(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028557
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】電気集塵機内の落下防止装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/76 20060101AFI20230224BHJP
B03C 3/34 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B03C3/76
B03C3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134336
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】島田 康平
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA02
4D054BA01
4D054DA02
4D054DA11
4D054DA12
4D054EA30
(57)【要約】
【課題】 電気集塵機内に設けたハンマリング装置やこれによって打撃される被打撃部が脱落しても、該電気集塵機の底部に設けられているコンベアに悪影響を及ぼすことのない電気集塵機を提供する。
【解決手段】 電気集塵機1内に設けたハンマリング装置20の構成部材、及びハンマリング装置20によって打撃される複数の放電極12又は複数の集塵極11の被打撃部の構成部材が脱落したときに該構成部材が電気集塵機1の底部まで落下するのを防止する落下防止装置であって、該被打撃部の下方に設けられた網状体30と、網状体30の上に堆積した粉体を除去する粉体除去手段とからなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気集塵機内に設けたハンマリング装置の構成部材、及び前記ハンマリング装置によって打撃される複数の放電極又は複数の集塵極の被打撃部の構成部材が脱落したときに該構成部材が該電気集塵機の底部まで落下するのを防止する落下防止装置であって、前記被打撃部の下方に設けられた網状体と、前記網状体の上に堆積した粉体を除去する粉体除去手段とからなることを特徴とする落下防止装置。
【請求項2】
前記粉体除去手段が、前記ハンマリング装置を構成する回転軸に設けたクランクアームと、前記網状体を支持する支持棒を前記クランクアームの先端部に連結させる連結部とからなるクランク機構であることを特徴とする、請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項3】
前記粉体除去手段が、前記網状体と平行して延在し且つ前記網状体に向けて開口する複数の開口部を有するパイプと、前記パイプ内に圧縮空気を供給する装置とからなることを特徴とする、請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項4】
前記粉体除去手段が、前記網状体を支持する支持棒の一端部に設けた振動装置であることを特徴とする、請求項1に記載の落下防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵機内に設けられる落下防止装置に関し、特に、電気集塵機内に設けたハンマリング装置やその被打撃部が脱落して該電気集塵機内の底部の搬送手段に悪影響を及ぼすのを防止するために設けられる落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製錬工場のロータリーキルン等の各種炉内においては、金属原料に対して還元処理等を施すことで目的金属の品位を高める乾式処理が行なわれている。この乾式処理においては、ダストやミスト等の煙霧体(以下、これらをまとめてダスト等と称する)を含む排ガスが排出されるため、この排ガスに対してその組成に応じた除害処理等のガス処理を施す前に、先ず集塵設備に該排ガスを導入してダスト等を取り除く除塵処理が一般的に行なわれている。
【0003】
上記の集塵設備では、処理対象となる排ガスの排出量やこれに含まれるダスト等の物性に応じて、袋状のフィルターで濾過することで除塵するバグフィルター、遠心力を利用して除塵するサイクロン、排ガスを水中にくぐらせたり水を噴霧したりすることで除塵する湿式集塵機、平行板状等の集塵極と金属線状の放電極との間に直流高電圧を印加することで生じる電気力を応用して除塵する電気集塵機等の中から1又は複数の機器が選定される。これらのうち、金属製錬工場においては大量の排ガスに対して低い圧力損失で効率的にダスト等を分離除去することが可能な電気集塵機が一般的に採用される。
【0004】
上記の電気集塵機では、集塵性能が低下するのを防ぐため、集塵極に付着したダスト等の粒子を定期的に除去する必要がある。その際、電気集塵機には、排ガスに含まれる集塵対象のダスト等を乾燥したまま集塵板に捕集する方式の乾式(dry type)と、集塵極の表面に水を吹き付けて該集塵極に付着した粒子を水と共に洗い流す方式の湿式(wet type)とがあり、後者の湿式の電気集塵機の場合は、集塵極に付着したダスト等に対して水を吹き付けることで除去することができるが、前者の乾式の電気集塵機の場合は水を用いて集塵極に付着したダスト等を除去することができない。
【0005】
そこで、乾式の電気集塵機では、例えば特許文献1に開示されているように、集塵極に対して回転式のハンマリング装置(槌打装置と称することもある)の槌打部で打撃することで、該集塵極に付着したダスト等を剥離させる方法が採用されている。また、放電極においても、操業を継続するに従ってダスト等が徐々に付着するため、放電極を懸架している部材の端部を上記と同様に回転式のハンマリング装置の槌打部で叩くことで、この放電極に付着したダスト等を剥離させる方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気集塵機の内部で使用される上記のハンマリング装置は、高濃度のダスト等を含む排ガス雰囲気内で使用されることがあり、この場合は、上記のハンマリング装置の槌打部や該槌打部によって打撃される被打撃部は、打撃時の衝撃が繰り返し加わることに加えて常に激しい摩耗条件下で使用されることになる。更に、排ガスは一般的に高温であるうえ、塩素、フッ素、亜硫酸ガス等の腐食性のガス成分を含んでいることが多く、この場合は激しい腐食雰囲気に曝されることになる。
【0008】
このため、上記のハンマリング装置の槌打部やこれによって打撃される被打撃部は損耗や割れ等によりしばしば脱落し、電気集塵機の底部に設けられている粉体排出用のコンベアに噛み込んで該コンベアの運転を停止させるトラブルを頻発させることがあった。このようにコンベアの運転が停止した場合は、その復旧のために集塵設備を運転停止する必要が生じ、更には排ガスの放出源のプラントの操業停止も必要となるため、プラントの稼働率に深刻な悪影響を及ぼしていた。
【0009】
本発明は上記の従来の電気集塵機が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、電気集塵機内に設けたハンマリング装置やこれによって打撃される被打撃部が脱落しても、該電気集塵機の底部に設けられているコンベアに悪影響を及ぼすことのない電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気集塵機内の落下防止装置は、電気集塵機内に設けたハンマリング装置の構成部材、及び前記ハンマリング装置によって打撃される複数の放電極又は複数の集塵極の被打撃部の構成部材が脱落したときに該構成部材が該電気集塵機の底部まで落下するのを防止する落下防止装置であって、前記被打撃部の下方に設けられた網状体と、前記網状体の上に堆積した粉体を除去する粉体除去手段とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気集塵機内に設けたハンマリング装置の構成部材や該ハンマリング装置によって打撃される被打撃部の構成部材が脱落しても、該電気集塵機の底部に設けられているコンベアに悪影響が及ぶのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の落下防止装置が好適に設けられる電気集塵機の部分破断斜視図である。
【
図2】
図1の電気集塵機が有するハンマリング装置の斜視図である。
【
図3】
図2のハンマリング装置が有する槌打部及びこれによって打撃される被打撃部の下方に設けられている本発明の実施形態の落下防止装置の側面図である。
【
図4】本発明の実施形態の落下防止装置が具備する堆積した粉体の除去手段の一具体例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態の落下防止装置が具備する堆積した粉体の除去手段の他の具体例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態の落下防止装置が具備する堆積した粉体の除去手段の更に他の具体例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、電気集塵機の内部に設けられる本発明の実施形態の落下防止装置について詳細に説明する。本発明の実施形態の落下防止装置が設けられる電気集塵機は、例えば
図1に示す構造を有している。具体的には、この
図1に示す電気集塵機1は、上部が略直方体形状を有する本体10内に、矩形板状の集塵極11と、梁状フレームに放電線群が垂下する形態の放電極12とが、互いに平行かつ交互に吊設された構造を有しており、互いに対向するこれら集塵極11と放電極12との間に図示しない直流電圧電源によって直流高電圧が印加されるようになっている。なお、上記の放電極12の放電線群は、該梁状フレームからその長手方向に均等な間隔をあけて垂下しており、それらの下端部には錘がぶら下げられている。
【0014】
上記の放電極12と集塵極11との間には、上記の印加した直流高電圧によって強力な電界が形成されており、これにより発生するコロナ放電により放電極12の周囲のガスは電離してイオンになっている。この状態において、白矢印で示すように、この本体10の入口10aからダスト等を含む排ガスを導入して上記の集塵極11と放電極12との間のガス流路に通過させると、排ガス中に含まれるダスト等の粒子が陰イオンでマイナスに帯電する。その結果、この帯電した粒子は、上記の電界によるクーロン力で集塵極11に捕集されるので、本体10の出口10bから排出される排ガスのダスト濃度を顕著に低下させることができる。
【0015】
上記のようにして集塵極11に付着した粒子をそのままにしておくと集塵性能が低下するので、
図1に示す電気集塵機1は、集塵極11に衝撃力を与えてダスト等を剥離させるハンマリング装置(槌打装置又は打撃装置とも称する)20が設けられている。なお、わずかではあるが、放電極12の近傍を通過した一部のダスト等の粒子は陽イオンでプラスに帯電して放電極12に捕集されるので、放電極12にもハンマリング装置が設けられていることが多い。この放電極12のハンマリング装置も、集塵極11のハンマリング装置20とほぼ同様の構造を有しているので、説明の重複を避けるため、以降の説明では代表として集塵極11のハンマリング装置20を採り上げて説明する。
【0016】
上記のハンマリング装置20は、例えば
図2に示すように、図示しない支持部によって回転可能に支持されている水平方向に延在する回転軸21と、この回転軸21を回転させる電動モーターなどの駆動部22と、回転軸21にその軸方向に沿って設けられた複数の槌打部23とから構成される。なお、駆動部22の駆動軸に設けられたスプロケット22aと、回転軸21の一端部に設けられたスプロケット21aとに駆動チェーン21bが掛けられており、これにより駆動部22の回転駆動力が回転軸21に伝わるようになっている。また、駆動部22は本体10の外側に設置されるので、スプロケット21aが取り付けられている側の回転軸21の一端部は、本体10の側壁部を貫通して本体10の外側に突出しており、この回転軸21の突出部分に碍子部21cが設けられている。
【0017】
上記の複数の槌打部23は、複数の集塵極11の各上端部に設けられている棒状の被打撃部11aをその延在方向にそれぞれ打撃するように、回転軸21の軸方向に等間隔をあけて設けられている。これら複数の槌打部23は、
図3に示すように、回転軸21と共に紙面時計回りに回転する棒状部23aと、この棒状部23aの先端部分において回転軸21の軸方向に平行な第1支軸S1を中心として揺動可能に軸支された揺動部23bと、この揺動部23bの先端部分において回転軸21の軸方向に平行な第2支軸S2を中心として回転可能に軸支された円柱状のハンマー部23cとから構成される。
【0018】
かかる構成により、駆動部22の回転駆動により駆動チェーン21bを介して回転軸21が回転すると、これに伴って棒状部23aも回転するので、この棒状部23aに引き上げられるようにして揺動部23bが移動する。その際、この揺動部23bは、前述したようにその一端部が棒状部23aの先端部に揺動可能に軸支されているので、
図3の1点鎖線に示すようにハンマー部23cを徐々に持ち上げるように移動していき、棒状部23aが実線で示す位置の直前に来たとき、2点鎖線で示すようにハンマー部23cはほぼ真上の位置からわずかに通り過ぎるので、揺動部23bはバランスをくずし、ハンマー部23cと共に被打撃部11aの末端部に向けて勢いよく振り下ろされる。これにより、被打撃部11aに打撃力を付与することが可能になる。なお、
図2に示すように上記の複数の槌打部23の棒状部23aは、回転軸21の半径方向に突出する方向がそれぞれ異なるように取り付けられるのが好ましい。
【0019】
上記のハンマリング装置20の打撃により剥離したダスト等は、本体10の底部に向かって落下する。本体10を構成する互いに対向する両側壁部は、その下部において底部に向うに従って互いの間隔が徐々に狭くなるように傾斜しており、剥離したダスト等はこれら傾斜面に沿って底部中央に集められ、該底部中央に排ガスの流れる方向に沿って設けられている例えばフライトコンベアー等の第1搬送手段13によって底部排出口10cに搬送され、そこから黒矢印で示すように外部に排出される。この底部排出口10cの下方にはフライトコンベアー等の第2搬送手段14が更に設けられており、底部排出口10cから排出されたダスト等は、隣接する他の電気集塵機1から排出されるダスト等と共に、所定の搬送先まで搬送される。
【0020】
ところで、集塵極11の被打撃部11aは、駆動部22が連続的に回転することにより上記のようにハンマリング装置20の槌打部23によって繰り返し打撃されるので、ハンマー部23cが当接する被打撃部11aの末端部には、機械的な強度を高めるため補強部材11bが溶接等により取り付けられている。そのため、この補強部材11bは、長期に亘って槌打部23による打撃が繰り返されるうちに該溶接箇所が損耗することで被打撃部11aから脱落することがあった。また、ハンマリング装置20の槌打部23を構成する部材も長期に亘って使用しているうちに破損して脱落することがあった。
【0021】
被打撃部11aの補強部材11bや槌打部23の構成部材が脱落すると、電気集塵機1の底部に設けられている第1搬送手段13としての例えばフライトコンベアーのチェーンとローラーとの間に噛み込み、該第1搬送手段の運転が停止するトラブルに至ることがあった。そこで、このような脱落した部品によるトラブルを回避するため、
図3に示すように、集塵極11の被打撃部11aの下方には、網状体30と、その上に堆積した粉体を除去する粉体除去手段とからなる落下防止装置が設けられている。
【0022】
これにより、槌打部23の構成部材や被打撃部11aの補強部材11bが白矢印で示すように脱落しても、網状体30よりも下方に落下するのを防ぐことができる。また、粉体除去手段が設けられているので、網状体30に堆積したダスト等の荷重で網状体30が脱落して本体10の底部のコンベア等に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。このように、通常は網状体30にできるだけ荷重が掛からないようにすることで、例えばダスト濃度10g/Nm3以上の高ダスト濃度の排ガスを処理する電気集塵機であっても、上記した網状体30の脱落やこれに起因するトラブルを防ぐことができる。
【0023】
上記の網状体30は、複数の被打撃部11aのいずれかの補強部材11bにおいて脱落が生じたり、これら複数の被打撃部11aにそれぞれ打撃する複数の槌打部23のいずれかの構成部材において脱落が生じたりしても全て捕集できるように、本体10の幅方向のほぼ端から端まで延在させるのが好ましい。このため、本体10の幅方向に延在する2本の水平方向に互いに離間する水平支持棒31によって網状体30の幅方向の両端部を支持するのが好ましい。
【0024】
この場合、被打撃部11a及び槌打部23のうち、最も下側に位置する部位から網状体30までの鉛直方向の離間距離Dが、100~500mmの範囲内であるのが好ましい。また、2本の水平支持棒31が互いに水平方向に離間する距離Wが、300~600mmの範囲内であるのが好ましい。これにより、一般的にスペースの狭い本体10内であっても、排ガスの流れを特に阻害することなく網状体30を設置することができる。
【0025】
上記の網状体30及びその水平支持棒31は、いずれも耐熱温度が200℃以上の金属製であるのが好ましく、SUS製であるのがより好ましく、SUS304製であるのが最も好ましい。また、網状体30を構成する線の線径は2mm以下が好ましく、目開きは30mm以上70mm以下であるのが好ましい。網状体30の網目形状は特に限定はなく、格子状、ハニカム状、ひし形等の様々な形状を採用することができる。
【0026】
上記のように網状体30及びその水平支持棒31の耐熱温度を200℃以上とすることで、前述したように電気集塵機1内が摩耗しやすく且つ腐食性の雰囲気であっても長期間に亘って使用することが可能になる。また、網状体30を構成する線の線径を2mm以下、目開きを30mm以上とすることで、網状体30の上に堆積するダスト等の量を極力抑えることが可能になるうえ、網状体30の上に堆積したダスト等で網目が詰まるのを防ぐことができる。
【0027】
更に網状体30を構成する線は、撚り紐状ではなく単糸状であることがより好ましい。その理由は、単糸状にすることで網状体30を構成する線の表面積を抑えることができ、結果的に線の表面にダスト等が堆積することをより一層抑えることができるからである。また、網状体30の目開きを70mm以下とすることで、槌打部23の構成部材や被打撃部11aの補強部材11bが脱落した場合でも、確実に網状体30で捕集することができる。
【0028】
上記の網状体30の上に堆積した粉体を除去する粉体除去手段の一具体例としては、
図4に示すような、回転軸21に設けたクランクアーム40と、網状体30を支持する水平支持棒31を該クランクアーム40の先端部に連結させる金属棒等からなる連結部41とから構成されるクランク機構を挙げることができる。かかる構成により、回転軸21の回転に伴って網状体30を上下方向に振動させることができる。
【0029】
上記のクランク機構は、回転軸21において網状体30を支持する水平支持棒31の両端部に対応する位置に設けるのが好ましいが、これら両端部に対応する位置に代えて、あるいはこれら両端部に対応する位置に加えて、網状体30の長手方向の中間点に対応する位置に設けてもよい。いずれの場合においても、クランク機構を網状体30の長手方向に沿って複数箇所設ける場合は、網状体30の長手方向に関して等間隔に設けることが好ましい。
【0030】
なお、網状体30が不規則に動き回るのを規制するため、例えば本体10の幅方向に対向する両内壁部の各々に水平支持棒31の支持板を取り付けると共に、各支持板に上下方向に延在する長孔を穿孔し、この長孔内に水平支持棒31の両端部を遊嵌させることで、網状体30が上下方向にのみ移動するように規制してもよい。また、上記のクランク機構に代えて回転軸21にカム状部材を設け、網状体30の水平支持棒31から上方に延在させた棒状体に設けた突起部をこのカム状部材に係合させることで網状体30を上下方向に振動させてもよい。この場合、網状体30が常時下方側に付勢されるように、一端が固定されたスプリングの他端を網状体30の水平支持棒31に取り付けてもよい。
【0031】
網状体30の上に堆積した粉体を除去する粉体除去手段の他の具体例としては、
図5に示すような、網状体30と平行して延在し且つ網状体30に向けて開口する複数の開口部51を有するパイプ50と、パイプ50内に圧縮空気を供給する空気圧縮機等の空気供給装置とからなる圧縮空気噴射装置を挙げることができる。上記のパイプ50の開口部51から圧縮空気を噴射する場合は、パルス状に噴射することが好ましく、これは例えば空気圧縮機とパイプ50とを接続する空気供給配管に電磁弁を設けて、タイマー等を用いて該電磁弁を自動的に開閉させることで実現することができる。これにより、空気圧縮機の運転コストを抑えることができる。なお、上記のように粉体除去手段に圧縮空気噴射装置を用いる場合は、水平支持棒31の両端部を、本体10の幅方向に対向する両内壁部にそれぞれ固定するのが好ましい。
【0032】
網状体30の上に堆積した粉体を除去する除去手段の更に他の具体例としては、
図6(a)に示すような、網状体30を支持する水平支持棒31の一端部に設けた振動装置60を挙げることができる。この振動装置60には、例えば電動モーターの駆動軸におもりを偏芯させて取り付けた構造のものを好適に用いることができる。このように振動装置60に電動モーターを用いる場合は、本体10の外部に振動装置60を設置する必要があるので、本体10の外壁部に基台61を取り付け、この基台61の面上に振動装置60及び本体10の側壁部を貫通させた水平支持棒31の端部を固定するのが好ましい。なお、網状体30の水平支持棒31を本体10の天井から垂下する垂直支持棒32によって支持してもよく、この場合は、
図6(b)に示すように、本体10の天井を貫通させた該垂直支持棒32の端部に基台61を介して振動装置60を取り付けることになる。
【実施例0033】
製鋼ダストに対してウエルツキルン法による還元焙焼処理により粗酸化亜鉛を生成するロータリーキルンから排出される粗酸化亜鉛ダストを含んだ排ガスを、
図1に示すような電気集塵機1に導入して除塵した。この電気集塵機1内の複数の集塵極11には、
図2に示すようなハンマリング装置20が設けられており、その下方に
図3に示すように本発明の実施例の内落下防止装置を設けた。
【0034】
具体的には、この実施例の落下防止装置には、線径2mmのSUS304製の単糸状の金属線を目開き70mmで格子状に編んだ金属ネットからなる網状体30を用い、その幅方向の両端部を線径5mmのSUS304製の2本の水平支持棒31にそれぞれ巻き付けると共に、これら2本の水平支持棒31の各々の両端部を本体10の内壁部に取り付けることで、網状体30を電気集塵機1の本体10の幅方向の端から端まで張った。その際、集塵極11の被打撃部11a及びハンマリング装置20の槌打部23のうち、最も下側に位置する部位から網状体30までの鉛直方向の離間距離Dが500mm、2本の水平支持棒31が互いに水平方向に離間する距離Wが600mmとなるようにした。
【0035】
また、網状体30の上に堆積した粉体を除去する粉体除去手段として、
図5に示すように、呼び径25Aのパイプ50を網状体30の長手方向に平行で且つ網状体30の長手方向の端から端までに至るように設置した。このパイプ50には網状体30に向けて圧縮空気を吹き出すことができるように、内径5mmの開口部51を200mmの間隔で穿孔しておいた。また、パイプ50の一端部には空気供給配管を介して空気圧縮機を接続し、この空気供給配管には電磁弁を設けて10分に1回の頻度で該電磁弁が開となるようにした。
【0036】
この状態で、上記の排ガスを流量50,000Nm3/hr、電気集塵機1の本体10の入口10aでのダスト濃度80.0g/Nm3、出口10bでのダスト濃度3.0g/Nm3、電気集塵機1の本体10の入口10aでの排ガス温度300℃以下の条件で6か月間に亘り操業した。その結果、上記の集塵極11の被打撃部11aの当接部に設けた補強部材11bの脱落が6か月の間に6回発生したが、全て網状体30で捕集することができた。
【0037】
比較のため、上記の落下防止装置を採用しないことを除いて上記の実施例と同じ条件で6か月間に亘り操業した。その結果、上記の集塵極11の被打撃部11aの当接部に設けた補強部材11bの脱落が6ヶ月の間に6回発生し、それらのうち2回はコンベアから排出されたところで脱落した部品を回収することができたが、残る4回については、電気集塵機の底部に設けられているコンベアに噛み込み、突発に操業を停止せざるを得なかった。