(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027532
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】流量制御方法及び流量制御システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230222BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20230222BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
H01L21/31 F
G05D7/06 Z
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132683
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山島 淳
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5H307
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004BA04
5F004BA11
5F004BB13
5F004BB14
5F004BC03
5F004BD03
5F004CA02
5F045AA08
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EE04
5F045EF05
5F045EH11
5F045EH12
5F045EK07
5F045GB16
5H307AA02
5H307BB01
5H307DD01
5H307FF01
5H307FF12
(57)【要約】
【課題】基板処理に用いられる処理ガスの流量を適切に制御する。
【解決手段】
流量制御システムを用いた処理ガスの流量制御方法であって、前記流量制御システムは、流量制御器と、第一のバルブと、第二のバルブと、圧力センサと、を備え、前記流量制御方法は、ガス供給ログデータ取得工程と、演算工程と、制御工程と、を含み、前記ガス供給ログデータ取得工程において、流量モニタ値と、圧力値と、を取得し、前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、各ディレイ時間を短縮または延長するように各ディレイ信号を変更して、再度、前記ガス供給ログデータ取得工程を実行し、又は、各ディレイ信号を記録し、前記制御工程において、前記記録した各ディレイ信号と用いて前記処理ガスの流量を制御する、流量制御方法。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御システムを用いた処理ガスの流量制御方法であって、
前記流量制御システムは、流量制御器と、前記流量制御器の上流に設けられる第一のバルブと、前記流量制御器の下流に設けられる第二のバルブと、前記第一のバルブの下流に設けられる圧力センサと、を備え、
前記流量制御方法は、ガス供給ログデータ取得工程と、演算工程と、制御工程と、を含み、
前記ガス供給ログデータ取得工程において、流量制御器に対し前記第一のバルブの開放信号と、第一のディレイ時間を決定する第一のディレイ信号と、前記第二のバルブの開放信号と、第二のディレイ時間を決定する第二のディレイ信号と、を含む通流開始信号を送信し、続いて、前記処理ガスの流量が設定流量となるように、前記流量制御器において流量制御を開始する流量制御開始信号を送信し、前記ガス供給ログデータ取得工程の開始から終了までの間、前記流量制御器における流量を示す流量モニタ値と、前記圧力センサにおける圧力値と、を取得し、
前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出される場合は、前記第一のディレイ時間又は前記第二のディレイ時間を短縮又は延長するように第一のディレイ信号又は第二のディレイ信号を変更して、再度、前記ガス供給ログデータ取得工程を実行し、又は、
前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出されず、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルが検出される場合には、前記流量モニタ値と前記圧力値とを取得する際に前記ガス供給ログデータ取得工程に供した前記第一のディレイ信号及び前記第二のディレイ信号を記録し、前記演算工程を終了し、
前記制御工程において、前記演算工程で前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出されず、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルが検出される場合における、前記記録した前記第一のディレイ信号及び前記第二のディレイ信号を用いて、前記処理ガスの流量を制御する、流量制御方法。
【請求項2】
前記ガス供給ログデータ取得工程において、さらに、前記流量制御開始信号を送信した後、続いて、前記第一のバルブの閉鎖信号と、第三のディレイ時間を決定する第三のディレイ信号と、前記第二のバルブの閉鎖信号と、第四のディレイ時間を決定する第四のディレイ信号と、を含む通流終了信号と、を送信し、
前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出される場合は、さらに、前記第三のディレイ時間及び前記第四のディレイ時間を短縮又は延長するように変更し、又は、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出されず、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルが検出される場合には、さらに、前記第三のディレイ信号及び前記第四のディレイ信号を記録し、
前記制御工程において、さらに、前記第三のディレイ信号及び前記第四のディレイ信号を用いる、請求項1に記載の流量制御方法。
【請求項3】
前記第一のバルブ及び前記第二のバルブは、電磁開閉バルブである、請求項1又は2に記載の流量制御方法。
【請求項4】
前記流量制御器と、前記第一のバルブ及び前記第二のバルブは、一体に設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の流量制御方法。
【請求項5】
処理ガスの流量を制御する流量制御システムであって、
流量制御器と、前記流量制御器の上流に設けられる第一のバルブと、前記流量制御器の下流に設けられる第二のバルブと、前記第一のバルブの下流に設けられる圧力センサと、制御部と、を備え、
前記制御部は、流量制御方法を実行可能に構成され、
前記流量制御方法は、ガス供給ログデータ取得工程と、演算工程と、制御工程と、を含み、
前記ガス供給ログデータ取得工程において、流量制御器に対し前記第一のバルブの開放信号と、第一のディレイ時間を決定する第一のディレイ信号と、前記第二のバルブの開放信号と、第二のディレイ時間を決定する第二のディレイ信号と、を含む通流開始信号を送信し、続いて、前記処理ガスの流量が設定流量となるように、前記流量制御器において流量制御を開始する流量制御開始信号を送信し、前記ガス供給ログデータ取得工程の開始から終了までの間、前記流量制御器における流量を示す流量モニタ値と、前記圧力センサにおける圧力値と、を取得し、
前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出される場合は、前記第一のディレイ時間又は前記第二のディレイ時間を短縮又は延長するように第一のディレイ信号又は第二のディレイ信号を変更して、再度、前記ガス供給ログデータ取得工程を実行し、又は、
前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出されず、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルが検出される場合には、前記流量モニタ値と前記圧力値とを取得する際に前記ガス供給ログデータ取得工程に供した前記第一のディレイ信号及び前記第二のディレイ信号を記録し、前記演算工程を終了し、
前記制御工程において、前記演算工程で前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出されず、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルが検出される場合における、前記記録した前記第一のディレイ信号及び前記第二のディレイ信号を用いて、前記処理ガスの流量を制御する、流量制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流量制御方法及び流量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流量測定可能なガス供給システムが開示されている。ガス供給システムは、流通するガス流量を制御する流量制御器と、前記第1、第2、及び第3の遮断弁により囲まれる流路内の温度及び圧力を検出する圧力検出器及び温度検出器と、体積測定用タンクと、前記第1、第2、及び第3の遮断弁により囲まれる流路体積を、前記第3遮断弁の開状態と閉状態とにボイルの法則を適用することにより求める。また、流路体積と圧力検出器及び温度検出器の検出値とを用いて前記流量制御器の流量を演算する演算制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/017855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板処理に用いられる処理ガスの流量を適切に制御する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、流量制御システムを用いた処理ガスの流量制御方法であって、前記流量制御システムは、流量制御器と、前記流量制御器の上流に設けられる第一のバルブと、前記流量制御器の下流に設けられる第二のバルブと、前記第一のバルブの下流に設けられる圧力センサと、を備え、前記流量制御方法は、ガス供給ログデータ取得工程と、演算工程と、制御工程と、を含み、前記ガス供給ログデータ取得工程において、流量制御器に対し前記第一のバルブの開放信号と、第一のディレイ時間を決定する第一のディレイ信号と、前記第二のバルブの開放信号と、第二のディレイ時間を決定する第二のディレイ信号と、を含む通流開始信号を送信し、続いて、前記処理ガスの流量が設定流量となるように、前記流量制御器において流量制御を開始する流量制御開始信号を送信し、前記ガス供給ログデータ取得工程の開始から終了までの間、前記流量制御器における流量を示す流量モニタ値と、前記圧力センサにおける圧力値と、を取得し、前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出される場合は、前記第一のディレイ時間又は前記第二のディレイ時間を短縮又は延長するように第一のディレイ信号又は第二のディレイ信号を変更して、再度、前記ガス供給ログデータ取得工程を実行し、又は、前記演算工程において、前記流量モニタ値と前記圧力値とを比較し、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出されず、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルが検出される場合には、前記流量モニタ値と前記圧力値とを取得する際に前記ガス供給ログデータ取得工程に供した前記第一のディレイ信号及び前記第二のディレイ信号を記録し、前記演算工程を終了し、前記制御工程において、前記演算工程で前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の前に第一のプロファイルが検出されず、前記流量モニタ値の立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルが検出される場合における、前記記録した前記第一のディレイ信号及び前記第二のディレイ信号を用いて、前記処理ガスの流量を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理に用いられる処理ガスの流量を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】流量制御開始後のOES取得値と流量モニタ値の経時変化の比較図である。
【
図2】実施の形態にかかるプラズマ処理システムの構成例を示す説明図である。
【
図3】実施の形態にかかるプラズマ処理装置の構成例を示す断面図である。
【
図4】実施の形態にかかるガス供給部の構成の詳細を模式的に示す模式図である。
【
図5】実施の形態にかかる流量制御システムの構成の概略を示す系統図である。
【
図6】実施の形態にかかる流量制御方法の概略を示すフロー図である。
【
図7】流量制御開始後の流量モニタ値と圧力値の経時変化の比較図である。
【
図8】流量制御開始後の流量モニタ値と圧力値の経時変化の比較図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
プラズマ処理装置における半導体基板(以下、「基板」という。)のプラズマ処理において、基板を収容したしたプラズマ処理チャンバには種々の処理ガスが供給される。処理ガスの供給にあたっては、処理ガスの流量を制御する流量制御器が用いられる。流量制御器は、流量を制御する対象の処理ガスを通流させてその流量を制御する。また、通流する処理ガスの現在の流量をモニタリングし、流量モニタ値を出力する。プラズマ処理装置の制御を行う制御部は、流量制御器に対し、流量制御器に通流する処理ガスが所望の流量(以下、設定流量)とする制御信号として、流量設定信号を送信して処理ガスの流量を制御する。また、流量制御器から送信される流量モニタ値に基づき、流量の制御性を確認する。
【0009】
流量の制御性の確認において、制御対象の処理ガスの流量制御器における流量モニタ値と、プラズマ処理チャンバにおける存在量と、の相関が採れていることが好ましい。相関が採れていれば、実際にプラズマ処理チャンバに供給される処理ガスの量を、流量モニタ値に基づいて制御することができる。
【0010】
本発明者は、プラズマ処理チャンバにおける処理ガスの存在量の経時変化を、流量モニタ値と比較し、
図1のような比較図を得た。処理ガスの存在量は、プラズマ処理チャンバの側壁から内部のプラズマ発光などを観察する発光分光分析器(OES:Optical Emission Spectrometer)によって取得した。
図1において、処理ガスの通流開始信号S1の送信後、OES取得値が急激に増加した(
図1中、密なハッチング部分)。これは、プラズマ処理チャンバにおいて処理ガスの存在量が急増したことを示す。この時、流量制御器における流量モニタ値は、処理ガスの存在量が急増した時点では流量が増加していないことを示した。その後、流量制御器に対する流量制御開始信号が送信されると、OES取得値が安定して増加した(
図1中、疎なハッチング部分)。これは、処理ガスの存在量が安定して増加したことを示す。この時流量モニタ値は、流量が増加したことを示した。したがって、
図1の比較の結果は、プラズマ処理チャンバにおいてOESが検出した実際の処理ガスの存在量と、流量制御器において検出される流量モニタ値とが、特に流量制御の開始直後において相関していないことを示した。
【0011】
本発明者は、
図1の比較の結果、流量制御器における流量モニタ値とプラズマ処理チャンバにおける存在量とが相関しない場合があるという課題を認識するに至った。このように相関が採れていない場合、流量モニタ値は実際にプラズマ処理チャンバに供給される処理ガスの量を必ずしも反映しないことを意味する。この場合、流量モニタ値に基づいた処理ガスの制御によっては、実際にプラズマ処理チャンバに供給される処理ガスの流量を適切に制御することができないおそれがある。
【0012】
上記課題に鑑み、本開示にかかる技術は、プラズマ処理チャンバに供給される処理ガスの流量を適切に制御する。具体的には、プラズマ処理装置における実際の処理ガスの存在量と、流量制御器において検出される流量モニタ値との相関を改善し、流量モニタ値に基づく流量の制御性を向上させる。
【0013】
以下、本実施形態にかかる流量制御システムを備えたプラズマ処理システム及び流量制御システムを用いた流量制御方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<プラズマ処理システム>
一実施形態において、プラズマ処理システム1は、
図2に示すようにプラズマ処理装置2及び制御部3を含む。プラズマ処理装置2は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0015】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0016】
制御部3は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置2に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部3は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置2の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部3の一部又は全てがプラズマ処理装置2に含まれてもよい。制御部3は、例えばコンピュータ3aを含んでもよい。コンピュータ3aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)3a1、記憶部3a2、及び通信インターフェース3a3を含んでもよい。処理部3a1は、記憶部3a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部3a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置2との間で通信してもよい。
【0017】
<プラズマ処理装置>
続いて、上述したプラズマ処理装置2の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置2の構成例について説明する。
図3はプラズマ処理装置2の構成の概略を示す縦断面図である。
【0018】
プラズマ処理装置2は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置2は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0019】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0020】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0021】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器22を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、制御部3からの信号に基づき少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイス23を含んでもよい。各流量制御器22は、流量制御部24を備える。流量制御部24は、制御部3からの信号に基づき流量制御器22を制御し、通流する処理ガスの流量を制御することが可能に構成される。また、流量制御部24は、流量制御器22において現在通流している処理ガスの流量をモニタリングし、流量モニタ値FMを制御部3に送信可能に構成される。
【0022】
ガス供給部20の下流には、圧力センサ26が設けられる。圧力センサ26は、ガスソース21及び流量制御器22の下流において、処理ガスの圧力を測定することが可能に構成される。また圧力センサ26は、ガス供給部20においてガスソース21及び流量制御器22がそれぞれ複数設けられるような場合には、これらの流路を構成する配管が合流する合流路27に一つ設けられる。圧力センサ26において測定した圧力の値は制御部3に送信可能に構成される。なお、本明細書において、ある構成要素の上流又は下流とは、処理ガスの流通方向の上流又は下流を意味する。具体的には、上流とは当該構成要素のガス供給部20側のことを指し、下流とは、当該構成要素のプラズマ処理チャンバ10側のことを指す。
【0023】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0024】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0025】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a、32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0026】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0027】
ここで、ガス供給部の構成の詳細について、
図4を用いて説明する。
図4は、ガス供給部20の構成の詳細を模式的に示す模式図である。
【0028】
一実施形態でガス供給部20は、
図4に示すように複数のガスソース21及び、これに接続される複数の流量制御器22を含む。それぞれの流量制御器22は、流量制御部24と、処理ガスが通る流路120と、コントロールバルブ122と、抵抗体(オリフィス)124と、を備える。流路120はガスソース21側の端部に第一のバルブ126を、プラズマ処理チャンバ10側の端部に第二のバルブ128を備える。また流路120は、コントロールバルブ122と抵抗体124とに挟まれる部分である第一の流路130と、抵抗体124と第二のバルブ128とに挟まれる部分である第二の流路132を有する。第一の流路130は一次圧力センサ134を含み、第二の流路132は二次圧力センサ136を含む。一次圧力センサ134及び二次圧力センサ136は、第一の流路130及び第二の流路132の圧力をそれぞれ取得し、それぞれの圧力値を流量制御部24に入力する。流量制御部24は、上記入力された第一の流路130の圧力並びに第二の流路132の圧力の差と、後述する設定流量値FSと、に基づき、コントロールバルブ122の開閉を制御する。あるいは流量制御部24は、コントロールバルブ122の開度を制御することで、当該流量制御器22内を通過する流量を制御する。また流量制御部24は、当該流量制御器22内を通過する現在の流量をモニタリングし、流量モニタ値FMを制御部3に送信する。
【0029】
<流量制御システム>
続いて、プラズマ処理システム1における処理ガスの流量制御を実行可能な、流量制御システム200の構成の概略について、
図5を用いて説明する。
図5は、プラズマ処理システム1における処理ガスの流量制御を実行する流量制御システム200の構成の概略を示す系統図である。
【0030】
図5において、制御部3は、流量変調デバイス23に対して、処理ガスの通流を開始する指令である通流開始信号SOと、処理ガスの通流を終了する指令である通流終了信号SCとを送信する。流量変調デバイス23は、通流開始信号SOに基づき、第一のバルブ126を開放する第一の開放信号SO1、第二のバルブ128を開放する第二の開放信号SO2、第三のバルブ202を開放する第三の開放信号SO3を、それぞれのバルブに送信する。また、流量変調デバイスは、通流終了信号SCに基づき、第一のバルブ126を閉鎖する第一の閉鎖信号SC1、第二のバルブ128を閉鎖する第二の閉鎖信号SC2、第三のバルブ202を閉鎖する第三の閉鎖信号SC3を、それぞれのバルブに送信する。なお一実施形態において、第一のバルブ126、第二のバルブ128及び、第三のバルブ202は、エアオペバルブが用いることができる。この場合、任意のエア回路を介して流量変調デバイス23に接続されることとしてもよい。さらに、流量変調デバイス23は、各バルブへのエアの供給を制御するソレノイドバルブを含んでもよい。かかる場合、第一~第三の開放信号SO1、SO2、SO3及び、第一~第三の閉鎖信号SC1、SC2、SC3の送信は、上記ソレノイドバルブの開閉によるエア供給の制御によって実行することとしてもよい。また制御部3は、各流量制御器22の流量制御部に対し、流量制御開始信号FCS1と、流量制御終了信号FCS2と、を送信する。
【0031】
また
図5において、流量制御部24は、モニタリングした流量モニタ値FMを制御部3に逐次送信する。また圧力センサ26は、測定した圧力値PSを制御部3に逐次送信する。逐次送信とは、後述する流量制御方法MTの実行中の期間、所望の間隔で流量モニタ値FM及び圧力値PSを取得し送信することを指す。
【0032】
<流量制御方法>
続いて、上記のような構成を有する流量制御システム200を有するプラズマ処理システム1における、処理ガスの流量制御方法MTについて、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態にかかる流量制御方法MTの概略を示すフロー図である。
図6に示すように、流量制御方法MTは、ガス供給ログデータを取得する工程ST10~工程ST20と、取得したガス供給ログデータに基づいて演算を実行する工程ST30~工程ST32と、プラズマ処理において流量を制御する工程ST40と、を含む。
【0033】
まず、ガス供給ログデータを取得する工程について説明する。工程ST10で、任意の一の流量制御器22について、開始から終了までの間、ガス供給ログデータを取得する。ガス供給ログデータとは、当該一の流量制御器22における流量制御部24において取得される流量モニタ値FM、及び、合流路27における圧力センサ26において取得される圧力値PSを指す。ガス供給ログデータの取得は、具体的には、流量制御部24及び圧力センサ26がそれぞれ、流量モニタ値FM及び圧力値PSを所望の間隔で取得し、制御部3に逐次送信することで実行される。
【0034】
工程ST11で、制御部3は、通流開始信号SOを流量変調デバイスに送信することで、所望の処理ガスの通流を開始する。通流開始信号SOは、第一のバルブ126を開放する第一の開放信号SO1と、第二のバルブ128を開放する第二の開放信号SO2と、第三のバルブ202を開放する第三の開放信号SO3と、第一のバルブ126を開放してから第二のバルブ128を開放するまでの第一のディレイ時間DT1を決定する第一のディレイ信号DL1と、を含む。
【0035】
工程ST12で、流量変調デバイス23は、通流開始信号SOに含まれる第一の開放信号SO1と、第三の開放信号SO3に基づき、上記一の流量制御器22の上流における第一のバルブ126と、第三のバルブ202とを開放する。
【0036】
工程ST13で、流量変調デバイスは、通流開始信号SOに含まれる第一のディレイ信号DL1に基づく第一のディレイ時間DT1の経過後に、上記一の流量制御器22の下流における第二のバルブ128を開放する。
【0037】
工程ST14で、制御部3は、上記一の流量制御器22の流量制御部24に流量制御開始信号FCS1を送信する。流量制御開始信号FCS1は、各バルブの開放後、流量制御を開始するまでの第二のディレイ時間DT2を決定する第二のディレイ信号DL2と、上記一の流量制御器22において通流すべき所望の流量(設定流量値FS)を設定する設定流量値信号と、を含む。
【0038】
工程ST15で、流量制御部24は、流量制御開始信号FCS1に含まれる第二のディレイ信号DL2に基づく第二のディレイ時間DT2の経過後に、流量が設定流量値FSとなるようにコントロールバルブ122の開閉を制御する。その後任意の時間、処理ガスの通流を継続する。
【0039】
工程ST16で、制御部3は通流終了信号SCを流量変調デバイス23に送信することで、上記所望の処理ガスの通流を終了する。通流終了信号SCは、第一のバルブ126を閉鎖する第一の閉鎖信号SC1と、第二のバルブ128を閉鎖する第二の閉鎖信号SC2と、第三のバルブ202を閉鎖する第三の閉鎖信号SC3と、第二のバルブ128を閉鎖してから第一のバルブ126を閉鎖するまでの第三のディレイ時間DT3を決定する第三のディレイ信号DL3とを含む。
【0040】
工程ST17で、流量変調デバイス23は、通流終了信号SCに含まれる第一の閉鎖信号SC1と、第二の閉鎖信号SC2とに基づき、上記一の流量制御器22の上流における第二のバルブ128と、第三のバルブ202を閉鎖する。
【0041】
工程ST18で、流量変調デバイス23は、通流終了信号SCに含まれる第三のディレイ信号DL3に基づく第三のディレイ時間DT3の経過後に、上記一の流量制御器22の下流における第一のバルブ126を閉鎖する。
【0042】
工程ST19で、制御部3は、上記一の流量制御器22の流量制御部24に流量制御終了信号FCS2を送信する。流量制御終了信号FCS2は、各バルブの閉鎖後、流量制御を終了するまでの第四のディレイ時間DT4を決定する第四のディレイ信号DL4を含む。
【0043】
工程ST20で、流量制御部24は、流量制御終了信号FCS2に含まれる第四のディレイ信号DL4に基づく第四のディレイ時間DT4の経過後に、コントロールバルブ122を閉鎖し、流量制御を終了する。また、流量制御終了後、ガス供給ログデータの取得を終了する。
【0044】
ここで、工程ST10~工程ST20において取得され制御部3に送信されるガス供給ログデータ、すなわち流量モニタ値FM及び圧力値PSについて説明する。
【0045】
図7は、流量モニタ値FM及び圧力値PSの経時変化のデータを、横軸に時間、縦軸に流量又は圧力をとり重ね合わせて比較した比較図である。
図7にはさらに、設定流量値FSの経時変化を含む。実線は圧力値PSを、点線は設定流量値FSを、一点鎖線は流量モニタ値FMを示す。
図7において、圧力値PSの経時変化のデータを圧力プロファイルと称する。また、流量制御開始直後の圧力プロファイルにおけるピークを含む部分(
図7中、密なハッチングをした部分)を第一のプロファイルPF1、定常圧力値PSを含む部分(
図7中、疎なハッチングをした部分)を第二のプロファイルPF2と称する。
【0046】
工程ST11~工程ST13で、各バルブが開放されると、圧力値PSがピークを示し、第一のプロファイルPF1を形成する。次に、工程ST14、工程ST15で流量制御が開始されると、圧力値PSが安定的に上昇し、第二のプロファイルPF2を形成する。また、流量制御が開始されると、流量モニタ値FMが0から上昇する。以下、本明細書において、流量モニタ値FMが0から上昇することを立ち上がりと称し、0から上昇する瞬間の時刻を立ち上がり時刻と称する。工程ST16~工程ST19で、各バルブが閉鎖されると、圧力値PSが低下する。次に、工程ST19、工程ST20で流量制御が終了すると、流量モニタ値FMが低下する。
【0047】
図6に戻り、続いて、ガス供給ログデータに基づいて演算を実行する工程ST30について説明する。工程ST30は、ガス供給ログデータを取得する工程ST10~工程ST20に続いて実行される。
【0048】
工程ST30で、制御部3は、工程ST10~工程ST20で取得した流量モニタ値FM及び圧力値PSの経時変化のデータにつき、流量モニタ値FMの立ち上がり時刻の前に圧力値PSの第一のプロファイルPF1が検出されるかどうかを確認する演算を実行する。
【0049】
工程ST31で、制御部3は、工程ST30で流量モニタ値FMの立ち上がり時刻の前に圧力値PSの第一のプロファイルPF1が検出される場合には、第一~第四のディレイ時間DT1、DT2、DT3、DT4を短縮するように、第一~第四のディレイ信号DL1、DL2、DL3、DL4を変更する。そして制御部3は、当該変更した第一~第四のディレイ信号DL1、DL2、DL3、DL4を用いて再度、工程ST10~工程ST20及び工程ST30を実行する。
【0050】
工程ST32で、制御部3は、上記工程ST30で流量モニタ値FMの立ち上がり時刻の前に圧力値PSの第一のプロファイルPF1が検出されず、流量モニタ値FMの立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルPF2のみが検出される場合には、工程ST10~工程ST20でガス供給ログデータの取得に供した第一~第四のディレイ信号DL1、DL2、DL3、DL4を記録する。
【0051】
ここで、工程ST32で流量モニタ値FMの立ち上がり時刻の前に圧力値PSの第一のプロファイルPF1が検出されず、流量モニタ値FMの立ち上がり時刻の後に第二のプロファイルPF2のみが検出される場合とは、具体的には
図8に示すような圧力プロファイルが検出される場合のことを指す。
【0052】
続いてプラズマ処理において流量を制御する工程ST40について説明する。工程ST40は、工程ST10~工程ST20及び工程ST30~工程ST32を実行した後、プラズマ処理システム1を用いてウェハに対しプラズマ処理を実行する場合に、実行する。工程ST40では、上記一の流量制御器22を用いてプラズマ処理チャンバ10に処理ガスを供給する場合に、工程ST32で記録した第一~第四のディレイ信号DL1、DL2、DL3、DL4を含む、通流開始信号SO、流量制御開始信号FCS1、通流終了信号SC及び、流量制御終了信号FCS2を用いて、処理ガスの通流の開始、終了及び処理ガスの流量を制御する。
【0053】
次に、本実施の形態にかかる流量制御方法を上記のように構成する理由について説明する。
【0054】
上述したように、本発明者は、OESを用いてプラズマ処理チャンバ10内における処理ガスの存在量の経時変化を確認し、これが流量制御器22における流量モニタ値FMと相関しないことがあることを確認した。これについて本発明者が鋭意検討した結果、流量制御器22の下流において圧力センサ26を設け、圧力値PSの経時変化のデータを取得する場合に、当該圧力値PSの経時変化のデータと、OESによって取得した処理ガスの存在量の経時変化のデータとがよく相関することがわかった。具体的には、OESによって取得するプラズマ処理チャンバ10における処理ガスの存在量について、
図1に示すように処理ガスの存在量が急増(
図1中、密なハッチング部分)する場合には、これに対応して圧力プロファイルにおいて第一のプロファイルPF1が検出されることがわかった。これにより本発明者は、本実施形態にかかる流量制御方法MTでは、圧力センサ26の圧力プロファイルが、実質的にプラズマ処理チャンバ10における処理ガスの存在量を示すものとして、圧力センサ26の圧力値PSと流量モニタ値FMとを比較することが可能であることを見出した。
【0055】
本発明者がさらに検討を進めたところ、従来の流量制御においてOESによって取得した処理ガスの存在量と流量モニタ値FMとが相関しない理由について、以下のような理由が想定された。
図4に示すような流量制御器22において、ある任意の流量を通流後に流量制御を終了する場合、まず第二のバルブ128が閉鎖され、その後第三のディレイ時間DT3経過後に、第一のバルブ126が閉鎖される。このとき、第一のバルブ126および第二のバルブ128に挟まれる流量制御器22の流路120には、処理ガスが残留する場合がある。以下、上記残留する処理ガスを残留ガスと称する。
【0056】
残留ガスは、次に流量制御器22を用いて制御が開始されるときに、放出される。具体的には、第一のバルブ126及び第二のバルブ128が開放されるときに、合流路27に対して放出される。すなわち、流量制御開始直後にプラズマ処理チャンバ10内の処理ガスの存在量が急増した理由及び、圧力プロファイルの第一のプロファイルPF1が検出された理由は、流量制御器22の残留ガスが放出された結果によるものと思われる。一方で、第一のバルブ126及び第二のバルブ128が開放された時点では、流量制御開始信号FCS1が流量制御器22の流量制御部24に対して送信されておらず、流量制御器22には処理ガスが通流されていない。そのため、流量制御部24における流量モニタ値FMは0となる。すなわち、第一のバルブ126及び第二のバルブ128が開放された直後に放出される残留ガスは、当該流量制御器22の流量制御部24によっては検出されない。したがって、流量制御の終了時に流量制御器22に処理ガスが残留し、次に同じ流量制御器22を用いて制御を開始するときには残留ガスが放出され、かつ、残留ガスの放出を当該流量制御器22の流量制御部24では検出できないなどの理由によって、圧力プロファイルと流量モニタ値FMとが相関しなかったものと考えられる。
【0057】
これに対し、上記流量制御方法MTによると、流量制御器22において流量制御を行う場合に、第一のプロファイルPF1が検出されないように、又は第一のプロファイルPF1が極小化するように制御することができる。具体的には、ガス供給ログデータにつき、工程ST30で流量モニタ値FMの立ち上がり時刻の前に圧力値PSの第一のプロファイルPF1が検出される場合には、工程ST31で第一から第四のディレイ時間DT1、DT2、DT3、DT4を短縮するように第一から第四のディレイ信号DL1、DL2、DL3、DL4を変更する。これによって、残留ガスが第一のバルブ126と第二のバルブ128の間に残留することを抑制し、かつ、流量モニタ値FMに残留ガスの影響を含めることができる。特に、第三のディレイ時間DT3の短縮によると、第二のバルブ128閉鎖後から第一のバルブ126閉鎖までの時間が短縮されるため、その間に流量制御器22内に流入する処理ガスの量を減らすことができ、その分残留ガスの残留を抑制することができる。また、第一のディレイ時間DT1及び、第二のディレイ時間DT2の短縮によると、各バルブの開放から流量制御を開始するまでの時間を短縮することができ、残留ガスが放出される場合にもその影響を流量モニタ値FMに含めることができる。
【0058】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0059】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。例えば、上記実施の形態においては、第一のプロファイルPF1が検出される場合に各ディレイ時間を短縮するように各ディレイ信号を変更することとしたが、これに限定されない。第一のプロファイルPF1を抑制することができるように、各ディレイ時間を延長するように各ディレイ信号を変更することとしてもよい。
【0060】
また、上記残留ガスの影響は、制御対象とする流量制御器22の上流及び下流に開閉信号により開閉するバルブが設けられているような場合に発生し得る。そして、上記残留ガスの影響が生じているような場合に、本実施の形態にかかる流量制御方法MTが有効である。したがって、上記実施の形態においては圧力制御式の流量制御器22に対し流量制御方法MTを実施したが、これに限定されない。例えばサーマル式の流量制御器22に対しても、当該流量制御器22の上流及び下流のバルブの開閉に際して上記第一~第四のディレイ信号の短縮又は延長により、残留ガスの影響を抑制することができる。
【0061】
また、残留ガスの影響を軽減し、圧力値PSと流量モニタ値FMの相関を改善するためには、各バルブの開閉操作の同調制御が重要となる。ところで、一般的に用いられる空気圧駆動のバルブの開閉操作は、制御速度の誤差や応答速度のバルブ固体差によってばらつきが生じやすく、同調制御に不利である。したがって、上記実施の形態における第一~第三のバルブについては、バルブ開閉操作の同調制御をより改善するため、電気信号でダイレクト動作する電磁開閉バルブを使用することができる。具体的には、電磁開閉バルブを使用することで各バルブの開閉操作のより精密な同調制御を可能とし、これによって残留ガスの影響をさらに軽減し、圧力値PSと流量モニタ値FMの相関をより改善することができる。
【0062】
また、残留ガスの影響を軽減し、圧力値PSと流量モニタ値FMの相関を改善するためには、残留ガスが残留し得る流量制御器22における流路120の容積を、極小化することが有効である。したがって、流路120の容積を極小化するため、例えば、流量制御器22と、第一のバルブ126及び第二のバルブ128と、を一体に設けることができる。これによると、例えば流路120のうち、第一の流路130及び第二の流路132を除く流路120の部分、例えば第一のバルブ126とコントロールバルブ122に挟まれる部分などについては、短縮が可能であり、したがって容積を極小化することができる。
【符号の説明】
【0063】
22 流量制御器
26 圧力センサ
126 第一のバルブ
128 第二のバルブ
MT 流量制御方法
SO1 第一の開放信号
SO2 第二の開放信号
SC1 第一の閉鎖信号
SC2 第二の閉鎖信号
FM 流量モニタ値
PS 圧力値
PF1 第一のプロファイル
PF2 第二のプロファイル
DL1 第一のディレイ信号
DL2 第二のディレイ信号
DL3 第三のディレイ信号
DL4 第四のディレイ信号
DT1 第一のディレイ時間
DT2 第二のディレイ時間
DT3 第三のディレイ時間
DT4 第四のディレイ時間