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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027493
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/00 20060101AFI20230222BHJP
   B65D 39/08 20060101ALI20230222BHJP
   B65D 41/28 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
B65D53/00 100
B65D39/08
B65D41/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132610
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000234627
【氏名又は名称】シロウマサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 弘明
(72)【発明者】
【氏名】長田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小倉 一洋
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084EA02
3E084EC03
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA10
3E084HB07
3E084HC02
3E084HC09
3E084HD04
3E084KB01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】開封時に開封している感覚を使用者に与えながらも、開封前後においてできる限り同じ構成によって内容物の品質を保持できるようにする。
【解決手段】容器は、容器本体1と蓋2とを備える。蓋は容器本体の口部12に対しその開口を塞ぐ状態で嵌合する栓部23,25を備える。栓部は口部に対して同心状に配置された筒状の金属層41を備える。口部は栓部に対し口径方向に対向する面を含む口部対向層12aを備える。口部対向層は、栓部の表面を含む表層42よりも融点の低い樹脂製であり、未開封時には栓部の表層に対して分離可能に溶着しており、開封後には未開封時の溶着状態を示す溶着跡14を備える。開封時には溶着が破壊され、開封している感覚を使用者に与え、開封後には蓋を閉めれば、溶着跡14と栓部の表層42とが対向する状態になるので、開封前後においてほぼ同じ状態で内容物の品質を保持できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、容器本体に着脱可能な蓋とを備え、
蓋は容器本体の口部に対しその開口を塞ぐ状態で嵌合する栓部を備え、
栓部は口部に対して同心状に配置された筒状の金属層を備え、
口部は栓部に対し口径方向に対向する面を含む口部対向層を備え、
口部対向層は、栓部の表面を含む表層よりも融点の低い樹脂製であり、未開封時には栓部の表層に対して分離可能に溶着しており、開封後には未開封時の溶着状態を示す溶着跡を口部の周方向の全周に亘って備えることを特徴とする容器。
【請求項2】
金属層は口部に対して同心状に配置された筒状の金属層筒部と、金属層筒部の貫通方向の一方側を塞ぐ金属層底部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
口部は溶着跡に対して口部の貫通方向に隣接する溶着跡隣接面を備え、
溶着跡は溶着跡隣接面よりも口部の口径方向に凹んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
表層は樹脂製であると共に、金属層の口径方向の一面側に対して一体であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の容器。
【請求項5】
蓋は、蓋の基礎となる部分を形作る樹脂製の蓋本体部と、蓋本体部の一部に溶着されたシート材とを備え、
シート材は、金属層と表層の他に、金属層の口径方向の他面側に対して一体である樹脂製の接着層を備え、
接着層は、表層よりも融点が低いと共に蓋本体部に対して溶着して一体であることを特徴とする請求項4記載の容器。
【請求項6】
容器本体は開閉用の雄ネジ部を備え、
蓋は、開閉用の雌ネジ部が内周面に形成された蓋外壁部を備えると共に、蓋外壁部と栓部とを一体としてあることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の容器。
【請求項7】
栓部は口部を内側から塞ぐ内栓であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の容器。
【請求項8】
栓部は口部を外側から塞ぐ外栓であり、口部の端面及び開口を覆う栓板部と、栓板部の外周部から口部の口径方向外側を覆う状態で延びる栓壁部とを備えることを特徴する請求項1~6の何れかに記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体と、容器本体に着脱可能な蓋とを備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容器の一例としては、蓋を開けると、容器本体の口部にアルミシール等のフィルム状シール材が貼られたものが存在する(特許文献1)。このシール材は、容器本体の口部を塞いで(封じ)、未開封時においては内容物の品質を保持している。ちなみにアルミシールに代表される金属箔は樹脂よりも気体を通過させ難いことが知られている。またシール材は、開封時においては容器本体の口部から引き剥がされることになり、引き剥がす力、言い換えると開封している感覚を使用者に与える。なお開封後にシール材は通常廃棄される。またこの容器は、開封後の内容物の品質を保持するために、蓋の閉状態において容器本体の口部の外周面と蓋の内周面とを接触させる構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-11127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
つまり特許文献1に開示された容器の場合、未開封時に内容物の品質を保持する構成(シール材)は、開封時に開封している感覚を使用者に与える構成として採用されているが、開封後には廃棄されるので、開封後の蓋の閉状態において内容物の品質を保持する構成に採用されていない。
【0005】
本発明は上記実情を考慮して創作されたものであり、その目的は、開封時に開封している感覚を使用者に与えながらも、未開封時および開封後の蓋の閉状態において、つまり開封前後においてできる限り同じ構成によって内容物の品質を保持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の容器は、容器本体と、容器本体に着脱可能な蓋とを備える。蓋は容器本体の口部に対しその開口を塞ぐ状態で嵌合する栓部を備える。栓部は口部に対して同心状に配置された筒状の金属層を備える。口部は栓部に対し口径方向に対向する面を含む口部対向層を備える。口部対向層は、栓部の表面を含む表層よりも融点の低い樹脂製であり、未開封時には栓部の表層に対して分離可能に溶着しており、開封後には未開封時の溶着状態を示す溶着跡を口部の周方向の全周に亘って備える。
【0007】
金属層は口部に対して同心状に配置された筒状の部分を備えていれば、それ以外の部分を備えているか否かを問わないが、口部から容器本体の内外への気体の出入りをできる限り防ぎ、内容物の品質をできる限り保持するには、次のようにすることが望ましい。
すなわち金属層は、口部に対して同心状に配置された筒状の金属層筒部と、金属層筒部の貫通方向の一方側を塞ぐ金属層底部とを備えることである。
【0008】
口部はその貫通方向の全長に亘って溶着跡を備えているか、否かを問わない。しかし口部はその貫通方向の全長の一部に溶着跡を備え、残部に、つまり溶着跡に対して口部の貫通方向に隣接する部分に溶着跡隣接面を備える構成の場合においても、少なくとも未開封時での内容物の品質をできる限り保持するために、栓嵌合部の表層と口部対向層との接触度合をできる限り向上するには、次のようにすることが望ましい。
すなわち溶着跡は溶着跡隣接面よりも口部の口径方向に凹んでいることである。
【0009】
表層は金属層と同じ層であるか否かを問わないが、金属層を損傷し難くしたり(剥離や欠損し難くしたり)、内容物が金属と触れないようにしたりして、内容物の品質をできる限り保持するには、次のようにすることが望ましい。
すなわち表層は樹脂製であると共に、金属層の口径方向の一面側に対して一体にすることである。つまり表層は樹脂製であれば、金属層とは異なる層である。
【0010】
蓋の構成材料は問わないが、金属層を損傷し難くして(剥離や欠損し難く)して、内容物の品質をできる限り保持するには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、蓋は、樹脂製の蓋本体部と、蓋本体部の一部に溶着されたシート材とを備えるものとする。そのうえでシート材は、金属層と表層の他に、金属層の口径方向の他面側に対して一体である樹脂製の接着層を備えるものとし、接着層は、表層よりも融点が低い樹脂製であると共に蓋本体部に対して溶着して一体にすることである。
【0011】
部位に関して蓋は栓部だけで構成されるか否かを問わないが、開封時に栓部を口部から分離し易くするには次のようにすることが望ましい。
すなわち容器本体は開閉用の雄ネジ部を備えるものとし、蓋は、開閉用の雌ネジ部が内周面に形成された蓋外壁部を備えると共に、蓋外壁部と栓部とを一体にすることである。
【0012】
栓部は以下の2つの類型がある。第1の類型として、栓部は口部を内側から塞ぐ内栓である。また第2の類型として、栓部は口部を外側から塞ぐ外栓であり、口部の端面及び開口を覆う栓板部と、栓板部の外周部から口部の口径方向外側を覆う状態で延びる栓壁部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の容器は、未開封時には口部対向層が栓部の表層に対して分離可能に溶着しているので、開封時には口部対向層と表層とを分離する力、つまり開封している感覚を使用者に与えることになる。そして本発明の容器は、未開封時において内容物の品質を保持している構成(口部対向層と栓部の表層)が開封後にもほぼ同じ状態で存在し続け、開封後に蓋を閉じれば、口部対向層の溶着跡と栓部の表層とが対向する状態になるので、開封前後においてほぼ同じ状態で内容物の品質を保持できる。
【0014】
また本発明の容器は、口部に対して同心状に配置された筒状の金属層筒部と、金属層筒部の貫通方向の一方側を塞ぐ金属層底部とを金属層が備える場合には、金属層底筒部がない場合に比べて、蓋を閉めた状態で口部から容器本体内へ気体が出入りし難くなるので、内容物の品質を保持できる。
【0015】
また本発明の容器は、溶着跡が溶着跡隣接面よりも口部の口径方向に凹んでいる場合には、凹んでいない場合に比べて、少なくとも未開封時においては栓部の表層と口部対向層との密着度合が高く、内容物の品質を保持できる。
【0016】
また本発明の容器は、表層を樹脂製にすると共に、金属層の口径方向の一面側に対して一体にしてある場合には、金属層が損傷し難くなり、内容物の品質を保持できる。
【0017】
また本発明の容器は、樹脂製の蓋本体部とシート材とを備える構成の場合には、シート材の接着層を表層よりも融点が低い樹脂製としたうえで蓋本体部に対して溶着して一体としてあるので、金属層が損傷し難くなり、内容物の品質を保持できる。
【0018】
また本発明の容器は、容器本体には雄ネジ部を備え、蓋の蓋外壁部には雌ネジ部を備える構成の場合には、開封操作が明確であり、蓋を捻るだけで開封できるので、開封時に栓部を口部から分離し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)(B)図は、本発明の第一実施形態の容器における未開封時の状態を示す断面図、開封後の状態を示す断面図である。
図2】(A)(B)図は、本発明の第二実施形態の容器における未開封時の状態を示す断面図、開封後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第一実施形態の容器は図1に示すように、内容物を収容する容器本体1と、容器本体1に着脱可能な蓋2とを備える。容器本体1は樹脂製、より詳しく言えば熱可塑性樹脂製であり、例えばポリエチレン製である。蓋2はインサート成形品で、蓋2の外形を形作る樹脂製(より詳しく言えば熱可塑性樹脂製)の蓋本体部3と、蓋本体部3の一部に溶着されたシート材4とを備える。蓋本体部3は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製である。以下、容器本体1・蓋2の順に詳述する。
【0021】
容器本体1は、内容物を収容する収容部11と、収容部11に連続すると共に内容物を通過させる口部12とを備える。また容器本体1は本実施形態では収容部11を口径方向に押し潰し可能な押出しチューブである。したがって容器本体1は弾性変形可能であり、収容部11を押し潰すことによって内容物が口部12から押し出される。また容器本体1は例えばブロー成形によって形成される。そして容器本体1の表面にはパーティングラインPLが容器本体1の深さ方向に沿って延びる状態で形成され、本実施形態では口部12の外周面における口部12の貫通方向の全長に亘って形成されると共に、口部12から収容部11の外周面に連続する状態で形成されている。パーティングラインPLは容器本体1の表面に対して口径方向に対称的な位置に形成される。なおパーティングラインPLに対して周方向の隣り部分よりもパーティングラインPLは容器本体1の表面に突出している。
【0022】
収容部11は筒状であり、筒の貫通方向の一端が閉鎖し、他端が環状に開口している。そして収容部11の他端の開口は口部12に連続している。口部12は円筒状である。
【0023】
蓋2は本実施形態では、口部12の端面および開口を覆う蓋板部21と、蓋板部21の外周部から口部12の口径方向外側を覆う状態で延びる蓋外壁部22と、蓋板部21から突出し且つ口部12に対しその開口を塞ぐと共に嵌合する栓部23とを備える。また蓋板部21は蓋外壁部22と栓部23とは別の部位であり、この別の部位(蓋板部21)を介して蓋外壁部22と栓部23とは間接的に一体である。
【0024】
蓋板部21は円盤状で、口部12の端面の外径よりも大きな直径である。また蓋外壁部22は円筒状で、蓋板部21の外周の全周に亘って連続する状態となっている。
【0025】
蓋外壁部22と容器本体1とは開閉用のネジ部を備える。ネジ部は、蓋外壁部22の内周面に形成された雌ネジ部22aと、容器本体1の口部12の外周面に形成された雄ネジ部12aとから構成される。蓋2の深さ方向に関して雌ネジ部22aは蓋外壁部22の内周面のうち蓋板部21とは反対側に形成される。口部12の貫通方向に関して雄ネジ部12aは口部12の外周面のうち収容部11側に形成される。つまりネジ部は、蓋2の閉状態において口部12の貫通方向の全長のうち開口側とは反対側に形成される。そして蓋2の閉状態においてネジ部よりも蓋板21側であって且つ口部12の外周面と蓋外壁部22の内周面の間には隙間Gが形成されている。また隙間Gとは口径方向の反対側において口部12の内側に嵌合するのが栓部23である。
【0026】
栓部23は本実施形態では、容器本体1の口部12を内側から塞ぐ類型、つまり内栓型である。栓部23は外周面が円筒状の突起であり、より詳しく言えば円盤状である。栓部23は、円筒状の外周面23aと円形の底面23bとを備える。円筒状の外周面23aの高さ23Hは、円形の底面23bの直径23Dよりも短いし、より詳しく言えば底面23bの半径よりも短い。また栓部23は、樹脂製の蓋本体部3のうち蓋板部21から突出する部分(以下、「内栓本体部」と称する)3aと、内栓本体部3aの表面を覆うシート材4とが一体となった物である。
【0027】
内栓本体部3aとシート材4とが一体となっているので、内栓本体部3aの表面を視認することはできない。しかし内栓本体部3aの表面は概念として存在する。この内栓本体部3aの表面は、口部12に対し口径方向に対向する円筒状の外周面と、収容部11の奥側に対向する円形の底面とで形成される。そして内栓本体部3aの表面全域(外周面・底面の全域)だけでなく、蓋板部21のうち内栓本体部3aから鍔状に突出する部分(蓋板部21のうち内栓本体部3aを包囲する部分)を連続して覆う状態で、シート材4が配置されている。
【0028】
シート材4は元々平らであり、複数の層が積み重なった形の積層構造のシートである。そしてシート材4は、厚み方向の中央に配置された金属層である金属箔41と、厚み方向の一面側(図での下面側)に配置されると共に金属箔41の一面に対し一体である樹脂製の保護層42と、厚み方向の他面側(図での上面側)に配置されると共に金属箔41の他面に対し一体である樹脂製の接着層43とを備える。
【0029】
保護層42と接着層43は何れも熱可塑性樹脂製であり、保護層42は接着層43よりも融点が高い。保護層42と接着層43の色は透明色で、シート材4の単体の場合に保護層42越し及び接着層43越しに金属箔41が視認できる。金属箔41は一例としてアルミ箔であり、例えば銀色である。
【0030】
またシート材4は、蓋2をインサート成形する前に、プレス加工によって内栓本体部3aの表面に対応する形、より詳しく言えばハット形状(鍔のある帽子形状)に成形される。シート材4は、プレス加工によって接着層43がハット形状の凹面側を向く状態にする。また蓋2をインサート成形で形成すると、接着層43は内栓本体部3aに溶着され、保護層42は栓部23の表面を含む表層42となる。そしてシート材4は、内栓本体部3aの底面を覆うシート底部4aと、内栓本体部3aの外周面を覆う筒状のシート筒部4bと、蓋板部21のうち栓部23の周囲の全周とを鍔状に覆うシート鍔部4cとを備える。言い換えると、シート材4は、シート筒部4bの筒の貫通方向の一端側をシート底部4aで塞ぐと共に、シート筒部4bの筒の貫通方向の他端側からシート鍔部4cを口径方向外側に鍔状に突出させたものである。なおシート筒部4bは円筒状であり、シート鍔部4cは円環状となっている。そして蓋2の閉状態においてシート筒部4bは口部12に対して同心状に配置される。
【0031】
また金属箔(金属層)41はシート材4と同様に、口部12に対して同心状に配置された筒状の金属層筒部41aと、金属層筒部41aの貫通方向の一方側を塞ぐ金属層底部41bと、金属層筒部41aの貫通方向の他端側から口径方向外側に鍔状に突出する金属層鍔部41cを備える。
【0032】
蓋2は前述したようにインサート成形によって形成される。より詳しく言えば、金型の内部にシート材4を設置した後に溶融樹脂を金型内に注入することによって蓋2は形成される。金型内に注入された樹脂が蓋本体部3を構成する。したがって蓋2は前述したように樹脂製の蓋本体部3とシート材4とが一体になった物である。
【0033】
シート材4と口部12とは蓋2の閉状態においては嵌合する関係である。また蓋2の閉状態においてシート材4のシート筒部4bの表層42(保護層42)と口部12とは口径方向に対向し、未開封時には分離可能に溶着し、開封後には接触している。そして口部12のうち栓部23に対し口径方向に対向する面(本実施形態では内周面)を含む層を口部対向層12cと称する。なお口部12は単層であるか、口部12の口径方向に複数の層が積み重なった複層であるかは問わない。そして口部対向層12cは、未開封時にはシート筒部4bのうち表層42に対して分離可能に溶着しており、開封した瞬間にその表面に未開封時の溶着状態を示す溶着跡14が形成される。その結果、開封後には溶着跡14は口部対向層12cの表面に備わっている。また溶着跡14は本実施形態では口部対向層12c(口部12の内周面)だけでなく、口部12の端面にも連続して形成されている。
【0034】
溶着跡14は口部12の周方向の全周に亘って形成されており、環状である。また蓋2の閉状態で溶着跡14と栓部23の表層42とは対向し、接触する。
【0035】
また口部12は溶着跡14に対して口部12の貫通方向(容器本体1の奥側)に隣接する溶着跡隣接面15を備えている。そして溶着跡隣接面15よりも溶着跡14は口部12の口径方向に凹んでいる。この実施形態では溶着跡14は、口部12の内周面に形成されているので、溶着跡14の口径(直径)14Dは溶着跡隣接面15の口径(直径)15Dよりも大きくなっている。
【0036】
蓋2と容器本体1との溶着には高周波溶着機を使う。蓋2の閉状態の容器に対し高周波溶着機を使用すると、高周波によってシート材4の中で樹脂よりも金属、つまり金属箔41が加熱され易く、その金属箔41(特に金属層筒部41a)の熱が表層42から口部対向層12cに伝達する。そして表層42よりも口部対向層12cの融点が低いので、表層42が溶けることなく口部対向層12cのみが溶けることから、口部対向層12cが表層42に対して分離可能に溶着する。なお口部対向層12cだけでなく表層42が溶けると、口部対向層12cと表層42とが一体になり、分離不能となる。そして表層42と口部対向層12cとの融点はできるだけ差があることが望ましく、例えば表層42の融点は口部対向層12cの融点よりも30℃以上、望ましくは50℃、より望ましくは100℃以上高くする。なお高周波溶着機を使用する前に、口部対向層12cと表層42とは密着する関係となっている。
【0037】
本発明の第二実施形態の容器は図2に示すように、蓋2の栓部25が容器本体1の口部12を外側から塞ぐ類型、つまり外栓型であることについて、第一実施形態の容器と相違する。なお第二実施形態の容器のうち第一実施形態とほぼ同じ構成には文章と図2において第一実施形態と同じ符号を付けてある。
【0038】
栓部25は、口部12の端面及び開口を覆う栓板部25aと、栓板部25aの外周部から口部12の口径方向外側を覆う状態で延びる栓壁部25bとを備える。
栓板部25aは蓋板部21でもあり、円盤状である。また栓壁部25bは蓋外壁部22のうち雌ネジ部22aよりも蓋板部21側の部分であり、円筒状である。つまり蓋板部21と蓋外壁部22とは、口部12を塞ぐという蓋2として必須の本来の役割の他に、口部12を口径方向から接触する状態で塞ぐ栓部25としての役割を兼備したものである。また蓋外壁部22と栓部25とは別の部位を介することなく直接的に一体である。ちなみに栓壁部25bは、蓋外壁部22のうち栓壁部25bに対して蓋2の開口側に隣接する部分(以下、「開口側隣接部」と称する。)25cよりも、口径方向内側に突出している。栓板部25aの内面(図での下面)と口部12の端面、並びに栓壁部25bの内周面と口部12の外周面とは何れも、未開封時には分離可能に溶着されており、開封後には蓋2の閉状態で対向し、接触する状態となる。一方、蓋2の閉状態において開口側隣接部25cの内周面と口部12の外周面との間には隙間Gが未開封時および開封後の蓋2の閉状態において形成されている。
また栓部25は、樹脂製の蓋本体部3のうち栓板部25aと栓壁部25bの外形を形作る部分(以下、「外栓本体部」と称する。)3bと、蓋本体部3の外栓本体部3bの内面を覆うシート材4とが一体となった物である。
【0039】
外栓本体部3bの内面は、雌ネジ部22aよりも蓋板部21側において口部12に対し口径方向外側に対向する円筒状の内周面と、口部12の端面を覆う円形の底面と、蓋板部21のうち開口側隣接部25cから口径方向内側へ段状に突出する環状面である。そして外栓本体部3bの内面全域を覆う状態でシート材4が配置されている。
【0040】
シート材4は第一実施形態と同じ積層構造で、接着層43・金属層41(金属箔)・保護層42(表面層)の順で、蓋本体部3に積層されている。またシート材4は、蓋2をインサート成形する前に、プレス加工によって外栓本体部3bの内面に対応する形、より詳しく言えばハット形状(鍔のある帽子形状)に成形される。シート材4は、プレス加工によって接着層43がハット形状の凸面側を向くようになる。
【0041】
溶着跡14は口部12の外周面に形成されている。つまり溶着跡14は口部12の外周面を含む口部対向層12cにおいて周方向の全周に亘って形成されており、円筒面状である。また溶着跡14は口部12の外周面だけでなく、口部12の端面にも連続して形成されている。なお容器本体1の表面にはインサート成形によるパーティングラインPLが口部12の溶着跡14よりも容器本体1の深さ方向の奥側に沿って延びる状態で形成される。
【0042】
また口部12は溶着跡14に対して口部12の貫通方向(容器本体1の奥側)に隣接する溶着跡隣接面15を備えている。そして溶着跡隣接面15よりも溶着跡14は口部12の口径方向に凹んでいる。この実施形態では溶着跡14は、口部12の外周面に形成されているので、溶着跡14の口径(直径)14Dは溶着跡隣接面15の口径(直径)15Dよりも小さくなっている。
【0043】
上記した第一・第二実施形態の容器は、未開封時には口部対向層12cが栓部25の表層42に対して分離可能に溶着しているので、開封時には口部対向層12cと表層42とを分離する力、つまり開封している感覚を使用者に与えることになる。そして溶着跡14が口部12の周方向の全周に亘って形成されていることから、口部12の内周面と栓部23,25の口径方向を向く面、並びに口部12の端面と蓋板部21の内面とが未開封時には溶着によって密封されていたことが確認できる。また開封時には口部対向層12cと表層42とが分離する瞬間にパキッという破壊音が発生し、開封している感覚を音としても使用者に与えることになる。つまり破壊音が発生する程度に口部対向層12cが表層42に対して溶着している。そして容器は、未開封時において内容物の品質を保持している構成(口部対向層12cと表層42)が開封後にもほぼ同じ状態で存在し続け、開封後に蓋2を閉じれば、口部対向層12cの溶着跡14と栓部25の表層42とが対向し、接触するので、開封前後においてほぼ同じ状態で内容物の品質を保持できる。
【0044】
また第一・第二実施形態の容器は、口部12に対して同心状に配置された筒状の金属層筒部41aと、金属層筒部41aの貫通方向の一方側を塞ぐ金属層底部41bとを金属層41が備えるので、金属層底部41bがない場合に比べて、蓋2を閉めた状態で口部12から容器本体1内へ気体が出入りし難くなり、内容物の品質を保持できる。しかも開封後の蓋2の内側を見ると、保護層42越しに金属箔41を視認できるので、使用者は金属箔41によって内容物の品質を保持していることを確認できる。
【0045】
また第一・第二実施形態の容器は、溶着跡14が溶着跡隣接面15よりも口部12の口径方向に凹んでいるので、凹んでいない場合に比べて、少なくとも未開封時においては栓部25の表層42と口部対向層12cとの密着度合が高く、内容物の品質を保持できる。
【0046】
また第一・第二実施形態の容器は、表層42を樹脂製にすると共に、金属層41の口径方向の一面側に対して一体にしてあるので、金属層41が損傷し難くなり、内容物の品質を保持できる。
【0047】
また第一・第二実施形態の容器は、樹脂製の蓋本体部3とシート材4とを備える構成とし、シート材4の接着層43を表層42よりも融点が低い樹脂製としたうえで蓋本体部3に対して溶着して一体としてあるので、金属層(金属箔)41が損傷し難くなり、内容物の品質を保持できる。
【0048】
また第一・第二実施形態の容器は、容器本体1には雄ネジ部12aを備え、蓋2の蓋外壁部22には雌ネジ部22aを備える構成なので、開封操作が明確であり、蓋2を捻るだけで開封できることになり、開封時に栓部25を口部12から分離し易くなる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0050】
例えば栓部は第一実施形態では内栓であり、円盤状であったが、本発明ではこれに限らず、円筒状であっても良く、この場合、円筒の厚み(口径方向の厚み)は口部12と栓部との密接を確保できる寸法であれば良い。
【0051】
また栓部は第二実施形態では外栓であり、蓋外壁部21の一部であったが、本発明ではこれに限らず、蓋外壁部22に対し口径方向内側に間隔をあけつつ蓋板部21から突出するもの、つまり蓋外壁部22とは別に独立した物であっても良い。
【0052】
また金属層41は第一・第二実施形態では金属層筒部41a・金属層底部41b・金属層鍔部41cを備える構成であったが、本発明ではこれに限らず、例えば金属層筒部41aのみを備える構成であっても良く、この場合、金属層底部に相当する部分を樹脂製としたものであっても良い。なお金属層底部に相当する部分の樹脂をEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)製として、口部から容器本体の内外への気体の出入りをできる限り防ぎ、内容物の品質をできる限り保持するようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 容器本体
11 収容部
12 口部
12a 雄ネジ部
12c 口部対向層
14 溶着跡
14D 口径
15 溶着跡隣接面
15D 口径
2 蓋
21 蓋板部
22 蓋外壁部
22a 雌ネジ部
23 栓部
23a 外周面
23b 底面
23D 直径
23H 高さ
25 栓部
25a 栓板部
25b 栓壁部
25c 開口側隣接部
3 蓋本体部
3a 内栓本体部
3b 外栓本体部
4 シート材
4a シート底部
4b シート筒部
4c シート鍔部
41 金属箔(金属層)
41a 金属層筒部
41b 金属層底部
41c 金属層鍔部
42 保護層(表層)
43 接着層
G 隙間
PL パーティングライン
図1
図2