IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-集音放音方法 図1
  • 特開-集音放音方法 図2
  • 特開-集音放音方法 図3
  • 特開-集音放音方法 図4
  • 特開-集音放音方法 図5
  • 特開-集音放音方法 図6
  • 特開-集音放音方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027068
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】集音放音方法
(51)【国際特許分類】
   G10L 21/0364 20130101AFI20230221BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230221BHJP
   G10L 25/51 20130101ALI20230221BHJP
【FI】
G10L21/0364
B60R11/02 M
G10L25/51
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182292
(22)【出願日】2022-11-15
(62)【分割の表示】P 2021544982の分割
【原出願日】2019-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 和則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘章
(72)【発明者】
【氏名】村田 伸
(57)【要約】
【課題】自動車内の運転者が危険を察知したり、運転に必要な状況把握をしたりするために必要な外部の音を聞き取りやすくする。
【解決手段】集音放音方法は、プロセッサと、プロセッサに接続されたメモリと、マイクロホンとを備える音響信号処理装置が、自動車に設置されたマイクロホンにより集音された音響信号にサイレンが含まれていた場合に、運転者に状況を把握させるための集音放音方法であって、マイクロホンにより集音された音響信号に、自動車の外部から発せられたサイレンが含まれているか検出し、サイレンが含まれていた場合、自動車の内部で放音されている音響信号を抑える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、当該プロセッサに接続されたメモリと、マイクロホンとを備える音響信号処理装置が、自動車に設置されたマイクロホンにより集音された音響信号にサイレンが含まれていた場合に、運転者に状況を把握させるための集音放音方法であって、
前記マイクロホンにより集音された音響信号に、前記自動車の外部から発せられたサイレンが含まれているか検出し、
前記サイレンが含まれていた場合、
前記自動車の内部で放音されている音響信号を抑える、
集音放音方法。
【請求項2】
請求項1に記載の集音放音方法であって、
さらに、サイレンを発する車両を運転者が察知するための音響信号を前記自動車の内部に設置されたスピーカから放音する、
集音放音方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の外部の音を自動車の内部に提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には様々なセンサや警告装置が備わっている。それらは、例えば、前方の自動車に追突しそうになったときに警告音を出したり、走行レーンを変更するときにそのレーンに他の走行車がいる場合に警告音を出したりする機能を実現するために用いられる。
【0003】
走行中の自動車では、例えば、エンジン音、風切り音、車体の振動音など、様々な騒音が発生しており、乗員の快適性を低下させる要因となっている。そのため、自動車の遮音性を高める設計やパーツなどが求められている(例えば、非特許文献1参照)。一方、例えば、クラクション、踏切の警報、救急車のサイレン、並走車の走行音など、自動車の外部の音には、運転者に危険を知らせたり、運転者が危険を察知したりするために有用な情報が含まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】エーモン工業株式会社、“静音計画”、[online]、[令和1年8月15日検索]、インターネット<URL: https://www.amon.jp/products/topics/seion/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な自動車では、窓を隔てて聞こえて来る外部の音が自動車内に伝わっているだけである。そのため、例えば、自動車の遮音性が高い場合や、運転者の聴力が加齢により低下している場合や、オーディオやラジオを自動車内で受聴している場合など、自動車内の運転者が外部の音を聞き取りにくい場合がある。不要な騒音に関しては、遮音されることで快適な自動車内空間を実現できるが、危険を察知したり、自動車を操作したりするために必要な音まで遮音されると、音による危険察知や運転に必要な状況把握が困難となる。
【0006】
この発明の目的は、上記のような技術的課題に鑑みて、不要な外部の騒音を自動車内で増やすことなく、自動車内の運転者が危険を察知したり、運転に必要な状況把握をしたりするために必要な外部の音を聞き取りやすくする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明の第一の態様の集音放音方法は、プロセッサと、プロセッサに接続されたメモリと、マイクロホンとを備える音響信号処理装置が、自動車に設置されたマイクロホンにより集音された音響信号にサイレンが含まれていた場合に、運転者に状況を把握させるための集音放音方法であって、マイクロホンにより集音された音響信号に、自動車の外部から発せられたサイレンが含まれているか検出し、サイレンが含まれていた場合、自動車の内部で放音されている音響信号を抑える。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、自動車内の運転者が危険を察知したり、運転に必要な状況把握をしたりするために必要な外部の音を聞き取りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第一実施形態の集音放音装置の機能構成を例示する図である。
図2図2は、危険音検出部の機能構成を例示する図である。
図3図3は、変形例1の集音放音装置の機能構成を例示する図である。
図4図4は、変形例2の集音放音装置の機能構成を例示する図である。
図5図5は、第二実施形態の集音放音装置の機能構成を例示する図である。
図6図6は、第三実施形態の集音放音装置の機能構成を例示する図である。
図7図7は、コンピュータの機能構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0011】
[第一実施形態]
図1に、第一実施形態の集音放音装置1の機能構成の一例を示す。集音放音装置1は、自動車90に搭載され、自動車90の外部の音を集音し、運転者が危険を察知したり、運転に必要な状況把握をしたりするために有用な音のみを自動車90の内部に放音する。本実施形態では、自動車90は、前列の運転席91と助手席92、および後列の2つの後部座席93,94を備えるものとするが、自動車90は少なくとも運転席91を備えていればよく、その他の座席の数や配列は限定されない。
【0012】
第一実施形態の集音放音装置1は、少なくとも1個の集音部M1、少なくとも1個の放音部S1、危険音検出部11(以下、「判定部」とも呼ぶ)、およびスイッチ部12(以下、「制御部」とも呼ぶ)を備える。集音部M1の出力は危険音検出部11およびスイッチ部12へ入力される。危険音検出部11の出力はスイッチ部12へ入力される。スイッチ部12の出力は放音部S1へ入力される。また、集音部M1は、自動車90の外部に設置されてもよいし、自動車90の内部に設置されてもよい。この集音放音装置1が以下で説明する処理を行うことにより第一実施形態の集音放音方法が実現される。
【0013】
集音放音装置1は、例えば、中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)、主記憶装置(RAM: Random Access Memory)などを有する公知又は専用のコンピュータに特別なプログラムが読み込まれて構成された特別な装置である。集音放音装置1は、例えば、中央演算処理装置の制御のもとで各処理を実行する。集音放音装置1に入力されたデータや各処理で得られたデータは、例えば、主記憶装置に格納され、主記憶装置に格納されたデータは必要に応じて中央演算処理装置へ読み出されて他の処理に利用される。集音放音装置1は、少なくとも一部が集積回路等のハードウェアによって構成されていてもよい。
【0014】
集音部M1は、自動車90の外部の音を集音可能な位置に設置され、自動車90の外部の音源から発せられ、自動車90へ到来する音を集音する。集音部M1は、例えば、マイクロホンや振動センサである。集音部M1の設置位置は、例えば、自動車90の外部、ボディの内側、窓の内部などが挙げられる。集音部M1は、集音した外部の音を表す音響信号(以下、「外部音響信号」とも呼ぶ)を危険音検出部11へ出力する。
【0015】
危険音検出部11は、集音部M1が出力する外部音響信号を入力とし、その外部音響信号から所定の危険音を表す特徴が含まれる危険個所を検出する。ここで、危険音とは、外部音響信号に含まれる、所定の危険や自動車を操作する際の判断に用いられるべき音、もしくは事象に起因する音であり、例えば、クラクション、サイレン、踏切の警報、並走車の走行音、事故などによる衝撃音、音声などを表す。危険音検出部11は、危険個所が検出されたか否かを示す判定結果をスイッチ部12へ出力する。
【0016】
図2Aに、危険音検出部11の第一の構成例を示す。図2Aに示す危険音検出部11Aは、周波数分析部111、ニューラルネットワーク112、および危険判定部113を備える。
【0017】
周波数分析部111は、集音部M1が出力する外部音響信号を周波数領域信号に変換する。周波数変換の手法は、例えば、数十から数百ミリ秒のフレームサイズでウィンドウを乗じ、フーリエ変換で周波数領域に変換する手法を用いることができる。また、フーリエ変換後にパワーを計算してパワースペクトルに変換したり、周波数を対数スケールで平均してメルスペクトルを求めたりしてもよい。周波数分析部111は、周波数変換後の外部音響信号を1フレームまたは複数フレーム分まとめて、ニューラルネットワーク112へ出力する。
【0018】
ニューラルネットワーク112は、あらかじめ危険音の周波数スペクトルを学習したニューラルネットワークである。ニューラルネットワーク112は、周波数変換後の外部音響信号を入力とし、危険種別ごとの尤度の推定値を求める。ニューラルネットワーク112は、危険種別ごとの尤度の推定値を危険判定部113へ出力する。
【0019】
危険判定部113は、危険種別ごとの尤度の推定値を入力とし、危険個所を検出する。具体的には、入力された危険種別ごとの尤度の推定値から尤度が最大の危険種別を選択し、その尤度があらかじめ定めた閾値よりも大きい場合に危険個所として判定する。危険判定部113は、判定結果を危険音検出部11の出力とする。
【0020】
図2Bに、危険音検出部11の第二の構成例を示す。図2Bに示す危険音検出部11Bは、周波数分析部111、周波数スペクトル記憶部114、相関計算部115、および種別判定部116を備える。
【0021】
周波数スペクトル記憶部114には、危険個所で発生し得る周波数スペクトルの代表例が危険種別ごとに少なくとも1つ記憶されている。
【0022】
相関計算部115は、周波数分析部111が出力する周波数変換後の外部音響信号と周波数スペクトル記憶部114に記憶された周波数スペクトルとの間の相関を危険種別ごとに計算する。相関計算部115は、危険種別ごとの相関を種別判定部116へ出力する。
【0023】
種別判定部116は、危険種別ごとの相関を入力とし、危険個所を検出する。具体的には、入力された危険種別ごとの相関から相関が最も高い危険種別を選択し、その相関があらかじめ定めた閾値よりも大きい場合に、その種別の危険が検出されたものとして判定する。種別判定部116は、判定結果を危険音検出部11の出力とする。
【0024】
図2Cに、危険音検出部11の第三の構成例を示す。図2Cに示す危険音検出部11Cは、第一の構成例である危険音検出部11Aにおいて、周波数分析部111の後段に定常成分除去部117を備える。
【0025】
定常成分除去部117は、周波数分析部111が出力する周波数変換後の外部音響信号から定常雑音成分を除去する。具体的には、周波数変換後の外部音響信号を例えば数十秒などで長時間平均して定常雑音成分を求め、その定常雑音成分を周波数変換後の外部音響信号から減算する。定常成分除去部117を備えることにより、外部音響信号から例えば自車両の走行音など定常的な雑音が除去され、危険個所をより検出しやすくすることができる。
【0026】
スイッチ部12は、危険音検出部11が出力する判定結果に基づいてオンオフを切り替えることで、集音部M1が出力する外部音響信号を放音部S1から出力するか否かを制御する。スイッチ部12は、オンのとき、入力される外部音響信号を放音部S1へ出力し、オフのとき、何も出力しない。スイッチ部12は、判定結果が危険個所を検出したことを示す場合、オンに設定し、それ以外の場合、オフに設定するように構成される。
【0027】
放音部S1は、自動車90の内部、特に運転席91の近傍に設置され、集音部M1で集音された外部音響信号に由来する音響信号(以下、「内部音響信号」とも呼ぶ)を放音する。内部音響信号は、外部音響信号そのものであってもよいし、運転席91に着席している運転者が聞き取りやすいように外部音響信号を変換した音響信号であってもよい。放音部S1は、例えば、スピーカである。音響信号の変換には、例えばイコライザーなどを用いればよい。
【0028】
放音部S1は、運転者が知覚しやすくなるように、運転者の耳を含むようにビームを形成して放音してもよいし、自動車内に他の音響信号が放音されている場合には、他の音響信号よりも危険音を強調して放音してもよい。
【0029】
上記のように構成することにより、第一実施形態の集音放音装置1によれば、自動車90の外部から到来する音から危険音を検出したときのみ、その危険音を自動車90内に放音するため、不要な外部の雑音を自動車90の内部に伝達することなく、運転者が危険音を知覚しやすくすることができる。
【0030】
[変形例1]
第一実施形態では、集音放音装置が集音部と放音部を1個ずつ備える例を説明した。変形例1では、集音放音装置が複数の集音部と放音部を備える例を説明する。
【0031】
変形例1の集音放音装置2は、図3に示すように、4個の集音部M1~M4と、4個の放音部S1~S4と、4個の危険音検出部11-1~11-4と、4個のスイッチ部12-1~12-4とを備える。集音部Mi(i=1, …, 4)の出力は危険音検出部11-iとスイッチ部12-iへ入力される。危険音検出部11-iの出力はスイッチ部12-iへ入力される。スイッチ部12-iの出力は放音部Siへ入力される。
【0032】
集音部M1~M4は、それぞれ相異なる4つの方向から到来する音を集音するように設置される。放音部S1~S4は、それぞれ集音部M1~M4の集音方向に対応するように、運転席91の周囲に設置される。危険音検出部11-1~11-4およびスイッチ部12-1~12-4は各方向に対応する集音部と放音部の組ごとに、危険音の検出と放音の制御を行う。すなわち、第一実施形態の集音放音装置1が備える各処理部を4組用意し、相異なる4つの方向ごとに第一実施形態と同様の処理を行う。ここでは4方向の例を示したが、より多くの方向に対応するように各処理部の組を増やしても構わない。これにより、運転者が危険音の到来方向を知覚できるようになり、より適切に危険に対応する行動を取ることが可能となる。
【0033】
[変形例2]
変形例2では、集音放音装置が複数の集音部と放音部を備えるもう1つの例を説明する。変形例1との違いは、危険音検出部を1つだけ備える点である。
【0034】
変形例2の集音放音装置3は、図4に示すように、4個の集音部M1~M4と、4個の放音部S1~S4と、1個の危険音検出部11と、4個のスイッチ部12-1~12-4と、1個の加算部13とを備える。集音部Mi(i=1, …, 4)の出力はスイッチ部12-iと加算部13へ入力される。加算部13の出力は危険音検出部11へ入力される。危険音検出部11の出力はスイッチ部12-1~12-4へ入力される。スイッチ部12-iの出力は放音部Siへ入力される。
【0035】
集音部M1~M4と放音部S1~S4は変形例1と同様に設置され、スイッチ部12-1~12-4は変形例1と同様の制御を行う。加算部13は入力される集音部M1~M4の出力信号をすべて加算して危険音検出部11へ出力する。危険音検出部11は加算部13の出力信号に対して危険個所の検出を行う。これにより、いずれかの方向から到来する外部音響信号に危険音が含まれる場合には、放音部S1~S4から内部音響信号が出力され、いずれの外部音響信号にも危険音が含まれない場合には、放音部S1~S4から何も出力されないようになる。
【0036】
[第二実施形態]
第一実施形態では、自動車の外部で集音した音に危険音が含まれる場合に、その危険音を運転者が聞き取りやすくする構成を説明した。第二実施形態では、自動車の操作状態に応じて、運転に必要な音のみを運転者が聞こえるように制御する構成を説明する。
【0037】
第二実施形態の集音放音装置4は、少なくとも1個の集音部M1、少なくとも1個の放音部S1、スイッチ部12、状態取得部14、および音出力判定部15を備える。状態取得部14の出力は音出力判定部15へ入力される。音出力判定部15の出力はスイッチ部12へ入力される。図5では、集音部と放音部を1個ずつ備える例を示したが、変形例1や変形例2と同様に、複数の方向に対応した複数個の集音部と放音部を備えてもよい。その際には、集音部と放音部の数に応じてスイッチ部も複数備え、音出力判定部15の出力はすべてのスイッチ部へ入力される。
【0038】
状態取得部14は、自動車90から操作状態を表す情報を取得し、音出力判定部15へ出力する。操作状態を表す情報は、例えば、ウインカーの状態、ギアの状態、ハンドルの操舵角、走行速度などである。
【0039】
音出力判定部15は、状態取得部14から受け取った操作状態を表す情報から、集音部M1が出力する外部音響信号を放音部S1から出力するか否かを決定する。出力するか否かの判断基準は、運転者がその操作において外部の音を必要とするか否かによりあらかじめ定めておく。例えば、右折のウインカーがオンとなった場合、自動車の右側に設置した集音部で集音した音響信号を自動車の内部に設置した放音部から出力する制御を行う。右折のウインカーがオンであり、走行速度があらかじめ設定した速度以上である場合、集音部で集音した音響信号を自動車の内部に設置した放音部から出力する制御を行ってもよい。後者の構成であれば、交差点での右折待機時など停車している時には外部の音が放音されることはなく、車線変更時など走行している時には外部の音が放音されるように制御することができる。また、ギアがバックに入った場合にスイッチ部12をオンとなるように制御してもよい。後進時には周囲の状況を確認しにくいことから、音により周囲の状況がわかりやすくなる効果が期待できる。
【0040】
[第三実施形態]
変形例1や変形例2の集音放音装置は、あらかじめ定めた方向に対応させて複数の集音部と放音部を設置することで、危険音の到来方向を運転者が知覚できるように構成した。第三実施形態では、音像定位技術を応用することで、より正確に危険音の到来方向を運転者に知覚させることを可能とする。
【0041】
第三実施形態の集音放音装置5は、図6に示すように、4個の集音部M1~M4と、4個の放音部S1~S4と、危険音検出部11と、方向推定部16と、ミキシング部17とを備える。集音部Mi(i=1, …, 4)の出力は危険音検出部11と音方向推定部16とミキシング部17へ入力される。危険音検出部11の出力は音方向推定部16とミキシング部17へ入力される。音方向推定部16の出力はミキシング部17へ入力される。ミキシング部17の出力は放音部S1~S4へ入力される。
【0042】
集音部M1~M4と放音部S1~S4は変形例1や変形例2と同様に設置される。
【0043】
音方向推定部16は、集音部M1~M4が出力する外部音響信号を入力とし、音の到来方向を推定する。具体的には、相互相関法によりチャネル間の時間差を算出し、その時間差を用いて音の到来方向を求める。または、遅延和法により音の到来方向を求める。
【0044】
ミキシング部17は、集音部M1~M4が出力する外部音響信号をミキシングして、放音部S1~S4から出力する。ミキシング部17は、音方向推定部16で推定された音の到来方向に合わせて、放音部S1~S4からあらかじめ設定した割合で集音部M1~M4により集音された音響信号を出力する。これにより、音の到来方向に音像を定位させることができる。例えば、放音部S1と放音部S2の間に音像を定位させたい場合には、放音部S1と放音部S2から同時に音響信号を出力する。ステレオ再生時の音像定位位置と再生音量の比率についての関係に基づいて、音像を定位させたい位置に応じた割合で音響信号を出力すれば、狙った位置に音像を定位させることができる。また、あらかじめ実験的に音像定位位置と各放音部の再生音量バランスの関係を調べておき、音像定位位置と各放音部の再生音量バランスの関係をテーブルとして保存しておく方法を取ってもよい。
【0045】
このように、複数の放音部から、音の到来方向に応じたバランスで、音響信号を再生することで、放音部の設置した場所以外にも音像を定位させることができる。これにより、運転者は音を聞いただけで、危険音の発生場所を特定することが可能となる。
【0046】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計の変更等があっても、この発明に含まれることはいうまでもない。実施の形態において説明した各種の処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【0047】
[プログラム、記録媒体]
上記実施形態で説明した各装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムを図7に示すコンピュータの記憶部1020に読み込ませ、制御部1010、入力部1030、出力部1040などに動作させることにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0048】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0049】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0050】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0051】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7