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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027754
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230222BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230222BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/68 N
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116904
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2021132675
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 夏実
(72)【発明者】
【氏名】永海 幸一
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB07
2G084BB14
2G084CC05
2G084CC08
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF04
2G084FF15
2G084FF38
2G084HH02
2G084HH08
2G084HH22
2G084HH43
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB28
5F004CA06
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA04
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB72
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理において基板のエッジ領域に対するプラズマ中のイオンの入射角度を適切に制御する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、下部電極と静電チャックとエッジリングとを含む基板支持体と、エッジリングを縦方向に移動させる駆動装置と、基板支持体の上方に配置される上部電極と、ソースRF電力を上部電極又は下部電極に供給するソースRF電源と、バイアスRF電力を下部電極に供給するバイアスRF電源と、エッジリングと接触する少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの導体を介してエッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、少なくとも1つの導体と直流電源との間に電気的に接続され、少なくとも1つの可変受動素子を含むRFフィルタと、駆動装置及び少なくとも1つの可変受動素子を制御して、基板のエッジ領域に対するプラズマ中のイオンの入射角度を調整する制御部と、備える。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置されるエッジリングとを含む、基板支持体と、
前記エッジリングを縦方向に移動させるように構成される駆動装置と、
前記基板支持体の上方に配置される上部電極と、
前記プラズマ処理チャンバ内のガスからプラズマを生成するためにソースRF電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソースRF電源と、
バイアスRF電力を前記下部電極に供給するように構成されるバイアスRF電源と、
前記エッジリングと接触する少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体を介して前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加するように構成される直流電源と、
前記少なくとも1つの導体と前記直流電源との間に電気的に接続され、少なくとも1つの可変受動素子を含むRFフィルタと、
前記駆動装置及び前記少なくとも1つの可変受動素子を制御して、前記静電チャック上に載置された基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整するように構成される制御部と、
備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、
前記エッジリングを支持するように構成されるリフターピンと、
前記リフターピンを縦方向に移動させるように構成される駆動源と、を備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記リフターピンは、少なくとも表面が絶縁材料で形成される、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの導体は、前記リフターピン内で縦方向に延在する導電性ワイヤを含み、
前記導電性ワイヤの一端は、前記エッジリングと接触している、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの導体は、前記エッジリングと接触する導電性弾性部材を含む、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記導電性弾性部材は、前記リフターピン内に配置される、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記導電性弾性部材は、前記エッジリングと前記静電チャックとの間に配置される、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記エッジリングと前記静電チャックとの間に配置される追加のエッジリングをさらに備える、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記追加のエッジリングは、絶縁材料で形成され、前記導電性弾性部材よりも内側に配置される、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記エッジリングは、その下面に突起部を有する、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記追加のエッジリングは、導電性材料で形成され、
前記導電性弾性部材は、前記エッジリングと前記追加のエッジリングとの間に配置される、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記エッジリングは、前記少なくとも1つの導体と接触する少なくとも1つの導電膜を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの導体は、平面視で前記エッジリングの周方向に沿って等間隔に配置される複数の導体を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記エッジリングは、導電性を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持体であり、前記基板支持体は、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置されるエッジリングとを含む、基板支持体と、
前記エッジリングを縦方向に移動させるように構成される駆動装置と、
前記プラズマ処理チャンバ内のガスからプラズマを生成するためにRF電力を生成するように構成されるRF電源と、
前記エッジリングと接触する少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体に電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
前記駆動装置及び前記少なくとも1つの可変受動素子を制御して、前記静電チャック上に載置された基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整するように構成される制御部と、
備える、プラズマ処理装置。
【請求項16】
前記駆動装置は、
前記エッジリングを支持するように構成されるリフターピンと、
前記リフターピンを縦方向に移動させるように構成される駆動源と、を備える、請求項15に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記リフターピンは、少なくとも表面が絶縁材料で形成される、請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの導体は、前記リフターピン内で縦方向に延在する導電性ワイヤを含み、
前記導電性ワイヤの一端は、前記エッジリングと電気的且つ物理的に接続される、請求項17に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
プラズマ処理装置を用いたエッチング方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持体であり、前記基板支持体は、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置されるエッジリングとを含む、基板支持体と、
前記エッジリングと電気的且つ物理的に接続される少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体に電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
を備え、
前記エッチング方法は、
(a)基板を前記静電チャック上に載置する工程と、
(b)前記プラズマ処理チャンバ内のガスからプラズマを生成する工程と、
(c)生成されたプラズマで前記基板をエッチングする工程と、
(d)前記基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整する工程であり、前記調整する工程は、
(d1)前記エッジリングを縦方向に移動させる工程と、
(d2)前記少なくとも1つの可変受動素子を調整する工程と、
を含む、工程と、
を含む、エッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマチャンバ内でエッジ領域におけるイオン束の方向性を制御するためのシステムが開示されている。このシステムは、RF信号を生成するように構成されたRF発生器と、RF信号を受信して修正RF信号を生成するためのインピーダンス整合回路と、プラズマチャンバとを含む。プラズマチャンバは、エッジリングと、修正RF信号を受信する結合リングとを含む。結合リングは、修正RF信号を受信する電極と、エッジリングとの間にキャパシタンスを生成してイオン束の方向性を制御する電極とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-228526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、プラズマ処理において基板のエッジ領域に対するプラズマ中のイオンの入射角度を適切に制御する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様のプラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置されるエッジリングとを含む、基板支持体と、前記エッジリングを縦方向に移動させるように構成される駆動装置と、前記基板支持体の上方に配置される上部電極と、前記プラズマ処理チャンバ内のガスからプラズマを生成するためにソースRF電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソースRF電源と、バイアスRF電力を前記下部電極に供給するように構成されるバイアスRF電源と、前記エッジリングと接触する少なくとも1つの導体と、前記少なくとも1つの導体を介して前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加するように構成される直流電源と、前記少なくとも1つの導体と前記直流電源との間に電気的に接続され、少なくとも1つの可変受動素子(variable passive component)を含むRFフィルタと、前記駆動装置及び前記少なくとも1つの可変受動素子を制御して、前記静電チャック上に載置された基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整するように構成される制御部と、備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ処理において基板のエッジ領域に対するプラズマ中のイオンの入射角度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかるエッチング装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2A】本実施形態にかかるエッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図2B】本実施形態にかかるエッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図3A】エッジリングの消耗によるシースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図3B】エッジリングの消耗によるシースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図4A】シースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図4B】シースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図5】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図6】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図7】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図8】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図9】他の実施形態にかかるエッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図10A】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図10B】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図10C】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図10D】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図10E】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図10F】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図11A】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図11B】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図11C】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図11D】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図11E】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図11F】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図11G】接続部の構成の一例を示す縦断面図である。
図12A】接続部の構成の一例を示す平面図である。
図12B】接続部の構成の一例を示す平面図である。
図12C】接続部の構成の一例を示す平面図である。
図13A】接続部と可変受動素子の構成の一例を模式的に示す説明図である。
図13B】接続部と可変受動素子の構成の一例を模式的に示す説明図である。
図13C】接続部と可変受動素子の構成の一例を模式的に示す説明図である。
図14A】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図14B】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図14C】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図14D】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図15A】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図15B】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図15C】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図15D】接続部と駆動装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図16】他の実施形態にかかるエッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図17】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
図18】チルト角度の制御方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)にエッチング等のプラズマ処理が行われる。プラズマ処理では、処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによってウェハを処理する。
【0009】
プラズマ処理は、プラズマ処理装置で行われる。プラズマ処理装置は、一般的に、チャンバ、ステージ、高周波(Radio Frequency:RF)電源を備える。一例では、高周波電源は、第1の高周波電源、及び第2の高周波電源を備える。第1の高周波電源は、チャンバ内のガスのプラズマを生成するために、第1の高周波電力を供給する。第2の高周波電源は、ウェハにイオンを引き込むために、バイアス用の第2の高周波電力を下部電極に供給する。ステージは、チャンバ内に設けられている。ステージは、下部電極及び静電チャックを有する。一例では、静電チャック上には、当該静電チャック上に載置されたウェハを囲むようにエッジリングが配置される。エッジリングは、ウェハに対するプラズマ処理の均一性を向上させるために設けられる。
【0010】
エッジリングは、プラズマ処理が実施される時間の経過に伴い、消耗し、エッジリングの厚みが減少する。エッジリングの厚みが減少すると、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方においてシースの形状が変化する。このようにシースの形状が変化すると、ウェハのエッジ領域におけるイオンの入射方向が縦方向に対して傾斜する。その結果、ウェハのエッジ領域に形成される凹部が、ウェハの厚み方向に対して傾斜する。
【0011】
ウェハのエッジ領域においてウェハの厚み方向に延びる凹部を形成するためには、ウェハのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きを調整する必要がある。そこで、エッジ領域へのイオンの入射方向(イオン束の方向性)を制御するために、例えば特許文献1では上述したように、結合リングの電極とエッジリングとの間にキャパシタンスを生成することが提案されている。
【0012】
しかしながら、上記キャパシタンスを生成するだけで入射角度を制御しようとしても、その制御範囲には限界がある場合がある。また、消耗に伴うエッジリングの交換頻度を抑えることが望まれるが、上記キャパシタンスの生成だけではイオンの入射角度を十分に制御できない場合があり、かかる場合、エッジリングの交換頻度を改善しきれない。
【0013】
本開示にかかる技術は、エッチングにおいて基板のエッジ領域においてイオンを垂直に入射させることにより、チルト角度を適切に制御する。
【0014】
以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置としてのエッチング装置及びエッチング方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<エッチング装置>
先ず、本実施形態にかかるエッチング装置について説明する。図1は、エッチング装置1の構成の概略を示す縦断面図である。図2A及び図2Bはそれぞれ、エッジリング周辺の構成の概略を示す縦断面図である。エッチング装置1は、容量結合型のエッチング装置である。エッチング装置1では、基板としてのウェハWに対してエッチングを行う。
【0016】
図1に示すようにエッチング装置1は、略円筒形状のプラズマ処理チャンバとしてのチャンバ10を有している。チャンバ10は、その内部においてプラズマが生成される処理空間Sを画成する。チャンバ10は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ10は接地電位に接続されている。
【0017】
チャンバ10の内部には、ウェハWを載置する基板支持体としてのステージ11が収容されている。ステージ11は、下部電極12、静電チャック13、及びエッジリング14を有している。なお、下部電極12の下面側には、例えばアルミニウムから構成される電極プレート(図示せず)が設けられていてもよい。
【0018】
下部電極12は、導電性の材料、例えばアルミニウム等の金属で構成されており、略円板形状を有している。
【0019】
なお、ステージ11は、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWのうち少なくとも1つを所望の温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調媒体が流れる。
【0020】
一例では、下部電極12の内部に、流路15aが形成される。流路15aには、チャンバ10の外部に設けられたチラーユニット(図示せず)から入口配管15bを介して温調媒体が供給される。流路15aに供給された温調媒体は、出口流路15cを介してチラーユニットに戻るようになっている。流路15aの中に温調媒体、例えば冷却水等の冷媒を循環させることにより、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWを所望の温度に冷却することができる。
【0021】
静電チャック13は、下部電極12上に設けられている。一例では、静電チャック13は、ウェハWとエッジリング14の両方を静電力により吸着保持可能に構成された部材である。静電チャック13は、周縁部の上面に比べて中央部の上面が高く形成されている。静電チャック13の中央部の上面は、ウェハWが載置されるウェハ載置面となり、一例では、静電チャック13の周縁部の上面は、エッジリング14が載置されるエッジリング載置面となる。
【0022】
一例では、静電チャック13の内部において中央部には、ウェハWを吸着保持するための第1の電極16aが設けられている。静電チャック13の内部において周縁部には、エッジリング14を吸着保持するための第2の電極16bが設けられている。静電チャック13は、絶縁材料からなる絶縁材の間に電極16a、16bを挟んだ構成を有する。
【0023】
第1の電極16aには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。これにより生じる静電力により、静電チャック13の中央部の上面にウェハWが吸着保持される。同様に、第2の電極16bには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。一例では、これにより生じる静電力により、静電チャック13の周縁部の上面にエッジリング14が吸着保持される。
【0024】
なお、本実施形態において、第1の電極16aが設けられる静電チャック13の中央部と、第2の電極16bが設けられる周縁部とは一体となっているが、これら中央部と周縁部とは別体であってもよい。また、第1の電極16a及び第2の電極16bは、いずれも単極であってもよく、双極であってもよい。
【0025】
また、本実施形態においてエッジリング14は、第2の電極16bに直流電圧を印加することで静電チャック13に静電吸着されるが、エッジリング14の保持方法はこれに限定されない。例えば、吸着シートを用いてエッジリング14を吸着保持してもよいし、エッジリング14をクランプして保持してもよい。あるいは、エッジリング14の自重によりエッジリング14が保持されてもよい。
【0026】
エッジリング14は、静電チャック13の中央部の上面に載置されたウェハWを囲むように配置される、環状部材である。エッジリング14は、エッチングの均一性を向上させるために設けられる。このため、エッジリング14は、エッチングに応じて適宜選択される材料から構成されており、導電性を有し、例えばSiやSiCから構成され得る。
【0027】
以上のように構成されたステージ11は、チャンバ10の底部に設けられた略円筒形状の支持部材17に締結される。支持部材17は、例えばセラミックや石英等の絶縁体により構成される。
【0028】
ステージ11の上方には、ステージ11と対向するように、シャワーヘッド20が設けられている。シャワーヘッド20は、処理空間Sに面して配置される電極板21、及び電極板21の上方に設けられる電極支持体22を有している。電極板21は、下部電極12と一対の上部電極として機能する。後述するように第1の高周波電源50が下部電極12に電気的に結合されている場合には、シャワーヘッド20は、接地電位に接続される。なお、シャワーヘッド20は、絶縁性遮蔽部材23を介して、チャンバ10の上部(天井面)に支持されている。
【0029】
電極板21には、後述のガス拡散室22aから送られる処理ガスを処理空間Sに供給するための複数のガス噴出口21aが形成されている。電極板21は、例えば、発生するジュール熱の少ない低い電気抵抗率を有する導電体又は半導体から構成される。
【0030】
電極支持体22は、電極板21を着脱自在に支持する。電極支持体22は、例えばアルミニウム等の導電性材料の表面に耐プラズマ性を有する膜が形成された構成を有している。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムなどのセラミック製の膜であり得る。電極支持体22の内部には、ガス拡散室22aが形成されている。ガス拡散室22aからは、ガス噴出口21aに連通する複数のガス流通孔22bが形成されている。また、ガス拡散室22aには、後述するガス供給管33に接続されるガス導入孔22cが形成されている。
【0031】
また、電極支持体22には、ガス拡散室22aに処理ガスを供給するガス供給源群30が、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、及びガス導入孔22cを介して接続されている。
【0032】
ガス供給源群30は、エッチングに必要な複数種のガス供給源を有している。流量制御機器群31は複数の流量制御器を含み、バルブ群32は複数のバルブを含んでいる。流量制御機器群31の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。エッチング装置1においては、ガス供給源群30から選択された一以上のガス供給源からの処理ガスが、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、及びガス導入孔22cを介してガス拡散室22aに供給される。そして、ガス拡散室22aに供給された処理ガスは、ガス流通孔22b及びガス噴出口21aを介して、処理空間S内にシャワー状に分散されて供給される。
【0033】
チャンバ10の底部であって、チャンバ10の内壁と支持部材17との間には、バッフルプレート40が設けられている。バッフルプレート40は、例えばアルミニウム材に酸化イットリウム等のセラミックスを被覆することにより構成される。バッフルプレート40には、複数の貫通孔が形成されている。処理空間Sは当該バッフルプレート40を介して排気口41に連通されている。排気口41には例えば真空ポンプ等の排気装置42が接続され、当該排気装置42により処理空間S内を減圧可能に構成されている。
【0034】
また、チャンバ10の側壁にはウェハWの搬入出口43が形成され、当該搬入出口43はゲートバルブ44により開閉可能となっている。
【0035】
図1及び図2に示すように、エッチング装置1は、ソースRF電源としての第1の高周波電源50、バイアスRF電源としての第2の高周波電源51、及び整合器52を更に有している。第1の高周波電源50と第2の高周波電源51は、整合器52を介して下部電極12に結合されている。
【0036】
第1の高周波電源50は、プラズマ発生用のソースRF電力である高周波電力HFを発生して、当該高周波電力HFを下部電極12に供給する。高周波電力HFは、27MHz~100MHzの範囲内の周波数であってよく、一例においては40MHzである。第1の高周波電源50は、整合器52の第1の整合回路53を介して、下部電極12に結合されている。第1の整合回路53は、第1の高周波電源50の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源50は、下部電極12に電気的に結合されていなくてもよく、第1の整合回路53を介して上部電極であるシャワーヘッド20に結合されていてもよい。また、第1の高周波電源50に代えて、高周波電力以外のパルス電圧を下部電極12に印加するように構成されたパルス電源を用いてもよい。このパルス電源は、後述する第2の高周波電源51に代えて用いられるパルス電源と同様である。
【0037】
第2の高周波電源51は、ウェハWにイオンを引き込むためのバイアスRF電力である高周波電力LFを発生して、当該高周波電力LFを下部電極12に供給する。高周波電力LFは、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数であってよく、一例においては400kHzである。第2の高周波電源51は、整合器52の第2の整合回路54を介して、下部電極12に結合されている。第2の整合回路54は、第2の高周波電源51の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第2の高周波電源51に代えて、高周波電力以外のパルス電圧を下部電極12に印加するように構成されたパルス電源を用いてもよい。ここで、パルス電圧とは、電圧の大きさが周期的に変化するパルス状の電圧である。パルス電源は、直流電源であってよい。パルス電源は、電源自体がパルス電圧を印加するように構成されてもよく、下流側に電圧をパルス化するデバイスを備えるように構成されてもよい。一例では、パルス電圧は、ウェハWに負の電位が生じるように下部電極12に印加される。パルス電圧は、矩形波であってもよく、三角波あってもよく、インパルスであってもよく、又はその他の波形を有していてもよい。パルス電圧の周波数(パルス周波数)は、100kHz~2MHzの範囲内の周波数であってよい。なお、上記高周波電力LF又はパルス電圧は、静電チャック13の内部に設けられたバイアス電極に供給又は印加されてもよい。
【0038】
エッチング装置1は、第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61を更に有している。第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61は、エッジリング14側からこの順で配置されている。第2の可変受動素子61は、接地電位に接続されている。すなわち、第2の可変受動素子61は、第1の高周波電源50と第2の高周波電源51のそれぞれに接続されていない。
【0039】
一例においては、第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61の少なくとも一方は、インピーダンスが可変に構成されている。第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61は、例えばコイル(インダクタ)又はコンデンサ(キャパシタ)のいずれかであってもよい。また、コイル、コンデンサに限らず、ダイオード等の素子など可変インピーダンス素子であればどのようなものであっても同様の機能を達成できる。第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61の数や位置も、当業者が適宜設計することができる。さらに、素子自体が可変である必要はなく、例えば、インピーダンスが固定値の素子を複数備え、切替回路を用いて固定値の素子の組み合わせを切り替えることでインピーダンスを可変してもよい。なお、これら第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61の回路構成はそれぞれ、当業者が適宜設計することができる。
【0040】
図1図2A及び図2Bに示すように、エッチング装置1は、エッジリング14を縦方向に移動させる駆動装置70を更に有している。駆動装置70は、エッジリング14を支持して縦方向に移動するリフターピン71、及びリフターピン71を縦方向に移動させる駆動源72を有している。
【0041】
リフターピン71は、エッジリング14の下面から縦方向に延在し、静電チャック13、下部電極12、支持部材17、及びチャンバ10の底部を貫通して設けられている。リフターピン71とチャンバ10の間は、チャンバ10の内部を密閉するためにシールされている。リフターピン71は、少なくとも表面が絶縁材料で形成されてよい。
【0042】
駆動源72は、チャンバ10の外部に設けられている。駆動源72は、例えばモータを内蔵し、リフターピン71を縦方向に移動させる。すなわち駆動装置70によって、エッジリング14は、図2Aに示すように静電チャック13に載置された状態と、図2Bに示すように静電チャック13から離間した状態との間で、縦方向に移動自在に構成されている。
【0043】
以上のエッチング装置1には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、エッチング装置1におけるエッチングを制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0044】
<エッチング方法>
次に、以上のように構成されたエッチング装置1を用いて行われるエッチングについて説明する。
【0045】
先ず、チャンバ10の内部にウェハWを搬入し、静電チャック13上にウェハWを載置する。その後、静電チャック13の第1の電極16aに直流電圧を印加することにより、ウェハWはクーロン力によって静電チャック13に静電吸着され、保持される。また、ウェハWの搬入後、排気装置42によってチャンバ10の内部を所望の真空度まで減圧する。
【0046】
次に、ガス供給源群30からシャワーヘッド20を介して処理空間Sに処理ガスを供給する。また、第1の高周波電源50によりプラズマ生成用の高周波電力HFを下部電極12に供給し、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2の高周波電源51によりイオン引き込み用の高周波電力LFを供給してもよい。そして、生成されたプラズマの作用によって、ウェハWにエッチングが施される。
【0047】
エッチングを終了する際には、先ず、第1の高周波電源50からの高周波電力HFの供給及びガス供給源群30による処理ガスの供給を停止する。また、エッチング中に高周波電力LFを供給していた場合には、当該高周波電力LFの供給も停止する。次いで、ウェハWの裏面への伝熱ガスの供給を停止し、静電チャック13によるウェハWの吸着保持を停止する。
【0048】
その後、チャンバ10からウェハWを搬出して、ウェハWに対する一連のエッチングが終了する。
【0049】
なお、エッチングにおいては、第1の高周波電源50からの高周波電力HFを使用せず、第2の高周波電源51からの高周波電力LFのみを用いて、プラズマを生成する場合もある。
【0050】
<チルト角度制御方法>
次に、上述したエッチングにおいて、チルト角度を制御する方法について説明する。チルト角度は、ウェハWのエッジ領域において、エッチングにより形成される凹部のウェハWの厚み方向に対する傾き(角度)である。チルト角度は、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の縦方向に対する傾き(イオンの入射角度)とほぼ同様の角度となる。なお、以下の説明では、ウェハWの厚み方向(縦方向)に対して径方向内側(中心側)の方向をインナー側といい、ウェハWの厚み方向に対して径方向外側の方向をアウター側という。
【0051】
図3A及び図3Bは、エッジリングの消耗によるシースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。図3Aにおいて実線で示されるエッジリング14は、その消耗がない状態のエッジリング14を示している。点線で示されるエッジリング14は、その消耗が生じて厚みが減少したエッジリング14を示している。また、図3Aにおいて実線で示されるシースSHは、エッジリング14が消耗していない状態にあるときの、シースSHの形状を表している。点線で示されるシースSHは、エッジリング14が消耗した状態にあるときの、シースSHの形状を表している。さらに、図3Aにおいて矢印は、エッジリング14が消耗した状態にあるときの、イオンの入射方向を示している。
【0052】
図3Aに示すように一例においては、エッジリング14が消耗していない状態にある場合、シースSHの形状は、ウェハW及びエッジリング14の上方においてフラットに保たれている。したがって、ウェハWの全面に略垂直な方向(縦方向)にイオンが入射する。したがって、チルト角度は0(ゼロ)度となる。
【0053】
一方、エッジリング14が消耗し、その厚みが減少すると、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが小さくなり、当該シースSHの形状が下方凸形状に変化する。その結果、ウェハWのエッジ領域に対するイオンの入射方向が縦方向に対して傾斜する。以下の説明では、イオンの入射方向が縦方向対して径方向内側(中心側)に傾斜した場合に、エッチングにより形成される凹部がインナー側に傾斜する現象を、インナーチルト(Inner Tilt)という。図3Bでは、イオンの入射方向は、インナー側に角度θ1だけ傾斜しており、凹部もインナー側にθ1だけ傾斜している。インナーチルトが発生する原因は、上述したエッジリング14の消耗に限定されない。例えば、エッジリング14に発生するバイアス電圧がウェハW側の電圧に比べて低い場合には、初期状態でインナーチルトとなる。また例えば、エッジリング14の初期状態において意図的にインナーチルトとなるように調整し、後述する駆動装置70の駆動量の調整によりチルト角度を補正する場合もある。
【0054】
なお、図4A及び図4Bに示すように、ウェハWの中央領域に対し、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが大きくなり、当該シースSHの形状が上方凸形状になる場合もあり得る。例えば、エッジリング14に発生するバイアス電圧が高い場合、シースSHの形状が上方凸形状になり得る。図4Aにおいて矢印は、イオンの入射方向を示している。以下の説明では、イオンの入射方向が縦方向に対して径方向外側に傾斜した場合に、エッチングにより形成される凹部がアウター側に傾斜する現象を、アウターチルト(Outer Tilt)という。図4Bでは、イオンの入射方向は、アウター側に角度θ2だけ傾斜しており、凹部もアウター側にθ2だけ傾斜している。
【0055】
本実施形態のエッチング装置1では、チルト角度を制御する。具体的に、チルト角度の制御は、少なくとも駆動装置70の駆動源72の駆動量(エッジリング14の駆動量)、又は第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整して、イオンの入射角度を制御することにより行う。なお、以下の実施形態では、第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整する場合について説明するが、第1の可変受動素子60のインピーダンスを調整してもよいし、可変受動素子60、61の両方のインピーダンスを調整してもよい。
【0056】
[駆動量の調整]
先ず、駆動装置70の駆動量を調整する場合について説明する。図5は、駆動装置70の駆動量とチルト角度の補正角度(以下、「チルト補正角度」という。)の関係を示す説明図である。図5の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は駆動装置70の駆動量を示している。図5に示すように、駆動装置70の駆動量を大きくすると、チルト補正角度は大きくなる。
【0057】
制御部100は、例えば予め定められた関数又はテーブルを用いてエッチングのプロセス条件(例えば処理時間)から推定されるエッジリング14の消耗量(エッジリング14の厚みの初期値からの減少量)から、駆動装置70の駆動量を設定する。すなわち、制御部100は、エッジリング14の消耗量を上記関数に入力するか、エッジリング14の消耗量を用いて上記テーブルを参照することにより、駆動装置70の駆動量を決定する。
【0058】
なお、エッジリング14の消耗量は、ウェハWのエッチング時間、ウェハWの処理枚数、測定器によって測定されたエッジリング14の厚み、測定器によって測定されたエッジリング14の質量の変化、測定器によって測定されたエッジリング14の周辺の電気的特性(例えばエッジリング14の周辺の任意の点の電圧、電流値)の変化、又は測定器によって測定されたエッジリング14の電気的特性(例えばエッジリング14の抵抗値)の変化等に基づいて、推定されてもよい。また、エッジリング14の消耗量とは関係なく、ウェハWのエッチング時間やウェハWの処理枚数に応じて、駆動装置70の駆動量を大きくしてもよい。さらに、高周波電力によって重みづけしたウェハWのエッチング時間やウェハWの処理枚数に応じて、駆動装置70の駆動量を大きくしてもよい。
【0059】
以上のように駆動装置70の駆動量を調整して、チルト角度を制御制御する具体的な方法について説明する。先ず、エッジリング14を静電チャック13上に設置する。この際、例えば、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シース形状がフラットになり、チルト角度が0(ゼロ)度になっている。
【0060】
次に、ウェハWに対してエッチングを行う。エッチングが実施される時間の経過に伴い、エッジリング14が消耗し、その厚みが減少する。そうすると、図3Aに示したように、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが小さくなり、チルト角度がインナー側に変化する。
【0061】
そこで、駆動装置70の駆動量を調整する。具体的には、エッジリング14の消耗量に応じて、駆動装置70の駆動量の大きくして、エッジリング14を上昇させる。そうすると、図5に示したようにチルト補正角度が大きくなり、インナー側に傾斜したチルト角度をアウター側に変化させることができる。すなわち、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。そして、上述したように制御部100で設定された駆動量に基づいてエッジリング14を上昇させると、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、当該チルト角度を0(ゼロ)度に補正することができる。その結果、ウェハWの全領域にわたって、当該ウェハWの厚み方向に略平行な凹部が形成される。
【0062】
[インピーダンスの調整]
次に、第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整する場合について説明する。図6は、第2の可変受動素子61のインピーダンスとチルト補正角度の関係を示す説明図である。図6の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は第2の可変受動素子61のインピーダンスを示している。図6に示すように、第2の可変受動素子61のインピーダンスを大きくすると、チルト補正角度は大きくなる。なお、図6に示す例では、インピーダンスを大きくすることにより、チルト補正角度を大きくしているが、第2の可変受動素子61の構成によっては、インピーダンスを大きくすることにより、チルト補正角度を小さくすることも可能である。インピーダンスとチルト補正角度の関係性は、第2の可変受動素子61の設計に依存するため、限定されるものではない。
【0063】
制御部100は、上述した駆動装置70の駆動量の設定と同様に、エッジリング14の消耗量から、第2の可変受動素子61のインピーダンスを設定する。そして制御部100は、第2の可変受動素子61のインピーダンスを変更することで、エッジリング14に発生する電圧を変更する。
【0064】
エッチング装置1では、エッジリング14が消耗すると、制御部100で設定されたインピーダンスに第2の可変受動素子61を制御する。これにより、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。そうすると、図6のように、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にすることができる。
【0065】
[駆動量とインピーダンスの調整]
次に、駆動装置70の駆動量と第2の可変受動素子61のインピーダンスを組み合わせて調整する場合について説明する。図7は、駆動装置70の駆動量、第2の可変受動素子61のインピーダンス、及びチルト補正角度の関係を示す説明図である。図7の縦軸はチルト補正角度を示し、横軸は第2の可変受動素子61のインピーダンスを示している。
【0066】
図7に示すように、先ず、第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整し、チルト角度を補正する。次に、インピーダンスが予め定められた値、例えば上限値に達すると、駆動装置70の駆動量を調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。かかる場合、インピーダンスの調整と駆動量の調整の回数を少なくすることができ、チルト角度制御の運用を単純化することができる。
【0067】
ここで、インピーダンスの調整によるチルト角度補正の分解能と、駆動量の調整によるチルト角度補正の分解能は、それぞれ第2の可変受動素子61と駆動装置70の性能等に依存する。チルト角度補正の分解能とは、インピーダンス又は駆動量の1回の調整におけるチルト角度の補正量である。そして、例えば第2の可変受動素子61の分解能が駆動装置70の分解能より高い場合、本実施形態では第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整してチルト角度を補正している分、全体としてのチルト角度補正の分解能を向上させることができる。
【0068】
以上のように本実施形態によれば、第2の可変受動素子61のインピーダンスの調整と駆動装置70の駆動量の調整を行うことで、チルト角度の調整範囲を大きくすることができる。したがって、チルト角度を適切に制御することができ、すなわち、イオンの入射方向を適切に調整することができるので、エッチングを均一に行うことができる。
【0069】
また、例えば第2の可変受動素子61のインピーダンスのみでチルト角度を制御しようとする場合、インピーダンスが可変受動素子61の制御範囲の上限に達すると、エッジリング14を交換する必要があった。この点、本実施形態では、駆動装置70の駆動量の調整を行うことで、エッジリング14を交換することなく、チルト角度の調整範囲を大きくすることができる。したがって、エッジリング14の交換間隔を長くして、その交換頻度を抑えることができる。
【0070】
しかも、本実施形態によれば、チルト角度制御の運用を単純化しつつ、チルト角度補正の分解能を向上させることができる。そして、チルト角度制御の運用のバリエーションを増やすことができる。
【0071】
なお、図7に示した例においては、インピーダンスの調整と駆動量の調整をそれぞれ1回行って、チルト補正角度を目標角度θ3に調整したが、これらインピーダンスの調整と駆動量の調整の回数はこれに限定されない。例えば図8に示すように、インピーダンスの調整と駆動量の調整をそれぞれ複数回行ってもよい。かかる場合でも、本実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0072】
また、図7及び図8に示した例においては、第2の可変受動素子61のインピーダンスの調整を行った後、駆動装置70の駆動量の調整を行ったが、この順序は反対でもよい。かかる場合、先ず、駆動装置70の駆動量を調整し、チルト角度を補正する。この際、駆動装置70の駆動量を大きくし過ぎると、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じる。したがって、駆動装置70の駆動量には制限がある。そこで次に、駆動量が予め定められた値、例えば上限値に達すると、第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。かかる場合でも、本実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0073】
また、以上の実施形態では、第2の可変受動素子61のインピーダンスの調整と駆動装置70の駆動量の調整を個別に行ったが、インピーダンスの調整と駆動量の調整を同時に行ってもよい。
【0074】
<他の実施形態>
ここで上述したように、第2の高周波電源51から供給される高周波電力(バイアスRF電力)LFの周波数は400kHz~13.56MHzであるが、5MHz以下がより好ましい。エッチングを行う際、ウェハWに対して高アスペクト比のエッチングを行う場合、エッチング後のパターンの垂直形状を実現するためには、高いイオンエネルギーが必要となる。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、高周波電力LFの周波数を5MHz以下にすることで、高周波電界の変化に対するイオンの追従性が上がり、イオンエネルギーの制御性が向上することが分かった。
【0075】
一方、高周波電力LFの周波数を5MHz以下の低周波とすると、第2の可変受動素子61のインピーダンスを可変とした効果が低下する場合がある。すなわち、第2の可変受動素子61のインピーダンスの調整によるチルト角度の制御性が低下する場合がある。例えば図2A及び図2Bにおいて、エッジリング14と第2の可変受動素子61との電気的な接続が非接触又は容量結合である場合、第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整しても、チルト角度を適切に制御できない。そこで本実施形態では、エッジリング14と第2の可変受動素子61を電気的に直接接続する。
【0076】
エッジリング14と第2の可変受動素子61は、接続部を介して電気的に直接接続される。エッジリング14と接続部は接触し、当該接続部を直流電流が導通する。以下、接続部の構造(以下、「接触構造」という場合がある。)の一例について説明する。
【0077】
図9に示すように導体としての接続部200は、導電性構造201と導電性弾性部材202を有している。導電性構造201は、導電性弾性部材202を介してエッジリング14と第2の可変受動素子61を接続する。具体的に導電性構造201は、その一端が第2の可変受動素子61に接続され、他端が下部電極12の上面にて露出し、導電性弾性部材202に接触する。
【0078】
導電性弾性部材202は、例えばエッジリング14と静電チャック13の間に形成された空間に設けられる。導電性弾性部材202は、導電性構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。また導電性弾性部材202は、例えば金属等の導体からなる。導電性弾性部材202の構成は特に限定されないが、図10A図10Fのそれぞれに一例を示す。なお、図10A図10Cは、導電性弾性部材202として、弾性体を用いた例である。
【0079】
図10Aに示すように導電性弾性部材202には、縦方向に付勢された板バネが用いられてもよい。図10Bに示すように導電性弾性部材202には、らせん状に巻かれつつ水平方向に延在するコイルスプリングが用いられてもよい。図10Cに示すように導電性弾性部材202には、らせん状に巻かれつつ縦方向に延在するバネが用いられてもよい。そして、これら導電性弾性部材202は弾性体であり、縦方向に弾性力が作用する。この弾性力によって、導電性弾性部材202は導電性構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに所望の接触圧力で密着し、導電性構造201とエッジリング14が電気的に接続される。
【0080】
図10Dに示すように導電性弾性部材202には、駆動機構(図示せず)によって縦方向に移動するピンが用いられてもよい。かかる場合、導電性弾性部材202が上昇することによって、導電性弾性部材202は導電性構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに密着する。そして、導電性弾性部材202の縦方向移動時に作用する圧力を調整することで、導電性弾性部材202は導電性構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに、所望の接触圧力で密着する。
【0081】
図10Eに示すように導電性弾性部材202には、導電性構造201とエッジリング14を接続するワイヤが用いられてもよい。ワイヤは、その一端が導電性構造201に接合され、他端がエッジリング14の下面に接合される。このワイヤの接合は、導電性構造201又はエッジリング14の下面とオーミック接触となればよく、一例として、ワイヤは溶接又は圧着される。そして、このように導電性弾性部材202にワイヤを用いた場合、導電性弾性部材202は導電性構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに接触し、導電性構造201とエッジリング14が電気的に接続される。
【0082】
以上、図10A図10Eに示したいずれの導電性弾性部材202を用いた場合でも、図9に示したように接続部200を介してエッジリング14と第2の可変受動素子61を電気的に直接接続することができる。したがって、高周波電力LFの周波数を5MHz以下の低周波とすることができ、イオンエネルギーの制御性を向上させることができる。
【0083】
また、駆動装置70の駆動量を調整してチルト角度を制御する場合には、接続部200を設けた分、調整する駆動量を小さく抑えることができる。その結果、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じるのを抑制することができる。更に、上述したように、駆動装置70の駆動量と第2の可変受動素子61のインピーダンスを調整することで、チルト角度の調整範囲を大きくして、チルト角度を所望の値に制御することができる。
【0084】
なお、以上の実施形態では、導電性弾性部材202として、図10Aに示した板バネ、図10Bに示したコイルスプリング、図10Cに示したバネ、図10Dに示したピン、図10Eに示したワイヤを例示したが、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0085】
なお、以上の実施形態の接続部200において、図10Fに示すように導電性弾性部材202と接続部200の導電性弾性部材202とエッジリング14との間には、導電膜203が設けられていてもよい。導電膜203には、例えば金属膜が用いられる。導電膜203は、エッジリング14の下面において少なくとも導電性弾性部材202が接触する部分に設けられる。導電膜203はエッジリング14の下面全面に設けられてもよいし、或いは複数の導電膜203が全体で環状に近い形状に設けられていてもよい。いずれの場合も、導電膜203によって、導電性弾性部材202の接触による抵抗を抑制することができ、エッジリング14と第2の可変受動素子61を適切に接続することができる。
【0086】
以上の実施形態の接続部200は、駆動装置70によってエッジリング14を上昇させた際、導電性弾性部材202がプラズマから保護される構成を有するのが好ましい。図11A図11Gはそれぞれ、導電性弾性部材202のプラズマ対策の一例を示す。
【0087】
図11Aに示すようにエッジリング14の下面に、当該下面から下方に突起する突起部14a、14bを設けてもよい。図示の例においては、突起部14aは導電性弾性部材202の径方向内側に設けられ、突起部14bは導電性弾性部材202の径方向外側に設けられる。すなわち、導電性弾性部材202は、突起部14a、14bで形成される凹部に設けられる。かかる場合、突起部14a、14bによって、プラズマが導電性弾性部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導電性弾性部材202を保護することができる。
【0088】
なお、図11Aの例においては、エッジリング14の下面に突起部14a、14bを設けたが、プラズマの回り込みを抑制する形状はこれに限定されず、エッチング装置1に応じて決定すればよい。また、エッジリング14が駆動装置70によって適切に縦方向に移動できるように、エッジリング14の形状を決定すればよい。
【0089】
図11Bに示すようにエッジリング14と静電チャック13の間において導電性弾性部材202の内側に、追加エッジリング210を設けてもよい。追加エッジリング210は、絶縁材料で形成される。追加エッジリング210は、下部電極12とは別体として設けられ、例えば円環状を有している。かかる場合、追加エッジリング210によって、プラズマが導電性弾性部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導電性弾性部材202を保護することができる。
【0090】
図11Cに示すように、図11Aに示したエッジリング14の突起部14aと、図11Bに示した追加エッジリング210とを両方設けてもよい。かかる場合、突起部14aと追加エッジリング210によって、プラズマの回り込みを更に抑制することができ、導電性弾性部材202を保護することができる。
【0091】
図11Dに示すように、図11Aに示したエッジリング14の突起部14a、14bと、図11Bに示した追加エッジリング210とを両方設けてもよい。導電性弾性部材202は、突起部14bと接触する。また。追加エッジリング210は、突起部14a、14bの間に設けられる。かかる場合、突起部14a、14bと追加エッジリング210によってラビリンス構造が形成され、プラズマの回り込みを更に抑制することができ、導電性弾性部材202を保護することができる。
【0092】
図11Eに示すようにエッジリング14を、上部エッジリング140と下部エッジリング141に分割してもよい。上部エッジリング140は本開示におけるエッジリングに相当し、下部エッジリング141は本開示における追加エッジリングに相当する。上部エッジリング140は、駆動装置70によって縦方向に移動自在に構成されている。下部エッジリング141は縦方向に移動しない。導電性弾性部材202は、上部エッジリング140の下面と下部エッジリング141の上面に接触して設けられている。導電性構造201は、下部エッジリング141に接続されている。かかる場合、上部エッジリング140と第2の可変受動素子61は、導電性弾性部材202、下部エッジリング141、及び導電性構造201を介して、電気的に直接接続される。
【0093】
上部エッジリング140の下面において最外周部には、当該下面から下方に突起する突起部140aが設けられている。下部エッジリング141の上面において最内周部には、当該上面から上方に突起する突起部141aが設けられている。かかる場合、突起部140a、141aによって、プラズマが導電性弾性部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導電性弾性部材202を保護することができる。
【0094】
図11Fは、図11Eの変形例である。図11Eに示す例において、導電性構造201は下部エッジリング141に接続されていたが、図11Fに示す例では、導電性構造201の一端は下部電極12の上面にて露出し、導電性弾性部材220に接触する。導電性弾性部材220は、静電チャック13の径方向外側に下部エッジリング141の下面と下部電極12の上面との間に形成された空間に設けられている。すなわち、導電性弾性部材220は、下部エッジリング141の下面と導電性構造201に接触する。かかる場合、上部エッジリング140と第2の可変受動素子61は、導電性弾性部材202、下部エッジリング141、導電性弾性部材220、及び導電性構造201を介して、電気的に直接接続される。そして、本例においても、突起部140a、141aによって、プラズマが導電性弾性部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導電性弾性部材202を保護することができる。
【0095】
図11Gは、図11Eの変形例である。図11Eに示す例において、導電性弾性部材202は下部エッジリング141の上面に設けられていたが、図11Gに示す例では、導電性弾性部材202は下部電極12の上面に設けられている。導電性弾性部材202は、上部エッジリング140の下面と導電性構造201に接触する。導電性構造201は、その一端が静電チャック13の上面にて露出し、導電性弾性部材202に接触する。かかる場合、上部エッジリング140と第2の可変受動素子61は、導電性弾性部材202、及び導電性構造201を介して、電気的に直接接続される。そして、本例においても、突起部140a、141aによって、プラズマが導電性弾性部材202の方に回り込むのを抑制することができ、導電性弾性部材202を保護することができる。
【0096】
なお、以上の実施形態において、図11A図11Gに示した構成を組み合わせて用いてもよい。また、接続部200において、導電性弾性部材202の表面のエッジリング14と接触する部分以外に、耐プラズマコーティングを施してもよい。かかる場合、導電性弾性部材202をプラズマから保護することができる。
【0097】
次に、導電性弾性部材202の平面視における配置について説明する。図12A図12Cはそれぞれ、導電性弾性部材202の平面配置の一例を示す。図12A及び図12Bに示すように、接続部200は導電性弾性部材202を複数備え、複数の導電性弾性部材202はエッジリング14と同心円上に等間隔に設けられていてもよい。図12Aの例において導電性弾性部材202は8箇所に設けられ、図12Bにおいて導電性弾性部材202は24箇所に設けられている。また、図12Cに示すように導電性弾性部材202は、エッジリング14と同心円上に環状に設けられていてもよい。
【0098】
エッチングを均一に行い、シースの形状を均一にする観点(プロセス均一化の観点)からは、図12Cに示したようにエッジリング14に対して導電性弾性部材202を環状に設け、エッジリング14に対する接触を円周上で均一に行うのが好ましい。また、同じくプロセス均一化の観点から、図12A及び図12Bに示すように複数の導電性弾性部材202を設ける場合でも、これら複数の導電性弾性部材202をエッジリング14の周方向に等間隔に配置し、エッジリング14に対する接触点を点対称に設けるのが好ましい。更に言えば、図12Aの例に比べて図12Bの例のように導電性弾性部材202の数を多くして、図12Cに示したように環状に近づける方が良い。なお、導電性弾性部材202の数は特に限定されないが、対称性を確保するためには、3個以上が好ましく、例えば3個~36個としてよい。
【0099】
但し、装置構成上、他の部材との干渉を回避するため、導電性弾性部材202を環状にしたり、導電性弾性部材202の数を多くするのは難しい場合がある。したがって、導電性弾性部材202の平面配置は、プロセス均一化の条件や装置構成上の制約条件などを鑑みて、適宜設定してよい。
【0100】
次に、接続部200と、第1の可変受動素子60及び第2の可変受動素子61との関係について説明する。図13A図13Cはそれぞれ、接続部200、第1の可変受動素子60及び第2の可変受動素子61の構成の一例を模式的に示す。
【0101】
図13Aに示すように、例えば8個の導電性弾性部材202に対して第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61がそれぞれ1個設けられている場合、接続部200は中継部材230を更に有していてもよい。なお、図13Aでは、図12Aに示した接続部200において中継部材230を設けた場合について図示するが、図12B又は図12Cのいずれに示した接続部200においても中継部材230を設けることができる。また、中継部材230は複数設けられていてもよい。
【0102】
中継部材230は、導電性弾性部材202と第2の可変受動素子61の間の導電性構造201において、エッジリング14と同心円上に環状に設けられている。中継部材230は、導電性弾性部材202と導電性構造201aで接続されている。すなわち、中継部材230から8本の導電性構造201aが平面視において放射状に延在し、8個の導電性弾性部材202のそれぞれに接続される。また中継部材230は、第1の可変受動素子60を介して第2の可変受動素子61と導電性構造201bで接続されている。
【0103】
かかる場合、例えば第2の可変受動素子61がエッジリング14の中心に配置されていない場合であっても、中継部材230における電気的特性(任意の電圧、電流値)を円周上で均一に行うことができ、更に8個の導電性弾性部材202のそれぞれに対する電気的特性を均一にすることができる。その結果、エッチングを均一に行い、シースの形状を均一にすることができる。
【0104】
図13Bに示すように、例えば8個の導電性弾性部材202に対して、第1の可変受動素子60が複数、例えば8個設けられ、第2の可変受動素子61が1個設けられていてもよい。このように導電性弾性部材202の数に対して、第1の可変受動素子60の個数は適宜設定することができる。なお、図13Bの例においても、中継部材230が設けられていてもよい。
【0105】
図13Cに示すように、例えば8個の導電性弾性部材202に対して、第1の可変受動素子60が複数、例えば8個設けられ、第2の可変受動素子61が複数、例えば8個設けられていてもよい。このように導電性弾性部材202の数に対して、インピーダンスが可変の第2の可変受動素子61の個数は適宜設定することができる。図13Cの例においても、中継部材230が設けられていてもよい。
【0106】
なお、インピーダンスが可変の第2の可変受動素子61を複数設けることで、複数の導電性弾性部材202に対して個別に独立して電気的特性を制御することが可能となる。その結果、複数の導電性弾性部材202のそれぞれに対する電気的特性を均一にすることができ、プロセスの均一性を向上させることができる。
【0107】
次に、エッジリング14に対する接触構造として、上記図9図10A図10Fに示した例以外の例について説明する。図14A図14D図15A図15Dはそれぞれ、接続部の構成の他の例を示す。
【0108】
図14A図14Dはそれぞれ、駆動装置70のリフターピン300が絶縁材料で形成され、当該リフターピン300の内部に導体としての接続部310が設けられた例である。
【0109】
図14Aに示すように、駆動装置70は、上記実施形態のリフターピン71に代えて、リフターピン300を有していてもよい。リフターピン300は、エッジリング14の下面から縦方向に延在し、静電チャック13、下部電極12、支持部材17、及びチャンバ10の底部を貫通して設けられている。リフターピン300とチャンバ10の間は、チャンバ10の内部を密閉するためにシールされている。リフターピン300は、絶縁材料で形成される。また、リフターピン300は、チャンバ10の外部に設けられた駆動源72によって縦方向に移動自在に構成されている。
【0110】
リフターピン300の内部には、縦方向に延在する導電性ワイヤである接続部310が設けられている。接続部310は、エッジリング14とリフターピン300を直接接続し、エッジリング14と第2の可変受動素子61を接続する。具体的に接続部310は、その一端が第2の可変受動素子61に接続され、他端がリフターピン300の上面にて露出し、エッジリング14の下面に接触する。
【0111】
図14B及び図14Cに示すように、リフターピン300の内部に設けられた接続部310は、導電性構造311と導電性弾性部材312を有していてもよい。導電性構造311は、導電性弾性部材312を介してエッジリング14と第2の可変受動素子61を接続する。具体的に導電性構造311は、その一端が第2の可変受動素子61に接続され、他端がリフターピン300の内部の上部空間にて露出し、導電性弾性部材312に接触する。
【0112】
導電性弾性部材312は、リフターピン300の内部の上部空間に設けられる。導電性弾性部材312は、導電性構造311とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。また導電性弾性部材312は、例えば金属等の導体からなる。導電性弾性部材312の構成は特に限定されないが、例えば図14Bに示すように縦方向に付勢された弾性を有する板バネが用いられてもよいし、図14Cに示すように導電性構造311とエッジリング14を接続するワイヤが用いられてもよい。或いは、導電性弾性部材312には、図10Bに示したコイルスプリング、図10Cに示したバネ、図10Dに示したピン等が用いられてもよい。かかる場合、エッジリング14と第2の可変受動素子61は、導電性弾性部材312と導電性構造311を介して、電気的に直接接続される。
【0113】
図14Dに示すように、リフターピン300は上下面が開口した中空の円筒形状を有し、当該リフターピン300の内部に設けられる接続部310は、導電性構造(第1の導電性構造)311と導電性弾性部材312に加えて、他の導電性構造(第2の導電性構造)313を有していてもよい。導電性構造313は、リフターピン300の内側面に設けられる。導電性構造313は、例えば金属膜であってもよいし、金属製の円筒であってもよい。
【0114】
導電性構造311は、導電性構造313の下端に接続される。導電性弾性部材312は、導電性構造313の上端に接続される。かかる場合、エッジリング14と第2の可変受動素子61は、導電性弾性部材312、導電性構造313、及び導電性構造311を介して、電気的に直接接続される。
【0115】
以上、図14A図14Dに示したいずれの接続部310を用いた場合でも、接続部310を介してエッジリング14と第2の可変受動素子61を電気的に直接接続することができる。したがって、高周波電力LFの周波数を5MHz以下の低周波とすることができ、イオンエネルギーの制御性を向上させることができる。
【0116】
なお、以上の実施形態の接続部310は、絶縁材料で形成されるリフターピン300の内部に設けられているため、プラズマから保護される構成を有さなくてもよい。
【0117】
図15A図15Dはそれぞれ、駆動装置70のリフターピン400が導電材料で形成され、当該リフターピン400自体が接続部を構成する例である。
【0118】
図15Aに示すように、駆動装置70は、上記実施形態のリフターピン71、300に代えて、リフターピン400を有していてもよい。リフターピン400は、エッジリング14の下面から縦方向に延在し、静電チャック13、下部電極12、支持部材17、及びチャンバ10の底部を貫通して設けられている。リフターピン400とチャンバ10の間は、チャンバ10の内部を密閉するためにシールされている。リフターピン400は、導電材料で形成される。また、リフターピン400は、チャンバ10の外部に設けられた駆動源72によって縦方向に移動自在に構成されている。
【0119】
リフターピン400の下端には、導電性構造410が接続されている。導電性構造410は、第2の可変受動素子61に接続される。かかる場合、エッジリング14と第2の可変受動素子61は、リフターピン400と導電性構造410を介して、電気的に直接接続される。
【0120】
上記リフターピン400は、駆動装置70によってエッジリング14を上昇させた際、プラズマから保護される構成を有するのが好ましい。図15B図15Cはそれぞれ、リフターピン400のプラズマ対策の一例を示す。
【0121】
図15Bに示すように、下部電極12の上面においてリフターピン400の内側に、図11Bに示した追加エッジリング210を設けてもよい。かかる場合、追加エッジリング210によって、プラズマがリフターピン400側に回り込むのを抑制することができ、リフターピン400を保護することができる。なお、プラズマの回り込みを抑制する構成はこれに限定されず、図11A図11C図11Gのいずれかの構成を適用してもよい。
【0122】
図15Cに示すように、リフターピン400の外側面に、耐プラズマ性を有する絶縁部材401を設けてもよい。絶縁部材401は、例えば絶縁体の膜であってもよいし、絶縁体製の円筒であってもよい。かかる場合、絶縁部材401によって、プラズマからリフターピン400を保護することができる。なお、図15Bの構成において、図15Cに示した絶縁部材401を更に設けてもよい。
【0123】
以上、図15A図15Cに示したいずれの場合でも、リフターピン400を介してエッジリング14と第2の可変受動素子61を電気的に直接接続することができる。したがって、高周波電力LFの周波数を5MHz以下の低周波とすることができ、イオンエネルギーの制御性を向上させることができる。
【0124】
なお、図15A~15Cではリフターピン400自体が接続部を構成していたが、図15Dに示すようにリフターピン400の内部に、さらに導体としての接続部420を設けてもよい。接続部420は、導電性構造421と導電性弾性部材422を有していてもよい。導電性構造421は、導電性弾性部材422を介してエッジリング14と第2の可変受動素子61を接続する。具体的に導電性構造421は、その一端が第2の可変受動素子61に接続され、他端がリフターピン400の内部の上部空間にて露出し、導電性弾性部材422に接触する。なお、上記導電性構造410は、導電性構造421に含まれる。
【0125】
導電性弾性部材422は、リフターピン400の内部の上部空間に設けられる。導電性弾性部材422は、導電性構造421とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。また導電性弾性部材422は、例えば金属等の導体からなる。導電性弾性部材422の構成は特に限定されないが、例えば図10Aに示した縦方向に付勢された板バネが用いられてもよい。或いは、図10Bに示したコイルスプリング、図10Cに示したバネ、図10Dに示したピン、図10Eに示したワイヤ等が用いられてもよい。かかる場合、エッジリング14と第2の可変受動素子61は、リフターピン400に加えて、導電性弾性部材422と導電性構造421を介して、電気的に直接接続される。また、リフターピン400と導電性弾性部材422の接触による抵抗を抑制することができるので、エッジリング14と第2の可変受動素子61を更に適切に接続することができる。
【0126】
<他の実施形態>
以上の実施形態のエッチング装置1において、図16に示すように直流(DC:Direct Current)電源62、切替ユニット63、第1のRFフィルタ64、及び第2のRFフィルタ65が更に設けられていてもよい。第1のRFフィルタ64と第2のRFフィルタ65はそれぞれ、第1の可変受動素子60と第2の可変受動素子61に代えて設けられる。第1のRFフィルタ64、第2のRFフィルタ65、切替ユニット63、及び直流電源62は、エッジリング14側からこの順で配置されている。すなわち、直流電源62は、切替ユニット63、第2のRFフィルタ65、及び第1のRFフィルタ64を介して、エッジリング14に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、直流電源62が接地電位に接続される。
【0127】
直流電源62は、エッジリング14に印加される負極性の直流電圧を発生する電源である。また、直流電源62は、可変直流電源であり、直流電圧の高低を調整可能である。
【0128】
切替ユニット63は、エッジリング14に対する直流電源62からの直流電圧の印加を停止可能に構成されている。なお、切替ユニット63の回路構成は、当業者が適宜設計することができる。
【0129】
第1のRFフィルタ64と第2のRFフィルタ65はそれぞれ、高周波電力を減衰するフィルタである。第1のRFフィルタ64は、例えば第1の高周波電源50からの40MHzの高周波電力を減衰する。第2のRFフィルタ65は、例えば第2の高周波電源51からの400kHzの高周波電力を減衰する。
【0130】
一例においては、第2のRFフィルタ65は、インピーダンスが可変に構成されている。すなわち、第2のRFフィルタ65は少なくとも1つの可変受動素子を含み、インピーダンスが可変になっている。可変受動素子は、例えばコイル(インダクタ)又はコンデンサ(キャパシタ)のいずれかであってもよい。また、コイル、コンデンサに限らず、ダイオード等の素子など可変インピーダンス素子であればどのようなものであっても同様の機能を達成できる。可変受動素子の数や位置も、当業者が適宜設計することができる。さらに、素子自体が可変である必要はなく、例えば、インピーダンスが固定値の素子を複数備え、切替回路を用いて固定値の素子の組み合わせを切り替えることでインピーダンスを可変してもよい。なお、この第2のRFフィルタ65及び上記第1のRFフィルタ64の回路構成はそれぞれ、当業者が適宜設計することができる。
【0131】
また、エッチング装置1は、エッジリング14の自己バイアス電圧(又は、下部電極12もしくはウェハWの自己バイアス電圧)を測定する測定器(図示せず)を更に有していてもよい。なお、測定器の構成は、当業者が適宜設計することができる。
【0132】
次に、本実施形態のエッチング装置1を用いて、チルト角度を制御する方法について説明する。本実施形態では、上記実施形態における駆動装置70の駆動量の調整と第2のRFフィルタ65のインピーダンスの調整に加えて、直流電源62からの直流電圧を調整する。すなわち、少なくとも駆動装置70の駆動量、第2のRFフィルタ65のインピーダンス及び直流電源62からの直流電圧からなる群から選択される2つを調整して、チルト角度を制御する。図17図18はそれぞれ、本実施形態におけるチルト角度の制御方法の一例を示す。
【0133】
図17に示す例においては、先ず、第2のRFフィルタ65のインピーダンスを調整し、チルト角度を補正する。次に、インピーダンスが予め定められた値、例えば上限値に達すると、直流電源62からの直流電圧を調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。
【0134】
直流電源62では、エッジリング14に印加する直流電圧が、自己バイアス電圧Vdcの絶対値と設定値ΔVの和をその絶対値として有する負極性の電圧、すなわち、-(|Vdc|+ΔV)に設定される。自己バイアス電圧Vdcは、ウェハWの自己バイアス電圧であり、一方又は双方の高周波電力が供給されており、且つ、直流電源62からの直流電圧が下部電極12に印加されていないときの下部電極12の自己バイアス電圧である。設定値ΔVは、制御部100によって与えられる。
【0135】
制御部100は、上記実施形態における駆動装置70の駆動量の設定、第2のRFフィルタ65のインピーダンスの設定と同様に、エッジリング14の消耗量から、第2のRFフィルタ65のインピーダンスを設定する。設定値ΔVを決定する。
【0136】
制御部100は、設定値ΔVの決定において、エッジリング14の初期の厚みと、例えばレーザ測定器やカメラなどの測定器を用いて実測されたエッジリング14の厚みとの差を、エッジリング14の消耗量として用いてもよい。また、例えば質量計などの測定器によって測定されたエッジリング14の質量の変化から、エッジリング14の消耗量を推定してもよい。或いは、制御部100は、設定値ΔVの決定のために、予め定められた別の関数又はテーブルを用いて、特定のパラメータから、エッジリング14の消耗量を推定してもよい。この特定のパラメータは、自己バイアス電圧Vdc、高周波電力HF又は高周波電力LFの波高値Vpp、負荷インピーダンス、エッジリング14又はエッジリング14の周辺の電気的特性等のうちのいずれかであり得る。エッジリング14又はエッジリング14の周辺の電気特性は、エッジリング14又はエッジリング14の周辺の任意の箇所の電圧、電流値、エッジリング14を含む抵抗値等のうちいずれかであり得る。別の関数又はテーブルは、特定のパラメータとエッジリング14の消耗量の関係を定めるように予め定められている。エッジリング14の消耗量を推定するために、実際のエッチングの実行前又はエッチング装置1のメンテナンス時に、消耗量を推定するための測定条件、すなわち、高周波電力HF、高周波電力LF、処理空間S内の圧力、及び、処理空間Sに供給される処理ガスの流量等の設定の下で、エッチング装置1が動作される。そして、上記特定のパラメータが取得され、この当該特定のパラメータを上記別の関数に入力することにより、或いは、当該特定のパラメータを用いて上記テーブルを参照することにより、エッジリング14の消耗量が特定される。
【0137】
エッチング装置1では、エッチング中、すなわち、高周波電力HF及び高周波電力LFのうち一方又は双方の高周波電力が供給される期間において、直流電源62からエッジリング14に直流電圧が印加される。これにより、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。その結果、ウェハWの全領域にわたって、当該ウェハWの厚み方向に略平行な凹部が形成される。
【0138】
より詳細には、エッチング中、測定器(図示せず)によって自己バイアス電圧Vdcが測定される。また、直流電源62からエッジリング14に直流電圧が印加される。エッジリング14に印加される直流電圧の値は、上述したように-(|Vdc|+ΔV)である。|Vdc|は、直前に測定器によって取得された自己バイアス電圧Vdcの測定値の絶対値であり、ΔVは制御部100によって決定された設定値である。このようにエッチング中に測定された自己バイアス電圧Vdcからエッジリング14に印加される直流電圧が決定される。そうすると、自己バイアス電圧Vdcに変化が生じても、直流電源62によって発生される直流電圧が補正され、チルト角度が適切に補正される。
【0139】
また、図17に示す例において、第2のRFフィルタ65のインピーダンスに代えて、駆動装置70の駆動量を調整してもよい。すなわち、駆動装置70の駆動量と直流電源62からの直流電圧を調整して、チルト角度を補正してもよい。
【0140】
図18に示す例においては、先ず、第2のRFフィルタ65のインピーダンスを調整し、チルト角度を補正する。次に、インピーダンスが予め定められた値、例えば上限値に達すると、直流電源62からの直流電圧を調整し、チルト角度を補正する。
【0141】
ここで、直流電圧の絶対値を高くし過ぎると、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じる。したがって、エッジリング14に印加できる直流電圧には制限があり、直流電圧の調整だけでチルト角度を制御しようとしても、その制御範囲には限界がある。
【0142】
そこで、直流電圧の絶対値が予め定められた値、例えば上限値に達すると、駆動装置70の駆動量を調整し、チルト補正角度を目標角度θ3に調整して、チルト角度を0(ゼロ)度にする。
【0143】
以上のように本実施形態によれば、第2のRFフィルタ65のインピーダンスの調整と駆動装置70の駆動量の調整に加えて、直流電源62からの直流電圧の調整を行うことで、チルト角度の調整範囲を大きくすることができる。したがって、チルト角度を適切に制御することができ、すなわち、イオンの入射方向を適切に調整することができるので、エッチングを均一に行うことができる。
【0144】
なお、チルト角度を制御するにあたり、第2のRFフィルタ65のインピーダンスの調整、駆動装置70の駆動量の調整、直流電源62からの直流電圧の組み合わせは任意に設計することができる。
【0145】
また、第2のRFフィルタ65のインピーダンスの調整、駆動装置70の駆動量の調整、直流電源62からの直流電圧はそれぞれ個別に行ったが、これら調整を同時に行ってもよい。
【0146】
以上の実施形態では、直流電源62は、切替ユニット63、第2のRFフィルタ65、及び第1のRFフィルタ64を介して、エッジリング14に接続されていたが、エッジリング14に直流電圧を印加する電源系はこれに限定されない。例えば、直流電源62は、切替ユニット63、第2のRFフィルタ65、第1のRFフィルタ64、及び下部電極12を介して、エッジリング14に電気的に接続されていてもよい。かかる場合、下部電極12とエッジリング14は直接電気的に結合し、エッジリング14の自己バイアス電圧は下部電極12の自己バイアス電圧と同じになる。
【0147】
ここで、下部電極12とエッジリング14が直接電気的に結合している場合、例えばハード構造で決定されるエッジリング14下の容量等により、エッジリング14上のシース厚みを調整できず、直流電圧を印加していないにも関わらずアウターチルトの状態が起こり得る。この点、本開示では、直流電源62からの直流電圧と、第2のRFフィルタ65のインピーダンスと、駆動装置70の駆動量とを調整して、チルト角度を制御することができるので、当該チルト角度をインナー側に変化させることで、チルト角度を0(ゼロ)度に調整することができる。
【0148】
なお、以上の実施形態では、第2のRFフィルタ65のインピーダンスを可変にしたが、第1のRFフィルタ64のインピーダンスを可変にしてもよいし、RFフィルタ64、65の両方のインピーダンスを可変にしてもよい。かかる場合、第1のRFフィルタ64は、少なくとも1つの可変受動素子を含む。また、以上の実施形態では、直流電源62に対して2つのRFフィルタ64、65を設けたが、RFフィルタの数はこれに限定されず、例えば1つであってもよい。また、以上の実施形態では、第2のRFフィルタ65(第1のRFフィルタ64)は少なくとも1つの可変受動素子を含むことでインピーダンスを可変としたが、インピーダンスを可変とする構成はこれに限定されない。例えば、インピーダンス可変又は固定のRFフィルタに、当該RFフィルタのインピーダンスを可能可能なデバイスを接続してもよい。すなわち、インピーダンスが可変のRFフィルタは、RFフィルタと、このRFフィルタと接続し、このRFフィルタのインピーダンスを変可能なデバイスとによって構成されてもよい。また、RFフィルタは少なくとも1つの可変受動素子を含むことでインピーダンスを可変としたが、RFフィルタにはインピーダンスが可変でないものを用いて、RFフィルタの外部に可変受動素子を設けてもよい。
【0149】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、エッジリング14の消耗量に応じて、駆動装置70の駆動量の調整、第2の可変受動素子61(第2のRFフィルタ65)のインピーダンスの調整、直流電源62からの直流電圧の調整を行ったが、駆動量、インピーダンス、直流電圧の調整タイミングはこれに限定されない。例えばウェハWの処理時間に応じて、駆動量、インピーダンス、直流電圧の調整を行ってもよい。或いは、例えばウェハWの処理時間と、例えば高周波電力等の予め定められたパラメータとを組み合わせて、駆動量、インピーダンス、直流電圧の調整タイミングを判断してもよい。
【0150】
<他の実施形態>
以上の実施形態のエッチング装置1は容量結合型のエッチング装置であったが、本開示が適用されるエッチング装置はこれに限定されない。例えばエッチング装置は、誘導結合型のエッチング装置であってもよい。
【0151】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0152】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0153】
(付記1)
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持体であり、前記基板支持体は、下部電極と、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置されるエッジリングとを含む、基板支持体と、
前記エッジリングを縦方向に移動させるように構成される駆動装置と、
前記基板支持体の上方に配置される上部電極と、
前記プラズマ処理チャンバ内のガスからプラズマを生成するためにソースRF電力を前記上部電極又は前記下部電極に供給するように構成されるソースRF電源と、
バイアスRF電力を前記下部電極に供給するように構成されるバイアスRF電源と、
前記エッジリングと接触する少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体を介して前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加するように構成される直流電源と、
前記少なくとも1つの導体と前記直流電源との間に電気的に接続され、少なくとも1つの可変受動素子を含むRFフィルタと、
前記駆動装置及び前記少なくとも1つの可変受動素子を制御して、前記静電チャック上に載置された基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整するように構成される制御部と、
備える、プラズマ処理装置。
【0154】
(付記2)
前記駆動装置は、
前記エッジリングを支持するように構成されるリフターピンと、
前記リフターピンを縦方向に移動させるように構成される駆動源と、を備える、付記1に記載のプラズマ処理装置。
【0155】
(付記3)
前記リフターピンは、少なくとも表面が絶縁材料で形成される、付記2に記載のプラズマ処理装置。
【0156】
(付記4)
前記少なくとも1つの導体は、前記リフターピン内で縦方向に延在する導電性ワイヤを含み、
前記導電性ワイヤの一端は、前記エッジリングと接触している、付記3に記載のプラズマ処理装置。
【0157】
(付記5)
前記少なくとも1つの導体は、前記エッジリングと接触する導電性弾性部材を含む、付記3に記載のプラズマ処理装置。
【0158】
(付記6)
前記導電性弾性部材は、前記リフターピン内に配置される、付記5に記載のプラズマ処理装置。
【0159】
(付記7)
前記導電性弾性部材は、前記エッジリングと前記静電チャックとの間に配置される、付記5に記載のプラズマ処理装置。
【0160】
(付記8)
前記エッジリングと前記静電チャックとの間に配置される追加のエッジリングをさらに備える、付記7に記載のプラズマ処理装置。
【0161】
(付記9)
前記追加のエッジリングは、絶縁材料で形成され、前記導電性弾性部材よりも内側に配置される、付記8に記載のプラズマ処理装置。
【0162】
(付記10)
前記エッジリングは、その下面に突起部を有する、付記9に記載のプラズマ処理装置。
【0163】
(付記11)
前記追加のエッジリングは、導電性材料で形成され、
前記導電性弾性部材は、前記エッジリングと前記追加のエッジリングとの間に配置される、付記8に記載のプラズマ処理装置。
【0164】
(付記12)
前記エッジリングは、前記少なくとも1つの導体と接触する少なくとも1つの導電膜を有する、付記1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0165】
(付記13)
前記少なくとも1つの導体は、平面視で前記エッジリングの周方向に沿って等間隔に配置される複数の導体を含む、付記1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0166】
(付記14)
前記エッジリングは、導電性を有する、付記1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0167】
(付記15)
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持体であり、前記基板支持体は、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置されるエッジリングとを含む、基板支持体と、
前記エッジリングを縦方向に移動させるように構成される駆動装置と、
前記プラズマ処理チャンバ内のガスからプラズマを生成するためにRF電力を生成するように構成されるRF電源と、
前記エッジリングと接触する少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体に電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
前記駆動装置及び前記少なくとも1つの可変受動素子を制御して、前記静電チャック上に載置された基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整するように構成される制御部と、
備える、プラズマ処理装置。
【0168】
(付記16)
前記駆動装置は、
前記エッジリングを支持するように構成されるリフターピンと、
前記リフターピンを縦方向に移動させるように構成される駆動源と、を備える、付記15に記載のプラズマ処理装置。
【0169】
(付記17)
前記リフターピンは、少なくとも表面が絶縁材料で形成される、付記16に記載のプラズマ処理装置。
【0170】
(付記18)
前記少なくとも1つの導体は、前記リフターピン内で縦方向に延在する導電性ワイヤを含み、
前記導電性ワイヤの一端は、前記エッジリングと電気的且つ物理的に接続される、付記17に記載のプラズマ処理装置。
【0171】
(付記19)
プラズマ処理装置を用いたエッチング方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持体であり、前記基板支持体は、静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように配置されるエッジリングとを含む、基板支持体と、
前記エッジリングと電気的且つ物理的に接続される少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体に電気的に接続される少なくとも1つの可変受動素子と、
を備え、
前記エッチング方法は、
(a)基板を前記静電チャック上に載置する工程と、
(b)前記プラズマ処理チャンバ内のガスからプラズマを生成する工程と、
(c)生成されたプラズマで前記基板をエッチングする工程と、
(d)前記基板のエッジ領域に対する前記プラズマ中のイオンの入射角度を調整する工程であり、前記調整する工程は、
(d1)前記エッジリングを縦方向に移動させる工程と、
(d2)前記少なくとも1つの可変受動素子を調整する工程と、
を含む、工程と、
を含む、エッチング方法。
【符号の説明】
【0172】
1 エッチング装置
10 チャンバ
11 ステージ
12 下部電極
13 静電チャック
14 エッジリング
21 電極板
50 第1の高周波電源
51 第2の高周波電源
62 直流電源
64 第1のRFフィルタ
65 第2のRFフィルタ
70 駆動装置
100 制御部
200 接続部
310 接続部
420 接続部
W ウェハ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
図18