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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027600
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び蓋部材
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20230222BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
C23C16/44 J
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132803
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕志
(72)【発明者】
【氏名】古屋 治彦
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030BA29
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA06
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030KA30
4K030KA45
4K030LA15
5F045AA08
5F045BB14
5F045DP02
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EB06
5F045EC05
5F045EF05
5F045EH02
5F045EH03
5F045EH18
5F045EH20
5F045EK07
5F045GB05
(57)【要約】
【課題】処理容器の上部にマイクロ波を放射する放射部を配置した場合でも、リモートプラズマによるクリーニングを可能とすること。
【解決手段】処理容器は、基板を載置する載置台が内部に配置され、載置台の上側に開口が形成されている。蓋部材は、処理容器の開口を封止する。蓋部材は、載置台と対向する領域にマイクロ波を放射する放射部を配置する1又は複数の貫通孔が形成され、処理容器の内部側となる第1面に、開口の縁に沿って処理容器の内部側に張り出した張出部が形成され、張出部の内部に流路が形成され、第1面に流路と連通する複数のガス孔が形成され、処理容器の外部側となる第2面に流路と連通する供給口が形成されている。リモートプラズマユニットは、供給口に接続され、クリーニングガスをプラズマ化して供給口に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置する載置台が内部に配置され、前記載置台の上側に開口が形成された処理容器と、
前記処理容器の前記開口を封止する蓋部材であって、前記載置台と対向する領域にマイクロ波を放射する放射部を配置する1又は複数の貫通孔が形成され、前記処理容器の内部側となる第1面に、前記開口の縁に沿って前記処理容器の内部側に張り出した張出部が形成され、前記張出部の内部に流路が形成され、前記第1面に前記流路と連通する複数のガス孔が形成され、前記処理容器の外部側となる第2面に前記流路と連通する供給口が形成された前記蓋部材と、
前記供給口に接続され、クリーニングガスをプラズマ化して前記供給口に供給するリモートプラズマユニットと、
を有するプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記第1面の前記張出部に囲まれた中央部分に対して、前記張出部に前記処理容器の内部側に傾斜した傾斜面が形成され、前記傾斜面に前記複数のガス孔が形成された
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記蓋部材は、前記複数のガス孔が、前記傾斜面に対して少なくとも2つの方向に、方向ごとに並べて形成された
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記蓋部材は、前記流路の前記第1面側の内壁に段差が形成され、前記複数のガス孔が、前記傾斜面に対して2つの方向に、方向ごとに、前記段差を構成する2つの面にそれぞれ貫通するように形成された
請求項2又は3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記蓋部材は、前記第1面に、表面波の伝搬が抑制される所定角度以上の角度の変化が形成された
請求項1~4の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記蓋部材は、前記処理容器の内側面に接続する面に、当該内側面に対して、表面波の伝搬が抑制される所定角度以上の角度で平坦面が形成された
請求項1~5の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記蓋部材は、前記第1面の前記張出部に囲まれた中央部分の内部に、前記流路と連通する中央流路が形成され、前記中央部分に前記中央流路と連通する複数のガス孔が形成された
請求項1~6の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記蓋部材は、前記供給口に供給されるプラズマ化されたクリーニングガスが前記複数のガス孔から前記処理容器の内部に均等に噴出されるように前記複数のガス孔の間隔を変えて配置された
請求項1~7の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記蓋部材は、前記複数のガス孔が、前記供給口側に対して前記供給口側の反対側で密に配置された
請求項1~8の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記複数のガス孔は、前記第1面側の径が大きく形成された
請求項1~9の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
基板を載置する載置台が内部に配置され、前記載置台の上側に開口が形成された処理容器の前記開口を封止する蓋部材であって、
前記載置台と対向する領域に形成され、マイクロ波を放射する放射部を配置する1又は複数の貫通孔と、
前記処理容器の内部側となる第1面に形成され、前記開口の縁に沿って前記処理容器の内部側に張り出した張出部と、
前記張出部の内部に形成された流路と、
前記第1面に形成され、前記流路と連通する複数のガス孔と、
前記処理容器の外部側となる第2面に形成され、前記流路と連通する供給口と、
を有する蓋部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及び蓋部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チャンバ(処理容器)の上部にリモートプラズマユニットを配置し、クリーニングガスをリモートプラズマユニットによりプラズマ化してチャンバ内に供給する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-319042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理容器の上部にマイクロ波を放射する放射部を配置した場合でも、リモートプラズマによるクリーニングを可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、処理容器と、蓋部材と、リモートプラズマユニットとを有する。処理容器は、基板を載置する載置台が内部に配置され、載置台の上側に開口が形成されている。蓋部材は、処理容器の開口を封止する。蓋部材は、載置台と対向する領域にマイクロ波を放射する放射部を配置する1又は複数の貫通孔が形成され、処理容器の内部側となる第1面に、開口の縁に沿って処理容器の内部側に張り出した張出部が形成され、張出部の内部に流路が形成され、第1面に流路と連通する複数のガス孔が形成され、処理容器の外部側となる第2面に流路と連通する供給口が形成されている。リモートプラズマユニットは、供給口に接続され、クリーニングガスをプラズマ化して供給口に供給する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理容器の上部にマイクロ波を放射する放射部を配置した場合でも、リモートプラズマによるクリーニングを実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る天壁部の構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る天壁部の構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る天壁部の構成の一例を示す拡大図である。
図5図5は、実施形態に係る天壁部の構成の他の一例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示するプラズマ処理装置及び蓋部材の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示するプラズマ処理装置及び蓋部材が限定されるものではない。
【0009】
近年、半導体製品の高密度化及び高微細化に伴い、半導体製品の製造工程において、成膜処理にマイクロ波を用いたプラズマ処理装置が使用されつつある。このようなプラズマ処理装置では、処理容器の上面を封止する蓋部材に、マイクロ波放射機構などのマイクロ波を放射する放射部を配置し、放射部から処理容器内にマイクロ波を放射してプラズマを生成する。プラズマ処理装置は、マイクロ波を用いることで、比較的圧力が低い高真空状態でも安定してプラズマを立てることができる。また、プラズマ処理装置は、マイクロ波を用いることで、高密度プラズマを発生させることができる。
【0010】
ところで、プラズマ処理装置は、成膜処理を行った場合、処理容器内の内壁面等の処理容器内の構造物表面に堆積物が堆積する。そこで、リモートプラズマユニットによりプラズマ化したクリーニングガスを処理容器内に供給して堆積物を除去するクリーニングを行うことが考えられる。リモートプラズマユニットによりプラズマ化したクリーニングガスは、流路が長くなると途中で失活してしまう。このため、従来技術では、プラズマ化したクリーニングガスが流れる流路を短くするため、蓋部材の上など処理容器の上部にリモートプラズマユニットを配置している。しかし、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置は、処理容器の上部に放射部を配置しているため、処理容器の上部にリモートプラズマユニットを配置できない。そこで、処理容器の上部にマイクロ波を放射する放射部を配置した場合でも、リモートプラズマによるクリーニングを可能とする技術が期待されている。
【0011】
[実施形態]
本開示のプラズマ処理装置の一例を説明する。図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置100の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すプラズマ処理装置100は、処理容器101と、載置台102と、ガス供給機構103と、排気装置104と、マイクロ波導入装置105とを有する。
【0012】
処理容器101は、半導体ウエハなどの基板Wを収容する。処理容器101は、内部に載置台102が設けられている。載置台102には、基板Wが載置される。ガス供給機構103は、処理容器101内にガスを供給する。排気装置104は、処理容器101内を排気する。マイクロ波導入装置105は、処理容器101内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させるとともに、処理容器101内にマイクロ波を導入する。
【0013】
処理容器101は、例えばアルミニウム及びその合金等の金属材料によって形成され、略円筒形状をなしている。処理容器101は、板状の天壁部200及び底壁部113と、これらを連結する側壁部112とを有している。処理容器101は、上面を構成する天壁部200が着脱可能に構成されている。処理容器101は、載置台102の上側に開口101aが形成されている。天壁部200は、処理容器101の開口101aに対応した形状に形成され、開口101aを封止する。実施形態では、天壁部200が本開示の蓋部材に対応する。処理容器101の内壁は、イットリア(Y)等によりコーティングされて保護膜が設けられている。マイクロ波導入装置105は、処理容器101の上部に設けられ、処理容器101内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成する。マイクロ波導入装置105については後で詳細に説明する。
【0014】
天壁部200は、マイクロ波導入装置105の後述するマイクロ波放射機構143及びガス導入ノズル123が嵌め込まれる複数の貫通孔201、202を有している。側壁部112は、処理容器101に隣接する搬送室(図示せず)との間で基板Wの搬入出を行うための搬入出口114を有している。また、側壁部112は、載置台102よりも上側となる位置にガス導入ノズル124が設けられている。搬入出口114は、ゲートバルブ115により開閉されるようになっている。
【0015】
底壁部113には、開口113aが設けられ、開口113aに接続された排気管116を介して排気装置104が設けられている。排気装置104は、真空ポンプと圧力制御バルブを備えている。排気装置104の真空ポンプにより排気管116を介して処理容器101内が排気される。処理容器101内の圧力は、排気装置104の圧力制御バルブにより制御される。
【0016】
載置台102は、円板状に形成されている。載置台102は、金属材料、例えば、表面に陽極酸化処理が施されたアルミニウム、又はセラミックス材料、例えば窒化アルミニウム(AlN)により構成されている。載置台102は、上面に基板Wが載置される。載置台102は、処理容器101の底部中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材120及び基部部材121により支持されている。載置台102の外縁部には基板Wをガイドするためのガイドリング181が設けられている。また、載置台102の内部には、基板Wを昇降するための昇降ピン(図示せず)が載置台102の上面に対して突没可能に設けられている。
【0017】
さらに、載置台102には、ヒータ182が埋め込まれている。ヒータ182は、ヒータ電源183から給電されることにより載置台102に載置された基板Wを加熱する。また、載置台102は、熱電対(図示せず)が挿入されており、熱電対からの信号に基づいて、基板Wの加熱温度を制御可能とされている。さらに、載置台102は、ヒータ182の上方に、基板Wと同程度の大きさの電極184が埋設されている。電極184には、高周波バイアス電源122が電気的に接続されている。高周波バイアス電源122は、載置台102にイオンを引き込むための高周波バイアスを印加する。なお、高周波バイアス電源122は、プラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
【0018】
ガス供給機構103は、各種のガスを処理容器101内に供給する。ガス供給機構103は、ガス導入ノズル123、124と、ガス供給配管125、126と、ガス供給部127とを有している。ガス導入ノズル123は、処理容器101の天壁部200に形成された貫通孔202に嵌め込まれている。ガス導入ノズル124は、処理容器101の側壁部112に形成された貫通孔112aに嵌め込まれている。ガス供給部127は、ガス供給配管125を介して各ガス導入ノズル123と接続されている。また、ガス供給部127は、ガス供給配管126を介して各ガス導入ノズル124と接続されている。ガス供給部127は、各種のガスの供給源を有する。また、ガス供給部127は、各種のガスの供給開始、及び供給停止を行う開閉バルブや、ガスの流量を調整する流量調整部が備えられている。例えば、成膜処理を実施する場合、ガス供給部127は、成膜材料を含んだ処理ガスを供給する。また、プラズマクリーニングを実施する場合、ガス供給部127は、クリーニングガスを供給する。
【0019】
マイクロ波導入装置105は、処理容器101の上方に設けられている。マイクロ波導入装置105は、処理容器101内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成する。
【0020】
マイクロ波導入装置105は、処理容器101の天壁部200と、マイクロ波出力部130と、アンテナユニット140とを有する。天壁部200は、処理容器101の天板として機能する。マイクロ波出力部130は、マイクロ波を生成するとともに、マイクロ波を複数の経路に分配して出力する。アンテナユニット140は、マイクロ波出力部130から出力されたマイクロ波を処理容器101に導入する。
【0021】
マイクロ波出力部130は、マイクロ波電源と、マイクロ波発振器と、アンプと、分配器とを有している。マイクロ波発振器は、ソリッドステートであり、例えば、860MHzでマイクロ波を発振(例えば、PLL発振)させる。なお、マイクロ波の周波数は、860MHzに限らず、2.45GHz、8.35GHz、5.8GHz、1.98GHz等、700MHzから10GHzの範囲のものを用いることができる。アンプは、マイクロ波発振器によって発振されたマイクロ波を増幅する。分配器は、アンプによって増幅されたマイクロ波を複数の経路に分配する。分配器は、入力側と出力側のインピーダンスを整合させながらマイクロ波を分配する。
【0022】
アンテナユニット140は、複数のアンテナモジュールを有する。図1には、アンテナユニット140の3つのアンテナモジュールが示されている。各アンテナモジュールは、アンプ部142と、マイクロ波放射機構143とを有する。マイクロ波出力部130は、マイクロ波を生成するとともに、マイクロ波を分配して各アンテナモジュールに出力する。アンテナモジュールのアンプ部142は、分配されたマイクロ波を主に増幅してマイクロ波放射機構143に出力する。マイクロ波放射機構143は、天壁部200に設けられている。マイクロ波放射機構143は、アンプ部142から出力されたマイクロ波を処理容器101内に放射する。
【0023】
アンプ部142は、位相器と、可変ゲインアンプと、メインアンプと、アイソレータとを有する。位相器は、マイクロ波の位相を変化させる。可変ゲインアンプは、メインアンプに入力されるマイクロ波の電力レベルを調整する。メインアンプは、ソリッドステートアンプとして構成されている。アイソレータは、後述するマイクロ波放射機構143のアンテナ部で反射されてメインアンプに向かう反射マイクロ波を分離する。
【0024】
複数のマイクロ波放射機構143は、図1に示すように、天壁部200にそれぞれ配置される。マイクロ波放射機構143は、筒状をなす外側導体と、外側導体内に外側導体と同軸状に設けられた内側導体とを有する。また、マイクロ波放射機構143は、外側導体と内側導体との間に、マイクロ波伝送路を有する同軸管と、マイクロ波を処理容器101内に放射するアンテナ部とを有する。アンテナ部の下面側には、マイクロ波透過板163が設けられている。マイクロ波透過板163の下面は、処理容器101の内部空間に露出している。マイクロ波透過板163を透過したマイクロ波は、処理容器101内の空間にプラズマを生成する。
【0025】
図2は、実施形態に係る天壁部200の構成の一例を示す図である。図2には、処理容器101の内部側となる天壁部200の下面200aを示した斜視図が示さている。図2に示すように、天壁部200には、アンテナモジュールのマイクロ波放射機構143を配置する貫通孔201が、7つ設けられている。天壁部200には、6つが正六角形の頂点となるように貫通孔201aが配置され、さらに1つが正六角形の中心位置に貫通孔201bとして配置されている。7つの貫通孔201は、隣接する貫通孔201が等間隔になるように配置されている。7つの貫通孔201には、それぞれマイクロ波放射機構143が配置される。これにより、天壁部200は、マイクロ波放射機構143が等間隔で配置される。また、天壁部200には、複数の貫通孔202が中央の貫通孔201bの周囲を囲むように配置されている。複数の貫通孔202には、ガス供給機構103の複数のガス導入ノズル123がそれぞれ嵌め込まれる。なお、天壁部200に設けるアンテナモジュールの数は、7つに限るものではない。
【0026】
ここで、成膜の流れを簡単に説明する。プラズマ処理装置100は、載置台102に基板Wが載置される。プラズマ処理装置100は、載置台102に載置された基板Wに対して成膜処理を実施する。例えば、プラズマ処理装置100は、高周波バイアス電源122から載置台102にバイアス電力を印加する。また、プラズマ処理装置100は、ガス供給部127から、成膜材料を含む処理ガスを処理容器101内に供給しつつ、マイクロ波導入装置105からマイクロ波を処理容器101内に導入してプラズマを生成し、基板Wにシリコン含有膜を成膜する。
【0027】
プラズマ処理装置100は、成膜処理を行った場合、処理容器101内の構造物表面に堆積物が堆積する。そこで、プラズマ処理装置100は、処理容器101内にクリーニングガスを流しつつプラズマを生成して堆積物を除去するプラズマクリーニングを実施する。
【0028】
ここで、マイクロ波導入装置105からのマイクロ波によるプラズマクリーニングは、攻撃が強く、処理容器101内の部材にダメージが発生する場合がある。一方、リモートプラズマによるプラズマクリーニングは、攻撃が弱く、処理容器101内の部材へのダメージを抑えることができる。そこで、本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、リモートプラズによるプラズマクリーニングを可能とするため、以下のような構成としている。
【0029】
図1に示すように、天壁部200は、処理容器101の開口101aに対応した形状に形成されている。本実施形態では、処理容器101は、略円筒形状に形成されており、開口101aは、処理容器101の上側に円形に形成されている。天壁部200は、処理容器101の開口101aに対応して円形に形成されている。天壁部200は、処理容器101の開口101aを封止する。
【0030】
図1及び図2に示すように、天壁部200は、処理容器101の内部側となる下面200aの中央部分が略平坦に形成されている。天壁部200は、下面200aの中央部分の載置台102と対向する領域に、アンテナモジュールのマイクロ波放射機構143を配置する貫通孔201が形成されている。また、天壁部200は、下面200aに開口101aの縁に沿って処理容器101の内部側に張り出した張出部210が形成されている。張出部210は、下面200aの中央部分を囲むように環状に形成されている。
【0031】
図3は、実施形態に係る天壁部200の構成の一例を示す図である。図3には、処理容器101の外部側となる天壁部200の上面200b及び側面200cを示した斜視図が示さている。また、図3には、天壁部200の内部の構成が波線で示されている。波線に示すように、天壁部200は、張出部210の内部に流路220が形成されている。流路220は、張出部210に沿って、張出部210の内部に環状に形成されている。天壁部200は、張出部210を張り出させることにより、流路220の断面を大きく形成できる。流路220は、機械加工のし易さから、内面を略平坦な面を組み合わせた、断面が矩形状な形状に形成されている。これにより、流路220の断面を大きくすることができる。また、後述するようにガス孔226の穴径を処理容器101側で大きい形状とする場合においても、そのような形状のガス孔226を形成可能な最低限の肉厚を確保しつつ、流路220の断面積を大きくすることができる。天壁部200は、このように流路220の断面を大きくすることにより、プラズマ化されたクリーニングガスの流れが良好となり、また、プラズマ化されたクリーニングガスの失活を抑制できる。
【0032】
天壁部200は、処理容器101の外部側となる面に流路220と連通する供給口230が形成されている。本実施形態では、天壁部200の側面200cに流路220と連通する供給口230が形成されている。天壁部200は、供給口230が形成されている部分が外周側に拡張されている。流路220も、供給口230が形成されている部分で外周側に拡張されている。
【0033】
天壁部200は、下面200aの張出部210に囲まれた中央部分の内部に、流路220と連通する中央流路が形成されている。本実施形態では、中央流路として、中央部分の内部に流路221が形成されている。流路221は、貫通孔201bを囲むように環状に形成されている。また、本実施形態では、中央流路として、流路220と流路221とを繋ぐ流路222が形成されている。本実施形態では、流路222が2つ形成されている。流路221及び流路222は、内部の体積を大きくするため、断面が矩形状に形成されている。
【0034】
図1に示すように、供給口230には、リモートプラズマユニット240が接続される。リモートプラズマユニット240には、クリーニングの際、クリーニングガスが供給される。リモートプラズマユニット240は、供給されたクリーニングガスをプラズマ化して供給口230に供給する。プラズマ化されたクリーニングガスは、供給口230から流路220内を流れ、また、流路220から流路222、221に流れる。
【0035】
図4は、実施形態に係る天壁部200の構成の一例を示す拡大図である。図4には、天壁部200の供給口230付近の外周側に拡張された部分の流路220内の構成が示されている。流路220は、下面200a側の内壁に段差223が形成されている。段差223は、高さの異なる2つの面223a、223bと、面223a、223bの間の垂直方向の面223cを含んで構成されている。なお、本実施形態では、段差223の面223c、223bの間に傾斜した面223dがさらに形成されている。
【0036】
図1図2及び図4に示すように、天壁部200は、下面200aの張出部210に囲まれた中央部分に対して、張出部210に処理容器101の内部側に傾斜した傾斜面224が形成されている。また、天壁部200は、下面200aに、表面波の伝搬が抑制される所定角度以上の角度の変化が形成されている。例えば、天壁部200は、処理容器101の内側面に接続する面に、当該内側面に対して、表面波の伝搬が抑制される所定角度以上の角度で平坦面225が形成されている。平坦面225は、下面200aに所定角度以上の角度の変化を形成した一例である。本実施形態では、傾斜面224の外側に平坦面225が形成されている。平坦面225は、側壁部112に対して直角となるように形成されている。このように平坦面225を形成することにより、プラズマ処理の際に天壁部200の中央部分から伝搬する表面波が処理容器101の側壁部112に伝搬することを抑制できる。なお、平坦面225と側壁部112のなす角度が鋭角になるように平坦面225に相当する面を設けることで、更に処理容器101の側壁部112に伝搬する表面波を抑制することが可能となる。
【0037】
図2及び図4に示すように、天壁部200は、処理容器101の内部側となる下面200aの張出部210に流路220と連通する複数のガス孔226が形成されている。複数のガス孔226は、傾斜面224に対して2つの方向に、方向ごとに、段差223を構成する2つの面にそれぞれ貫通するように形成されている。本実施形態では、天壁部200は、略水平方向に貫通するガス孔226aと、略垂直方向に貫通するガス孔226bがそれぞれ張出部210に沿って並べて形成されている。ガス孔226aとガス孔226bは、1つずつ交互に、周方向に位置が重ならないように互いに違い設けられている。ガス孔226aは、張出部210の傾斜面224に並べて設けられており、段差223を構成する面223cをそれぞれ貫通する。ガス孔226bは、張出部210の平坦面225に並べて設けられており、段差223を構成する水平方向の面223aをそれぞれ貫通する。このように、天壁部200は、略水平方向のガス孔226aを段差223の垂直方向の面223cに設け、略垂直方向のガス孔226bを段差223の水平方向の面223aに設けることで、ガス孔226a、226bを形成する機械加工を容易に行うことができる。
【0038】
ガス孔226aは、流路220内のクリーニングガスを中心側へ噴出する。ガス孔226bは、流路220内のクリーニングガスを下方へ噴出する。ガス孔226(226a、226b)は、下面200a側の径が大きく形成されている。これにより、ガス孔226は、穴径が処理容器101側で大きくなるので、噴出するクリーニングガスが拡散し易くなるのと共に、ガス孔226での異常放電が抑制される。また、天壁部200は、ガス孔226aとガス孔226bを互いに違い設けることで、お互いの影響を少なくしたクリーニングガスの噴出が可能になる。
【0039】
また、図2に示すように、天壁部200は、処理容器101の下面200aの中央部分に流路221と連通する複数のガス孔227が形成されている。複数のガス孔227は、下面200aに対して垂直方向に貫通するように形成されている。ガス孔227は、流路221内のクリーニングガスを下方へ噴出する。ガス孔227も、ガス孔226と同様に、下面200a側の径が大きく形成されている。これにより、ガス孔227は、穴径が処理容器101側で大きくなるので、噴出するクリーニングガスが拡散し易くなるのと共に、ガス孔226での異常放電が抑制される。
【0040】
ここで、天壁部200は、プラズマ化されたクリーニングガスが1つの供給口230から流路220に供給される。このため、天壁部200は、ガス孔226やガス孔227をそれぞれ同様の穴径で均一に配置した場合、供給口230側でクリーニングガスの噴出量が多くなり、処理容器101内のクリーニングガスの分布が不均一となる。そこで、ガス孔226、227の位置に応じて、ガス孔226、227の穴径の変えてをクリーニングガスの噴出を均一化することが考えられる。しかし、ガス孔226、227の加工精度には、公差があり、ガス孔226、227の穴径の変えることで、クリーニングガスの噴出を均一化することは難しい。
【0041】
そこで、天壁部200は、供給口230に供給されるプラズマ化されたクリーニングガスが複数のガス孔226、227から処理容器101の内部に均等に噴出されるようにガス孔226、227の間隔を変えて配置する。天壁部200は、複数のガス孔226及び複数のガス孔227を、それぞれ供給口230側に対して供給口230側の反対側で密に配置する。これにより、天壁部200は、クリーニングガスの噴出を均一化することができる。
【0042】
次に、プラズマクリーニングの流れを簡単に説明する。プラズマ処理装置100は、基板Wを所定枚数成膜する毎や、所定累積膜厚成膜する毎など、プラズマクリーニングの実施タイミングとなると、プラズマクリーニングを実施する。プラズマクリーニングを実施する際に、プラズマ処理装置100は、処理容器101内をプラズマクリーニングに適した所定の圧力に調整する。そして、プラズマ処理装置100は、リモートプラズマユニット240にクリーニングガスを供給し、リモートプラズマユニット240により、クリーニングガスをプラズマ化して供給口230から天壁部200に供給する。供給口230に供給されたクリーニングガスは、流路220内を流れ、また、流路220から流路222、221に流れて、ガス孔226やガス孔227から処理容器101内に噴出される。プラズマ処理装置100では、天壁部200から供給されるクリーニングガスにより、処理容器101内のプラズマクリーニングが実施される。
【0043】
ここで、本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、マイクロ波放射機構143などのマイクロ波導入装置105が装置上部に並んでおり、また、その合間を縫ってプロセスガスを導入している。これらのレイアウトは、成膜プロセスにおいて重要であるため変更は容易ではない。
【0044】
一方、本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、天壁部200を用いることで、処理容器101の上部のマイクロ波導入装置105などのレイアウトに影響を与えることなく、リモートプラズマによるクリーニングを実施できる。
【0045】
なお、上記の実施形態では、傾斜面224の外側に平坦面225を形成した場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。平坦面225は、傾斜面224の内側や、傾斜面224の途中に設けてもよい。また、天壁部200は、平坦面225を設けずに、傾斜面224が側壁部112と繋がる構成としてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、ガス孔226及びガス孔227の下面200a側の径が大きく形成した場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。例えば、ガス孔226及びガス孔227の一方又は両方は、略一定の径で形成してもよい。
【0047】
図5は、実施形態に係る天壁部200の構成の他の一例を示す拡大図である。図5には、天壁部200の供給口230付近の外周側に拡張された部分の流路220内の構成が示されている。図5に示す天壁部200では、傾斜面224が側壁部112と略面一な面と繋がる構成とされている。また、図5に示す天壁部200では、ガス孔226が略一定の径で形成されている。
【0048】
また、上記の実施形態では、処理容器101の側面200cに供給口230を形成した場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。供給口230は、上面200bのマイクロ波放射機構143と重複しない周辺の領域に設けてもよい。
【0049】
以上のように、実施形態に係るプラズマ処理装置100は、処理容器101と、天壁部200(蓋部材)と、リモートプラズマユニット240とを有する。処理容器101は、基板Wを載置する載置台102が内部に配置され、載置台102の上側に開口101aが形成されている。天壁部200は、処理容器101の開口101aを封止する。天壁部200は、載置台102と対向する領域にマイクロ波を放射するマイクロ波放射機構143(放射部)を配置する1又は複数の貫通孔201が形成され、処理容器101の内部側となる下面200a(第1面)に、開口101aの縁に沿って処理容器101の内部側に張り出した張出部210が形成され、張出部210の内部に流路220が形成され、下面200aに流路220と連通する複数のガス孔が形成され、処理容器101の外部側となる上面200b又は側面200c(第2面)に流路220と連通する供給口230が形成されている。リモートプラズマユニット240は、供給口230に接続され、クリーニングガスをプラズマ化して供給口230に供給する。これにより、プラズマ処理装置100は、処理容器101の上部に放射部を配置した場合でも、リモートプラズマによるクリーニングを実施できる。また、プラズマ処理装置100は、張出部210を張り出させることにより、流路220の断面を大きく形成でき、プラズマ化されたクリーニングガスの流れが良好となり、また、プラズマ化されたクリーニングガスの失活を抑制できる。
【0050】
また、天壁部200は、下面200aの張出部210に囲まれた中央部分に対して、張出部210に処理容器101の内部側に傾斜した傾斜面224が形成され、傾斜面224に複数のガス孔226が形成されている。このように、天壁部200の張出部210に、中央部分に対して、傾斜した傾斜面224を形成することにより、処理容器101の開口101aの方向から見た孔形状を楕円にすることができ、処理容器101でガスが拡散し易くすることができる。また、傾斜面224に複数のガス孔226を形成することで、水平方向から垂直方向まであらゆる角度でクリーニングガスのラジカルを照射できる。これにより、天壁部200の下面200aのマイクロ波放射機構143の配置部分や載置台102、処理容器101の側壁、底面までラジカルを照射できる。
【0051】
天壁部200は、複数のガス孔226が、傾斜面224に対して少なくとも2つの方向に、方向ごとに並べて形成されている。これにより、処理容器101内の複数の方向にクリーニングガスを噴出でき、クリーニングガスを処理容器101内に早く拡散させることができる。
【0052】
また、天壁部200は、流路220の下面200a側の内壁に段差223が形成され、複数のガス孔226(226a、226b)が、傾斜面224に対して2つの方向に、方向ごとに、段差223を構成する2つの面(面223a、223c)にそれぞれ貫通するように形成されている。これにより、ガス孔226を形成する機械加工を容易に行うことができる。
【0053】
また、天壁部200は、下面200aに、表面波の伝搬が抑制される所定角度以上の角度の変化が形成されている。また、天壁部200は、処理容器101の内側面に接続する面に、当該内側面に対して、表面波の伝搬が抑制される所定角度以上の角度で平坦面225が形成されている。これにより、天壁部200の中央部分から伝搬する表面波が処理容器101の側壁部112に伝搬することを抑制できる。
【0054】
また、天壁部200は、下面200aの張出部210に囲まれた中央部分の内部に、流路220と連通する中央流路(流路221、222)が形成され、中央部分に中央流路と連通する複数のガス孔227が形成さている。これにより、天壁部200の中央部分からクリーニングガスを噴出でき、クリーニングガスを処理容器101内に早く拡散させることができる。
【0055】
また、天壁部200は、供給口230に供給されるプラズマ化されたクリーニングガスが複数のガス孔226、227から処理容器101の内部に均等に噴出されるように複数のガス孔226、227の間隔を変えて配置されている。これにより、クリーニングガスを処理容器101の内部に均等に噴出できる。
【0056】
また、天壁部200は、複数のガス孔226、227が、供給口230側に対して供給口230側の反対側で密に配置されている。これにより、クリーニングガスを処理容器101の内部に均等に噴出できる。
【0057】
また、複数のガス孔226、227は、下面200a側の径が大きく形成されている。これにより、ガス孔226、227から噴出するクリーニングガスを拡散し易くすることができると共に、ガス孔226、227での異常放電が抑制される。
【0058】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0059】
例えば、上記の実施形態では、基板Wを半導体ウエハとした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。基板Wは、何れであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
100 プラズマ処理装置
102 載置台
101 処理容器
101a 開口
105 マイクロ波導入装置
140 アンテナユニット
143 マイクロ波放射機構
200 天壁部
200a 下面
200b 上面
200c 側面
201、202 貫通孔
210 張出部
220 流路
223 段差
224 傾斜面
225 平坦面
226、226a、226b ガス孔
230 供給口
240 リモートプラズマユニット
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5