(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027850
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】剥離方法、剥離装置および剥離システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230224BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133172
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 尚司
(72)【発明者】
【氏名】三村 勇之
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】野田 和孝
(72)【発明者】
【氏名】本田 勝
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亮一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 穣
(72)【発明者】
【氏名】北山 殖也
(72)【発明者】
【氏名】福冨 亮
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA22
5F131BA37
5F131BA60
5F131CA22
5F131CA23
5F131CA32
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131EA06
5F131EA07
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB01
5F131EB03
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB89
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】剥離処理を効率化することができる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による剥離方法は、保持する工程と、剥離する工程と、を含む。保持する工程は、第1基板と第2基板とが接合された重合基板を保持する。剥離する工程は、重合基板の側面を起点にして重合基板から第1基板を剥離する。また、剥離する工程は、側面に対して水を含む流体を接触させる工程を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板とが接合された重合基板を保持する工程と、
前記重合基板の側面を起点にして前記重合基板から前記第1基板を剥離する工程と、
を含み、
前記剥離する工程は、前記側面に対して水を含む流体を接触させる工程を含む
剥離方法。
【請求項2】
前記水を含む流体は、水蒸気である
請求項1に記載の剥離方法。
【請求項3】
前記水を含む流体は、液体である
請求項1に記載の剥離方法。
【請求項4】
前記剥離する工程は、前記水を含む流体を複数のノズルから吐出しながら行う
請求項1~3のいずれか一つに記載の剥離方法。
【請求項5】
前記剥離する工程は、
前記側面に対して前記水を含む流体をノズルから供給する工程と、
前記水を含む流体が供給された前記側面に刃部を押し付ける工程と、を含む
請求項1~4のいずれか一つに記載の剥離方法。
【請求項6】
前記剥離する工程は、貯留された前記水を含む流体に前記重合基板を浸漬して行う
請求項3に記載の剥離方法。
【請求項7】
前記水を含む流体は、加熱されている
請求項1~6のいずれか一つに記載の剥離方法。
【請求項8】
前記重合基板において、前記第1基板と前記第2基板とは分子間力で接合される
請求項1~7のいずれか一つに記載の剥離方法。
【請求項9】
第1基板と第2基板とが接合された重合基板のうち前記第1基板を保持し、前記第1基板を前記第2基板から離す方向へ移動させる第1保持部と、
前記重合基板のうち前記第2基板を保持する第2保持部と、
前記重合基板の側面に水を含む流体を供給する流体供給部と、
各部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記重合基板を前記第1保持部および前記第2保持部で保持し、
前記流体供給部で前記側面に対して前記水を含む流体を接触させながら、前記側面を起点にして前記重合基板から前記第1基板を剥離する
剥離装置。
【請求項10】
前記流体供給部は、前記水を含む流体を吐出する複数のノズルを有する
請求項9に記載の剥離装置。
【請求項11】
前記流体供給部は、前記水を含む流体を貯留する貯留槽を有する
請求項9に記載の剥離装置。
【請求項12】
前記流体供給部は、前記水を含む流体を加熱する加熱部を有する
請求項9~11のいずれか一つに記載の剥離装置。
【請求項13】
前記第2保持部を回転させる基板回転部をさらに備える
請求項9~12のいずれか一つに記載の剥離装置。
【請求項14】
第1基板と第2基板とが接合された重合基板から前記第1基板を剥離する剥離装置と、
剥離後の前記第1基板および前記第2基板を洗浄する洗浄装置と、
を備え、
前記剥離装置は、
第1基板と第2基板とが接合された重合基板のうち前記第1基板を保持し、前記第1基板を前記第2基板から離す方向へ移動させる第1保持部と、
前記重合基板のうち前記第2基板を保持する第2保持部と、
前記第2保持部を回転させる基板回転部と、
前記重合基板の側面に水を含む流体を供給する流体供給部と、
各部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記重合基板を前記第1保持部および前記第2保持部で保持し、
前記流体供給部で前記側面に対して前記水を含む流体を接触させながら、前記側面を起点にして前記重合基板から前記第1基板を剥離する
剥離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、剥離方法、剥離装置および剥離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえば、半導体デバイスの製造工程において、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板の大口径化および薄型化が進んでいる。大口径で薄い半導体基板は、搬送時や研磨処理時に反りや割れが生じるおそれがある。このため、半導体基板に支持基板を貼り合わせて補強した後に、搬送や研磨処理を行い、その後、支持基板を半導体基板から剥離する処理が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、剥離処理を効率化することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による剥離方法は、保持する工程と、剥離する工程と、を含む。保持する工程は、第1基板と第2基板とが接合された重合基板を保持する。剥離する工程は、前記重合基板の側面を起点にして前記重合基板から前記第1基板を剥離する。また、前記剥離する工程は、前記側面に対して水を含む流体を接触させる工程を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、剥離処理を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る重合基板の模式側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る第1保持部の模式平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る剥離装置が実行する剥離処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る剥離処理の一工程を示す拡大側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る剥離処理の一工程を示す拡大側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る剥離処理における接合部の状態の変化を説明するための図である。
【
図9】
図9は、剥離処理において重合基板に水分が供給される場合および水分が供給されない場合での接合強度の違いを示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る剥離処理の一工程を示す拡大側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る剥離処理の一工程を示す拡大側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例1に係る剥離処理の一工程を示す拡大側面図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例1に係る剥離処理の一工程を示す模式平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態の変形例2に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する剥離方法、剥離装置および剥離システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0009】
近年、たとえば、半導体デバイスの製造工程において、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板の大口径化および薄型化が進んでいる。大口径で薄い半導体基板は、搬送時や研磨処理時に反りや割れが生じるおそれがある。このため、半導体基板に支持基板を貼り合わせて補強した後に、搬送や研磨処理を行い、その後、支持基板を半導体基板から剥離する処理が行われている。
【0010】
また近年、基板同士が接着剤で貼り合わされた重合基板に加えて、基板同士がファンデルワールス力および水素結合(すなわち、分子間力)で接合された重合基板が多く用いられている。一方で、このような接合強度が高い重合基板から、一方の基板を剥離する処理を効率よく行う技術についてはさらなる改善の余地があった。
【0011】
そこで、上述の問題点を克服し、剥離処理を効率化することができる技術の実現が期待されている。
【0012】
<剥離システムの構成>
まず、実施形態に係る剥離システム1の構成について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る剥離システム1の構成を示す模式平面図である。また、
図2は、実施形態に係る重合基板Tの模式側面図である。
【0013】
なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0014】
図1に示す剥離システム1は、たとえば、
図2に示す第1基板W1と第2基板W2とが分子間力で接合された重合基板Tから、第1基板W1を剥離する。以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」と記載する。すなわち、上ウェハW1は第1基板の一例であり、下ウェハW2は第2基板の一例である。
【0015】
また、以下では、
図2に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0016】
第1基板W1は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
【0017】
図1に示すように、剥離システム1は、第1処理ブロック10および第2処理ブロック20の2つの処理ブロックを備える。第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とは、隣接して配置される。
【0018】
第1処理ブロック10では、重合基板Tの搬入、重合基板Tの剥離処理、剥離後の下ウェハW2の洗浄および搬出などが行われる。かかる第1処理ブロック10は、搬入出ステーション11と、第1搬送領域12と、待機ステーション13と、剥離ステーション14と、第1洗浄ステーション15とを備える。
【0019】
搬入出ステーション11、待機ステーション13、剥離ステーション14および第1洗浄ステーション15は、第1搬送領域12に隣接して配置される。具体的には、搬入出ステーション11と待機ステーション13とは、第1搬送領域12のY軸負方向側に並べて配置され、剥離ステーション14と第1洗浄ステーション15とは、第1搬送領域12のY軸正方向側に並べて配置される。
【0020】
搬入出ステーション11には、複数のカセット載置台が設けられており、各カセット載置台には、重合基板Tが収容されるカセットCtおよび剥離後の下ウェハW2が収容されるカセットC2が載置される。
【0021】
第1搬送領域12には、重合基板Tまたは剥離後の下ウェハW2の搬送を行う第1搬送装置121が配置される。第1搬送装置121は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える。
【0022】
第1搬送領域12では、かかる第1搬送装置121により、重合基板Tを待機ステーション13および剥離ステーション14へ搬送する処理や、剥離後の下ウェハW2を第1洗浄ステーション15および搬入出ステーション11へ搬送する処理が行われる。
【0023】
待機ステーション13では、処理待ちの重合基板Tを一時的に待機させておく待機処理が必要に応じて行われる。かかる待機ステーション13には、第1搬送装置121によって搬送された重合基板Tが載置される載置台が設けられる。
【0024】
剥離ステーション14には、剥離装置5(
図3参照)が配置され、かかる剥離装置5によって、重合基板Tから上ウェハW1を剥離する剥離処理が行われる。剥離装置5の具体的な構成および動作については、後述する。
【0025】
第1洗浄ステーション15では、剥離後の下ウェハW2の洗浄処理が行われる。第1洗浄ステーション15には、剥離後の上ウェハW1を洗浄する第1洗浄装置が配置される。第1洗浄装置としては、たとえば特開2013-033925号公報に記載の洗浄装置を用いることができる。
【0026】
また、第2処理ブロック20では、剥離後の上ウェハW1の洗浄および搬出などが行われる。かかる第2処理ブロック20は、受渡ステーション21と、第2洗浄ステーション22と、第2搬送領域23と、搬出ステーション24とを備える。第2洗浄ステーション22は、洗浄装置の一例である。
【0027】
受渡ステーション21、第2洗浄ステーション22および搬出ステーション24は、第2搬送領域23に隣接して配置される。具体的には、受渡ステーション21と第2洗浄ステーション22とは、第2搬送領域23のY軸正方向側に並べて配置され、搬出ステーション24は、第2搬送領域23のY軸負方向側に並べて配置される。
【0028】
受渡ステーション21は、第1処理ブロック10の剥離ステーション14に隣接して配置される。かかる受渡ステーション21では、剥離ステーション14から剥離後の上ウェハW1を受け取って第2洗浄ステーション22へ渡す受渡処理が行われる。
【0029】
受渡ステーション21には、第2搬送装置211が配置される。第2搬送装置211は、たとえばベルヌーイチャックなどの非接触保持部を有しており、剥離後の上ウェハW1は、かかる第2搬送装置211によって非接触で搬送される。
【0030】
第2洗浄ステーション22では、剥離後の上ウェハW1を洗浄する第2洗浄処理が行われる。かかる第2洗浄ステーション22には、剥離後の上ウェハW1を洗浄する第2洗浄装置が配置される。第2洗浄装置としては、たとえば特開2013-033925号公報に記載の洗浄装置を用いることができる。
【0031】
第2搬送領域23には、剥離後の上ウェハW1の搬送を行う第3搬送装置231が配置される。第3搬送装置231は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える。第2搬送領域23では、かかる第3搬送装置231により、剥離後の上ウェハW1を搬出ステーション24へ搬送する処理が行われる。
【0032】
搬出ステーション24には、複数のカセット載置台が設けられており、各カセット載置台には、剥離後の上ウェハW1が収容されるカセットC1が載置される。
【0033】
また、剥離システム1は、制御装置30を備える。制御装置30は、剥離システム1の動作を制御する。かかる制御装置30は、たとえばコンピュータであり、制御部31および記憶部32を備える。記憶部32には、接合処理などの各種処理を制御するプログラムが格納される。制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。
【0034】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置30の記憶部32にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0035】
上記のように構成された剥離システム1では、まず、第1処理ブロック10の第1搬送装置121が、搬入出ステーション11に載置されたカセットCtから重合基板Tを取り出し、取り出した重合基板Tを待機ステーション13へ搬入する。
【0036】
たとえば、装置間の処理時間差などにより処理待ちの重合基板Tが生じる場合には、待機ステーション13に設けられた一時待機部を用いて重合基板Tを一時的に待機させておくことができ、一連の工程間でのロス時間を短縮することができる。
【0037】
つづいて、重合基板Tは、第1搬送装置121によって待機ステーション13から取り出されて、剥離ステーション14へ搬入される。そして、剥離ステーション14に配置された剥離装置5が、重合基板Tに対して剥離処理を行う。かかる剥離処理により、重合基板Tは、上ウェハW1と下ウェハW2とに分離される。
【0038】
剥離後の下ウェハW2は、第1搬送装置121によって剥離ステーション14から取り出されて、第1洗浄ステーション15へ搬入される。第1洗浄ステーション15では、第1洗浄装置が、剥離後の下ウェハW2に対して第1洗浄処理を行う。かかる第1洗浄処理によって、下ウェハW2の接合面W2jが洗浄される。
【0039】
第1洗浄処理後の下ウェハW2は、第1搬送装置121によって第1洗浄ステーション15から取り出されて、搬入出ステーション11に載置されたカセットC2に収容される。その後、カセットC2は、搬入出ステーション11から取り出され、回収される。こうして、下ウェハW2についての処理が終了する。
【0040】
一方、第2処理ブロック20では、上述した第1処理ブロック10における処理と並行して、剥離後の上ウェハW1に対する処理が行われる。
【0041】
第2処理ブロック20では、まず、受渡ステーション21に配置された第2搬送装置211が、剥離後の上ウェハW1を剥離ステーション14から取り出して、第2洗浄ステーション22へ搬入する。
【0042】
ここで、剥離後の上ウェハW1は、剥離装置5によって上面側すなわち非接合面W1n側が保持された状態となっており、第2搬送装置211は、上ウェハW1の接合面W1j側を下方から非接触で保持する。その後、第2搬送装置211は、保持した上ウェハW1を反転させたうえで、第2洗浄ステーション22の第2洗浄装置へ載置する。
【0043】
これにより、上ウェハW1は、接合面W1jを上方に向けた状態で第2洗浄装置に載置される。そして、第2洗浄装置は、上ウェハW1の接合面W1jを洗浄する第2洗浄処理を行う。かかる第2洗浄処理により、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される。
【0044】
第2洗浄処理後の上ウェハW1は、第2搬送領域23に配置された第3搬送装置231によって第2洗浄ステーション22から取り出されて、搬出ステーション24に載置されたカセットC1に収容される。その後、カセットC1は、搬出ステーション24から取り出され、回収される。こうして、上ウェハW1についての処理も終了する。
【0045】
このように、実施形態に係る剥離システム1は、重合基板Tおよび剥離後の下ウェハW2用のフロントエンドと、剥離後の上ウェハW1用のフロントエンドとを備える構成とした。
【0046】
ここで、重合基板Tおよび剥離後の下ウェハW2用のフロントエンドとは、搬入出ステーション11および第1搬送装置121のことであり、剥離後の上ウェハW1用のフロントエンドとは、搬出ステーション24および第3搬送装置231のことである。
【0047】
これにより、上ウェハW1を搬入出ステーション11へ搬送する処理と、下ウェハW2を搬出ステーション24へ搬送する処理とを並列に行うことが可能となるため、一連の基板処理を効率的に行うことができる。
【0048】
また、実施形態に係る剥離システム1では、剥離ステーション14と第2洗浄ステーション22とが受渡ステーション21を介して接続される。これにより、第1搬送領域12や第2搬送領域23を経由することなく、剥離後の上ウェハW1を剥離ステーション14から第2洗浄ステーション22へ直接搬入することが可能となるため、剥離後の上ウェハW1の搬送をスムーズに行うことができる。
【0049】
<剥離装置の構成>
次に、剥離ステーション14に設置される剥離装置5の構成について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係る剥離装置5の構成を示す模式側面図である。
【0050】
図3に示すように、剥離装置5は、処理室100を備える。処理室100の側面には、搬入出口(図示せず)が設けられる。搬入出口は、第1搬送領域12(
図1参照)側と受渡ステーション21(
図1参照)側とにそれぞれ設けられる。
【0051】
剥離装置5は、第1保持部50と、移動部60と、第2保持部70と、剥離誘引部80と、流体供給部90とを備え、これらは処理室100の内部に配置される。
【0052】
剥離装置5は、重合基板Tの上ウェハW1側を第1保持部50によって上方から吸着保持し、重合基板Tの下ウェハW2側を第2保持部70によって下方から吸着保持する。そして、剥離装置5は、移動部60により、上ウェハW1を下ウェハW2の板面から離す方向へ移動させる。
【0053】
これにより、第1保持部に保持された上ウェハW1が、その一端から他端へ向けて下ウェハW2から連続的に剥離する。以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0054】
第1保持部50は、弾性部材51と、複数の吸着部52とを備える。弾性部材51は、薄板状の部材であり、たとえば板金などの金属で形成される。かかる弾性部材51は、上ウェハW1の上方において上ウェハW1と対向配置される。
【0055】
複数の吸着部52は、弾性部材51における上ウェハW1との対向面に設けられる。各吸着部52は、弾性部材51に固定される本体部521と、この本体部521の下部に設けられる吸着パッド522とを備える。
【0056】
各吸着部52は、吸気管523を介して真空ポンプなどの吸気装置524に接続される。第1保持部50は、吸気装置524が発生させる吸引力により、複数の吸着部52で上ウェハW1の非接合面W1n(
図2参照)を吸着する。これにより、上ウェハW1は、第1保持部50に吸着保持される。
【0057】
なお、吸着部52が備える吸着パッド522としては、変形量の少ないタイプのものが好ましい。これは、後述する移動部60が第1保持部50を引っ張った際に吸着パッド522が大きく変形すると、かかる変形に伴って上ウェハW1の被吸着部分が大きく変形し、上ウェハW1あるいは下ウェハW2がダメージを受けるおそれがあるためである。
【0058】
具体的には、吸着パッド522としては、たとえば、吸着面にリブを有するものや、空間の高さが0.5mm以下のフラットパッドなどを用いることが好ましい。
【0059】
ここで、第1保持部50の構成について
図4を参照しながらより具体的に説明する。
図4は、実施形態に係る第1保持部50の模式平面図である。
【0060】
図4に示すように、第1保持部50が備える複数の吸着部52は、弾性部材51に対して円環状に並べて配置されており、上ウェハW1の外周部と対向し、上ウェハW1の外周部をそれぞれ吸着する。ここでは、弾性部材51に対して8個の吸着部52が設けられる場合の例を示したが、弾性部材51に設けられる吸着部52の個数は、8個に限定されない。
【0061】
これら複数の吸着部52のうち、剥離の最も起点側(ここでは、X軸負方向側)に配置される吸着部52は、後述する剥離誘引部80(
図3参照)の刃部81(
図3参照)が当接する部位に近接する位置に配置される。換言すると、剥離誘引部80の刃部81は、X軸負方向側に配置される吸着部52の近傍で重合基板Tの側面に当接する。
【0062】
弾性部材51は、本体部511と、延在部512とを備える。本体部511は、外径が上ウェハW1と略同径であり、かつ、中央部が中空である円環状の枠体である。複数の吸着部52は、かかる本体部511の下面すなわち上ウェハW1との対向面に、本体部511の形状に沿って円環状に並べられる。
【0063】
延在部512は、本体部511の外周部のうち、剥離の最も起点側に位置する外周部(ここでは、X軸負方向側の外周部)の一部を剥離の進行方向とは反対側(X軸負方向側)へ向けて延在させた部位である。そして、かかる延在部512の先端に移動部60の支柱部材61が接続される。
【0064】
図3に戻り、剥離装置5のその他の構成について説明する。移動部60は、支柱部材61と、移動機構62と、ロードセル63とを備える。
【0065】
支柱部材61は、鉛直方向(Z軸方向)に延在する部材であり、一端部が弾性部材51の延在部512(
図4参照)に接続され、他端部が上側ベース部103を介して移動機構62に接続される。
【0066】
移動機構62は、上側ベース部103の上部に固定され、下部に接続される支柱部材61を鉛直方向に移動させる。ロードセル63は、支柱部材61にかかる負荷を検出する。
【0067】
かかる移動部60は、移動機構62を用いて支柱部材61を鉛直上方に移動させることにより、支柱部材61に接続された第1保持部50を引っ張り上げる。この際、移動部60は、ロードセル63による検出結果に基づき、上ウェハW1にかかる力を制御しながら、第1保持部50を引っ張ることができる。
【0068】
ここで、
図4に示すように、引き上げの力点となる支柱部材61は、引き上げの支点となる吸着部52、すなわち、剥離の最も起点側(ここでは、X軸負方向側)に配置される吸着部52よりも剥離の進行方向の反対側に配置される。
【0069】
したがって、引き上げの作用点となる重合基板Tの側面(剥離の起点となる部位)には、
図3において時計回りの回転力(モーメント)が発生する。これにより、移動部60は、上ウェハW1をその外縁部からめくり上げるようにして引っ張ることができ、上ウェハW1を下ウェハW2から効率的に剥離させることができる。
【0070】
なお、第1保持部50は、移動部60によって支持され、移動部60は、上側ベース部103によって支持される。また、上側ベース部103は、処理室100の天井部に取り付けられた固定部材101に支柱102を介して支持される。
【0071】
第2保持部70は、第1保持部50の下方に配置され、重合基板Tの下ウェハW2側を吸着保持する。かかる第2保持部70は、円板形状の本体部71と、本体部71を支持する支柱部材72とを備える。
【0072】
本体部71は、たとえば、アルミニウムなどの金属部材で形成される。かかる本体部71の上面には、吸着面73が設けられる。吸着面73は、多孔質体であり、たとえばPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などの樹脂部材で形成される。
【0073】
本体部71の内部には、吸着面73を介して外部と連通する吸引空間74が形成される。吸引空間74は、吸気管711を介して真空ポンプなどの吸気装置712と接続される。かかる第2保持部70は、吸気装置712の吸気によって発生する負圧を利用し、下ウェハW2の非接合面W2n(
図2参照)を吸着面73に吸着させることによって、重合基板Tを吸着保持する。
【0074】
本体部71の吸着面73は、下ウェハW2と略等しい径に形成される。これにより、後述する流体L(
図6参照)が重合基板Tの側面に供給される際に、かかる流体Lが吸着面73から吸引されることを抑制することができる。
【0075】
また、下ウェハW2との吸着面に溝などの非吸着部が形成されていると、かかる非吸着部において下ウェハW2にクラックが発生するおそれがある。そこで、本体部71の吸着面73は、溝などの非吸着部を有しない平坦面とした。これにより、下ウェハW2にクラックが発生することを防止することができる。
【0076】
さらに、吸着面73をPCTFEなどの樹脂部材で形成することとしたため、下ウェハW2へのダメージを更に抑えることができる。
【0077】
また、本体部71における吸着面73よりも外周側には、溝状のドレイン75が設けられる。ドレイン75は、排液管751を介して排液装置752と接続される。これにより、流体Lが重合基板Tの側面に供給される際に、かかる流体Lが本体部71から溢れることを抑制することができる。
【0078】
第2保持部70は、処理室100の床面に固定された回転昇降機構104によって支持される。回転昇降機構104は、基板回転部の一例であり、支柱部材72を鉛直軸回りに回転させることにより、第2保持部70を回転させる。また、回転昇降機構104は、支柱部材72を鉛直方向に移動させることにより、第2保持部70を昇降させる。
【0079】
第2保持部70の外方には、剥離誘引部80が配置される。かかる剥離誘引部80は、上ウェハW1が下ウェハW2から剥離される起点となる部位を重合基板Tの側面に形成する。
【0080】
剥離誘引部80は、刃部81と、移動機構82と、昇降機構83とを備える。刃部81は、たとえば平刃であり、刃先が重合基板Tへ向けて突出するように移動機構82に支持される。
【0081】
移動機構82は、X軸方向に延在するレールに沿って刃部81を移動させる。昇降機構83は、たとえば上側ベース部103に固定され、移動機構82を鉛直方向に移動させる。これにより、刃部81の高さ位置、すなわち、重合基板Tの側面への当接位置が調節される。
【0082】
かかる剥離誘引部80は、昇降機構83を用いて刃部81の高さ位置を調節した後、移動機構82を用いて刃部81を水平方向(ここでは、X軸正方向)へ移動させる。さらに剥離誘引部80は、刃部81を重合基板Tの側面に露出する上ウェハW1と下ウェハW2との接合部に当接させる。これにより、重合基板Tに、上ウェハW1を下ウェハW2から剥離する起点となる部位が形成される。
【0083】
また、第2保持部70の外方には、流体供給部90が配置される。かかる流体供給部90は、水(H2O)を含んだ流体Lを重合基板Tの側面に供給する。たとえば、流体供給部90は、重合基板Tの側面のうち、剥離誘引部80の刃部81が当接する部位およびその近傍に流体Lを供給する。
【0084】
流体供給部90は、ノズル91と、図示しない移動機構とを有する。ノズル91は、流体Lを吐出する。移動機構は、ノズル91を鉛直方向および水平方向に移動可能に構成される。
【0085】
<剥離処理の詳細>
次に、剥離装置5による剥離処理の詳細について、
図5~
図11を参照しながら説明する。
図5は、実施形態に係る剥離装置5が実行する剥離処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、剥離装置5は、制御装置30(
図1参照)の制御部31(
図1参照)の制御に基づき、
図5に示す各処理手順を実行する。
【0086】
まず、制御部31は、重合基板Tを処理室100に搬入し、
図6に示すように、重合基板Tの下ウェハW2側を第2保持部70で保持するとともに、重合基板Tの上ウェハW1側を第1保持部50で保持する(ステップS101)。
【0087】
次に、制御部31は、流体供給部90を制御して、重合基板Tの側面に流体Lを供給する(ステップS102)。これにより、制御部31は、
図6に示すように、第1保持部50および第2保持部70に保持された重合基板Tの側面に流体Lを接触させる。
【0088】
なお、かかるステップS102の処理において、制御部31は、X軸負方向側に配置される吸着部52の近傍に位置する重合基板Tの側面に流体Lを接触させる。
【0089】
次に、制御部31は、
図7に示すように、剥離誘引部80を制御して、流体Lが接触する重合基板Tの側面に刃部81を押し付けて、かかる重合基板Tにおける上ウェハW1と下ウェハW2との接合部に刃部81を挿入する(ステップS103)。
【0090】
すなわち、ステップS103の処理において、制御部31は、X軸負方向側に配置される吸着部52の近傍に位置する重合基板Tの側面に刃部81を押し付ける。
【0091】
ここで、刃部81を用いて重合基板Tから上ウェハW1を剥離する際に、流体Lが与える効果について、
図8および
図9を用いて説明する。
図8は、実施形態に係る剥離処理における接合部の状態の変化を説明するための図である。
【0092】
図8の(a)に示すように、実施形態に係る重合基板Tにおいて、上ウェハW1と下ウェハW2とは、シロキサン結合(Si-O-Si)で接合されている。一方で、刃部81が挿入される際に、かかる接合部にストレスが加わることにより、
図8の(b)に示すように、流体Lに含まれる水分子(H
2O)と、シロキサン結合とが反応する。
【0093】
そして、上ウェハW1と下ウェハW2との接合部でシロキサン結合と水分子とが反応することにより、
図8の(c)に示すように、シロキサン結合が切断されるため、かかる接合部での接合強度が低減する。
【0094】
図9は、剥離処理において重合基板Tに水分が供給される場合および水分が供給されない場合での接合強度の違いを示す図である。なお、
図9では、接合面W1j、W2jの膜種(SiCN、TEOS酸化膜、ThO
x(熱酸化膜))および接合時に接合面W1j、W2jを前処理する際のプラズマの種類(O
2、N
2)についても示している。
【0095】
図9に示す結果から、さまざまな状態の接合部を有する重合基板Tに対して、水を含む流体Lが供給されることにより、剥離処理時の接合強度が低減されていることがわかる。
【0096】
図5の説明に戻る。制御部31は、上述したステップS103の処理と並行して、移動部60(
図3参照)を動作させる(ステップS104)。具体的には、制御部31は、
図10に示すように、第1保持部50の外周部の一部、具体的には、弾性部材51の延在部512(
図4参照)を第2保持部70から離す方向に移動させる。
【0097】
これにより、刃部81を挿入した部位の近傍に配置される吸着部52が上方に引っ張られて、刃部81が挿入された部位を起点として上ウェハW1が重合基板Tから剥離し始める。
【0098】
さらに、
図10に示すように、上ウェハW1が重合基板Tから剥離し始めた後、流体Lは毛細管現象で上ウェハW1と下ウェハW2との接合部の奥側に徐々に浸透する。これにより、
図8で示した化学反応が接合部の奥側でも発生するため、接合部の奥側でも接合強度を低減させることができる。
【0099】
その後、制御部31は、上ウェハW1と下ウェハW2との接合部に刃部81を挿入するとともに、移動部60を動作させて第1保持部50をさらに引っ張り上げる。これにより、上ウェハW1におけるX軸負方向側の端部からX軸正方向側の端部へ向けて剥離が連続的に進行していき、最終的には、
図11に示すように、上ウェハW1が重合基板T(
図10参照)から剥離する。これにより、一連の剥離処理が終了する。
【0100】
ここまで説明したように、実施形態では、移動部60および刃部81を用いて上ウェハW1を重合基板Tから剥離する際に、重合基板Tの側面に対して水を含む流体Lを接触させる。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2との接合強度を低減させながら剥離処理を行うことができることから、剥離処理を効率化することができる。
【0101】
また、実施形態では、重合基板Tの側面に対して流体Lをノズル91から供給し、流体Lが供給された側面に刃部81を押し付けるとよい。これにより、分子間力で接合され接合強度が強い重合基板Tであっても、精度よくかつ効率的に剥離処理を行うことができる。
【0102】
また、実施形態では、水を含む流体Lは、液体であるとよい。これにより、流体Lを毛細管現象で上ウェハW1と下ウェハW2との接合部の奥側まで徐々に浸透させることができる。したがって、実施形態によれば、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0103】
また、実施形態では、水を含む流体Lが、流体供給部90の加熱部(図示せず)で加熱されているとよい。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2との接合部で
図8に示した化学反応を促進させることができることから、上ウェハW1と下ウェハW2との接合強度をさらに低減させることができる。
【0104】
したがって、実施形態によれば、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0105】
なお、実施形態に係る流体Lは、酸性であってもよいし、中性であってもよいし、アルカリ性であってもよい。たとえば、上ウェハW1と下ウェハW2とがいわゆるCu-Cu直接接合で接合されている場合、流体Lを弱アルカリ性(pH=7~8程度)に制御することにより、接合部に位置するCuが流体Lで変質することを抑制することができる。
【0106】
<各種変形例>
つづいて、実施形態の各種変形例について、
図12~
図14を参照しながら説明する。なお、以下の各種変形例において、実施形態と同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0107】
図12は、実施形態の変形例1に係る剥離処理の一工程を示す拡大側面図である。
図12に示すように、変形例1では、重合基板Tの側面に刃部81を押し付ける際に、かかる側面にノズル91から流体Lが供給される。すなわち、変形例1では、刃部81を重合基板Tの側面に押し付ける処理と、ノズル91から流体Lを供給する処理とが同時に行われる。
【0108】
これによっても、上ウェハW1と下ウェハW2との接合強度を低減させながら剥離処理を行うことができる。したがって、変形例1によれば、剥離処理を効率化することができる。
【0109】
また、変形例1では、剥離の起点に動圧の流体Lを供給していることから、上ウェハW1と下ウェハW2との接合部の奥側まで流体Lを効果的に浸透させることができる。したがって、変形例1によれば、上ウェハW1と下ウェハW2との接合強度をさらに低減させることができることから、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0110】
また、変形例1では、実施形態と同様に、水を含む流体Lが、流体供給部90の加熱部で加熱されているとよい。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2との接合部で
図8に示した化学反応を促進させることができることから、上ウェハW1と下ウェハW2との接合強度をさらに低減させることができる。
【0111】
また、変形例1では、流体Lが液体であってもよいし、水蒸気であってもよい。流体Lが水蒸気である場合には、上ウェハW1と下ウェハW2との接合部で
図8に示した化学反応をさらに促進させることができる。したがって、変形例1によれば、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0112】
図13は、実施形態の変形例1に係る剥離処理の一工程を示す模式平面図である。
図13に示すように、変形例1では、重合基板Tに対して複数(図では2つ)の刃部81を押し付けながら剥離処理を実施してもよい。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0113】
また、変形例1では、
図13に示すように、1つの刃部81に対して複数(図では2つ)のノズル91を用いて流体Lを供給してもよい。これにより、剥離したい部位に流体Lを十分に供給することができることから、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0114】
なお、
図13の例では、刃部81が2つ用いられる例について示したが、刃部81の数は3つ以上であってもよい。また、
図13の例では、1つの刃部81に対して2つのノズル91が配置される例について示したが、1つの刃部81に対して3つ以上のノズル91が配置されてもよい。
【0115】
図14は、実施形態の変形例2に係る剥離装置5の構成を示す模式側面図である。
図14に示すように、変形例2では、流体供給部90に貯留槽92が設けられる点が実施形態と異なる。
【0116】
かかる貯留槽92は、流体Lを貯留可能に構成されるとともに、内部で重合基板Tを保持可能に構成される。そして、変形例2では、制御部31(
図1参照)が、貯留槽92で貯留された液状の流体Lに重合基板Tを浸漬しながら剥離処理を行う。
【0117】
これによっても、上ウェハW1と下ウェハW2との接合強度を低減させながら剥離処理を行うことができる。したがって、変形例2によれば、剥離処理を効率化することができる。
【0118】
また、変形例2では、水を含む流体Lが、流体供給部90の加熱部で加熱されているとよい。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2との接合部で
図8に示した化学反応を促進させることができることから、上ウェハW1と下ウェハW2との接合強度をさらに低減させることができる。
【0119】
実施形態に係る剥離装置5は、第1保持部50と、第2保持部70と、流体供給部90と、制御部31と、を備える。第1保持部50は、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)とが接合された重合基板Tのうち第1基板(上ウェハW1)を保持し、第1基板(上ウェハW1)を第2基板(下ウェハW2)から離す方向へ移動させる。第2保持部70は、重合基板Tのうち第2基板(下ウェハW2)を保持する。流体供給部90は、重合基板Tの側面に水を含む流体Lを供給する。制御部31は、各部を制御する。また、制御部31は、重合基板Tを第1保持部50および第2保持部70で保持する。また、制御部31は、流体供給部90で側面に対して水を含む流体Lを接触させながら、側面を起点にして重合基板Tから第1基板(上ウェハW1)を剥離する。これにより、剥離処理を効率化することができる。
【0120】
また、実施形態に係る剥離装置5において、流体供給部90は、水を含む流体Lを吐出する複数のノズル91を有する。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0121】
また、実施形態に係る剥離装置5において、流体供給部90は、液体である水を含む流体Lを貯留する貯留槽92を有する。これにより、剥離処理を効率化することができる。
【0122】
また、実施形態に係る剥離装置5において、流体供給部90は、水を含む流体Lを加熱する加熱部を有する。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0123】
また、実施形態に係る剥離装置5は、第2保持部70を回転させる基板回転部(回転昇降機構104)をさらに備える。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0124】
また、実施形態に係る剥離システム1は、剥離装置5と、洗浄装置(第1洗浄ステーション15、第2洗浄ステーション22)とを備える。剥離装置5は、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)とが接合された重合基板Tから第1基板(上ウェハW1)を剥離する。洗浄装置(第1洗浄ステーション15、第2洗浄ステーション22)は、剥離後の第1基板(上ウェハW1)および第2基板(下ウェハW2)を洗浄する。また、剥離装置5は、上記の構成を有する。これにより、剥離処理を効率化することができる。
【0125】
また、実施形態に係る剥離方法は、保持する工程(ステップS101)と、剥離する工程と、を含む。保持する工程(ステップS101)は、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)とが接合された重合基板Tを保持する。剥離する工程は、重合基板Tの側面を起点にして重合基板Tから第1基板(上ウェハW1)を剥離する。また、剥離する工程は、側面に対して水を含む流体Lを接触させる工程(ステップS102)を含む。これにより、剥離処理を効率化することができる。
【0126】
また、実施形態に係る剥離方法において、水を含む流体Lは、水蒸気である。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0127】
また、実施形態に係る剥離方法において、水を含む流体Lは、液体である。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0128】
また、実施形態に係る剥離方法において、剥離する工程は、水を含む流体Lを複数のノズル91から吐出しながら行う。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0129】
また、実施形態に係る剥離方法において、剥離する工程は、供給する工程(ステップS102)と、押し付ける工程(ステップS103)と、を含む。供給する工程(ステップS102)は、側面に対して水を含む流体Lをノズル91から供給する。押し付ける工程(ステップS103)は、水を含む流体Lが供給された側面に刃部81を押し付ける。これにより、分子間力で接合され接合強度が強い重合基板Tであっても、精度よくかつ効率的に剥離処理を行うことができる。
【0130】
また、実施形態に係る剥離方法において、剥離する工程は、貯留された水を含む流体Lに重合基板Tを浸漬して行う。これにより、剥離処理を効率化することができる。
【0131】
また、実施形態に係る剥離方法において、水を含む流体Lは、加熱されている。これにより、剥離処理をさらに効率化することができる。
【0132】
また、実施形態に係る剥離方法において、重合基板Tにおいて、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)とは分子間力で接合される。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2とが強固に接合された重合基板Tを実現することができる。
【0133】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、上ウェハW1と下ウェハW2とが分子間力で接合された重合基板Tから上ウェハW1を剥離する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。
【0134】
たとえば、本開示において、重合基板Tから下ウェハW2が剥離されてもよい。また、本開示において、上ウェハW1と下ウェハW2とが接着剤で接合された重合基板Tから上ウェハW1または下ウェハW2が剥離されてもよい。
【0135】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 剥離システム
5 剥離装置
15 第1洗浄ステーション(洗浄装置の一例)
22 第2洗浄ステーション(洗浄装置の一例)
31 制御部
50 第1保持部
60 移動部
70 第2保持部
80 剥離誘引部
81 刃部
90 流体供給部
91 ノズル
92 貯留槽
104 回転昇降機構(基板回転部の一例)
T 重合基板
W1 上ウェハ(第1基板の一例)
W2 下ウェハ(第2基板の一例)