IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

特開2023-2953成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体
<>
  • 特開-成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体 図1
  • 特開-成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体 図2
  • 特開-成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体 図3
  • 特開-成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体 図4
  • 特開-成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体 図5
  • 特開-成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体 図6
  • 特開-成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002953
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/16 20230101AFI20221228BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20221228BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20221228BHJP
   B28B 3/00 20060101ALI20221228BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C04B18/16
C04B28/02
C04B40/02
B28B3/00 Z
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103821
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄也
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド イブラヒム モスタジッド
【テーマコード(参考)】
4G054
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G054AA01
4G055AA01
4G055AB01
4G055BA03
4G112PA30
4G112PE03
4G112PE06
4G112RA05
(57)【要約】
【課題】成形体の強度を簡便に向上させることができる成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体を提供する。
【解決手段】本開示に係る成形体の製造方法は、コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材に製造圧力を加えて圧縮することにより一次成形体を形成する成形ステップと、前記一次成形体を水分に曝しながら加熱するか又は水分に曝した後に加熱する後処理ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材に製造圧力を加えて圧縮することにより一次成形体を形成する成形ステップと、
前記一次成形体を水分に曝しながら加熱するか又は水分に曝した後に加熱する後処理ステップと、
を含む、成形体の製造方法。
【請求項2】
前記コンクリート資材は、コンクリート廃棄物が破砕されたコンクリート破砕物及びコンクリート廃棄物が粉砕されたコンクリート粉末の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記後処理ステップは、前記一次成形体をオートクレーブ処理する工程を含む、
請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記オートクレーブ処理のオートクレーブ処理温度が100℃~300℃であり、オートクレーブ処理時間が4時間~48時間である、
請求項3に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記コンクリート資材は、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、及びフライアッシュからなる群より選択された1以上のセメント材と、水と、天然砂、高炉スラグ、及び石灰石の砂からなる群より選択された1以上の細骨材と、天然砂利、高炉スラグ粗骨材、石灰石の砂利、及び道路用鉄鋼スラグ路盤材からなる群より選択された1以上の粗骨材と、を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記後処理ステップの前後で、成形体の空隙率が増加する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記成形ステップの前記製造圧力は、50MPa未満である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
前記成形ステップの後、前記後処理ステップの前に、前記一次成形体を所定時間だけ静置する静置ステップをさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
前記コンクリート資材は、粒子サイズが300μm超1.5mm以下の粒子を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
前記後処理ステップの前後で成形体の圧縮強度が増加し、その増加率が50%以上である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
前記後処理ステップの後の成形体の圧縮強度が18MPa以上である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
前記後処理ステップは、前記一次成形体を水に浸漬する工程と、水中から取り出した前記一次成形体を加熱する工程と、を含む、
請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材に製造圧力を加えて圧縮することにより形成された成形体を、水分に曝しながら加熱するか又は水分に曝した後に加熱することにより、前記成形体の圧縮強度を増加させるステップを含む、成形体の補強方法。
【請求項14】
コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材の圧縮成形体であって、
圧縮強度が18MPa以上であり、水で飽和させた場合の圧縮強度の減少率が30%以下である、
圧縮成形体。
【請求項15】
空隙率が22.6%以上である、
請求項14に記載の圧縮成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
持続型社会の実現のために、コンクリート廃棄物の循環が望まれている。特許文献1には、コンクリート廃棄物を再利用する技術が記載されている。しかしながら、十分な強度の再生コンクリートを得るためには複雑な処理工程を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-025631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、成形体の強度を簡便に向上させることができる成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材に製造圧力を加えて圧縮することにより一次成形体を形成する成形ステップと、前記一次成形体を水分に曝しながら加熱するか又は水分に曝した後に加熱する後処理ステップと、を含む、成形体の製造方法。
[2]前記コンクリート資材は、コンクリート廃棄物が破砕されたコンクリート破砕物及びコンクリート廃棄物が粉砕されたコンクリート粉末の少なくとも一方を含む、[1]に記載の成形体の製造方法。
[3]前記後処理ステップは、前記一次成形体をオートクレーブ処理する工程を含む、[1]又は[2]に記載の成形体の製造方法。
[4]前記オートクレーブ処理のオートクレーブ処理温度が100℃~300℃であり、オートクレーブ処理時間が4時間~48時間である、[3]に記載の成形体の製造方法。
[5]前記コンクリート資材は、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、及びフライアッシュからなる群より選択された1以上のセメント材と、水と、天然砂、高炉スラグ、及び石灰石の砂からなる群より選択された1以上の細骨材と、天然砂利、高炉スラグ粗骨材、石灰石の砂利、及び道路用鉄鋼スラグ路盤材からなる群より選択された1以上の粗骨材と、を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
[6]前記後処理ステップの前後で、成形体の空隙率が増加する、[1]~[5]のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
[7]前記成形ステップの前記製造圧力は、50MPa未満である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
[8]前記成形ステップの後、前記後処理ステップの前に、前記一次成形体を所定時間だけ静置する静置ステップをさらに含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
[9]前記コンクリート資材は、粒子サイズが300μm超1.5mm以下の粒子を含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
[10]前記後処理ステップ前後で成形体の圧縮強度が増加し、その増加率が50%以上である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
[11]前記後処理ステップ後の成形体の圧縮強度が18MPa以上である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
[12]前記後処理ステップは、前記一次成形体を水に浸漬する工程と、水中から取り出した前記一次成形体を加熱する工程と、を含む、[1]に記載の成形体の製造方法。
[13]コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材に製造圧力を加えて圧縮することにより形成された成形体を、水分に曝しながら加熱するか又は水分に曝した後に加熱することにより、前記成形体の圧縮強度を増加させるステップを含む、成形体の補強方法。
[14]コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材の圧縮成形体であって、圧縮強度が18MPa以上であり、水で飽和させた場合の圧縮強度の減少率が30%以下である、圧縮成形体。
[15]空隙率が22.6%以上である、[14]に記載の圧縮成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、成形体の強度を簡便に向上させることができる成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】オートクレーブ処理を行っていない成形体及び様々な条件でオートクレーブ処理を行った成形体の圧縮強度を比較したグラフ。
図2】様々な資材から製造した成形体の圧縮強度を比較したグラフ。
図3】オートクレーブ処理を行っていない成形体及びオートクレーブ処理を行った成形体の空隙率を示すグラフ。
図4】飽和処理前後の成形体の圧縮強度を比較したグラフ。
図5】様々な製造圧力に対する成形体の圧縮強度を示すグラフ。
図6】粒子サイズの異なる粒子群P、Pの重量比に対する成形体の圧縮強度を示すグラフ。
図7】浸水加熱処理を行っていない成形体及び様々な条件で浸水加熱処理を行った成形体の圧縮強度を比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の成形体の製造方法、成形体の補強方法、及び圧縮成形体について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0009】
コンクリート廃材を利用してコンクリート資材を製造する従来研究においては、形成される再生コンクリートの強度向上が容易ではなく、高圧力での圧縮処理といった手間のかかる工程を要することが多かった。そこで本発明者は、成形体の強度を簡便に向上させる必要があるとの問題意識の下に試行錯誤を重ね、製造した成形体を水に曝す処理と加熱する処理とを組み合わせることによって、成形体の強度を向上させる新規な方法を見出した。また、本発明者は、本方法により、条件によっては成形体を製造する際の製造圧力などの製造条件を緩和し、高い強度を有する成形体をより簡便に製造することができることを見出した。
【0010】
<成形体の製造方法>
一実施形態では、コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材に製造圧力を加えて圧縮することにより一次成形体を形成する成形ステップと、一次成形体を水分に曝しながら加熱するか又は水分に曝した後に加熱する後処理ステップと、を含む、成形体の製造方法が提供される。
【0011】
本明細書において、「コンクリート資材」とは、コンクリートを含む有形の物体を意味する。例えば、コンクリート資材は、任意の形状を有するコンクリート製の構造物、又はコンクリート製の構造物が破砕又は粉砕された破片状、粒状、粉末状など種々の形状のコンクリートであり得る。本明細書において、「コンクリート廃棄物」とは、廃棄物に該当するコンクリート資材を意味する。コンクリート廃棄物の例としては、建物、道路、鉄道、電柱などの工作物の工事で発生したコンクリート瓦礫などが挙げられる。本明細書において、「コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材」とは、少なくとも部分的にコンクリート廃棄物に由来する材料を含むコンクリート資材を意味する。本明細書において、「破砕」とは、対象物を砕くことを意味する。本明細書において、「粉砕」とは、対象物を「破砕」よりも細かく(例えば粉粒状に)砕くことを意味する。本明細書において、「水分に曝す」とは、対象物を飽和状態の水蒸気に接触させること又は対象物の少なくとも一部を水に浸すことを意味する。例えば、オートクレーブ装置内で対象物を飽和水蒸気に接触させることや対象物を水中に浸漬させることは「水分に曝す」ことに含まれる。
【0012】
一実施形態において、コンクリート資材は、コンクリート廃棄物が破砕されたコンクリート破砕物及びコンクリート廃棄物が粉砕されたコンクリート粉末の少なくとも一方を含む。例えば、コンクリート破砕物は、破片状又は粒状のコンクリート資材である。このようにコンクリート廃棄物由来のコンクリート資材を使用することにより、コンクリートの再利用が可能であり、持続可能な循環型社会に資する再生コンクリートを提供することができる。
【0013】
例えば、コンクリート破砕物の粒子サイズは、300μm超1cm以下であり、好ましくは5mm以下、3mm以下、2mm以下、1.5mm以下、1.18mm以下、又は1mm以下である。本明細書において、「粒子サイズ」とは、一次粒子の最大径を意味する。例えば、コンクリート粉末の粒子サイズは、300μm以下であり、好ましくは200μm以下、150μm以下、105μm以下、100μm以下、65μm以下、又は50μm以下である。ここではコンクリート破砕物とコンクリート粉末との境界を粒子サイズ300μmとして説明しているが、本発明はこれに限定されず、上記境界は粒子サイズ100μm、200μm、400μm、500μmなどとしてもよい。
【0014】
一実施形態において、コンクリート資材は、粒子サイズが300μm超1.5mm以下の粒子を含む。例えば、コンクリート資材は、細かく粉砕する工程を省くことができるという点では、粒子サイズが300μm以下の粒子を含まないことが好適である。
【0015】
一実施形態において、コンクリート資材は、既知の任意のセメント材、既知の任意の粗骨材、既知の任意の細骨材、及び水を含む。例えば、コンクリート資材は、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、及びフライアッシュからなる群より選択された1以上のセメント材と、水と、天然砂、高炉スラグ、及び石灰石の砂からなる群より選択された1以上の細骨材と、天然砂利、高炉スラグ粗骨材、石灰石の砂利、及び道路用鉄鋼スラグ路盤材からなる群より選択された1以上の粗骨材と、を含む。コンクリート資材は、空気連行剤をさらに含んでもよい。コンクリート資材中の各成分の配合量は任意に決定可能である。例えば、コンクリート資材は、コンクリート1mを基準として、200kg/m~600kg/mのセメント材、50kg/m~300kg/mの水、0.1kg/m~15kg/mの空気連行剤、400kg/m~1100kg/mの細骨材、及び500kg/m~1200kg/mの粗骨材を含む。例えば、骨材(細骨材及び粗骨材)の配合量は1200kg/m~2000kg/mである。例えば、コンクリート資材は、10重量%~30重量%のセメント材、2.5重量%~15重量%の水、0.005重量%~0.75重量%の空気連行剤、20重量%~55重量%の細骨材、及び25重量%~60重量%の粗骨材を含む。
【0016】
コンクリート資材は、上記以外の任意の材料をさらに含んでもよい。例えば、コンクリート資材は、収縮低減剤、減水剤、セメント分散剤などの任意の添加剤をさらに含んでもよい。また、コンクリート資材は、繊維材料、金属材料、セラミックス材料、プラスチック材料、木材、木くず、草、紙、布、ガラス、土、粘土、塗料、接着剤などをさらに含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、成形ステップは、コンクリート構造物を用意する工程、コンクリート構造物を所定の粒子サイズまで破砕又は粉砕する工程、得られたコンクリート資材を水と混合して型枠に投入する工程、コンクリート資材と水との混合物を型枠内で予備圧縮する工程、及び予備圧縮された予備成形体に製造圧力を加えて一次成形体を製造する工程を含む。例えば、コンクリート構造物を破砕又は粉砕する工程は、コンクリート構造物を破砕してコンクリート破砕物を得る工程及びコンクリート破砕物をさらに粉砕してコンクリート粉末を得る工程を含む。例えば、予備圧縮前のコンクリート資材と水との混合比は、重量比で1:0.05~1:0.1である。予備圧縮のために印加する圧力は、例えば1MPa~50MPaであり、好ましくは2MPa~30MPa、5MPa~20MPa、又は8MPa~15MPaである。
【0018】
一実施形態において、後処理ステップは、一次成形体をオートクレーブ処理する工程を含む。本明細書において、「オートクレーブ処理」とは、オートクレーブ装置に対象物を投入した後、飽和蒸気により装置内部を高温高圧にした状態で所定時間だけ対象物を装置内に保持する操作を意味する。以下、オートクレーブ処理におけるオートクレーブ装置内の温度を「オートクレーブ処理温度」といい、オートクレーブ処理を行う時間を「オートクレーブ処理時間」という。
【0019】
一実施形態において、オートクレーブ処理のオートクレーブ処理温度は100℃~300℃であり、オートクレーブ処理時間は4時間~48時間である。例えば、オートクレーブ処理温度は、110℃~290℃、120℃~280℃、130℃~270℃、140℃~260℃、150℃~250℃、160℃~240℃、170℃~230℃、又は180℃~220℃である。例えば、オートクレーブ処理時間は、5時間~36時間、6時間~32時間、7時間~28時間、又は8時間~24時間である。ただし、オートクレーブ処理温度及びオートクレーブ処理時間は、上記例に限定されない。オートクレーブ装置内の圧力は、オートクレーブ処理温度に応じて、飽和蒸気圧に基づき適宜決定される。オートクレーブ装置内の圧力は、通常大気圧より大きい。オートクレーブの飽和蒸気は、好ましくは飽和水蒸気である。
【0020】
本発明者は、後述の実験例のとおり、成形体に対してオートクレーブ処理を行うことによって、ごく小さな製造圧力で形成した成形体であっても、原料によらず、オートクレーブ処理前に比べて格段に圧縮強度を向上させることができることを見出した。
【0021】
一実施形態において、後処理ステップは、一次成形体を水に浸漬する工程と、水中から取り出した一次成形体を加熱する工程と、を含む。以下、このような浸水工程及び加熱工程を組み合わせた処理を「浸水加熱処理」という。一次成形体を水に浸漬する浸水時間は、例えば4時間~96時間であり、好ましくは5時間~64時間、6時間~56時間、7時間~52時間、又は8時間~48時間である。一次成形体を加熱する熱処理温度は、例えば40℃~200℃であり、好ましくは45℃~170℃、50℃~150℃、55℃~140℃、60℃~130℃、又は65℃~120℃である。一次成形体を加熱する熱処理時間は、例えば4時間~96時間であり、好ましくは5時間~64時間、6時間~56時間、7時間~52時間、又は8時間~48時間である。
【0022】
本発明者は、後述の実験例のとおり、成形体の浸水加熱処理を行うことによっても、オートクレーブ処理と同様に、浸水加熱処理前に比べて圧縮強度を向上させることができることを見出した。
【0023】
一実施形態において、後処理ステップは、上記のオートクレーブ処理を行う工程及び浸水加熱処理を行う工程の一方又は両方を含む。
【0024】
一実施形態において、後処理ステップの前後で、成形体の空隙率が増加する。本明細書において、「空隙率」とは、成形体の全体体積に占める空隙の体積の割合を意味し、アルキメデス法などにより求められる。例えば、後処理ステップ前後の空隙率の増加率は、後処理ステップ前の成形体の空隙率の1%以上であり、好ましくは2%以上、3%以上、5%以上、又は10%以上である。一実施形態では、後処理ステップの前後での成形体の空隙率の増加率と圧縮強度の増加率との間に正の相関が存在する。これにより、空隙率が大きいにもかかわらず強度に優れた成形体を提供することができる。
【0025】
一実施形態において、成形ステップの製造圧力は、100MPa以下であり、好ましくは100MPa未満であり、より好ましくは90MPa以下、80MPa以下、70MPa以下、60MPa以下、50MPa以下、40MPa以下、30MPa以下、20MPa以下、又は10MPa以下である。製造圧力が小さいほど、成形体の製造に必要なエネルギーが小さくなるので、簡成形体の製造が簡便かつ効率的になる。
【0026】
一実施形態において、成形体の製造方法は、成形ステップの後、後処理ステップの前に、一次成形体を所定時間だけ静置する静置ステップをさらに含む。特に製造圧力が小さい場合、一次成形体を製造する成形ステップの後すぐに後処理ステップを行うと、成形体にひび割れや欠陥が生じる可能性がある。静置ステップを挟むことにより、一次成形体の内部構造の安定化や、大気中の二酸化炭素などによる一次成形体の表面安定化が生じる場合がある。これにより、後処理ステップによるひび割れや欠陥の発生を抑制することができる。
【0027】
一実施形態において、後処理ステップ前後で成形体の圧縮強度が増加し、その増加率が50%以上である。ここで、後処理ステップ前後の圧縮強度の増加率が50%とは、後処理ステップ後の圧縮強度が後処理ステップ前の圧縮強度の1.5倍であることを意味する。例えば、圧縮強度の増加率は、100%以上、150%以上、200%以上、250%以上、300%以上、350%以上、400%以上、450%以上、500%以上、550%以上、又は600%以上である。後処理ステップにより、圧縮強度を向上させることができる。特に製造圧力が小さい場合には、簡便な方法で強度に優れた成形体を製造することができる。一実施形態では、上記のとおり、後処理ステップ前後で成形体の圧縮強度が増加するのに伴い、成形体の空隙率も増加する。
【0028】
一実施形態において、後処理ステップ後の成形体の圧縮強度は、18MPa以上である。18MPaの圧縮強度は、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」において規定された通常のコンクリートに要求される最低限の性能である。好ましくは、後処理ステップ後の成形体の圧縮強度は、慣例的にコンクリートの圧縮強度の基準とされることの多い21MPa以上である。例えば、後処理ステップ後の成形体の圧縮強度は、25MPa以上、30MPa以上、35MPa以上、40MPa以上、45MPa以上、又は50MPa以上である。
【0029】
一実施形態に係る成形体の製造方法は、任意の追加ステップを含んでもよい。例えば、成形体の製造方法は、成形体の強度を向上させるために、後処理ステップ前又は後処理ステップ後に、成形体に圧力を加えるステップ、成形体を熱処理(例えば焼成)するステップ、二酸化炭素ガスを成形体に吹き付けるステップなどを含み得る。
【0030】
<成形体の補強方法>
一実施形態では、コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材に製造圧力を加えて圧縮することにより形成された成形体を、水分に曝しながら加熱するか又は水分に曝した後に加熱することにより、成形体の圧縮強度を増加させるステップを含む、成形体の補強方法が提供される。
【0031】
<圧縮成形体>
一実施形態では、コンクリート廃棄物を原料とするコンクリート資材の圧縮成形体であって、圧縮強度が18MPa以上であり、水で飽和させた場合の圧縮強度の減少率が30%以下である、圧縮成形体が提供される。
【0032】
好ましくは、成形体を水で飽和させた場合の圧縮強度の減少率は、25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下である。圧縮強度の減少率が小さいほど、成形体は耐水性に優れ、水に曝された場合における強度の劣化が抑制され得る。
【0033】
成形体は、用途に応じて任意の大きさ、形状、構造、密度、及び重量を有するように成形される。また、成形体は、用途に応じた強度、剛性、硬度、耐水性、耐熱性などの各種特性を有するように成形される。
【0034】
一実施形態において、圧縮成形体の空隙率は22.6%以上である。
【実施例0035】
以下、図1図7を参照して、本発明に係る実施例について説明する。これらの例は、本発明を限定するものではない。
【0036】
[コンクリート資材]
成形体の原料として、構成成分及びその組成が異なる18種類のコンクリート資材を使用した。表1は、コンクリート資材の各構成成分の乾燥状態における密度を示す。表2は、使用されたコンクリート資材1~18の識別名、材齢、及び特徴を示す。表3は、使用されたコンクリート資材1~18の各成分の配合量(kg/m)を示す。資材1~18はいずれも、約20重量%のセメント材、約7重量%の水及び任意選択で空気連行剤(AE)、約33重量%の細骨材、及び約40重量%の粗骨材からなるものであった。
【0037】
セメント材としては、一般的なポルトランドセメント(OPC)及び任意選択で高炉スラグ微粉末(B)、シリカフューム(SF)、又はフライアッシュ(FA)を使用した。細骨材としては、天然砂(NS)、高炉スラグ(BS)、及び石灰石の砂(LS)のうち1以上を使用した。粗骨材としては、天然砂利(NG)、高炉スラグ粗骨材(BG)、石灰石の砂利(LG)、及び道路用鉄鋼スラグ路盤材(BCM)のうち1以上を使用した。ここで、石灰石の砂利(LG)としては、3種類の砂利LG-A、LG-B、LG-Cのいずれかを使用した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
表2に示すように、コンクリート資材1~18にはそれぞれ構成成分及び組成に基づく識別名を付した。例えば、資材1の識別名はNSNGであり、ポルトランドセメント(OPC)、水、空気連行剤(AE)、細骨材として天然砂(NS)、及び粗骨材として天然砂利(NG)を混合して製造されたコンクリート資材である。資材2~18は、資材1の構成成分の一部が別の成分で置換されたものである。
【0042】
資材2~8は、資材1の細骨材(天然砂NS)及び粗骨材(天然砂利NG)の一部又は全部が別の細骨材及び粗骨材で置換されたものである。資材2(BSBCM50)は、資材1のNS及びNGの約半量がそれぞれBS及びBCMで置換されたものである。資材3(BSBCM100)は、資材1のNS及びNGの全量がそれぞれBS及びBCMで置換されたものである。資材4(BSBG50)は、資材1のNS及びNGの約半量がそれぞれBS及びBGで置換されたものである。資材5(BSBG100)は、資材1のNS及びNGの全量がそれぞれBS及びBGで置換されたものである。資材6(L-A)は、資材1のNS及びNGの全量がそれぞれLS及びLG-Aで置換されたものである。資材7(L-B)は、資材1のNS及びNGの全量がそれぞれLS及びLG-Bで置換されたものである。資材8(L-C)は、資材1のNS及びNGの全量がそれぞれLS及びLG-Cで置換されたものである。
【0043】
資材9~16は、資材1のセメント材(ポルトランドセメントOPC)の一部が別のセメント材で置換されたものである。資材9(B20)は、資材1のOPCの約20重量%がBで置換されたものである。資材10(B50)は、資材1のOPCの約50重量%がBで置換されたものである。資材11(SF05)は、資材1のOPCの約5重量%がSFで置換されたものである。資材12(SF10)は、資材1のOPCの約10重量%がSFで置換されたものである。資材13(SF15)は、資材1のOPCの約15重量%がSFで置換されたものである。資材14(FA10)は、資材1のOPCの約10重量%がFAで置換されたものである。資材15(FA20)は、資材1のOPCの約20重量%がFAで置換されたものである。資材16(FA30)は、資材1のOPCの約30重量%がFAで置換されたものである。
【0044】
資材17及び18は、資材1のセメント材(OPC)、細骨材(NS)、及び粗骨材(NG)の一部又は全部がそれぞれ別のセメント材、細骨材、及び粗骨材で置換されたものである。資材17(B50BSBG50)は、資材1のOPC、NS、及びNGの約半量がそれぞれB、BS、及びBGで置換されたものである。資材18(B50BSBG100)は、資材1のOPCの約半量がBで置換され、NS及びNGの全量がそれぞれBS及びBGで置換されたものである。
【0045】
[実験例1]
資材1(NSNG)のコンクリート廃棄物(すなわちコンクリート瓦礫)をジョークラッシャで破砕し、コンクリート破砕物を得た。次いで、コンクリート破砕物を、孔のサイズが300μmのふるいを用いて、最大粒子サイズが300μmとなるまで振動ディスクミルでさらに粉砕し、コンクリート粉末を得た。得られたコンクリート粉末は、含水率試験を行った後、圧縮強度試験のために直径2cm、高さ4cmの円筒形の試験片に成形した。具体的には、コンクリート粉末と水とを重量比1:0.08となるように混合し、鋼鉄製の型枠に入れて予備圧縮圧力10MPaで圧縮した。次いで、圧縮体を脱型し、静水チャンバ内に載置して密閉し、製造圧力P=100MPaを3分間加えることにより、一次成形体を得た。実験例1では、この一次成形体が最終的な成形体である。
【0046】
(圧縮強度試験)
圧縮強度試験は、コンクリート圧縮強度試験機(型式UH-1000kNC、島津製作所社製)を用いて、成形体の中心軸方向に10N/sの荷重速度で一軸圧縮荷重を印加し、観測された最大荷重から圧縮強度を求めることにより行った。試験は、上記試験片の製造後、時間を空けずに行った。測定された圧縮強度は12.0MPaであった。
【0047】
[実験例2]
資材1(NSNG)に代えて資材2(BSBCM50)を使用した点を除き、実験例1と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。測定された圧縮強度は12.5MPaであった。
【0048】
[実験例3]
資材1(NSNG)に代えて資材3(BSBCM100)を使用した点を除き、実験例1と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。測定された圧縮強度は18.3MPaであった。
【0049】
[実験例4]
(オートクレーブ処理による成形体の製造)
実験例1と同様にして製造した一次成形体を室温で48時間静置した後、最大動作圧力18MPa、最高温度300℃のオートクレーブ反応器を使用したオートクレーブ処理を行った。反応器内部の75%を水で満たし、一次成形体を水中に保持した状態で、オートクレーブ処理温度T1=180℃でオートクレーブ処理時間S1=8時間だけ一次成形体のオートクレーブ処理を行った。オートクレーブ処理後、20℃で1日間静置することにより余分な水分を排出させ、成形体を得た。得られた成形体にはひび割れや欠損は確認されなかった。得られた成形体に対し、実験例1と同様に圧縮強度試験を行った。
【0050】
[実験例5~9]
実験例5~9では、オートクレーブ処理温度T1及びオートクレーブ処理時間S1以外の条件を実験例4と同様にして、成形体を製造した。実験例5ではT1=180℃、S1=16時間とし、実験例6ではT1=180℃、S1=24時間とし、実験例7ではT1=220℃、S1=8時間とし、実験例8ではT1=220℃、S1=16時間とし、実験例9ではT1=220℃、S1=24時間とした。得られた成形体の各々に対し、実験例4と同様に圧縮強度試験を行った。実験例4~9の製造条件及び圧縮強度を表4にまとめる。
【表4】
【0051】
[実験例10~15]
実験例10~15では、資材1(NSNG)に代えて資材2(BSBCM50)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例10~15の製造条件及び圧縮強度を表5にまとめる。
【表5】
【0052】
[実験例16~21]
実験例16~21では、資材1(NSNG)に代えて資材3(BSBCM100)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例16~21の製造条件及び圧縮強度を表6にまとめる。
【表6】
【0053】
[実験例22~27]
実験例22~27では、資材1(NSNG)に代えて資材4(BSBG50)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例22~27の製造条件及び圧縮強度を表7にまとめる。
【表7】
【0054】
[実験例28~33]
実験例28~33では、資材1(NSNG)に代えて資材5(BSBG100)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例28~33の製造条件及び圧縮強度を表8にまとめる。
【表8】
【0055】
[実験例34~39]
実験例34~39では、資材1(NSNG)に代えて資材6(L-A)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例34~39の製造条件及び圧縮強度を表9にまとめる。
【表9】
【0056】
[実験例40~45]
実験例40~45では、資材1(NSNG)に代えて資材7(L-B)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例40~45の製造条件及び圧縮強度を表10にまとめる。
【表10】
【0057】
[実験例46~51]
実験例46~51では、資材1(NSNG)に代えて資材8(L-C)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例46~51の製造条件及び圧縮強度を表11にまとめる。
【表11】
【0058】
[実験例52~57]
実験例52~57では、資材1(NSNG)に代えて資材9(B20)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例52~57の製造条件及び圧縮強度を表12にまとめる。
【表12】
【0059】
[実験例58~63]
実験例58~63では、資材1(NSNG)に代えて資材10(B50)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例58~63の製造条件及び圧縮強度を表13にまとめる。
【表13】
【0060】
[実験例64~69]
実験例64~69では、資材1(NSNG)に代えて資材11(SF05)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例64~69の製造条件及び圧縮強度を表14にまとめる。
【表14】
【0061】
[実験例70~75]
実験例70~75では、資材1(NSNG)に代えて資材12(SF10)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例70~75の製造条件及び圧縮強度を表15にまとめる。
【表15】
【0062】
[実験例76~81]
実験例76~81では、資材1(NSNG)に代えて資材13(SF15)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例76~81の製造条件及び圧縮強度を表16にまとめる。
【表16】
【0063】
[実験例82~87]
実験例82~87では、資材1(NSNG)に代えて資材14(FA10)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例82~87の製造条件及び圧縮強度を表17にまとめる。
【表17】
【0064】
[実験例88~93]
実験例88~93では、資材1(NSNG)に代えて資材15(FA20)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例88~93の製造条件及び圧縮強度を表18にまとめる。
【表18】
【0065】
[実験例94~99]
実験例94~99では、資材1(NSNG)に代えて資材16(FA30)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例94~99の製造条件及び圧縮強度を表19にまとめる。
【表19】
【0066】
[実験例100~105]
実験例100~105では、資材1(NSNG)に代えて資材17(B50BSBG50)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例100~105の製造条件及び圧縮強度を表20にまとめる。
【表20】
【0067】
[実験例106~111]
実験例106~111では、資材1(NSNG)に代えて資材18(B50BSBG100)を使用した点を除き、それぞれ実験例4~9と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例106~111の製造条件及び圧縮強度を表21にまとめる。
【表21】
【0068】
上記のとおり、実験例4~111のオートクレーブ処理を行った成形体は、いずれも18MPaを超え、21MPaをも超える圧縮強度を示した。
【0069】
図1は、実験例1及び実験例4~9(資材1を使用)、実験例2及び実験例10~15(資材2を使用)、実験例3及び実験例16~21(資材3を使用)の圧縮強度をそれぞれ比較したグラフである。いずれの資材を使用した場合でも、オートクレーブ処理の条件によらず、オートクレーブ処理を行った成形体はオートクレーム処理を行わなかった成形体(図1の「処理なし」)に比べて圧縮強度が格段に向上していることが確認された。
【0070】
図2は、様々なコンクリート資材から得られた成形体に対して180℃で8時間オートクレーブ処理を行った各実験例の圧縮強度を比較したグラフである。資材1~18のいずれを使用した場合でも、オートクレーブ処理を行わなかった実験例1~3の成形体よりも圧縮強度が格段に大きく、いずれの成形体も圧縮強度が18MPaを上回り、21MPaをも上回ることが確認された。
【0071】
(空隙率測定試験)
実験例1~4、10、及び16で得られた成形体について、空隙率をアルキメデス法により求めた。すなわち、水で飽和させた状態の成形体の質量と乾燥状態の成形体の質量とを測定し、その差を空隙分として算出した。測定した空隙率は、実験例1の成形体では22.5%、実験例2の成形体では21.7%、実験例3の成形体では21.8%、実験例4の成形体では24.5%、実験例10の成形体では24.3%、実験例16の成形体では22.6%であった。
【0072】
図3は、実験例1及び実験例4(資材1を使用)、実験例2及び実験例10(資材2を使用)、実験例3及び実験例16(資材3を使用)の空隙率をそれぞれ比較したグラフである。いずれの資材を使用した場合でも、オートクレーブ処理によって空隙率が増加していることが確認された。オートクレーブ処理による空隙率の増加率は、資材1を使用した実験例1と実験例4とを比較すると8.9%であり、資材2を使用した実験例2と実験例10とを比較すると12.4%であり、資材3を使用した実験例3と実験例16とを比較すると3.5%であった。通常、成形体の圧縮強度が大きいほど空隙率は小さくなる傾向があるが、実験例4、10、及び16で得られた成形体では、オートクレーブ処理の前後で空隙率と圧縮強度とがともに増加していることが確認された。本発明における圧縮強度向上のメカニズムは未解明であるが、空隙率の増加が圧縮強度の向上に関係している可能性がある。ただし、この推測は本発明を限定するものではない。
【0073】
(飽和圧縮強度試験)
実験例4、10、及び16で得られた成形体を水道水に約4日間浸漬して飽和させた後、圧縮強度試験を行った。飽和処理では、成形体の質量変化を定期的に観察し、一定の質量になったと認められた時点で100%飽和したものと見なした。圧縮強度試験は、成形体を水から取り出した後、直ちに行った。水で飽和した成形体の圧縮強度は、実験例4の成形体では40.9MPa、実験例10の成形体では44.0MPa、実験例16の成形体では35.1MPaであった。
【0074】
図4は、実験例4、10、及び16について飽和処理前後の圧縮強度を比較したグラフである。資材1を使用した実験例4では、飽和前後で圧縮強度が23%減少し、資材2を使用した実験例10では、飽和前後で圧縮強度が7%減少し、資材3を使用した実験例16では、飽和前後で圧縮強度が6%減少した。
【0075】
[実験例112~120]
実験例112~120では、それぞれ製造圧力P=90MPa、80MPa、70MPa、60MPa、50MPa、40MPa、30MPa、20MPa、及び10MPaとした点を除き、実験例4と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。
【0076】
なお、実験例112(P=20MPa)及び実験例113(P=10MPa)では、オートクレーブ処理前の一次成形体の静置時間を短時間とした場合には成形体にひび割れが観察された。一次成形体の静置時間が48時間である場合には僅かなひび割れが観察され、静置時間が96時間である場合にはひび割れは観察されなかった。製造圧力Pが小さい場合には、ひび割れを防ぐためにオートクレーブ処理前に一次成形体を十分な時間静置することが有効であると推定される。
【0077】
[実験例121~129]
実験例121~129では、資材1(NSNG)に代えて資材2(BSBCM50)を使用した点を除き、それぞれ実験例112~120と同様の条件で、種々の製造圧力Pで成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。
【0078】
[実験例130~138]
実験例130~138では、資材1(NSNG)に代えて資材3(BSBCM100)を使用した点を除き、それぞれ実験例112~120と同様の条件で、種々の製造圧力Pで成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。
【0079】
実験例112~138の製造条件及び圧縮強度を表22にまとめる。また、図5は、実験例4及び112~120(資材1)、実験例10及び121~129(資材2)、並びに実験例16及び130~138(資材3)について、様々な製造圧力Pに対する成形体の圧縮強度を示すグラフである。特に製造圧力P≦80MPaの範囲では、全体的に製造圧力Pが減少すると圧縮強度が徐々に減少する傾向が確認された。しかしながら、最小の製造圧力P=10MPaでも、資材1~3の成形体の圧縮強度はいずれも18MPaを上回り、21MPaをも上回った。
【0080】
【表22】
【0081】
[実験例139]
最大粒子サイズが300μmとなるまで振動ディスクミルでさらに粉砕する工程を省略した点を除き、実施例4と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。使用されたコンクリート粉末は、粒子サイズ300μm超1.18mm以下の粒子を含み、粒子サイズ300μm以下の粒子を含まなかった。測定された圧縮強度は、27.6MPaであった。
【0082】
[実験例140]
最大粒子サイズが300μmとなるまで振動ディスクミルでさらに粉砕する工程を省略して得られた粒子サイズ300μm超1.18mm以下の粒子群Pと、最大粒子サイズが300μmとなるまで振動ディスクミルでさらに粉砕した粒子サイズ300μm以下の粒子群Pとを重量比75:25となるように混合することにより得られたコンクリート粉末を用いて成形体を製造した点を除き、実施例4と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。測定された圧縮強度は、35.8MPaであった。
【0083】
[実験例141]
粒子サイズ300μm超1.18mm以下の粒子群Pと粒子サイズ300μm以下の粒子群Pとを重量比50:50となるように混合した点を除き、実施例140と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。測定された圧縮強度は、42.5MPaであった。
【0084】
[実験例142]
粒子サイズ300μm超1.18mm以下の粒子群Pと粒子サイズ300μm以下の粒子群Pとを重量比25:75となるように混合した点を除き、実施例140と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。測定された圧縮強度は、46.7MPaであった。
【0085】
図6は、原料のコンクリート粉末の粒子サイズを変えた実験例4及び139~142について、粒子サイズ300μm超1.18mm以下の粒子群Pと粒子サイズ300μm以下の粒子群Pとの重量比に対する圧縮強度を示すグラフである。粒子サイズが小さい粒子群Pの量が増えるほど成形体の圧縮強度が増加する傾向が確認された。しかしながら、粒子群Pを含まず最小の圧縮強度を有する実験例139の成形体でも、18MPaを上回り、21MPaをも上回る圧縮強度を有することも確認された。このように、微細粉砕工程を省略しても十分な圧縮強度を有する成形体が得られた。
【0086】
[実験例143]
(浸水加熱処理による成形体の製造)
実験例1と同様にして製造した一次成形体に対して、浸水時間S2=8時間だけ水中に浸漬した後、熱処理温度T2=105℃で熱処理時間S3=48時間だけ加熱炉内に保持することにより、成形体を得た。得られた成形体を温度調節のために20℃で1時間保持した後、実験例1と同様に圧縮強度試験を行った。
【0087】
[実験例144~154]
実験例144~154では、浸水時間S2、熱処理温度T2、及び熱処理時間S3以外の条件を実験例143と同様にして、成形体を製造した。実験例144ではS2=16時間、T2=105℃、S3=48時間とし、実験例145ではS2=24時間、T2=105℃、S3=48時間とし、実験例146ではS2=48時間、T2=105℃、S3=48時間とし、実験例147ではS2=24時間、T2=105℃、S3=8時間とし、実験例148ではS2=24時間、T2=105℃、S3=16時間とし、実験例149ではS2=24時間、T2=105℃、S3=24時間とし、実験例150ではS2=24時間、T2=105℃、S3=48時間とし、実験例151ではS2=24時間、T2=65℃、S3=48時間とし、実験例152ではS2=24時間、T2=120℃、S3=48時間とし、実験例153ではS2=0時間(すなわち浸水なし)、T2=120℃、S3=48時間とし、実験例154ではS2=48時間、S3=0時間(すなわち加熱処理なし)とした。得られた成形体の各々に対し、実験例143と同様に圧縮強度試験を行った。実験例143~154の製造条件及び圧縮強度を表23にまとめる。
【表23】
【0088】
[実験例155~166]
実験例155~166では、資材1(NSNG)に代えて資材2(BSBCM50)を使用した点を除き、それぞれ実験例143~154と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例155~166の製造条件及び圧縮強度を表24にまとめる。
【表24】
【0089】
[実験例167~178]
実験例167~178では、資材1(NSNG)に代えて資材3(BSBCM100)を使用した点を除き、それぞれ実験例143~154と同様の条件で成形体を製造し、圧縮強度試験を行った。実験例167~178の製造条件及び圧縮強度を表25にまとめる。
【表25】
【0090】
図7は、実験例1及び実験例143~154(資材1を使用)、実験例2及び実験例155~166(資材2を使用)、実験例3及び実験例167~178(資材3を使用)の圧縮強度をそれぞれ比較したグラフである。いずれの資材を使用した場合でも、浸水加熱処理の条件によらず、浸水加熱処理を行った成形体は浸水加熱処理を行わなかった実験例1~3の成形体(図7の「処理なし」)に比べて圧縮強度が向上していることが確認された。一方、加熱処理又は浸水処理のみを行った成形体(図7の「加熱のみ」及び「浸水のみ」)は、必ずしも浸水加熱処理を行わなかった実験例1~3の成形体に比べて圧縮強度が向上するわけではなかった。したがって、実験例4~142のオートクレーブ処理に代えて浸水処理及び加熱処理の両方を行うことによっても、成形体の圧縮強度を向上させることができることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7