(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029115
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】貯水池決壊判定方法、貯水池決壊判定プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器、貯水池決壊判定装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20230224BHJP
E02B 1/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G06Q50/26
E02B1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135226
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】300076736
【氏名又は名称】ニタコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉迫 宏
(72)【発明者】
【氏名】三好 学
(72)【発明者】
【氏名】安藝 浩資
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】貯水池への土砂の流入に起因する被災のリスクを評価可能な貯水池決壊判定方法等を提供する。
【解決手段】土砂の流入による貯水池の決壊の可能性を判定する貯水池決壊判定方法は、貯水池の周辺の地形に関する情報に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入量を演算する工程と、貯水池内への土砂の流入に起因して該貯水池の水位が上昇する堤体の越流水深又は流体力を算出する工程と、算出された越流水深又は流体力に基づいて、貯水池の決壊の発生の有無を判定する工程とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂の流入による貯水池の決壊の可能性を判定する貯水池決壊判定方法であって、
貯水池の周辺の地形に関する情報に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入量を演算する工程と、
前記貯水池内への土砂の流入に起因して該貯水池の水位が上昇する堤体の越流水深又は堤体に作用する流体力を算出する工程と、
前記算出された越流水深又は流体力に基づいて、前記貯水池の決壊の発生の有無を判定する工程と、
を含む貯水池決壊判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記堤体の越流水深又は流体力を算出する工程が、堤体に作用する流体力を算出する工程を含み、
前記貯水池の決壊の発生を判定する工程は、前記算出された流体力が、堤体の許容荷重を上回った際には、堤体越流の発生の有無によらず貯水池の決壊が発生すると判定するものである貯水池決壊判定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記堤体の越流水深又は流体力を算出する工程が、越流水深を算出する工程を含み、
前記貯水池の決壊の発生を判定する工程が、前記算出された越流水深と、前記貯水池の堤体高さ又は洪水吐高さとを比較し、
前記貯水池の堤体越流が生じる場合には決壊が発生し、
前記貯水池の堤体越流が生じない場合には決壊が発生しないと判定するものである貯水池決壊判定方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記越流水深又は流体力の算出を、平面二次元不定流解析又は水収支計算により行う貯水池決壊判定方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の貯水池決壊判定方法であって、
貯水池の周辺の地形に関する情報に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入量を演算する工程が、前記貯水池内に土砂が流入する流入条件を設定する工程を含んでなる貯水池決壊判定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記貯水池内に土砂が流入する流入条件を設定する工程が、貯水池への土砂流入による流動中深さと速度、土砂流入後の各時刻における流入量の少なくともいずれかを、前記流入条件として設定するものである貯水池決壊判定方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の貯水池決壊判定方法であって、
貯水池の周辺の地形に関する情報に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入量を演算する工程が、表示部に表示された貯水池を含む地図上に、土砂の流入点、決壊点、洪水吐による流出点をそれぞれ設定する工程を含む貯水池決壊判定方法。
【請求項8】
土砂の流入による貯水池の決壊の可能性を判定する貯水池決壊判定方法であって、
前記貯水池に流入する土砂量を求める工程と、
横軸に時間軸を、縦軸に流量をそれぞれ設定した、前記貯水池への流入量の時間変化を示すハイドログラフを、波形を変化させた複数のパターンを演算する工程と、
前記演算された複数のハイドログラフのパターン内で、危険と思われる一以上のパターンのハイドログラフを選択する工程と、
前記選択されたパターンのハイドログラフに対して、前記貯水池の水深又は流体力を演算する工程と、
前記演算された水深又は流体力に基づいて、前記貯水池での堤体越流又は堤体の許容荷重の超過を判定し、当該堤体越流又は許容荷重の超過をもって決壊の有無を判定する工程と、
を含む貯水池決壊判定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記ハイドログラフの複数のパターンを演算する工程が、
ハイドログラフを変化させる工程と、
ハイドログラフを求める工程と、
平面二次元不定流解析又は水収支計算による堤体越流又は堤体の許容荷重の超過を判定する工程と、
ハイドログラフを再度変化させて、上記各工程を所定回数繰り返す工程と、
を含む貯水池決壊判定方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記フラックスを計算する工程が、前記メッシュ間の水位差に応じて、
平面二次元不定流解析に従って演算する工程と、
段落ち流れの計算を行う工程の
いずれかを含む貯水池決壊判定方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記演算された複数のハイドログラフのパターン内で、危険と思われる一以上のパターンのハイドログラフを選択する工程が、越流水深が最も高くなるパターン、又は流体力が最大となるパターンのハイドログラフのいずれかの選択を含むものである貯水池決壊判定方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記土砂量を求める工程が、ハイドログラフの面積を算出して行われる貯水池決壊判定方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の貯水池決壊判定方法であって、
前記土砂量を求める工程が、入力データとして、
計画規模の年超過確率の降雨量(原則として24時間雨量又は日雨量の100年超過確率)Pp(mm),集水面積(流域面積)A(km2),流動中の土石流濃度Cd,空隙率Kv,流出補正率Kf2の少なくともいずれかを含む貯水池決壊判定方法。
【請求項14】
土砂の流入による貯水池の決壊の可能性を判定する貯水池決壊判定プログラムであって、
前記貯水池に流入する土砂量を求める機能と、
横軸に時間軸を、縦軸に流量をそれぞれ設定した、前記貯水池への流入量の時間変化を示すハイドログラフを、波形を変化させた複数のパターンを演算する機能と、
前記演算された複数のハイドログラフのパターン内で、危険と思われる一以上のパターンのハイドログラフを選択する機能と、
前記選択されたパターンのハイドログラフに対して、前記貯水池の水深又は流体力を演算する機能と、
前記演算された水深又は流体力に基づいて、前記貯水池での堤体越流又は堤体の許容荷重の超過の有無を判定し、当該堤体越流又は許容荷重の超過の発生でもって決壊の有無を判定する機能と、
をコンピュータに実現させるための貯水池決壊判定プログラム。
【請求項15】
請求項14のプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体または記憶した機器。
【請求項16】
土砂の流入による貯水池の決壊の可能性をシミュレーションにより判定する貯水池決壊判定装置であって、
前記貯水池内に土砂が流入する流入条件を設定する流入条件設定部と、
前記流入条件設定部で設定された流入条件に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入土砂量と、演算された流入土砂量に基づき、前記貯水池内への当該流入土砂量に係る土砂の流入に起因して該貯水池の水位が上昇する越流水深又は流体力を算出し、前記算出された越流水深により、又は堤体の許容荷重と流体力の比較により、前記貯水池の決壊の発生の有無を判定する演算部と、
を備え、
前記演算部が前記貯水池の決壊の発生を判定する基準が、前記算出された越流水深と、前記貯水池の堤体高さ又は洪水吐高さとを比較し、又は堤体の許容荷重と流体力とを比較し、
前記貯水池の堤体越流又は許容荷重の超過が生じる場合には決壊が発生し、
前記貯水池の堤体越流又は許容荷重の超過が生じない場合には決壊が発生しない、
と判定するよう構成してなる貯水池決壊判定装置。
【請求項17】
請求項16に記載の貯水池決壊判定装置であって、
前記演算部が、前記流体力を算出し、該算出された流体力が、堤体の許容荷重を上回った際には、堤体越流の発生の有無によらず貯水池の決壊が発生すると判定するよう構成してなる貯水池決壊判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂流入による貯水池決壊判定方法、貯水池決壊判定プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器、貯水池決壊判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ため池は全国に約16万か所存在し、管理及び監視体制の弱体化や施設の劣化していることから、研究開発が実施されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また豪雨に伴う土石流により、下流に位置するため池が被災する事例がある。例えば平成21(2009)年中国・九州北部豪雨:被害が甚大だった防府市で、全ため池の9割で土砂流入があった。また平成26(2014)年8月豪雨:被害が甚大だった広島市や京都府福知山市・兵庫県丹波市において、調査対象ため池の全てで土砂流入があった。さらに平成29(2017)年九州北部豪雨:被災後、農研機構で調査した13か所のため池のうち、10か所で土砂の流入があった。さらにまた平成30(2018)年7月豪雨:東広島市黒瀬町の横池、大池などでは上流域からの土石流がため池に流入したことにより決壊した。
【0004】
一方で土石流等の発生する可能性がある地区として、国交省が土石流警戒区域を指定している(https://www.mlit.go.jp/river/sabo/sinpoupdf/gaiyou.pdf)。
【0005】
ため池の上流域が土石流の発生する可能性がある地区においては、ため池は被災するリスクがある。土石流等の発生する可能性がある地区内にある、位置が特定できる防災重点ため池(決壊した場合の浸水区域に、家屋や公共施設等が存在し、人的被害を与えるおそれのあるため池)について調べたところ、少なくないため池が土砂災害に対して被災するリスクがあることが判明した。このようなことから、農水省委託プロ現場ニーズ対応型研究(2021~)においても、土石流に対する研究開発を実施することとなっており、研究開発が急がれる課題となっている。
【0006】
しかしながら、現状ではため池などの貯水池に土砂が流入することによる決壊のリスクを適切に評価するための手法は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】SIP「レジリエントな防災減災機能の強化」(H26年~)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、貯水池への土砂の流入に起因する被災のリスクを評価可能な貯水池決壊判定方法、貯水池決壊判定プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器、貯水池決壊判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明の第1の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、土砂の流入による貯水池の決壊の可能性を判定する貯水池決壊判定方法であって、貯水池の周辺の地形に関する情報に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入量を演算する工程と、前記貯水池内への土砂の流入に起因して該貯水池の水位が上昇する堤体の越流水深又は堤体に作用する流体力を算出する工程と、前記算出された越流水深又は流体力に基づいて、前記貯水池の決壊の発生の有無を判定する工程とを含む。
【0011】
また、本発明の第2の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記に加えて、前記堤体の越流水深又は流体力を算出する工程が、堤体に作用する流体力を算出する工程を含み、前記貯水池の決壊の発生を判定する工程は、前記算出された流体力が、堤体の許容荷重を上回った際には、堤体越流の発生の有無によらず貯水池の決壊が発生すると判定するものである。
【0012】
さらに、本発明の第3の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記堤体の越流水深又は流体力を算出する工程が、越流水深を算出する工程を含み、前記貯水池の決壊の発生を判定する工程が、前記算出された越流水深と、前記貯水池の堤体高さ又は洪水吐高さとを比較し、前記貯水池の堤体越流が生じる場合には決壊が発生し、前記貯水池の堤体越流が生じない場合には決壊が発生しないと判定するものである。
【0013】
さらにまた、本発明の第4の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記越流水深又は速度と水深から算出される流体力の算出を、平面二次元不定流解析又は水収支計算により行う。
【0014】
さらにまた、本発明の第5の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、貯水池の周辺の地形に関する情報に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入量を演算する工程が、前記貯水池内に土砂が流入する流入条件を設定する工程を含む。
【0015】
さらにまた、本発明の第6の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記貯水池内に土砂が流入する流入条件を設定する工程が、貯水池への土砂流入による流動中深さと速度、土砂流入後の各時刻における流入量の少なくともいずれかを、前記流入条件として設定するものである。
【0016】
さらにまた、本発明の第7の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、貯水池の周辺の地形に関する情報に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入量を演算する工程が、表示部に表示された貯水池を含む地図上に、土砂の流入点、決壊点、洪水吐による流出点をそれぞれ設定する工程を含む。
【0017】
さらにまた、本発明の第8の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、土砂の流入による貯水池の決壊の可能性を判定する貯水池決壊判定方法であって、前記貯水池に流入する土砂量を求める工程と、横軸に時間軸を、縦軸に流量をそれぞれ設定した、前記貯水池への流入量の時間変化を示すハイドログラフを、波形を変化させた複数のパターンを演算する工程と、前記演算された複数のハイドログラフのパターン内で、危険と思われる一以上のパターンのハイドログラフを選択する工程と、前記選択されたパターンのハイドログラフに対して、前記貯水池の水深又は流体力を演算する工程と、前記演算された水深又は流体力に基づいて、前記貯水池での堤体越流又は堤体の許容荷重を上回るか否かを判定し、当該堤体越流又は許容荷重の超過の発生でもって決壊の有無を判定する工程とを含む。
【0018】
さらにまた、本発明の第9の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記ハイドログラフの複数のパターンを演算する工程が、ハイドログラフを変化させる工程と、ハイドログラフを求める工程と、平面二次元不定流解析又は水収支計算による堤体越流又は許容荷重の超過を判定する工程と、ハイドログラフを再度変化させて、上記各工程を所定回数繰り返す工程と、を含む。
【0019】
さらにまた、本発明の第10の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記フラックスを計算する工程が、メッシュ間の水位差に応じて、平面二次元不定流解析に従って演算する工程と、段落ち流れの計算を行う工程のいずれかを含む。
【0020】
さらにまた、本発明の第11の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記演算された複数のハイドログラフのパターン内で、危険と思われる一以上のパターンのハイドログラフを選択する工程が、越流水深が最も高くなるパターン、又は流体力が最大となるパターンのハイドログラフのいずれかの選択を含むものである。
【0021】
さらにまた、本発明の第12の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記土砂量を求める工程が、ハイドログラフの面積を算出して行われる。
【0022】
さらにまた、本発明の第13の形態に係る貯水池決壊判定方法によれば、上記いずれかに加えて、前記土砂量を求める工程が、入力データとして、計画規模の年超過確率の降雨量(原則として24時間雨量又は日雨量の100年超過確率)Pp(mm),集水面積(流域面積)A(km2),流動中の土石流濃度Cd,空隙率Kv,流出補正率Kf2の少なくともいずれかを含む。
【0023】
さらにまた、本発明の第14の形態に係る貯水池決壊判定プログラムによれば、土砂の流入による貯水池の決壊の可能性を判定する貯水池決壊判定プログラムであって、前記貯水池に流入する土砂量を求める機能と、横軸に時間軸を、縦軸に流量をそれぞれ設定した、前記貯水池への流入量の時間変化を示すハイドログラフを、波形を変化させた複数のパターンを演算する機能と、前記演算された複数のハイドログラフのパターン内で、危険と思われる一以上のパターンのハイドログラフを選択する機能と、前記選択されたパターンのハイドログラフに対して、前記貯水池の水深又は流体力を演算する機能と、前記演算された水深又は流体力に基づいて、前記貯水池での堤体越流又は堤体の許容荷重の超過の有無を判定し、当該堤体越流又は許容荷重の超過をもって決壊の有無を判定する機能とをコンピュータに実現させるためのものである。
【0024】
さらにまた、本発明の第15の形態に係るコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記憶した機器は、上記プログラムを格納するものである。記録媒体には、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW、Blu-ray(登録商標)、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記憶した機器には、上記プログラムがソフトウェアやファームウェア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウェアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェア、又はプログラムソフトウェアとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0025】
さらにまた、本発明の第16の形態に係る貯水池決壊判定装置によれば、土砂の流入による貯水池の決壊の可能性をシミュレーションにより判定する貯水池決壊判定装置であって、前記貯水池内に土砂が流入する流入条件を設定する流入条件設定部と、前記流入条件設定部で設定された流入条件に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入土砂量と、演算された流入土砂量に基づき、前記貯水池内への当該流入土砂量に係る土砂の流入に起因して該貯水池の水位が上昇する越流水深又は流体力を算出し、前記算出された越流水深により、又は堤体の許容荷重と流体力の比較により、前記貯水池の決壊の発生の有無を判定する演算部を備え、前記演算部が前記貯水池の決壊の発生を判定する基準が、前記算出された越流水深と、前記貯水池の堤体高さ又は洪水吐高さとを比較し、又は堤体の許容荷重と流体力とを比較し、前記貯水池の堤体越流又は許容荷重の超過が生じる場合には決壊が発生し、前記貯水池の堤体越流又は許容荷重の超過が生じない場合には決壊が発生しないと判定するよう構成している。
【0026】
さらにまた、本発明の第17の形態に係る貯水池決壊判定装置によれば、上記いずれかに加えて、前記演算部が、前記流体力を算出し、該算出された流体力が、堤体の許容荷重を上回った際には、堤体越流の発生の有無によらず貯水池の決壊が発生すると判定するよう構成している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図3】土砂流により貯水池の決壊が生じる例を示す模式断面図である。
【
図4】土砂流により貯水池の決壊が生じない例を示す模式断面図である。
【
図5】貯水池決壊判定装置を示すブロック図である。
【
図6】堤体越流又は許容荷重の超過の発生有無を判定する手順を示すフローチャートである。
【
図7】地図上で貯水池への土砂流入解析の条件設定を行う様子を示す模式図である。
【
図8】ハイドログラフのピーク時間を一定とし、ピーク高さや継続時間を変化させる例を示すグラフである。
【
図9】ハイドログラフのピーク高さを一定とし、ピーク時間を変化させる例を示すグラフである。
【
図10】流体の解析を行う手順を示すフローチャートである。
【
図11】帯状の障害物に対する越流を示す模式図である。
【
図14】スタガード・構造格子と未知変数の定義点を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0029】
本発明の実施例において使用される貯水池決壊判定装置とこれに接続される操作、制御、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS-232xやRS-422、RS-423、RS-485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T、10GBASE-T等のネットワークを介して電気的、あるいは磁気的、光学的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x等の無線LANやBluetooth(登録商標)、その他のNFC等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。なお本明細書において貯水池決壊判定装置とは、貯水池決壊判定装置本体のみならず、これにコンピュータ、外部記憶装置等の周辺機器を組み合わせた貯水池決壊判定システムも含む意味で使用する。
【0030】
ため池や湛水池等の貯水池の被災形態としては、主に堤体越流破壊、すべり破壊、浸透破壊の3つが挙げられる。ここで、ため池への土石流流入は短時間で生じる現象のため、ため池の被災形態の内で、最も懸念される被災形態は堤体越流に伴う被災と考えられる。
図1に、貯水池への土砂流入に起因して堤体越流が生じる様子を示す。この図に示すように、貯水池PD内に土砂流EFが流入すると、貯水池PD内の水面が波打って水位WLが変動する。上昇した水位WLである越流水深が、堤体高さDLを超えると、堤体越流が発生する。ため池の決壊可否の目安となる堤体越流、すなわち堤体近傍での貯水位の変動についての評価手法は、土石流に対する被災リスク調査手法や、浸水想定区域図のような緊急時の迅速な避難行動につながる対策に資する技術開発を行う観点からも重要と思われる。そこで本願発明者らは、堤体越流の発生を貯水池の決壊とみなして、堤体越流の発生する可能性を予め貯水池毎に検討することで、貯水池決壊判定のシミュレーションを行い、決壊の可能性ありと判定された貯水池に対しては個別に堤体や洪水吐の改修等の必要な対策を講じられるようにすることで、貯水池の決壊事故を予防できると考え、本願発明を成すに至った。具体的には、貯水池への土砂流入による土砂流の流動中深さと速度、あるいは土砂流入後の各時刻における流入量等の流入条件を設定して、貯水池への土砂の流入に伴って生じる堤体及び洪水吐の越流水深や堤体にかかる流体力に対して、水収支計算や、平面二次元不定流解析により、貯水池の堤体越流又は許容荷重の超過に対する評価を行う。以下の実施形態では、特に汎用的な平面二次元不定流解析で越流水深や流体力を計算する手法を採用する。
(評価手順手法)
【0031】
図2に、貯水池の模式断面図を示す。この図に示す貯水池は、総貯水量をVC、貯水池面積をAC、堤体高さ(堤高)をHC、洪水吐高さをhCとする。このような貯水池の、土砂の流入に伴う決壊判定に際しては、上述の通り堤体越流が生じる場合には貯水池が決壊すると判定し、堤体越流しない場合には貯水池が決壊しないと判定する。ここで土石流による決壊が生じる例を
図3に、決壊を生じない例を
図4に、それぞれ示す。
図3に示すように土石流EFによって水位WLすなわち越流水深が堤体の天面まで達すると、貯水池PDが決壊する。一方で
図4に示すように、土石流EFが貯水池PDに流入しても越流水深WLが堤体の天面にまで達しないのであれば、決壊しないと判定する。なお越流水深が洪水吐の高さを超えていても、決壊とはならない。また、堤体の許容荷重を流体力が上回った際には、堤体越流が生じなくても、ため池の決壊が発生すると判定する。なお堤体の許容荷重とは、当該許容荷重以下であれば堤体が破堤するおそれのない荷重を指す。
(貯水池決壊判定装置)
【0032】
土砂の流入による貯水池の決壊の可能性をシミュレーションにより判定する貯水池決壊判定装置を、
図5のブロック図に示す。この図に示す貯水池決壊判定装置100は、流入条件設定部10と、演算部20と、表示部30を備える。流入条件設定部10は、貯水池内に土砂が流入する流入条件を設定する。流入条件設定部10は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力デバイスで構成できる。
【0033】
演算部20は、流入条件設定部10で設定された流入条件に基づいて、貯水池内に流入する可能性のある土砂の流入土砂量と、演算された流入土砂量に基づき、貯水池内への当該流入土砂量に係る土砂の流入に起因して該貯水池の水位が上昇する越流水深を算出し、算出された越流水深に基づいて、又は該貯水池の水位が上昇に伴う流体力により堤体に作用する荷重と堤体の許容荷重とを比較して、貯水池の決壊の発生の有無を判定する。演算部20が貯水池の決壊の発生を判定する基準が、算出された越流水深と、貯水池の堤体高さ又は洪水吐高さとを比較し、貯水池の堤体越流が生じる場合には決壊が発生し、貯水池の堤体越流が生じない場合には決壊が発生しないと判定するよう構成している。越流水深の演算方法は、平面二次元不定流解析による水位計算等の既知のアルゴリズムを適宜利用できる。あるいは、堤体の許容荷重を流体力が上回った際には、堤体越流が生じなくても、ため池の決壊が発生すると判定する。流体力の算出方法も、平面二次元不定流解析による流速計算等の既知のアルゴリズムを適宜利用できる。
また、この貯水池決壊判定装置100は、専用のハードウェアで設計する他、デスクトップPCやノートPC、スレートPC等の汎用的なコンピュータ等に、専用の貯水池決壊判定プログラムをインストールして実現してもよい。この場合、流入条件設定部10には、ユーザの操作を受け付けてコンピュータを操作するキーボードやマウス、タッチパネル等の既知の入力デバイスが利用できる。また演算部20は、コンピュータのプロセッサやSoC、あるいはLSIやASIC、マイコン等が利用できる。
【0034】
表示部30は、演算部20による演算結果を表示させるための部材である。このような表示部30には、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等、既知の表示デバイスが利用できる。また表示デバイスをタッチパネルとすることで、入力デバイスと表示デバイスを兼用することもできる。この場合は、流入条件設定部10と表示部30が共通の部材となる。
(貯水池決壊判定方法)
【0035】
貯水池決壊判定方法として、堤体越流又は許容荷重の超過の発生有無を判定する手順を、
図6のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS61において、土砂量を求める。
【0036】
次にステップS62~ステップS65において、ハイドログラフを変化させて演算を繰り返す。具体的にはまずステップS62において、ハイドログラフを変化させる。そしてステップS63において、ハイドログラフを求める。次にステップS64において、平面二次元不定流解析や水収支計算による堤体越流又は許容荷重の超過の判定を行う。そしてステップS65において、ハイドログラフの変化が終了したかどうかを判定し、未だの場合はステップS62に戻り、ハイドログラフを変化させて上述の工程を繰り返す。このようにして様々なパターンのハイドログラを総当たりで演算する。
【0037】
そしてハイドログラフの変化を終了した場合は、ステップS66に進み、最も危険なハイドログラフを選定し、その際の水深・流体力などを算定する。また、最も危険なハイドログラフを一のみ選択する他、危険と思われるハイドログラフを複数選択してもよい。さらにこの例では、ハイドログラフのパターンを考え得る様々なパターンに変化させる、いわゆる総当たりで検討する例を説明したが、この例に限られず、例えば特定の条件に限定してハイドログラフを選択してもよい。最後にステップS67において、堤体越流又は許容荷重の超過の判定を行う。また判定結果の外部出力など、必要な処理を行う。以下、各工程を詳述する。
(土砂量の演算)
【0038】
まずステップS61における土砂量の演算は、外部から必要なデータを取得して行う。ここでは、計画規模の年超過確率の降雨量(原則として24時間雨量又は日雨量の100年超過確率)Pp(mm)、集水面積(流域面積)A(km2)、流動中の土石流濃度Cd、空隙率Kv、流出補正率Kf2等に基づいて行う。
(貯水池の設定)
(貯水池メッシュの設定)
【0039】
ここでは、貯水池の設定として、貯水池にメッシュを設定する手順を説明する。ここでは、貯水池周辺のDEMデータ(標高データ)に基づいて、解析メッシュを作成する。また貯水池についても設定を行う。貯水池のメッシュは、土砂の流入により水位の変動を計算できるようにするため、他の解析メッシュと異なるデータを与える。
図7に、地図上で貯水池への土砂流入解析の条件設定を行った状態を示す。この図に示すように、地図上に貯水池メッシュMSを設定すると共に、土砂の流入点P1、決壊点P2、洪水吐による流出点P3をそれぞれ設定する。また貯水池の上流の渓床に沿った、土砂の流入流路を点で示している。
(貯水池諸元)
【0040】
本実施形態において解析時に用いる貯水池の基本諸元は、以下の通りとする。すなわち各貯水池の堤高:H[m]、総貯水量:V[m3]、洪水吐高さ:h[m]、洪水吐幅:B[m]、満水面積:A[m2]である。なお、各貯水池が有する洪水吐の形式(正面越流型・側水路型・水路流入型)に応じて、設定する諸元は異なる。
(流入条件の設定)
【0041】
ここで、貯水池に流入する土砂の流入土砂量や時間変化を、様々な流入条件に対して演算する手順を説明する。ここでは、流入条件を変化させて、各流入条件でそれぞれ、堤体越流又は許容荷重の超過が生じるか否かを判定する。まず、流入土砂量の算出方法を説明する。
(流入土砂量の算出方法)
【0042】
流入土砂量を算出するには、国土技術政策総合研究所(2016)から引用して、次式のように貯水池上流の集水域に対して流入土砂量の総量を求める。
[数1]計画規模の年超過確率の降雨量によって運搬できる土砂量(V
dy2)
【0043】
上式において、計画規模の年超過確率の降雨量(原則として24時間雨量又は日雨量の100年超過確率):Pp[mm]、集水面積[流域面積]:A[km2]、流動中の土石流濃度:Cd、空隙率:Kν、流出補正率:Kf2とする。
(土砂の流入位置)
【0044】
貯水池に対する土砂の流入位置を、貯水池の上流側で設定する。また、土砂の流入位置を変化させて、各位置で流入土砂量の演算を行う。
(流入土砂に対する速度の設定(初速の影響))
【0045】
境界条件として、水深だけなく流速を与える平面二次元不定流計算を行うことができる。
(ハイドログラフの変化)
【0046】
次に、
図6のステップS62におけるハイドログラフの変化について説明する。ここでは、貯水池に流入する土砂の流入土砂量の時間変化を示すハイドログラフを設定している。ハイドログラフは、
図8や
図9に示すように、横軸に時間t[s]を、縦軸に流量Q[m
3/s]を、それぞれ設定したグラフである。一般にハイドログラフは、ピークを有する三角波となる。ここでは、実際に貯水池に土砂が流入するに際して想定される様々なパターンをシミュレーションで確認して、最も危険な条件下でも決壊が生じなければ安全であろうと判定する。具体的には、ハイドログラフの体積を一定に維持したまま、以下の2つの流入条件下で、それぞれのハイドログラフのパターンに対して演算を行う。
1:ピーク時間を一定とし、ピーク高さ(流動中の最大水深)や継続時間を変化させる(
図8)
2:ピーク高さを一定とし、ピーク時間を変化させる(
図9)
(流体の解析)
【0047】
次に、堤体越流又は許容荷重の超過の発生有無を判断する解析を行う手順を、
図10のフローチャートに示す。ここでは流体の解析を、二次元不定流解析で行っている。まずステップS101において、必要なパラメータの読込を行う。次にステップS102において、運動方程式とフラックスの計算を行う。ここでは、流体の運動方程式として連続式を用い、流体がなだらかな流れの場合と段落ち流れの場合で、計算式を選択する。
(なだらかな流れ)
【0048】
流体がなだらかな流れの場合は、次式に示す平面二次元不定流解析(ナビエ・ストークス方程式)を用いる。
(連続式)
[数2]
(平面二次元不定流解析)
[数3]
[数4]
(マニング式から導出)
[数5]
[数6]
【0049】
ここで、t:時間、h:水深、H:水位、u及びv:x及びy方向の流速、M、N:流量フラックスでM=uh、N=νh、τx or yb:境界面摩擦応力、g:重力加速度、ρ:水の密度、n:氾濫原の粗度係数である。
(段落ち流れ)
【0050】
一方、流体が段落ち流れの場合は、次式を用いる。
(連続式)
[数7]
【0051】
図11に示す帯状の障害物に対する越流の場合、次式で演算される。
[数8、9]
【0052】
一方、
図12に示す段落ち流れの場合、次式で演算される。
[数10、11]
【0053】
以上のようにして、フラックスが計算されると、
図10のステップS103において、水深の演算を行う。
【0054】
なお従属変数は空間的に千鳥状(staggered)に配置し、計算を時間的に蛙飛び(leap-frog)に進める陽的な差分としている。ここで、スタガード・構造格子と未知変数の定義点を
図14に示す。ここで、i,jはそれぞれx,y軸方向の格子番号とする。詳細は、国土交通省水管理・国土保全局,河川環境課水防企画室「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)」より参考資料1,2017年10月6日,pp.i-viiを参照されたい。
(水収支計算)
【0055】
以上の例では、平面二次元不定流解析に基づいて流量の演算を行う例を説明した。ただ本発明は、流量を演算するシミュレーション方法を平面二次元不定流解析に限定せず、水収支計算等、他の方法を用いることもできる。一例として、平面二次元不定流解析に代えて、水収支計算を用いる例を実施形態2に係る貯水池決壊判定方法として、以下説明する。
【0056】
水収支計算は、運動方程式を持っていない連続式のみで水位変動(水位の時間変化)の計算を行うものである。水収支計算の概念図を、
図13に示す。ここでは、水体積Vのため池の湖面に対し、流入量Qinの水が流入し、水位がHとなって、堤体から流出量Qoutの水が流出する場合を考える。この場合、ため池湖面に流入する水量と流出する水量の差分が、ため池貯水量(水体積)の時間変化と考える(数12)。この、ため池貯水量(水体積)から、ため池の水位を換算する(数13)。なお本明細書では決壊の原因となる、ため池に流入し、あるいはため池から流出する土砂と水を区別せず、流入量や流出量には水と土砂を含む。すなわち土砂の流入量、流出量というときは、水も含める。
【0057】
[数12]
Qin-Qout=dV/dt
【0058】
[数13]
H=f(V)
【0059】
上式において、Qin:流入量[m3/s]、Qout:流出量[m3/s]、V:貯水量[m3]、t:時間[sec]、H:ため池の水位[m]である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の貯水池決壊判定方法、貯水池決壊判定プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器、貯水池決壊判定装置によれば、ため池などの貯水池の決壊の可能性を事前にシミュレーションにより判定することができるので、防災の観点から決壊の危険性のあるため池に対して、堤体や洪水吐の改修等の対策を事前に講じる際の指標として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
100…貯水池決壊判定装置
10…流入条件設定部
20…演算部
30…表示部
PD…貯水池
EF…土砂
WL…水位
SL…洪水吐高さ
DL…堤体高さ
MS…貯水池メッシュ
P1…土砂の流入点
P2…決壊点
P3…洪水吐による流出点