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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003029
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】リラックス効果促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20221228BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 31/618 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A61K31/165
A61K31/192
A61K31/196
A61K31/618
A61K45/00
A61K31/4406
A61K31/355
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103941
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大森 広太郎
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA22
4C084AA23
4C084NA05
4C084ZA051
4C084ZA052
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086BC17
4C086DA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA05
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206FA31
4C206GA03
4C206GA28
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA05
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、リラックス効果促進効果を有する、身体への適用が可能な組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)カプサイシノイド及び(B)非ステロイド性抗炎症剤の組み合わせは、心理的な覚醒度を抑制及び/又は快適度を向上させ、リラックス効果を促進することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カプサイシノイド、及び(B)非ステロイド性抗炎症剤を含み、心理的に覚醒度を抑制及び/又は快適度を向上させるために用いられる、リラックス効果促進剤。
【請求項2】
前記(B)成分が、ロキソプロフェン及びその塩、ジクロフェナク及びその塩、並びに、サリチル酸グリコール及びサリチル酸メチルからなる群より選択される、請求項1に記載のリラックス効果促進剤。
【請求項3】
さらに(C)モノテルペンを含有する、請求項1又は2に記載のリラックス効果促進剤。
【請求項4】
さらに(D)ニコチン酸のエステル誘導体、並びに(E)トコフェロール及びその誘導体からなる群より選択される成分を含有する、請求項1~3のいずれかに記載のリラックス効果促進剤。
【請求項5】
副交感神経亢進剤である、請求項1~4のいずれかに記載のリラックス効果促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心理的に覚醒度を抑制及び/又は快適度を向上させるために用いられるリラックス効果促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレス原因の多い現代社会では、ストレスを原因とする心理状態の悪化による影響が社会問題となっている。心理状態が悪化すると、うつ病などの精神的疾患や、身体的疾患も招来するため、ストレス緩和により心理状態を向上させることは、これらの疾患を未然に防ぎ、QOLを高める上で重要である。
【0003】
ストレス緩和のための日常行動として身体運動が有効であることが、様々な論文で支持されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2等)。また、身体運動により実際にストレス緩和され心理的状態が向上することの客観的尺度として覚醒度及び快適度に基づく二次元気分尺度も開発されている(非特許文献3)。この尺度は、TDMS-ST二次元気分尺度と呼ばれており、被験者による心理状態(気分)のセルフモニタリングを通して、心の「活性度」と「安定度」を測る。尺度の信頼性と妥当性が確認されており、8項目の質問に答えることで測定時の心理状態を数量化することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】健康科学 (13), p1-7, 1991
【非特許文献2】Journal of the Society of Biomechanisms 35(1), 15-20, 2011
【非特許文献3】Bull. Inst. Health & Sport Sci., Iniv. of Tsukuba 26: 27-36, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多忙な現代人は、ストレス原因に晒される一方で、身体運動のためのまとまった時間を確保することが難しい。このため、より手軽な方法でリラックス効果を得られることが望ましい。例えば、身体に適用することでリラックス効果を促進できる組成物があれば、ストレス原因に晒される多忙な現代人にとって有用なリラックス手段となる。
【0006】
そこで、本発明は、リラックス効果促進効果を有する、身体への適用が可能な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、カプサイシノイドに非ステロイド性抗炎症薬を組み合わせて身体へ適用することによって、TDMS-ST二次元気分尺度に基づく心理的覚醒度が抑制及び/又は快適度が向上し、これによってリラックス効果が促進できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)カプサイシノイド、及び(B)非ステロイド性抗炎症剤を含み、心理的に覚醒度を抑制及び/又は快適度を向上させるために用いられる、リラックス効果促進剤。
項2. 前記(B)成分が、ロキソプロフェン及びその塩、ジクロフェナク及びその塩、並びに、サリチル酸グリコール及びサリチル酸メチルからなる群より選択される、項1に記載のリラックス効果促進剤。
項3. さらに(C)モノテルペンを含有する、項1又は2に記載のリラックス効果促進剤。
項4. さらに(D)ニコチン酸のエステル誘導体、並びに(E)トコフェロール及びその誘導体からなる群より選択される成分を含有する、項1~3のいずれかに記載のリラックス効果促進剤。
項5. 副交感神経亢進剤である、項1~4のいずれかに記載のリラックス効果促進剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リラックス効果促進効果を有する、身体への適用が可能な組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のリラックス効果促進剤は、(A)カプサイシノイド(以下、「(A)成分」と表記することもある)、及び(B)非ステロイド性抗炎症薬(以下、「(B)成分」と表記することもある)を含み、心理的に覚醒度を抑制及び/又は快適度を向上させるために用いられることを特徴とする。さらに、本発明のリラックス効果促進剤は、(C)モノテルペン(以下、「(C)成分」と表記することもある)を含むこともでき、また、(D)ニコチン酸のエステル誘導体(以下、「(D)成分」と表記することもある)並びに(E)トコフェロール及びその誘導体(以下、「(E)成分」と表記することもある)からなる群より選択される成分を含むこともできる。以下、本発明のリラックス効果促進剤について詳述する。
【0011】
(A)カプサイシノイド
本発明のリラックス効果促進剤は、(A)成分としてカプサイシノイドを含有する。カプサイシノイドとは、N-アシルワニリルアミドであり、血行促進作用等が知られている公知の成分である。
【0012】
カプサイシノイドにおけるアシル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、カプサイシノイドにおけるアシル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば5~15が挙げられ、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくは6~11が挙げられる。
【0013】
カプサイシノイドとして、具体的には、ノナン酸バニリルアミド;及びカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン等のカプサイシン類等が挙げられ、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくはノナン酸バニリルアミドが挙げられる。
【0014】
本発明のリラックス効果促進剤において、(A)成分として、1種のカプサイシノイドを単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明のリラックス効果促進剤における(A)成分の含有量は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、例えば、0.0015~0.1重量%、好ましくは0.003~0.05重量%、より好ましくは0.005~0.02重量%、更に好ましくは0.01~0.02重量%が挙げられる。
【0016】
(B)非ステロイド性抗炎症剤
本発明のリラックス効果促進剤は、(A)成分として非ステロイド性抗炎症剤を含有する。非ステロイド性抗炎症剤には単独でリラックス効果を促進する効果はないが、(A)成分と組み合わされることで、顕著なリラックス効果促進作用を奏する。
【0017】
本発明のリラックス効果促進剤において使用される非ステロイド系抗炎症剤としては、薬学的に許容されるものであることを限度として、特に制限されないが、例えば、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、フェルビナク、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン等が挙げられる。
【0018】
また、非ステロイド系抗炎症剤として使用される前記化合物は、塩の形態をとり得るものについては、塩の形態で使用してもよい。例えば、ジクロフェナク、ロキソプロフェン等の場合であれば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の形態で使用してもよい。
【0019】
本発明のリラックス効果促進剤において、(B)成分として1種の非ステロイド系抗炎症剤を単独で使用してもよく、また2種以上の非ステロイド系抗炎症剤を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これらの非ステロイド系抗炎症剤の中でも、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくは、ロキソプロフェン及びその塩、ジクロフェナク及びその塩、並びに、サリチル酸グリコール及びサリチル酸メチルが挙げられ;好ましくは、ロキソプロフェン及びその塩、ジクロフェナク及びその塩、並びに、サリチル酸グリコールが挙げられ;より好ましくはロキソプロフェン及びその塩、並びに、ジクロフェナク及びその塩が挙げられ;さらに好ましくは、ロキソプロフェンの塩及びジクロフェナクの塩が挙げられる。
【0021】
本発明のリラックス効果促進剤における非ステロイド系抗炎症剤の配合量については、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、例えば0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%が挙げられる。より具体的には、使用する非ステロイド系抗炎症剤の種類に応じた配合量の好適な例として、以下の範囲が挙げられる。
ロキソプロフェン及び/又はその塩を使用する場合:通常0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは0.8~2重量%、さらに好ましくは1~1.5重量%
ジクロフェナク及び/又はその塩を使用する場合:通常0.1~10重量%、好ましくは0.3~5重量%、より好ましくは0.5~2重量%、さらに好ましくは0.8~1.5重量%
サリチル酸グリコール及び/又はサリチル酸メチルを使用する場合:通常0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは2~3重量%
【0022】
(A)成分と(B)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量として、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくは1~1500重量部、より好ましくは4~800重量部が挙げられる。より具体的には、使用する非ステロイド系抗炎症剤の種類に応じた配合比率の好適な例として、以下の範囲が挙げられる。
ロキソプロフェン及び/又はその塩を使用する場合:通常8~800重量部、好ましくは45~400重量部、より好ましくは50~150重量部、さらに好ましくは50~125重量部、一層好ましくは90~100重量部
ジクロフェナク及び/又はその塩を使用する場合:通常8~800重量部、好ましくは25~400重量部、より好ましくは45~150重量部、さらに好ましくは50~120重量部、一層好ましくは80~90重量部
サリチル酸グリコール及び/又はサリチル酸メチルを使用する場合:通常8~800重量部、好ましくは80~400重量部、より好ましくは120~250重量部、一層好ましくは190~220重量部
【0023】
(C)モノテルペン
本発明のリラックス効果促進剤は、リラックス効果をより一層高めることを目的として、さらに、(C)成分としてモノテルペンを含有することができる。
【0024】
モノテルペンとは、イソプレン単位2個からなる炭素数10個のテルペノイド化合物である。本発明のリラックス効果促進剤において使用されるモノテルペンとしては、特に制限されないが、例えば、メントール、リモネン、メントン、カルボン、ジヒドロカルボン、ピネン、ゲラニオール、リナロール、チモール、ボルネオール、ペリルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、カンフル、シネオール等が挙げられる。本発明において使用されるモノテルペンは、光学異性体が存在する場合、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。
【0025】
また、本発明のリラックス効果促進剤は、(C)成分として、モノテルペンを含む精油を使用してもよい。モノテルペンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。
【0026】
本発明のリラックス効果促進剤において、(C)成分として、1種のモノテルペンを単独で使用してもよく、また2種以上のモノテルペンを組み合わせて使用してもよい。(C)成分の中でも、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくはメントールが挙げられる。
【0027】
本発明のリラックス効果促進剤が(C)成分を含む場合における(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、1~10重量%が挙げられ、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくは2~10重量%、より好ましくは2.5~10重量%、さらに好ましくは3~10重量%、3~8重量%、又は3~6重量%が挙げられる。なお、(C)成分として、モノテルペンを含有する精油を使用する場合、本発明のリラックス効果促進剤におけるモノテルペンの含有量が前記範囲を充足するように、精油中に含まれる前記テルペンの量に応じて、配合する精油の量を適宜設定すればよい。
【0028】
(D)ニコチン酸のエステル誘導体
本発明のリラックス効果促進剤は、リラックス効果をより一層高めることを目的として、さらに、(D)成分としてニコチン酸のエステル誘導体を含有することができる。ニコチン酸のエステル誘導体は、細胞賦活作用等が知られている公知の成分である。
【0029】
ニコチン酸のエステル誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、ニコチン酸メチルエステル等が挙げられる。
【0030】
本発明のリラックス効果促進剤において、(D)成分として、1種のニコチン酸のエステル誘導体を単独で使用してもよく、また2種以上のニコチン酸のエステル誘導体を組み合わせて使用してもよい。(D)成分の中でも、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくはニコチン酸ベンジルエステルが挙げられる。
【0031】
本発明のリラックス効果促進剤が(D)成分を含む場合における(D)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.002~0.1重量%が挙げられ、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくは0.004~0.1重量%、より好ましくは0.008~0.1重量%、さらに好ましくは0.01~0.1重量%、0.01~0.05重量%、又は0.01~0.03重量%が挙げられる。
【0032】
(E)トコフェロール及びその誘導体(トコフェロール類)
本発明のリラックス効果促進剤は、リラックス効果をより一層高めることを目的として、さらに、(E)成分としてトコフェロール及びその誘導体(以下において、「トコフェロール類」とも記載する)を含有することができる。トコフェロールは、ビタミンEとしても知られている公知の成分である。
【0033】
トコフェロールとしては、d体又はdl体のいずれであってもよく、またα、β、γ、δの構造のいずれであってもよい。トコフェロールの具体例としては、d-α-トコフェロール、d-β-トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、l-α-トコフェロール、l-β-トコフェロール、l-γ-トコフェロール、l-δ-トコフェロール、それらの混合物であるdl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、dl-δ-トコフェロール等が挙げられる。
【0034】
トコフェロールの誘導体とは、トコフェロールと同じ骨格を有し、トコフェロールに置換基を付加することによって得られる化合物である。
【0035】
トコフェロールの誘導体は、トコフェロールと同様に、d体又はdl体のいずれであってもよく、またα、β、γ、δの構造のいずれであってもよい。トコフェロールの誘導体の種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、トコフェロールと有機酸とのエステル等が挙げられる。トコフェロールと有機酸とのエステルとして、具体的には、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロールリノレン酸エステル等が挙げられる。
【0036】
本発明のリラックス効果促進剤において、(E)成分として、1種のトコフェロール類を単独で使用してもよく、また2種以上のトコフェロール類を組み合わせて使用してもよい。(E)成分の中でも、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくはトコフェロールの誘導体、より好ましくはトコフェロールと有機酸とのエステル、さらに好ましくはトコフェロール酢酸エステルが挙げられる。
【0037】
本発明のリラックス効果促進剤が(E)成分を含む場合における(E)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.02~2重量%が挙げられ、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくは0.04~2重量%、より好ましくは0.08~2重量%、さらに好ましくは0.1~2重量%、0.1~1重量%、0.1~0.5重量%、又は0.1~0.3重量%が挙げられる。
【0038】
その他の成分
本発明のリラックス効果促進剤には、本発明の効果を妨げない限り、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。本発明のリラックス効果促進剤に配合可能な他の薬理成分については、特に制限されないが、例えば、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、生薬エキス等が挙げられる。
【0039】
更に、本発明のリラックス効果促進剤は、前述する成分の他に、必要に応じて、基剤及び/又は添加剤を含むことができる。
【0040】
基剤としては、水、一価低級(炭素数1~5)アルコール、多価アルコール等の水性基剤、及び油性基剤が挙げられ、添加剤としては、pH調節剤、界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、キレート剤、増粘剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0041】
上記の基剤の中でも、リラックス効果をより一層高める観点から、好ましくは、水及び一価低級アルコールが挙げられ、より好ましくは水及びエタノールが挙げられる。本発明のリラックス効果促進剤が水を含む場合、水エタノールの含有量としては、例えば10~70重量%、好ましくは15~60重量%、より好ましくは20~50重量%、より好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは25~30重量%が挙げられる。本発明のリラックス効果促進剤がエタノールを含む場合、エタノールの含有量としては、例えば30~90重量%、好ましくは40~85重量%、より好ましくは50~80重量%、より好ましくは60~75重量%、さらに好ましくは65~75重量%が挙げられる。
【0042】
製剤形態
本発明のリラックス効果促進剤の製剤形態については、身体に適用可能であることを限度として特に制限されず、典型的には外用剤として製剤化することができる。本発明のリラックス効果促進剤の製剤形態の具体的例としては、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液剤又はゲル剤が挙げられ、特に好ましくは液剤が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0043】
用途
本発明のリラックス効果促進剤は、心理的に覚醒度を抑制及び/又は快適度を向上させることでリラックス効果を促進する目的で用いられる。
【0044】
心理的な覚醒度及び快適度は、TDMS-ST(Two-Dimensional Moods Scale-Short Term)二次元気分尺度として知られている、心理状態を数量化する尺度である。この尺度により、被験者による心の「活性度」と「安定度」を測ることができ、その信頼性と妥当性が確認されている。つまり、心理的な覚醒度の抑制及び/又は快適度の向上を確認することで、リラックス効果の促進を確認することができる。
【0045】
また、本発明のリラックス効果促進剤は、副交感神経を亢進することもできるため、副交感神経亢進剤として用いることもできる。
【0046】
従って、本発明のリラックス効果促進剤の具体的な適用対象としては、心理的なストレスがありその緩和を要する人が挙げられる。
【0047】
本発明のリラックス効果促進剤は、心理的側面からリラックス効果を促進することができるため、上記の(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される(C)成分、(D)成分及び/又は(E)成分に基づく公知の作用効果の享受を要する身体的症状がない人に対して好ましく適用される。当該公知の作用効果の享受を要する身体的症状としては、肩痛(肩こりを含む)、腰痛、神経痛、筋肉痛などの身体的疼痛が挙げられる。しかしながら、本発明のリラックス効果促進剤は、心理的なストレスに加えて上記の身体的症状もある人に対して適用し、心理的側面と身体的側面との両方をリラックスさせる目的で用いることも許容する。
【0048】
本発明のリラックス効果促進剤が外用される場合、適用部位としては、好ましくは、神経が集中している首及び/又はその周辺(例えば、肩、背中、後頭部等)が挙げられる。
【実施例0049】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
表1に示す各成分を量り取り、撹拌して溶解させ、被験サンプル(液剤)を調製した。調製した被験サンプルを、スポンジ塗布部を有する容器に充填した。被験者として、心理的なストレスがある人を選出し、被験サンプルを肩に1回塗布し、10分安静にした。
【0051】
被験サンプルを適用する前後において、被験者の7人について、TDMS-ST二次元気分尺度に基づく「快適度」及び「覚醒度」を計測して平均値を導出し、下記算出式に従って披験サンプル適用前後の「快適度」及び「覚醒度」の変化量を導出した。さらに、心拍センサを用いたLF(low frequency:交感神経機能を反映する0.04-0.15Hzの低周波帯域のパワー値)及びHF(high frequency:副交感神経機能を反映する0.15Hz-0.40Hzの高周波帯域のパワー値)を測定し、それらの比(LF/HF)の平均値を導出し、下記算出式に従ってLF/HFの低減値を導出した。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
【数3】
【0055】
「快適度」は、最大スコアが20、最低スコアが-20であり、スコアが大きいほど快適度が向上し、すなわち心理的なリラックス効果が高くなる。「覚醒度」は、最大スコアが20、最低スコアが-20であり、スコアが小さいほど覚醒度が抑制され、すなわち心理的なリラックス効果が高くなる。以下の基準に基づいて、快適度の向上及び覚醒度の抑制の程度を評点することで、リラックス効果の促進効果を評価した。結果を表1に示す。
【0056】
<快適度の向上>
8:「快適度」スコアの変化量が19以上
7:「快適度」スコアの変化量が16以上19未満
6:「快適度」スコアの変化量が13以上16未満
5:「快適度」スコアの変化量が10以上13未満
4:「快適度」スコアの変化量が7以上10未満
3:「快適度」スコアの変化量が4以上7未満
2: 「快適度」スコアの変化量が1以上4未満
1:「快適度」スコアの変化量が1未満
【0057】
<覚醒度の抑制>
8:「覚醒度」スコアの変化量が-19以下
7:「覚醒度」スコアの変化量が-19超-16以下
6:「覚醒度」スコアの変化量が-16超-13以下
5:「覚醒度」スコアの変化量が-13超-10以下
4:「覚醒度」スコアの変化量が-10超-7以下
3:「覚醒度」スコアの変化量が-7超-4以下
2: 「覚醒度」スコアの変化量が-4超-1以下
1:「覚醒度」スコアの変化量が-1超
【0058】
LF/HF比は低いほど副交感神経が亢進しておりリラックス効果が高くなる。以下の基準に基づいて、LF/HF比低減の程度を評点することで、リラックス効果の促進効果を評価した。結果を表1に示す。
<LF/HF低減>
6:LF/HF比の低減値が0.21以上
5:LF/HF比の低減値が0.16以上0.21未満
4:LF/HF比の低減値が0.10以上0.16未満
3:LF/HF比の低減値が0.06以上0.10未満
2:LF/HF比の低減値が0.01以上0.06未満
1:LF/HF比の低減値が0.01未満
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなとおり、(A)成分単独ではリラックス効果の促進は有効なものとして認められず(比較例1)、(B)成分単独ではリラックス効果の促進は全く認められなかったが(比較例2)、(A)成分と(B)成分とが組み合わされることで、リラックス効果の顕著な促進が認められた(実施例1~6)。また、(C)成分がさらに組み合わされると、リラックス効果の促進効果はさらに高まり(実施例4)、(C)成分、(D)成分及び(E)成分が組み合わされると、リラックス効果の促進がより一層高まった(実施例5~6)。また実施例1~6の(A)成分を0.02重量%とした場合においても、それぞれ、実施例1~6と同様にリラックス効果の顕著な促進が認められた。
【0061】
これによって、被験者が有していた心理的なストレスが緩和され、リラックス効果を得ることができた。なお、被験者の中には、心理的なストレスがある一方で、肩こり等の、被験サンプルの成分組成に基づく公知の適応となる症状はない者が含まれ、このような被験者に対して、塗布後わずか10分という即効性で、心理的なリラックス効果が認められた。さらに、被験者の中には、心理的なストレスに加え、肩こりも有している者も含まれていたが、これら肩こりも有している被験者は、表1に示される心理的なストレスの緩和による心理的なリラックス効果が確認された後、さらに、1日3回の頻度で塗布を続けると肩こりも低減され、身体的なリラックス効果も得られた。
【0062】
処方例
表2に示す被験サンプル(液剤)を調製した。調製した被験サンプルは、スポンジ塗布部を有する容器に充填し外用組成物の形態で調製した。各被験サンプルについて実施例と同様の方法でリラックス効果を確認したところ、処方例1~3は、それぞれ、実施例1~3と同程度の快適度の向上及び覚醒度の抑制が認められ、リラックス効果を得ることができた。また処方例4~10はいずれも実施例5~6と同程度の快適度の向上及び覚醒度の抑制が認められ、リラックス効果を得ることができた。
【0063】
【表2】