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特開2023-29924無線受電装置、無線給電装置、無線電力伝送システム、及び無線受電装置の過大磁界保護方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029924
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】無線受電装置、無線給電装置、無線電力伝送システム、及び無線受電装置の過大磁界保護方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20230228BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20230228BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H04B5/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191472
(22)【出願日】2022-11-30
(62)【分割の表示】P 2017097424の分割
【原出願日】2017-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】太矢 隆士
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低電力損失にて過大磁界保護を行うことが可能な無線受電装置、無線給電装置、無線電力伝送システム及び無線受電装置の過大磁界保護方法を提供する。
【解決手段】無線電力伝送システム300において、無線受電装置200は、交流磁界をその振幅に対応した電圧値を有する受給電圧JVに変換する変換部(受電コイル20及び共振キャパシタ21)と、受給電圧に基づき電圧値が一定の安定化電圧を生成し、安定化電圧に対応した出力電圧VGを出力ラインを介して出力する受電回路23と、安定化電圧を電源電圧として受けてデータ通信を行う通信回路を含む制御部24と、を有する。受電回路は、通信モード時には受給電圧の上限を第1の電圧値に制限し、給電モード時には受給電圧の上限を第1の電圧値よりも高い第2の電圧値に制限する保護回路を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流磁界により無線で、電力の供給を受ける給電モード及びデータ通信を行う通信モードを時分割で行う無線受電装置であって、
前記交流磁界をその磁界振幅に対応した電圧値を有する受給電圧に変換する変換部と、
前記受給電圧を受けて電圧値が一定の安定化電圧を生成し、前記安定化電圧に対応した出力電圧を出力ラインを介して出力する受電回路と、
前記交流磁界の磁界強度に基づいて前記受電回路の動作状態が異常であるか否かを検出する動作状態検出処理部と、
前記安定化電圧を電源電圧として受けて前記データ通信を行う通信回路と、を有し、
前記受電回路は、
前記通信モード時には前記受給電圧の上限を第1の電圧値に制限し、前記給電モード時には前記受給電圧の上限を前記第1の電圧値よりも高い第2の電圧値に制限する保護回路を含むことを特徴とする無線受電装置。
【請求項2】
前記保護回路は、前記給電モード時に前記受給電圧の上限を前記第2の電圧値から他の電圧値に切り替えることによって前記交流磁界の磁界振幅を変動させ、前記磁界振幅の変動により前記動作状態を示す情報の通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線受電装置。
【請求項3】
前記保護回路は、前記交流磁界が所定磁界強度以上である場合には、前記上限の電圧値を低下させることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線受電装置。
【請求項4】
前記安定化電圧の電圧値を検出する電圧検出部を含み、
前記保護回路は、前記電圧検出部にて検出された電圧値が所定の下限値より低い場合には前記受給電圧の上限を制限する動作を停止することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の無線受電装置。
【請求項5】
前記受電回路は、前記受給電圧を第1及び第2のラインを介して受け、
前記保護回路は、前記第1及び第2のライン間に流れる電流の電流量を検出する電流検出部を含み、
前記通信回路は、前記電流検出部にて検出された前記電流量が所定電流値未満である場合と、前記電流量が前記所定電流値以上である場合とで異なる通信特性にて前記データ通信を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の無線受電装置。
【請求項6】
前記受電回路は、
前記受給電圧に基づき前記安定化電圧を生成して第3のラインに印加する第1のトランジスタと、
第1の抵抗を介して前記第1のトランジスタと並列に接続されている第2のトランジスタと、
前記第1の抵抗の両端の電位差に基づき前記第3のラインに送出される電流を検出する第1の電流検出回路と、を含む安定化回路を有することを特徴とする請求項5に記載の無線受電装置。
【請求項7】
前記受電回路は、
出力遮断制御信号に応じて前記出力電圧の前記出力ラインへの供給を遮断する遮断回路と、を含み、
前記遮断回路は、
前記出力電圧をドレインで受けると共に前記出力遮断制御信号をゲートで受け、ソースが前記出力ラインに接続されている第1のMOSトランジスタと、
前記第1のMOSトランジスタのドレイン及びソース間の電位差に対応した電流を流す第2のMOSトランジスタと、
前記第2のMOSトランジスタに流れる電流の電流量を、前記出力ラインに流れる出力電流の電流量として検出する第2の電流検出回路と、を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載の無線受電装置。
【請求項8】
前記変換部は、
前記交流磁界を受ける受電コイルと、
前記受電コイルの一端に直列に接続されている第1及び第2のキャパシタと、
前記第1及び第2のキャパシタを介して受けた前記受電コイルの一端の電圧を、直流化して前記受給電圧を得る整流回路と、を含み、
前記通信回路は、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとの接続点に接続されており、前記接続点、前記第1のキャパシタ、及び前記受電コイルを介して前記データ通信を行うことを特徴とする請求項1~7のいずれか1に記載の無線受電装置。
【請求項9】
前記接続点に直流の電位を印加するプルアップ抵抗を含むことを特徴とする請求項8に記載の無線受電装置。
【請求項10】
前記変換部は、前記交流磁界を受ける受電コイルを含み、
前記通信回路は、前記受電コイルに接続されており、当該受電コイルを介して前記データ通信を行い、前記安定化電圧の電圧値が所定の下限値より低い場合には前記受電コイルとの接続を遮断することを特徴とする請求項1~9のいずれか1に記載の無線受電装置。
【請求項11】
前記受電回路は、
前記給電モード時にはオフ状態となる一方、前記通信モード時にはオン状態となって前記出力ラインに接地電位を印加するスイッチ素子と、を含む出力放電回路を有することを特徴とする請求項1~10のいずれか1に記載の無線受電装置。
【請求項12】
前記受電回路は、前記受給電圧を受ける第1の外部端子及び前記出力電圧を外部出力する第2の外部端子を備えたLSIパッケージに含まれる半導体チップに形成されており、
前記LSIパッケージには、
前記半導体チップに形成されている第1のボンディングパッドと前記第1の外部端子とを接続する第1の配線と、
前記半導体チップに形成されている第2のボンディングパッドと前記第1の外部端子とを接続する第2の配線と、
前記半導体チップに形成されている第3のボンディングパッドと前記第2の外部端子とを接続する第3の配線と、が形成されており、
前記半導体チップには、
前記通信回路と、
前記第1のボンディングパッドを介して受けた前記受給電圧の電圧値を一定化した第1の安定化電圧を生成し、前記第1の安定化電圧を前記出力電圧として前記第3のボンディングパッドに印加する第1の安定化回路と、
前記第2のボンディングパッドを介して受けた前記受給電圧の電圧値を一定化した第2の安定化電圧を生成し、前記第2の安定化電圧を電源電圧として前記通信回路に供給する第2の安定化回路と、が形成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1に記載の無線受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で電力を供給する無線給電装置、非接触で電力の供給を受ける無線受電装置、これら無線給電装置及び無線受電装置を含む無線電力伝送システム、並びに無線受電装置の過大磁界保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、時計等のウェアラブル機器やIC(Integrated Circuit)カード等への電力供給を、交流磁界を利用することによって無線で行うようにした無線電力伝送システムが製品
化されている。無線電力伝送システムは、交流磁界を発生する送電用のコイルを介して電力の無線伝送を行う送電装置と、交流磁界を電力に変換する受電用のコイルを介して電力の供給を受ける受電装置と、を有する。
【0003】
また、このような無線電力伝送システムとして、送電用及び受電用のコイルを介して送電装置及び受電装置間でデータ通信を行うことにより、電力伝送に関する各種の設定を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
当該無線電力伝送システムでは、電力伝送を行うための交流磁界の周波数として、例えば13.56MHzの周波数を採用している。
【0005】
ところで、このような交流磁界によって給電を行う送電装置と、給電を受ける受電装置を含むICカードとの間に異物が存在すると、送電装置側では、異物に拘わらずに所望の電力を受電側に伝送する為に磁界の強度を上げる。この際、送電装置が発した強磁界により、当該強磁界を受けたICカードが必要以上に発熱し、破壊する虞があった。
【0006】
そこで、送電装置側で送電コイルに流れる電流を検出し、その検出した電流値が所定の閾値を上回る場合には送電を停止するようにした非接触電力伝送装置が提案された(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-111792号公報
【特許文献2】特開2016-92921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した非接触電力伝送装置では、送電コイルに流れる電流を検出するために電源ライン及び送電回路間に直列に電流センサを設けているので、当該電流センサ自体で電力損失が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、低電力損失にて過大磁界保護を行うことが可能な無線受電装置、無線給電装置、無線電力伝送システム、及び無線受電装置の過大磁界保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る無線受電装置は、交流磁界により無線で、電力の供給を受ける給電モード及びデータ通信を行う通信モードを時分割で行う無線受電装置であって、前記交流磁界をその磁界振幅に対応した電圧値を有する受給電圧に変換する変換部と、前記受給電圧を受けて電圧値が一定の安定化電圧を生成し、前記安定化電圧に対応した出力電圧を出力ラインを介して出力する受電回路と、前記交流磁界の磁界強度に基づいて前記受電回路の動作状態が異常であるか否かを検出する動作状態検出処理部と、前記安定化電圧を電源電圧として受けて前記データ通信を行う通信回路と、を有し、前記受電回路は、前記通信モード時には前記受給電圧の上限を第1の電圧値に制限し、前記給電モード時には前記受給電圧の上限を前記第1の電圧値よりも高い第2の電圧値に制限する保護回路を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、無線給電装置から発せられた交流磁界を受け、その交流磁界の磁界振幅に対応した電圧値を有する受給電圧を取得するにあたり、無線給電装置側との間でデータ通信を行う通信モード時には受給電圧の上限を第1の電圧値に制限する。一方、電力の供給を受ける給電モード時には受給電圧の上限を第1の電圧値よりも高い第2の電圧値に制限するようにしている。
【0012】
これにより、通信モードでは、交流磁界の強度に拘わらず、給電用の電圧よりも低い電圧で通信動作が為されるので、通信動作での電力消費量を抑えることが可能となる。また、給電モードでは、通信モードでの上限電圧よりも高い電圧値で受給電圧の上限を制限するので、保護動作に伴って流れる電流量が抑制される。
【0013】
よって、本発明によれば、電力伝送(給電モード)とデータ伝送(通信モード)とが行われる無線受電装置において、低電力損失にて過大磁界保護を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】無線電力伝送システム300の概略構成を示すブロック図である。
図2】通信モード及び給電モード各々での交流磁界の磁界振幅を表す図である。
図3】送電回路10に含まれる交流駆動電流生成部10Aの構成を示す回路図である。
図4】受電回路23の内部構成を示すブロック図である。
図5】過大磁界保護回路231の一例を示す回路図である。
図6】過大磁界保護回路231の電圧電流特性を示す図である。
図7】過大磁界保護回路231の他の一例を示す回路図である。
図8】安定化回路233(234)の構成を示す回路図である。
図9】遮断回路235の一例を示す回路図である。
図10】遮断回路235の他の一例を示す回路図である。
図11】ASK復調部2401の復調動作を説明するための図である。
図12】負荷変調部2402の構成を示す回路図である。
図13】無線給電装置100及び無線受電装置200間で実施されるデータ通信及び給電動作を表すフロー図である。
図14】通信モード及び給電モード各々での受給電圧の電圧値を表す図である。
図15】給電状態監視処理を表すフローチャートである。
図16】受電状態監視処理を表すフローチャートである。
図17】動作状態検出処理を表すフローチャートである。
図18】給電モード時に受電回路23の動作状態を無線給電装置100に通知する際の受給電圧の電圧値の切り替え動作を表す図である。
図19】給電モード時に受電回路23の動作状態を無線給電装置100に通知する際の磁界振幅の変動動作を表す図である。
図20】通信モード及び給電モード各々での強制放電信号DONの状態と出力電圧VGの電圧値との対応関係を表すタイムチャートである。
図21】無線受電装置200の他の構成を示す回路図である。
図22】制御部24、安定化回路233及び234を含む半導体チップCHPが搭載されているLSI(large-scale integrated circuit)パッケージPKGでの配線形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る無線給電装置100及び無線受電装置200、並びに無線受電装置200から電源電圧としての出力電圧の供給を受ける負荷装置250を含む無線電力伝送システム300の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
無線電力伝送システム300では、交流磁界によって無線給電装置100から無線受電装置200に給電を行う給電モードと、交流磁界によって無線給電装置100及び無線受電装置200間でデータ通信を行う通信モードと、を時分割にて行う。
【0018】
以下に、無線給電装置100及び無線受電装置200各々の内部構成について説明する。
[無線給電装置100]
図1に示すように、無線給電装置100は、送電回路10、共振キャパシタ11、送電コイル12、及び制御部13を含む。尚、送電回路10は、例えば単一の半導体IC(Integrated Circuit)チップ、或いは複数の半導体ICチップに分割して形成されている。
【0019】
送電回路10は、給電モード時に、磁界共鳴方式による無線給電を担う交流駆動電流を生成し、これを駆動ラインL1及びL2を介して共振キャパシタ11及び送電コイル12に供給する。
【0020】
制御部13は、無線受電装置200との間でデータ通信を行う通信回路を含む。この通信回路は、通信モード時に、例えばNFC(Near Field Communication)フォーラムに準拠したデータ通信を行う交流駆動電流を生成する。
【0021】
例えば、通信回路は、13.56MHzの周波数信号に、送信する制御データに基づくASK(amplitude-shift keying)変調を施すことにより交流駆動電流を生成する。通信回路は、生成した交流駆動電流を、駆動ラインL1及びL2を介して共振キャパシタ11及び送電コイル12に供給する。
【0022】
送電コイル12は、送電回路10又は制御部13が生成した交流駆動電流に対応した交流磁界を発生する。尚、交流駆動電流は、互いに並列に接続されている共振キャパシタ11及び送電コイル12からなる共振回路の自己発振周波数(例えば13.56MHz)と略等しい周波数を有する。
【0023】
また、送電コイル12は、無線受電装置200から発せられた交流磁界を受け、この交流磁界の磁界振幅の大きさに対応した受信信号(制御データを表す)をラインL1及びL2を介して制御部13に含まれる通信回路に供給する。
【0024】
通信回路は、受信信号に対して復調処理を施すことにより制御データを復元する。制御部13は、当該制御データ、或いは送電回路10内で検出された電流又は電圧に応じて、送電回路10の動作を制御する。
【0025】
図2は、上記した交流磁界の磁界振幅を表す図である。図2に示すように、通信モード時における交流磁界の振幅M1は、給電モード時における交流磁界の振幅M2よりも小さい。
【0026】
図3は、送電回路10に含まれる交流駆動電流生成部10Aの構成を示す回路図である。
【0027】
図3に示すように、交流駆動電流生成部10Aは、発振部101、インバータ102、駆動部103及び104、電流検出回路105、及び電圧検出回路106を含む。
【0028】
発振部101は、共振回路(11、12)の自己発振周波数、例えば13.56MHzの発振信号fcを生成し、これをインバータ102及び駆動部103に供給する。また、発振部101は、制御部13から供給された制御信号に応じて、発振信号fcの生成動作の停止、或いは発振信号fcのデューティ比の調整等を行う。
【0029】
インバータ102は、発振信号fcの位相を反転させた反転発振信号fcBを駆動部104に供給する。
【0030】
駆動部103は、並列接続されたpチャネルMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)型のトランジスタP1~P3、並列接続されたnチャネルMOS型のトランジスタN1~N3、及び電流検出用の抵抗R1a及びR1bを含む。
【0031】
トランジスタP1~P3及びN1~N3各々のドレインは駆動ラインL1に接続されており、夫々のゲートには発振信号fcが供給されている。トランジスタP1及びP2各々のソースには電源ラインVLを介して電源電位VDDが印加されており、トランジスタP3のソースには電源ラインVL及び抵抗R1aを介して電源電位VDDが印加されている。トランジスタN1及びN2各々のソースには接地ラインGLを介して接地電位が印加されており、トランジスタN3のソースには接地ラインGL及び抵抗R1bを介して接地電位が印加されている。
【0032】
駆動部104は、並列接続されたpチャネルMOS型のトランジスタP4~P6、並列接続されたnチャネルMOS型のトランジスタN4~N6、電流検出用の抵抗R2を含む。
【0033】
トランジスタP4~P6及びN4~N6各々のドレインは駆動ラインL2に接続されており、夫々のゲートには反転発振信号fcBが供給されている。トランジスタP4及びP5各々のソースには電源ラインVLを介して電源電位VDDが印加されており、トランジスタP6のソースには電源ラインVL及び抵抗R2を介して電源電位VDDが印加されている。トランジスタN4~N6各々のソースには接地ラインGLを介して接地電位が印加されている。
【0034】
上記した構成により、発振信号fcが所定値よりも低レベルにある間は、駆動部103のトランジスタP1~P3が全てオン状態になると共に、駆動部104のトランジスタN4~N6が全てオン状態になる。これにより、駆動部103のトランジスタP1~P3の各々から電流が送出され、各電流を合成した合成電流が駆動電流PGとして、図3の太線矢印にて示すように、駆動ラインL1を介して送電コイル12に流れ込む。この際、駆動部104のトランジスタN4~N6が、送電コイル12に流れ込んだ駆動電流PGを駆動ラインL2を介して引き抜く。
【0035】
一方、発振信号fcが所定値よりも高レベルにある間は、駆動部103のトランジスタN1~N3が全てオン状態になると共に、駆動部104のトランジスタP4~P6が全てオン状態になる。これにより、駆動部104のトランジスタP4~P6の各々から電流が送出され、各電流を合成した合成電流が駆動電流NGとして、図3の太線矢印にて示すように駆動ラインL2を介して送電コイル12に流れ込む。この際、駆動部103のトランジスタN1~N3が、送電コイル12に流れ込んだ駆動電流NGを駆動ラインL1を介して引き抜く。
【0036】
電流検出回路105は、駆動部103に含まれる抵抗R1a及びR1bと、ダイオードD1a、D1b、D2と、キャパシタC1a及びC1bと、を有する。ダイオードD1aのアノードは、ノードn1aを介してトランジスタP3のソース及び抵抗R1aの一端に接続されている。ダイオードD2のアノードは、ノードn2を介してトランジスタP6のソース及び抵抗R2の一端に接続されている。
【0037】
ダイオードD1a及びD2各々のカソードにはキャパシタC1aの一端が接続されている。キャパシタC1aの他端には電源電位VDDが印加されている。ダイオードD1bのアノードは、ノードn1bを介してトランジスタN3のソース及び抵抗R1bの一端に接続されている。ダイオードD1bのカソードは、キャパシタC1bの一端に接続されている。キャパシタC1bの他端には接地電位が印加されている。
【0038】
上記した電流検出回路105の構成によれば、ダイオードD1aのカソードとダイオードD2のカソードとの接続点には、駆動電流PGの電流量に対応した直流の電圧、及び駆動電流NGの電流量に対応した直流の電圧が交互に現れる。
【0039】
そこで、電流検出回路105は、ダイオードD1a及びD2各々のカソード同士の接続点の電圧を、駆動部103が送出した駆動電流PG、及び駆動部104が送出した駆動電流NGの各々の電流量を表す電流検出信号GC1aとして制御部13に供給する。
【0040】
また、ダイオードD1bのカソードには、駆動部103によって駆動ラインL1から引き抜かれる駆動電流NGの電流量に対応した直流の電圧が生じる。そこで、電流検出回路105は、ダイオードD1bのカソードの電圧を、駆動部103が駆動ラインL1から引き抜いた駆動電流NGの電流量を表す電流検出信号GC1bとして制御部13に供給する。
【0041】
電圧検出回路106は、ダイオードD3及びD4、キャパシタC2及び抵抗R3を有する。ダイオードD3のアノードは駆動ラインL1に接続されており、ダイオードD4のアノードは駆動ラインL2に接続されている。ダイオードD3及びD4各々のカソードは、キャパシタC2の一端及び抵抗R3の一端に接続されている。キャパシタC2及び抵抗R3各々の他端には接地電位が印加されている。
【0042】
上記した構成により、電圧検出回路106は、駆動ラインL1及びL2間に生じる交流の駆動電圧を直流化及び平滑化した電圧を、交流駆動電圧の振幅を表す電圧検出信号GV0として生成し、これを制御部13に供給する。
【0043】
制御部13は、電圧検出信号GV0、電流検出信号GC1a及びGC1bに基づき、送電コイル12及び無線受電装置200各々の動作状態、或いは周囲の状態等を判断し、給電動作に異常が生じているか否かを判定する。
【0044】
例えば、送電コイル12は、駆動部103及び104によって差動駆動されるので、駆動部103及び104が正常に動作していれば、駆動電流PGと駆動電流NGとが等しくなる。それに伴い、電流検出信号GC1aの値と電流検出信号GC1bの値とが比例することになる。
【0045】
ところが、駆動部103及び104に異常が生じると、電流検出信号GC1aの値と電流検出信号GC1bの値との比例関係が満たされなくなる。例えば、送電コイル12の両端子のうちの一方の端子が接地電位に短絡すると、電流検出信号GC1a及びGC1bの値は共に増大するが、両者の比例関係が保たれなくなる。
【0046】
そこで、制御部13は、電流検出信号GC1a及びGC1b各々の値の時間経過に伴う変化率の差分が所定の閾値を超えた場合に、両者(GC1a、GC1b)が比例関係に無いと判定し、異常が生じていると判断する。
【0047】
また、送電コイル12はリアクタンス成分を有するため、無線受電装置200の状態や、受電コイルとの結合状態、又は周囲の異物(導電体、磁性体)の存在等により、容量性の状態、或いは誘導性の状態となる。これにより、電流検出信号GC1a又はGC1bの波形に対して、電圧検出信号GV0の波形は必ずしも比例関係にはならない。
【0048】
そこで、予め、無線給電装置100が正常な給電動作を行っているときの電流検出信号GC1a(又はGC1b)の値と、電圧検出信号GV0の値とを測定しておき、夫々の測定結果を正常値として制御部13に記憶しておく。制御部13は、図2に示す給電モード時において、電流検出信号GC1a(又はGC1b)、及び電圧検出信号GV0各々の値を監視する。そして、制御部13は、電流検出信号GC1a(又はGC1b)の値、及び電圧検出信号GV0の値のうちの少なくとも一方が上記した正常値に対して所定の閾値を超えて変動した場合に異常が生じていると判断する。
【0049】
制御部13は、このような異常が生じていると判断した場合、例えば電源遮断を促す電源遮断信号を送電回路10に供給する。この電源遮断信号に応じて、送電回路10に含まれる交流駆動電流生成部10Aの発振部101は、発振信号fcの生成を停止する。これにより、無線受電装置200に対する給電動作が停止する。
[無線受電装置200]
次に、図1に示す無線受電装置200の構成について説明する。無線受電装置200は、受電コイル20、共振キャパシタ21、整流回路22、受電回路23、及び制御部24を含む。
【0050】
受電コイル20及び共振キャパシタ21は、無線給電装置100の送電コイル12が発生する交流磁界に磁気結合し、当該交流磁界に対応した電圧値を有する交流電圧をラインL3及びL4に印加する。
【0051】
整流回路22は、例えば図1に示すように4つの整流用のダイオードが接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタを含む。整流回路22は、駆動ラインL3及びL4の交流電圧を全波整流し、且つ平滑化した直流の電圧を受給電圧JVとしてラインL5及びL6を介して受電回路23に供給する。尚、ラインL6には、接地電位(例えばゼロボルト)が印加されている。
【0052】
受電回路23は、受給電圧JVの電圧値を一定化した出力電圧VGを生成し、これを外部端子Tp及びTgに接続されている負荷装置250に供給する。尚、負荷装置250とは、例えば二次電池を充電する充電回路、或いはICカード等の各種電子機器である。また、受電回路23は、受給電圧JVの電圧値を一定化した電圧を、制御部24を動作させる電源電圧として制御部24に供給する。
【0053】
また、受電回路23は、自身の内部に流れる電流、内部電圧、温度、並びに、無線給電装置100が生成した交流磁界に基づくクロック信号の振幅、を夫々検出し、その結果を制御部24に通知する。更に、受電回路23は、制御部24から供給された各種の制御信号に対応した動作設定を行う。
【0054】
制御部24は、ラインL3及びL4と電気的に接続されている。制御部24は、通信モード時において、ラインL3、L4、共振キャパシタ20及び受電コイル20を介して無線給電装置100とのデータ通信を行う通信回路を含む。制御部24は、受電回路23から供給された信号、又は上記した無線給電装置100とのデータ通信によって取得した制御データに応じて、受電回路23の動作を制御する各種の制御信号を受電回路23に供給する。
【0055】
図4は、受電回路23の内部構成を示すブロック図である。図4に示すように、受電回路23は、ラインL5及びL6に接続されている過大磁界保護回路231、磁界判定部232、安定化回路233、234、遮断回路235、及び出力放電回路236を含む。更に、受電回路23は、電圧検出部241、242、クロック振幅検出部243、及び温度センサ244を含む。
【0056】
過大磁界保護回路231は、受電コイル20が所定強度以上の交流磁界、つまり過大磁界を受け、それに伴いラインL5上の受給電圧JVが上限電圧を超えた場合に、当該受給電圧JVをその上限電圧に固定する。これにより、過大磁界保護回路231は、受電コイル20が受けた過大磁界から、後段の回路、つまり安定化回路233及び234を保護する。
【0057】
尚、過大磁界保護回路231は、この上限電圧の電圧値を、制御部24から供給された制限電圧指定信号VSによって変更する。
【0058】
更に、過大磁界保護回路231は、上記した過大磁界を受けた場合に、その過大磁界に伴って流れる電流の電流量を検出し、検出した電流量を表す電流検出信号CD0を磁界判定部232に供給する。
【0059】
図5は、過大磁界保護回路231の一例を示す回路図である。図5に示すように、過大磁界保護回路231は、抵抗R4~R7、セレクタSE1、オペアンプOP1、スイッチ素子SW1、nチャネルMOS型のトランジスタMN1及びMN2、pチャネルMOS型のトランジスタMP1及びMP2を含む。
【0060】
ラインL5及びL6間には、直列に接続された抵抗R4~R6が分圧回路として形成されている。当該分圧回路は、ラインL5及びL6間の電圧、つまり受給電圧JVを分圧することにより、分圧電圧vaと、当該分圧電圧vaよりも小さい電圧値を有する分圧電圧vbとを生成する。
【0061】
セレクタSE1は、制御部24から供給された制限電圧指定信号VSに基づき、上記した分圧電圧va及びvbのうちの一方を選択する。尚、制限電圧指定信号VSは、ラインL5の受給電圧JVに対する上限電圧を指定する信号である。例えば、制限電圧指定信号VSは、図6に示す電圧値V1(例えば3ボルト)、及び当該電圧値V1よりも高い電圧値V2(例えば5ボルト)のうちの一方を上限電圧として指定する信号である。ここで、制限電圧指定信号VSが上限電圧として電圧値V1を表す場合には、セレクタSE1は、分圧電圧vaを選択する。また、制限電圧指定信号VSが上限電圧として電圧値V2を表す場合には、セレクタSE1は、分圧電圧vbを選択する。
【0062】
セレクタSE1は、選択した方の電圧(va又はvb)を検出電圧VCとしてオペアンプOP1の非反転入力端に供給する。
【0063】
オペアンプOP1の反転入力端には所定の基準電圧VRが印加されている。オペアンプOP1は、検出電圧VC(va又はvb)が基準電圧VRよりも高い場合には論理レベル1、この検出電圧VCが基準電圧VR以下である場合には論理レベル0に対応した電圧値を有する短絡信号STを生成する。オペアンプOP1は、短絡信号STを、スイッチ素子SW1、トランジスタMN1及びMN2各々のゲートに供給する。
【0064】
例えば、抵抗R4を100キロオーム、抵抗R5を20キロオーム、抵抗R6を30キロオームとした場合、分圧電圧vaは受給電圧JVの1/3の電圧値となり、分圧電圧vbは受給電圧JVの1/5の電圧値となる。ここで、基準電圧VRを例えば1ボルトとした場合、オペアンプOP1は、JV/3又はJV/5を表す検出電圧VCと、1ボルトの基準電圧VRとの電圧値を比較することになる。
【0065】
尚、オペアンプOP1は、制御部24から供給された磁界保護制御信号MCNが磁界保護動作の停止を表す場合には、短絡信号STの生成動作を停止する。また、オペアンプOP1は、この磁界保護制御信号MCNが磁界保護動作の実行を表す場合には、上記したように短絡信号STの生成を行う。
【0066】
スイッチ素子SW1は、磁界保護制御信号MCNが磁界保護動作の実行を表す場合にはオフ状態となる。また、スイッチ素子SW1は、磁界保護制御信号MCNが磁界保護動作の停止を表す場合にはオン状態となり、トランジスタMN1及びMN2各々のゲートの電圧を強制的に論理レベル0に対応した接地電位に設定する。
【0067】
トランジスタMN1のソースはラインL6に接続されており、そのドレインはラインL5に接続されている。トランジスタMN1は、短絡信号STが論理レベル0を表す場合にはオフ状態となる。また、トランジスタMN1は、短絡信号STが論理レベル1を表す場合にはオン状態となり、ラインL5からラインL6に向けて電流を流す。これにより、受給電圧JVの上限が、制限電圧指定信号VSにて指定された上限電圧としての電圧値V1又は電圧値V2に制限される。
【0068】
例えば、制限電圧指定信号VSが上限電圧として電圧値V1を表す場合に、受給電圧JVが電圧値V1よりも低いときには、トランジスタMN1はオフ状態となるので、ラインL5及びL6間には、図6の実線にて示すように電流は流れない。よって、この際、過大磁界保護回路231は、整流回路22で得られた受給電圧JVをそのままラインL5を介して次段の安定化回路233及び234に供給する。
【0069】
しかしながら、受給電圧JVの電圧値が電圧値V1を超えると、トランジスタMN1がオン状態となり、ラインL5及びL6間には、図6の実線にて示すように電流が流れる。これにより、整流回路22で得られた受給電圧JVが電圧値V1より高電圧な状態にあると、トランジスタMN1の動作により、受給電圧JVの電圧値は電圧値V1に維持される。よって、当該電圧値V1を有する受給電圧JVが次段の安定化回路233及び234に供給される。
【0070】
また、例えば、制限電圧指定信号VSが上限電圧として電圧値V2を表す場合に、受給電圧JVの電圧値が電圧値V2よりも低いときには、トランジスタMN1はオフ状態にある。従って、ラインL5及びL6間には、図6の破線にて示すように微量な電流しか流れないので、過大磁界保護回路231は、整流回路22で得られた受給電圧JVをそのままラインL5を介して次段の安定化回路233及び234に供給する。
【0071】
ところが、受給電圧JVの電圧値が電圧値V2を超えると、トランジスタMN1がオン状態となり、ラインL5及びL6間には、図6の破線にて示すように電流が流れる。これにより、整流回路22で得られた受給電圧JVが上限の電圧値V2より高電圧な状態にある場合には、トランジスタMN1の動作により、受給電圧JVの電圧が上限の電圧値V2に維持される。よって、当該上限の電圧値V2を有する受給電圧JVが次段の安定化回路233及び234に供給される。
【0072】
このように、過大磁界保護回路231は、制御部24から供給された制限電圧指定信号VSによって、ラインL5上の受給電圧JVの上限電圧を電圧値V1又はV2に制限する。これにより、過大磁界保護回路231は、受電コイル20が受けた過大磁界から、後段の回路(233、234)及び負荷装置250を保護する。
【0073】
また、過大磁界保護回路231には、受電コイル20が過大磁界を受けた際にラインL5及びL6間に流れる電流を検出するために、図5に示すトランジスタMN2、MP1及びMP2、抵抗R7を含む電流検出部が設けられている。
【0074】
図5において、トランジスタMN2のソースはラインL6に接続されており、そのドレインは、カレントミラー回路としてのトランジスタMP1及びMP2各々のゲートに接続されている。尚、トランジスタMP1は自身のゲート及びドレイン同士が接続されている。また、トランジスタMP2のドレインは抵抗R7の一端に接続されている。抵抗R7の他端はラインL6に接続されている。
【0075】
かかる電流検出部では、トランジスタMN2がMN1と連動して、短絡信号STが論理レベル0を表す場合にオフ状態となり、短絡信号STが論理レベル1を表す場合にはオン状態となる。当該トランジスタMN2がオン状態となると、トランジスタMP1及びトランジスタMN2を介してラインL5からラインL6に向けて電流が流れる。この際、トランジスタMN2に流れる電流に対応した電流量の電流が、トランジスタMP2及び抵抗R7を介して、ラインL5からラインL6に向けて流れる。
【0076】
つまり、トランジスタMN2は、受電コイル20が過大磁界を受けた場合にオン状態となる。この際、トランジスタMN2は、トランジスタMN1を介してラインL5及びL6間に流れ、いわゆる過大磁界電流に対応した電流を、カレントミラー回路(MP1、MP2)に供給する。これにより、カレントミラー回路は、上記した過大磁界電流に対応した電流を抵抗R7の一端に送出する。よって、抵抗の一端には、過大磁界電流に対応した電圧が生じる。そこで、過大磁界保護回路231では、抵抗R7の一端の電圧を、上記した過大磁界電流の電流量を表す電流検出信号CD0とし、これを磁界判定部232に供給する。
【0077】
尚、過大磁界保護回路231としては、図5に示す構成に代えて図7に示す回路構成を採用しても良い。図7に示す構成では、オペアンプOP1を省き、セレクタSE1から出力された検出電圧VCを直接、トランジスタMN1及びMN2各々のゲートに供給するようにした点を除く他の構成は図5に示すものと同一である。
【0078】
すなわち、図7に示す構成では、検出電圧VCの電圧値がトランジスタの閾値よりも高い場合にトランジスタMN1及びMN2がオン状態となり、図5に示す構成と同様な磁界保護動作を行う。
【0079】
磁界判定部232は、上記した電流検出信号CD0にて表される電流量が所定電流(例えば5ミリアンペア)未満である場合には、交流磁界が所定強度より小さい弱磁界であると判定し、その判定結果を表す磁界判定信号MSを生成する。また、磁界判定部232は、この電流検出信号CD0にて表される電流量が所定電流以上である場合には、交流磁界が所定強度以上の強磁界であると判定し、その判定結果を表す磁界判定信号MSを生成する。磁界判定部232は、磁界判定信号MSを制御部24に供給する。
【0080】
安定化回路233は、ラインL5を介して受けた受給電圧JVに基づき、所定の一定の電圧値を有する安定化電圧Vgを生成する。安定化回路233は、当該安定化電圧VgをラインL0を介して遮断回路235に供給する。更に、安定化回路233は、ラインL0に流れる電流を出力電流として検出し、当該出力電流の電流量を表す電流検出信号CD1を制御部24に供給する。
【0081】
安定化回路234は、ラインL5を介して受けた受給電圧JVに基づき、安定化電圧Vgと同一の一定電圧値を有する安定化電圧Vtを生成する。安定化回路234は、当該安定化電圧Vtを制御部24を動作させる電源電圧として、電圧検出部242及び制御部24に供給する。
【0082】
尚、安定化回路233及び234は、同一の回路構成を有する。
【0083】
図8は、安定化回路233の回路構成の一例を示す回路図である。図8に示すように、安定化回路233は、pチャネルMOS型のトランジスタQP0、QP1、抵抗R10~R12、負帰還制御部FBC及び出力電流検出部IDEを含む。
【0084】
トランジスタQP0のソースはラインL5に接続されており、そのドレインはラインL0に接続されている。トランジスタQP0のゲートには、負帰還制御部FBCで生成された帰還電圧FVが印加されている。
【0085】
ラインL0には、抵抗R10及びR11を含む分圧回路が接続されている。分圧回路(R10、R11)は、ラインL0の電圧、つまり安定化電圧Vg(Vt)を分圧した分圧電圧を、安定化電圧Vg(Vt)の電圧値を表す電圧検出信号GVaとして負帰還制御部FBCに供給する。
【0086】
トランジスタQP1のソースはラインL5に接続されており、そのドレインは抵抗R12の一端に接続されている。抵抗R12の他端には接地電位が印加されている。トランジスタQP1のゲートには、上記した帰還電圧FVが印加されている。ここで、トランジスタQP1のドレインの電圧が、ラインL5に流れる電流の電流量を表す電流検出信号CDaとして負帰還制御部FBCに供給される。
【0087】
負帰還制御部FBCは、電流検出信号CDa及び電圧検出信号GVaのうちで大なる方の値と、所定の基準値との差分を求める。負帰還制御部FBCは、当該差分を表す電圧を上記した帰還電圧FVとして、トランジスタQP0及びQP1各々のゲート、並びに出力電流検出部IDEに供給する。
【0088】
出力電流検出部IDEは、pチャネルMOS型のトランジスタQP2及びQP3、抵抗R13及びR14、オペアンプOP2を含む。
【0089】
抵抗R13の一端はラインL5に接続されており、その他端はトランジスタQP2のソースに接続されている。トランジスタQP2のドレインはラインL0に接続されており、そのゲートには上記した帰還電圧FVが印加されている。オペアンプOP2の非反転入力端には抵抗R13の一端が接続されており、その反転入力端には抵抗R13の他端が接続されている。オペアンプOP2の出力端はトランジスタQP3のゲートに接続されている。トランジスタQP3のソースはラインL5に接続されており、そのドレインは抵抗R14の一端に接続されている。抵抗R14の他端には接地電位が印加されている。尚、トランジスタQP3のサイズ(チャネル幅)は、トランジスタQP0のサイズよりも小、例えばトランジスタQP0のチャネル幅の1/400である。
【0090】
かかる構成により、トランジスタQP0は、ラインL5を介して供給された受給電圧JVを、帰還電圧FVに基づき所定の基準値と一致させるように調整する。トランジスタQP0は、この調整が施された電圧を安定化電圧Vgとして、ラインインL0に印加すると共に、負荷装置250を動作させる出力電流をラインL0に送出する。
【0091】
この際、当該出力電流に対応した電流、すなわち、出力電流の1/400の電流量の電流が抵抗R13に流れる。ここで、オペアンプOP2が抵抗R13の両端の電圧差に対応した電圧をトランジスタQP3のゲートに印加する。これにより、トランジスタQP3のドレイン端と抵抗R14の一端との接続点には、出力電流の1/400の電流量に対応した電圧が生じる。
【0092】
そこで、出力電流検出部IDEは、トランジスタQP3のドレイン端と抵抗R14の一端との接続点に生じた電圧を、出力電流の1/400の電流量を表す電流検出信号CD1として制御部24に供給する。
【0093】
このように、出力電流検出部IDEでは、トランジスタQP0と並列に電流検出用の抵抗R13を設け、当該抵抗R13の両端の電圧に基づき出力電流を検出している。この際、トランジスタQP2により、抵抗R13に流れる電流は、トランジスタQP0に流れる出力電流の1/400となる。よって、トランジスタQP0に直列に電流検出用の抵抗を設けて出力電流の検出を行う場合に比して、電力損失を抑えることが可能となる。
【0094】
図4に示す遮断回路235は、制御部24から供給された出力遮断制御信号OCNに応じて、ラインL0及び出力ラインLX間を電気的に接続する、或いはラインL0及び出力ラインLX間の接続を遮断する。
【0095】
つまり、遮断回路235は、出力遮断制御信号OCNが「接続」を表す場合には、ラインL0を介して受けた安定化電圧Vgを出力電圧VGとして、出力ラインLXを介して外
部端子Tpに印加する。この際、遮断回路235は、安定化回路233からラインL0を介して供給された出力電流を、出力ラインLX、退部端子Tpを介して負荷装置250に送出する。
【0096】
更に、遮断回路235は、ラインL0から出力ラインLXに流れ込む出力電流の電流量を検出し、検出した電流量を表す電流検出信号CD2を制御部24に供給する。
【0097】
一方、出力遮断制御信号OCNが「遮断」を表す場合には、ラインL0及び出力ラインLX間の接続を遮断、つまり安定化電圧Vgの出力ラインLXへの供給を遮断する。
【0098】
図9は、遮断回路235の回路構成の一例を示す回路図である。図9に示すように、遮断回路235は、pチャネルMOS型のトランジスタMSW、QP11及びQP12、抵抗R15及びR16、オペアンプOP3を含む。
【0099】
トランジスタMSWのドレインはラインL0に接続されており、そのソースは出力ラインLXに接続されている。トランジスタMSWのゲートには、出力遮断制御信号OCNが供給されている。更に、トランジスタMSWのゲート及びソース間には抵抗R15が接続されている。尚、出力遮断制御信号OCNは、「遮断」を表す場合には論理レベル1、「接続」を表す場合には論理レベル0に対応した電圧値を有する。
【0100】
トランジスタMSWは、出力遮断制御信号OCNに応じて、ラインL0及び出力ラインLX間の接続及び遮断を行う遮断スイッチとして機能する。
【0101】
また、遮断回路235には、出力ラインLXに流れる出力電流の電流量を検出するために、トランジスタQP11及びQP12、オペアンプOP3、及び抵抗R16を含む電流検出部が設けられている。
【0102】
トランジスタQP11のドレインはラインL0に接続されており、そのソースはトランジスタQP12のソース及びオペアンプOP3の反転入力端に接続されている。トランジスタQP11のゲートには接地電位が固定印加されている。オペアンプOP3の非反転入力端は出力ラインLXに接続されている。尚、トランジスタQP11のサイズ(チャネル幅)は、トランジスタMSWのサイズよりも小、例えばトランジスタMSWのチャネル幅の1/400である。トランジスタQP12のゲートはオペアンプOP3の出力端に接続されており、ドレインは抵抗R16の一端に接続されている。抵抗R16の他端には接地電位が印加されている。
【0103】
上記した構成によれば、オペアンプOP3及びトランジスタQP12により、トランジスタQP11のドレイン及びソース間に、トランジスタMSWのドレイン及びソース間と等しい電圧が印加される。この際、トランジスタMSW及びQP11は共にオン状態で、且つドレイン及びソース間電圧が等しいので、トランジスタQP11には、トランジスタMSWが送出する出力電流の1/400の電流が流れる。このトランジスタQP11に流れる電流がトランジスタQP12を介して抵抗R16に送出されると、抵抗R16の一端には、上記した出力電流の電流量に対応した電圧が生じる。
【0104】
そこで、図9に示す構成を有する遮断回路235では、トランジスタQP12のドレインと抵抗R16の一端との接続点の電圧を、出力電流の1/400の電流量を表す電流検出信号CD2として制御部24に供給する。
【0105】
図10は、遮断回路235の回路構成の他の一例を示す回路図である。尚、図10に示す構成では、オペアンプOP3に代えてpチャネルMOS型のトランジスタQP21~23及び電流源IGを採用した点を除く他の構成は図9に示すものと同一である。
【0106】
図10に示す構成では、トランジスタQP11及びQP12間にトランジスタQP21を設けている。すなわち、トランジスタQP21のドレインがトランジスタQP12のソースに接続されており、トランジスタQP21のソースがトランジスタQP11のソースに接続されている。トランジスタQP22のソースが出力ラインLXに接続されており、そのドレインが、トランジスタQP21及びQP22各々のゲート、並びにトランジスタQP23のソースに接続されている。トランジスタQP23のドレインは、トランジスタQP12及びQP23各々のゲート、並びに電流源IGに接続されている。
【0107】
このように、遮断回路235では、図9又は図10に示すように、遮断スイッチ(MSW)における電圧降下を利用して出力電流の電流量を検出しているため、電流検出に費やされる電力消費量を抑えることができる。よって、電力効率を低下させることなく、受電回路23内において、負荷装置250を駆動する出力電流の電流量を検出することが可能となる。
【0108】
図4に示す出力放電回路236は、バイパスキャパシタC5、及びnチャネルMOS型のトランジスタQnを含む。バイパスキャパシタC5は、その一端が出力ラインLXに接続されており、他端に接地電位が印加されている。バイパスキャパシタC5は、出力ラインLXに印加された出力電圧VGの電圧変動を抑える。
【0109】
トランジスタQnのドレインは出力ラインLXに接続されており、そのソースには接地電位が印加されている。トランジスタQnのゲートには、制御部24で生成された強制放電信号DONが供給されている。強制放電信号DONは、バイパスキャパシタC5を強制的に放電させる場合にだけ論理レベル1、その他の場合には論理レベル0に対応した電圧値を有する。
【0110】
すなわち、トランジスタQnは、制御部24から、放電を促す論理レベル1の強制放電信号DONが供給された場合にオン状態となって、バイパスキャパシタC5を強制的に放電させる。これにより、トランジスタQnは、出力ラインLXの電圧値を接地電位まで低下させる。よって、トランジスタQnのサイズ(チャネル幅、チャネル長)は、自身がオン状態にある際にバイパスキャパシタC5を放電させるのに必要となる電流を流せる程度の大きさとなる。
【0111】
例えば、出力電圧VGが5ボルト、バイパスキャパシタC5の静電容量が10マイクロファラッドである場合に、オン抵抗が1キロオームとなるようにトランジスタQnのサイズを設定すると、
放電時の時定数:1キロオーム×10マイクロファラッド=10ミリ秒
初期電流:5ボルト/1キロオーム=5ミリアンペア
となる。
【0112】
尚、受電回路23には、上記した構成(231~236)の他に、自身の内部の状態を検出する構成として、図4に示すように、電圧検出部241及び242、クロック振幅検出部243、及び温度センサ244が含まれている。
【0113】
電圧検出部241は、ラインL5の電圧、つまり受給電圧JVの電圧値を検出し、検出した電圧値を表す電圧検出信号DV1を制御部24に供給する。電圧検出部242は、安定化回路234で生成された安定化電圧Vtの電圧値を検出し、検出した電圧値を表す電圧検出信号DV2を制御部24に供給する。
【0114】
クロック振幅検出部243は、受電コイル20の両端に接続されているラインL3及びL4の交流電圧から、データ通信に用いるクロック信号を抽出し、当該クロック信号の振幅を検出する。クロック振幅検出部243は、このクロック信号の振幅値を表すクロック振幅検出信号CADを制御部24に供給する。
【0115】
温度センサ244は、受電回路23内部の温度を測定し、測定した温度を表す温度検出信号TEを制御部24に供給する。
【0116】
図4に示すように、制御部24は、通信回路の受信部としてのASK(amplitude-shift keying)復調部2401、及び送信部としての負荷変調部2402を含む。
【0117】
ASK復調部2401は、通信モード時において受電コイル20、ラインL3及びL4を介して受けた受信信号に対して、以下のようなASK復調処理を施すことにより、無線給電装置100から無線送信されたクロック信号及び制御データを復元する。
【0118】
つまり、ASK復調部2401は、ASK復調処理として、図11に示す受信信号RSに対して、その信号レベルの立ち上がり時には閾値TH1、立ち下がり時には閾値TH2(TH1>TH2)を用いたヒステリシス付き2値判定を行う。
【0119】
例えば、ASK復調部2401は、受信信号RSの信号レベルの立ち上がり区間では、その信号レベルが閾値TH1より低い場合には論理レベル0、閾値TH1以上の場合には論理レベル1を有する制御データを得る。また、ASK復調部2401は、受信信号RSの信号レベルの立ち下がり区間では、その信号レベルが閾値TH2より低い場合には論理レベル0、閾値TH2以上の場合には論理レベル1を有する制御データ又はクロック信号を得る。
【0120】
尚、上記したようなASK復調処理を実施するにあたり、ASK復調部2401は、磁界判定部232から供給された磁界判定信号MSに応じて、図11に示す閾値TH1と閾値TH2との差である判定閾値幅HRを変更する。
【0121】
例えば、ASK復調部2401は、磁界判定信号MSが5ミリアンペア未満の弱磁界を表す場合には比較的小さな判定閾値幅HR(例えば50ミリボルト)を設定する。一方、磁界判定信号MSが5ミリアンペア以上の強磁界を表す場合には、ASK復調部2401は、比較的大きな判定閾値幅HR(例えば100ミリボルト)を設定する。
【0122】
尚、上記した一例では、無線受電装置200が弱磁界を受けている場合には強磁界を受けている場合に比べて、ASK復調部2401での判定閾値幅HRを小さくしている。しかしながら、無線受電装置200が受けている磁界が弱いほど、判定閾値幅HRを大きくするようにしても良い。
【0123】
このように、ASK復調部2401では、データ通信時に無線受電装置200が受けた磁界の大きさに応じて、ヒステリシス付き2値判定の判定閾値幅HRを変更できるようにしている。これにより、無線受電装置200では、受信した磁界の強度に拘わらず、受信信号RSから精度良く制御データを復元することが可能となる。
【0124】
負荷変調部2402は、無線給電装置100側に送信する制御データに基づき、ラインL3及びL4に接続した負荷(例えば抵抗)を駆動する。
【0125】
図12は、負荷変調部2402の構成の一例を示す回路図である。図12に示すように、負荷変調部2402は、スイッチ素子SW11及びSW12と、負荷抵抗VR1及びVR2と、を含む。
【0126】
負荷抵抗VR1の一端にはラインL3が接続されており、その他端にはスイッチ素子SW1の一端が接続されている。スイッチ素子SW1の他端には接地電位が印加されている。負荷抵抗VR2の一端にはラインL4が接続されており、その他端にはスイッチ素子SW2の一端が接続されている。スイッチ素子SW2の他端には接地電位が印加されている。
【0127】
スイッチ素子SW11は、無線給電装置100側に送信する制御データTXDが例えば論理レベル1を表す場合にオン状態、論理レベル0を表す場合にオフ状態となる。スイッチ素子SW12は、制御データTXDが論理レベル0を表す場合にオン状態、論理レベル1を表す場合にオフ状態となる。これにより、スイッチ素子SW11及びSW12が相補的にオン状態及びオフ状態となり、制御データTXDにて表される2値(論理レベル0、1)のデータ系列に対応した交流駆動電流がラインL3及びL4を介して受電コイル20に流れる。この際、受電コイル20が発する交流磁界により、無線給電装置100側に制御データTXDが無線送信される。
【0128】
ここで、負荷抵抗VR1及びVR2は、磁界判定信号MSに応じて抵抗値の変更が可能な可変抵抗である。すなわち、負荷抵抗VR1及びVR2は、磁界判定信号MSによって表される磁界が弱い場合には強い場合に比べて自身の抵抗値を高くする。例えば、磁界判定信号MSが弱磁界を表す場合には負荷抵抗VR1及びVR2の抵抗値は数キロオームに設定され、強磁界を表す場合には負荷抵抗VR1及びVR2の抵抗値は数十オームに設定される。
【0129】
尚、上記した一例では、無線受電装置200が弱磁界を受けている場合には強磁界を受けている場合に比べて、負荷変調部240での負荷を軽く、つまり負荷抵抗(VR1、VR2)の抵抗値を高くしている。しかしながら、無線受電装置200が受けている磁界が弱いほど、負荷変調部240での負荷を重く、つまり負荷抵抗(VR1、VR2)の抵抗値を低くしても良い。
【0130】
このように、負荷変調部2402では、データ通信時に無線受電装置200が受けた磁界の大きさに応じて、負荷抵抗(VR1、VR2)の抵抗値を変更可能にしている。これにより、無線受電装置200では、データ通信時における磁界の強度に拘わらず、制御データを確実に無線給電装置100側に無線送信することが可能となる。
【0131】
すなわち、通信回路(2401、2402)は、過大磁界保護回路231の電流検出部で検出された電流量(CD0)が所定電流値未満となる弱磁界を受けた場合と、所定電流値以上となる強磁界を受けた場合とで異なる通信特性にてデータ通信を行う。
【0132】
以下に、無線給電装置100及び無線受電装置200による給電モード及び通信モードでの動作、及び制御部24による受電回路23に対する制御動作について説明する。
【0133】
図13は、無線給電装置100及び無線受電装置200間で実施されるデータ通信及び給電動作を表すフロー図である。
【0134】
図13に示すように、通信モードでは、先ず、無線給電装置100が、図2に示すような磁界振幅M1を有する通信用の交流磁界を生成する(ステップS1)。これにより、無線給電装置100は、無線受電装置200の制御部24を動作させる電力及びクロック信号を無線受電装置200に無線送信する。
【0135】
この際、無線受電装置200の受電コイル20が図2に示す磁界振幅M1を有する通信用の交流磁界を受けることにより、図14に示すような電圧値V1の受給電圧JVが受電回路23に供給される。更に、無線受電装置200の制御部24は、上記した通信用の交流磁界に対応した受信信号をラインL3及びL4を介して受け、当該受信信号からクロック信号を抽出する(ステップS2)。
【0136】
次に、制御部24は、上限電圧として電圧値V1を示す制限電圧指定信号VSを受電回路23に供給する(ステップS3)。これにより、受電回路23の過大磁界保護回路231は、受給電圧JVの上限を電圧値V1(例えば3ボルト)に制限する保護動作状態に設定される。
【0137】
次に、制御部24は、図4に示すラインL0及び出力ラインLX間の接続を遮断することを示す出力遮断制御信号OCNを受電回路23に供給する(ステップS4)。これにより、受電回路23の遮断回路235は、ラインL0及び出力ラインLX間の接続を遮断するので、安定化回路233で生成された安定化電圧Vgは出力ラインLXには印加されない。
【0138】
次に、無線給電装置100及び無線受電装置200が夫々の相手先の仕様及び状態に対応した設定を行う際に必要となる制御データを取得するために、無線給電装置100及び無線受電装置200間においてデータ通信が行われる(ステップS5)。かかるデータ通信によって無線給電装置100及び無線受電装置200の各々が取得した制御データにより、無線給電装置100及び無線受電装置200は、夫々の相手先の仕様又は状態に対応した給電動作を実施し得る状態に設定される。
【0139】
そして、ステップS5によるデータ通信が終了すると、無線給電装置100は、データ通信の終了を表す制御データを送電コイル12を介して無線受電装置200に送信する(ステップS6)。
【0140】
尚、上記したステップS1~S6により、無線給電装置100及び無線受電装置200は通信モードの状態となる。
【0141】
ここで、無線受電装置200の制御部24が、無線給電装置100からデータ通信の終了を表す制御データを受けると、上限電圧として電圧値V2(例えば5ボルト)を示す制限電圧指定信号VSを受電回路23に供給する(ステップS7)。これにより、受電回路23の過大磁界保護回路231は、ラインL5上の受給電圧JVの上限を電圧値V2に制限する保護動作状態に設定される。
【0142】
次に、制御部24は、図4に示すラインL0及び出力ラインLX間の接続を促す出力遮断制御信号OCNを受電回路23に供給する(ステップS8)。これにより、受電回路23の遮断回路235は、ラインL0及び出力ラインLX間を電気的に接続する。
【0143】
その後、無線給電装置100は、図2に示すような磁界振幅M2を有する給電用の交流磁界により、電圧値V2を有する電圧を無線受電装置200に給電する(ステップS9)。これにより、無線受電装置200では、図14に示すような電圧値V2を有する受給電圧JVが受電回路23に供給される。よって、受電回路23は、当該受給電圧JVの電圧値を一定化した出力電圧VGを、外部端子Tp及びTgに接続されている負荷装置250に供給する。
【0144】
ステップS9の実行後、無線給電装置100は給電状態監視処理(ステップS10)を実行し、無線受電装置200は受電状態監視処理(ステップS11)を実行する。
【0145】
図15は、当該給電状態監視処理を示すフローチャートである。図15において、無線給電装置100の制御部13は、前述した電流検出信号GC1a、GC1b、及び電圧検出信号GV0各々の値が、夫々に割り当てられている定常範囲内にあるか否かを判定する(ステップS101)。
【0146】
尚、ステップS101によれば、無線給電装置100の送電コイル12と、無線受電装置200の受電コイル20との間、或いは両者の近傍に異物が存在するか否かを検知することができる。つまり、このような異物が存在する場合、無線給電装置100は強い交流磁界を発生するように動作するので、電流検出信号GC1a、GC1b、及び電圧検出信号GV0のうちの少なくとも1つの値が定常範囲を超えることになる。
【0147】
ステップS101において電流検出信号GC1a、GC1b、及び電圧検出信号GV0各々の値が全て定常範囲内にあると判定された場合、制御部13は、ステップS9での給電開始時点からの給電継続時間が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS102)。
【0148】
ステップS102において給電継続時間が所定時間未満であると判定された場合、制御部13は、上記ステップS101の実行に戻り、前述した動作を再び実行する。
【0149】
また、ステップS102において給電継続時間が所定時間以上であると判定された場合、制御部13は、この給電状態監視処理を終了する。また、制御部13は、上記ステップS101において電流検出信号GC1a、GC1b、及び電圧検出信号GV0のうちの少なくとも1つの値が定常範囲外にあると判定した場合にも、この給電状態監視処理を終了する。
【0150】
図16は、上記したステップS11において無線受電装置200の制御部24が実行する受電状態監視処理を示すフローチャートである。図16において、無線受電装置200の制御部24は、例えば上記した電圧検出信号DV1にて表されるラインL5上の受給電圧JVの電圧値に基づき、無線給電装置100からの給電が継続中であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0151】
ステップS201において給電継続中であると判定された場合、制御部24は、受電回路23の動作状態を検出する動作状態検出処理を実行する(ステップS202)。
【0152】
図17は、動作状態検出処理の一例を示すフローチャートである。図17において、制御部24は、電圧検出信号DV1にて表される電圧値が所定の電圧下限値Vthよりも低いか否かを判定する(ステップS21)。すなわち、ステップS21により、制御部24は、交流磁界の強度が極めて小さいか否かを判定する。
【0153】
ステップS21において電圧検出信号DV1にて表される電圧値が所定の電圧下限値Vthよりも低いと判定された場合、制御部24は、過大磁界保護回路231で検出された電流検出信号CD0にて表される電流量が所定の電流閾値Cthより大きいか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、ステップS22により、制御部24は、交流磁界の強度が極めて高いか否かを判定する。
【0154】
ステップS22において電流検出信号CD0にて表される電流量が電流閾値Cthより大きいと判定された場合、制御部24は、交流磁界が過大となる異常が発生していると判断し、無線給電装置100への通知が必要であることを表す通知フラグを生成する(ステップS23)。
【0155】
一方、ステップS21において電圧検出信号DV1にて表される電圧値が電圧下限値Vth以上であると判定された場合、制御部24は、交流磁界の強度に不足が無いと判断し、無線給電装置100への通知が不要であることを表す通知フラグを生成する(ステップS24)。
【0156】
尚、負荷装置250が例えば蓄電池である場合には、制御部24は、電流検出信号CD1又はCD2によって表される電流量に基づき、当該蓄電池に対して充電が完了したか否かを判定する。この際、制御部24は、充電が完了したと判定した場合には通知が必要であることを表す通知フラグを生成し、充電が完了していないと判定した場合には通知が不要であることを表す通知フラグを生成する。
【0157】
ステップS23又はS24の実行後、制御部24は、図17に示す動作状態検出処理を抜け、上記した通知フラグに基づき無線給電装置100への通知を実行するか否かを判定する(ステップS203)。
【0158】
ステップS203において、通知を行わないと判定した場合、制御部24は、上記ステップS201の実行に戻って前述した動作を再び実行する。
【0159】
一方、当該ステップS203において通知を実行すると判定した場合、制御部24は、制限電圧指定信号VSを、電圧値V2を表す状態からV1を表す状態に切り換え、引き続き電圧値V2を表す状態に遷移させる(ステップS204)。ステップS204により、過大磁界保護回路231は、ラインL5上の受給電圧JVの上限を電圧値V2から電圧値V1に切り換え、引き続き電圧値V2に切り替える上限電圧切替処理を行う。
【0160】
これにより、受電回路23で動作異常が生じた場合、或いは負荷装置250への充電が完了した場合、ラインL5上の受給電圧JVには、図18に示すように電圧値V1及びV2の状態が交互に繰り返される電圧変動区間VFPが現れる。よって、それに伴い、送電コイル12及び受電コイル20間の交流磁界にも図19に示すように、磁界振幅M1及びM2の状態が交互に繰り返される磁界振幅変動区間MFPが現れる。
【0161】
従って、無線給電装置100の制御部13は、磁界振幅変動区間MFPでの磁界振幅の変動に伴う電流検出信号GC1a(GC2a)、又は電圧検出信号GV0の値の変化により、無線受電装置200の動作状態(異常発生、充電完了等)を知ることができる。
【0162】
上記ステップS204の終了後、或いは上記ステップS201において給電継続中ではないと判定された場合、無線受電装置200の制御部24は、図16に示す受電状態監視処理を終了する。
【0163】
ここで、上記したステップS7~S11により、無線給電装置100が無線受電装置200に対して給電を行う給電モードの状態となる。この給電モードの実行後、無線給電装置100及び無線受電装置200は、再び上記した通信モード及び給電モードの動作を実行する。
【0164】
以下に、上記した通信モード及び給電モードにおける無線受電装置200の過大磁界保護回路231の動作について説明する。
【0165】
過大磁界保護回路231は、制御部24から供給された制限電圧指定信号VSに基づき、整流回路22で整流された受給電圧JVの上限電圧を、図14に示すように給電モードと通信モードとで切り替えている。
【0166】
すなわち、過大磁界保護回路231は、通信モードでは電圧値V1を上限電圧とすることにより、電圧値V1を有する電圧を安定化回路233及び234に供給する。一方、給電モードでは、過大磁界保護回路231は、電圧値V1よりも高い電圧値V2を上限電圧とすることにより、電圧値V2を有する電圧を安定化回路233及び234に供給する。この際、安定化回路234は、電圧値V2を有する電圧に基づき安定化電圧Vtを生成し、これを通信回路(2401、2402)を動作させる電源電圧としてこの通信回路に供給する。
【0167】
尚、上記実施例では、制限電圧指定信号VSに従って過大磁界保護回路231の上限電圧を電圧値V1及びV2の2段階で切り替えているが、電圧値が異なる3種類以上の電圧値により、上限電圧を切り替えるようにしても良い。
【0168】
よって、過大磁界保護回路231の動作によれば、通信モードでは、交流磁界の強度に拘わらず、給電用の電圧よりも低い電圧で通信動作が為されるので、通信時の電力消費量を抑えることが可能となる。また、給電モードでは、通信モードでの上限電圧よりも高い電圧値で受給電圧JVの上限を制限するので、保護動作に伴いラインL5及びL6間に流れる電流量が抑制される。
【0169】
従って、過大磁界保護回路231によれば、給電(給電モード)及びデータ通信(通信モード)が行われるシステムにおいて、低電力損失にて過大磁界に対する保護を行うことが可能となるのである。
【0170】
要するに、本発明では、以下の変換部、受電回路、通信回路を有し、交流磁界によって給電及びデータ通信が行われる無線受電装置に、過大磁界保護回路231を設けることにより、過大磁界保護を低電力損失にて実現するのである。
【0171】
すなわち、変換部(20~21)は、交流磁界をその振幅に対応した電圧値を有する受給電圧(JV)に変換する。受電回路(23)は、受給電圧(JV)に基づき電圧値が一定の安定化電圧(Vt、Vg)を生成し、この安定化電圧に対応した出力電圧(VG)を出力ライン(LX)を介して出力する。通信回路(2401、2402)は、この安定化電圧を電源電圧として受けてデータ通信を行う。そして、過大磁界保護回路(231)は、通信モード時には受給電圧(JV)の上限を第1の電圧値(V1)に制限し、給電モード時には受給電圧の上限を第1の電圧値よりも高い第2の電圧値(V2)に制限する。
【0172】
更に、過大磁界保護回路231では、給電モード時において保護動作のトリガとなる上限電圧を電圧値V2から電圧値V1に切り替えることにより、受電回路23の動作状態(異常有り又は充電完了)を無線給電装置100に通知している。
【0173】
つまり、過大磁界保護回路231は、給電モード時に上限電圧を電圧値V2から他の電圧値に切り替えることによって交流磁界の磁界振幅を変動させ、この磁界振幅の変動により受電回路23の動作状態を通知するのである。
【0174】
この際、上限電圧の電圧値を切り替える回数、或いは切り替える周期によって動作状態の内容を表す。図18及び図19に示す一例では、上限電圧を2回、電圧値V2から電圧値V1に切り替えることによって、受電回路23の動作状態として「動作異常」を通知している。
【0175】
このように、給電モード時において、交流磁界により無線給電装置100から無線受電装置200に給電を行いつつ、当該交流磁界を利用して無線受電装置200の状態情報(異常有り、充電完了等)を無線給電装置100側に通知することが可能となる。
【0176】
また、無線受電装置200の制御部24は、給電モード及び通信モードに拘わらず、磁界判定信号MSが強磁界を表す場合、つまり交流磁界が所定強度より大きい場合には、過大磁界保護回路231の上限電圧の電圧値を低下する。或いは、制御部24は、給電モード及び通信モードに拘わらず、温度検出信号TEが所定電圧より高温を表す場合には、過大磁界保護回路231の上限電圧の電圧値を現時点よりも低下する。
【0177】
これにより、過大磁界発生時に過大磁界保護回路231内に流れ込む電流量が増加しその分だけ安定化回路233及び234に送出される電流量が低下する。よって、過大磁界から安定化回路233及び234を保護しつつも、安定化回路233及び234での電力消費量を抑えることが可能となる。
【0178】
また、過大磁界保護回路231は、受電回路23の起動直後は、受給電圧JVに対して上限電圧の制限を行う保護動作を停止し、受電回路23の動作が安定した時点で保護動作を開始する。
【0179】
すなわち、制御部24は、電圧検出信号DV2で表される安定化電圧Vtの電圧値が、通信回路(2401、2402)を動作させるのに必要となる下限電圧値より低い場合には、保護動作の停止を促す磁界保護制御信号MCNを過大磁界保護回路231に供給する。その後、制御部24は、電圧検出信号DV1及びDV2の各々で表される電圧値が共に増加状態にあり、且つクロック振幅検出信号CADがクロック信号の存在を表す場合に、保護動作の実行を促す磁界保護制御信号MCNを過大磁界保護回路231に供給する。
【0180】
尚、制御部24は、受電回路23の起動直後から、整流回路22に含まれる平滑キャパシタの時定数に対応した時間が経過した時点で、保護動作の実行を促す磁界保護制御信号MCNを過大磁界保護回路231に供給しても良い。
【0181】
これにより、弱い磁界で起動した場合に、過大磁界保護回路231で保護動作が実施される可能性が低くなり、それに伴い無効な電力の消費が抑えられるので、弱磁界から迅速な起動を実現することが可能となる。一方、起動時に過大な磁界が印加された場合には、ラインL5上の受給電圧JVの電圧値が増加するが、整流回路22に含まれる平滑キャパシタにより電圧値の増加速度が抑えられる。よって、その後、受電回路23が安定してから、過大磁界保護回路231による保護動作を開始することにより、弱磁界から強磁界までの広い範囲で過大磁界保護回路231による保護動作を実施することが可能となる。
【0182】
また、制御部24は、受電回路23の起動時において、電圧検出信号DV1及びDV2の各々で表される電圧値、及びクロック振幅検出信号CADにて表されるクロックの振幅値が、夫々に規定されている下限値よりも低いか否かを判定する。この際、電圧検出信号DV1及びDV2の各々で表される電圧値、及びクロック振幅検出信号CADにて表される振幅値のうちのいずれか1つが、下限値より低い場合には、通信回路(2401、2402)は、受電コイル20との電気的接続を遮断する。
【0183】
例えば、電圧検出信号DV2にて示される安定化電圧Vtの電圧値が、通信回路を動作させる為に必要となる下限電圧値より低い場合には、当該通信回路は、受電コイル20との電気的接続を遮断する。
【0184】
その後、受電回路23の動作が安定したら、通信回路(2401、2402)は、受電コイル20との電気的接続を行う。
【0185】
これにより、弱い交流磁界で受電回路23を起動した場合においても、通信回路(2401、2402)への電力漏れを抑制しつつ、迅速な起動が為されるようになる。
【0186】
次に、図4に示す遮断回路235の動作について説明する。
【0187】
遮断回路235は、給電モード時において負荷装置250に出力電圧VGを供給する場合には、ラインL0を出力ラインLXに電気的に接続する。一方、遮断回路235は、給電モード時において負荷装置250に出力電圧VGを供給しない場合、或いは通信モード時にはラインL0及び出力ラインLX間の接続を遮断する。
【0188】
すなわち、制御部24は、例えば図13に示すステップS1~S6の実行時(通信モード)にはラインL0及び出力ラインLX間の接続遮断を促す出力遮断制御信号OCNを遮断回路235に供給する。また、制御部24は、図13に示すステップS7~S11の実行時(給電モード)において、負荷装置250に出力電圧VGを供給する場合に、ラインL0及び出力ラインLX間の接続を促す出力遮断制御信号OCNを遮断回路235に供給する。
【0189】
次に、図4に示す出力放電回路236の動作について説明する。
【0190】
出力放電回路236は、通信モードの間だけ、出力ラインLXを接地することにより、出力ラインLXを放電させる。つまり、制御部24は、図20に示すように、通信モードの間は放電を促す論理レベル1の強制放電信号DONを出力放電回路236に供給し、給電モードの間は論理レベル0の強制放電信号DONを出力放電回路236に供給する。
【0191】
これにより、給電モード時には出力放電回路236のトランジスタQnがオフ状態となり、安定化回路233で生成された安定化電圧Vgが出力電圧VGとして負荷装置250に印加される。
【0192】
一方、通信モード時には出力放電回路236のトランジスタQnがオン状態となり、出力ラインLXに接地電位が印加される。よって、出力ラインLXが放電し、図20に示すように、出力電圧VGの電圧値が、接地電位(ゼロボルト)まで低下する。
【0193】
よって、負荷装置250は、出力電圧VGの電圧値が接地電位である場合に、無線受電装置200がデータ通信中であると判断することが可能となる。
【0194】
尚、図1に示される無線受電装置200では、無線給電装置100とのデータ通信を行う通信モード時、或いは電力の供給を受ける給電モード時のいずれの場合でも、受電コイル20を介して整流回路22に電流が流れる。この際、給電モード時での電力伝送の高効率化を優先するために、整流回路22で用いる整流素子としては、例えばショットキバリアダイオードなどの順方向電圧が低いものが用いられる。
【0195】
従って、通信モード時において無線受電装置200のラインL3及びL4を介して受けた受信信号の振幅が大きい場合には、整流回路22の整流素子がオン状態となり、その振幅のピーク値を抑えてしまう。よって、この際、ASK変調方式を採用してデータ通信を行うと、無線受電装置200のラインL3及びL4を介して受けた受信信号の振幅が小さくなる場合があり、ASK復調部2401での復調精度が低下する虞がある。
【0196】
図21は、かかる点に鑑みて為された、無線受電装置200の他の構成を示す回路図である。尚、図21に示す構成では、キャパシタCs1、Cs2及び抵抗R17を新たに追加した点を除く他の構成は図1に示されるものと同一である。
【0197】
図21に示す構成では、キャパシタCs1の一端がラインL3に接続されており、他端がキャパシタCs2の一端に接続されている。キャパシタCs2の他端は整流回路22に接続されている。当該キャパシタCs2と並列に抵抗R17が接続されている。また、図21に示す構成では、キャパシタCs1とキャパシタCs2との接続点RF0に接続されているラインL3aを、制御部24に含まれるASK復調部2401及び負荷変調部2402に接続している。
【0198】
すなわち、図21に示す構成では、直列に接続されたキャパシタCs1及びCs2をラインL3及び整流回路22に挿入する。そして、キャパシタCs1及びCs2の接続点RF0をラインL3aを介してASK復調部2401及び負荷変調部2402に接続している。尚、キャパシタCs1及びCs2各々の静電容量、抵抗R17の抵抗値は、交流磁界の周波数を13.56MHz、受電コイル20のインダクタンスを1.1マイクロヘンリ、共振キャパシタ21の静電容量を120ピコファラッドとした場合、例えば、
Cs1:68ピコファラッド
Cs2:150ピコファラッド
R17:100キロオーム
となる。
【0199】
よって、図21に示すキャパシタCs1及びCs2によれば、整流回路22の整流素子がオン状態になることで生じる振幅低下がラインL3aに反映されることはない。これにより、通信モード時には、受電コイル20、ラインL3、L3a及びL4を介して受信した受信信号の振幅低下が抑えられる。更に、抵抗R17により、接続点RF0には直流の電位が印加される。
【0200】
従って、ASK復調部2401には、ラインL3a及びL4を介してASK復調に必要となる振幅を有する受信信号が供給されるので、精度の高いASK復調を行うことが可能となる。この際、抵抗R17は、接続点RF0に直流の電位を与えるものの、高抵抗(例えば100キロオーム)である為、給電モード時において電力損失は生じない。
【0201】
尚、接続点RF0に直流の電位を与える方法としては、抵抗R17に代えてプルアップ抵抗を介して接続点RF0に直流の電位を印加しても良い。
【0202】
また、図4に示す一例では、安定化回路233で生成された安定化電圧Vgを、遮断回路235、出力放電回路236及び外部端子Tpを介して出力電圧VGとして外部出力しているが、安定化電圧Vgを直接、外部端子Tpを介して外部出力しても良い。この際、制御部24、安定化回路233及び234を1つの半導体チップに形成しても良い。
【0203】
図22は、制御部24、安定化回路233及び234を含む半導体チップCHPが搭載されているLSI(large-scale integrated circuit)パッケージPKGでの配線形態の一例を示す図である。
【0204】
半導体チップCHP内において、図8に示す安定化回路233のトランジスタQP0、QP1及びQP3各々のソース、抵抗R13の一端、及びオペアンプOP2の反転入力端は、配線Laを介してボンディングパッドPD1に接続されている。また、半導体チップCHP内において、図8に示す安定化回路234のトランジスタQP0、QP1及びQP3各々のソース、抵抗R13の一端、及びオペアンプOP2の反転入力端は、配線Lbを介してボンディングパッドPD2に接続されている。
【0205】
つまり、半導体チップCHP内では、図22に示すように、安定化回路233が受給電圧JVを受ける為の配線La及びボンディングパッドPD1と、安定化回路234が受給電圧JVを受ける為の配線Lb及びボンディングパッドPD2とが電気的に分離している。
【0206】
また、安定化回路233のラインL0は、ボンディングパッドPD3に接続されている。
【0207】
更に、半導体チップCHP内において、制御部24に含まれるASK復調回路2401はボンディングパッドPD3及びPD4に接続されており、負荷変調回路2402も当該ボンディングパッドPD3及びPD4に接続されている。
【0208】
LSIパッケージPKG内では、ボンディングパッドPD1と外部端子TM1とが配線W1によって接続されており、ボンディングパッドPD2と外部端子TM1とが配線W2によって接続されている。また、ボンディングパッドPD3と外部端子Tpとが配線W3によって接続されている。更に、ボンディングパッドPD4と外部端子TM2とが配線W4によって接続されており、ボンディングパッドPD5と外部端子TM3とが配線W5によって接続されている。尚、配線W1~W5はボンディングワイヤ、或いはLSIパッケージPKGとしてCSP(Chip Size Package)を採用した場合には、再配線層を利用した配線からなる。
【0209】
LSIパッケージPKGの外部端子TM1はラインL5に接続され、外部端子TM2はラインL3に接続され、外部端子TM3はラインL4に接続されている。
【0210】
ここで、無線受電装置200では、前述したように通信モード及び給電モードのいずれの動作時においても受電コイル20を介して整流回路22に電流が流れる。よって、給電モード時、或いは通信モード及び給電モード間の切換時においてラインL5を含む電流経路に大きな電流変動が生じ、電圧降下量が変動する。
【0211】
そこで、LSIパッケージPKG及び半導体チップCHP内では、ラインL5からの受給電圧JVを安定化回路233及び234の各々に供給する配線経路を、第1の経路(W1、PD1、La)と、第2の経路(W2、PD2、Lb)とに分離している。
【0212】
これにより、電流変動に伴う電圧降下量が抑えられるので、例えば通信回路(2401、2402)を動作させる電源電圧としての安定化電圧Vtの変動量が抑えられる。よって、通信モード時において安定した通信動作を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0213】
10 送電回路
12 送電コイル
13、24 制御部
20 受電コイル
23 受電回路
231 過大磁界保護回路
233、234 安定化回路
235 遮断回路
236 出力放電回路
300 無線電力伝送システム
図1
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図22