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0061】
ガス供給室241には、ガス供給路261を介して、ガス供給機構260が接続される。ガス供給機構260は、ガス供給路261を介してガス供給室241に、
図1のステップS2~S3の少なくとも1つで用いられるガスを供給する。ガス供給機構260は、図示しないが、ガスの種類毎に、個別配管と、個別配管の途中に設けられる開閉バルブと、個別配管の途中に設けられる流量制御器とを含む。開閉バルブが個別配管を開くと、供給源からガス供給路261にガスが供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが個別配管を閉じると、供給源からガス供給路261へのガスの供給が停止される。
【0062】
<実験例1>
実験例1では、Cu基板を用意し、Cu基板表面の自然酸化膜を除去し、Cu基板表面に対してSAMの原料を供給し、Cu基板を加熱してSAMを固定した。その後、Cu基板の表面状態を、X線光電子分光(XPS)装置で測定した。
【0063】
自然酸化膜の除去では、クエン酸濃度が1体積%である65℃の水溶液にCu基板を1分間浸漬した後、純水でCu基板を洗浄し、その後、N2ガスでCu基板を乾燥した。
【0064】
SAMの原料供給では、SAMの原料濃度が0.1体積%である85℃のトルエン溶液にCu基板を5分間浸漬した後、85℃のトルエンでCu基板を洗浄し、その後、N2ガスでCu基板を乾燥した。SAMの原料としては、CF3(CF2)5CH2CH2NCSを用いた。
【0065】
SAMの固定では、60℃のホットプレート上でCu基板を10分間加熱し、続いて120℃のホットプレート上でCu基板を4分間加熱した。
【0066】
図7に、実験例1で得られたCu基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す。
図7には、SAMの原料として、CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NCSの代わりに、CF
3(CF
2)
7CH
2CH
2SH、又はCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NO
2を用いた以外、同一の条件でCu基板の表面を処理した場合の結果も併せて示す。
【0067】
図7において、実線L1はSAM原料としてCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NCSを用いた場合の結果を示し、破線L2はSAM原料としてCF
3(CF
2)
7CH
2CH
2SHを用いた場合の結果を示し、二点鎖線L3はSAM原料としてCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NO
2を用いた場合の結果を示す。
【0068】
図7から明らかなように、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)、チオール基(SH基)及びニトロ基(NO
2基)のいずれの場合も、SAMの構成元素であるフッ素(F)のピークが認められた。このことから、いずれの場合も、SAMがCu基板表面に形成されたことが分かる。
【0069】
図7から明らかなように、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)である場合、チオール基(SH基)及びニトロ基(NO
2基)である場合に比べて、フッ素のピークが大きく、SAMの形成密度が高いことが分かる。SAMの形成密度が高いほど、
図1のステップS3でSAMが第2絶縁膜の形成を阻害しやすい。
【0070】
図7において、実線L1がSAM原料が1分子中に13個のフッ素原子を有する場合の結果であるのに対して、破線L2はSAM原料が1分子中に17個のフッ素原子を有する場合の結果である。それゆえ、
図7において、縦軸を「光電子の数」から「分子の形成密度」に置き換えた場合、実線L1と破線L2の差が広がると考えられる。
【0071】
なお、二点鎖線L3も、実線L1と同様に、SAM原料が1分子中に13個のフッ素原子を有する場合の結果である。それゆえ、
図7において、縦軸を「光電子の数」から「分子の形成密度」に置き換えた場合、二点鎖線L3と破線L2の差が縮まると考えられ、大小関係が逆転することも考えられる。
【0072】
<実験例2>
実験例2では、Cu基板表面に対してSAMの原料を液体の状態で供給する代わりに気体の状態で供給した以外、実験例1と同じ条件でCu基板を処理した。具体的には、実験例2のSAMの原料供給では、先ず、SAMの原料濃度が0.1体積%であるトルエン溶液とCu基板の両方を容器の内部に収容し、Cu基板をトルエン溶液の液面よりも上方に配置した。その状態で、容器の全体を外側からヒータで均一に加熱した。加熱温度は85℃、加熱時間は5分であった。これにより、Cu基板表面に対してSAMの原料を気体の状態で供給した。SAMの原料としては、CF3(CF2)5CH2CH2NCSを用いた。
【0073】
図8に、実験例2で得られたCu基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す。
図8には、SAMの原料として、CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NCSの代わりに、CF
3(CF
2)
7CH
2CH
2SH、又はCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NO
2を用いた以外、同一の条件でCu基板の表面を処理した場合の結果も併せて示す。
【0074】
図8において、実線L1はSAM原料としてCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NCSを用いた場合の結果を示し、破線L2はSAM原料としてCF
3(CF
2)
7CH
2CH
2SHを用いた場合の結果を示し、二点鎖線L3はSAM原料としてCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2NO
2を用いた場合の結果を示す。
【0075】
図8から明らかなように、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)、チオール基(SH基)及びニトロ基(NO
2基)のいずれの場合も、SAMの構成元素であるフッ素(F)のピークが認められた。このことから、いずれの場合も、SAMがCu基板表面に形成されたことが分かる。
【0076】
SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)、チオール基(SH基)及びニトロ基(NO
2基)のいずれの場合も、
図8のフッ素のピークは、
図7のフッ素のピークに比べて大きかった。このことから、Cu基板表面に対してSAMを液体の状態で供給する代わりに気体の状態で供給すると、SAMがCu基板表面に高い密度で形成されることが分かる。
【0077】
<実験例3>
実験例3では、Cu基板の代わりに各種基板を用意した以外、実験例1と同じ条件で基板を処理した。基板としては、基板表面にCo膜を含むもの、Ru膜を含むもの、W膜を含むもの、TiN膜を含むもの、及びSiO膜を含むものを用意した。SiO膜は、シリコン熱酸化膜であった。
【0078】
なお、実験例3のSAMの原料供給では、実験例1のSAMの原料供給と同様に、SAMの原料濃度が0.1体積%である85℃のトルエン溶液に基板を5分間浸漬した後、85℃のトルエンで基板を洗浄し、その後、N2ガスで基板を乾燥した。SAMの原料としては、CF3(CF2)5CH2CH2NCSを用いた。
【0079】
図9に、実験例3で得られた各種基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す。
図9には、
図7に実線L1で示すCu基板の表面状態をXPSで測定した結果(実験例1の結果)も併せて示す。
図10~
図14は、
図9の一部の結果を示す図である。
図9~
図14から明らかなように、イソチオシアネート基(NCS基)を頭部基に含む有機化合物は、SiOに比べて、Cu、Co、Ru、W、TiNに吸着しやすいことが分かる。
【0080】
従って、イソチオシアネート基(NCS基)を頭部基に含む有機化合物は、金属膜が露出する領域だけではなく、バリア膜が露出する領域、又はライナー膜が露出する領域にも、SAMを形成できることが分かる。そして、SAMは、金属膜における第2絶縁膜の形成を阻害できるだけでなく、バリア膜、又はライナー膜における第2絶縁膜の形成をも阻害できる。それゆえ、基板1の配線抵抗を低減できる。
【0081】
<参考例1>
参考例1では、SAMの原料として、ニトロ基(NO2基)を頭部基に有する有機化合物を用いた以外、実験例3と同じ条件で基板を処理した。基板としては、基板表面にCo膜を含むもの、Ru膜を含むもの、W膜を含むもの、TiN膜を含むもの、及びSiO膜を含むものを用意した。SiO膜は、シリコン熱酸化膜であった。
【0082】
なお、参考例1のSAMの原料供給では、実験例1のSAMの原料供給と同様に、SAMの原料濃度が0.1体積%である85℃のトルエン溶液に基板を5分間浸漬した後、85℃のトルエンで基板を洗浄し、その後、N2ガスで基板を乾燥した。SAMの原料としては、CF3(CF2)5CH2CH2NO2を用いた。
【0083】
図15に、参考例1で得られた各種基板の表面状態をXPSで測定した結果を示す。
図15には、
図7に二点鎖線L3で示すCu基板の表面状態をXPSで測定した結果も併せて示す。
図16~
図20は、
図15の一部の結果を示す図である。
図15~
図20から明らかなように、ニトロ基(NO
2基)を頭部基に含む有機化合物は、SiOに比べて、Cu、Co、Ru、W、TiNに吸着しやすいことが分かる。
【0084】
従って、ニトロ基(NO2基)を頭部基に含む有機化合物は、金属膜が露出する領域だけではなく、バリア膜が露出する領域、又はライナー膜が露出する領域にも、SAMを形成できることが分かる。そして、SAMは、金属膜における第2絶縁膜の形成を阻害できるだけでなく、バリア膜、又はライナー膜における第2絶縁膜の形成をも阻害できる。それゆえ、基板1の配線抵抗を低減できる。
【0085】
<実験例3と参考例1の対比>
図10に二点鎖線で示すフッ素のピークは、
図16に二点鎖線で示すフッ素のピークに比べて大きかった。このことから、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)である場合、ニトロ基(NO
2基)である場合に比べて、SAMがCu基板表面に高い密度で形成されることが分かる。
【0086】
図12に破線で示すフッ素のピークは、
図18に破線で示すフッ素のピークに比べて大きかった。このことから、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)である場合、ニトロ基(NO
2基)である場合に比べて、SAMがRu膜表面に高い密度で形成されることが分かる。
【0087】
図13に破線で示すフッ素のピークは、
図19に破線で示すフッ素のピークに比べて大きかった。このことから、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)である場合、ニトロ基(NO
2基)である場合に比べて、SAMがW膜表面に高い密度で形成されることが分かる。
【0088】
図14に破線で示すフッ素のピークは、
図20に破線で示すフッ素のピークに比べて大きかった。このことから、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)である場合、ニトロ基(NO
2基)である場合に比べて、SAMがTiN膜表面に高い密度で形成されることが分かる。
【0089】
上記の通り、SAM原料の頭部基がイソチオシアネート基(NCS基)である場合、ニトロ基(NO
2基)である場合に比べて、SAMが各種の膜表面に高い密度で形成されることが分かる。SAMの形成密度が高いほど、
図1のステップS3でSAMが第2絶縁膜の形成を阻害しやすい。
【0090】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
1a 表面
11 絶縁膜
12 金属膜
17 SAM(自己組織化単分子膜)
18 第2絶縁膜
A1 第1領域
A2 第2領域