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特開2023-29203ヘッド駆動装置、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029203
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ヘッド駆動装置、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230224BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20230224BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20230224BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/015 101
B41J2/14 301
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066048
(22)【出願日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2021134726
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】大戸井 慶人
【テーマコード(参考)】
2C057
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C057AF23
2C057AF25
2C057AG44
2C057AL25
2C057AM16
2C057BA08
4F041AA02
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA13
4F041BA23
4F041BA35
4F041BA59
4F042AA02
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA21
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB20
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】液体の不吐出の発生を低減することが可能なヘッド駆動装置を提供する。
【解決手段】
【請求項1】
液体を吐出するノズルに対して、前記ノズルを閉じるノズル閉塞位置と、前記ノズルを開くノズル開放位置とを移動する弁体と、前記移動のための動力を前記弁体に付与する駆動体とを有する液体吐出ヘッドと、前記駆動体の温度を検出する温度検出手段と、を備えるヘッドユニットを駆動するためのヘッド駆動装置であって、前記液体吐出ヘッドは、前記駆動体に第1の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル閉塞位置に位置し、前記駆動体に前記第1の電圧と異なる第2の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル開放位置に位置するように構成され、前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第2の電圧を可変する制御手段を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルに対して、前記ノズルを閉じるノズル閉塞位置と、前記ノズルを開くノズル開放位置とを移動する弁体と、前記移動のための動力を前記弁体に付与する駆動体とを有する液体吐出ヘッドと、前記駆動体の温度を検出する温度検出手段と、を備えるヘッドユニットを駆動するためのヘッド駆動装置であって、
前記液体吐出ヘッドは、前記駆動体に第1の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル閉塞位置に位置し、前記駆動体に前記第1の電圧と異なる第2の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル開放位置に位置するように構成され、
前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第2の電圧を可変する制御手段を備える
ことを特徴とするヘッド駆動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第1の電圧を可変することを特徴とする請求項1記載のヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との電位差が一定となるように前記第1の電圧および前記第2の電圧を可変することを特徴とする請求項2記載のヘッド駆動装置。
【請求項4】
前記第2の電圧は、前記第1の電圧よりも小さい値であることを特徴とする請求項1記載のヘッド駆動装置。
【請求項5】
前記第2の電圧は、前記第1の電圧よりも大きい値であることを特徴とする請求項1記載のヘッド駆動装置。
【請求項6】
液体を吐出するノズルに対して、前記ノズルを閉じるノズル閉塞位置と、前記ノズルを開くノズル開放位置とを移動する弁体と、前記移動のための動力を前記弁体に付与する駆動体とを有し、前記駆動体に第1の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル閉塞位置に位置し、前記駆動体に前記第1の電圧と異なる第2の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル開放位置に位置するように構成された液体吐出ヘッドと、
前記駆動体の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第2の電圧を可変する制御手段と、
を備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項7】
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第1の電圧を可変することを特徴とする請求項6記載の液体吐出ユニット。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との電位差が一定となるように前記第1の電圧および前記第2の電圧を可変することを特徴とする請求項7記載の液体吐出ユニット。
【請求項9】
前記第2の電圧は、前記第1の電圧よりも小さい値であることを特徴とする請求項6記載の液体吐出ユニット。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドは前記弁体と前記駆動体との間に移動機構を備え、前記駆動体に前記第1の電圧よりも大きい値の前記第2の電圧を印加することにより、前記移動機構によって前記弁体を前記ノズル開放位置へ動かすことを特徴とする請求項6記載の液体吐出ユニット。
【請求項11】
前記駆動体は、前記弁体の前記移動の方向と同方向に伸縮可能な圧電素子であることを特徴とする請求項6記載の液体吐出ユニット。
【請求項12】
前記ノズルを複数備え、それぞれの前記ノズルに対して前記弁体および前記駆動体を設けることを特徴とする請求項6記載の液体吐出ユニット。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のヘッド駆動装置と、
前記ノズルと対象物とを相対的に動かす移動手段と
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
請求項6乃至12のいずれか一項に記載の液体吐出ユニットと、
前記ノズルと対象物とを相対的に動かす移動手段と
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド駆動装置、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズルに連通するキャビティに吐出液体を加圧供給するとともに、ピンでノズルを閉塞可能とし、このピンをアクチュエータでノズルに対して離接可能とし、このアクチュエータを制御装置で制御する構成とすることで、ピンがノズルから離間している間だけ、加圧供給されている吐出液体がノズルから液滴として吐出される液滴吐出ヘッドを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、液体の不吐出の発生を低減することが可能なヘッド駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、液体を吐出するノズルに対して、前記ノズルを閉じるノズル閉塞位置と、前記ノズルを開くノズル開放位置とを移動する弁体と、前記移動のための動力を前記弁体に付与する駆動体とを有する液体吐出ヘッドと、前記駆動体の温度を検出する温度検出手段と、を備えるヘッドユニットを駆動するためのヘッド駆動装置であって、前記液体吐出ヘッドは、前記駆動体に第1の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル閉塞位置に位置し、前記駆動体に前記第1の電圧と異なる第2の電圧を印加すると前記弁体が前記ノズル開放位置に位置するように構成され、前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第2の電圧を可変する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液体の不吐出の発生を低減することが可能なヘッド駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの内部構成図。
図2】液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図。
図3】ニードル弁の開閉動作を説明する概略図。
図4】圧電素子の印加電圧補正の説明図。
図5】本発明の実施形態に係るヘッド駆動装置のブロック図。
図6】本発明の実施形態における電圧補正のフロー図。
図7】本発明の実施形態に係るヘッド駆動装置の変形例を示す概略断面図。
図8】本発明に係る液体吐出装置の一例を示す全体斜視図。
図9】液体吐出装置のキャリッジの全体斜視図。
図10】液体吐出装置の制御系の一例を示したブロック図。
図11】本発明に係る液体吐出装置の別の例を示す概略構成図。
図12図11の一部拡大図。
図13】本発明の実施形態に係るヘッド駆動装置の第2変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの内部構成図である。
【0009】
液体吐出ヘッド300(以下、ヘッドと称する)は、金属材料または樹脂材料によって成形したハウジング310を備える。ハウジング310は、液体をヘッド300内に供給する液体供給ポート311と、液体をヘッド300内から排出する液体回収ポート313を備えている。また、ハウジング310は、液体を吐出するノズル302を備えたノズル板301を保持している。さらにハウジング310は、液体供給ポート311からヘッド300内に供給した液体をノズル板301に沿って液体回収ポート313へ送るための流路を兼ねた液室312を備えている。
【0010】
液体供給ポート311と液体回収ポート313との間には、液室312内の液体をノズル302から吐出するための液体吐出モジュール330を配置している。液体吐出モジュール330の数は、ノズル板301に設けたノズル302の数に対応しており、本実施形態では1列に並べた8個のノズル302に対応する8個の液体吐出モジュール330を備えた構成としている。
【0011】
上記の構成において、液体供給ポート311は、加圧した状態の液体を外部から取り込み、液体を矢印a1の方向へ送り液室312に供給する。液室312は、液体供給ポート311からの液体をノズル板301に沿って矢印a2の方向へ送る。そして、液体回収ポート313は、液室312に沿って配置したノズル302から吐出しなかった液体を矢印a3の方向へ排出する。
【0012】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331、およびニードル弁331を駆動する圧電素子332などを備える。圧電素子332を駆動してニードル弁331を図1の上方向へ動かした場合は、ニードル弁331によって閉じていたノズル302が開き、ノズル302から液体を吐出する。また、圧電素子332を駆動してニードル弁331を図1の下方向へ動かした場合は、ニードル弁331の先端部がノズル302に当接してノズル302が閉じ、ノズル302から液体は吐出しなくなる。なお、ノズル302から被液体付与物に対して液体を吐出している期間中は、ノズル302からの液体の吐出効率が低下しないようにするため、液体回収ポート313からの液体の排出を一時的に行わないようにしてもよい。ここで、ニードル弁331は本発明における「弁体」の一例であり、圧電素子332は「駆動体」の一例である。
【0013】
上述のように本実施形態においては、ノズル板301は、ノズル302を複数備え、それぞれのノズル302に対してニードル弁331および圧電素子332を設けたヘッド構成とした。このような複数ノズルにすることで被液体付与物への液体付与を高速で行うことが可能になる。しかし、本実施形態は一例であり、ノズル302および液体吐出モジュール330の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル302および液体吐出モジュール330の数は、9個以上であってもよく、また複数ではなく1個であってもよい。さらに、ノズル302および液体吐出モジュール330の配列は、1列ではなく、複数列で配置してもよい。
【0014】
図2は、液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図である。
【0015】
液体吐出モジュール330は、ノズル板301に設けたノズル302を開閉するニードル弁331、およびニードル弁331を駆動する圧電素子332などを備える。また、液室312はハウジング310に設けた複数の液体吐出モジュール330において共通の流路を形成する。
【0016】
ニードル弁331は、その先端に弾性部材331aを備えており、この弾性部材331aが、ニードル弁331をノズル302へ押し付けた際に変形してノズル302を確実に閉塞する。圧電素子332とニードル弁331とは同軸上に並んでおり、両者は連結部材333を介して連結している。
【0017】
連結部材333は、ニードル弁連結部333a、枠部333b、ハウジング当接部333c、伸縮部333dおよび空間333eを備える。これらのうち、ニードル弁連結部333aは、ニードル弁331の後端部(図2では上端部)を保持する。ニードル弁連結部333a、複数の枠部333b、ハウジング当接部333cおよび複数の伸縮部333dは、空間333eの周囲を囲むように繋がっており、1つの連結部材333を構成している。そして、連結部材333の空間333eによって圧電素子332を保持している。また、液体吐出モジュール330には、圧電素子332の温度を検出するサーミスタ334が設けられており、本実施形態ではサーミスタ334を圧電素子332の一部に貼り付けて設けている。ここで、サーミスタ334は本発明における「温度検出手段」の一例である。
【0018】
そして、本実施形態の液体吐出モジュール330は、ヘッド駆動装置902により圧電素子332に電圧VHを印加すると、圧電素子332が伸び、連結部材333を介してニードル弁331をノズル302側へ押す。これにより、ニードル弁331はノズル302を閉じるノズル閉塞位置に位置する。また、ヘッド駆動装置902により圧電素子332に電圧VHよりも小さい値の電圧VLを印加すると、圧電素子332が縮み、連結部材333を介してニードル弁331をノズル302から離間する方向へ引っ張る。これにより、ニードル弁331はノズル302を開くノズル開放位置に位置する。ヘッド駆動装置902は、外部の電源から電力の供給を受けるとともに、圧電素子332に電圧を印加する電圧印加手段として機能する。ここで、電圧VHは本発明における「第1の電圧」の一例であり、電圧VLは「第2の電圧」の一例である。
【0019】
図3は、ニードル弁の開閉動作を説明する概略図である。
【0020】
本実施形態における液体吐出モジュール330は、上述のように圧電素子332に電圧VLを印加するとニードル弁331がノズル開放位置に移動する仕様となっている。従って、図3(a)のように圧電素子332に電圧VHを印加した場合は、ニードル弁331がノズル閉塞位置に位置するため、液室312に液体を供給してもノズル302から液体は吐出しない。そして、圧電素子332に電圧VHよりも小さい電圧VLを印加した場合は、ニードル弁331がノズル開放位置に位置するため、液室312に供給した液体がノズル302から液滴D1となって吐出する。
【0021】
ところが、高周波数での長時間駆動により圧電素子332が発熱し、圧電素子332が熱膨張すると、図3(b)のように圧電素子332の熱膨張による伸張分がニードル弁331をノズル302側へ余計に押し出してしまう。この状態で平常時と同じ値の電圧(VH、VL)を圧電素子332に印加しても、ニードル弁331がノズル開放位置に移動できないために不吐出となってしまう。そこで、本実施形態では上述のサーミスタ334を用いて圧電素子332に印加する電圧値を補正することにより、圧電素子332の熱膨張がもたらす不吐出を防ぐようにしている。以下、圧電素子332の印加電圧補正について説明する。
【0022】
なお、図3ではニードル弁331の先端がノズル302の内部に入り込む例を示したが、ニードル弁の形状はこれに限られない。ニードル弁331の先端の表面全体がノズル板301の上面に接触可能な形状とし、ニードル弁331をノズル板301の上面に接触する位置とノズル板301の上面から上方へ離間する位置との間で移動する構成としてもよい。
【0023】
図4は、圧電素子の印加電圧補正の説明図である。
【0024】
本実施形態において圧電素子332に熱膨張が生じた場合は、印加電圧VH、VL(図4の実線状態)を、後述の式から算出した補正値に基づいて印加電圧VH´、VL´(図4の破線状態)に補正する。これにより、熱膨張で伸張した圧電素子332がニードル弁331をノズル302側へ押し込み過ぎることがなくなり、図3(a)に示した平常時の状態を維持することが可能になる。なお、印加電圧補正において、電圧VH(VH´)と電圧VL(VL´)との電位差Vppは必ずしも一定である必要はない。しかし、補正前と補正後とで液体の吐出特性(吐出量、吐出速度等)のばらつきを抑える上では図4のように電位差Vppが一定となるように制御することが好ましい。
【0025】
次に、印加電圧の補正値算出の一例を説明する。図2に示したサーミスタ334は、例えば圧電素子332に貼り付けてあり、圧電素子332の温度を検出する。そして、後述するヘッド駆動装置902において、サーミスタ334の検出結果と熱膨張係数を用いて圧電素子332の温度(熱膨張)による伸張量を算出する。圧電素子332の伸張量は、電圧と温度にそれぞれ比例するため、以下の式を用いて表すことができる。
x=α・VH ・・・式1
ΔL=β・ΔT ・・・式2
(x:圧電素子の伸縮量、α:電圧係数、VH:圧電素子の印加電圧、ΔL:圧電素子の温度による伸張量、β:熱膨張係数、ΔT:圧電素子の温度変化)
【0026】
圧電素子332の伸縮量を補正するにはxからΔLを引くことで求めることができ、式1および式2を用いて補正後のVH´は以下の式で算出することができる。
VH´=(x-β・ΔT)/α ・・・式3
ここで、α、βおよびxは実験から求めた固定値であるため、リアルタイムで制御するのは温度ΔTのみとなり、圧電素子332に対して適切な電圧補正を行うことで熱膨張による圧電素子332の伸縮のばらつきを抑制する。そして、伸縮のばらつきを抑えることで液体の不吐出や液漏れの不具合を防ぐことができる。
【0027】
図5は、本発明の実施形態に係る液体吐出ユニットのブロック図である。
【0028】
液体吐出ユニット800は、ヘッドユニット30とヘッド駆動装置902を備え、上述の印加電圧補正は主にヘッド駆動装置902の制御部9020で行う。ヘッドユニット30は、ヘッド300とサーミスタ334とを備える。ヘッド駆動装置902は、制御部9020、駆動波形増幅部9022およびAD変換部9023を備える。また、制御部9020は、駆動波形生成部9021、温度データ格納部9024および補正値算出部9025を備える。
【0029】
駆動波形生成部9021は、駆動波形を生成し、生成した駆動波形信号を駆動波形増幅部9022へ送信する。また、駆動波形生成部9021は、補正値算出部9025から圧電素子332の印加電圧補正値に関する補正値情報を受信した場合は、その補正値情報に基づき駆動波形を補正する。駆動波形増幅部9022は、駆動波形生成部9021から受信した駆動波形信号の電圧および電流を増幅し、ヘッドユニット30のヘッド300(圧電素子332)に対して駆動信号を印加する。AD変換部9023は、サーミスタ334から受信した信号に対してAD変換を行い、変換後の信号を温度データ格納部9024に出力する。
【0030】
温度データ格納部9024は、温度と圧電素子332の伸張量とを紐づけたデータ等を格納しており、駆動波形生成部9021から受信した駆動波形信号の情報と、AD変換部9023から受信した信号の情報を格納する。補正値算出部9025は、温度データ格納部9024から受信した情報に基づいて補正値を算出し、算出した補正値情報を駆動波形生成部9021へ送信する。
【0031】
上記構成のヘッド駆動装置902を、図1に示した液体吐出ヘッド300の圧電素子332それぞれに備えることで、ノズル毎に吐出状態を補正することが可能になり、液体の吐出量、液滴のサイズ等をノズル毎で調整することが可能になる。ここで、制御部9020は、本発明における「制御手段」の一例である。
【0032】
図6は、本発明の実施形態における電圧補正の一例を示すフロー図である。
【0033】
圧電素子332の印加電圧補正においては、サーミスタ334によって圧電素子332の温度の取得を開始する(ステップS1)。次にステップS1で取得した温度データを格納する(ステップS2)。温度データの格納は、主に温度データ格納部9024によって行う。次に温度データ格納部9024から受信した情報に基づいて圧電素子332の印加電圧の補正値を算出する(ステップS3)。印加電圧の補正値の算出は、主に補正値算出部9025によって行う。
【0034】
次に補正値算出部9025で算出した電圧補正値情報を基に駆動波形を生成する(ステップS4)。駆動波形の生成は、主に駆動波形生成部9021によって行う。そして、補正後の駆動波形の電圧および電流を増幅(ステップS5)した上で、ヘッドユニット30のヘッド300(圧電素子332)に駆動波形を印加し、ヘッドユニット30内のヘッド300の動作(駆動)を制御する。なお、駆動波形の増幅は、主に駆動波形増幅部9022によって行う。
【0035】
本実施形態では、以上のステップS1~S5をリアルタイムで実行し、圧電素子332の温度変化に追従して圧電素子332への印加電圧を補正する。なお、サーミスタ334の検出範囲に上限値と下限値を予め設定しておき、この上限値または下限値を超える温度を検出した場合は異常と判断し、液体吐出動作を停止するようにしてもよい。
【0036】
上述のように本実施形態は、液体を吐出するノズル302に対して、ノズル302を閉じるノズル閉塞位置と、ノズル302を開くノズル開放位置とを移動するニードル弁331と、その移動のための動力をニードル弁331に付与する圧電素子332とを有するヘッド300と、圧電素子332の温度を検出するサーミスタ334と、を備えるヘッドユニット30を駆動するためのヘッド駆動装置902であって、ヘッド300は、圧電素子332に電圧VHを印加するとニードル弁331がノズル閉塞位置に位置し、圧電素子332に電圧VHと異なる電圧VLを印加するとニードル弁331がノズル開放位置に位置するように構成され、サーミスタ334の検出結果に基づき電圧VLの補正値を算出し、この補正値に基づいて電圧VLを可変する制御部9020を備える。
【0037】
また上述のように、制御部9020は、サーミスタ334の検出結果に基づき電圧VHの補正値を算出し、この補正値に基づき電圧VHを可変する。本実施形態では、サーミスタ334によって検出された温度が高いほど、第1の電圧としての電圧VHを小さくする。
【0038】
これにより、熱膨張で伸張した圧電素子332がニードル弁331をノズル302側へ押し込み過ぎることがなくなり、液体の不吐出の発生を低減することが可能なヘッド駆動装置を提供することができる。
【0039】
また上述のように、制御部9020は、電圧VHと電圧VLとの電位差Vppが一定となるように電圧VHおよび電圧VLを可変する。
【0040】
また上述のように、電圧VLは、電圧VHよりも小さい値であるようにしている。本実施形態では、サーミスタ334によって検出された温度が高いほど、第2の電圧としての電圧VLを小さくする。
【0041】
これにより、圧電素子332への印加電圧の補正前と補正後とで、液体の吐出特性(吐出量、吐出速度等)のばらつきを抑えることができる。
【0042】
サーミスタ334は圧電素子332に取り付けることが最も好ましいが、これに代えて、ハウジング310または連結部材333等のヘッド300内の構成部品にサーミスタ334設けてもよい。また、後述する液体吐出装置(印刷装置)上でヘッド300とは別の場所に設けてもよい。また、サーミスタ334をヘッド300と液体吐出装置(印刷装置)の両方に備えてもよい。本実施形態において、圧電素子332(駆動体)の温度を検出するとは、圧電素子332に直に取り付けられたサーミスタ334により温度を検出することだけでなく、ヘッド300または液体吐出装置(印刷装置)において圧電素子332の近傍に設けられたサーミスタ334により温度を検出することを含む。
【0043】
また、温度検出手段としてのサーミスタ334の検出結果に基づき電圧VHおよび電圧VLを可変する方法としては、上述のような補正値を用いない方法であってもよい。例えば、温度と、その温度に適した電圧VHおよび電圧VLとの関係をあらかじめテーブルとして制御部9020に記憶しておき、サーミスタ334により検出された温度に対応する電圧VHおよび電圧VLを有する駆動波形を、圧電素子332へ印加するように構成してもよい。
【0044】
図7は、本発明の実施形態に係るヘッド駆動装置の変形例を示す概略断面図であり、図7(a)はノズルを閉塞した状態、図7(b)はノズルを開放した状態を示している。
【0045】
本変形例のヘッド500は、液体を吐出するノズル502の近傍に、液体を注入する注入口512を備えた中空状のハウジング510を備える。ハウジング510は、ニードル弁531、圧電素子532、逆バネ機構533、封止部材515およびリード線200a、200b等を備える。また、ヘッド500に設けられたサーミスタ534等を備える。なお、ヘッド500とサーミスタ534とはヘッドユニット50を構成する。
【0046】
ニードル弁531はノズル502を開閉する弁体であり、圧電素子532は、外部からの電圧の印加に応じて図7(a)、(b)の左右方向へ伸縮する。逆バネ機構533は、ニードル弁531と圧電素子532との間に介在し、圧電素子532の伸縮動作をニードル弁531に伝達する。封止部材515は、例えばパッキンやOリング等であり、ニードル弁531の外周部に嵌合しており、液体が圧電素子532側へ流入することを阻止する。リード線200a、200bは、圧電素子532の電極に接続した電圧印加用の一対のリード線である。サーミスタ534は、圧電素子532の一部に貼り付けて設けており、圧電素子532の温度を検出する。また、ヘッド駆動装置902は、図5などで説明したヘッド駆動装置を用いることが可能であり、圧電素子532に対して駆動波形電圧を連続的に印加する。ここで、本変形例において、ニードル弁531は本発明における「弁体」の一例、圧電素子532は「駆動体」の一例、サーミスタ534は「温度検出手段」の一例、逆バネ機構533は「移動機構」の一例である。
【0047】
逆バネ機構533は、適宜に変形可能なゴムや軟質樹脂等または薄い金属板等を成形加工することによって形成した弾性部材である。逆バネ機構533は、ニードル弁531の基端側の面(図7(a)ではニードル弁531の右側端面)に当接するように形成した断面略台形状の変形部533aと、ハウジング510の内壁面に固定した固定部533bとを備える。また、逆バネ機構533は、圧電素子532の端面と連結するガイド部533cを備え、台形状の変形部533aの長辺(台形の下底に相当)は固定部533bと連結した屈曲辺533dとなっている。
【0048】
このような構造を備えた逆バネ機構533は、圧電素子532に所定の電圧を印加すると圧電素子532が伸びる。この圧電素子532の伸びにより、ガイド部533cがノズル502側へ移動して変形部533aの屈曲辺533dの中央部付近を押圧するとともに、屈曲辺533dの周縁部側を圧電素子532側へ引き込むように変形する。そして、ニードル弁531と連結している変形部533aの頂部(台形の上底に相当)が圧電素子532側に移動する(図7(b)参照)。これにより、ニードル弁531は図7に示す距離dだけ圧電素子532側に移動することでノズル502が開口する。
【0049】
逆バネ機構533の変形部533aにおけるニードル弁531との連結部である頂部と屈曲辺533dとの距離や屈曲辺533dの長さは適宜に調整してよい。それにより圧電素子532が伸びる長さよりもニードル弁531が移動する長さを長くすることが可能となる。すなわち、逆バネ機構533は、圧電素子532のわずかな伸縮を増幅することが可能となる。これにより、高価な圧電素子532の長さを従来よりも短くすることができるのでノズルの生産コストを大幅に下げることができる。例えば、ニードル弁531の移動距離を圧電素子532の端面の移動距離の2倍とすれば圧電素子532の長さを従来の約1/2にすることが可能となる。
【0050】
このように、圧電素子532に電圧を印加していない状態または電圧VLを印加した状態では、逆バネ機構533には外部から力が加わらない状態となり、図7(a)のように変形は生じない。一方、圧電素子532に電圧VLよりも大きい値の電圧VHを印加すると圧電素子532が伸び、これに応じてガイド部533cがノズル502方向(軸方向)へ移動する。そのため、変形部533aが軸方向の変形を受け、図7(b)のように変形する。
【0051】
このように本変形例の場合は、圧電素子532に電圧を印加していない状態または電圧VLを印加した状態では、逆バネ機構533の変形部533aは膨らんだ状態(通常状態)になっている。そして、ニードル弁531は変形部533aの弾性力によってノズル502に当接しており、ノズル502はニードル弁531の端面によって閉塞している。従って、ノズル502から液体が吐出することはない。
【0052】
そして、圧電素子532に電圧VLよりも大きい値の電圧VHを印加すると、圧電素子532は図7(b)に示す軸方向に先端(図7では左端)が伸びてガイド部533cがノズル502方向(軸方向)へ移動する。これに伴い、屈曲辺533dの中央部付近をノズル502側(図7(a)の矢印a方向)へ押し込み、ハウジング510の内壁側近くの屈曲辺533dの周縁部が圧電素子532側(図7(a)の矢印b方向)へ後退する。そして、変形部533aが圧縮状態となり、変形部533aの屈曲辺533dとニードル弁531との連結面までの長さが縮まり、ニードル弁531が図7に示す距離dだけ圧電素子532側に移動する。その結果、ニードル弁531の先端面とノズル502との間に図7(b)のような空隙が生じ、ノズル502が開放状態となる。これにより、注入口512とノズル502とが連通して液体がノズル502から液滴D2となって吐出する。
【0053】
先の実施形態の場合は、圧電素子332に電圧VLを印加した場合にニードル弁331がノズル開放位置に位置し、圧電素子332に電圧VHを印加した場合にニードル弁331がノズル閉塞位置に位置する構成となっていた。これに対し本変形例は、印加電圧とニードル弁331の開閉位置との関係が逆になる。すなわち本変形例の場合は逆バネ機構533が介在することで圧電素子532に電圧VLを印加した場合はニードル弁331がノズル閉塞位置に位置し、電圧VHを印加した場合はニードル弁331がノズル開放位置に位置する。ここで、本変形例においては、電圧VLが本発明における「第1の電圧」の一例となり、電圧VHが「第2の電圧」の一例となる。
【0054】
上記変形例として示したヘッド500を備えるヘッドユニット50に対しても、図5などで説明したヘッド駆動装置902と接続することで、印加電圧VH、VLを補正することが可能となる。
【0055】
上述のように本変形例は、液体を吐出するノズル502に対して、ノズル502を閉じるノズル閉塞位置と、ノズル502を開くノズル開放位置とを移動するニードル弁531と、その移動のための動力をニードル弁531に付与する圧電素子532とを有するヘッド500と、圧電素子532の温度を検出するサーミスタ534と、を備えるヘッドユニット50を駆動するためのヘッド駆動装置902であって、ヘッド500は、圧電素子532に電圧VLを印加するとニードル弁531がノズル閉塞位置に位置し、圧電素子532に電圧VLと異なる電圧VHを印加するとニードル弁531がノズル開放位置に位置するように構成され、サーミスタ534の検出結果に基づき電圧VHの補正値を算出し、この補正値に基づいて電圧VHを可変する制御部9020を備える。
【0056】
また上述のように、電圧VHは、電圧VLよりも大きい値であるようにしている。本変形例では、サーミスタ534によって検出された温度が高いほど、第1の電圧としての電圧VLを小さくし、また、第2の電圧としての電圧VHを小さくする。
【0057】
これにより、熱膨張で伸張した圧電素子532がニードル弁531をノズル502側へ押し込み過ぎることがなくなり、液体の不吐出の発生を低減することが可能なヘッド駆動装置を提供することができる。
【0058】
図8は、本発明に係る液体吐出装置の一例を示す全体斜視図である。
【0059】
印刷装置1000は、被液体付与物の一例である被描画物100に対向して設置している。印刷装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。Y軸レール102は、X軸レール101がY方向(正側および負側)に移動可能なように、X軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX方向(正側および負側)に移動可能なように、Z軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向(正側および負側)に移動可能なように、キャリッジ1を保持する。
【0060】
印刷装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向へ動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向へ動かすX方向駆動部72とを備える。また、印刷装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向へ動かすY方向駆動部82を備える。さらに、印刷装置1000は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向へ動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0061】
上記構成の印刷装置1000は、キャリッジ1をX方向、Y方向およびZ方向に動かしながら、ヘッド保持体70に設けた液体吐出ヘッドから液体の一例であるインクを吐出し、被描画物100に描画を行う。なお、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。なお、図において被描画物100の表面形状は平面としているが、被描画物100の表面形状は、車やトラックの車体、航空機の機体などのように鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、もしくは多少の凹凸を有する面であってもよい。ここで、各レール101、102、103および各駆動部72、82、92、93は「移動手段」の一例である。
【0062】
図9は、図8に示した液体吐出装置のキャリッジの全体斜視図であり、キャリッジ1を被描画物100側から見たものである。
【0063】
キャリッジ1はヘッド保持体70を備えている。また、キャリッジ1は、図8に示した第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向(正側および負側)へ移動可能である。ヘッド保持体70は、図8に示した第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向(正側および負側)へ移動可能である。また、ヘッド保持体70は液体吐出ヘッド300を取り付けるためのヘッド固定板70aを備えている。本実施形態では、図1乃至図6で説明したヘッド300を、ヘッド固定板70aに6個取り付けた構成を例示しており、6個のヘッド300a~300fを積層状に並べて設けている。なお、図7で説明したヘッド500をヘッド固定板70aに設けてもよい。
【0064】
ヘッド300a~300fは、それぞれ複数のノズル302を備えている。なお、ヘッド300a~300fで用いるインクの色の種類や数は、ヘッド毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば、印刷装置1000が、単色を用いる塗装装置である場合は、ヘッド300a~300fで用いるインクは同色でよい。また、ヘッド300を構成するヘッドの数は6つに限るものではない。6つより多くてもよく、また、6つより少なくてもよい。
【0065】
液体吐出ヘッド300は、図示のように各ヘッドのノズル列が水平面(X-Z面)と交差し、かつ複数のノズル302の配列方向をX軸に対して傾けた状態でヘッド固定板70aに固定する。この状態でノズル302は、重力方向と交差する方向(Z方向正側)にインクを吐出する。
【0066】
図10は、液体吐出装置の制御系の一例を示したブロック図である。
【0067】
印刷装置1000は、コントローラ901、ヘッド駆動装置902等を備える。また、コントローラ901には、コンピュータ903を接続している。コンピュータ903は、カラープロファイルやユーザの設定に応じて画像処理を行うRIP(Routing Information Protocol)部9031、被描画物100(図8参照)に描画する画像データをスキャン(キャリッジ1のX軸方向の移動)毎の画像データに分解するレンダリング部9032等を備える。また、コンピュータ903には、被描画物100に描画する画像データや座標データの設定や、描画モードの選択等を行う入力装置9033を接続している。入力装置9033は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなり、ユーザからの入力を受け付ける。
【0068】
コントローラ901は、システム制御部9011、画像データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014およびキャリッジ制御部9015等を備える。システム制御部9011は、コンピュータ903から画像データや指令を受信し、液体吐出装置1000の全体動作を制御する。画像データ格納部9012は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等のメモリを備え、コンピュータ903から受信した画像データ等を格納する。メモリ制御部9013は、画像データ格納部9012を制御する。
【0069】
液体吐出装置1000は、X軸に沿って設置したリニアエンコーダの各スリットを光学的に検出するエンコーダセンサ109を備えている。吐出周期信号生成部9014は、このエンコーダセンサ109の出力信号と、コンピュータ903から受信した画像データの解像度を示す情報とから、液体の吐出周期信号を生成する。キャリッジ制御部9015は、エンコーダセンサ109の出力信号に基づきキャリッジ1の位置情報を算出して、X方向駆動部72の速度を制御する。なお、本例においては、システム制御部9011にてキャリッジ1の移動速度の変化量を算出している。そしてシステム制御部9011は、この移動速度変化量に基づきキャリッジ1の速度制御を行う。
【0070】
以上のようにコントローラ901は、システム制御部9011、画像データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014およびキャリッジ制御部9015等を備えている。コントローラ901は、演算処理装置および記憶装置を有し、記憶装置内に事前に記録されているプログラムを演算処理装置が実行することで、これら各機能部を実現する。
【0071】
次にヘッド駆動装置902を説明する。液体吐出ヘッド300の駆動を制御するヘッド駆動装置902については図5で説明をしたため詳細は省略する。ヘッド駆動装置902は、コントローラ901の吐出周期信号生成部9014からの吐出周期信号を、図5に示した駆動波形生成部9021が受信する構成となっており、吐出周期信号に基づきヘッド駆動装置902は動作する。なお、図示の構成は一例であり、これに限るものではない。例えば、RIP部9031とレンダリング部9032は、コンピュータ903に設けるのではなく、コントローラ901のシステム制御部9011に設ける構成としてもよい。
【0072】
図11は、本発明に係る液体吐出装置のさらに別の例を示す概略構成図、図12は、図11の一部拡大図である。
【0073】
液体吐出装置1000は、キャリッジ1を往復直線移動させるリニアレール404と、リニアレール404を適宜所定の位置へ移動させ、その位置で保持する多関節ロボット405とを備えている。多関節ロボット405は、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能としたロボットアーム405aを備えており、ロボットアーム405aの先端を自由に移動させ、且つ、正確な位置に配置することができる。
【0074】
多関節ロボット405としては、例えば、6つの軸、すなわち6つの関節を備えた6軸制御型の産業用ロボットを用いることができる。6軸型の多関節ロボットによれば予め動作に関する情報をティーチングしておくことで、きわめて正確、且つ、迅速にリニアレール404を被描画物702(航空機)の所定位置に対峙させることができる。ロボット405は、6軸に限定されるものではなく、5軸、7軸など適宜の軸数を備えた多関節ロボットを用いることができる。
【0075】
ロボット405のロボットアーム405aはフォーク状の支持部材424を備えている。この支持部材424の左側の枝部424aの先端には垂直リニアレール423aを、右側の枝部424bの先端には垂直リニアレール423bを平行になるようにして取り付けている。そして、キャリッジ1を移動可能に保持したリニアレール404の両端を、2つの垂直リニアレール423a、423bにそれぞれ架け渡すようにして支持させている。
【0076】
キャリッジ1は、図9等で説明した実施形態の構成を備えるものであり、被描画物702に向けて液体を吐出するヘッド(図示省略)を備えている。ヘッドとしては、図9等で説明したヘッド300や、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトなどの各色の液体を吐出する複数のヘッド300、または複数のノズル列を有するヘッド300を備えている。このキャリッジ1の各ヘッド300またはヘッド300の各ノズル列に対しては、インクタンク330から各色の液体が供給される。なお、本実施形態においても、図7で説明したヘッド500を用いる構成としてもよい。
【0077】
キャリッジ1は、リニアレール404上を移動することで第1の軸の方向へ動き、このリニアレール404が垂直リニアレール423a、423b上を移動することで第1の軸と交差する第2の軸の方向へ動くことが可能である。また、図示しないがキャリッジ1には、前述の第1の軸および第2の軸と交差する第3の軸の方向(本変形例では被描画物702に向けての液体吐出方向)にてキャリッジ1を移動させる第1の駆動手段を備えている。また、キャリッジ1は、前述のヘッドを、キャリッジ1に対して第3の軸の方向にて移動させる第2の駆動手段を備えている。
【0078】
この液体吐出装置1000は、ロボット405によりリニアレール404を被描画物702の描画領域に移動させ、描画データに応じてキャリッジ1をリニアレール404に沿って移動しながらヘッド300を駆動して、描画を行う。そして、1ライン分の描画が終了したときに、垂直リニアレール423a、423bを駆動することにより、キャリッジ1のヘッド300をあるラインから次のラインに移動させる。この動作を繰り返して、被描画物702の所要の描画領域に描画することが可能となる。
【0079】
次に、図13を用いてヘッド駆動装置の第2変形例について説明する。図13は、本発明の実施形態に係るヘッド駆動装置の第2変形例を示すブロック図である。
【0080】
第2変形例では、図5に示されたようなサーミスタ等の温度検出手段を用いずに圧電素子332の駆動回数または駆動周波数からヘッド300(または圧電素子332)の温度を算出する。つまり、圧電素子332を連続して駆動するときの累積の駆動回数が増えるほど圧電素子332の温度は上昇し、また、圧電素子332の駆動周波数が高いほど圧電素子332の温度は早く上昇すると考えられる。本変形例では上記の考えのもと、圧電素子332の駆動情報(駆動回数または駆動周波数)からヘッド300(または圧電素子332)の温度を算出(推定)している。なお、図13に示すハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加または削除されてもよい。
【0081】
図13においてヘッド駆動装置902は、制御部9020および駆動波形増幅部9022を備える。このうちの制御部9020は、駆動波形生成部9021、駆動情報取得部9026および補正値算出部9025を備え、ヘッド駆動装置902はヘッド300との電気的な接続が可能である。
【0082】
駆動波形生成部9021は、駆動波形を生成し、生成した駆動波形信号を駆動波形増幅部9022および駆動情報取得部9026へ送信する。また、駆動波形生成部9021は、補正値算出部9025から圧電素子332の駆動電圧補正値に関する補正値情報を受信した場合は、その補正値情報に基づき駆動波形を補正する。
【0083】
駆動波形増幅部9022は、駆動波形生成部9021から受信した駆動波形信号の電圧および電流を増幅し、ヘッド300が有する圧電素子332に対して駆動電圧を印加する。
【0084】
駆動情報取得部9026は、駆動波形生成部9021から駆動波形信号を受信し、駆動波形信号よりヘッド300の駆動回数または駆動周波数などの駆動情報を取得する。そして、駆動情報取得部9026は、取得した駆動回数または駆動周波数の情報をもとに、ヘッド300の温度を算出する。
【0085】
補正値算出部9025は、駆動情報取得部9026から受信した情報に基づいて補正値を算出し、算出した補正値情報を駆動波形生成部9021へ送信する。そして、駆動情報取得部9026によって算出した温度が高いほど、第1駆動電圧V1が高くなるように制御部9020が駆動電圧を制御する。
【0086】
上記構成のヘッド駆動装置902を、図1に示したヘッド300の圧電素子332それぞれに備えることで、ノズル毎に吐出状態を補正することが可能になり、液体の吐出量、液滴のサイズ等をノズル毎で調整することが可能になる。ここで、駆動情報取得部9026は「駆動情報取得手段」の一例である。
【0087】
第2変形例において、ヘッド駆動装置902は、液体を吐出するノズル302に対してノズル302を閉じる位置と開く位置との間で移動するニードル弁331と、ニードル弁331を移動させるための動力をニードル弁331に付与する圧電素子332とを有するヘッド300を制御する。
【0088】
液体吐出ヘッドとしてのヘッド300は、上述の図3および図4で示す実施形態と同じく、駆動体としての圧電素子332に第1の電圧VHを印加すると弁体としてのニードル弁331がノズル閉塞位置に位置し、圧電素子332に第1の電圧と異なる第2の電圧VLを印加するとニードル弁331がノズル開放位置に位置するように構成される。
【0089】
制御部9020は、ヘッド300の駆動回数または駆動周波数の情報を取得する駆動情報取得部9026と、駆動情報取得部9026が取得した駆動回数が大きいほど、または駆動周波数が高いほど第1の電圧VHを低くする制御部9020とを備える。
【0090】
第2変形例において、圧電素子332の駆動回数が大きい、または圧電素子332の駆動周波数が高いことに起因して圧電素子332に熱膨張が生じる場合、印加電圧VH、VL(図4の実線状態)を、それぞれ低い値である印加電圧VH´、VL´(図4の破線状態)に補正する。これにより、熱膨張で伸張した圧電素子332がニードル弁331をノズル302側へ押し込み過ぎることがなくなり、図3(a)に示した平常時の状態を維持することが可能になる。これにより、温度によらず確実にノズル302の閉じた状態を維持できる。また、液体の吐出特性(吐出量、吐出速度等)のばらつきを抑えることができる。
【0091】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0092】
また、本発明に係る液体吐出装置は、上述の印刷装置の形態に限るものではない。例えば、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能とした多関節ロボットのロボットアームの先端に、本発明の液体吐出ヘッドを取り付けた形態でもよい。また、ドローンなどの無人航空機、または壁面を登ることが可能なロボットに本発明の液体吐出ヘッドを搭載して、塗装可能な無人航空機、あるいは塗装可能なクライミングロボットの形態としてもよい。また、液体吐出装置は、対象物に対して液体吐出ヘッドを動かす構成のものに限らない。液体吐出ヘッドと対象物とは相対的に移動が可能であればよく、対象物を液体吐出ヘッドに対して動かす構成のものであってもよい。
【0093】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0094】
第1の態様は、液体を吐出するノズル(例えばノズル302、502)に対して、前記ノズルを閉じるノズル閉塞位置と、前記ノズルを開くノズル開放位置とを移動する弁体(例えばニードル弁331、531)と、前記移動のための動力を前記弁体に付与する駆動体(例えば圧電素子332、532)とを有する液体吐出ヘッド(例えばヘッド300、500)と、前記駆動体の温度を検出する温度検出手段(例えばサーミスタ334、534)と、を備えるヘッドユニット(例えばヘッドユニット30、50)を駆動するためのヘッド駆動装置であって、前記液体吐出ヘッドは、前記駆動体に第1の電圧(例えば実施形態の電圧VH、変形例の電圧VL)を印加すると前記弁体が前記ノズル閉塞位置に位置し、前記駆動体に前記第1の電圧と異なる第2の電圧(例えば実施形態の電圧VL、変形例の電圧VH)を印加すると前記弁体が前記ノズル開放位置に位置するように構成され、前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第2の電圧を可変する制御手段(例えば制御部9020)を備える。
【0095】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御手段(例えば制御部9020)は、前記温度検出手段(例えばサーミスタ334、534)の検出結果に基づき前記第1の電圧(例えば実施形態の電圧VH、変形例の電圧VL)を可変する。
【0096】
第1の態様および第2の態様によれば、熱によって伸張した駆動体が弁体をノズル側へ押し込み過ぎることがなくなり、その結果、液体の不吐出の発生を低減することが可能なヘッド駆動装置を提供することができる。
【0097】
また、第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、前記制御手段(例えば制御部9020)は、前記第1の電圧(例えば実施形態の電圧VH、変形例の電圧VL)と前記第2の電圧(例えば実施形態の電圧VL、変形例の電圧VH)との電位差(例えば電位差Vpp)が一定となるように前記第1の電圧および前記第2の電圧を可変する。
【0098】
第3の態様によれば、駆動体への印加電圧の補正前と補正後とで、液体の吐出特性(吐出量、吐出速度等)のばらつきを抑えることができる。
【0099】
第1乃至第3のいずれかの態様において、前記第2の電圧は、前記第1の電圧よりも小さい値としてもよいし(第4の態様)、前記第1の電圧よりも大きい値としてもよい(第5の態様)。
【0100】
第6の態様は、液体を吐出するノズル(例えばノズル302、502)に対して、前記ノズルを閉じるノズル閉塞位置と、前記ノズルを開くノズル開放位置とを移動する弁体(例えばニードル弁331、531)と、前記移動のための動力を前記弁体に付与する駆動体(例えば圧電素子332、532)とを有し、前記駆動体に第1の電圧(例えば実施形態の電圧VH、変形例の電圧VL)を印加すると前記弁体が前記ノズル閉塞位置に位置し、前記駆動体に前記第1の電圧と異なる第2の電圧(例えば実施形態の電圧VL、変形例の電圧VH)を印加すると前記弁体が前記ノズル開放位置に位置するように構成された液体吐出ヘッド(例えばヘッド300、500)と、前記駆動体の温度を検出する温度検出手段(例えばサーミスタ334、534)と、前記温度検出手段の検出結果に基づき前記第2の電圧を可変する制御手段(例えば制御部9020)と、を備える液体吐出ユニットである。
【0101】
第7の態様は、第6の態様において、前記制御手段(例えば制御部9020)は、前記温度検出手段(例えばサーミスタ334、534)の検出結果に基づき前記第1の電圧(例えば実施形態の電圧VH、変形例の電圧VL)を可変する。
【0102】
第6および第7の態様においても、第1および第2の態様と同様、熱によって伸張した駆動体が弁体をノズル側へ押し込み過ぎることがなくなり、その結果、液体の不吐出の発生を低減することが可能な液体吐出ユニットを提供することができる。
【0103】
また、第8の態様は、第6の態様または第7の態様において、前記制御手段(例えば制御部9020)は、前記第1の電圧(例えば実施形態の電圧VH、変形例の電圧VL)と前記第2の電圧(例えば実施形態の電圧VL、変形例の電圧VH)との電位差(例えば電位差Vpp)が一定となるように前記第1の電圧および前記第2の電圧を可変する。
【0104】
第8の態様によれば、駆動体への印加電圧の補正前と補正後とで、液体の吐出特性(吐出量、吐出速度等)のばらつきを抑えることができる。
【0105】
第6乃至第8のいずれかの態様において、前記第2の電圧は、前記第1の電圧よりも小さい値としてもよい(第9の態様)。
【0106】
また、第6乃至第9のいずれかの態様の液体吐出ユニットにおいて、前記液体吐出ヘッド(例えばヘッド500)は前記弁体(例えばニードル弁531)と前記駆動体(例えば圧電素子532)との間に移動機構(例えば逆バネ機構533)を備え、前記駆動体に前記第1の電圧(例えば電圧VL)よりも大きい値の前記第2の電圧(例えば電圧VH)を印加することにより、前記移動機構によって前記弁体を前記ノズル開放位置へ動かす構成としてもよい(第10の態様)。
【0107】
また、第6乃至第10のいずれかの態様の液体吐出ユニットにおいて、前記駆動体は、前記弁体(例えばニードル弁531)の前記移動の方向と同方向に伸縮可能な圧電素子である(第11の態様)。
【0108】
また、第6乃至第11のいずれかの態様の液体吐出ユニットにおいて、前記ノズル(例えばノズル302、502)を複数備え、それぞれの前記ノズルに対して前記弁体(例えばニードル弁331、531)および前記駆動体(例えば圧電素子332、532)を設ける構成としてもよい。
【0109】
また、他の態様として、液体を吐出するノズル(例えばノズル302、502)に対して、前記ノズルを閉じるノズル閉塞位置と、前記ノズルを開くノズル開放位置とを移動する弁体(例えばニードル弁331、531)と、前記移動のための動力を前記弁体に付与する駆動体(例えば圧電素子332、532)と、を備える液体吐出ヘッド(例えばヘッド300、500)を駆動するためのヘッド駆動装置であって、前記液体吐出ヘッドは、前記駆動体に第1の電圧(例えば実施形態の電圧VH、変形例の電圧VL)を印加すると前記弁体が前記ノズル閉塞位置に位置し、前記駆動体に前記第1の電圧と異なる第2の電圧(例えば実施形態の電圧VL、変形例の電圧VH)を印加すると前記弁体が前記ノズル開放位置に位置するように構成され、前記ヘッド駆動装置は、前記駆動体の駆動情報(例えば圧電素子332、532の駆動回数または駆動周波数)を取得する駆動情報取得手段(例えば駆動情報取得部9026)と、前記駆動情報取得手段の出力に基づき前記第2の電圧を可変する制御手段(例えば制御部9020)と、を備える。
【0110】
この態様においても、熱膨張で伸張した駆動体が弁体をノズル側へ押し込み過ぎることがなくなり、液体の不吐出の発生を低減することができる。
【符号の説明】
【0111】
30,50 ヘッドユニット
300 液体吐出ヘッド
302 ノズル
331 ニードル弁(弁体の一例)
332 圧電素子(駆動体の一例)
334 サーミスタ(温度検出手段の一例)
800 液体吐出ユニット
902 ヘッド駆動装置
9020 制御部(制御手段の一例)
9021 駆動波形生成部
9022 駆動波形増幅部
9023 AD変換部
9024 温度データ格納部
9025 補正値算出部
9026 駆動情報取得部
1000 印刷装置(液体吐出装置の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2010-241003号公報
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