(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029482
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】偏光素子、円偏光板及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210331
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2020179684の分割
【原出願日】2012-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2011150931
(32)【優先日】2011-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】大川 春樹
(57)【要約】
【課題】偏光層と、光配向層とが設けられた新規な偏光素子及び該偏光素子を含む円偏光子、並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材上に、光配向層及び偏光層がこの順で設けられた偏光子であり、該光配向層が光反応性基を有するポリマーから形成されたものであり、該偏光層が、重合性スメクチック液晶化合物及び二色性色素を含有する組成物から形成されたものである偏光素子、当該偏光素子の偏光層上にさらに位相差層を設けた円偏光板又は、当該偏光素子の透明基材を位相差フィルムに置き換えた円偏光板の提供。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材が第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、
該第1ロールから、該透明基材を連続的に送り出す工程と、
前記光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該透明基材上に第1塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去することにより、該透明基材上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を連続的に得る工程と、
該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより光配向層を形成して、第2積層体を連続的に得る工程と、
該光配向層上に、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素、レベリング剤及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該2種以上の重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を連続的に得る工程と、
該第2乾燥被膜中に含まれる該2種以上の重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該2種以上の重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより偏光層を形成して、フィルム状且つ長尺状である偏光素子を連続的に得る工程と、
連続的に得られた偏光素子を第2の巻芯に巻取り、第2ロールを得る工程と、
を有する、偏光素子の製造方法。
【請求項2】
更に、フィルム状且つ長尺状である偏光素子を所望の寸法に裁断する工程を有する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
位相差フィルムが第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、
該第1ロールから、該位相差フィルムを連続的に送り出す工程と、
光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該位相差フィルム上に第1塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去して、該位相差フィルム上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を連続的に得る工程と、
該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより光配向層を形成して、第2積層体を連続的に得る工程と、
該光配向層上に、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素、重合開始剤、レベリング剤及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該2種以上の重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を連続的に得る工程と、
該第2乾燥被膜中に含まれる該2種以上の重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該2種以上のスメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより偏光層を形成して、円偏光板を連続的に得る工程とを有し、
前記円偏光板は、前記位相差フィルムの遅相軸と、前記偏光層の吸収軸のなす角度が、略45°に積層してなるものであって、フィルム状且つ長尺状であり、
波長550nmの光で測定した楕円率の値が80%以上であり、
前記位相差フィルムが、波長550nmの光で測定した正面リタデーションの値が100~150nmの範囲のフィルムである、円偏光板の製造方法。
【請求項4】
更に、フィルム状且つ長尺状である円偏光板を所望の寸法に裁断する工程を有する請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
透明基材、光配向層、及び偏光層がこの順で設けられた、フィルム状且つ長尺状である偏光素子であって、
該偏光層が、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物の重合物と、レベリング剤と、二色性色素とを含有する、偏光素子。
【請求項6】
位相差フィルム、光配向層、及び偏光層がこの順で設けられた、フィルム状且つ長尺状である円偏光板であって、
該偏光層が、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物の重合物と、レベリング剤と、二色性色素とを含有する、円偏光板。
【請求項7】
波長550nmの光で測定した楕円率の値が80%以上であり、
前記位相差フィルムが、波長550nmの光で測定した正面リタデーションの値が100~150nmの範囲のフィルムである、請求項6記載の円偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光素子、円偏光板及びそれらの製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられる偏光素子は、一般的には、ヨウ素で染色したポリビニルアルコール(PVA)からなる膜が配向層として用いられている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】鈴木八十二編著,「液晶ディスプレイのできるまで」,日刊工業新聞社,2005年11月28日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特定の偏光層と、光配向層とが設けられた、新規な偏光素子及び該偏光素子を含む円偏光子、並びにそれらの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の〔1〕~〔17〕の発明を含む。
〔1〕透明基材上に、光配向層及び偏光層がこの順で設けられた偏光子であり、
該光配向層が、光反応性基を有するポリマーから形成されたものであり、
該偏光層が、
重合性スメクチック液晶化合物及び二色性色素を含有する組成物から形成されたものである偏光素子。
〔2〕前記偏光層が、X線回折測定においてブラッグピークが得られる偏光層である、前記〔1〕記載の偏光素子。
〔3〕前記組成物が、重合性スメクチック液晶化合物を2種以上含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の偏光素子。
〔4〕前記光反応性基を有するポリマーが、式(A’)で示される基を含むポリマーである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか記載の偏光素子。
【化1】
[式(A’)中、
nは、0又は1を表す。
X
1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-又は-CH
2-を表す。
Y
1は、単結合又は-O-を表す。
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
*は、ポリマー主鎖に対する結合手を表す。]
〔5〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の偏光素子の製造方法であり、
前記透明基材上に、
前記光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該透明基材上に第1塗布膜を形成する工程と、
該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去することにより、該透明基材上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を得る工程と、
該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより、該第1乾燥被膜から光配向層を形成して第2積層体を得る工程と、
該第2積層体にある該光配向層上に、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素、重合開始剤及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を形成する工程と、
該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を得る工程と、
該第2乾燥被膜中の該重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、該第2乾燥被膜から偏光層を形成する工程と
を有する製造方法。
〔6〕形状が、フィルム状且つ長尺状である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の偏光素子。
〔7〕前記〔6〕記載の偏光素子の製造方法であり、
透明基材が第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、
該第1ロールから、該透明基材を連続的に送り出す工程と、
前記光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該透明基材上に第1塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去することにより、該透明基材上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を連続的に得る工程と、
該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより、該第1積層体の搬送方向に対して、略45°の角度に配向方向を有する光配向層を形成して、第2積層体を連続的に得る工程と、
該光配向層上に、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素、重合開始剤及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を連続的に形成する工程と
該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を連続的に得る工程と、
該第2乾燥被膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、該第3積層体の搬送方向に対して、45°の角度に吸収軸を有する偏光層を形成して、偏光素子を連続的に得る工程と、
連続的に得られた偏光素子を第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程と
を有する製造方法。
〔8〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の偏光素子を備えた液晶表示装置。
〔9〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の偏光素子を、液晶セル内部に配置することにより備えた液晶表示装置。
〔10〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の偏光素子と、位相差フィルムとを、前記偏光層の吸収軸と前記位相差フィルムの遅相軸のなす角度が、略45°となるように積層した円偏光板であり、
波長550nmの光で測定した楕円率の値が80%以上であり、
前記位相差フィルムが、波長550nmの光で測定した正面リタデーションの値が100~150nmの範囲のフィルムである円偏光板。
〔11〕前記位相差フィルムが、可視光に対する正面リタデーションの値が、波長が短くなるに従って小さくなる特性を有する、前記〔10〕記載の円偏光板。
〔12〕形状が、フィルム状且つ長尺状である、前記〔10〕又は〔11〕記載の円偏光板。
〔13〕前記〔12〕記載の円偏光板の製造方法であり、
位相差フィルムが第3の巻芯に巻き取られている第3ロールを準備する工程と、
前記偏光素子が第2の巻芯に巻き取られている第2ロールを準備する工程と、
該第2ロールから該偏光素子を連続的に巻き出すとともに、該第3ロールから該位相差フィルムを連続的に巻き出す工程と、
連続的に巻き出された偏光素子の偏光層と、連続的に巻き出された位相差フィルムとを張り合わせる工程と
を有する製造方法。
〔14〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の偏光素子に含まれる透明基材を、位相差性を有する位相差フィルムに置き換え、前記位相差フィルムの遅相軸と、前記偏光層の吸収軸のなす角度が、略45°に積層してなる円偏光板であり、
波長550nmの光で測定した楕円率の値が80%以上であり、
前記位相差フィルムが、波長550nmの光で測定した正面リタデーションの値が100~150nmの範囲のフィルムである円偏光板。
〔15〕形状が、フィルム状且つ長尺状である、前記〔14〕記載の円偏光板。
〔16〕前記〔15〕記載の円偏光板の製造方法であり、
位相差フィルムが第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、
該第1ロールから、該位相差フィルムを連続的に送り出す工程と、
前記光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該位相差フィルム上に第1塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去して、該透明基材上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を連続的に得る工程と、
該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより、該第1積層体の搬送方向に対して、略45°の角度に配向方向を有する光配向層を形成して、第2積層体を連続的に得る工程と、
該光配向層上に、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素、重合開始剤及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を連続的に形成する工程と
該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を連続的に得る工程と、
該第2乾燥被膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、該第3積層体の搬送方向に対して、45°の角度に吸収軸を有する偏光層を形成して、円偏光板を連続的に得る工程と、
連続的に得られた円偏光板を第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程と
を有する製造方法。
〔17〕前記〔10〕、〔11〕及び〔14〕のいずれか記載の円偏光板と、有機EL素子とを備えた有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特定の偏光層と、光配向層とが設けられた、新規な偏光素子、及び当該偏光素子を含む新規な円偏光板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の偏光素子の最も簡単な構成を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の偏光素子の製造方法の要部を示す断面模式図である。
【
図3】光配向操作において、第1乾燥被膜に偏光UVを照射する方法を示す模式図である。
【
図4】本発明の偏光素子の連続的製造方法(Roll to Roll形式)の要部を示す模式断面図である。
【
図5】光配向層の配向方向D2と、フィルムの搬送方向D1との関係を模式的に表す図である。
【
図6】本発明の偏光素子を用いた液晶表示装置の断面構成を示す模式断面図である。
【
図7】液晶表示装置に設けられた本発明の偏光素子の層順を示す拡大模式断面図である。
【
図8】液晶表示装置に設けられた本発明の偏光素子の層順を示す拡大模式断面図である。
【
図9】本発明の偏光素子を用いた液晶表示装置(インセル形式)の断面構成を示す模式断面図である。
【
図10】本発明の円偏光板の最も簡単な構成を示す断面模式図である。
【
図11】本発明の円偏光板の連続的製造方法の要部を示す模式断面図である。
【
図12】本発明の偏光素子を用いたEL表示装置の断面構成を示す模式断面図である。
【
図13】EL表示装置に設けられた本発明の偏光素子の層順を示す拡大模式断面図である。
【
図14】本発明の偏光素子を用いたEL表示装置の断面構成を示す模式断面図である。
【
図15】本発明の偏光素子を用いた投射型液晶表示装置の断面構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の偏光素子(以下、場合により「本偏光素子」という。)は、透明基材上に、光配向層及び偏光層がこの順で設けられたものであり、
前記光配向層が、光反応性基を有するポリマーから形成され、且つ
前記偏光層が、重合性スメクチック液晶化合物及び二色性色素を含有する組成物から形成されていることを特徴とする。該組成物はさらに溶剤を含有していると好ましい。本偏光素子は、液晶表示装置に好適に用いられるのみならず、後述するように本偏光素子を用いることにより、有機EL表示装置に好適に用いられる円偏光板(以下、場合により「本円偏光板」という。)を製造することもできる。以下、必要に応じて図面を参照しながら、本偏光素子及びその製造方法、並びに、本円偏光板及びその製造方法を説明する。なお、本明細書に添付された図面は、見易さのために寸法は任意になっている。
【0009】
図1は、本偏光素子の最も簡単な構成を示す断面模式図である。透明基材1上に、光配向層2及び偏光層3がこの順で積層され、本偏光素子100が形成されている。本偏光素子100は例えば、以下の工程を含む製造方法(以下、場合により「本製造方法A」という。)により製造できる。
(工程A1)透明基材上に、光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、前記透明基材上に第1塗布膜を形成する工程;
(工程A2)前記第1塗布膜から前記溶剤を乾燥除去することにより、前記透明基材上に第1乾燥被膜を形成し、第1積層体を得る工程;
(工程A3)前記第1積層体が有する前記第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより、該第1乾燥被膜から光配向層を形成して第2積層体を得る工程;
(工程A4)前記第2積層体が有する前記光配向層上に、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を形成する工程;
(工程A5)前記第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる前記重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、前記光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を得る工程;
(工程A6)前記第3積層体が有する前記第2乾燥被膜中の前記重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、該第2乾燥被膜から偏光層を形成する工程
図2は、(工程A1)~(工程A6)からなる、本偏光素子100の製造方法(本製造方法A)の要部を示す断面模式図である。以下、この製造方法を工程ごとに説明する。
【0010】
<工程A1>
工程A1は、透明基材上に第1塗布膜を形成する工程である。
【0011】
<透明基材>
工程A1においては、まずは透明基材1を準備する。ここでいう透明基材とは光、特に可視光を透過し得る程度の透明性を有する基材である。該透明性とは、波長380~780nmに渡る光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的に、かかる透明基材を例示すると、ガラス基材や、プラスチック製の透光性シート及び透光性フィルムを挙げることができる。なお、この透光性シートや透光性フィルムを構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドなどのいずれかのプラスチックから構成された基材が挙げられる。以上の透明基材の具体例の中で、好ましいプラスチック製の透光性シート及び透光性フィルムについてみれば、プラスチック製の透光性フィルム、すなわち、高分子フィルムが好ましいものである。該高分子フィルムの中では、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、とりわけ好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルからなる高分子フィルムが好ましい。かかる透明基材を用いて、本偏光素子を製造するに当たり、該透明基材を運搬したり、保管したりする際に破れなどの破損を起こすことなく容易に取り扱える点で、該透明基材に支持基材などを貼り付けておいてもよい。また、後述するが、本偏光素子から円偏光板を製造する際に、該透明基材に位相差性を付与することがある。この場合には、透明基材として高分子フィルムを準備し、該高分子フィルムを延伸処理などにより、当該高分子フィルムに位相差性を付与して、位相差性フィルムとした後、この位相差性フィルムを透明基材1として用いればよい。なお、透明基材(高分子フィルム)に位相差性を付与する方法は追って説明する。
【0012】
前記高分子フィルムの中では、位相差性を付与する場合に、その位相差値をコントロールし易い点で、セルロースエステル又は環状オレフィン系樹脂からなるフィルム(セルロースエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)が好ましい。以下、この2種の高分子フィルムについて詳述する。
セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、酢酸エステル化されたものである。このようなセルロースエステルからなるセルロースエステルフィルムは市場から容易に入手することができる。市販のトリアセチルセルロースフィルムとしては、例えば、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などがある。このような市販セルロースエステルフィルム(トリアセチルセルロースフィルム)は、そのまま又は必要に応じて位相差性を付与してから透明基材として用いることができる。また、準備した透明基材の表面に、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び反射防止処理などの表面処理を施してから、透明基材1として使用することができる。
【0013】
高分子フィルムに位相差性を付与するには、上述のとおり、当該高分子フィルムを延伸するなどの方法による。プラスチック、すなわち熱可塑性樹脂からなる高分子フィルムは、いずれも延伸処理が可能であるが、位相差性を制御し易いという点で、環状オレフィン系樹脂フィルムは好ましいものである。環状オレフィン系樹脂フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂とは例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンの重合体又は共重合体(環状オレフィン系樹脂)から構成されるものであり、当該環状オレフィン系樹脂は部分的に、開環部を含んでいてもよい。また、開環部を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。さらに、当該環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわない点や、著しく吸湿性を増大させない点で例えば、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル化芳香族化合物(スチレンなど)との共重合体であってもよい。また、該環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
【0014】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、当該鎖状オレフィンとしては、エチレンやプロピレンなどであり、また、ビニル化芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン及びアルキル置換スチレンなどである。このような共重合体において、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して、50モル%以下、例えば、15~50モル%程度の範囲である。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル化芳香族化合物とから得られる三元共重合体である場合、例えば、鎖状オレフィン由来の構造単位の含有割合は、該環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して5~80モル%程度であり、ビニル化芳香族化合物由来の構造単位の含有割合は5~80モル%程度である。このような三元共重合体の環状オレフィン系樹脂は、該環状オレフィン系樹脂を製造する際に、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0015】
環状オレフィン系樹脂フィルムを製造し得る環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”[Ticona社(独)];“アートン”[JSR(株)];“ゼオノア(ZEONOR)”及び“ゼオネックス(ZEONEX)”[日本ゼオン(株)];“アペル”[三井化学(株)製]などが挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を例えば、溶剤キャスト法や溶融押出法などの公知の製膜手段により製膜して、フィルム(環状オレフィン系樹脂フィルム)とすることができる。また、すでにフィルムの形態で市販されている環状オレフィン系樹脂フィルムも用いることができる。このような市販の環状オレフィン系樹脂フィルムとしては例えば、“エスシーナ”及び“SCA40”[積水化学工業(株)];“ゼオノアフィルム”[オプテス(株)];“アートンフィルム”[JSR(株)]などが挙げられる。なお、ここで””内に記載するものはいずれも、商品名であり、以下も同様とする。
【0016】
続いて、高分子フィルムに位相差性を付与する方法について簡単に説明する。高分子フィルムは、公知の延伸方法により位相差性を付与することができる。例えば、高分子フィルムがロールに巻き取られているロール(巻き取り体)を準備し、かかる巻き取り体から、フィルムを連続的に巻き出し、巻き出されたフィルムを加熱炉へと搬送する。加熱炉の設定温度は、高分子フィルムのガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+100](℃)の範囲、好ましくは、ガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+50](℃)の範囲とする。当該加熱炉においては、フィルムの進行方向へ、又は進行方向と直交する方向へ延伸する際に、搬送方向や張力を調整し任意の角度に傾斜をつけて一軸又は二軸の熱延伸処理を行う。延伸の倍率は、通常1.1~6倍程度の範囲であり、好ましくは1.1~3.5倍程度の範囲である。また、斜め方向に延伸する方法としては、連続的に配向軸を所望の角度に傾斜させることができるものであれば、特に限定されず、公知の延伸方法が採用できる。このような延伸方法は例えば、特開昭50-83482号公報や特開平2-113920号公報に記載された方法を挙げることができる。
【0017】
透明基材1として用いるうえで、高分子フィルムの厚みは、実用的な取扱いができる程度の重量である点、及び、十分な透明性が確保できる点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。そこで、これらのフィルムの適当な厚みは、例えば、5~300μm程度であり、好ましくは20~200μmである。本偏光素子を、後述する円偏光板として使用する場合は、当該円偏光板を用いる表示装置がモバイル用途であることが想定されるため、フィルムの厚みは20~100μm程度が特に好ましい。なお、延伸することでフィルムに位相差性を付与する場合、延伸後の厚みは、延伸前のフィルムの厚みや延伸倍率によって決定される。
【0018】
工程A1では、上述の透明基材1上に光配向層2を設けることにより、透明基材1と光配向層2とを有する第1積層体101、好ましくは透明基材1と光配向層2とが積層された第1積層体101を形成する。なお、当該透明基材1にハードコート処理などの表面処理が施されている場合には、当該表面処理された面に対し、反対側の面に光配向層を形成すればよい。
【0019】
<光配向層>
光配向層形成に当たっては、まず、光反応性基を有するポリマー及び溶剤を含む組成物(以下、場合により「光配向層形成用組成物」という。)を準備する。光反応性基とは、光を照射すること(光照射)により液晶配向能を生じる基をいう。本発明における光反応性基とは、具体的には、光を照射することで生じるポリマー分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を利用したものが、配向性に優れ、後述する偏光層形成時に重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック液晶状態を保持する点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0020】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基などが挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基などや、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基などが挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
中でも、光二量化反応を生じうる光反応性基が好ましく、シンナモイル基及びカルコン基が、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいため好ましい。さらにいえば、光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0021】
前記光配向層形成用組成物の取り扱いの容易さと、高耐久性の配向性を実現した配向層が得られやすいこととから、特に好ましい光反応性基を有するポリマーは例えば、式(A’)で表される基を側鎖に有するポリマー(以下、場合により「ポリマー(A’)」という。)である。
【化2】
[式(A’)中、
nは、0又は1を表す。
X
1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-又は-CH
2-を表す。
Y
1は、単結合又は-O-を表す。
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
*は、ポリマー主鎖に対する結合手を表す。]
【0022】
式(A’)において、X1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-C=C-及び-CH2-のいずれかであると、ポリマー(A’)自体の製造が容易となるため、特に好ましい。
【0023】
式(A’)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基又はヒドロキシ基を表し、該カルボキシル基及び該スルホン酸基はアルカリ金属イオンと塩を形成していてもよい。これらの中でも、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であるとさらに好ましい。該アルキル基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などが挙げられ、該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基及びブトキシ基などが挙げられる。
【0024】
ポリマー(A’)の主鎖は特に限定されないが、式(M-1)又は式(M-2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位;式(M-3)又は式(M-4)で表される(メタ)アクリルアミド単位;式(M-5)又は式(M-6)で表されるビニルエーテル単位;式(M-7)又は式(M-8)で表される(メチル)スチレン単位、及び式(M-9)又は式(M-10)で表されるビニルエステル単位からなる群より選ばれるものから構成される主鎖をポリマー(A)は有していると好ましく、中でも、(メタ)アクリル酸エステル単位及び(メタ)アクリルアミド単位からなる群より選ばれる単位から構成される主鎖をポリマー(A’)が有しているとさらに好ましい。なお、ここでいう「ポリマー(A’)の主鎖」とは、ポリマー(A’)が有する分子鎖のうち、最も長い分子鎖をいう。
【化3】
【0025】
式(M-1)~式(M-10)のいずれかで表される単位と、式(A’)で表される基は、直接結合していても、適当な連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、カルボニルオキシ基(エステル結合)、酸素原子(エ-テル結合)、イミド基、カルボニルイミノ基(アミド結合)、イミノカルボニルイミノ基(ウレタン結合)、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基及び置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、並びにこれらを組み合わせてなる2価の基、を挙げることができる。置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基の具体例は、フェニレン基、2-メトキシ-1,4-フェニレン基、3-メトキシ-1,4-フェニレン基、2-エトキシ-1,4-フェニレン基、3-エトキシ-1,4-フェニレン基、2,3,5-トリメトキシ-1,4-フェニレン基などが挙げられる。これらの中でも、該連結基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~11のアルカンジイル基がさらに好ましい。なお、かかるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基及びウンデカメチレン基などが挙げられ、これらは直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、かかるアルカンジイル基は置換基を有していてもよい。この置換基は例えば、炭素数1~4のアルコキシ基などである。
【0026】
換言すると、式(A’)で表される基を有する構造単位としては、式(A)で表されるもの(以下、場合により「構造単位(A)」といい、当該構造単位(A)を含むポリマーを「ポリマー(A)」という。)が好ましい。
【化4】
[式(A)中、
X
1、Y
1、R
1、R
2及びnは式(A’)と同義であり、
S
1は、炭素数1~11のアルカンジイル基であり、
【化5】
で表される構造は、式(M-1)~式(M-10)のいずれかで表される構造である。]
【0027】
ポリマー(A’)又はポリマー(A)の分子量は、例えばゲルパーミエイション法(GPC法)で求められるポリスチレン換算の重量平均分子量で表して、1×103~1×107の範囲が好ましい。ただし、あまり分子量が高くなると、溶媒への溶解性が低下して配向膜形成要組成物の調製が困難になることや、光照射に対する感度が下がる傾向があるので、1×104~1×106の範囲が好ましい。
【0028】
ポリマー(A)は、構造単位(A)に加え、式(B)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(B)」という。)を有していてもよい。
【化6】
[式(B)中、
mは、0又は1を表す。
S
2は、炭素数1~11のアルカンジイル基を表す。
【化7】
で表される構造は、式(M-1)~式(M-10)のいずれかで表される構造である。] X
2は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-又は-CH
2-を表す。
Y
1は、単結合又は-O-を表す。
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。]
【0029】
式(B)において、S2の具体例は、式(A)のS1の具体例と同じであり、R3及びR4のアルキル基及びアルコキシ基の具体例についてはそれぞれ、式(A)のR1及びR2の具体例と同じである。
【0030】
ポリマー(A)の全構造単位に対する構造単位(A)及び構造単位(B)のモル分率をそれぞれ、p及びqとした(p+qは1である。)場合、0.25<p≦1及び0≦q<0.75の関係を満たすことが好ましい〔ここで、ポリマー(A)が構造単位(A)を有し、pが1である場合とは、ポリマー(A)が構造単位(A)からなるポリマーであることを意味する。構造単位(A)からなるポリマーには、該構造単位(A)が1種であっても、2種以上であってもよい。〕。ただし、ポリマー(A)は光照射による配向能を著しく損なわない限り、構造単位(A)及び構造単位(B)以外の構造単位(以下、場合により「他の構造単位」という。)を有していてもよい。
【0031】
ポリマー(A)は、構造単位(A)を誘導するモノマーと、必要に応じて構造単位(B)や他の構造単位を誘導するモノマーとを(共)重合することで製造できる。当該(共)重合には通常、付加重合法が採用され、かかる付加重合としては、ラジカル重合、アニオン重合及びカチオン重合などの連鎖重合、並びに配位重合などが挙げられる。重合条件は使用するモノマーの種類及びその量に応じて、上述の好ましいポリマー(A)の分子量が満たされるようにして設定される。
【0032】
以上、光反応性基を有するポリマーの中で好ましいものとして、ポリマー(A)について詳述したが、配向層形成用組成物は、当該光反応性基を有するポリマー(好ましくは、ポリマー(A))を適当な溶剤に溶解することで調製される。かかる溶剤は、当該光反応性基を有するポリマーが溶解することができ、適正な粘度の配向層形成用組成物が得られる範囲で適宜選択できるが、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼンなどの塩素含有溶剤;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン及びジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これら溶剤は、単独種で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
光配向層形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマーの濃度は、当該ポリマーの種類や製造しようとする本偏光素子100の光配向層2の厚みによって適宜調節できるが、固形分濃度で表して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲が特に好ましい。また、本偏光素子100の光配向層2の特性が著しく損なわれない範囲で、該配向層形成用組成物は、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤が含まれていてもよい。
【0034】
光配向膜形成用組成物を透明基材1上に塗布する方法としては、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法などの塗布法や、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が採用される。なお、本偏光素子製造を、後述するRoll to Roll形式の連続的製造方法により実施する場合、当該塗布方法は通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法又はフレキソ法などの印刷法が採用される。
【0035】
<工程A2>
再び、
図2を参照して、本製造方法Aの工程A2を説明する。
該工程A2は、前記工程A1によって前記透明基材1上に形成された第1塗布膜を乾燥させることにより、該第1塗布膜に含まれる溶媒(光配向層形成用組成物に用いた溶媒)を乾燥除去することで、前記透明基材1上に第1乾燥被膜2Aを形成し、第1積層体101を得る工程である。この溶媒の乾燥除去には、該第1積層体を、適当な温度で加熱することにより溶媒を乾燥除去する方法(加熱方法)や、該第1積層体101を、適当な耐圧容器に封入した後、該容器内の圧力を減圧状態とすることにより溶媒を乾燥除去する方法(減圧方法)、通風乾燥(通風方法)、自然乾燥、或いはこれらの方法を組み合わせることで、実施できる。なお、本偏光素子の製造を、後述するRoll to Roll形式の連続形式で行う場合は通常、加熱方法が採用される。溶剤を乾燥除去することにより、該第1塗布膜は該第1乾燥被膜2Aへと転化して第1積層体101が得られる。
【0036】
かくして得られる第1積層体101の第1乾燥被膜2Aの厚みは、後述する工程A3により得られる配向層2が所望の厚みとなるようにして定められる。当該配向層2の厚みは、例えば10nm~10000nmであり、好ましくは10nm~1000nmである。
所定の配向層2の厚みは、前記工程A1において、光配向層形成用組成物の固形分濃度、光配向層形成用組成物の透明基材1に対する塗布条件を調整することでコントロールできる。
【0037】
<工程A3>
続いて、前記第1積層体101の第1乾燥被膜2Aに偏光UV(偏光紫外線)を照射することで、該第1乾燥被膜2Aに含まれる、光反応性基を有するポリマーを配向させ、液晶配向能を付与(以下、場合により「光配向操作」という。)して第2積層体102を形成する。光配向操作において、偏光UVを前記第1乾燥被膜2Aに照射するには、該第1積層体の前記第1乾燥被膜2A側から直接、偏光UVを照射する形式(
図3(A)に示す形式(A))でも、該第1積層体の前記透明基材1側に偏光UVを照射し、該透明基材1中に偏光UVを透過させることで、偏光UVを第1乾燥被膜2Aに照射する形式(
図3(B)に示す形式(B))でもよい。これらの形式のいずれにおいても、照射する偏光UVは、直線偏光UV及び楕円偏光UVのいずれでもよいが、効率よく光配向操作を行うためには、直線偏光に近い楕円偏光UV、又は消光比の高い直線偏光UVを用いることが好ましい。また、当該偏光UVは、ほぼ平行光であることが特に好ましい。ただし、形式(B)により光配向操作を行う場合、用いる第1積層体101にある透明基材1は、その透明性が高ければ高いほど好ましい。
【0038】
照射する偏光UVは、前記第1乾燥被膜に含まれる、光反応性基を有するポリマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。例えば、ポリマー(A’)のように、光反応性基がシンナモイル基である場合は、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。光配向操作に用いる光源としては、キセノンランプ;高圧水銀ランプ;超高圧水銀ランプ;メタルハライドランプ;KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられる。シンナモイル基を光反応性基として有するポリマー(A’)を用いた場合、光配向操作の用いる光源は、高圧水銀ランプ及び超高圧水銀ランプメタルハライドランプが好ましい。その理由は、これらのランプは、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいためである。前記光源からの光を、適当な偏光子200を通過してから前記第1積層体に照射すれば、該第1積層体に偏光UVが照射されることになる。かかる偏光子200としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ-ラ-などの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0039】
以上、前記光配向操作を、
図3を参照して説明したが、前記第1積層体101に偏光UVを照射するには、
図3に示すように、該第1積層体101の面方向に対して、偏光UVの照射方向が略垂直であることは必ずしも必要ではなく、該第1積層体101の面方向に対して、偏光UVの照射方向が斜めになっていてもよい。該第1積層体101の面方向に対する、偏光UVの照射方向は、光配向操作に用いる光源及び偏光子の種類などに応じて、得られる光配向層2が所望の吸収軸を有するように定められる。
【0040】
<工程A4>
本製造方法Aの工程A4~工程A6は、前記工程A3を経て得られた前記第2積層体102の前記光配向層2上に、偏光層3を設けるものである。
本偏光素子が有する偏光層は、上述のとおりの方法で形成される。繰り返しになるが、この方法について説明する。まず、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素及び溶剤を含有した組成物(以下、場合により「偏光層形成用組成物」という。)を調製する。工程A4においては、該偏光層形成用組成物を前記配向層2上に塗布して第2塗布膜を形成する。
【0041】
まず、前記偏光層形成用組成物の構成成分について説明する。
前記偏光層形成用組成物に含有される重合性スメクチック液晶化合物とは、重合性基を有し、かつスメクチック相の液晶状態を示す化合物である。重合性基とは、該重合性スメクチック液晶化合物の重合反応に関与する基を意味する。
【0042】
前記重合性スメクチック液晶化合物が示す液晶状態は、高次のスメクチック相であることが好ましい。ここでいう高次のスメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相及びスメクチックL相であり、中でも、スメクチックB相、スメクチックF相、スメクチックI相、傾斜したスメクチックF相及び傾斜したスメクチックI相が好ましく、スメクチックB相がより好ましい。重合性スメクチック液晶化合物が示す液晶状態により、配向秩序度の高い偏光層を有する本偏光素子が製造される。
【0043】
好ましい重合性スメクチック液晶組成物としては、例えば、式(1)で表される化合物(以下、場合により「化合物(1)」という。)が挙げられる。
U1-V1-W1-X10-Y10-X20-Y20-X30-W2-V2-U2(1)[式(1)中、
X10、X20及びX30は、互いに独立に、置換基を有していてもよいp-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。ただし、X1、X2及びX3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよいp-フェニレン基である。
Y10及びY20は、互いに独立に、-CH2CH2-、-CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-又は-CRa=N-を表す。Ra及びRbは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
U1は、水素原子又は重合性基を表す。
U2は、重合性基を表す。
W1及びW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCOO-を表す。
V1及びV2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-S-又は-NH-に置き換わっていてもよい。]
【0044】
化合物(1)において、上述のように、X10、X20及びX30のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基であるが、これらのうち、少なくも2つが、置換基を有していてもよいp-フェニレン基であることが好ましい。
前記p-フェニレン基は、無置換であることが好ましい。前記シクロへキサン-1,4-ジイル基は、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、このトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基も無置換であることがより好ましい。
【0045】
前記p-フェニレン基又は前記シクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基;シアノ基;ハロゲン原子などが挙げられる。なお、シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-S-又は-NR-に置き換わっていてもよい。Rは、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基である。
【0046】
化合物(1)のY10は、-CH2CH2-、-COO-又は単結合であると好ましく、Y20は、-CH2CH2-又は-CH2O-であると好ましい。
【0047】
U2は、重合性基である。U1は、水素原子又は重合性基であり、好ましくは重合性基である。すなわち、U1及びU2は、ともに重合性基であると好ましく、ともに光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性基を有する重合性スメクチック液晶化合物を用いると、より低温条件下で該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることができる点でも有利である。
【0048】
化合物(1)において、U1及びU2の光重合性基は互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。光重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0049】
V1及びV2のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基などが挙げられる。V1及びV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及びハロゲン原子などを挙げることができるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換且つ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0050】
W1及びW2は、互いに独立に、好ましくは単結合又は-O-である。
【0051】
化合物(1)としては、式(1-1)~式(1-23)のいずれかで表される化合物などが挙げられる。かかる化合物(1)の具体例が、シクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
例示した化合物(1)は、単独又は2種以上を混合して、偏光層形成用組成物に用いることができる。また、2種以上の重合性スメクチック化合物を用い、この2種以上の重合性スメクチック化合物のうち、少なくとも1種が化合物(1)であるという形式でもよい。以下の説明では、単独種の重合性スメクチック液晶化合物を用いる場合と、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物を用いる場合とを総じて、「重合性スメクチック液晶化合物」と称することがある。
化合物(1)を偏光層形成用組成物に用いる場合、予め化合物(1)の相転移温度を求め、その相転移温度を下回る温度条件下で、該化合物(1)が重合できるように、偏光層形成用組成物の化合物(1)[重合性スメクチック液晶化合物]以外の成分を調整する。
このような重合温度をコントロールし得る成分としては、後述する光重合開始剤、光増感剤及び重合禁止剤などが挙げられる。これらの種類及び量を適宜調節することで化合物(1)の重合温度をコントロールできる。なお、偏光層形成用組成物に、2種以上の化合物(1)[重合性スメクチック液晶組成物]の混合物、を用いる場合にも、当該2種以上の化合物(1)の混合物の相転移温度を求めた後、重合性スメクチック液晶化合物の場合と同様にして、重合温度をコントロールする。
【0057】
例示した化合物(1)の中でも、それぞれ、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-13)、式(1-14)及び式(1-15)で表されるものからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの化合物(1)は、混合することで、あるいは、ともに用いられる光重合開始剤との相互作用により、容易に相転移温度を下回る温度条件下で、すなわち高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したままで過冷却状態が得られるため、該化合物(1)を重合させることができる。より具体的には、光重合開始剤との相互作用により、これらの化合物(1)は、70℃以下、好ましくは60℃以下の温度条件下で、高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したまま重合させることができる。
【0058】
前記偏光層形成用組成物中に含有される化合物(1)は上述のとおり、単独種であっても、複数種であってもよいが、複数種であることが好ましい。
【0059】
前記偏光層形成用組成物における化合物(1)の含有割合は、当該偏光層形成用組成物の固形分に対して、70~99.9質量%が好ましく、90~99.9質量%がより好ましい。化合物(1)の含有割合が前記の範囲内であれば、化合物(1)の配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、該偏光層形成用組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた成分の合計量のことをいう。なお、複数種の化合物(1)が該偏光層形成用組成物に含有される場合、その合計含有割合が前記の範囲であればよい。
【0060】
前記偏光層形成用組成物は、レベリング剤を含有すると好ましい。該レベリング剤とは、重合性スメクチック液晶化合物の流動性を調整し、偏光層形成用組成物を塗布して得られる前記第1塗布膜をより平坦にする機能を有するものであり、界面活性剤などを挙げることができる。該レベリング剤は、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0061】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、”BYK-350”、”BYK-352”、”BYK-353”、”BYK-354”、”BYK-355”、”BYK-358N”、”BYK-361N”、”BYK-380”、”BYK-381”及び”BYK-392”[BYK Chemie社]などが挙げられる。
【0062】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、”メガファックR-08”、同”R-30”、同”R-90”、同”F-410”、同”F-411”、同”F-443”、同”F-445”、同”F-470”、同”F-471”、同”F-477”、同”F-479”、同”F-482”及び同”F-483”[DIC(株)];”サーフロンS-381”、同”S-382”、同”S-383”、同”S-393”、同”SC-101”、同”SC-105”、”KH-40”及び”SA-100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[(株)ダイキンファインケミカル研究所];”エフトップEF301”、同”EF303”、同”EF351”及び同”EF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]などが挙げられる。
【0063】
前記偏光層形成用組成物にレベリング剤を含有させる場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、重合性スメクチック液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる偏光層がより平滑となる傾向がある。重合性スメクチック液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が前記の範囲を超えると、得られる偏光層にムラが生じやすい傾向がある。なお、該偏光層形成用組成物は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
【0064】
前記偏光層形成用組成物は、二色性色素を含有する。ここでいう二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。このような性質を有するものであれば、二色性色素は特に制限されず、染料であっても顔料であってもよい。この染料は複数種用いてもよく、顔料も複数種用いてもよく、染料と顔料とを組み合わせてもよい。
【0065】
前記二色性色素は、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素などが挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。
【0066】
アゾ色素は、例えば、式(2)で表される化合物(以下、場合により「化合物(2)」という。)が挙げられる。
A1(-N=N-A2)p-N=N-A3 (2)
[式(2)中、
A1及びA3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。A2は、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。pは1~4の整数を表す。pが2以上の整数である場合、複数のA2は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0067】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール及びベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が、2価の複素環基に該当し、かかる複素環化合物の具体例は、上述のとおりである。
【0068】
A1及びA3におけるフェニル基、ナフチル基及び1価の複素環基、並びにA2におけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基及び2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基及びブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基及びピロリジノ基などの置換又は無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は、-NH2である。)が挙げられる。なお、炭素数1~6のアルキル基の具体例は、化合物(1)のフェニレン基などが任意に有する置換基で例示したものと同じである。
【0069】
化合物(2)のなかでも、以下の式(2-1)~式(2-6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0070】
【0071】
【化13】
[式(2-1)~(2-6)中、
B
1~B
20は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(置換アミノ基及び無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表す。
n1、n2、n3及びn4は、互いに独立に0~3の整数を表す。
n1が2以上である場合、複数のB
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB
6は互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB
9は互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB
14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0072】
前記アントラキノン色素としては、式(2-7)で表される化合物が好ましい。
【化14】
[式(2-7)中、
R
1~R
8は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0073】
前記アクリジン色素としては、式(2-8)で表される化合物が好ましい。
【化15】
[式(2-8)中、
R
9~R
15は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0074】
前記オキサゾン色素としては、式(2-9)で表される化合物が好ましい。
【化16】
[式(2-9)中、
R
16~R
23は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0075】
以上の式(2-7)、式(2-8)及び式(2-9)において、Rxの炭素数1~6のアルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などであり、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基などである。
【0076】
前記シアニン色素としては、式(2-10)で表される化合物及び式(2-11)で表される化合物が好ましい。
【化17】
[式(2-10)中、
D
1及びD
2は、互いに独立に、式(2-10a)~式(2-10d)のいずれかで表される基を表す。
【化18】
n5は1~3の整数を表す。]
【0077】
【化19】
[式(2-11)中、
D
3及びD
4は、互いに独立に、式(2-11a)~式(2-11h)のいずれかで表される基を表す。
【化20】
n6は1~3の整数を表す。]
【0078】
前記偏光層形成用組成物における二色性色素の含有量は、当該二色性色素の種類などに応じて適宜調節できるが、例えば、重合性スメクチック液晶化合物の合計100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.1質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。二色性色素の含有量が、この範囲内であれば、重合性スメクチック液晶化合物の配向を乱すことなく、当該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることができる。二色性色素の含有量が多すぎると、重合性スメクチック液晶化合物の配向を阻害するおそれがある。そのため、重合性スメクチック液晶化合物が、高次のスメクチック相の液晶状態を保持できる範囲で、二色性色素の含有量を定めることもできる。
【0079】
前記偏光層形成用組成物は、溶剤を含有する。当該溶剤は、用いる重合性スメクチック液晶化合物の溶解性などを考慮して適宜、好ましいものを選択できる。ただし、該重合性スメクチック液晶化合物の重合反応の進行を著しく妨げることのない不活性な溶剤であることが好ましい。このような溶剤としては、前記偏光層形成用組成物調製用の溶剤と例示したものと同じである。該偏光層形成用組成物調製用の溶剤も、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
溶剤の含有量は、前記偏光層形成用組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、偏光層形成用組成物における固形分は、2~50質量%が好ましい。固形分が2質量%以上であると、本偏光素子が有する偏光層として必要な二色性が得られる。
一方、該固形分が50質量%以下であると、偏光層形成用組成物の粘度が低くなることから、偏光層の厚みが略均一になることで、当該偏光層にムラが生じにくくなる傾向がある。また、かかる固形分は、後述する偏光層の厚みを形成できるようにして定めることができる。
【0081】
前記偏光層形成用組成物は、重合開始剤を含有すると好ましい。当該重合開始剤は、重合性スメクチック液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、当該重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、この温度条件下、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる化合物が光重合開始剤として用いられる。当該光重合開始剤の中でも、光の作用によりラジカルを発生するものがより好ましい。
【0082】
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩などが挙げられる。
【0083】
以下、この光重合開始剤の具体例を挙げる。
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0084】
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0085】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0086】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0087】
トリアジン化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0088】
光重合開始剤は、市場から容易に入手できるものを用いることもできる。市販の光重合開始剤としては、”イルガキュア(Irgacure)907”、”イルガキュア184”、”イルガキュア651”、”イルガキュア819”、”イルガキュア250”、”イルガキュア369”(チバ・ジャパン(株));”セイクオールBZ”、”セイクオールZ”、”セイクオールBEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)BP100”(日本化薬(株));”カヤキュアーUVI-6992”(ダウ社製);”アデカオプトマーSP-152”、”アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);”TAZ-A”、”TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);及び”TAZ-104”(三和ケミカル社)などが挙げられる。
【0089】
前記偏光層形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、当該偏光層形成用組成物に含有される重合性スメクチック液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、例えば、重合性スメクチック液晶化合物の合計100質量部に対する重合開始剤の含有量は、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性スメクチック液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため、該重合性スメクチック液晶化合物が高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合することができる。
【0090】
前記偏光層形成用組成物が光重合開始剤を含有する場合、該偏光層形成用組成物には光増感剤を含有していてもよい。該光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレンなどが挙げられる。
【0091】
偏光層形成用組成物が光重合開始剤及び光増感剤を含有するものである場合、当該偏光層形成用組成物に含有される重合性スメクチック液晶化合物の重合反応をより促進することができる。かかる光増感剤の使用量は、併用する光重合開始剤及び重合性スメクチック液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、例えば、重合性スメクチック液晶化合物の合計100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0092】
前記偏光層形成用組成物に光増感剤を含有させることにより、重合性スメクチック液晶化合物の重合反応を促進できることを説明したが、該重合反応を安定的に進行させるために、該偏光膜形成用組成物には重合禁止剤を適度に含有させることもできる。重合禁止剤を含有することにより、重合性スメクチック液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0093】
前記重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル補足剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類及びβ-ナフトール類などが挙げられる。
【0094】
前記偏光層形成用組成物に重合禁止剤を含有させる場合、その含有量は、用いる重合性スメクチック液晶化合物の種類及びその量、並びに光増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、例えば、重合性スメクチック液晶化合物の合計100質量部に対する重合禁止剤の含有量が、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、該偏光層形成用組成物に含有される重合性スメクチック液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため、該重合性スメクチック液晶化合物がより一層、高次のスメクチック相の液晶状態を良好に保持したまま重合させることができる。
【0095】
以上説明した偏光層形成用組成物を、前記第2積層板の前記光配向層2上に塗布して第2塗布膜を得、該第2塗布膜中に含まれる前記重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより第2乾燥被膜3Aが形成される。その結果として、第3積層体103が得られる。
【0096】
前記第1積層板の光配向層2上に前記偏光膜形成用組成物を塗布する方法(塗布方法)としては例えば、前記工程A1において、前記光配向層形成用組成物を前記透明基材上に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。
【0097】
<工程A5>
続いて、工程A5では、前記第2積層板の前記第2塗布膜を乾燥することにより、該第2塗布膜から溶剤を除去して、第2乾燥被膜3Aを形成する。溶剤の除去方法は通常、前記工程A2において、第1塗布膜から第1乾燥被膜を形成する際に説明した方法と同じ方法が採用できるが、該第2塗布膜に含まれる重合性スメクチック液晶化合物が重合しないように乾燥条件を設定する。
【0098】
<工程A6>
工程A6においては、前記第2乾燥被膜3Aに含まれる重合性スメクチック液晶化合物の液晶状態をスメクチック液晶に保持したまま(積層体104)、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、偏光層3を形成する。この積層体104において、第2乾燥被膜3A中の重合性スメクチック液晶化合物を、スメクチック相の液晶状態にした層を「層3B」という。
【0099】
前記第2乾燥被膜3Aに含まれる重合性スメクチック液晶化合物の液晶状態をスメクチック液晶状態(以下、場合により「スメクチック相」又は「スメクチック相の液晶状態」という。)にして、層3Bを形成するためには、当該第2乾燥被膜を適切な温度に保持すればよく、換言すれば、前記第2乾燥被膜を供えた第3積層板103を、相転移温度から求めた適切な温度に保持すればよい。なお、スメクチック相の液晶状態となっている層3Bを形成するに当たり、一旦、当該第2乾燥被膜3Aに含まれる重合性スメクチック液晶組成物の液晶状態をネマチック相(ネマチック液晶状態)にした後、当該ネマチック相をスメクチック相に転移させると好ましい。このようにネマチック相を経由してスメクチック相を形成するためには例えば、第2乾燥被膜に含まれる重合性スメクチック液晶化合物がネマチック相の液晶状態に相転移する温度以上に加熱し、次いで該重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を示す温度まで冷却するといった方法が採用される。
【0100】
前記第2乾燥被膜中の重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態としたり、該重合性スメクチック液晶化合物を、ネマチック液晶状態を経由してスメクチック液晶状態としたりする場合、用いる重合性スメクチック液晶化合物の相転移温度を測定することで、液晶状態を制御する条件(加熱条件)を容易に求めることができる。この相転移温度測定の測定条件は本願の実施例で説明する。
【0101】
前記重合性スメクチック液晶化合物を重合させる際、スメクチック相の液晶状態を良好に保持するためにも、当該重合性スメクチック液晶化合物として、2種以上の重合性液晶スメクチック化合物を含む偏光層形成用組成物を用いることが好ましい。当該重合性スメクチック液晶組成物における各重合性スメクチック液晶化合物の含有量比を調整した偏光層形成用組成物を用いると、ネマチック相を経由してスメクチック相の液晶状態を形成した後に、一時的に過冷却状態を形成することが可能であり、高次のスメクチック相の液晶状態を容易に保持し易いという利点がある。
【0102】
ここでは、前記偏光層形成用組成物に光重合開始剤を含有させ、第2乾燥被膜中の重合性スメクチック液晶化合物の液晶状態をスメクチック相にした後、このスメクチック相の液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を光重合させる方法について詳述する。光重合において、第2乾燥被膜に照射する光線としては、当該第2乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、又は重合性スメクチック液晶化合物の種類(特に、該重合性スメクチック液晶化合物が有する光重合基の種類)及びその量に応じて適宜、可視光、紫外光及びレーザー光からなる群より選択される光や活性電子線によって行うことができる。これらのうち、重合反応の進行をコントロールし易い点や、光重合に係る装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。よって、紫外光によって、光重合できるように、前記偏光層形成用組成物に含有される重合性スメクチック液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくと好ましい。また、重合させる際には、紫外光照射とともに適当な冷却手段により、第2乾燥被膜を冷却することで重合温度をコントロールすることもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性スメクチック液晶化合物の重合を実施できれば、上述の透明基材1や光配向層2が比較的、耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に偏光層3を形成できるという利点もある。なお、光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光層3を得ることもできる。
【0103】
以上のような光重合を行うことにより、前記重合性スメクチック液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは、すでに例示したような高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光層3が形成され、本偏光素子100が得られる。重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光層3は、従来の偏光層、すなわち、ネマチック相の液晶状態を保持したままで重合性液晶化合物などを重合させて得られる偏光層と比較してはるかに偏光性能が高いという利点がある。
【0104】
かくして形成された偏光層3の厚みは、0.5~10μmの範囲が好ましく、0.5~3μmの範囲がさらに好ましい。したがって、第2塗布膜の厚みは、得られる偏光層3の厚みを考慮して定められる。なお、該偏光層3の厚みは、干渉膜厚計やレーザー顕微鏡あるいは触針式膜厚計の測定で求められるものである。
【0105】
また、かくして形成された偏光層3は、X線回折測定においてブラッグピークが得られるものであると特に好ましい。このようなブラッグピークが得られる偏光層3としては、例えば、ヘキサチック相又はクリスタル相に由来する回折ピークを示す偏光層3を挙げることができる。なお、かかるX線回折測定の測定条件は例えば、本願の実施例に記載した条件などが挙げられる。
【0106】
<本偏光素子の連続的製造方法>
以上、本偏光素子の製造方法(本製造方法A)の概要を説明したが、商業的に本偏光素子を製造する際には、連続的に本偏光素子を製造できる方法が求められる。このような連続的製造方法はRoll to Roll形式によるものであり、場合により、「本製造方法B」という。
【0107】
本製造方法Bは例えば、
透明基材が第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、
該第1ロールから、該透明基材を連続的に送り出す工程と、
前記光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該透明基材上に第1塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去することにより、該透明基材上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を連続的に得る工程と、
該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより、該第1積層体の搬送方向に対して、略45°の角度に配向方向を有する光配向層を形成して、第2積層体を連続的に得る工程と、
該光配向層上に、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を連続的に形成する工程と
該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を連続的に得る工程と、
該第2乾燥被膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、該第3積層体の搬送方向に対して、45°の角度に吸収軸を有する偏光層を形成して、偏光素子を連続的に得る工程と、
連続的に得られた偏光素子を第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程と
を有する。ここで
図4を参照して、本製造方法Bの要部を説明する。
【0108】
透明基材が第1の巻芯210Aに巻き取られている第1ロール210は例えば、市場から容易に入手できる。このようなロールの形態で市場から入手できる透明基材としては、すでに例示した透明基材の中でも、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルからなるフィルムなどが挙げられる。また、本偏光素子を円偏光板として用いるに当たり、予め位相差性が付与された透明基材も、市場から容易に入手でき、例えば、セルロースエステル又は環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムなどが挙げられる。
【0109】
続いて、前記第1ロール210から透明基材を巻き出す。透明基材を巻き出す方法は該第1ロール210の巻芯210Aに適当な回転手段を設置し、当該回転手段により第1ロール210を回転させることにより行われる。また、第1ロール210から透明基材を搬送する方向に、適当な補助ロール300を設置し、当該補助ロール300の回転手段で透明基材を巻き出す形式でもよい。さらに、第1の巻芯210A及び補助ロール300ともに回転手段を設置することで、透明基材に適度な張力を付与しながら、透明基材を巻き出す形式でもよい。
【0110】
前記第1ロール210から巻き出された透明基材は、塗布装置211Aを通過する際に、その表面上に当該塗布装置211Aにより前記配向膜形成用組成物が塗布される。このように連続的に配向膜形成用組成物を塗布するために上述のとおり、当該塗布装置211Aは、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、フレキソ法などの印刷法である。
【0111】
塗布装置211Aを経たフィルムは、上述の透明基材上と第1塗布膜との積層体に該当するものである。かくして第1塗布膜が形成(積層)された透明基材は、乾燥炉212Aへと搬送され、この乾燥炉212Aにより加熱されて、透明基材と第1乾燥被膜とからなる第1積層体へと転化する。乾燥炉212Aとしては例えば、熱風式乾燥炉などが用いられる。乾燥炉212Aの設定温度は、塗布装置211Aにより塗布された前記配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類などに応じて定められる。また乾燥炉212Aは、適当なゾーンに区分し、区分された複数のゾーンごとに設定温度が異なる形式であってもよく、複数個の乾燥炉を直列に配置し、互いに異なる設定温度で各乾燥炉を運転しながら、この複数個の乾燥炉をフィルムが順次搬送されるという形式でもよい。
【0112】
加熱炉212Aを通過することにより連続的に形成された第1積層体は、続いて、偏光UV照射装置213Aにより、該積層体の第1乾燥被膜側の表面又は透明基材側の表面に偏光UVが照射され、該第1乾燥被膜は光偏光層に転化する。その際、フィルムの搬送方向D1と、形成される光配向層の配向方向D2とがなす角度が略45°となるようにする。
図5は、偏光UV照射後に形成された光配向層の配向方向D2と、フィルムの搬送方向D1との関係を模式的に表す図である。すなわち、
図5は偏光UV照射装置213A通過後の第1積層体の表面を、フィルムの搬送方向D1と、光配向層の配向方向D2とを見たとき、それらのなす角度が略45°を示すことを表している。
【0113】
かくして連続的に形成された第1積層体は、続いて塗布装置211Bを通過することにより、該第1積層体の光配向層上に偏光層形成用組成物が塗布された後、乾燥炉212Bを通過することにより、第2積層体又は該第2積層体の第2乾燥被膜中に含まれる重合性スメクチック液晶化合物が、スメクチックの液晶状態を形成した積層体となる。乾燥炉212Bは、光配向層上に塗布された前記偏光層形成用組成物から溶剤を乾燥除去する役割とともに、前記第2乾燥被膜中に含まれる重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態となるように熱エネルギーを、該第2乾燥被膜に与える役割とを担う。また、すでに説明したように、重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック相の液晶状態とするために、一旦、該重合性スメクチック液晶化合物をネマチック相の液晶状態とするためには、前記第1積層体には異なる加熱条件により、多段階の加熱処理を前記第1積層体に対して行う必要がある。そのため、乾燥炉212Bは、乾燥炉212Aで説明したとおり、互いに異なる設定温度の複数のゾーンからなるものか、互いに異なる設定温度の乾燥炉を複数個準備し、該複数個の乾燥炉を直列に設置するという形式であると好ましい。
【0114】
前記乾燥炉212Bを経たフィルムは、偏光層形成用組成物に含まれていた溶剤が十分除去され、第2乾燥被膜中の重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま、光照射装置213Bへと搬送される。該光照射装置213Bによる光照射により、該重合性スメクチック液晶化合物は前記液晶状態を保持したまま、光重合して、偏光層が形成され、本偏光素子が連続的に形成される。
【0115】
かくして連続的に形成された本偏光素子は、第2の巻芯220Aに巻き取られ、第2ロール220の形態が得られる。形成された本偏光素子を巻き取って第2ロールを得る際、適当なスペーサを用いた供巻きを行ってもよい。
【0116】
このように、透明基材が、第1ロールから、塗布装置211A、乾燥炉212A、偏光UV照射装置213A、塗布装置211B、乾燥炉212A及び光照射装置213Aの順で通過することで、透明基材上に、本製造方法Aの工程A2~工程A6と同じようにして、光配向層及び偏光膜が形成されて、本偏光素子が連続的に製造される。
【0117】
また、
図4に示す本製造方法Bでは、透明基材から本偏光素子までを連続的に製造する方法を示したが、例えば、透明基材が、第1ロールから、塗布装置211A、乾燥炉212A、及び偏光UV照射装置213Aの順で通過させることで、連続的に形成された第1積層体を巻芯に巻き取って、第1積層体をロールの形態で製造し、該ロールから第1積層体を巻き出し、巻き出された第1積層体を、塗布装置211B、乾燥炉212A及び光照射装置213Aの順で通過させ、本偏光素子を製造してもよい。
【0118】
本製造方法Bにより得られる本偏光素子は、その形状がフィルム状且つ長尺状のものである。この本偏光素子は、後述する液晶表示装置などに用いる場合には、当該液晶表示装置のスケールなどに合わせ、所望の寸法になるように裁断されてから用いられる。
【0119】
以上、透明基材/光配向層/偏光層の積層体の形態である場合を中心に、本偏光素子の構成及び製造方法を説明してきたが、本偏光素子にはこれら以外の層又は膜が積層されていてもよい。すでに述べたように、本偏光素子は位相差フィルムをさらに備えていてもよいし、反射防止層又は輝度向上フィルムをさらに備えていてもよい。また、後述するように、位相差フィルム(好ましくは、1/4λ波長板)と組み合わせて円偏光板とすることもできる。円偏光板を製造する際に用いられる1/4波長板は、可視光に対する面内位相差値が、波長が短くなるに従って小さくなる特性を有するものが好ましい。
【0120】
<本偏光素子の有利な効果>
本偏光素子は、その製造方法が、光配向層形成時の光配向操作によって容易に所望の偏光方向を有する偏光層を形成できるという点で、従来の偏光素子よりも有利に製造できる。また、本製造方法Bにより、長尺状の本偏光素子を製造したとしても、該本偏光素子の長手方向に対して水平でない吸収軸を有する偏光層を備えたものを形成することができる。例えば、本偏光素子の偏光層における吸収軸を45°とすることで、後述するように、Roll to Roll貼合により、本偏光素子と1/4波長板とを張り合わせて円偏光板(本円偏光板)を製造し易くなり、本円偏光板の生産性は極めて向上する。
【0121】
<本偏光素子の用途>
本偏光素子は、さまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
一方、本円変更板は、特に有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置又は無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の表示装置に有効に用いることができる。
【0122】
図6及び
図9は、本偏光素子を用いた液晶表示装置(以下、場合により「本液晶表示装置」という。)10の断面構成を模式的に表す概略図である。液晶層17は、2枚の基14a及び基板14bで挟まれている。
図12は、本偏光素子を用いたEL表示装置(以下、場合により「本EL表示装置」という。)の断面構成を模式的に表す概略図である。
図13は、本偏光素子を用いた投射型液晶表示装置の構成を模式的に表す概略図である。
【0123】
まずは、
図6に示す本液晶表示装置10について説明する。
基板14aの液晶層17側には、カラーフィルタ15が配置されている。カラーフィルタ15が、液晶層17をはさんで画素電極22に対向する位置に配置され、ブラックマトリクス20が画素電極間の境界に対向する位置に配置されている。透明電極16がカラーフィルタ15及びブラックマトリクス20を覆うように液晶層17側に配置されている。
なお、カラーフィルタ15と透明電極16との間にオーバーコート層(図示せず)を有していてもよい。
【0124】
基板14bの液晶層17側には、薄膜トランジスタ21と画素電極22とが規則正しく配置されている。画素電極22は、液晶層17をはさんでカラーフィルタ15に対向する位置に配置されている。薄膜トランジスタ21と画素電極22との間には、接続孔(図示せず)を有する層間絶縁膜18が配置されている。
【0125】
基板14a及び基板14bとしては、ガラス基板及びプラスチック基板が用いられる。
かかるガラス基板やプラスチック基板は、本偏光素子の透明基材として例示したものと同じ材質のものが採用できる。また、本偏光素子の透明基材1が基板14a及び基板14bを兼ねていてもよい。基板上に形成されるカラーフィルタ15や薄膜トランジスタ21を製造する際、高温に加熱する工程が必要である場合は、ガラス基板や石英基板が好ましい。
【0126】
薄膜トランジスタは、基板14bの材質に応じて最適なものを採用できる。薄膜トランジスタ21としては、石英基板上に形成する高温ポリシリコントランジスタ、ガラス基板上に形成する低温ポリシリコントランジスタ、ガラス基板又はプラスチック基板上に形成するアモルファスシリコントランジスタが挙げられる。本液晶表示装置をより小型化するため、ドライバICが基板14b上に形成されていてもよい。
【0127】
透明電極16と、画素電極22との間には、液晶層17が配置されている。液晶層17には、基板14a及び基板14b間の距離を一定に保つために、スペーサ23が配置されている。なお、
図2では柱状のスペーサで図示するが、当該スペーサは柱状に限定されるものではなく、基板14a及び基板14b間の距離を一定に保つことができれば、その形状は任意である。
【0128】
基板14a及び基板14bに形成された層のうち液晶層17と接触する面には、液晶を所望の方向へ配向させるための配向層が各々配置されていてもよい。なお、本偏光素子を液晶セル内部に配置する、すなわち、液晶層17に接する面側に本偏光素子を配置することもできる。このような形式を以下、「インセル形式」という。このインセル形式の詳細は後述する。
【0129】
各部材は、基板14a、カラーフィルタ15及びブラックマトリクス20、透明電極16、液晶層17、画素電極22、層間絶縁膜18及び薄膜トランジスタ21、並びに基板14bの順番で積層されている。
【0130】
このような液晶層17を挟んでいる基板14a及び基板14bのうち、基板14bの外側には、偏光子12a及び12bが設けられており、これらのうち、少なくとも1つが本偏光素子である。
さらに、位相差層(例えば、1/4波長板や光学補償フィルム)13a及び13bが、積層されていると好ましい。偏光子12a及び12bのうち、本偏光素子を偏光子12bに配置することで、入射光を直線偏光に変換する機能を本液晶表示装置10に付与することができる。なお、位相差フィルム13a及び13bは、液晶表示装置の構造や、液晶層17に含まれる液晶化合物の種類によっては、配置されていなくてもよく、透明基材が位相差フィルムである本偏光素子(円偏光板)を用いた場合は、該位相差フィルムを位相差層とすることができるので、
図6の位相差層13a及び/又は13bを省略することもできる。本偏光素子の光出射側(外側)にさらに偏光フィルムを設けてもよい。
また、本偏光素子の外側に(本偏光素子にさらに偏光フィルムを設けた場合は、その外側に)の外側に、外光の反射を防ぐための反射防止膜が配置されていてもよい。
【0131】
上述のとおり、
図6の本液晶表示装置10の偏光子12a又は12bに、本偏光素子を用いることができる。本偏光素子を、偏光子12a及び/又は12bに設けることにより、本液晶表示装置10の薄型化が達成できるという効果がある。
【0132】
本偏光素子を偏光子12a又は12bに用いる場合、その積層順は特に限定されない。
これを
図6の点線で囲まれたA及びBの部分の拡大図を参照して説明する。
【0133】
図7は、
図6のAの部分の拡大模式断面図である。
図7の(A1)は、本偏光素子100を偏光子12aとして用いる場合、位相差層13a側から、偏光層3、光配向層2及び透明基材1がこの順に配置されるように、本偏光素子1が設けられていることを示す。また、
図7の(A2)は、位相差層13a側から、透明基材1、光配向層2及び偏光層3がこの順に配置されるように、本偏光素子1が設けられていることを示す。
【0134】
図8は、
図6のBの部分の拡大模式図である。
図8の(B1)は、本偏光素子100を偏光子12bとして用いる場合、位相差フィルム13b側から、透明基材1、光配向層2及び偏光層3がこの順に配置されるように、本偏光素子100は設けられる。
図8の(B2)は、本偏光素子100を偏光子12bとして用いる場合、位相差フィルム13b側から、偏光層3、光配向層2及び透明基材1がこの順に配置されるように、本偏光素子100は設けられる。
【0135】
偏光子12bの外側には、発光源であるバックライトユニットが配置されている。バックライトユニットは、光源、導光体、反射板、拡散シート及び視野角調整シートを含む。
光源としては、エレクトロルミネッセンス、冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード(LED)、レーザー光源及び水銀ランプなどが挙げられる。また、このような光源の特性に合わせて本偏光素子の種類を選択することができる。
【0136】
本液晶表示装置10が透過型液晶表示装置である場合、バックライトユニット中の光源から発せられた白色光は導光体に入射し、反射板によって進路を変えられて拡散シートで拡散する。拡散光は視野角調整シートによって所望の指向性を持つように調整されたのちにバックライトユニットから偏光子12bに入射する。
【0137】
無偏光である入射光のうち、ある一方の直線偏光のみが液晶パネルの偏光子12bを透過する。この直線偏光は位相差層13bによって円偏光あるいは楕円偏光に変換され、基板14b、画素電極22などを順次透過して液晶層17に到る。
【0138】
ここで画素電極22と対向する透明電極16との間の電位差の有無により、液晶層17に含まれる液晶分子の配向状態が変化して、本液晶表示装置10から出射される光の輝度が制御される。液晶層17が、偏光をそのまま透過させる配向状態である場合、その偏光は液晶層17、透明電極16を透過し、ある特定の波長範囲の光がカラーフィルタ15を透過して偏光子12aに到り、液晶表示装置は、カラーフィルタで決まる色を最も明るく表示する。
【0139】
逆に、液晶層17が、偏光を変換して透過させる配向状態である場合、液晶層17、透明電極16及びカラーフィルタ15を透過した光は、偏光子12aに吸収される。このことにより、この画素は黒を表示する。これら2つの状態の中間の配向状態では、本液晶表示装置10から出射される光の輝度も上記両者の中間となるため、この画素は中間色を表示する。
【0140】
本液晶表示装置10が半透過型液晶表示装置の場合、本偏光素子の偏光層側にさらに1/4波長板を積層させたもの(円偏光板)を用いることが好ましい。このとき、画素電極22は透明な材料で形成された透過部と、光を反射する材料で形成された反射部を有し、透過部では、前述の透過型液晶表示装置と同様にして画像が表示される。一方反射部では、外光が液晶表示装置に入射し、本偏光素子にさらに備えられた1/4波長板の作用により、本偏光素子を透過した円偏光が液晶層17を通過し、画素電極22によって反射されて表示に利用される。
【0141】
次に、本偏光素子を用いた、インセル形式の好適な液晶表示装置(本液晶表示装置24)について、
図9を参照して説明する。
本液晶表示装置24では、基板14a、偏光子12a、位相差フィルム13a、カラーフィルタ15及びブラックマトリクス20、透明電極16、液晶層17、画素電極22、層間絶縁膜18及び薄膜トランジスタ21、位相差フィルム13b、偏光子b、基板14b、並びにバックライトユニット19の順番で積層され、この構成では、本偏光素子は偏光子12aとして用いられることが好ましい。この構成では、本偏光素子は、本偏光素子にある透明基材が、基板14aを兼ねるように透明基材1、光配向層2及び偏光層3の順に配置されていてもよい。かかる構成で本偏光素子を備えた本液晶表示装置24では、入射光を直線偏光にする機能が付与されている。なお、本液晶表示装置10と同様に、位相差層13a及び13bは、液晶層17に含まれる液晶化合物の種類によっては、配置されていなくてもよい。
【0142】
次に、本偏光素子を用いた、本EL表示装置30について、
図12を参照して説明する。本EL表示装置に、本偏光素子を用いる場合、本偏光素子を本円偏光板にしてから用いることが好ましい。本円偏光板には2つの実施形態がある。そこで、本EL表示装置30の構成などを説明する前に、本円偏光板の2つの実施形態について、
図10を参照して説明する。
【0143】
図10の(A)は本円偏光板110の第1実施形態を模式的に表す断面図である。この第1実施形態は、本偏光素子100の偏光層3上にさらに位相差層(位相差フィルム)4を設けた本円偏光板110である。
図10の(B)は本円偏光板110の第2実施形態を模式的に表す断面図である。この第2実施形態は、本偏光素子100を製造する際に用いた透明基材1として、予め位相差性が付与されている透明基材1(位相差フィルム4)を用いることで、透明基材1自体が位相差層4としての機能を兼ね備えたものとした本円偏光板110である。
【0144】
ここで、本円偏光板110の製造方法に関して説明しておく。本円偏光板110の第2実施形態はすでに説明したとおり、本偏光素子100を製造する本製造方法A又は本製造方法Bにおいて、透明基材1として予め位相差性を付与された透明基材1、すなわち位相差フィルムを用いることで製造できる。本円偏光板110の第1実施形態は、本製造方法A又は本製造方法Bにより製造された本偏光素子1の偏光層3上に、位相差フィルムを貼合することで位相差層4を形成すればよい。なお、本製造方法Bにより第2ロール220の形態で、本偏光素子100を製造した場合には、該第2ロール220から本偏光素子100を巻き出し、所定の寸法に裁断してから、裁断された本偏光素子100に位相差フィルムを貼合する形態でもよいが、位相差フィルムが巻芯に巻き取られている第3ロールを準備することで、形状がフィルム状且つ長尺状である本円偏光板110を連続的に製造することもできる。
【0145】
本円偏光板110の第1実施形態を連続的に製造する方法について、
図11を参照して説明する。かかる製造方法は、
前記第2ロール220から連続的に本偏光素子100を巻き出すとともに、位相差フィルムが巻き取られている第3ロール230から連続的に前記位相差フィルムを巻き出す工程と、
前記第2ロール220から巻き出された本偏光素子100に設けられた偏光層と、前記第3ロールから巻き出された前記位相差フィルムとを連続的に貼合して本円偏光板110を形成する工程と、
形成された前記円偏光板110を第4の巻芯240Aに巻き取り、第4ロール240を得る工程とからなる。この方法はいわゆるRoll to Roll貼合である。
【0146】
以上、本円偏光板110の第1実施形態の製造方法を説明したが、本偏光素子100の偏光層3と、位相差フィルムとを貼合する際には、適当な粘着剤を用い、該粘着剤から形成される粘着層を介して、偏光層3と、位相差フィルムとを貼合してもよい。
【0147】
続いて、本円偏光板110を備えた本EL表示装置を、
図12を参照して説明する。
本EL表示装置30は、画素電極35が形成された基板33上に、発光源である有機機能層36、及びカソード電極37が積層されたものである。基板33を挟んで有機機能層36と反対側に、円偏光板31が配置され、かかる円偏光板31として本円偏光板110が用いられる。画素電極35にプラスの電圧、カソード電極37にマイナスの電圧を加え、画素電極35及びカソード電極37間に直流電流を印加することにより、有機機能層36が発光する。発光源である有機機能層36は、電子輸送層、発光層及び正孔輸送層などからなる。有機機能層36から出射した光は、画素電極35、層間絶縁膜34、基板33、円偏光板31(本円偏光板110)を通過する。有機機能層36を有する有機EL表示装置について説明するが、無機機能層を有する無機EL表示装置にも適用してもよい。
【0148】
本EL表示装置30を製造するには、まず、基板33上に薄膜トランジスタ40を所望の形状に形成する。そして層間絶縁膜34を成膜し、次いで画素電極35をスパッタ法で成膜し、パターニングする。その後、有機機能層36を積層する。
【0149】
次いで、基板33の薄膜トランジスタ40が設けられている面の反対の面に、円偏光板31(本円偏光板110)を設ける。
【0150】
本円偏光板110を円偏光板31として用いる場合、その積層順を
図11の点線で囲まれたCの部分の拡大図を参照して説明する。本円偏光板110を円偏光板31として用いる場合、該本円偏光板110にある位相差層4が、基板33側に配置される。
図12の(C1)は、本円偏光板110の第1実施形態を円偏光板31として用いた拡大図であり、
図12の(C2)は、本円偏光板110の第2実施形態を円偏光板31として用いた拡大図である。
【0151】
次に、本EL表示装置30の本偏光素子31(円偏光板110)以外の部材について簡単に説明する。
【0152】
基板33としては、サファイアガラス基板、石英ガラス基板、ソーダガラス基板及びアルミナなどのセラミック基板;銅などの金属基板;プラスチック基板などが挙げられる。
図示はしないが、基板33上に熱伝導性膜を形成してもよい。熱伝導性膜としては、ダイヤモンド薄膜(DLCなど)などが挙げられる。画素電極35を反射型とする場合は、基板33とは反対方向へ光が出射する。したがって、透明材料だけでなく、ステンレスなどの非透過材料を用いることができる。基板は単一で形成されていてもよく、複数の基板を接着剤で貼り合わせて積層基板として形成されていていてもよい。また、これらの基板は、板状のものに限定するものではなく、フィルムであってもよい。
【0153】
薄膜トランジスタ40としては例えば、多結晶シリコントランジスタなどを用いればよい。薄膜トランジスタ40は、画素電極35の端部に設けられ、その大きさは10~30μm程度である。なお、画素電極35の大きさは20μm×20μm~300μm×300μm程度である。
【0154】
基板33上には、薄膜トランジスタ40の配線電極が設けられている。配線電極は抵抗が低く、画素電極35と電気的に接続して抵抗値を低く抑える機能があり、一般的にはその配線電極は、Al、Al及び遷移金属(ただしTiを除く)、Ti又は窒化チタン(TiN)のいずれか1種又は2種以上を含有するものが使われる。
【0155】
薄膜トランジスタ40と画素電極35との間には層間絶縁膜34が設けられる。層間絶縁膜34は、SiO2などの酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機系材料をスパッタや真空蒸着で成膜したもの、SOG(スピン・オン・グラス)で形成した酸化ケイ素層、フォトレジスト、ポリイミド及びアクリル樹脂などの樹脂系材料の塗膜など、絶縁性を有するものであればいずれであってもよい。
【0156】
層間絶縁膜34上に、リブ41を形成する。リブ41は、画素電極35の周辺部(隣接画素間)に配置されている。リブ41の材料としては、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂などが挙げられる。リブ41の厚みは、好ましくは1.0μm以上3.5μmであり、より好ましくは1.5μm以上2.5μm以下である。
【0157】
次に、透明電極である画素電極35と、発光源である有機機能層36と、カソード電極37とからなるEL素子について説明する。有機機能層36は、それぞれ少なくとも1層のホール輸送層及び発光層を有し、例えば、電子注入輸送層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を順次有する。
【0158】
画素電極35としては、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、IGZO、ZnO、SnO2及びIn2O3などが挙げられるが、特にITOやIZOが好ましい。画素電極35の厚さは、ホール注入を十分行える一定以上の厚さを有すればよく、10~500nm程度とすることが好ましい。
画素電極35は、蒸着法(好ましくはスパッタ法)により形成することができる。スパッタガスとしては、特に制限するものではなく、Ar、He、Ne、Kr及びXeなどの不活性ガス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。
【0159】
カソード電極37の構成材料としては例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn及びZrなどの金属元素が用いられればよいが、電極の作動安定性を向上させるためには、例示した金属元素から選ばれる2成分又は3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系としては、例えばAg・Mg(Ag:1~20at%)、Al・Li(Li:0.3~14at%)、In・Mg(Mg:50~80at%)及びAl・Ca(Ca:5~20at%)などが好ましい。
カソード電極37は、蒸着法及びスパッタ法などにより形成される。カソード電極37の厚さは、0.1nm以上、好ましくは1~500nm以上であることが好ましい。
【0160】
正孔注入層は、画素電極35からの正孔の注入を容易にする機能を有し、正孔輸送層は、正孔を輸送する機能及び電子を妨げる機能を有し、電荷注入層や電荷輸送層とも称される。
発光層の厚さ、正孔注入層と正孔輸送層とを併せた厚さ、及び電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法によっても異なるが、5~100nm程度とすることが好ましい。正孔注入層や正孔輸送層には、各種有機化合物を用いることができる。正孔注入輸送層、発光層及び電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できる点で真空蒸着法を用いることができる。
【0161】
発光源である有機機能層36としては、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するもの、3重項励起子からの発光(燐光)を利用するもの、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するものと3重項励起子からの発光(燐光)を利用するものとを含むもの、有機物によって形成されたもの、有機物によって形成されたものと無機物によって形成されたものとを含むもの、高分子の材料、低分子の材料、高分子の材料と低分子の材料とを含むものなどを用いることができる。ただし、これに限定されず、EL素子用として公知の様々なものを用いた有機機能層36を、本EL表示装置30に用いることができる。
【0162】
カソード電極37と封止フタ39との空間には乾燥剤38を配置する。これは、有機機能層36は湿度に弱いためである。乾燥剤38により水分を吸収し有機機能層36の劣化を防止する。
【0163】
図14は、本EL表示装置30の別態様の断面構成を表す概略図である。この本EL表示装置30は、薄膜封止膜41を用いた封止構造を有し、アレイ基板の反対面からも出射光を得ることができる。
薄膜封止膜41としては電解コンデンサのフィルムにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を蒸着したDLC膜を用いることが好ましい。DLC膜は水分浸透性が極めて悪いという特性があり、防湿性能が高い。また、DLC膜などをカソード電極37の表面に直接蒸着して形成してもよい。また、樹脂薄膜と金属薄膜とを多層に積層して、薄膜封止膜41を形成してもよい。
【0164】
以上のようにして、本発明に係る新規な偏光素子(本偏光素子)、及び本偏光素子を備えた新規な表示装置(本液晶表示装置及び本EL表示装置)が提供される。
【0165】
最後に、本偏光素子100を用いた投射型液晶表示装置について説明する。
図15は、本偏光素子100を用いた投射型液晶表示装置を示す概略図である。
この投射型液晶表示装置の偏光子142及び/又は偏光子143として、本偏光素子100は用いられる。
【0166】
発光源である光源(例えば、高圧水銀ランプ)111から出射された光線束は、まずは第1のレンズアレイ112、第2のレンズアレイ113、偏光変換素子114、重畳レンズ115を通過することにより、反光線束断面での輝度の均一化と偏光化が行われる。
【0167】
具体的には光源111から出射された光線束は、微小なレンズ112aがマトリクス状に形成された第1のレンズアレイ112によって多数の微小な光線束に分割される。第2のレンズアレイ113及び重畳レンズ115は、分割された光線束のそれぞれが、照明対象である3つの液晶パネル140R,140G,140Bの全体を照射するように備えられており、このため、各液晶パネル入射側表面は全体がほぼ均一な照度となる。
【0168】
偏光変換素子114は、偏光ビームスプリッタアレイにより構成され、第2のレンズアレイ113と重畳レンズ115との間に配置される。これにより光源からのランダム偏光をあらかじめ特定の偏光方向を有する偏光に変換し、後述する入射側偏光子での光量損失を低減して、画面の輝度を向上させる役割を果たしている。
【0169】
上記のように輝度均一化および偏光化された光は、反射ミラー122を経由してRGBの3原色に分離するためのダイクロイックミラー121,123,132により順次、レッドチャンネル、グリーンチャンネル、ブルーチャンネルに分離され、それぞれ液晶パネル140R,140G,140Bに入射する。
【0170】
液晶パネル140R,140G,140Bには、その入射側には偏光子142が配置され、出射側には偏光子143がそれぞれ配置されている。この偏光子142、偏光子143に本偏光素子100を用いることができる。
【0171】
RGB各光路に配置される偏光子142及び偏光子143は、それぞれの吸収軸が直交するように配置されている。各光路に配置される各液晶パネル140R,140G,140Bは、画像信号により画素ごとに制御された偏光状態を光量に変換する機能を有する。
【0172】
本偏光素子100は、対応するチャンネルに適した二色性色素の種類を選択することで、ブルーチャンネル、グリーンチャンネル及びレッドチャンネルのどの光路においても耐久性の優れた偏光フィルムとして有用である。
【0173】
液晶パネル140R,140G,140Bの画像データに応じて、画素毎に異なる透過率で入射光を透過させることによって作成された光学像は、クロスダイクロイックプリズム150により合成され、投写レンズ170によって、スクリーン180に拡大投写される。
【0174】
電子ペーパーとしては、光学異方性と染料分子配向のような分子により表示されるもの、電気泳動、粒子移動、粒子回転、相変化のような粒子により表示されるもの、フィルムの一端が移動することにより表示されるもの、分子の発色/相変化により表示されるもの、分子の光吸収により表示されるもの、電子とホールが結合して自発光により表示されるものなどが挙げられる。より具体的には、マイクロカプセル型電気泳動、水平移動型電気泳動、垂直移動型電気泳動、球状ツイストボール、磁気ツイストボール、円柱ツイストボール方式、帯電トナー、電子粉流体、磁気泳動型、磁気感熱式、エレクトロウェッテイング、光散乱(透明/白濁変化)、コレステリック液晶/光導電層、コレステリック液晶、双安定性ネマチック液晶、強誘電性液晶、2色性色素・液晶分散型、可動フィルム、ロイコ染料による発消色、フォトクロミック、エレクトロクロミック、エレクトロデポジション、フレキシブル有機ELなどが挙げられる。電子ペーパーは、テキストや画像を個人的に利用するものだけでなく、広告表示(サイネージ)等に利用されるものであってもよい。本偏光素子によれば、電子ペーパーの厚みを薄くすることができる。
【0175】
立体表示装置としては、例えばマイクロポール方式のように交互に異なる位相差フィルムを配列させる方法が提案(特開2002-185983号公報)されているが、本発明の光学フィルムを偏光フィルムとして用いると、印刷、インクジェット、フォトリソグラフィー等によりパターニングが容易であるため、表示装置の製造工程を短くすることができ、かつ位相差フィルムが不要となる。
【実施例0176】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0177】
光反応性基を有するポリマーの合成例1
光反応性基を有するポリマーとして、ポリマー1及びポリマー2を合成した。
【0178】
合成例1:ポリマー1の合成
ポリマー1は、以下の構造単位からなるものである。
〔ポリマー1〕
【化21】
【0179】
【0180】
[化合物(a1-1-1)の合成]
フェルラ酸50g(258mmol)をメタノール360gに溶解させた。得られた溶液に、室温で硫酸10gを加え、溶媒が還流するまで昇温した後、還流下2時間反応させた。得られた反応溶液を冷却後、氷150g及び水150gを加えた。上澄みをデカンテーションにて除去し、さらに5℃の水150g加えて結晶化させた。得られた白色結晶をろ過した、濾過した白色結晶を、さらに1M炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した後、真空乾燥して、化合物(a1-1-1)を22.2g得た。収率はフェルラ酸を基準として83%であった。
【0181】
[化合物(b1-1-1)の合成]
化合物(a1-1-1)25g(120mmol)をジメチルアセトアミド250gに溶解させた。得られた溶液に、炭酸カリウム33.19g(240mmol)、及びヨウ化カリウム1.99g(12mmol)を加えた。得られた分散液に、6-クロロヘキサノールを滴加し、室温で1時間攪拌後、70℃で8時間攪拌した。得られた反応溶液を濾過して不溶物を除去した。濾液に、メチルイソブチルケトン200g及び水300gを加えて攪拌、静置し、分液して有機層を回収した。回収された有機層に水200gを加え、攪拌、静置及び分液という水洗操作を2回繰り返した。回収した有機層から、エバポレータを用いた減圧蒸留により溶媒を除去して、化合物(b1-1-1)の粗生成物を得た。
【0182】
[化合物(c1-1-1)の合成]
前記化合物(b1-1-1)の粗生成物の全量を、エタノール185gに溶解させた。
得られた溶液に、水92g及び水酸化ナトリウム14.41g(360mmol)を加えて80℃で1時間攪拌した。反応溶液を3℃程度まで冷却後、温度を5℃以下に保ちながら2M塩酸水溶液を加えて、pHを2にした。酸析した白色沈殿を濾取し、さらに水100g及びメタノール80gの混合溶液で2回洗浄し、真空乾燥させて、化合物(c1-1-1)を30.4g得た。収率は化合物(a1-1-1)を基準として86%であった。
【0183】
[化合物(M1-1-1)の合成]
化合物(c1-1-1)27.46g(93mmol)をクロロホルム280gに溶解した。得られた溶液に、重合禁止剤としてBHT(ジt-ブチル-ヒドロキシトルエン)2.06g、トリエチルアミン37.73g(373mmol)を加えて氷冷下で攪拌させた。反応溶液にメタクリル酸クロリド29.26g(260mmol)を滴加し、5℃以下を保持して5時間攪拌した。得られた反応溶液に、ジメチルアミノピリジン5.7g及び水190gを加え、室温下で12時間攪拌した。静置した後、有機層を回収し、この有機層に2N塩酸水溶液100gを加え、攪拌、静置及び分液という洗浄操作を2回繰り返した。有機層を回収し、n-ヘプタン300gを加えて析出した結晶を濾取した。水100g及びメタノール80gからなる混合溶媒で2回洗浄後、真空乾燥して、化合物(M1-1-1)を22.0g得た。収率は化合物(c1-1-1)を基準として65%であった。
【0184】
[ポリマー1の合成]
シュレンク管中に、化合物(M1-1-1)1.00g(2.76mmol)、及び10gのテトラヒドロフランを加えて、脱酸素後、窒素を流しながらアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.27mgを加え、60℃で72時間攪拌させた。得られた反応溶液をトルエン200gに加えた。析出物を濾取し、ヘプタンで洗浄後、真空乾燥させることにより、0.75gのポリマー1を得た。収率は化合物(M1-1-1)を基準として75%であった。GPC測定より、得られたポリマー1の分子量は数平均分子量28200、Mw/Mn1.82を示し、モノマー含有量は0.5%であった。
【0185】
合成例2:ポリマー2の合成
Macromolecules, Vol.39, No.26(2006)記載の方法により下記の構造のポリマー2を合成した。
【化23】
(なお、括弧に付した数値は、ポリマー2の全構造単位に対する各構造単位のモル分率を表す。)
【0186】
重合性スメクチック液晶化合物の合成
重合性スメクチック液晶化合物(なお、以下の説明では、重合性スメクチック液晶化合物を「重合性液晶化合物」と略称する。)として、化合物(1-6)、化合物(1-7)、化合物(1-8)、化合物(1-13)及び化合物(1-14)を合成した。
【0187】
合成例3:化合物(1-6)(下記式(1-6)で表される化合物)
化合物(1-6)は、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)記載の方法で合成した。
【化24】
【0188】
合成例4~7:化合物(1-7)、化合物(1-8)、化合物(1-13)及び化合物(1-14)の合成
化合物(1-7)(下記式(1-7)で表される化合物)、化合物(1-8)(下記式(1-8)で表される化合物)、化合物(1-13)(下記式(1-13)で表される化合物)、化合物(1-14)(下記式(1-14)で表される化合物)は、いずれも化合物(1-6)の合成方法を参考にして合成した。
【化25】
【0189】
実施例1
〔偏光層形成用組成物の調整〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光層形成用組成物を得た。
重合性液晶化合物;化合物(1-6) 75部
化合物(1-7) 25部
二色性色素;アゾ色素(G205;林原生物化学研究所製) 3.0部
重合開始剤;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.5部
溶剤;シクロペンタノン 250部
【0190】
〔相転移温度の測定〕
偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって相転移温度を確認した。偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物は、120℃まで昇温して溶剤を除去乾燥後、降温時において、110℃でネマチック相に相転移し104℃でスメクチックA相に相転移し、83℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0191】
〔光配向層の作製〕
光反応性基を有するポリマー(ポリマー1又はポリマー2)を濃度5重量%で、シクロペンタノンに溶解した溶液(光配向層形成用組成物)を、ポリエチレンテレフタレート基板(PET基板)上にバーコート法により塗布し、60℃で1分間乾燥後、厚さ100nmの第1乾燥被膜を形成した。続いて、得られた第1乾燥被膜の表面に偏光UV照射処理を施して光配向層を形成した。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJの条件で行った。
【0192】
〔偏光層の作製〕
光配向膜上に、偏光層形成用組成物をバーコート法により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥した後、室温まで冷却して第2乾燥被膜を得た。UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1200mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を第2乾燥被膜に照射することにより、偏光層を形成し、偏光素子を製造した。この際の偏光層の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定したところ、1.6μmであった。
【0193】
〔X線回折測定〕
得られた偏光層に対して、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いてX線回折測定を行った。ターゲットとしてCuを用いてX線管電流40mA、X線管電圧45kVの条件で発生したX線を固定発散スリット1/2°を介してラビング方向から入射させ、走査範囲2θ=4.0~40.0°の範囲で2θ=0.01671°ステップで走査して測定を行った結果、2θ=20.22°付近にピーク半価幅(FWHM)=約0.187°のシャープな回折ピーク(ブラッグピーク)が得られた。また、ラビング垂直方向からの入射でも同等な結果を得た。ピーク位置から求めた秩序周期(d)は約4.4Åであり、高次スメクチック相を反映した構造を形成していることがわかる。
【0194】
〔二色比の測定〕
極大吸収波長における透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーは、リファレンス側は光量を50%カットするメッシュを設置した。測定された透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)の値から、比(A2/A1)を算出し、二色比とした。結果を表に示す。二色比が高いほど、偏光層として有用であるといえる。二色比の測定結果を表1に示す。
【0195】
〔配向状態の観察〕
得られた偏光層の配向状態を偏光顕微鏡観察によって確認した。偏光顕微鏡クロスニコルの間に約45°の方向にサンプルを挿入し、光抜けの状態で観察を実施した。垂直方向に配向している場合、光抜けは発生せずに暗視野の状態が観察され、水平配向している場合、光抜けが発生して明視野の状態で観察される。画面全体に渡って明視野が得られた場合は「○」、画面全体に渡って暗視野が得られた場合には「×」とする二水準で評価した。結果を表1に示す。
【0196】
〔Haze値の測定〕
得られた偏光子に対して、ヘイズメーター(HZ-2;スガ試験機(株)製)を用いてヘイズ値を測定した。ヘイズ値は以下の式で表される。
ヘイズ値(%)= 散乱透過率(%)/全光線透過率(%)×100
光配向層による偏光層の配向規制力が不十分であれば、偏光層の主成分である重合性スメクチック液晶に不連続性の欠陥が発生する。この不連続性欠陥界面で光散乱が発生するために、ヘイズ値が大きな値となる。すなわち、ヘイズ値が小さければ小さいほど良好な配向性であるといえる。ここでは3%以下を良とした。結果を表1に示す。
【0197】
実施例2
二色性色素をアゾ色素(G205;林原生物化学研究所製)からアゾ色素(NKX2029;林原生物化学研究所製)に変えた以外は実施例1と同様にして、偏光素子を製造した。
【0198】
〔相転移温度の測定〕
実施例1と同様にして、実施例2の偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶組成物の相転移挙動を測定した。120℃まで昇温して溶剤を除去乾燥後、降温時において、113℃でネマチック相に相転移し107℃でスメクチックA相に相転移し、83℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0199】
実施例1と同様に、製造した偏光素子の二色比測定、配向状態観察、ヘイズ値測定を行った。その結果を表1に示す。
【0200】
実施例3
偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物を、化合物(1-6)75部及び化合物(1-7)25部の混合物から、化合物(1-6)75部及び化合物(1-8)25部の混合物に変えた以外は実施例1と同様にして、偏光素子を製造した。
【0201】
〔相転移温度の測定〕
実施例1と同様にして、実施例3の偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶組成物の相転移挙動を測定した。120℃まで昇温して溶剤を除去乾燥後、降温時において、111℃でネマチック相に相転移し105℃でスメクチックA相に相転移し、82℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0202】
実施例1と同様に、製造した偏光素子の二色比測定、配向状態観察、ヘイズ値測定を行った。その結果を表1に示す。
【0203】
実施例4
偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物を、化合物(1-6)75部及び化合物(1-7)25部の混合物から、化合物(1-6)75部及び化合物(1-13)25部の混合物に変えた以外は実施例1と同様にして、偏光素子を製造した。
【0204】
〔相転移温度の測定〕
実施例1と同様にして、実施例4の偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶組成物の相転移挙動を測定した。130℃まで昇温して溶剤を除去乾燥後、降温時において、119℃でネマチック相に相転移し111℃でスメクチックA相に相転移し、82℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0205】
実施例1と同様に、製造した偏光素子の二色比測定、配向状態観察、ヘイズ値測定を行った。その結果を表1に示す。
【0206】
実施例5
偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物を、化合物(1-6)75部及び化合物(1-7)25部の混合物から、化合物(1-6)75部及び化合物(1-14)25部の混合物に変えた以外は実施例1と同様にして、偏光素子を製造した。
【0207】
〔相転移温度の測定〕
実施例1と同様にして、実施例5の偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶組成物の相転移挙動を測定した。130℃まで昇温して溶剤を除去乾燥後、降温時において、118℃でネマチック相に相転移し109℃でスメクチックA相に相転移し、79℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0208】
実施例1と同様に、製造した偏光素子の二色比測定、配向状態観察、ヘイズ値測定を行った。その結果を表1に示す。
【0209】
実施例6
光配向層形成用組成物に含まれる、光反応性基を有するポリマーを、ポリマー1からポリマー2に変えた以外は実施例1と同様にして、偏光素子を製造した。
【0210】
実施例1と同様に、製造した偏光素子の二色比測定、配向状態観察、ヘイズ値測定を行った。その結果を表1に示す。
【0211】