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特開2023-27616ヘッド駆動回路、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027616
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】ヘッド駆動回路、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20230222BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132838
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】藤生 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】堀江 泰介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB03
2C056EB29
2C056EB30
2C056EC03
2C056EC07
2C056EC38
2C056EC42
2C056FA10
2C057AF21
2C057AG44
2C057AG46
2C057AL03
2C057AL24
2C057AM03
2C057AM16
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドに対して、安定して一定の形状の駆動波形を与える。
【解決手段】液体吐出ヘッドに接続された基板に設けられ、前記液体吐出ヘッドを駆動するための駆動波形を生成する駆動波形生成回路と、前記基板上の前記駆動波形に影響を与える素子の温度を測定する温度測定素子と、前記温度測定素子で測定した温度を基に、前記駆動波形の形状を一定に保つ補正値を算出する補正値演算部と、前記補正値演算部により算出した補正値に基づいて前記駆動波形生成回路に対してフィードフォワード制御を行う反映手段と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドに接続された基板に設けられ、前記液体吐出ヘッドを駆動するための駆動波形を生成する駆動波形生成回路と、
前記基板上の前記駆動波形に影響を与える素子の温度を測定する温度測定素子と、
前記温度測定素子で測定した温度を基に、前記駆動波形の形状を一定に保つ補正値を算出する補正値演算部と、
前記補正値演算部により算出した補正値に基づいて前記駆動波形生成回路に対してフィードフォワード制御を行う反映手段と、
を備えることを特徴とするヘッド駆動回路。
【請求項2】
複数の前記駆動波形生成回路と、
複数の前記温度測定素子と、
を備え、
前記補正値演算部は、複数の前記温度測定素子でそれぞれ測定した温度を基に、前記基板上の温度勾配を算出して前記基板全体の温度分布を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッド駆動回路。
【請求項3】
前記反映手段は、前記補正値演算部により算出した補正値を、前記駆動波形生成回路に設けられた外部から制御可能な素子に反映する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のヘッド駆動回路。
【請求項4】
前記反映手段は、前記駆動波形生成回路に設けられたダンピング抵抗に対して並列ないし直列に接続される制御可能な抵抗を制御するスイッチング素子に、前記補正値を反映する、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッド駆動回路。
【請求項5】
前記反映手段は、前記駆動波形生成回路に設けられたFETのゲート抵抗に対して直列に接続される制御可能な抵抗を制御するスイッチング素子に、前記補正値を反映する、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッド駆動回路。
【請求項6】
前記反映手段は、前記補正値演算部により算出した補正値を、前記駆動波形を生成するための駆動波形情報に反映する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のヘッド駆動回路。
【請求項7】
前記反映手段は、前記補正値演算部により算出した補正値を、前記駆動波形情報である電圧補正倍率に反映する、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッド駆動回路。
【請求項8】
前記反映手段は、前記補正値演算部により算出した補正値を、前記駆動波形情報である電圧切り替えタイミングに反映する、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッド駆動回路。
【請求項9】
液体吐出ヘッドと、
請求項1ないし8の何れか一項に記載のヘッド駆動回路と、
を備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項10】
液体吐出ヘッドと、
請求項1ないし8の何れか一項に記載のヘッド駆動回路と、
を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド駆動回路、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドを制御して目的の画像を形成するために、適切な速度で適切な量の液滴を吐出する必要がある。そのために、インクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドのピエゾに対して適切な駆動波形を与える必要がある。
【0003】
ところで、インクジェット記録ヘッドのピエゾに対して与えられる駆動波形は、生成過程や伝搬過程におけるノイズが寄与することで、なまってしまうことがある。そこで、従来、フィードバック補正によって、インクジェット記録ヘッドに出力する駆動信号の波形のなまりを抑制する技術が既に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の一旦出力した波形の電圧の変調分を入力としたフィードバック補正では、波形生成回路における電気素子の変化による異常波形においては応答性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体吐出ヘッドに対して、安定して一定の形状の駆動波形を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、液体吐出ヘッドに接続された基板に設けられ、前記液体吐出ヘッドを駆動するための駆動波形を生成する駆動波形生成回路と、前記基板上の前記駆動波形に影響を与える素子の温度を測定する温度測定素子と、前記温度測定素子で測定した温度を基に、前記駆動波形の形状を一定に保つ補正値を算出する補正値演算部と、前記補正値演算部により算出した補正値に基づいて前記駆動波形生成回路に対してフィードフォワード制御を行う反映手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出ヘッドに対して、安定して一定の形状の駆動波形を与えることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態にかかるインクジェット記録装置の構成例を示す図である。
図2図2は、液体吐出ユニットの構成例を示す図である。
図3図3は、液体吐出ヘッドおよびヘッド駆動制御基板の一例を示す図である。
図4図4は、ヘッド駆動制御基板の制御ブロック構成の一例を示す図である。
図5図5は、温度勾配の算出方法の一例を示す図である。
図6図6は、ヘッド駆動制御基板における抵抗値を補正する場合の制御の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、補正値を合成ダンピング抵抗に反映する場合の一例を示す図である。
図8図8は、温度変化時における抵抗値の変化およびその補正結果を示す図である。
図9図9は、補正値をFETのゲート抵抗に反映する場合の一例を示す図である。
図10図10は、第2の実施の形態にかかるヘッド駆動制御基板の制御ブロック構成の一例を示す図である。
図11図11は、ヘッド駆動制御基板における抵抗値以外を補正する場合の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、ヘッド駆動回路、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかるインクジェット記録装置100の構成例を示す図、図2は液体吐出ユニットの構成例を示す図である。本実施形態は、液体を吐出する装置としてインクジェット記録装置100を適用したものである。図1および図2に示すように、インクジェット記録装置100は、ガイド部材101に対して主走査方向に移動可能なキャリッジ103を備える。キャリッジ103は、液体吐出ヘッド104及びヘッドタンク141を一体にした液体吐出ユニット140を搭載する。液体吐出ユニット140の液体吐出ヘッド104は、圧電素子であるピエゾ107(図4参照)を備えて、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を印刷媒体Pに対して吐出する。また、液体吐出ヘッド104は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0011】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0012】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0013】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化したものであり、液体を吐出する機能に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0014】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0015】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0016】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0017】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0018】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0019】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0020】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0021】
図3は、液体吐出ヘッドおよびヘッド駆動制御基板105の一例を示す図である。図3に示すように、インクジェット記録装置100は、液体吐出ヘッド104と、ヘッド駆動制御基板105と、ハーネス106と、を備える。
【0022】
液体吐出ヘッド104は、圧電素子であるピエゾ107を備えて、印刷媒体P(図1参照)に対して画像形成するための液滴を吐出する。ヘッド駆動制御基板105は、液体吐出ヘッド104を駆動するための駆動波形を生成するヘッド駆動回路108を有する。ハーネス106は、駆動波形をヘッド駆動制御基板105から液体吐出ヘッド104に伝送する。
【0023】
「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出および噴射する機能部品である。吐出される「液体」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、ピエゾ107である圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)の他、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0024】
また、インクジェット記録装置100は、ヘッド駆動制御基板105に、ヘッド駆動制御基板105上の温度測定のための温度測定素子109を備える。温度測定素子109は、ヘッド駆動制御基板105上のエラー検知用のサーミスタを使用してもよい。
【0025】
さらに、インクジェット記録装置100は、ヘッド駆動制御基板105に対して、駆動波形を生成するために必要な駆動波形生成情報と、電力とを入力する。
【0026】
ところで、駆動波形は、ヘッド駆動回路108における生成過程やハーネス106などの伝搬過程におけるノイズが寄与することでなまりが発生する。このようななまり発生の原因の一例として、ヘッド駆動制御基板105のヘッド駆動回路108上のオペアンプIC、FET、抵抗などの電子部品(素子)が熱を帯び、抵抗値が変化することで、駆動波形の傾き成分が変化することが挙げられる。すなわち、ヘッド駆動制御基板105の温度変化により生成される駆動波形が変化してしまうことがありえる。変化する駆動波形はそのまま液体吐出ヘッド104のピエゾ107へと入力されてしまうため、その後の吐出ならびに画像形成過程に多大な影響を与え、例えば温度変化する前後で画質が変化してしまうことがあり得る。
【0027】
そこで、本実施形態のインクジェット記録装置100においては、ヘッド駆動回路108の温度上昇にも関わらず駆動波形を一定に保つことができるようにし、画像形成過程における影響をなくすようにしたものである。
【0028】
図4は、ヘッド駆動制御基板105の制御ブロック構成の一例を示す図である。図4に示すように、ヘッド駆動制御基板105は、ヘッド駆動回路108を有する。ヘッド駆動回路108は、ヘッド駆動制御基板105内の素子(オペアンプIC、FET、抵抗など)を制御するための制御部20と、駆動波形を生成する駆動波形生成部30と、を備える。
【0029】
制御部20は、出力情報記憶領域を有する補正値演算部201と、波形生成情報を入力する波形情報入力部202と、を備える。制御部20は、反映手段として機能する。
【0030】
駆動波形生成部30は、ヘッド駆動制御基板105上の温度測定のための温度測定素子109と、駆動波形を生成する駆動波形生成回路301と、を備える。
【0031】
駆動波形生成部30は、温度測定素子109で測定した温度を制御部20に渡す。制御部20は、駆動波形生成部30から渡された温度を出力情報記憶領域に格納する。
【0032】
制御部20の補正値演算部201は、出力情報記憶領域に格納した温度を、補正値Sxの算出に用いる。補正値演算部201は、算出した補正値Sxを波形情報入力部202に入力する。
【0033】
制御部20の波形情報入力部202は、出力する波形に必要な波形生成情報を、補正値演算部201から受信し、格納する。また、制御部20の波形情報入力部202は、補正値演算部201から受信した補正値Sxを、波形生成情報とともにその補正を反映する駆動波形生成回路301のスイッチング素子などに与える。
【0034】
なお、温度測定素子109の設置場所は一例であり、駆動波形に影響を与える素子(オペアンプIC、FET、抵抗など)の温度変化が測定できればよく、図4に示すようにヘッド駆動制御基板105以外の箇所でもよいものとする。
【0035】
上述したように、補正値Sxは、駆動波形生成回路301の制御可能な抵抗値を有するスイッチング素子に対するものである。スイッチング素子は、駆動波形のなまりを抑制するための抵抗素子の温度が上昇して抵抗値が上昇した場合に、駆動回路生成回路からピエゾ107(圧電素子)に与える電流値が減少するので、所定の電圧に達するまでの時間が伸びる。そこで、本実施形態のヘッド駆動回路108は、抵抗の抵抗値が一定となるよう、抵抗に対して並列にある抵抗を有するスイッチング素子に補正を与えることで、温度の影響を受けない駆動波形を生成することができる。
【0036】
次に、制御部20の補正値演算部201における補正値Sxの算出について説明する。
【0037】
制御部20の補正値演算部201は、例えば、複数設置してある温度測定素子109を用いて、ヘッド駆動制御基板105上の温度取得を行い、ヘッド駆動制御基板105全体の温度勾配を算出する。
【0038】
ここで、図5は温度勾配の算出方法の一例を示す図である。図5に示すように、補正値演算部201は、温度を2つ以上測定することで、ヘッド駆動制御基板105上の温度勾配を算出し、ヘッド駆動制御基板105全体の温度分布を算出することができる。そのため、図5に示すように、複数の駆動波形生成回路301を備える場合も、上記温度分布から各駆動波形生成回路301の温度が測定でき、複数の駆動波形生成回路301を補正することが可能となる。
【0039】
制御部20の補正値演算部201は、温度測定素子109からの温度入力を基に、事前に取得した温度別の補正テーブルを用いて抵抗値の変化量とその変化量に対する補正値を算出する。
【0040】
制御部20の補正値演算部201は、算出した補正値Sxを、波形情報入力部202を介して駆動波形生成過程である駆動波形生成回路301に設けられているものであって外部から制御可能な抵抗を制御するスイッチング素子に反映する。これにより、温度の影響を受けない駆動波形を安定してピエゾ107(圧電素子)に供給することが可能となる。
【0041】
次に、抵抗値を補正する場合の制御の流れについて説明する。
【0042】
図6は、ヘッド駆動制御基板105における抵抗値を補正する場合の制御の流れを示すフローチャートである。図6に示すように、制御部20の補正値演算部201は、ヘッド駆動制御基板105上ないしヘッド駆動制御基板105周辺の温度を取得する温度測定素子109を用いて基板温度Txを取得する(ステップS1)。
【0043】
次に、制御部20の補正値演算部201は、基板温度Txをもとに、駆動波形生成回路301の温度を算出し、温度変化による素子(オペアンプIC、FET、抵抗など)の抵抗値の変化量Yを算出する(ステップS2)。
【0044】
次に、制御部20の補正値演算部201は、抵抗値の変化量Yから、その抵抗値の変化量を打ち消すための補正値Sxを算出する(ステップS3)。
【0045】
次に、制御部20の補正値演算部201は、算出した補正値Sxを、駆動波形生成回路301に設けられているものであって外部から制御可能な抵抗を制御するスイッチング素子に反映し(ステップS4)、補正完了とする。
【0046】
具体的には、制御部20の補正値演算部201は、補正値Sxを駆動波形生成回路301の後端部の合成ダンピング抵抗Rcに反映する。図7は、補正値を合成ダンピング抵抗Rcに反映する場合の一例を示す図である。駆動波形生成回路301は、図7に示す回路であるとする。図7に示す駆動波形生成回路301は、液体吐出ヘッド104のピエゾ107(圧電素子)により近く、駆動波形生成回路301の後端部にあたる箇所であって、ダンピング抵抗Raに対して並列な箇所に、外部から制御可能な可変抵抗Rb(可変抵抗やラダー回路素子)を配置する。この可変抵抗Rbは、外部から制御可能なスイッチング素子を有し、補正値Sxをもとに抵抗値を変えたり、ON/OFF制御をしたりすることができるものである。制御部20の補正値演算部201は、これらの抵抗Raと可変抵抗Rbの合成抵抗Rcを抵抗Raの値が変化した際も一定に保つ制御を行うことで、一定の駆動波形を出力することができる。なお、抵抗Raと可変抵抗Rbは、駆動波形生成回路301上において直列に配置した場合であっても、合成抵抗Rcを一定に保つことができる。
【0047】
図8は、温度変化時における抵抗値の変化およびその補正結果を示す図である。例えば、温度T1から温度T2に温度変化する際に、抵抗Raの抵抗値が△R1-R2上昇することが事前測定により分かっており、温度別の補正テーブルに記憶されている。制御部20の補正値演算部201は、補正テーブルに記憶されている抵抗値の変化量に基づき、抵抗Raと可変抵抗Rbとの合成抵抗Rcの抵抗値が一定値R5となるように、下記の式(1)を用いて逆算し、温度T2時の抵抗値R4を求める。その後、制御部20の補正値演算部201は、現在の可変抵抗Rbの抵抗値R3との差分となる補正値Sxとしての補正値△R4-R3を求める。この補正値Sxを抵抗値R3に反映することで、温度T2において可変抵抗Rbの抵抗値がR4となり、合成抵抗RcはR5(一定値)となる。
【0048】
【数1】
【0049】
また、具体的には、制御部20の補正値演算部201は、補正値Sxを駆動波形生成回路301の前端部のFETのゲート抵抗に反映する。図9は、補正値をFETのゲート抵抗に反映する場合の一例を示す図である。駆動波形生成回路301は、図9に示す回路であるとする。図9に示す駆動波形生成回路301は、回路上流側におけるスイッチングの役割を持つFETの箇所であって、ダンピング抵抗Raに対して直列な箇所に、外部から制御可能な抵抗Rb(可変抵抗やラダー回路素子)を配置する。この抵抗Rbは、外部から制御可能なスイッチング素子を有し、補正値Sxをもとに抵抗値を変えたり、ON/OFF制御をしたりすることができるものである。制御部20の補正値演算部201は、FETのゲート抵抗Rgが温度によって変化した際も、抵抗Rbと抵抗Rgの合成成分が一定に保つ制御を行うことで、一定の駆動波形を出力することができる。
【0050】
このように本実施形態によれば、ヘッド駆動制御基板105上の素子(オペアンプIC、FET、抵抗など)による温度による変化に着目し、ヘッド駆動制御基板105上の温度変化を検知し、事前に駆動波形生成回路301に対してフィードフォワード制御を行うことで、液体吐出ヘッド104のピエゾ107(圧電素子)に対して、安定して一定の形状の駆動波形を与えることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、安定して一定の形状の駆動波形を液体吐出ヘッド104のピエゾ107(圧電素子)に与えることで、高速印刷時や環境変化による影響を受けたときも、狙いの駆動波形を安定して液体吐出ヘッド104のピエゾ107(圧電素子)に与えることができ、安定した吐出をすることができ、画質を保つことができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、例えばヘッド駆動制御基板105上のサーミスタを温度測定素子109として使用した場合、現状の回路構成を変えずまた新規測定系を追加することなく補正値取得のための入力を行うことができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0054】
第2の実施の形態は、算出した補正値Sxを駆動波形生成前過程において反映するようにした点が、算出した補正値Sxを駆動波形生成過程において反映するようにした第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0055】
ここで、図10は第2の実施の形態にかかるヘッド駆動制御基板105の制御ブロック構成の一例を示す図である。図10に示すように、本実施形態のヘッド駆動制御基板105は、補正値Sxを抵抗以外の箇所に反映する。すなわち、図4に示したように駆動波形生成回路301の素子(オペアンプIC、FET、抵抗など)の値を直接変えるのではなく、波形生成に必要な基データ(駆動波形情報)に補正値Sxを反映する。
【0056】
具体的には、制御部20の補正値演算部201は、出力情報記憶領域に格納した温度に基づき算出した補正値Sxを、波形生成に必要な基データ(駆動波形情報)である抵抗値以外の電圧補正倍率Vpまたは電圧切り替えタイミングGpに反映する。電圧補正倍率Vpは、駆動波形にかかるピーク電圧を決めるものである。電圧切り替えタイミングGpは、駆動波形の生成における電圧切り替えタイミングを決めるものである。
【0057】
制御部20の波形情報入力部202は、補正値Sxを反映した電圧補正倍率Vpまたは電圧切り替えタイミングGpを、駆動波形生成回路301に送信する。
【0058】
以上のように、ヘッド駆動回路108は、駆動波形生成前過程において電圧切り替えタイミングを早めた状態で波形を生成することで、温度の影響を受けない駆動波形を生成することができる。
【0059】
また、ヘッド駆動回路108は、電圧補正倍率について補正をして目的とする波形より高めのピーク電圧を入力することで、所定の電圧に達するまでの時間が長くなった際にも、所望のピーク電圧をもつ温度の影響を受けない駆動波形を生成することができる。
【0060】
次に、抵抗値以外を補正する場合の制御の流れについて説明する。
【0061】
図11は、ヘッド駆動制御基板105における抵抗値以外を補正する場合の制御の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、制御部20の補正値演算部201は、ヘッド駆動制御基板105上ないしヘッド駆動制御基板105周辺の温度を取得する温度測定素子109を用いて基板温度Txを取得する(ステップS11)。
【0062】
次に、制御部20の補正値演算部201は、基板温度Txをもとに、駆動波形生成回路301の温度を算出し、温度変化による素子(オペアンプIC、FET、抵抗など)の抵抗値の変化量Yを算出する(ステップS12)。
【0063】
次に、制御部20の補正値演算部201は、抵抗値の変化量Yから、その抵抗値の変化量を打ち消すための補正値Sxを算出する(ステップS13)。
【0064】
次に、制御部20の補正値演算部201は、算出した補正値Sxを、波形情報入力部202の電圧補正倍率Vpまたは電圧切り替えタイミングGpに反映し(ステップS14)、補正完了とする。
【0065】
このように本実施形態によれば、算出した補正値Sxを、駆動波形生成前過程に反映することで、温度の影響を受けない駆動波形を安定してピエゾ107(圧電素子)に供給することが可能となる。
【0066】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0067】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0068】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形
成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0069】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0070】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0071】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0072】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0073】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0074】
以上、発明を実施するための最良の形態について説明を行ったが、本発明は、この最良の形態で述べた実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
20 反映手段
100 液体を吐出する装置
104 液体吐出ヘッド
105 基板
108 ヘッド駆動回路
109 温度測定素子
140 液体吐出ユニット
201 補正値演算部
301 駆動波形生成回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2018-176588号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11