(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030432
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】温度計測装置
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20230301BHJP
G01J 5/60 20060101ALI20230301BHJP
G01J 5/0818 20220101ALI20230301BHJP
【FI】
G01J5/00 101D
G01J5/60 D
G01J5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135558
(22)【出願日】2021-08-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】高田 英行
(72)【発明者】
【氏名】吉富 大
(72)【発明者】
【氏名】奈良崎 愛子
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AA04
2G066AC11
2G066BA11
2G066BA25
2G066BA26
2G066BA27
2G066BA31
2G066BA38
2G066CA16
(57)【要約】
【課題】レーザー加工時の加工点近傍の温度をより正確に測定できる温度計測装置を提供する。
【解決手段】この温度計測装置は、導光ユニットと、検出ユニットと、光ファイバーと、を備え、前記導光ユニットは、被加工物に対して相対移動可能であり、前記被加工物からの散乱光及び輻射光を結像するミラーを備え、前記光ファイバーは、前記導光ユニットと前記検出ユニットとを繋ぎ、前記ミラーで結像された光を前記導光ユニットから前記検出ユニットへ伝搬し、前記検出ユニットは、前記被加工物からの散乱光を検出する散乱光検出器と、前記被加工物からの第1波長域の輻射光を検出する第1輻射光検出器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光ユニットと、検出ユニットと、光ファイバーと、を備え、
前記導光ユニットは、被加工物に対して相対移動可能であり、前記被加工物からの散乱光及び輻射光を結像するミラーを備え、
前記光ファイバーは、前記導光ユニットと前記検出ユニットとを繋ぎ、前記ミラーで結像された光を前記導光ユニットから前記検出ユニットへ伝搬し、
前記検出ユニットは、前記被加工物からの散乱光を検出する散乱光検出器と、前記被加工物からの第1波長域の輻射光を検出する第1輻射光検出器と、を備える、温度計測装置。
【請求項2】
前記検出ユニットは、前記被加工物からの第2波長域の輻射光を検出する第2輻射光検出器をさらに備える、請求項1に記載の温度計測装置。
【請求項3】
前記ミラーは、前記光ファイバーの第1端又は前記光ファイバーの第1端の前方に配置されたアパーチャーに、前記散乱光及び輻射光を結像する、請求項1又は2に記載の温度計測装置。
【請求項4】
データ処理装置をさらに備え、
前記データ処理装置は、前記散乱光の強度に基づき前記被加工物の加工点を特定し、前記輻射光に基づき前記被加工物の温度を求める、請求項1~3のいずれか一項に記載の温度計測装置。
【請求項5】
前記データ処理装置に接続された制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記加工点から所定の位置又は距離が温度の測定点となるように、前記導光ユニットを前記被加工物に対して相対移動させる、請求項4に記載の温度計測装置。
【請求項6】
レーザー光源をさらに備え、
前記レーザー光源からのレーザー照射のタイミング信号を、前記データ処理装置に入力する、請求項4又は5に記載の温度計測装置。
【請求項7】
レーザー光源をさらに備え、
前記レーザー光源は、前記散乱光検出器で前記散乱光を検出する際に第1強度のレーザー光を出力し、前記被加工物をレーザー加工する際に前記第1強度より強い第2強度のレーザー光を出力する、請求項1~6のいずれか一項に記載の温度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工において、被加工物の加工点の温度は、生産性や加工品に影響を及ぼすパラメータの一つである。超短パルスレーザー加工においても、ハイパワー光源の開発に伴い、リアルタイムで高速な温度計測が求められている。
【0003】
放射温度計は、温度測定の一手段である。特許文献1~3には、光ファイバーを用いて放射光を伝搬して、温度を測定する温度計が開示されている。特許文献1には、波長の異なる光の強度比を用いて、温度を検出する方法が開示されている。特許文献2には、照射用光源から光ファイバーを介して被加工物に光を照射することで、加工点の位置を特定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-29622号公報
【特許文献2】特開昭61-182538号公報
【特許文献3】特開2012-37476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超短パルスレーザーを用いた精密加工は、微小空間に対して行われる。超短パルスレーザーは、パルス幅が数ピコ秒以下と極めて短く、パルスの繰り返し周期も短いため、加工点で起こっている現象を精密に測定することは難しい。例えば、加工点の温度は、繰返し周期が1~100μsec程度のレーザーパルスの入射ごとに変動する。またレーザー光の集光径は100μm以下であり、数十~数百μm単位の領域の温度計測が求められる。すなわち、レーザーを用いた精密加工に対応できる高い空間分解能及び時間分解能を有する温度計測が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、レーザー加工時の加工点近傍の温度をより正確に測定できる温度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の態様にかかる温度計測装置は、導光ユニットと、検出ユニットと、光ファイバーと、を備え、前記導光ユニットは、被加工物に対して相対移動可能であり、前記被加工物からの散乱光及び輻射光を結像するミラーを備え、前記光ファイバーは、前記導光ユニットと前記検出ユニットとを繋ぎ、前記ミラーで結像された光を前記導光ユニットから前記検出ユニットへ伝搬し、前記検出ユニットは、前記被加工物からの散乱光を検出する散乱光検出器と、前記被加工物からの第1波長域の輻射光を検出する第1輻射光検出器と、を備える。
【0008】
(2)上記態様にかかる温度計測装置において、前記検出ユニットは、前記被加工物からの第2波長域の輻射光を検出する第2輻射光検出器をさらに備えてもよい。
【0009】
(3)上記態様にかかる温度計測装置において、前記ミラーは、前記光ファイバーの第1端又は前記光ファイバーの第1端の前方に配置されたアパーチャーに、前記散乱光及び輻射光を結像する構成でもよい。
【0010】
(4)上記態様にかかる温度計測装置は、データ処理装置をさらに備えてもよい。前記データ処理装置は、前記散乱光の強度に基づき前記被加工物の加工点を特定し、前記輻射光に基づき前記被加工物の温度を求める。
【0011】
(5)上記態様にかかる温度計測装置は、前記データ処理装置に接続された制御装置をさらに備えてもよい。前記制御装置は、前記加工点から所定の位置または距離が温度の測定点となるように、前記導光ユニットを前記被加工物に対して相対移動させる。
【0012】
(6)上記態様にかかる温度計測装置は、レーザー光源をさらに備えてもよい。前記レーザー光源からのレーザー照射のタイミング信号を、前記データ処理装置に入力する。
【0013】
(7)上記態様にかかる温度計測装置は、レーザー光源をさらに備えてもよい。前記レーザー光源は、前記散乱光検出器で前記散乱光を検出する際に第1強度のレーザー光を出力し、前記被加工物をレーザー加工する際に前記第1強度より強い第2強度のレーザー光を出力する。
【発明の効果】
【0014】
上記態様に係る温度計測装置は、レーザー加工時の測定点の温度をより正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る温度計測装置の模式図である。
【
図2】第1変形例に係る導光ユニットの模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る温度計測装置の加工点と測定点の関係を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る温度計測装置を用いた温度計測方法のフロー図である。
【
図5】第2実施形態に係る温度計測装置の模式図である。
【
図6】第3実施形態に係る温度計測装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法、配置、数、数値、構成等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0017】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る温度計測装置100の模式図である。温度計測装置100は、例えば、導光ユニット10と検出ユニット20と光ファイバー30とレーザー光源40とデータ処理装置50と制御装置60とを備える。
【0018】
レーザー光源40は、被加工物1に向かってレーザー光を照射する。被加工物1からの散乱光及び輻射光は、導光ユニット10で集光され、光ファイバー30へ至る。導光ユニット10と検出ユニット20とは、光ファイバー30で繋がれている。導光ユニット10からの光は、光ファイバー30を介して検出ユニット20へ至る。検出ユニット20は、導光ユニット10からの光を分離して、信号として検出する。検出ユニット20で検出された信号は、データ処理装置50へ送られる。データ処理装置50は、信号を処理し、加工点の位置及び測定点の温度を求める。
【0019】
レーザー光源40は、パルスレーザーを出射する。パルスレーザーは、例えば、数フェムト秒から数ピコ秒のパルス幅をもつ超短パルスレーザーである。レーザー光源40から出射されたレーザー光は、集光レンズ41によって、被加工物1の加工点に集光される。レーザー光源40は、例えば、被加工物1に対して相対移動でき、被加工物1に対するレーザーの集光点の位置を変えることができる。
【0020】
レーザー光源40は、用途に応じて、出力強度を変えることができる。詳細は後述するが、レーザー光源40は、例えば、第1強度のレーザー光と、第1強度より強い第2強度のレーザー光を出力できる。
【0021】
またレーザー光源40は、データ処理装置50と接続されていてもよい。レーザー光源40は、例えば、レーザー照射のタイミング信号を、データ処理装置50に入力する。
【0022】
図1では、レーザー光源40が温度計測装置100に組み込まれている例を示したが、レーザー光源40は温度計測装置100の外部ユニットでもよい。
【0023】
導光ユニット10は、被加工物1の加工面の近傍にある。導光ユニット10は、被加工物1に対して相対移動できる。導光ユニット10が被加工物1に対して相対移動することで、温度の測定点を自由に変更できる。
【0024】
導光ユニット10は、例えば、ミラー11と、フィルター12と、アパーチャーApを有する光学部材13と、を備える。
【0025】
ミラー11は、被加工物1からの散乱光及び輻射光をアパーチャーApに結像する。ミラー11は、波長による収差が少なく、波長の異なる散乱光と輻射光とをいずれもアパーチャーApに結像できる。
【0026】
フィルター12は、光の進行方向において、ミラー11とアパーチャーApとの間にある。フィルター12は、レーザー光を低減するフィルターである。フィルター12は、レーザー光による光ファイバー30及び光学系への損傷を低減する。フィルター12は、不要な場合は除いてもよい。
【0027】
光学部材13は、光ファイバー30の第1端の前方に配置されている。光学部材13には、アパーチャーApが形成されている。アパーチャーApの大きさ、及び、被加工物1とミラー11との距離に対するミラー11とアパーチャーApとの距離は、温度計測装置100の空間分解能に影響を及ぼす。アパーチャーApの大きさを小さくし、被加工物1とミラー11との距離に対するミラー11とアパーチャーApとの距離を大きくすると、温度計測装置100の空間分解能が高まる。アパーチャーApの大きさは、例えば、100μm以下である。
【0028】
図1では、光学部材13にアパーチャーApが形成されている例を示したが、光ファイバー30の第1端におけるコアをアパーチャーApとして扱ってもよい。すなわち、光学部材13を除いてもよい。この場合、ミラー11は、被加工物1からの散乱光及び輻射光を光ファイバー30の第1端のコアに結像する。
【0029】
また
図2に示すように、導光ユニット10Aは、複数のミラー11を用いて、散乱光及び輻射光をアパーチャーApに結像してもよい。
図2は、第1実施形態に係る導光ユニット10の変形例である。導光ユニット10Aは、移動ステージ14によって被加工物1に対して相対移動できる。
【0030】
光ファイバー30は、導光ユニット10と検出ユニット20とを繋ぐ。光ファイバー30の第1端は導光ユニット10のミラー11の結像点の近傍に配置されている。ミラー11で結像された光は、光ファイバー30を介して、導光ユニット10から検出ユニット20へ伝搬する。光ファイバー30の第2端は、検出ユニット20のコリメートミラー24の前方に配置されている。導光ユニット10と検出ユニット20とを光ファイバー30で繋ぐことで、検出ユニット20を固定したまま、導光ユニット10のみを被加工物1に対して相対移動できる。
【0031】
検出ユニット20は、例えば、散乱光検出器21と第1輻射光検出器22と第2輻射光検出器23とコリメートミラー24とダイクロイックミラー25A、25Bとミラー25Cとフィルター26A、26B、26Cと集光レンズ27A、27B、27Cとを備える。
【0032】
コリメートミラー24は、光ファイバー30の第2端から出射した光を平行光にする。平行光は、ダイクロイックミラー25Aへ至る。ダイクロイックミラー25Aは、散乱光を散乱光検出器21に向かって反射し、輻射光を透過する。ダイクロイックミラー25Aを透過した輻射光は、ダイクロイックミラー25Bへ至る。ダイクロイックミラー25Bは、輻射光のうちの特定の波長の光を第1輻射光検出器22に向かって反射し、その他の波長の光を透過する。ダイクロイックミラー25Bを透過した輻射光は、ミラー25Cで反射され、第2輻射光検出器23へ至る。ここでは、ダイクロイックミラー25A、25Bを用いる例を示したが、この例に限られず、例えば、ダイクロイックミラー25A、25Bに代えてビームスプリッターを用いてもよい。
【0033】
フィルター26A、26B、26Cは、例えば、バンドパスフィルタである。フィルター26A、26B、26Cは、必要な波長帯域の光のみを透過する。集光レンズ27Aは、フィルター26Aを透過した光を散乱光検出器21に向かって集光する。集光レンズ27Bは、フィルター26Bを透過した光を第1輻射光検出器22に向かって集光する。集光レンズ27Cは、フィルター26Cを透過した光を第2輻射光検出器23に向かって集光する。ここでは、集光レンズ27A、27B、27Cを用いて光を集光する例を示したが、この例に限られず、例えば、集光レンズ27A、27B、27Cに代えて集光ミラーを用いてもよい。
【0034】
散乱光検出器21は、被加工物1から散乱したレーザー光を検出する。散乱光検出器21は、レーザー光の強度を計測する。第1輻射光検出器22は、被加工物1からの輻射光のうちの特定の波長の光を検出する。第2輻射光検出器23は、被加工物1からの輻射光のうちの第1輻射光検出器22で検出される波長と異なる波長の光を検出する。
【0035】
検出ユニット20は、光ファイバー30を用いることで固定可能である。そのため、第1輻射光検出器22及び第2輻射光検出器23は、大掛かりなものでもよい。第1輻射光検出器22及び第2輻射光検出器23は、例えば、ペルチェ素子冷却PINフォトダイオード、液体窒素冷却光電子増倍管等である。これらの検出器は、高時間分解能で高感度な測定が可能である。
【0036】
データ処理装置50は、散乱光検出器21、第1輻射光検出器22及び第2輻射光検出器23からの信号を受信する。データ処理装置50は、検出ユニット20内に組み込まれていてもよい。またデータ処理装置50は、温度計測装置100の外部ユニットでもよい。
【0037】
データ処理装置50は、散乱光検出器21からの信号に基づいて、加工点の位置を特定する。被加工物1からの散乱光は、加工点に近いほど大きい。そのため、データ処理装置50は、散乱光検出器21で検出された散乱光の強度に基づいて、加工点の位置を特定する。またデータ処理装置50は、加工点との距離から温度を測定する測定点の位置を特定する。
【0038】
またデータ処理装置50は、第1輻射光検出器22及び第2輻射光検出器23からの信号に基づいて、測定点の温度を求める。波長域の異なる2つの輻射光の強度比を用いると、測定点の温度を精度良く求めることができる。求められた測定点の温度は、データ処理装置50から外部に出力される。
【0039】
制御装置60は、例えば、データ処理装置50及び導光ユニット10に接続されている。制御装置60は、導光ユニット10を被加工物1に対して相対移動させる。制御装置60は、温度の測定点が加工点を基準に特定の距離の位置となるように、導光ユニット10を動かす。
【0040】
図3は、第1実施形態に係る温度計測装置100の加工点と測定点の関係を示す図である。上述のように、データ処理装置50は、散乱光の強度から加工点p1を特定できる。加工点p1から距離d離れた測定点p2の温度を測定する場合は、導光ユニット10を被加工物1の面内方向にスライドさせる。制御装置60は、測定点p2からの散乱光及び輻射光がアパーチャーApに結像される位置に、導光ユニット10を移動させる。
【0041】
制御装置60によって導光ユニット10を任意の測定点p2に移動させることで、温度計測装置100は任意の位置の温度を計測できる。例えば、加工点p1の温度を測定する場合は、距離dをゼロとする。
【0042】
図4は、第1実施形態に係る温度計測装置100を用いた温度計測方法のフロー図である。温度計測装置100を用いた温度計測方法は、加工点特定工程S1と測定点特定工程S2と測温工程S3とを有する。
【0043】
加工点特定工程S1では、レーザー光が照射される加工点p1を特定する。まず被加工物1に対して、第1強度のレーザー光を照射する(工程S1a)。第1強度は、被加工物1に対して加工が生じない程度の強度である。
【0044】
次いで、散乱光検出器21で、被加工物1からの散乱光を検出する(工程S1b)。散乱光は、例えば、制御装置60で導光ユニット10を移動させ、測定点を変えながら検出する(工程S1c)。散乱光が最大になる箇所が加工点p1とみなすことができる。
【0045】
次いで、測定点特定工程S2を行う。測定点特定工程S2では、温度を測定する測定点p2まで導光ユニット10を移動させる。加工点p1を測定点p2とする場合は、測定点特定工程S2を行わなくてもよい。
【0046】
まず温度を測定する測定点p2を決定する(工程S2a)。測定点は、目的に応じて変えることができる。例えば、加工点p1の温度を測定したい場合は、加工点p1を測定点p2とする。また加工点p1から所定の距離dの温度を計測したい場合は、加工点p1から距離dだけ離れた位置を測定点p2とする。
【0047】
次いで、導光ユニット10を測定点p2まで移動させる(工程S2b)。導光ユニット10は、制御装置60によって移動する。
【0048】
次いで、測温工程S3を行う。測温工程S3では、レーザー加工を行いながら、測温を行う。レーザー加工は、例えば、超短パルスレーザーを用いた精密加工、高出力CWレーザーを用いたレーザー溶接又はレーザー切断等である。
【0049】
まずレーザー光の出力を第2強度に変える。第2強度は、第1強度より強く、実際にレーザー加工を行う際の強度である。そして、第2強度のレーザー光を被加工物1に照射する(工程S3a)。
【0050】
被加工物1にレーザー光が照射されると、加工点p1が加熱され、被加工物1から輻射が生じる。輻射光は、導光ユニット10から光ファイバー30を介して検出ユニット20へ送られ、第1輻射光検出器22及び第2輻射光検出器23で検出される(工程S3b)。
【0051】
そして、第1輻射光検出器22及び第2輻射光検出器23で検出された検出信号は、データ処理装置50へ送られる。データ処理装置50は、波長域の異なる2つの輻射光の強度比を用いて、測定点の温度を測定する(工程S3c)。
【0052】
上述のように、第1実施形態に係る温度計測装置100は、散乱光を用いて被加工物1の加工点p1の位置を正確に把握することができ、加工点p1との距離dから測定点p2の位置を正確に特定できる。またミラー11を用いて散乱光及び輻射光をアパーチャーApに結像することで、測定点p2の空間分解能を高めることができる。また光ファイバー30を用いることで、検出ユニット20を固定することができ、高速応答性を有し、高感度な検出器を使用することができる。また複数の輻射光検出器を用いることで、波長域の異なる2つの輻射光の強度比から測定点の温度を正確に測定することができる。またレーザー光の照射タイミングとデータ処理装置50での信号処理のタイミングを同期させることで、信号の時間的な処理精度をより高めることができる。
【0053】
「第2実施形態」
図5は、第2実施形態に係る温度計測装置101の模式図である。温度計測装置101は、検出ユニット20Aが第2輻射光検出器23を有さず、第1輻射光検出器22のみを有する点が、検出ユニット20と異なる。
【0054】
加工点p1の温度は、異なる波長域の輻射光の強度比を比較しなくても測定することができる。そのため、第1輻射光検出器22のみでも加工点p1の温度は測定できる。
【0055】
第2実施形態に係る温度計測装置101は、第1実施形態にかかる温度計測装置100と同様の効果が得られる。また第2輻射光検出器23を除くことで、温度計測装置101のサイズを小さくできる。
【0056】
「第3実施形態」
図6は、第3実施形態に係る温度計測装置102の模式図である。温度計測装置102は、検出ユニット20Bが光源28、フィルター29、ダイクロイックミラー25Dをさらに有する点が、検出ユニット20と異なる。
【0057】
光源28は、公知の光源を用いることができる。フィルター29は、レーザー光が光源28側に侵入することを防止するフィルターである。フィルター29は、不要な場合は除いてもよい。ダイクロイックミラー25Dは、光源から照射された光をコリメートミラー24に向かって反射する。光源28から照射された光は、ダイクロイックミラー25D、コリメートミラー24及び光ファイバー30を介して被加工物1に至る。ここでは、ダイクロイックミラー25Dを用いる例を示したが、この例に限られず、例えば、ダイクロイックミラー25Dに代えてビームスプリッターを用いてもよい。
【0058】
光源28から被加工物1に照射された光と、レーザー光源40から被加工物1に照射された光とを、CCDカメラ又はIRビューアー等で観測し、これらの光点の位置が一致するように、導光ユニット10を移動させる。これらの光点の位置が一致することで、加工点のおおよその位置を特定できる。加工点のおおよその位置を特定した後に、散乱光検出器21を用いた加工点の位置特定を行うことで、加工点の位置の特定速度を早めることができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態および変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…被加工物、10,10A…導光ユニット、11,25C…ミラー、12,26A,26B,26C,29…フィルター、13…光学部材、14…移動ステージ、20,20A,20B…検出ユニット、21…散乱光検出器、22…第1輻射光検出器、23…第2輻射光検出器、24…コリメートミラー、25A,25B,25D…ダイクロイックミラー、27A,27B,27C,41…集光レンズ、28…光源、30…光ファイバー、40…レーザー光源、50…データ処理装置、60…制御装置、100,101,102…温度計測装置、Ap…開口、d…距離、p1…加工点、p2…測定点