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特開2023-30520フッ素含有水の処理装置及びその運転方法
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  • 特開-フッ素含有水の処理装置及びその運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030520
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】フッ素含有水の処理装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20230101AFI20230301BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20230301BHJP
【FI】
C02F1/58 M
C02F1/56 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135697
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩一
【テーマコード(参考)】
4D015
4D038
【Fターム(参考)】
4D015BA05
4D015BB05
4D015CA20
4D015DB03
4D015FA01
4D015FA12
4D038AA08
4D038AB41
4D038BA02
4D038BA04
4D038BA06
4D038BB13
4D038BB18
(57)【要約】
【課題】固液分離槽で分離された汚泥の一部を改質槽に導入し、カルシウム化合物を添加してから反応槽に循環させるフッ素含有水の処理装置において、汚泥改質槽に対するカルシウム化合物の添加量を細かく適正量となるように制御することができるフッ素含有水の処理装置と、その運転方法を提供する。
【解決手段】第1反応槽1において、原水に対し汚泥改質槽5からの改質汚泥と必要に応じてカルシウム化合物及びpH調整剤を添加し、第2反応槽2を経て凝集槽3に導入し、凝集処理する。凝集槽3の凝集処理水を沈殿槽4で固液分離し、分離汚泥の一部を汚泥改質槽5に導入する。汚泥改質槽5に、カルシウム化合物含有液が、添加量を無段階で制御可能なコントロール弁13を介して添加される。コントロール弁13の閉塞を防止するために、洗浄水が、弁18、配管19を介して供給可能とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有水とカルシウム化合物を反応させる反応槽と、
この反応槽にフッ素含有水を導入する原水路と、
反応槽から反応液を移送し高分子凝集剤を添加して凝集を行う凝集装置と、
凝集装置において形成されるフロックを含む混合液を導入して固液分離を行う固液分離槽と、
固液分離槽で分離された汚泥の一部を汚泥改質槽に導入し、カルシウム化合物をカルシウム化合物添加手段により添加して反応槽に循環させる循環路と
を有するフッ素含有水の処理装置において、
該カルシウム化合物添加手段は添加量を無段階で制御可能であり、
該カルシウム化合物添加手段を洗浄水により洗浄する洗浄手段を備えたことを特徴とするフッ素含有水の処理装置。
【請求項2】
前記カルシウム化合物添加手段は、カルシウム化合物添加量を無段階で変えることができる弁を有することを特徴とする請求項1のフッ素含有水の処理装置。
【請求項3】
原水の流量及びフッ素濃度に応じて前記弁の開度を制御する制御手段を有する請求項2のフッ素含有水の処理装置。
【請求項4】
前記洗浄手段は、前記弁に洗浄水を通水するよう構成されている請求項2又は3のフッ素含有水の処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかのフッ素含有水の処理装置の運転方法であって、定期的に前記洗浄手段によってカルシウム化合物添加手段を洗浄することを特徴とするフッ素含有水の処理装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素含有水からフッ素を除去するためのフッ素含有水の処理装置と、その運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有水からフッ素を除去する方法として、反応槽においてフッ素含有水に消石灰、塩化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加してpH6~10に調整してフッ化カルシウムを含む析出物を析出させ、凝集槽において高分子凝集剤を添加して凝集反応を行い、沈殿槽で沈殿分離する方法が行われている。
【0003】
しかしこのような処理方法では、生成するフロックは多量に水を含むゲル状の水酸化物であるため、沈降性が悪い。また、生成する汚泥は脱水性が悪く、その処理は容易ではなかった。また、処理水のフッ素濃度を十分に低くすることはできなかった。
【0004】
このような点を改善する方法として、特許文献1には、フッ素含有水とカルシウム化合物を反応させる反応槽と、この反応槽にフッ素含有水を導入する原水路と、反応槽から反応液を移送し高分子凝集剤を添加して凝集を行う凝集装置と、凝集装置において形成されるフロックを含む混合液を導入して固液分離を行う固液分離槽とを備え、固液分離槽で分離された汚泥の一部を改質槽に導入し、カルシウム化合物を添加してから反応槽に循環させるフッ素除去装置が記載されている。
【0005】
同様のフッ素含有水の処理装置が特許文献2,3にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-479号公報
【特許文献2】特開2007-190517号公報
【特許文献3】特開2009-233568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記汚泥改質槽に対するカルシウム化合物の添加制御は、次の(a)又は(b)の方法により行われている。(なお、薬剤添加量を無段階で制御可能なコントロール弁は、薬剤がカルシウム化合物の場合、閉塞のおそれがあるので、従来では採用できなかった。)
【0008】
(a) 原水のフッ素濃度を測定し、カルシウム化合物添加弁の開閉タイマーを多段制御する。段の数が多いほどカルシウム化合物添加弁の開時間が長く設定されており、カルシウム化合物の添加量が多くなる。
(b) 原水中のフッ素成分がHFを主体とする場合、原水のpHに応じてカルシウム化合物を添加する。
【0009】
ところが、このような(a),(b)のいずれの方法によっても、カルシウム化合物の添加量を細かく制御することができない。
【0010】
また、(a)の方法にあっては、原水フッ素濃度がある程度安定していることが条件であり、濃度変動する場合には、弁の開閉タイマーの段数を増やす必要があり、対応できる濃度幅に限度がある。段数を増やすことについてはソフト改造が必要となるため安易な増減対応はできない。また、上記注入量設定をするためには、現場にて測量する必要があるため、手間がかかる。
【0011】
(b)の方法にあっては、原水中のフッ素成分がHF主体であるときには必要量のカルシウム化合物をカウンターとして注入すればよいが、原水がBHF(フッ素とアンモニアが混ざった廃液でアンモニアが含まれる分pHがアルカリ側に振れる)のようなバッファー成分を含有している場合には、この手法は採用することができない。
【0012】
本発明は、固液分離槽で分離された汚泥の一部を改質槽に導入し、カルシウム化合物を添加してから反応槽に循環させるフッ素含有水の処理装置において、汚泥改質槽に対するカルシウム化合物の添加量を細かく適正量となるように制御することができるフッ素含有水の処理装置と、その運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフッ素含有水の処理装置は、フッ素含有水とカルシウム化合物を反応させる反応槽と、この反応槽にフッ素含有水を導入する原水路と、反応槽から反応液を移送し高分子凝集剤を添加して凝集を行う凝集装置と、凝集装置において形成されるフロックを含む混合液を導入して固液分離を行う固液分離槽と、固液分離槽で分離された汚泥の一部を汚泥改質槽に導入し、カルシウム化合物をカルシウム化合物添加手段により添加して反応槽に循環させる循環路とを有するフッ素含有水の処理装置において、該カルシウム化合物添加手段は添加量を無段階で制御可能であり、該カルシウム化合物添加手段を洗浄水により洗浄する洗浄手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様では、該処理装置は、前記カルシウム化合物添加手段は、カルシウム化合物添加量を無段階で変えることができる弁を有する。
【0015】
本発明の一態様では、該処理装置は、原水の流量及びフッ素濃度に応じて前記弁の開度を制御する制御手段を有する。
【0016】
本発明の一態様では、前記洗浄手段は、前記弁に洗浄水を通水するよう構成されている。
【0017】
本発明のフッ素含有水の処理装置の運転方法は、本発明のフッ素含有水の処理装置の運転方法であって、定期的に前記洗浄手段によってカルシウム化合物添加手段を洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフッ素含有水の処理装置では、汚泥改質槽にカルシウム化合物を添加する手段として、添加量を無段階で制御することができる、すなわち添加量を連続的に変えることができるコントロール弁などの手段を用いているので、カルシウム化合物の添加量を適切に制御することができる。また、これにより、処理水の水質も向上する。
【0019】
本発明では、このカルシウム化合物添加手段を定期的に洗浄水で洗浄するので、コントロール弁などのカルシウム化合物添加手段が閉塞することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係るフッ素含有水の処理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1を参照して実施の形態について説明する。
【0022】
図1は本発明のフッ素含有水の処理装置の実施の形態を示す系統図であり、図1中、1は、原水が原水配管を介して導入される第1反応槽、2は第2反応槽、3は凝集槽、4は沈殿槽、5は汚泥改質槽を示す。
【0023】
図1では、原水とカルシウム化合物との反応を2段に直列に配置した第1反応槽1と第2反応槽2とで行う。すなわち、第1反応槽1に汚泥改質槽5からの改質汚泥を添加するとともに、必要に応じてカルシウム化合物及びpH調整剤を添加して、好ましくはpH4~10、より好ましくはpH6~6.5にて原水中のフッ素の殆どを不溶化させる。
【0024】
第1反応槽1の流出液を第2反応槽2に導入し、必要に応じてpH調整剤を添加して、好ましくはpH4~10、より好ましくはpH6~6.5にて残留するフッ素を不溶化させる。なお、第2反応槽2でさらにフッ素を不溶化するため、pH調整剤の他にカルシウム化合物を添加することもある。
【0025】
この第2反応槽2の流出液は、凝集槽3に導入されて、高分子凝集剤が添加され凝集処理される。この高分子凝集剤としては、懸濁排水の凝集処理に用いられるものであれば特に制限されるものではないが、例えばポリアクリルアミド系高分子凝集剤などが用いられる。
【0026】
凝集槽3の凝集処理水は次いで、沈殿槽4に導入されて固液分離され、分離水が処理水として系外に排出され、分離汚泥は、その一部が返送汚泥として汚泥改質槽5に送給され、残部は余剰汚泥として系外へ排出される。
【0027】
汚泥改質槽5においてカルシウム化合物を添加して混合することにより、カルシウム化合物の少なくとも一部が汚泥の表面に吸着等により付着して汚泥が改質される。この改質汚泥が第1反応槽1に導入されると、汚泥表面のカルシウム化合物が原水中のフッ素と反応し、汚泥粒子が成長する。このように粒成長した汚泥は、沈降性が良好となるので、沈殿槽4において効率よく沈殿する。
【0028】
汚泥改質槽5に対しては、カルシウム化合物がカルシウム化合物含有液(例えば、塩化カルシウム水溶液、消石灰スラリー)の形態で添加される。
【0029】
カルシウム化合物含有液は、ポンプ等により配管10、開閉弁11、配管12、コントロール弁13、配管14を介して汚泥改質槽5に添加される。
【0030】
コントロール弁13は、開度(すなわちカルシウム化合物供給量)を連続的に変えることができるよう構成されたものであり、制御器15によって開度が制御される。制御器15は、原水のフッ素濃度を検出するためのフッ素イオン電極等よりなるフッ素センサ16の検出信号と、原水配管の原水ポンプ(図示略)の作動信号又は原水流量計(図示略)の検出信号と、配管12に設けられた流量計17の検出信号とに基づいてコントロール弁13の開度を制御する。
【0031】
コントロール弁13の閉塞を防止するために、配管12に対し洗浄水が、弁18を有する配管19を介して供給可能とされている。弁11を閉とし、弁18を開とすることにより、コントロール弁13に洗浄水が通水され、コントロール弁13がこの洗浄水で洗浄され、閉塞が防止される。この洗浄水によるコントロール弁13の洗浄は、タイマーにより定期的に行われることが好ましく、例えば5分~24時間、特に1時間に1回程度の頻度で、また1回の洗浄水の通水時間は1~10分、特に2分30秒程度で行われるが、これに限定されない。洗浄水としては、水道水、工業用水などを用いることができる。
【0032】
このように、この実施の形態では、カルシウム化合物の添加量をコントロール弁13により無段階に制御することができるので、原水のフッ素濃度や流量に変動があっても、適切なカルシウム化合物添加制御を行い、良好な水質の処理水を得ることが可能となり、例えば処理水中のフッ素濃度やカルシウム濃度を低くすることができる。また、これにより、処理水をリサイクルすることが容易となる。
【0033】
この実施の形態では、コントロール弁13が洗浄水で洗浄されるので、コントロール弁13が閉塞することが防止され、安定した処理が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 第1反応槽
2 第2反応槽
3 凝集槽
4 沈殿槽
5 汚泥改質槽
13 コントロール弁
図1