(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028566
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】粉砕装置、セメント製造装置、及びセメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
B02C 17/06 20060101AFI20230224BHJP
C04B 7/52 20060101ALI20230224BHJP
C04B 7/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B02C17/06
C04B7/52
C04B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134356
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】丸山 有亮
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上野 修
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF02
4D063FF23
4D063FF35
4D063GA06
4D063GB02
4D063GC05
4D063GC12
4D063GC19
4D063GC29
4D063GC32
4D063GD04
4D063GD22
(57)【要約】
【課題】製造効率を向上させる。
【解決手段】粉砕装置は、複数の粉砕用ボールを収容し、所定の軸線まわりに回転可能なドラムと、ドラムを軸線まわりに回転させる駆動部と、ドラム内の空間を軸線が延びる軸方向に並ぶ第1領域と第2領域とに仕切るように配置され、第1領域から第2領域への粉体の通過を許容する仕切り部と、第1領域に対してセメントクリンカを含む粉砕対象物を供給する供給部と、ドラムの軸方向における一方の端部から、第1領域に冷却液を吐出する吐出部と、を備える。吐出部は、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴を第1領域に吐出するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粉砕用ボールを収容し、所定の軸線まわりに回転可能なドラムと、
前記ドラムを前記軸線まわりに回転させる駆動部と、
前記ドラム内の空間を前記軸線が延びる軸方向に並ぶ第1領域と第2領域とに仕切るように配置され、前記第1領域から前記第2領域への粉体の通過を許容する仕切り部と、
前記第1領域に対してセメントクリンカを含む粉砕対象物を供給する供給部と、
前記ドラムの前記軸方向における一方の端部から、前記第1領域に冷却液を吐出する吐出部と、を備え、
前記吐出部は、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴を前記第1領域に吐出するように構成されている、粉砕装置。
【請求項2】
前記第2領域からガスを吸引する吸引部と、
前記吸引部によって吸引されたガスに含まれる微粉を捕集する集塵部と、を更に備える、請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
複数の粉砕用ボールを収容し、所定の軸線まわりに回転可能なドラムと、
前記ドラムを前記軸線まわりに回転させる駆動部と、
前記ドラム内の空間を前記軸線が延びる軸方向に並ぶ第1領域と第2領域とに仕切るように配置され、前記第1領域から前記第2領域への粉体の通過を許容する仕切り部と、
前記第1領域に対してセメントクリンカを含む粉砕対象物を供給する供給部と、
前記ドラムの前記軸方向における一方の端部から、前記第1領域に冷却液を吐出する吐出部と、を備え、
前記第1領域を前記軸方向における中央で上流側の領域と下流側の領域とに区切ったときに、前記吐出部による前記冷却液の吐出方向に延びる仮想線が、前記下流側の領域において前記ドラムの側壁又は前記仕切り部と交差する、粉砕装置。
【請求項4】
前記仮想線は、前記第1領域の高さの20%~50%の範囲において、前記ドラムの側壁又は前記仕切り部と交差する、請求項3に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記仮想線は、前記第1領域を前記軸方向及び上下方向に直交する左右方向における中央で区切った2つの領域のうち、前記軸線まわりの周方向に沿って前記ドラムの側壁が下から上に移動する一方の領域において、前記ドラムの側壁又は前記仕切り部と交差する、請求項3又は4に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記吐出部に対して前記冷却液を供給する供給配管と、
前記供給配管内に圧縮された空気を供給する噴射部と、を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の粉砕装置。
【請求項7】
セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する製造装置と、
請求項1~6のいずれか一項に記載の粉砕装置と、を備えるセメント製造装置。
【請求項8】
セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する工程と、
セメントクリンカと石膏とを含む粉砕対象物を粉砕する工程と、を含み、
前記粉砕対象物を粉砕する工程は、
複数の粉砕用ボールが収容されたドラムを、所定の軸線まわりに回転させる工程と、
前記軸線に交差し、粉体の通過を許容する仕切り部によって前記ドラム内の空間が仕切られることで形成される第1領域及び第2領域のうちの前記第1領域に対して、前記粉砕対象物を供給する工程と、
前記ドラムの前記軸線が延びる軸方向における一方の端部から、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴を吐出するように構成された吐出部を用いて、複数の液滴を含む冷却液を前記第1領域に吐出する工程と、を含むセメントの製造方法。
【請求項9】
セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する工程と、
セメントクリンカと石膏とを含む粉砕対象物を粉砕する工程と、を含み、
前記粉砕対象物を粉砕する工程は、
複数の粉砕用ボールが収容されたドラムを、所定の軸線まわりに回転させる工程と、
前記軸線に交差し、粉体の通過を許容する仕切り部によって前記ドラム内の空間が仕切られることで形成される第1領域及び第2領域のうちの前記第1領域に対して、前記粉砕対象物を供給する工程と、
前記ドラムの前記軸線が延びる軸方向における一方の端部から、吐出部を用いて複数の液滴を含む冷却液を前記第1領域に吐出する工程と、を含み、
前記第1領域を前記軸方向における中央で上流側の領域と下流側の領域とに区切ったときに、前記吐出部による前記冷却液の吐出方向に延びる仮想線が、前記下流側の領域において前記ドラムの側壁又は前記仕切り部と交差する、セメントの製造方法。
【請求項10】
前記粉砕対象物を粉砕する工程は、前記吐出部に対して前記冷却液を供給する供給配管内に圧縮された空気を供給する工程を更に含み、
前記供給配管内へ圧縮された空気が供給されている状態で、前記冷却液の吐出を開始し、
前記供給配管内へ圧縮された空気が供給されている状態で、前記冷却液の吐出を停止する、請求項8又は9に記載のセメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉砕装置、セメント製造装置、及びセメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポルトランドセメントクリンカーと石膏を高温の水蒸気ガスの雰囲気下で同時に粉砕するセメントの製造方法が開示されている。特許文献2には、半導体工場から排出される洗浄排水を、セメント製造設備の粉砕機に粉砕助剤として投入して処分する工場排水の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-55008号公報
【特許文献2】特開2003-2706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、製造効率を向上させるのに有用な粉砕装置、セメント製造装置、及びセメントの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る粉砕装置は、複数の粉砕用ボールを収容し、所定の軸線まわりに回転可能なドラムと、ドラムを軸線まわりに回転させる駆動部と、ドラム内の空間を軸線が延びる軸方向に並ぶ第1領域と第2領域とに仕切るように配置され、第1領域から第2領域への粉体の通過を許容する仕切り部と、第1領域に対してセメントクリンカを含む粉砕対象物を供給する供給部と、ドラムの軸方向における一方の端部から、第1領域に冷却液を吐出する吐出部と、を備える。吐出部は、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴を第1領域に吐出するように構成されている。
【0006】
液滴ではない流水を吐出すると局所的な冷却により、ドラム内の冷却効率が低下し得る。局所的な冷却を避けるために、複数の液滴を吐出することが考えられる。平均粒子径が100μmよりも小さいミスト状の液を第1領域に吐出すると、液滴が小さいので第1領域から第2領域に仕切り部を介して液滴が流れてしまい、仕切り部において粉砕対象物から生じる粉体が液滴によって固まってしまうおそれがある。その結果、仕切り部において目詰まりが発生してしまう運転トラブルが生じ、製造効率が低下してしまう可能性がある。これに対して、上記粉砕装置では、平均粒子径が100μm以上の液滴が吐出されるので、仕切り部を介して第2領域に液滴が流れ難い。そのため、複数の液滴により仕切り部において目詰まりが発生してしまう可能性を低減できる。従って、本粉砕装置は、製造効率を向上させるのに有用である。
【0007】
上記粉砕装置は、第2領域からガスを吸引する吸引部と、吸引部によって吸引されたガスに含まれる微粉を捕集する集塵部と、を更に備えてもよい。液滴の大きさを100μm以上とすることで、吸引部の吸引によっても液滴が移動し難い。そのため、液滴の仕切り部を介した移動に起因した運転トラブルを回避しつつ、吸引部と集塵部とによって、ドラム内に浮遊する微粉を回収して、微粉に起因した運転トラブルの発生を抑制できる。従って、製造効率を向上させるのに更に有用である。
【0008】
本開示の一側面に係る粉砕装置は、複数の粉砕用ボールを収容し、所定の軸線まわりに回転可能なドラムと、ドラムを軸線まわりに回転させる駆動部と、ドラム内の空間を軸線が延びる軸方向に並ぶ第1領域と第2領域とに仕切るように配置され、第1領域から第2領域への粉体の通過を許容する仕切り部と、第1領域に対してセメントクリンカを含む粉砕対象物を供給する供給部と、ドラムの軸方向における一方の端部から、第1領域に冷却液を吐出する吐出部と、を備える。第1領域を軸方向における中央で上流側の領域と下流側の領域とに区切ったときに、吐出部による冷却液の吐出方向に延びる仮想線が、下流側の領域においてドラムの側壁又は仕切り部と交差する。
【0009】
ドラムの回転による粉砕用ボールとドラムの側壁又は粉砕対象物との衝突に伴い、ドラム内の温度が上昇してしまう。上記仮想線が、上流側の領域においてドラムの側壁と交差するように、吐出部を配置することも考えられる。しかしながら、この場合、下流側の領域に比べて、上流側の領域に対して吐出部から多くの冷却液が供給される。その結果、下流側の領域において粉砕用ボールに対して当たる冷却液の量が少なくなり、ドラム内の第1領域全体で温度上昇を抑制し難い。上記粉砕装置では、吐出方向に延びる仮想線が、下流側の領域でドラムの側壁又は仕切り部と交差するので、上流側の領域及び下流側の領域の双方において、粉砕用ボールに対して冷却液を当てることができ、冷却効率が向上する。従って、本粉砕装置は、製造効率を向上させるのに有用である。
【0010】
仮想線は、第1領域の高さの20%~50%の範囲において、ドラムの側壁又は仕切り部と交差してもよい。第1領域の高さの20%以上とすることで、ドラムの下の方に存在する粉砕対象物に対して多くの冷却液が当たってしまい、粉砕対象物に含まれる成分との反応に多くの冷却液が費やされることを抑制できる。また、第1領域の高さの50%以下とすることで、粉砕用ボールに多くの冷却液を直接当てることができる。そのため、冷却効率を更に向上させることができる。従って、粉砕対象物を粉砕してセメントを製造する工程での製造効率を向上させるのに更に有用である。
【0011】
仮想線は、第1領域を軸方向及び上下方向に直交する左右方向における中央で区切った2つの領域のうち、軸線まわりの周方向に沿ってドラムの側壁が下から上に移動する一方の領域において、ドラムの側壁又は仕切り部と交差してもよい。ドラムが回転する際には、軸線まわりの周方向に沿ってドラムの側壁が下から上に移動する一方の領域に、多くの粉砕用ボールが存在する。上記構成とすることで、粉砕用ボールに多くの冷却液を直接当てることができ、冷却効率を更に向上させることができる。従って、粉砕対象物を粉砕してセメントを製造する工程での製造効率を向上させるのに更に有用である。
【0012】
上記粉砕装置は、吐出部に対して冷却液を供給する供給配管と、供給配管内に圧縮された空気を供給する噴射部と、を更に備えてもよい。冷却液の吐出を開始する際、又は冷却液の吐出を停止する際に、噴射部で圧縮された空気を噴射することで、吐出部の外表面に冷却液が付着してしまうのを抑制できる。従って、吐出部の外表面において液体の付着に起因して粉体の塊が形成されるのを抑制するのに有用である。
【0013】
本開示の一側面に係るセメント製造装置は、セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する製造装置と、上記粉砕装置と、を備える。上記粉砕装置を備えるので、このセメント製造装置は、製造効率を向上させるのに有用である。
【0014】
本開示の一側面に係るセメントの製造方法は、セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する工程と、セメントクリンカと石膏とを含む粉砕対象物を粉砕する工程と、を含む。粉砕対象物を粉砕する工程は、複数の粉砕用ボールが収容されたドラムを、所定の軸線まわりに回転させる工程と、軸線に交差し、粉体の通過を許容する仕切り部によってドラム内の空間が仕切られることで形成される第1領域及び第2領域のうちの第1領域に対して、粉砕対象物を供給する工程と、ドラムの軸線が延びる軸方向における一方の端部から、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴を吐出するように構成された吐出部を用いて、複数の液滴を含む冷却液を第1領域に吐出する工程と、を含む。この製造方法では、上述の製造装置と同様に、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴が吐出されるので、製造効率を向上させるのに有用である。
【0015】
本開示の一側面に係るセメントの製造方法は、セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する工程と、セメントクリンカと石膏とを含む粉砕対象物を粉砕する工程と、を含む。粉砕対象物を粉砕する工程は、複数の粉砕用ボールが収容されたドラムを、所定の軸線まわりに回転させる工程と、軸線に交差し、粉体の通過を許容する仕切り部によってドラム内の空間が仕切られることで形成される第1領域及び第2領域のうちの第1領域に対して、粉砕対象物を供給する工程と、ドラムの軸線が延びる軸方向における一方の端部から、吐出部を用いて複数の液滴を含む冷却液を第1領域に吐出する工程と、を含む。第1領域を軸方向における中央で上流側の領域と下流側の領域とに区切ったときに、吐出部による冷却液の吐出方向に延びる仮想線が、下流側の領域においてドラムの側壁又は仕切り部と交差する。この製造方法では、上流側の領域及び下流側の領域の双方において、粉砕用ボールに対して冷却液を当てることができるので、製造効率を向上させるのに有用である。
【0016】
粉砕対象物を粉砕する工程は、吐出部に対して冷却液を供給する供給配管内に圧縮された空気を供給する工程を更に含んでてもよい。供給配管内へ圧縮された空気が供給されている状態で、冷却液の吐出が開始されてもよい。供給配管内へ圧縮された空気が供給されている状態で、冷却液の吐出が停止されてもよい。この場合、吐出部の外表面への液体の付着に起因して、吐出部の外表面において粉体の塊が形成されるのを抑制するのに有用である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、製造効率を向上させるのに有用な粉砕装置、セメント製造装置、及びセメントの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、セメント製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、吐出部の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ドラムの内部の一例を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、ドラムの内部の一例を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ドラムの内部の一例を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8は、ドラムの内部の一例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。一部の図面にはX軸、Y軸及びZ軸により規定される直交座標系が示される。以下の実施形態では、Z軸が上下方向に対応し、X軸及びY軸が水平方向に対応する。
【0020】
[セメント製造装置]
図1に示されるセメント製造装置1は、セメントを製造する装置(設備)である。セメント製造装置1は、原料工程、焼成工程、及び仕上げ工程を実行することで、セメントを製造する。セメント製造装置1は、例えば、セメントクリンカ製造装置2と、粉砕装置4とを備える。
【0021】
セメントクリンカ製造装置2は、原料工程で生成されたセメント原料を焼成することで、セメントクリンカ(以下、単に「クリンカ」という。)を製造する。セメントクリンカ製造装置2は、例えば、NSP方式のプレヒータと、ロータリキルンと、クリンカクーラとを有する。セメントクリンカ製造装置2によって生成されたクリンカは、粉砕装置4まで運搬される。
【0022】
(粉砕装置)
粉砕装置4は、仕上げ工程に含まれる粉砕工程を実行する装置である。具体的には、粉砕装置4は、クリンカと石膏とを含む粉砕対象物を粉砕しながら、クリンカに石膏を混合させる。粉砕装置4は、仕上げ粉砕を行う装置(仕上げ粉砕機)であり、粉砕装置4によって粉砕されることで得られる粉体が、セメントとして粉砕装置4から排出される。粉砕装置4は、例えば、投入装置6と、ミル装置10と、吸引装置30と、集塵装置40と、温度計測装置50と、冷却装置60と、制御装置100とを備える。
【0023】
投入装置6は、クリンカ投入部8と、石膏投入部9とを有する。クリンカ投入部8は、クリンカを運搬し、ミル装置10に対してクリンカを投入(供給)する。クリンカ投入部8は、例えば、クリンカ用のサイロからミル装置10までクリンカを運搬する。クリンカ投入部8は、竪型ミル等の予備粉砕機によって粉砕された状態のクリンカを運搬及び投入してもよい。石膏投入部9は、石膏を運搬し、ミル装置10に対して石膏を投入(供給)する。石膏投入部9は、例えば、石膏用の置場からミル装置10まで石膏を運搬する。
【0024】
ミル装置10は、粉砕媒体によって粉砕対象物を粉砕する装置である。粉砕媒体は、粉砕対象物を粉砕するためのボール(以下、「粉砕用ボール」という。)であり、例えば、鋼鉄製のボールである。なお、ミル装置10は、チューブミル(仕上げミル)とも称される。ミル装置10は、例えば、ドラム12と、回転駆動部14と、仕切り部22と、供給シュート16と、接続部18とを有する。
【0025】
ドラム12は、複数の(多数の)粉砕用ボールを収容する収容体である。ドラム12は、所定の軸線Axまわりに回転可能に設けられている(
図3及び
図4も参照)。ドラム12は、例えば、水平な一方向(図示のX軸方向)に沿って延びており、円筒状に形成されている。上記軸線Axは、ドラム12の延在方向に沿って延びており、且つ、当該延在方向に直交する断面(図示のY-Z平面)においてドラム12の中心と略一致する。
【0026】
ドラム12は、軸線Axを囲むように設けられた側壁12aを含む。ドラム12の延在方向に直交する断面において、側壁12aは、リング状を呈する。ドラム12の内部には、粉砕対象物の粉砕を行うための内部空間Sが形成されている。内部空間Sは、側壁12aの内面によって規定され、円柱状を呈している。軸線Axに沿った方向において、側壁12aの一端における開口から粉砕対象物が内部空間Sに供給され、側壁12aの他端における開口からセメントが排出される。なお、
図1では、側壁12aの他端部分の図示は省略されている。側壁12aの内壁には、粉砕用ボールを持ち上げるための段差が設けられていてもよい。
【0027】
回転駆動部14は、ドラム12を軸線Axまわりに回転させる駆動部である。回転駆動部14は、例えば、電動モータ等の動力源を含む。ドラム12内(内部空間S)に粉砕対象物が供給された状態で、回転駆動部14がドラム12を軸線Axまわりに回転させる。ドラム12の軸線Axまわりの回転により、内部空間Sにおいて粉砕用ボールと粉砕対象物とが互いに衝突する。その結果、粉砕対象物が粉砕される。
【0028】
仕切り部22は、内部空間Sを軸線Axに沿った方向に並ぶ2つの領域に仕切る部分である。仕切り部22は、軸線Axに交差する(例えば、直交する)ように形成されている。以下では、仕切り部22によって仕切られた一方の領域を「第1領域R1」と称し、他方の領域を「第2領域R2」と称する。第1領域R1と第2領域R2とは、軸線Axに沿った方向において並んでいる。軸線Axに沿った方向(軸方向)において、粉砕対象物が投入される側壁12aの一端、第1領域R1、第2領域R2、及びセメントが排出される側壁12aの他端が、この順に並ぶ。
【0029】
第1領域R1には、複数の粉砕用ボール26が収容され、第2領域R2には、複数の粉砕用ボール28が収容される。粉砕用ボール26の直径は、粉砕用ボール28の直径よりも大きい。第1領域R1において、粉砕対象物がある程度粉砕された後に、第2領域R2において、粉砕された状態の粉砕対象物が更に細かく粉砕される。仕切り部22は、第1領域R1から第2領域R2への粉体の通過を許容し、且つ、粉砕用ボールの通過を阻止するように構成されている。仕切り部22は、第1領域R1において粉砕用ボール26により粉砕された後の粉砕対象物(粉体)のうち、所定の大きさ以下の粉体の通過を許容する。
【0030】
仕切り部22は、例えば、軸線Axまわりにおいて、中央部分に位置する第1仕切部分22aと、第1仕切部分22aの外周に位置する第2仕切部分22bとを含む。第1仕切部分22aは、開口が粉砕用ボールの径よりも小さい網目構造を有する。第2仕切部分22bは、第1仕切部分22aと側壁12aの内面との間に設けられる。第2仕切部分22bは、軸線Axが延びる方向に並ぶ2つの壁部24a,24bを含み、バッファ空間を形成する。2つの壁部24a,24bのうち、第1領域R1を区画する一方には、不図示の複数の開口が設けられている。
【0031】
軸線Axが延びる方向から見て、上記開口の形状は、長方形であってもよい(スリット状であってもよい)。開口の大きさは、第2領域R2において粉砕できる程度の大きさを有する粉砕対象物(粉体)が通過可能となるように設定されている。一例では、開口がスリット状である場合、その短手方向の開口幅は、5mm~15mm程度である。第2仕切部分22bによるバッファ空間には、上記開口から粉体が導入される。第2仕切部分22bには、バッファ空間と第2領域R2とを接続する接続部(不図示)が設けられ、そのバッファ空間が上方に位置するときに、バッファ空間から第2領域R2に粉体が排出される。
【0032】
供給シュート16(供給部)は、粉砕対象物を内部空間Sに供給する。具体的には、供給シュート16は、少なくともクリンカ及び石膏を内部空間Sの第1領域R1に対して供給する。供給シュート16は、筒状に形成されている。供給シュート16は、例えば円筒状又は断面が四角形の角筒状に形成されている。供給シュート16の一方の端部には、粉砕対象物の導入口が設けられている。その導入口は、例えば鉛直上方を向く。
【0033】
供給シュート16の他方の端部は、ドラム12の軸線Axに沿った方向における端部(側壁12aの一方の端部)と接続部18を介して接続されている。供給シュート16の接続部18と接続される端部における開口は、ドラム12(内部空間S)を向く。供給シュート16は、側面視において、導入口が設けられる一端から、接続部18に接続される他端に向かって湾曲状に延びていてもよい。
【0034】
接続部18は、ドラム12と供給シュート16とを接続し、供給シュート16から供給される粉砕対象物を第1領域R1に導く。接続部18は、供給シュート16とドラム12の軸線Axに沿った方向における上記端部との間に位置する。供給シュート16は、第1領域R1に向かうにつれて径が大きくなるように筒状に形成されていてもよい。
【0035】
ミル装置10では、軸線Axに沿った方向において、供給シュート16、接続部18、第1領域R1、仕切り部22、及び第2領域R2が、この順で並ぶ。供給シュート16から第1領域R1に供給された粉砕対象物は、ドラム12の回転により、第1領域R1に収容された粉砕用ボール26によって粉砕される。仕切り部22の上記開口を通過できる程度まで粉砕された状態の粉砕対象物が、仕切り部22を介して第2領域R2に導入される。第2領域R2では、ドラム12の回転により、第2領域R2に収容された粉砕用ボール28によって粉砕対象物が更に細かく粉砕される。
【0036】
吸引装置30(吸引部)は、ドラム12の内部空間Sの第2領域R2からガスを吸引するファンである。吸引装置30は、内部空間Sが負圧となるように、内部空間Sに含まれるガスをドラム12の外に排出する。集塵装置40(集塵部)は、吸引装置30によって内部空間Sから吸引されたガスから微粉を捕集する装置である。集塵装置40は、例えば、内部空間Sから排出されたガスに含まれる微粉を捕集するフィルタを含む。吸引装置30及び集塵装置40によって、内部空間Sに浮遊する微粉(セメントの微粉)を回収することができる。
【0037】
温度計測装置50は、セメントの温度を示す情報(以下、「温度情報」という。)を取得する装置である。温度計測装置50は、例えば、ドラム12の排出口(不図示)から排出された直後のセメントの温度を計測する。セメントが排出される排出口は、ドラム12において粉砕対象物が供給される端部とは反対側に(第2領域R2に)設けられている。その排出口には、複数のスリットが形成された仕切り板が設けられてもよく、当該スリットを通過した粉体が、セメントとしてドラム12の外に排出されてもよい。温度計測装置50は、いかなる方式でセメントの温度を計測してもよい。温度計測装置50は、取得した温度情報を制御装置100に出力する。
【0038】
冷却装置60は、ドラム12の内部空間Sに冷却液を供給する装置である。上述したように、粉砕対象物を粉砕するためにドラム12が軸線Axまわりに回転している。この回転に伴い、内部空間S(第1領域R1)では多数の粉砕用ボール26それぞれにおいて、粉砕対象物又はドラム12の側壁12a等との衝突に起因した摩擦熱が発生する。摩擦熱の発生により、内部空間Sの温度が上昇すると、粉砕対象物に含まれる石膏の一部が半水石膏に変化してしまい、セメントの品質が低下するおそれがある。冷却装置60は、内部空間Sの温度を低下させるために、内部空間Sに対して冷却液を供給する。冷却装置60は、冷却液として水(例えば、工業用水)を供給してもよく、冷却装置60が供給する水の温度は、常温であってもよい。
【0039】
冷却装置60は、吐出部62を有する。吐出部62は、ドラム12の一方の端部(供給シュート16が設けられる端部)から内部空間Sの第1領域R1に向けて冷却液を吐出する。吐出部62は、冷却液の吐出が可能なノズルであってもよい。吐出部62は、例えば、液滴の状態である水を吐出するノズル(スプレーノズル)である。吐出部62は、1流体ノズルであってもよく、2流体ノズルであってもよい。
【0040】
吐出部62から吐出される冷却液を構成する複数の液滴の粒子径の平均値(以下、「平均粒子径」という。)は、100μm~1000μmである。言い換えると、吐出部62(例えば、ノズル)は、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴を第1領域R1に吐出するように構成されている。液滴が吸引装置30によって吸引されるのを抑制する観点から、吐出部62から吐出される複数の液滴の平均粒子径の最小値は、150μm、200μm、250μm、又は300μmであってもよい。液滴を吐出する吐出部の製造を容易にする観点から、吐出部62から吐出される複数の液滴の平均粒子径の最大値は、900μm、850μm、800μm、750μm、又は700μm以下であってもよい。
【0041】
吐出部62は、吐出する冷却液をどのような方式により複数の液滴の状態にしてもよい。複数の液滴の粒子径は、公知の種々の方法により所望の範囲に調節される。吐出部62から吐出される液滴の粒子径は、液浸法及びレーザ法のいずれかの測定方法によって測定されてもよい。液滴の平均粒子径は、ザウター平均により求められてもよい。
【0042】
図2には、吐出部62(ノズル)の一例が模式的に示されている。吐出部62には、例えば、第1領域R1を向く1つの吐出口62aが設けられる。吐出口62aが第1領域R1を向くとは、吐出口62aの開口縁を含む平面(以下、「開口平面」という。)が、第1領域R1を向くことである。開口平面は、吐出口62aの開口縁を外縁とする仮想的な平面である。吐出口62aの開口縁が円である場合、開口平面は円形となる。吐出部62による冷却液は、吐出部62(ノズル本体)の中心軸線CAに沿って吐出される。中心軸線CAは、開口平面の中心を通り、その開口平面に垂直な軸線である。
【0043】
吐出部62は、中心軸線CAを中心に、その周囲に吐出範囲が広がるように、複数の液滴を吐出してもよい。吐出部62から吐出される複数の液滴の拡散形状(スプレーパターン)では、断面が充円形状であってもよい。断面が充円形状である場合、中心軸線CAに直交する面において、中心軸線CAに略一致する中心まわりの円の内側の領域に複数の液滴が点在する。本開示では、吐出部62の中心軸線CAを、吐出部62からの冷却液の吐出方向(吐出ライン)と定義する。
【0044】
続いて、
図3及び
図4を用いて、吐出部62による冷却液の吐出方向について、その一例を説明する。ここで、ミル装置10において粉砕対象物の流れを基準に、「上流」及び「下流」の用語を使用する。ドラム12において、粉砕対象物が供給されるドラム12の端部が上流に位置し、粉砕対象物が粉砕された後に生成されるセメントが排出されるドラム12の端部が下流に位置する。また、上流から下流を見たときを基準に、「前後」、「奥」、及び「左右」の用語を使用する。前後方向は、X軸方向に対応し、左右方向は、Y軸方向に対応する。
【0045】
図3には、軸線Axを通り且つ水平な断面に沿ってドラム12を切断したときに得られる平面図が模式的に示されている。
図4には、軸線Axを通り且つ垂直な断面に沿ってドラム12を切断したときに得られる側面図が模式的に示されている。
図4には、左から右を見た場合の側面図が示されている。
図3に示されるように、吐出部62は、左右方向において軸線Axよりも左に配置されてもよい。吐出部62は、吐出口62aが鉛直斜め下方を向くように配置されてもよい。ドラム12内での冷却効率を向上させるように、吐出部62による冷却液の吐出方向に延びる仮想的な線(以下、「仮想線IL」という。)の前後方向及び上下方向での傾きが設定されている。
【0046】
第1領域R1は、軸線Axが延びる軸方向の中央(図において「BL」で示す境界)において2つの領域に区切ることができる。境界BLで区切られる2つの領域のうちの上流に位置する領域を「領域R11」とし、下流に位置する領域を「領域R12」と称する。領域R11は、ドラム12の側壁12aの上流に位置する端部と境界BLとの間に位置し、領域R12は、境界BLと仕切り部22との間に位置する。領域R11、領域R12、及び仕切り部22が、軸線Axの軸方向に沿って、この順で並ぶ。すなわち、領域R12(下流側の領域)は、前後方向において、領域R11(上流側の領域)に対して奥に位置する。
【0047】
吐出部62は、仮想線ILが、領域R12において第1領域R1を形成する内壁と交差するように、配置されている。一例では、
図3又は
図4に示されるように、仮想線ILは、領域R12に位置する仕切り部22と交差する。以下、仮想線ILと仕切り部22(より詳細には、仕切り部22の第1領域R1を向く表面)とが互いに交わる点を「交点CP」と定義する。ドラム12内の冷却効率は、ドラム12内に収容されている粉砕用ボール26に直接当たる冷却液の量に依存すると考えられる。粉砕用ボール26に直接当たる冷却液の量を多くする観点から、交点CPの左右方向及び上下方向の位置が設定される。
【0048】
仮想線ILは、第1領域R1を、軸線Axの軸方向及び上下方向に直交する左右方向における中央で区切った2つの領域のうち、軸線Axまわりの周方向に沿ってドラム12の側壁12aが下から上に移動する領域において、仕切り部22と交差してもよい。
図3に示される例では、後から前を見て(上流から下流を見て)、ドラム12が、軸線Axまわりに反時計方向に回転する。この場合、仮想線ILは、第1領域R1を左右方向における中央で区切った2つの領域のうち、右に位置する領域において仕切り部22と交差する。仮想線ILは、上方から見て、軸線Axと交差してもよい。
【0049】
仮想線ILは、第1領域R1の高さの20%~50%の範囲において、仕切り部22と交差してもよい。第1領域R1の高さは、第1領域R1の上下方向における長さに相当する。
図4では、第1領域R1の高さが「hd」で示されており、高さhdの20%の高さが「hm」で示されている。高さhdの50%の高さが、軸線Axの高さに相当する。交点CPは、上下方向において、高さhm以上であり、且つ軸線Axの高さ以下である高さに位置する。交点CPの高さの最小値は、冷却効率を更に高める観点から、高さhdの20%に代えて、高さhdの25%、高さhdの30%、又は高さhdの35%であってもよい。交点CPは、第1領域R1の高さの30%~50%の範囲に位置していてもよい。交点CPの高さの下限は、例えば、ドラム12を回転させずに静止しているときに、ドラム12内に残る粉砕対象物(セメントの原料)の高さよりも上方となるように設定される。
【0050】
交点CPは、吐出部62から吐出される冷却液(複数の液滴)が到達する位置を意味せず、吐出部62からの吐出方向の向きを規定する。吐出部62は、冷却液の大部分(例えば、90%以上)が、仕切り部22に到達しないように、複数の液滴を吐出してもよい。
【0051】
図1に戻り、冷却装置60は、例えば、吐出部62に加えて、供給配管64と、液送出装置70と、噴射装置80とを有する。供給配管64は、吐出部62まで冷却液を導くことで、吐出部62に対して冷却液を供給する管である。供給配管64の先端(下流に位置する端部)には、吐出部62が設けられている。供給配管64は、供給シュート16の側壁を貫通するように設けられている。この場合、供給配管64の一部が供給シュート16内に位置し、供給配管64の他の一部が供給シュート16の外に位置する。供給配管64の先端及び吐出部62は、供給シュート16内に位置していてもよい。供給配管64は、水平方向に対して傾斜した状態で設けられてもよい。供給配管64は、第1領域R1に向かって斜め下方に傾いていてもよい。
【0052】
液送出装置70は、吐出部62が吐出するための冷却液を供給配管64に送り出す装置である。液送出装置70は、例えば、液源72と、送出管74と、開閉バルブ76とを有する。液源72は、冷却液の液源であり、例えば、冷却液を貯留するタンクと、冷却液を圧送可能なポンプとを含む。液源72に含まれるポンプによって、吐出部62から吐出される冷却液の圧力が調節される。液源72のポンプは、吐出部62から吐出される冷却液の単位時間あたりの吐出量が、所定の設定範囲に含まれるように動作してもよい。送出管74は、液源72と供給配管64に設けられた冷却液の導入口とを接続し、液源72からの冷却液を供給配管64内まで導く。
【0053】
開閉バルブ76は、吐出部62が冷却液を吐出する状態と、吐出部62が冷却液を吐出しない状態とを切り替える。開閉バルブ76は、送出管74が形成する流路に設けられており、制御装置100からの動作指示に基づいて、送出管74内の流路の開閉状態を切り替える。例えば、開閉バルブ76が開状態である場合に、液送出装置70から供給配管64内に冷却液が導入され、吐出部62から冷却液が吐出される。開閉バルブ76が閉状態である場合に、液送出装置70から供給配管64内への冷却液の導入が停止され、吐出部62からの冷却液の吐出が停止する。
【0054】
噴射装置80(噴射部)は、供給配管64内の冷却液が吐出部62から排出されるように、圧縮された空気を供給配管64内に噴射する装置である。冷却装置60によって噴射される空気(以下、「圧縮エア」という。)は、圧力が高められることで体積が縮小した状態の空気である。噴射装置80は、例えば、供給源82と、送出管84と、開閉バルブ86とを含む。供給源82は、圧縮エアの供給源であり、例えば、エアコンプレッサーである。送出管84は、供給源82と供給配管64に設けられた圧縮エアの導入口とを接続し、供給源82からの圧縮エアを供給配管64内まで導く。
【0055】
開閉バルブ86は、供給配管64内に圧縮エアが噴射される状態と、供給配管64内に圧縮エアが噴射されない状態とを切り替える。開閉バルブ86は、送出管84が形成する流路に設けられており、制御装置100からの動作指示に基づいて、送出管84内の流路の開閉状態を切り替える。例えば、開閉バルブ86が開状態である場合に、噴射装置80から圧縮エアが供給配管64内に導入されて、供給配管64内に存在する冷却液の少なくとも一部が吐出部62から排出される。開閉バルブ86が閉状態である場合に、噴射装置80から供給配管64内への圧縮エアの導入が停止する。
【0056】
制御装置100は、少なくとも、温度計測装置50、液送出装置70、及び噴射装置80を制御するコンピュータである。制御装置100は、例えば、
図5に示されるように、回路110を有する。回路110は、少なくとも一つのプロセッサ112と、メモリ114と、ストレージ116と、入出力ポート118と、タイマ119とを含む。ストレージ116は、粉砕装置4に含まれる各種装置を制御するためのプログラムを記録する。ストレージ116は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0057】
メモリ114は、ストレージ116からロードされたプログラム、プロセッサ112の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ112は、メモリ114と協働してプログラムを実行することで、粉砕装置4に含まれる各装置に対する制御を実行する。入出力ポート118は、プロセッサ112からの指令に応じ、温度計測装置50、液送出装置70、及び噴射装置80等の間で電気信号の入出力を行う。タイマ119は、プロセッサ112からの指令により所定周期のクロックパルスをカウントして経過時間を計測する。
【0058】
[セメントの製造方法]
上述のセメント製造装置1において、セメントを製造することができる。セメント製造装置1で実行されるセメントの製造工程(製造方法)は、セメントクリンカ製造装置2においてクリンカを製造するクリンカの製造工程と、粉砕装置4においてクリンカを粉砕する粉砕工程とを含む。クリンカの上記製造工程は、プレヒータにおいてセメント原料を予熱及び仮焼する工程と、予熱及び仮焼されたセメント原料をロータリキルンにおいて焼成することで、クリンカを生成する工程と、ロータリキルンから排出されたクリンカをクリンカクーラにおいて冷却する工程とを含む。
【0059】
上記粉砕工程では、粉砕装置4を用いて、クリンカに少なくとも石膏を加えて得られる粉砕対象物を粉砕する工程(仕上げ用の粉砕工程)が行われる。この粉砕工程が実行されることで、クリンカと石膏とが粉砕されながら混合されてセメントが得られる。粉砕工程は、ドラム12を軸線Axまわりに回転させる工程と、第1領域R1に対して粉砕対象物を供給する工程と、吐出部62を用いて第1領域R1に対して冷却液を供給することで、ドラム12内を冷却する冷却工程とを含む。この冷却工程では、平均粒子径が100μm~1000μmである複数の液滴を吐出するように構成された吐出部62を用いて、ドラム12の軸線Axに沿った方向における一方の端部から、複数の液滴を含む冷却液が第1領域R1に吐出される。
【0060】
制御装置100は、上記冷却工程において、ドラム12から排出されるセメントの温度が所定の目標温度以下に維持されるように、温度計測装置50及び冷却装置60を制御してもよい。目標温度は、例えば、粉砕対象物に含まれる石膏の一部が、半水石膏に変化しない程度の温度に設定される。
図6は、冷却工程において制御装置100が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
この一連の処理では、回転駆動部14によるドラム12の軸線Axまわりの回転、投入装置6による粉砕対象物の投入、吸引装置30による吸引、及び集塵装置40による捕集が継続して実行される。また、初期状態では、吐出部62からの冷却液の吐出は停止している。制御装置100は、最初に、ステップS11を実行する。ステップS11では、例えば、制御装置100が、温度計測装置50から、ドラム12から排出された直後のセメントの温度を示す温度情報を取得する。
【0062】
次に、制御装置100は、ステップS12を実行する。ステップS12では、例えば、制御装置100が、ステップS11で取得された温度情報が示す温度が、所定の設定温度を上回っているか否かを判定する。所定の設定温度は、例えば、上記目標温度と同じ値に設定されている。ステップS12において、セメントの温度が設定温度以下であると判断された場合(ステップS12:NO)、制御装置100が実行する処理は、ステップS11に戻る。この場合、制御装置100は、セメントの温度が設定温度を上回るまで、所定の周期でステップS11,S12を繰り返し実行してもよい。
【0063】
一方、ステップS12において、セメントの温度が設定温度よりも大きいと判断された場合(ステップS12:YES)、制御装置100が実行する処理は、ステップS13に進む。ステップS13では、例えば、制御装置100が、供給配管64内への圧縮エアの噴射を開始するように、噴射装置80の開閉バルブ86を閉状態から開状態に切り替える。
【0064】
次に、制御装置100は、ステップS14,S15を実行する。ステップS14では、例えば、制御装置100が、吐出部62からの冷却液の吐出を開始するように、液送出装置70の開閉バルブ76を閉状態から開状態に切り替える。これにより、噴射装置80により供給配管64内に圧縮エアが噴射されている状態で、吐出部62からの冷却液の吐出が開始される。ステップS15では、例えば、制御装置100が、供給配管64内への圧縮エアの噴射を停止するように、開閉バルブ86を開状態から閉状態に切り替える。
【0065】
次に、制御装置100は、ステップS16,S17を実行する。ステップS16では、例えば、制御装置100が、ステップS11と同様に、温度計測装置50から温度情報を取得する。ステップS17では、例えば、制御装置100が、ステップS16で得られた温度情報が示すセメントの温度が、所定の設定温度を下回っているか否かを判定する。ステップS17で用いる設定温度は、ステップS12で用いる設定温度と同様に、上記目標温度と同じ値に設定されていてもよい。又は、ステップS17で用いる設定温度は、ステップS12で用いる設定温度よりも低くてもよい。
【0066】
ステップS17において、セメントの温度が設定温度以上であると判断された場合(ステップS17:NO)、制御装置100が実行する処理は、ステップS16に戻る。この場合、制御装置100は、セメントの温度が設定温度を下回るまで、所定の周期でステップS16,S17を繰り返し実行してもよい。この間、吐出部62から冷却液の吐出は継続されている。
【0067】
次に、制御装置100は、S18,S19を実行する。ステップS18では、例えば、制御装置100が、供給配管64内への圧縮エアの噴射を開始するように、開閉バルブ86を閉状態から開状態に切り替える。ステップS19では、例えば、制御装置100が、吐出部62からの冷却液の吐出を停止するように開閉バルブ76を開状態から閉状態に切り替える。これにより、噴射装置80により供給配管64内に圧縮エアが噴射されている状態で、吐出部62からの冷却液の吐出が停止される。
【0068】
次に、制御装置100は、ステップS20を実行する。ステップS20では、例えば、制御装置100が、供給配管64内への圧縮エアの噴射を停止するように、開閉バルブ86を開状態から閉状態に切り替える。以降、制御装置100が実行する処理は、ステップS11に戻り、制御装置100は、粉砕装置4を稼働している間、ステップS11~S20の一連の処理を繰り返し実行する。以上の一連の処理により、ドラム12から排出されるセメントの温度が目標温度に近づくように、冷却装置60が制御される。
【0069】
上述した一連の処理は一例であり、適宜変更可能である。上記一連の処理において、制御装置100は、一のステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。制御装置100は、いずれかのステップを省略してもよく、いずれかのステップにおいて上述の例とは異なる処理を実行してもよい。制御装置100は、冷却装置60からの冷却液の供給を継続しつつ、セメントの温度に応じて、その温度が目標温度に近づくように、吐出部62からの冷却液の吐出量を調節してもよい。
【0070】
上述の例では、吐出部62からの冷却液の吐出方向に沿う仮想線ILが、仕切り部22に交差するが、仮想線ILは、第1領域R1内の奥側の領域R12において、側壁12aと交差していてもよい。
図7及び
図8はそれぞれ、仮想線ILが領域R12において側壁12aと交差する場合のドラム12の内部を示す平面図と側面図である。
図7及び
図8において、仮想線ILと側壁12aとの交点が「CP1」で示されている。仮想線ILは、側壁12aのうちの境界BLと仕切り部22との間に位置する部分と交差している。
【0071】
仮想線ILは、第1領域R1(領域R12)を左右方向における中央で区切った2つの領域のうち、右に位置する領域において側壁12aと交差してもよい。交点CP1は、上方から見て、軸線Axよりも右に位置する。仮想線ILは、第1領域R1の高さの20%~50%の範囲において、側壁12aと交差してもよい。交点CP1は、第1領域R1の高さhdの20%~50%の範囲、又は第1領域R1の高さhdの30%~50%の範囲に位置していてもよい。
【0072】
吐出部62は、上方から見て、軸線Axよりも右に配置されてもよい。この場合、上方から見て、仮想線ILと軸線Axとが交差しない。吐出部62は、上方から見て、軸線Ax上に配置されていてもよい。仮想線ILは、水平であってもよく、吐出部62は、斜め上方に向けて冷却液を吐出してもよい。
【0073】
後から前を見て(上流から下流を見て)、ドラム12は、時計回りに回転してもよい。この場合、交点CP,CP1が、第1領域R1(領域R12)のうちの軸線Axよりも左の領域に位置してもよい。
【0074】
仮想線ILが、領域R11において側壁12aと交差せずに、領域R12において仕切り部22又は側壁12aと交差するように配置されていれば、交点CP,CP1の高さは、第1領域R1の高さhdの20%よりも低くてもよく、高さhdの50%(軸線Axの高さ)よりも高くてもよい。また、後から前を見て、ドラム12が反時計回りに回転する場合に、交点CP,CP1が、第1領域R1において軸線Axよりも左に位置していてもよい。
【0075】
[実施形態の効果]
液滴ではない流水を吐出部から吐出すると局所的な冷却により、ドラム12内の冷却効率が低下し得る。局所的な冷却を避けるために、吐出部から複数の液滴を吐出することが考えられる。平均粒子径が100μmよりも小さいミスト状の液を第1領域R1に吐出すると、液滴が小さいので第1領域R1から第2領域R2に仕切り部22を介して液滴が流れてしまい、仕切り部22において、粉砕対象物から生じる粉体が液滴によって固まってしまうおそれがある。その結果、仕切り部22において目詰まりが発生してしまう運転トラブルが生じ、製造効率が低下してしまう可能性がある。これに対して、上記粉砕装置4は、平均粒子径が100μm以上の液滴が吐出部62から吐出されるので、仕切り部22を介して第2領域R2に液滴が流れ難い。そのため、複数の液滴により仕切り部22において目詰まりが発生してしまう可能性を低減できる。従って、粉砕装置4は、製造効率を向上させるのに有用である。
【0076】
粉砕装置4は、第2領域R2からガスを吸引する吸引装置30と、吸引装置30によって吸引されたガスに含まれる微粉を捕集する集塵装置40とを備える。液滴の大きさを100μm以上とすることで、吸引装置30の吸引によっても液滴が移動し難い。そのため、仕切り部22を介した液滴の移動に起因した運転トラブルを回避しつつ、吸引装置30と集塵装置40とによって、内部空間Sに浮遊する微粉を回収して、微粉に起因した運転トラブルの発生を抑制できる。従って、製造効率を向上させるのに更に有用である。
【0077】
ドラムの回転による粉砕用ボール(粉砕用ボール26)とドラム12の側壁12a又は粉砕対象物との衝突に伴い、ドラム12内の温度が上昇してしまう。吐出部62による冷却液の吐出方向に延びる仮想線ILが、上流側の領域R11において側壁12aと交差するように、吐出部62を配置することも考えられる。しかしながら、この場合、下流側の領域R12に比べて、上流側の領域R11に対して吐出部62から多くの冷却液が供給される。その結果、領域R12において粉砕用ボール26に対して当たる冷却液の量が少なくなり、ドラム12内の第1領域R1全体で温度上昇を抑制し難い。粉砕装置4では、吐出方向に延びる仮想線ILが、領域R12で側壁12a又は仕切り部22と交差するので、領域R11及び領域R12の双方において、粉砕用ボール26に対して冷却液を当てることができ、冷却効率が向上する。従って、粉砕装置4は、製造効率を向上させるのに有用である。
【0078】
仮想線ILは、第1領域R1の高さhdの20%~50%の範囲において、ドラム12の側壁12a又は仕切り部22と交差する。第1領域R1の高さhdの20%以上とすることで、ドラム12の下の方に存在する粉砕対象物に対して多くの冷却液が当たってしまい、粉砕対象物に含まれる成分との反応に多くの冷却液が費やされることを抑制できる。また、第1領域R1の高さhdの50%以下とすることで、粉砕用ボール26に多くの冷却液を直接当てることができる。そのため、冷却効率を更に向上させることができる。従って、粉砕対象物を粉砕してセメントを製造する工程での製造効率を向上させるのに更に有用である。
【0079】
仮想線ILは、第1領域R1を軸方向及び上下方向に直交する左右方向における中央で区切った2つの領域のうち、軸線Axまわりの周方向に沿ってドラム12の側壁12aが下から上に移動する一方の領域において、側壁12a又は仕切り部22と交差する。ドラム12が回転する際には、軸線Axまわりの周方向に沿って側壁12aが下から上に移動する一方の領域に、多くの粉砕用ボール26が存在する。上記構成とすることで、粉砕用ボール26に多くの冷却液を直接当てることができ、冷却効率を更に向上させることができる。従って、粉砕対象物を粉砕してセメントを製造する工程での製造効率を向上させるのに更に有用である。
【0080】
粉砕装置4は、吐出部62に対して冷却液を供給する供給配管64と、供給配管64内に圧縮された空気を供給する噴射装置80とを備える。冷却液の吐出を開始する際、又は冷却液の吐出を停止する際に、噴射装置80によって圧縮された空気(圧縮エア)を噴射することで、吐出部62の外表面に冷却液が付着してしまうのを抑制できる。従って、吐出部62の外表面への液体の付着に起因して、粉砕対象物から生じる粉体の塊が形成されるのを抑制するのに有用である。
【実施例0081】
続いて、実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0082】
上述した
図1~
図4に示される粉砕装置4を用いた実施例1~3、及び冷却装置60とは異なる冷却装置を有する粉砕装置を用いた比較例1~3において、冷却効率を検証した。実施例1~3及び比較例1~3での条件を下記の表1,2に示す。表2は、表1における散水条件の内容を示す。
【0083】
【0084】
【0085】
詳細には、実施例1~3では、粉砕装置4を連続して12時間運転している間に、セメントの温度を目標温度に維持するように冷却装置60を制御した。吐出部62として、平均粒子径が320μm~640μmである複数の液滴を吐出するように構成されたノズルを用いた。仮想線ILが仕切り部22で交差し、交点CPが、左右方向において粉砕用ボールが持ち上げられる側の領域に位置し、且つ、第1領域R1の高さhdの20%~50%の高さに位置するように、吐出部62を配置した。セメントの温度を目標温度に維持するために、上述の
図6に示される一連の処理と同様に冷却装置60を制御した。
【0086】
比較例1~3では、上述の冷却装置60を有しない粉砕装置を連続して12時間運転している間に、セメントの温度を目標温度に維持するように、その粉砕装置が有する冷却装置を制御した。ミル装置にクリンカを供給するコンベア上でクリンカに冷却液を供給する冷却装置を用いた。セメントの温度を目標温度に維持するために、注水箇所を除き、
図6に示される一連の処理と同様に冷却装置を制御した。冷却装置からの冷却液の略全てが、コンベア上で運搬されているクリンカに供給される(当たる)ように、冷却装置からの冷却液の供給量を調節した。
【0087】
互いに同じ原料内訳で同じ目標温度に設定した実施例1及び比較例1で検証した際の外気温の平均値は20℃であった。互いに同じ原料内訳で同じ目標温度に設定した実施例2及び比較例2で検証した際の外気温の平均値は21℃であった。互いに同じ原料内訳で同じ目標温度に設定した実施例3及び比較例3で検証した際の外気温の平均値は20℃であった。冷却効率を評価するために、ミル装置内に投入した原料(粉砕対象物)の全量に対する注水量の割合(重量%)を算出した。表3に、評価結果を示す。
【0088】
【0089】
表3において、投入前のクリンカ温度は、ミル装置の内部に投入される前のクリンカの温度の平均値であり、比較例1~3では、冷却装置によって冷却液が供給される前のクリンカの温度である。互いに対応する実施例及び比較例において、クリンカ温度が異なるのは、セメントクリンカ製造装置2の運転状況に応じて、ミル装置まで運搬されてくるクリンカの温度が変動するためである。表3の結果から、実施例1~3及び比較例1~3の双方において、ミル装置(ドラム12)から排出されるセメントの温度が目標温度に近い値に維持されていることがわかる。
【0090】
互いに対応する実施例及び比較例での注水率を比較すると、実施例のほうが、比較例に比べて注水率が低いことがわかる。すなわち、実施例では、比較例に比べて、少ない水の量でセメント温度を目標温度にすることができ、冷却効率が向上していることがわかる。
1…セメント製造装置、2…セメントクリンカ製造装置、4…粉砕装置、12…ドラム、12a…側壁、14…回転駆動部、16…供給シュート、22…仕切り部、R1…第1領域、R2…第2領域、30…吸引装置、40…集塵装置、62…吐出部、IL…仮想線、CP,CP1…交点、64…供給配管、80…噴射装置。