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特開2023-26979ハイドロタルサイト化合物及び光活性触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026979
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ハイドロタルサイト化合物及び光活性触媒
(51)【国際特許分類】
   C01G 9/00 20060101AFI20230221BHJP
   B01J 27/138 20060101ALI20230221BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230221BHJP
   B01J 27/236 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C01G9/00 B
B01J27/138 M
B01J35/02 J
B01J27/236 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132462
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横川 善之
【テーマコード(参考)】
4G047
4G169
【Fターム(参考)】
4G047AA05
4G047AA07
4G047AB02
4G047AC03
4G047AD03
4G169AA02
4G169BA48A
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BB16A
4G169BB16B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC66A
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169CA05
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA05
4G169EC25
4G169FC08
4G169HA01
4G169HB10
4G169HE05
4G169HF02
(57)【要約】
【課題】紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、光触媒活性を示すハイドロタルサイト化合物、及び、当該ハイドロタルサイト化合物を含有する光触媒活性剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)
[Zn1-xAl2-x(OH)][An- x/n・HO] (1)
(式中An-は、炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
[Zn1-xAl2-x(OH)][An- x/n・HO] (1)
(式中An-は、炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物。
【請求項2】
前記An-は、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す、請求項1に記載のハイドロタルサイト化合物。
【請求項3】
前記xが0.25~0.35である、請求項1又は2に記載のハイドロタルサイト化合物。
【請求項4】
下記一般式(1)
[M 1-x 2-x(OH)][An- x/n・HO] (2)
(式中、MはZn又はCu、MはAl又はFeを示す。An-は炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物を含有する、光触媒活性剤。
【請求項5】
前記An-は、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す、請求項4に記載の光触媒活性剤。
【請求項6】
前記xが0.25~0.35である、請求項4又は5に記載の光触媒活性剤。
【請求項7】
前記光触媒活性剤を100質量%として、前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が90.0~99.9質量%である、請求項4~6のいずれか1項に記載の光触媒活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロタルサイト化合物及び光活性触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途でハイドロタルサイト化合物が使用されている。
【0003】
ハイドロタルサイト化合物は、アニオン交換機能を有する層状複水酸化物であり、例えば、一般式(1):
[M 2+ 1-x 3+ (OH)][(An-x/n・mHO] (1)
[式中、Mは2価金属を示す。Mは3価金属を示す。0<x<1を示す。An-は陰イオンを示す。nは1又は2を示す。mは1以上の整数を示す。]
で表される組成を有しており、層状複水酸化物(Layered Double Hydrocxide(LDH))
とも称される。
【0004】
上記ハイドロタルサイトは、紫外線吸収剤としても利用されており、例えば、特許文献1には、紫外線を吸収する化合物がLDHの層間に取り込まれた複合体及びそれを含有する外用剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、ハイドロタルサイトには、更に様々な用途に用いることができる性能が要求されている。例えば、紫外線だけでなく赤外線も吸収することができるハイドロタルサイトは、保温効果が要求される防災用テント、農業用のビニールハウス等に用いられる樹脂シートに含まれる添加剤として有用である。
【0006】
また、材料設計を行う上で、紫外・赤外線吸収性能以外にも更なる付加価値を示し、幅広い用途で利用できるハイドロタルサイトが求められている。本発明者等は、鋭意検討の結果、特定の金属及びアニオンを含む構成のハイドロタルサイトによれば、紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、光触媒活性を示すことを見出した。そして、このようなハイドロタルサイトは、保温効果が要求される防災用テント、農業用のビニールハウス等の用途に加え、光触媒活性を示すことによる耐候性塗料、塗料、樹脂フィラー、マウスガードフィラー等の様々な用途に利用することができることを見出し、本発明に到達したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-167570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、光触媒活性を示すハイドロタルサイト化合物、及び、当該ハイドロタルサイト化合物を含有する光触媒活性剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の金属及びアニオンを含有するハイドロタルサイト化合物、及び、特定の金属及びアニオンを含むハイドロタルサイト化合物を含有する光触媒活性剤によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のハイドロタルサイト化合物及び光触媒活性剤に関する。
1.下記一般式(1)
[Zn1-xAl2-x(OH)][An- x/n・HO] (1)
(式中An-は、炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物。
2.前記An-は、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す、項1に記載のハイドロタルサイト化合物。
3.前記xが0.25~0.35である、項1又は2に記載のハイドロタルサイト化合物。
4.下記一般式(1)
[M 1-x 2-x(OH)][An- x/n・HO] (2)
(式中、MはZn又はCu、MはAl又はFeを示す。An-は炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物を含有する、光触媒活性剤。
5.前記An-は、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す、項4に記載の光触媒活性剤。
6.前記xが0.25~0.35である、項4又は5に記載の光触媒活性剤。
7.前記光触媒活性剤を100質量%として、前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が90.0~99.9質量%である、項4~6のいずれか1項に記載の光触媒活性剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハイドロタルサイト化合物は、紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、光触媒活性を示すことができる。また、本発明の光触媒活性剤は、紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、光触媒活性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1における炭酸型Zn-Al(粉末A(CO3 2-型))LDHの合成フローを示す図である。
図2】比較例1における硫酸型Zn-Al(粉末B(SO4 2-型))LDHの合成フローを示す図である。
図3】比較例2における硝酸型Zn-Al(粉末C(NO3 -型))LDHの合成フローを示す図である。
図4】実施例2における塩素型Zn-Al(粉末D(Cl-型))LDHの合成フローを示す図である。
図5】実施例3における塩素型Zn-Al(粉末E(Cl-型))LDHの合成フローを示す図である。
図6】実施例4におけるフッ素型Zn-Al(粉末F(F-型) 、実施例5におけるフッ素型Zn-Al(粉末G(F-型))LDHの合成フローを示す図である。
図7】実施例1の粉末A(CO3 2-型)の粉末X線回折図である。
図8】比較例1の粉末B(SO4 2-型)の粉末X線回折図である。
図9】比較例2の粉末C(NO3 -型)の粉末X線回折図である。
図10】実施例2の粉末D(Cl-型)、及び、実施例3の粉末E(Cl-型)のX線回折図である。
図11】実施例3の粉末E(Cl-型)、実施例4の粉末F(F-型)、実施例5の粉末G(F-型)の粉末X線回折図である。
図12】実施例1の粉末A(CO3 2-型)、比較例1の粉末B(SO4 2-型)、比較例2の粉末C(NO3 -型)、実施例3の粉末E(Cl-型)、及び実施例5の粉末G(F-型)の、紫外可視近赤外分光法により測定した反射スペクトルを示す図である。
図13】波長254nmの紫外線を照射して測定した分解活性指数R[nmol/L/min]を示す図である。
図14】波長365nmの紫外線を照射して測定した分解活性指数R[nmol/L/min]を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0014】
1.ハイドロタルサイト化合物
本発明のハイドロタルサイト化合物は、下記一般式(1)
[Zn1-xAl2-x(OH)][An- x/n・HO] (1)
(式中Aは、炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物である。本発明のハイドロタルサイト化合物は、金属イオンとして亜鉛イオン及びアルミニウムイオンを含有し、且つ、アニオンとして炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンを含有するので、これらのイオンの組み合わせにより形成されていることにより、紫外線及び赤外線を吸収するとともに、光触媒活性も示すことができる。本発明のハイドロタルサイト化合物は、上記性能を兼ね備えることで、上記性能が要求される様々な用途に有用に用いることができる。
【0015】
ハイドロタルサイト化合物は、層間のアニオン交換によりインターカレーションを生じる。アニオン交換とは、例えば、アニオンを含む溶液にハイドロタルサイト化合物を浸すことにより、ハイドロタルサイトナノ化合物自らが有するアニオンを放出し、溶液中のアニオンを自身へ取り込む現象である。また、ハイドロタルサイト化合物を加熱処理することによりアニオンを脱離させることができる。
【0016】
本発明のハイドロタルサイト化合物は、Zn1-xAl2-x(OH)で表され正電荷を帯びた八面体層からなるホスト層と、正電荷を補償する陰イオンと層間水とからなるAn- x/n・HOで表されるゲスト層と、が交互に積層したハイドロタルサイト構造を有していることが好ましい。
【0017】
上記一般式(1)において、xは0.2~0.4である。xが上記範囲外であると、ハイドロタルサイト化合物の紫外線及び赤外線の吸収性が低下し、且つ、光触媒活性が十分でない。上記xは0.25~0.35が好ましい。
【0018】
本発明のハイドロタルサイト化合物において、ゲスト層の陰イオン(アニオン)An-は、炭酸イオン(CO 2-)、フッ素イオン(F)又は塩素イオン(Cl)である。これらの中でも、本発明のハイドロタルサイト化合物がより優れた紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、より優れた光触媒活性を示すことができる点で、フッ素イオン又は塩素イオンが好ましい。
【0019】
上記ゲスト層の陰イオン(アニオン)An-において、nはアニオンの価数を示す。本発明のハイドロタルサイト化合物がより優れた紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、より優れた光触媒活性を示すことができる点で、nは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0020】
上記アニオンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明のハイドロタルサイト化合物は、例えば、沈殿剤として炭酸ナトリウムを用いる場合には、アニオンAn-として炭酸イオンCO 2-を残存させることができる。この際、ハイドロタルサイト化合物は下記一般式(1-2):
[Zn1-xAl2-x(OH)][(An-・(CO 2-・HO] (1-2)
[式中、xは0.2~0.4の数を示し、x=yn+2zである。An-はアニオンを示す。nはアニオンの価数を示す。mは1以上の整数(例えば1~10の整数)を示す。]
で表される組成を有し、ゲスト層は(An-・(CO 2-・HOとすることができる。この際、炭酸イオン以外の陰イオンを含まない場合、つまり、yが0の場合は、ゲスト層は(CO 2-x/2・HOとすることができる。
【0022】
2.光触媒活性剤
(ハイドロタルサイト化合物)
本発明の光触媒活性剤は、下記一般式(2)
[M 1-x 2-x(OH)][An- x/n・HO] (2)
(式中、MはZn又はCu、MはAl又はFeを示す。An-は炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物を含有する、光触媒活性剤である。
【0023】
上記一般式(2)中、 MはZn又はCuを示す。これらの中でも、本発明の光触媒活性剤がより優れた紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、より優れた光触媒活性を示すことができる点で、Znが好ましい。
【0024】
上記Mは、Zn又はCuのいずれかを単独で用いてもよいし、Zn及びCuを混合して用いてもよい。
【0025】
上記一般式(2)中、 MはAl又はFeを示す。これらの中でも、本発明の光触媒活性剤がより優れた紫外線及び赤外線を吸収し、且つ、より優れた光触媒活性を示すことができる点で、Alが好ましい。
【0026】
上記Mは、Al又はFeのいずれかを単独で用いてもよいし、Al及びFeを混合して用いてもよい。
【0027】
本発明の光触媒活性剤が含有するハイドロタルサイト化合物において、上記M及びM以外のx及びnについては上記ハイドロタルサイト化合物で説明したx及びnと同じであり、An-についても上記ハイドロタルサイト化合物で用いるアニオンと同一のアニオンを用いることができる。
【0028】
本発明の光触媒活性剤中のハイドロタルサイト化合物の含有量は多いほどよいが、光触媒活性剤を10質量%として、70.0質量%以上が好ましく、80.0質量%以上がより好ましく、90.0質量%以上が更に好ましく、99.9質量%以上が特に好ましく、100.0質量%が最も好ましい。ハイドロタルサイト化合物の含有量の下限が上記範囲であると、本発明の光触媒活性剤がより優れた光触媒活性を示すことができる。
【0029】
(他の添加剤)
本発明の光触媒活性剤は、上記ハイドロタルサイト化合物の他に、光触媒活性剤に一般的に用いられる他の添加剤を含有していてもよい。
【0030】
3.ハイドロタルサイト化合物、及び、光触媒活性剤の製造方法
本発明のハイドロタルサイト化合物、及び、光触媒活性剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、共沈法、イオン交換法等の公知のLDHの製造方法により製造することができる。アニオンが炭酸イオン、又は塩素イオンである場合は、共沈法により製造し、アニオンがフッ素イオンである場合はイオン交換法により製造すればよい。
【0031】
共沈法としては、例えば、pHが7.0~12、より好ましくは8.5~10に維持されるように、アニオン源を含有する水溶液に、2種の金属の金属塩を含む水溶液と、pH調整剤とを徐々に加えて反応させ、得られた生成物をろ過、洗浄、乾燥および解砕する方法が挙げられる。
【0032】
イオン交換法としては、例えば、上記共沈法により製造したハイドロタルサイト化合物の粉末をフッ化ナトリウム水溶液に添加し、得られた生成物をろ過、洗浄、乾燥および解砕する方法が挙げられる。製造原料、条件などは、所望のハイドロタルサイト化合物により適宜選択、設定すればよい。
【0033】
上記共沈法に用いられる金属塩としては、例えば、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等が挙げられる。これらの金属塩は、水和物を用いてもよい。上記共沈法では、所望のハイドロタルサイト化合物及び光触媒活性剤を形成する金属を考慮して、これらの金属塩から2種の金属の金属塩を適宜選択して用いればよい。
【0034】
上記金属塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
上記共沈法に用いられるアニオン源としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム等が挙げられる。上記共沈法では、所望のハイドロタルサイト化合物及び光触媒活性剤を形成するアニオンを考慮して、これらのアニオン源から適宜選択して用いればよい。
【0036】
上記アニオン源は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
2種の金属の金属塩を含む水溶液と、アニオン源を含有する水溶液とは、混合して攪拌することで本発明のハイドロタルサイト化合物及び光触媒活性剤を共沈させやすくするため、アルカリ性水溶液とすることが好ましく、必要に応じてpH調整剤を添加することが好ましい。pH調整剤としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の塩基が挙げられる。これらの塩基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら塩基は、水溶液であってもよい。
【0038】
pH調整剤の使用量は、特に制限されず、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを混合する際のpHが、上記のように7.0~12、より好ましくは8.5~10に維持されるように、適宜調整されることが好ましい。
【0039】
上記製造方法では、反応温度は特に限定されず、必要に応じて、水熱合成を行うための所定の温度、例えば、20~60℃、特に30~50℃とすればよい。
【0040】
続いて、上記所定の温度に保持した状態で撹拌し、本発明のハイドロタルサイト化合物、及び、光触媒活性剤を得ることができる。撹拌速度及び時間は、適宜設定することができるが、通常は500~1500rpmにおいて、6~48時間行うことが好ましい。
【0041】
この後、必要に応じて、常法に従い、遠心分離、吸引ろ過、乾燥等を施し、固体の本発明のハイドロタルサイト化合物、及び、光触媒活性剤を得ることもできる。この後、分級したり、解砕したりすること等により所定の粒度に調製したりすることもできる。また、スラリー状にしたり、バインダ等を添加し粒状にしたり、等各種形態に調製することができる。
【実施例0042】
以下、本発明について実施例の形式で詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の用途を何ら限定するものではない。
実施例1:炭酸型Zn-Al(粉末A(CO 3 2- 型))LDHの合成
炭酸型Zn-Al LDH [Zn1-xAlx(OH)2][An- x/n・mH2O] (An-=CO3 2-,x=0.33)を共沈法により以下の手順で合成した。合成フロー図1に示す。具体的には、500mLビーカーに超純水300mLと炭酸ナトリウム(NA2CO3 MW 105.99 和光純薬工業 特級)5.0875g(0.048mol)を加え、0.16M炭酸ナトリウム水溶液を調製した。次いで、300mLビーカーに超純水100mLと、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O MW297.47キシダ化学 特級)5.9494g(0.02 mol) と、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・6H2O MW375.13 和光純薬工業 特級)3.7513g (0.01 mol)とを追加し、硝酸塩混合溶液を調製した。更に、別のビーカーに超純水100mLと水酸化ナトリウム(NaOH MW40 キシダ化学 特級)8g(0.2mol)を加え、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
【0043】
別途に0.16M炭酸ナトリウム水溶液をホットスターラー(アズワン REXIM RSH-1DN)と攪拌子とを用いて、室温 1000rpmで撹拌しながら、pHを10.5付近で保つように硝酸塩混合溶液100mLと2M水酸化ナトリウム水溶液とをパスツールピペットにより少量ずつ加えた。pHの測定には、pHメーター(堀場製作所 pH METER D-51)を用いた。それぞれの溶液を投入後、さらに室温で1000rpm 24h撹拌し、熟成させた。熟成後の溶液をブフナー漏斗(アズワン SU-60)、ろ紙(アズワン 60Φm/m No5-C)、アスピレータ(EYELA東京理化器械 A-3S)を用いて吸引によりろ別を行った。残渣をプログラム定温乾燥機(アズワン DRYING OVEN DO-300PC)にて18h 80℃で乾燥させ、乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。以上により、粉末A(CO3 2-型)を調製した。
【0044】
比較例1:硫酸型Zn-Al(粉末B(SO 4 2- 型))LDHの合成
硫酸型Zn-Al LDH [Zn1-xAlx(OH)2][An- x/n・mH2O] (An-= SO4 2-,x=0.33)を共沈法により以下の手順で合成した。合成フロー図2に示す。具体的には、500mLビーカーに超純水300 mLと硫酸ナトリウム(Na2SO4 MW 142.04 キシダ化学 1級)6.8179g(0.048mol)を加え、0.16M硫酸ナトリウム水溶液を調製した。次いで、300mLビーカーに超純水100mLと硝酸亜鉛六水和物5.9494g(0.02mol)と硝酸アルミニウム九水和物3.7513g(0.01mol)と を追加し、硝酸塩混合溶液を調製した。更に、別のビーカーに超純水100mLと水酸化ナトリウム8g(0.2mol)を加え、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
【0045】
別途に0.16M硫酸ナトリウム水溶液をホットスターラーと攪拌子とを用いて、60℃、1000rpmで撹拌しながら、pHを10.5付近で保つように硝酸塩混合溶液100mLと2M水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ交互に加えた。この溶液を、60℃、1000rpmで24h撹拌し、熟成させた。ろ別後の残渣を18h 80℃で乾燥させ、乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。以上により、粉末B(SO4 2-型)を調製した。
【0046】
比較例2:硝酸型Zn-Al(粉末C(NO 3 - 型))LDHの合成
硝酸型Zn-Al LDH [Zn1-xAlx(OH)2][An- x/n・mH2O] (An-= NO3 -,x=0.33)を共沈法により以下の手順で合成した。合成フロー図3に示す。具体的には、4つ口セパラブルカバーを有する容量300mLのセパラブル丸型フラスコに超純水200mLを入れ、ホットスターラー、攪拌子、オイルバスを用いて、95℃ 600rpmで攪拌した。4つの口は、ゴム栓付きピペットで高純度窒素ボンベからのチューブにつないだ窒素導入管、塩化カルシウム管を付けた共通摺合冷却管、試料投入口、pHメーターの電極差込口とした。試料投入口とpH電極差込口とを共通摺合栓で覆った。セパラブルカバー、フラスコ、ガラス栓の接着面にはシリコーングリース(信越化学工業,高温潤滑用)を塗布し密着させた。次いで、高純度窒素ガス(ネリキガス、99.999%以上)を40 分間バブリングした。次いで、300mLビーカーに超純水100mLと硝酸亜鉛六水和物5.9494g(0.02mol)と硝酸アルミニウム九水和物3.7513g(0.01mol)を追加し、硝酸塩混合溶液を調製した。更に、別のビーカーに超純水100mLと水酸化ナトリウム4g(0.1mol)を加え、1M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。バブリングを続けながら、硝酸塩混合溶液と1M水酸化ナトリウム溶液を少しずつ加え、pHを9.34に調整した。調整後、試料投入口、pHメーター差込口にそれぞれ共通摺合栓及びシリコン栓で蓋をした。50分後、窒素導入口及び共通摺合冷却管を共通摺合栓と交換した。さらに15時間攪拌を継続し、熟成させた。ろ別後の残渣を20h 80℃で乾燥させ、乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。以上により、粉末C(NO3 -型)を調製した。
【0047】
実施例2:塩素型Zn-Al(粉末D(Cl - 型))LDHの合成
塩素型Zn-Al LDH [Zn1-xAlx(OH)2][An- x/n・mH2O] (An-=Cl-,x=0.25)を共沈法により以下の手順で合成した。合成フロー図4に示す。具体的には、500mLビーカーに超純水300 mLと塩化ナトリウム(NaCl MW58.44 キシダ化学 特級)8.766g(0.15mol)を加え、0.5M塩化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、300mLビーカーに超純水100mLと硝酸亜鉛六水和物8.9241g(0.03mol)と硝酸アルミニウム九水和物3.7513 (0.01mol)gを追加し、硝酸塩混合溶液を調製した。更に、別のビーカーに超純水100mLと水酸化ナトリウム(キシダ化学 特級 分子量40)8g(0.2mol)を加え、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
【0048】
別途に0.5M塩化ナトリウム水溶液をホットスターラーと攪拌子とを用いて、40℃ 1000rpmで撹拌しながら、pHを10.0付近で保つように硝酸塩混合溶液100mLと2M水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ交互に加えた。この溶液を、40℃ 1000rpmで24h撹拌し、熟成させた。ろ別後の残渣を18h 80℃で乾燥させ、乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。以上により、粉末D(Cl-型)を調製した。
【0049】
実施例3:塩素型Zn-Al(粉末E(Cl - 型))LDHの合成
塩素型Zn-Al LDH [Zn1-xAlx(OH)2][An- x/n・mH2O] (An-=Cl-,x=0.25)を共沈法により以下の手順で合成した。合成フロー図5に示す。具体的には、500mLビーカーに超純水300mLと塩化ナトリウム(NaCl MW58.44 キシダ化学 特級)8.766g(0.15mol)を加え、0.5M塩化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、300mLビーカーに超純水100mLと塩化亜鉛(ZnCl2 MW136.32 和光純薬工業 特級)4.09g(0.03mol)と塩化アルミニウム六水和物(AlCl3・6H2O MW241.43、和光純薬工業 特級)2.414g(0.01mol)を追加し、塩化塩混合溶液を調製した。更に、別のビーカーに超純水100mLと水酸化ナトリウム(キシダ化学 特級 分子量40)8g(0.2mol)を加え、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
【0050】
別途に0.5M塩化ナトリウム水溶液をホットスターラーと攪拌子とを用いて、40℃ 1000 rpmで撹拌しながら、pHを10.0付近で保つように塩化塩混合溶液100mLと2M水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ交互に加えた。この溶液を、40℃ 1000rpmで24h撹拌し、熟成させた。ろ別後の残渣を18h 80℃で乾燥させ、乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。以上により、粉末E(Cl-型)を調製した。
【0051】
実施例4:フッ素型Zn-Al(粉末F(F - 型) LDHの合成
フッ素型Zn-Al LDH [Zn1-xAlx(OH)2][An- x/n・mH2O] (An-= F-、x=0.25)をイオン交換法により以下の手順で合成した。合成フロー図6に示す。具体的には、500mLビーカーに超純水300mLとフッ化ナトリウム1.2595g(0.03mol)を加え、0.1Mフッ化ナトリウム水溶液を調製した。
【0052】
次いで、実施例3で得られた粉末E 1gを0.1Mフッ化ナトリウム溶液に投下した。0.1Mフッ化ナトリウム溶液のpHは6.7程度であったが、粉末Eを1g加えることでpHは7.6程度になった。次いで、ホットスターラーと撹拌子を用いて室温 500rpmで24h攪拌し、ろ別後の残渣を18h 80℃で乾燥させ、乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。以上により、粉末F(F-型)を調製した。
【0053】
実施例5:フッ素型Zn-Al(粉末G(F - 型))LDHの合成
フッ素型Zn-Al LDH [Zn1-xAlx(OH)2][An- x/n・mH2O] (An-= F-、x=0.25)をイオン交換法により以下の手順で合成した。合成フロー図6に示す。具体的には、500mLビーカーに超純水300mLとフッ化ナトリウム1.2595g(0.03mol)を加え、0.1Mフッ化ナトリウム水溶液を調製した。
【0054】
次いで、実施例3で得られた粉末E 1gを0.1Mフッ化ナトリウム水溶液に加えた後、2M水酸化ナトリウム水溶液を微量滴下し、pHを10に保って20℃ 500rpmで24h攪拌した。ろ別後の残渣を18h 80℃で乾燥させ、乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。以上により、粉末G(F-型)を調製した。
【0055】
試験例1:XRDによる結晶相の同定
得られた生成物について、粉末X線回折法(XRD)により結晶相の同定を行った。測定はX線回折装置(RINT2200、リガク(株))で、ターゲットはCo、モノクロメータを使用し、分析ソフト(JADE6、リガク(株))で結晶相の同定を行った。測定条件は、スキャン範囲5~80°、サンプリング幅0.02°、スキャンスピード1.0°/min、印加電圧40kV、印加電流20mA、発光スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.3mmとした。
【0056】
図7に実施例1の粉末Aの粉末X線回折図を示す。図7(a)は粉末A(CO3 2-型) の回折ピークを示し、図7(b)は亜鉛アルミニウムカーボネートヒドロキシドハイドレートの回折ピーク(ICDD#48-1025)を示す。(a)と(b)とを対比すると、ピークの回折角と強度はほとんど一致しており、亜鉛アルミニウムカーボネートヒドロキシドハイドレートの単一相が得られたと考えられる。また、ピークは比較的シャープであり、結晶性は比較的高いと考えられる。
【0057】
図8に比較例1の粉末Bの粉末X線回折図を示す。図8(a)は粉末B(SO4 2-型)の回折ピークを示す。また、比較のため、図8(b)に粉末A(CO3 2-型)、図8(c)に亜鉛アルミニウムカーボネートヒドロキシドハイドレートの回折ピーク(ICDD#48-1025)を示す。(a)粉末B(SO4 2-型)の回折ピークと、(b)A(CO3 2-型)の回折ピークとを比較すると、(a)粉末B(SO4 2-型)の回折ピークでは(003)と(006)の間にピークがありが副生成物の可能性が示唆されている。また、最強ピークである(003)が大きく低角にシフトしていて,やや左右非対称である。また、面間隔d003 = 11.1[Å]であり、粉末A(CO3 2-型)の回折ピークより大きい。硫酸根(SO4 2-)と炭酸根(CO3 2-型)の大きさから、層間の炭酸根が硫酸根で置き換わっている可能性が示唆されているといえる。
【0058】
図9に比較例2の粉末C(NO3 -型)の粉末X線回折図を示す。図9の比較例2の粉末C(NO3 -型)の回折ピークは、図7(a)の粉末A(CO3 2-型) の回折ピークとやや類似するが、ピークはブロードとなっており、周期構造のばらつきを示唆している。また、左右非対称であるが、最強ピークを (003)面とすれば、面間隔d003=8.806[Å]であり、粉末A(CO3 2-型)のd003より大きく,炭酸根(CO3 2-型)と硝酸根(NO3-)のサイズから,層間が硝酸根で一部置換されていることが示唆されているといえる。
【0059】
図10に実施例2の粉末B及び実施例3の粉末Eの粉末X線回折図を示す。図10(a)は粉末D(Cl-型) の回折ピークを示し、図10(b)は粉末E(Cl-型) の回折ピークを示す。また、比較のため、図10(c)にZnOの回折ピークを示す。図10(a)から、粉末Dでは35°前後に小さなピークが見られるが、ZnOとは合致せず、未洗浄の塩化物であると考えられる。最強ピークの角度は、13.08°であった。
【0060】
図11に実施例3の粉末E(Cl-型)、実施例4の粉末F(F-型)、実施例5の粉末G(F-型)の粉末X線回折図を示す。図11(a)は粉末E(Cl-型) の回折ピーク、図11(b)は粉末F(F-型) の回折ピーク、図11(c)は粉末G(F-型)の粉末X線回折ピークである。
【0061】
以上より、(003)の最強ピーク位置からブラッグの回折条件により求めた各試料の面間隔を下記の表1に示す。(003)の面間隔は層間の距離に比例し、導入したアニオンによって面間隔が変わるのは、少なくとも一部が置換したことを示唆しているといえる。
【0062】
【表1】
【0063】
試験例2:紫外可視近赤外分光法による反射スペクトルの測定
得られた生成物について、紫外可視近赤外分光法(Ultraviolet-Visible-Near Infrared absorption spectroscopy:UV-Vis-NIR)により反射スペクトルを測定した。紫外可視近赤外分光法とは、波長ごとに分けた光を測定試料に照射し、試料に反射・透過した光の強度を測定することで、試料の吸光度や透過率を求める方法である。吸光度測定により、試料中の目的成分の定性・定量分析や試料の波長特性の評価ができる。また、透過率測定では、試料中の成分に特有の透過特性を評価できる。
【0064】
具体的には、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所 SolidSpec-3700)を用いて反射スペクトルを測定した。標準白色板スペクトラロンを用いてバックグラウンドを測定した後、試料ホルダーに試料を充填して測定した。測定条件は、測定範囲240nm-2500nm、スキャンスピード高速、サンプリングピッチ1.0の測定条件とした。
【0065】
図12に、実施例1の粉末A(CO3 2-型)、比較例1の粉末B(SO4 2-型)、比較例2の粉末C(NO3 -型)、実施例3の粉末E(Cl-型)、及び実施例5の粉末G(F-型)の、紫外可視近赤外分光法により測定した反射スペクトルを示す。
【0066】
図12の結果から、全ての粉末において近赤外領域である1450nm、1930nm付近に吸収が確認されたが、実施例1の粉末A(CO3 2-型)、比較例2の粉末C(NO3 -型)、実施例3の粉末E(Cl-型)、及び実施例5の粉末G(F-型)では、紫外領域(300nm付近)においても吸収が見られることが分かった。特に、実施例3の粉末E(Cl-型)、及び実施例5の粉末G(F-型) では、紫外領域(300nm付近)において優れた吸収を示すことが分かった。
【0067】
試験例3:湿式分解性能試験
粉末の光触媒活性を評価するため、湿式分解性能試験を行った。測定方法はJIS R 1703-2を参照した。
【0068】
具体的には、超純水1Lに、メチレンブルー粉末(C16H18ClN3S・3H2O MW373.90 キシダ化学特級)0.0075g(0.02mmol)を溶解し、0.02mmol/Lメチレンブルー試験液を調製した。当該メチレンブルー試験液30mLを10mLメスシリンダーで精秤してガラス製シャーレに入れ、合成したLDH粉末0.1gを浸漬し、試験サンプルを調製した。紫外線ランプ(アズワン Handy UV Lamp SLUV-6 9W)を用いて、波長254nm 又は365nmの紫外線を20min照射した。照射後、直ちにメチレンブルー試験液をピペットで吸い上げて標準石英セル(アズワン CUVENT 10mm)に採取し、紫外可視光光度計(日本分光 V-550型)を用いて試験液の吸光スペクトルを測定した。測定条件は、下記表2に記載の測定条件とした。
【0069】
【表2】
【0070】
吸光スペクトルの測定後、測定に使用した液を速やかにシャーレに戻し、再び紫外線を20min照射した。この手順を照射時間の合計が3hになるまで9回繰り返した。
【0071】
一般に吸光度は濃度に比例する(Beerの法則)ことから、換算係数を用いて吸光度から濃度を算出した。先ず、吸光度Abs(0)を用いて下記式(1)より換算係数Kを求めた。
【0072】
次いで、換算係数Kを用いて下記式(2)より吸光度Abs(t)をt [min]後のメチレンブルー試験液濃度C(t)[μM]に換算した。
【0073】
縦軸に濃度C(t)[μM]、横軸に紫外線照射時間t[min]をとり、それぞれ粉末ごとのデータ9点(t=20、40、60、80、100、120、140、160、180) をプロットした。試験片ごとにプロットした点を最小二乗法で直線近似し、傾きの絶対値の1/1000を求めて、分解活性指数R[nmol/L/min]とした。
【0074】
図13に、波長254nmの紫外線を照射して測定した分解活性指数R[nmol/L/min]を示す。図13において、LDH粉末は、実施例1の粉末A(CO3 2-型)、比較例1の粉末B(SO4 2-型)、比較例2の粉末C(NO3 -型)、実施例3の粉末E(Cl-型)、及び実施例5の粉末G(F-型)を用いた。図13の結果から、254nmの短波長紫外線を照射した場合、炭酸型、塩素型、フッ素型では、光触媒活性の指標を示す分解活性指数が大きくなっており、光触媒活性の目安である5を超える値を示すことが分かった。特に、塩素型、フッ素型では、触媒活性の目安である5を大幅に超える値を示すことが分かった。
【0075】
図14に、波長365nmの紫外線を照射して測定した分解活性指数R[nmol/L/min]を示す。図14において、LDH粉末は、実施例1の粉末A(CO3 2-型)、比較例1の粉末B(SO4 2-型)、比較例2の粉末C(NO3 -型)、実施例3の粉末E(Cl-型)、及び実施例5の粉末G(F-型)を用いた。図14の結果から、365nmのの紫外線を照射した場合でも、254nmの短波長紫外線を照射した場合と同様に、炭酸型、塩素型、フッ素型では、光触媒活性の指標を示す分解活性指数が大きくなっており、光触媒活性の目安である5を超える値を示すことが分かった。特に、塩素型、フッ素型では、触媒活性の目安である5を大幅に超える値を示すことが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
[Zn1-xAl (OH)][An- x/nO] (1)
(式中An-は、炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数、mは0~1を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物。
【請求項2】
前記An-は、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す、請求項1に記載のハイドロタルサイト化合物。
【請求項3】
前記xが0.25~0.35である、請求項1又は2に記載のハイドロタルサイト化合物。
【請求項4】
下記一般式(1)
[M 1-x (OH)][An- x/nO] (2)
(式中、MはZn又はCu、MはAl又はFeを示す。An-は炭酸イオン、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す。xは0.2~0.4、nはアニオンの価数、mは0~1を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物を含有する、光触媒活性剤。
【請求項5】
前記An-は、フッ素イオン又は塩素イオンであるアニオンを示す、請求項4に記載の光触媒活性剤。
【請求項6】
前記xが0.25~0.35である、請求項4又は5に記載の光触媒活性剤。
【請求項7】
前記光触媒活性剤を100質量%として、前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が90.0~99.9質量%である、請求項4~6のいずれか1項に記載の光触媒活性剤。