(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003003
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】基板支持部及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221228BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103904
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 秀翔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠人
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸
(72)【発明者】
【氏名】金澤 和志
(72)【発明者】
【氏名】武藤 亮磨
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BD03
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA04
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB12
5F131EB13
5F131EB22
5F131EB26
5F131EB82
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より多くの高周波電力を印化する処理でも、基板支持部の温度制御効率を高める基板支持部及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板支持部11は、セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャック111と、静電チャックを支持する基台122と、熱交換媒体が流れる流路123と、を有する。流路123は、基台122に形成され、静電チャック111側に開口する開口部123aを有する、係る構成により、流路123の上面は、静電チャック111のセラミックスで形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
前記静電チャックを支持する基台と、
熱交換媒体が流れる流路と、
を有し、
前記流路の上面はセラミックスで形成されている、
基板支持部。
【請求項2】
前記基台と前記静電チャックとは、異なる材質であり、
前記流路は前記基台に形成され、前記静電チャック側に開口する、
請求項1に記載の基板支持部。
【請求項3】
前記流路の開口以外の前記基台と前記静電チャックとの間は金属ロウ付けにより接合されている、
請求項2に記載の基板支持部。
【請求項4】
前記基台と前記静電チャックとは、異なる材質であり、
前記流路は少なくとも前記静電チャックに形成され、前記基台側に開口する、
請求項1に記載の基板支持部。
【請求項5】
前記流路は前記静電チャックと前記基台との対向する位置に形成され、連通する、
請求項4に記載の基板支持部。
【請求項6】
前記流路の開口以外の前記基台と前記静電チャックとの間は金属ロウ付け又は焼結により接合されている、
請求項4又は5に記載の基板支持部。
【請求項7】
前記基台と前記静電チャックとの外周は、クランプにより固定されている、
請求項4~6のいずれか一項に記載の基板支持部。
【請求項8】
前記基台と前記静電チャックとは、同じ材質であり、一体として形成されている、
請求項1に記載の基板支持部。
【請求項9】
前記流路の隔壁の厚さは、2~20mmである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の基板支持部。
【請求項10】
前記流路の隔壁の厚さは、1~2mmである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の基板支持部。
【請求項11】
熱交換媒体は、液体である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の基板支持部。
【請求項12】
チャンバと、前記チャンバ内にて基板を載置する基板支持部と、を有する基板処理装置であって、
前記基板支持部は、
セラミックスで形成され、被処理基板を載置する静電チャックと、
前記静電チャックを支持する基台と、
温調媒体を通流させる流路と、
を有し、
前記流路の上面はセラミックスで形成されている、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板支持部及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、被処理基板を載置する基板支持部を有する基板処理装置を提案する。基板支持部は、温度制御された冷媒が流れる流路を配置した基台と、プラズマ耐性が高いセラミックス内に電極を内包し、載置面に被処理基板を載置する静電チャックと有し、基台と静電チャックとの間を接着層で接着させた構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チラーユニットによって温度制御された冷媒を基板支持部の流路に流すことで、静電チャック上の被処理基板が所望の温度に冷却されるが、近年、基板支持部に印加される高周波電力が増加している。このため、被処理基板へのプラズマからの入熱が増加し、被処理基板の温度制御が不十分になる場合がある。
【0005】
本開示は、基板支持部の温度制御効率を高めることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、前記静電チャックを支持する基台と、熱交換媒体が流れる流路と、を有し、前記流路の上面はセラミックスで形成されている基板支持部が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、基板支持部の温度制御効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図3】実施形態に係る基板支持部と比較例に係る基板支持部との構成の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る基板支持部の温度変化による変形吸収の一例を示す図。
【
図6】実施形態に係る基板支持部と比較例に係る基板支持部との一部を拡大した図。
【
図7】
図7(a)は第1実施形態に係る基板支持部、
図7(b)は第2実施形態に係る基板支持部、
図7(c)は第3実施形態に係る基板支持部の構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[プラズマ処理システム]
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。プラズマ処理システムは、容量結合のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は基板処理装置の一例である。容量結合のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、基台122と静電チャック111とを含む。基板支持部11は、更にリングアセンブリ112を含む。静電チャック111は、基台122の上部に配置されており、被処理基板(ウェハ)(以下、基板Wという。)を支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。静電チャック111の環状領域111bは、平面視で静電チャック111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、静電チャック111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、静電チャック111の中央領域111a上の基板Wを囲むように静電チャック111の環状領域111b上に配置される。実施形態において、基台122は、導電性部材を含む。基台122の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック111は、基台122の上に配置される。静電チャック111の上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、基板支持部11は、静電チャック111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、流路123、ヒータ、伝熱媒体、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。実施形態では、基台122に流路123が形成されているが、これに限らない。流路123には、熱交換媒体が流れる。熱交換媒体は、液体である。また、基板支持部11は、基板Wの下面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0012】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0013】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0014】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0015】
実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0016】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0017】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0018】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程を、プラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0019】
[基板支持部]
基板支持部11に形成された流路123について、
図2を参照しながら更に説明する。
図2は、
図1のA-A面から流路123を見た図であり、基台122を上方向から見た平面図である。
図2には、基台122の上面122cが円板状に示されている。流路123は、基台122に形成され、基台122の上面122cにて静電チャック111側に開口している。つまり、流路123は、基台122に渦巻き状に形成され、上面に渦巻き状に開口した開口部123aを有する。これにより、基板支持部11の基板支持面111a(
図1参照)の全域において、基板Wの温度を制御することができる。なお、流路123の形状は渦巻き状に限らず、放射状等であってもよい。
【0020】
基板支持部11の構成について、
図3を参照しながら更に説明する。
図3は、
図3(a)の比較例に係る基板支持部11'と、
図3(b)の実施形態に係る基板支持部11との構成の一例を示す図である。
図3(a)及び(b)のいずれも基板支持部11'及び基板支持部11の右半分の構成を拡大して示し、左半分の構成は省略している。
【0021】
図3(a)の比較例に係る基板支持部11'では、基台122と静電チャック111との間に接着層121が介在している。接着層121は、樹脂で形成されている。比較例に係る基板支持部11'では、接着層121は液体又はシート状の樹脂である。このため、基台122と静電チャック111とを点又は線に近い小さな面積で接着することはできず、基台122の上面122cと静電チャック111の下面111cとを全面で接着層121により接着する構成を有する。
【0022】
係る構成では、接着層における熱抵抗、基台122と接着層121の境界面における熱抵抗、及び接着層121と静電チャック111の境界面における熱抵抗が発生する。これらの熱抵抗により流路123を流れる冷媒による静電チャック111の冷却効率が悪くなり、静電チャック111の温度を効率よく低下させることができない場合がある。
【0023】
これに対して、
図3(b)の実施形態に係る基板支持部11では、基台122と静電チャック111との間に接着層が存在しない。係る構成では、接着層における熱抵抗がない。かつ、基台122と静電チャック111との境界面が開口部123aを除いた面になるため当該境界面の面積が比較例の境界面よりも小さくなり、基台122と静電チャック111との境界面における熱抵抗を小さくでき、断熱効果を低減できる。これにより、流路123に流す冷媒による静電チャック111の冷却効率を高めることができる。また、接着層が存在しないため、接着層の膜厚により基板Wの温度の面内均一性が悪くなる影響をなくすことができる。これにより、静電チャック111の温度制御効率を高め、かつ、基板Wの温度分布を均一にすることができる。
【0024】
この結果、基板Wの温度を均一かつ十分に低下させることができるため、より大きなRF電力の投入を可能にする。これにより、基板Wの処理時のエッチングレートを高めることができる。投入するRF電力の大きさを維持する場合には、接着層をなくし、基板Wの冷却効率が高くなった分、冷媒を供給するチラーユニットの冷却能力を小さくできる。これにより、チラーユニットの大きさを小さくすることができ、フットプリントを小さくできる。なお、以上では、冷媒による基板Wの冷却について説明したが、冷却に限らず基板Wの加熱も含めて、冷媒及び熱媒を一例とする熱交換媒体による基板Wの温度調整において、基板支持部11の温度制御効率を高めることができる。
【0025】
以下では、第1実施形態に係る基板支持部11、第2実施形態に係る基板支持部11、第3実施形態に係る基板支持部11の順に基板支持部11の構成例について説明する。いずれの実施形態に係る基板支持部11も接着層を有さず、温度制御効率を高めることができる。
【0026】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る基板支持部11の構成例について、
図3(b)に加えて、
図4~
図6を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態に係る基板支持部11を示す
図3(b)のB領域を拡大した図である。
図5は、実施形態に係る基板支持部11の温度変化による変形吸収の一例を示す図である。
図6(b)は、第1実施形態に係る基板支持部11の一部(
図3(b)のB領域)を拡大し、
図6(a)の比較例に係る基板支持部11'の構成と比較して示した図である。なお、
図5及び
図6(b)では、基台122と静電チャック111との金属ロウ付けによる接合部の図示を省略している。
【0027】
図3(b)に示すように、第1実施形態に係る基板支持部11は、静電チャック111と基台122とを有し、樹脂の接着層を有さない構造である。静電チャック111は、基板Wを静電吸着により保持する。基台122は、静電チャック111の下に設けられ、静電チャック111を支持する。
【0028】
基台122と静電チャック111とは、異なる材質であり、基台122は、例えばアルミニウム等の金属から形成され、静電チャック111はアルミナ(Al2O3)等のセラミックスにより形成されている。第1実施形態に係る基板支持部11では、基台122のアルミニウムと静電チャック111のセラミックスとが直接接合される。
【0029】
基台122は、熱交換媒体が流れる流路123を有する。流路123は基台122に形成され、静電チャック111側に開口する開口部123aを有する。基台122と静電チャック111との間に接着層は存在しない。係る構成により、流路123の上面は静電チャック111のセラミックスで形成されている。
【0030】
静電チャック111の下面111cは、円板状に形成されている。基台122の上面122cは、静電チャック111の下面111cと同一の直径を有する円板状に形成されている。基台122の上面122cには流路123の開口部123aが形成され、静電チャック111側に開口している。よって、流路123の開口部123a以外の基台122の上面122cと静電チャック111の下面111cとの間が金属126のロウ付けにより接合される。
【0031】
図3(a)に示すように、比較例に係る基板支持部11'は接着層121を有する。接着層121は液体又はシート状の樹脂で形成され、静電チャック111と基台122とを面で接着する。つまり、比較例に係る基板支持部11'では、静電チャック111の下面111cと基台122の上面122cとを概ね全面で接着している。
【0032】
これに対して、本実施形態に係る基板支持部11では、基台122の上面122cと静電チャック111の下面111cとの間を金属126のロウ付けにより接合する。本実施形態に係る基板支持部11は、金属126のロウ付けにより基台122と静電チャック111との接合面積が小さくても静電チャック111を基台122に十分に接合できる。したがって、
図3(b)に示す基台122の隔壁Cは、2~20mmの幅であってもよいし、1~2mmの幅であってもよい。隔壁Cの上面122cと静電チャック111の下面111cとの間を金属126のロウ付けにより接合することで、流路123の開口部123aを静電チャック111の下面111cにより塞ぎ、流路123から冷媒が漏れることを防ぐ。係る構成により、本実施形態に係る基板支持部11では、流路123の上面は静電チャック111のセラミックスで形成されている。
【0033】
図3に加えて
図1及び
図2を参照すると、流路123には、導入流路IN及び排出流路OUTが基台122の下面側から接続されている。導入流路INは、流路123に冷媒を導入し、排出流路OUTは、流路123を通流する冷媒を排出する。導入流路INは、例えば、導入流路INの延伸方向が流路123を通流する冷媒の流れ方向に直交するように基台122の下面側から延伸し、流路123に接続される。また、排出流路OUTは、例えば、排出流路OUTの延伸方向が流路123を通流する冷媒の流れ方向に直交するように基台122の下面側から延伸し、流路123に接続される。このようにして、基台122の流路123に冷媒を通流させることにより、基板支持部11の温度を制御可能に構成されている。
【0034】
なお、
図3(b)に示すように、基板支持部11には、伝熱ガスのガス流路125が形成され、ガス流路125からヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスが基板Wの裏面に供給されるようになっている。ガス流路125は、基台122に設けられたスリーブ124の内部の空間と静電チャック111を貫通する貫通孔とを連通して形成される。
【0035】
(接合方法の一例)
次に、接合方法の一例について、
図3(b)のB領域を拡大した
図4を参照しながら説明する。第1実施形態に係る基板支持部11では、静電チャック111の下面111cに基台122の上面122c(すなわち、流路123間の隔壁Cの上面122c)を接合する。
図4に示すように、静電チャック111の下面111cの、隔壁Cの上面122cに対応する位置に座繰部111c1を形成する。セラミックスで形成された座繰部111c1とアルミニウム等の金属とを直接ロウ付けで接合すると接合不良が発生しやすい。したがって、金属ロウ付けする前に、金属の薄膜で座繰部111c1のセラミックス部分を覆うメタライズを行うことが好ましい。
【0036】
メタライズ後に、隔壁Cの上面122cを座繰部111c1に挿入しながら、座繰部111c1と隔壁Cの上面122cとをアルミニウム等の金属126によりロウ付けして接合する。金属ロウ付けは、接着剤よりもプラズマ耐性及び漏液耐性が高い。よって、これにより、静電チャック111と基台122との剥離が生じず、かつ、流路123からの漏液のない基板支持部11を製造できる。ただし、基台122の隔壁Cと静電チャック111との接合方法は、金属ロウ付けに限らず、他の接合方法を用いてもよい。
【0037】
接合方法の他の方法としては、金属ロウ付けの替わりに焼結(例えば無機系焼結)により静電チャック111と基台122とを接合させてもよい。無機系焼結とは、シリカ系の焼結助剤を静電チャック111と基台122とに塗布してホットプレス等で再度焼結する方法である。これにより、見かけ上、静電チャック111と基台122との界面なく接合することが可能である。このため、界面熱抵抗を低減させることができる。
【0038】
図3(a)に示す比較例の基板支持部11'の場合、プラズマからの入熱等により基板支持部11'が高温になり静電チャック111及び基台122が熱膨張したときに、静電チャック111と基台122との熱膨張差を樹脂の接着層121により吸収していた。
【0039】
これに対して、接着層がない本実施形態に係る基板支持部11では、
図5(b)に示すように、流路123間の隔壁Cを可能な限り薄くし、1~2mmとする。これにより、基板支持部11が高温になり静電チャック111及び基台122が熱膨張したときに、熱膨張前の
図5(b)の上段から熱膨張後の下段に示すように、静電チャック111と基台122との熱膨張差を流路123自身が変形することにより吸収する。このとき静電チャック111と基台122との熱膨張差により変形する力よりも流路123を流れる冷媒の圧力ははるかに小さい。このため、隔壁Cが1~2mmあれば、流路123の変形を許容しながら流路123内に冷媒を流すことができる。
【0040】
以上では、プラズマからの入熱等により基板支持部11が高温になる場合について説明した。ただし、これに限らず、チラーユニットから冷媒を流すことによる冷却がもたらす静電チャック111と基台122との熱膨張差についても流路123(隔壁C)の変形により吸収できる。
【0041】
以上、第1実施形態に係る基板支持部11によれば、接着層をなくしたことにより、静電チャック111と基台122との界面の熱抵抗を下げ、冷媒による冷却効率を向上させる等、基板支持部11の温度制御効率を高めることができる。
【0042】
静電チャック111と基台122との熱膨張差を吸収する緩衝材としての接着層をなくしたことにより静電チャック111と基台122との接合面が剥離し易くなることが懸念される。これを回避するために、静電チャック111と基台122との接合面の面積を最小限にし、剥離をなくす。すなわち、第1実施形態に係る基板支持部11によれば、基台122に形成された流路123は基台122に埋め込まれておらず、流路123の上面が静電チャック111側に開口する開口部123aを有する。したがって、静電チャック111と基台122との接合面は、隔壁Cの上面に限られる。隔壁Cを1~2mmの厚さに形成することで、静電チャック111と基台122との接合面の面積を少なくし、これにより、静電チャック111と基台122との剥離をなくすことができる。
【0043】
また、セラミックスの静電チャック111とアルミニウムの基台122との熱膨張差は、流路123(隔壁C)の変形により吸収できる。これにより、基板支持部11が高温又は低温に制御された場合であっても静電チャック111と基台122との剥離をなくすことができる。
【0044】
また、
図6(b)に示す第1実施形態に係る基板支持部11では、
図6(a)に示す比較例に係る基板支持部11'の接着層121の厚さ分、静電チャック111の厚さT2(<T1)を厚くすることができる。これにより、熱の拡散層が確保できる。例えば、
図2の渦巻き状の流路123の場合、流路123の上方は冷却され易いため、静電チャック111の中央領域では外周領域よりも冷却効率が高くなる。しかしながら、静電チャック111の厚さを厚くすることで熱が拡散し易くなり、静電チャック111を形成するセラミックスの中央領域から外周側へ熱の拡散が生じる。これにより、基板Wが載置される基板支持面111aにおいて温度の面内均一性を図ることができる。これにより、基板Wの温度の面内均一性を図ることができる。
【0045】
更に、第1実施形態に係る基板支持部11では、流路123の変形を可能にするために隔壁Cを1~2mm程度に薄くする。隔壁Cの上面に接合される静電チャック111の厚さを、
図6(a)に示す比較例と同等又はそれよりも薄くしてもよい。
【0046】
なお、第1実施形態に係る基板支持部11では、基台122の材料として、アルミニウム等の金属材料の替わりに、金属セラミックス含有材料(MMC)又は低線膨張材を用いてもよい。金属の低線膨張材を基台122に用いた場合、メタライズして接合することが可能である。セラミックスの低線膨張材や金属セラミックス含有材料を基台122に用いた場合、メタライズせずに焼結を用いて接合することが可能である。セラミックスの材料の場合、金属ロウ付けが困難であり、メタライズして金属とロウ付けするか、又はセラミックス同士で焼結することになる。
【0047】
図7(a)の基台122の下部に、更に金属プレート140を設けてもよい。基台122及び金属プレート140の外周面を、イットリア(Y
2O
3)等の溶射により保護膜141にて被覆してもよい。これにより、基板支持部11のプラズマ耐性を更に高めることができる。
【0048】
図1~
図6では省略したが、第1実施形態に係る基板支持部11の静電チャック111には、基板を静電吸着させるための直流電圧を印加する吸着電極230が埋設されている。後述する
図7(b)の第2実施形態に係る基板支持部11及び
図7(c)の第3実施形態に係る基板支持部11の静電チャック111には、吸着電極230と、RF電力を印加するRF電極231とが埋設されている。第1実施形態に係る基板支持部11では、RF電力は基台122に印加される。ただし、第1実施形態に係る基板支持部11においても静電チャック111にRF電極231を埋設してもよい。
【0049】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る基板支持部11の構成例について、
図7(b)を参照しながら説明する。
図7(b)は、第2実施形態に係る基板支持部11の構成の一例を示す。第2実施形態に係る基板支持部11では、少なくとも静電チャック111に流路123cが形成されている。流路123cは静電チャック111の下面に、基台122に向けて開口している。
【0050】
図7(b)の例では、基台122は、アルミニウム等の導電性材料から形成されている。本例では、基台122側にも静電チャック111の流路123cの対向位置に流路123dが形成されている。流路123cは、第1実施形態に係る基板支持部11と同様に基台122の上面122cに開口している。ただし、基台122の流路123dは形成されてもよいし、形成されなくてもよい。
【0051】
基台122上に静電チャック111を配置し、流路123cと流路123dの開口同士を合わせて連通させ、静電チャック111の隔壁と基台122の隔壁とを金属126でロウ付けし接合する。流路123cと流路123dとを合わせた状態で形成される流路を、流路123とも称する。係る構成により、流路123の上面はセラミックスで形成される。
【0052】
静電チャック111に設けられた外周の段差に応じて、流路123の高さを変えてもよい。例えば、静電チャック111の中央領域の流路123の高さT4は、静電チャック111の外周領域の流路123の高さT3よりも高く形成してもよい。
【0053】
以上、第2実施形態に係る基板支持部11では、基台122と静電チャック111とは、異なる材質であり、流路123は少なくとも静電チャック111に形成され、基台122側に開口する。流路123は静電チャック111と基台122との対向位置に形成され、連通する。流路123の開口以外の基台122と静電チャック111との間は金属ロウ付け又は焼結により接合されている。
【0054】
これによれば、接着層をなくしたことにより、静電チャック111と基台122との界面の熱抵抗を下げ、冷媒による冷却効率を向上させる等、基板支持部11の温度制御効率を高めることができる。
【0055】
また、基台122を金属セラミックス含有材料(MMC)又は低線膨張材よりも加工性の高い導電性材料で形成することで、製造上の難易度を下げることができ、また、焼成等の接合時に静電チャック111又は基台122が割れることを低減できる。静電チャック111のセラミックス板にはアルミナ等を使用できる。
【0056】
更に、静電チャック111の厚さを厚くしなくても、静電チャック111側に流路123cを設けることで流路123全体の高さを高くすることができる。これにより、流路123の断面積が大きくなるため、圧力損失が小さくなり、冷媒による冷却効率及び基板支持部11の温度制御効率を高めることができる。
【0057】
なお、第2実施形態に係る基板支持部11では、基台122と静電チャック111との外周は、クランプ142により固定されている。これは、製造上、基板支持部11の内部に流路123を封じ切りで形成できなかった場合にも外周側からクランプ142で基台122と静電チャック111とを把持する構造を加えることで流路123からの冷媒の漏液を防止できる。また、クランプ142と金属ロウ付け等の接合との組み合わせにより、金属ロウ付け等による接合面を減らすことで製造を容易にしたり、コストを低減させたりすることができる。
【0058】
第2実施形態においても、流路123の隔壁の厚さは1~2mmであり、流路123の変形が可能である。また、流路123を流れる冷媒等の熱交換媒体は、液体である。
【0059】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る基板支持部11の構成例について、
図7(c)を参照しながら説明する。
図7(c)は、第3実施形態に係る基板支持部11の構成の一例を示す。第3実施形態に係る基板支持部11では、基台122と静電チャック111とは、同じ材質であり、一体として形成されており、一体構造のセラミックス板として構成される。以下、一体構造のセラミックス板を静電チャック111ともいう。セラミックス板の静電チャック111は例えばアルミナにより形成されている。係る構成により、流路123の上面はセラミックスで形成されている。
【0060】
一体構造のセラミックス板の静電チャック111は、内部に流路123を有する。静電チャック111の外周の段差に応じて、流路123の高さを変えてもよい。例えば、静電チャック111の中央領域の流路123の高さT6は、外周領域の流路123の高さT5よりも高く形成してもよい。静電チャック111の内部の流路123の高さを高くすることで、流路123の断面積が大きくなるため、圧力損失が小さくなり、冷媒による冷却効率を高めることができる。
【0061】
内部に流路123を形成して静電チャック111を製造する方法としては、グリーンシート又はロールコンパクション(RC製法)といった積層成型の製造方法を用いることができる。積層成型の製造方法と電極(吸着電極、RF電極)印刷とを組み合わせることで、静電チャック111を一体成型及び焼成し、製造することができる。
【0062】
第3実施形態においても、流路123の隔壁の厚さは1~2mmであり、流路123の変形が可能である。また、流路123を流れる冷媒等の熱交換媒体は、液体である。
【0063】
以上、第3実施形態に係る基板支持部11では、基台122と静電チャック111とは、同じ材質であり、一体として形成される。これによれば、静電チャック111と基台122との界面をなくし、静電チャック111としたことによって熱抵抗を低減し、冷媒による冷却効率を高めることができる。
【0064】
また、碍子類が不要になり、RC製法等によりコストダウンを図ることができる。
【0065】
以上、第1~第3実施形態に係る基板支持部11について説明した。いずれの実施形態に係る基板支持部11においても、接着層をなくし、熱抵抗を下げ、基板Wの温度制御効率を高めることができる。また、接着層を有さないため、プラズマ等により接着層が消耗することを抑制するためのOリング等が不要となる。
【0066】
なお、第1実施形態に係る基板支持部11においても、金属ロウ付けによる接合の替わりに、焼結による接合が可能である。ただし、焼結に耐えうる静電チャック111及び基台122の材質の選定が必要になる場合がある。
【0067】
また、第1及び第3実施形態に係る基板支持部11においても、第2実施形態に係る基板支持部11と同様にクランプ142を使用してよい。更に、第2実施形態に係る基板支持部11において無機接合において流路123を封じ切りで製作できればクランプ142は使用しなくてもよい。
【0068】
今回開示された実施形態に係る基板支持部及び基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0069】
本開示の基板処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【0070】
また、基板処理装置の一例としてプラズマ処理装置を挙げて説明したが、基板処理装置は、基板に所定の処理(例えば、成膜処理、エッチング処理等)を施す装置であればよく、プラズマ処理装置に限定されるものではない。例えば、基板処理装置は、熱ALD装置、プラズマALD装置、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、プラズマCVD装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
21 ガスソース
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
40 排気システム
111 静電チャック
122 基台
123 流路