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特開2023-30930ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品
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  • 特開-ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030930
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20230301BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20230301BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L67/03
C08L33/08
C08K3/00
C08L83/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136356
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】浅井 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】深津 博樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB072
4J002BG032
4J002CF071
4J002CP033
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】靭性および外観に優れる成形品を成形することが可能なポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)固有粘度が0.65~0.90dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)エチレンエチルアクリレート共重合体5~30質量部と、(C)無機充填剤10~100質量部とを含み、前記(B)エチレンエチルアクリレート共重合体の190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以下である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)固有粘度が0.65~0.90dL/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、
(B)エチレンエチルアクリレート共重合体5~30質量部と、
(C)無機充填剤10~100質量部とを含み、
前記(B)エチレンエチルアクリレート共重合体の190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以下である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)エチレンエチルアクリレート共重合体の前記メルトフローレートが、5g/10min以下である、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(D)25℃における動粘度が3000~8000cStであるシリコーン系化合物を、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.5~2質量部含む、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてなる成形品。
【請求項5】
アルカリ溶液に接する部品に用いられる、請求項3に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてなる成形品。
【請求項6】
表面粗さが、JIS B 0601-2013に準拠した算術平均粗さRaとして、2μm以下である、請求項4又は5に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶性熱可塑性樹脂として、機械的強度、電気的性質、その他、各種特性に優れている為、エンジニアリングプラスチックとして、自動車、電気・電子機器等をはじめとして広範な用途に使用されている。
【0003】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いて成形品を得る場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂と種々の添加剤とを混合して得た樹脂組成物を用いることが一般的である。
このような添加剤として、例えば、オレフィン系エラストマーは、一般に、成形品の耐衝撃性や靭性の向上を目的として用いられる。
【0004】
特許文献1は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定した固有粘度が0.82dL/g以下の熱可塑性樹脂と、2.16kgの試験荷重を用いて190℃で測定したメルトフローレート(MFR)が50g/10分以上のエチレン・アクリル酸アルキルコポリマー等の衝撃改質剤とを含む樹脂組成物を記載している。
特許文献2には、ポリエステル樹脂に、メルトフローレート(MFR)が20g/10分以下のポリオレフィン系樹脂又はエラストマー等の増粘剤を添加することで、射出成形時のドローダウン現象が改善されること、および、成形品の耐衝撃性も改良されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-66787号公報
【特許文献2】特開2004-300450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オレフィン系エラストマーは、ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性が十分でない傾向があり、オレフィン系エラストマーを用いた場合、成形品の表面が荒れてしまい外観が悪くなる場合がある。
相溶性を向上させるために相溶化剤を使用しても、十分な外観の改善は得られにくい傾向がある。
【0007】
本発明の実施形態は、靭性、剛性および外観に優れる成形品を成形することが可能なポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、(A)固有粘度が0.65~0.90dL/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)エチレンエチルアクリレート共重合体5~30質量部と、(C)無機充填剤10~100質量部とを含み、前記(B)エチレンエチルアクリレート共重合体の190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以下である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
本発明の他の一実施形態は、上記のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、靭性、剛性および外観に優れる成形品を成形することが可能なポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いてなる成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例において、外観、表面粗さ、及び耐アルカリ性の評価で用いた成形片の上面を摸式的に示した図である。
図2図2は、実施例における、外観の評価の判定A、B、Cそれぞれに該当する場合の参考例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明が下記の実施形態に限定されることはない。
【0012】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物>
本発明の一実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と記載することもある。)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エチレンエチルアクリレート共重合体、及び無機充填剤を少なくとも含む。
【0013】
以下に、本実施形態の樹脂組成物において用いることができる各成分について説明する。
【0014】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT樹脂」とも記す。)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル、酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0015】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、0.65dL/g以上0.90dL/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.70dL/g以上0.90dL/g以下であり、さらに好ましくは0.75dL/g以上0.90dL/g以下であり、例えば、0.85dL/g以上0.90dL/g以下であってもよい。かかる範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に外観と強度に優れたものとなる。
また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.85dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、例えば、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0016】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。一方、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、5meq/kg以上が好ましく、10meq/kg以上がより好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、5meq/kg以上30meq/kg以下が好ましく、10meq/kg以上25meq/kg以下がより好ましい。かかる範囲の末端カルボキシル基量のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなる。
【0017】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0019】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0021】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0022】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、いずれも(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として好適に使用できる。また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを組み合わせて使用してもよい。
【0023】
(B)エチレンエチルアクリレート共重合体
エチレンエチルアクリレート共重合体(以下、「EEA」共重合体とも記す。)は、エチレンとエチルアクリレートを共重合成分とする共重合体である。共重合形式は特に限定されず、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれの共重合体でもよく、例えば部分的に、ランダム構造、ブロック構造及びグラフト構造のうちの2以上の構造を有していてもよい。
【0024】
共重合体中のエチレンとエチルアクリレートの比率は、特に限定はされないが、PBT樹脂と相溶性を確保し、かつ、製造時のブロッキング抑制の観点から、EEA共重合体の融点が85℃以上であることが好ましく、88℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることが特に好ましい。
【0025】
EEA共重合体を成形品の外観の向上の観点から、(B)EEA共重合体は、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以下であることが好ましい。
【0026】
EEA共重合体を含むことで、成形品の靭性を向上させることができる。一方、オレフィン系エラストマーは、ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性が十分でない傾向があり、オレフィン系エラストマーを用いた場合、成形品の表面が荒れてしまい外観が悪くなる場合がある。190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以下の、粘度の高いEEA共重合体を用いるとき、成形品の外観を向上させることができる。
【0027】
(B)EEA共重合体の190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは、成形品の外観の向上の観点から、25g/10min以下であることが好ましく、20g/10min以下であることがより好ましく、2g/10min以下であることがさらに好ましく、1g/10min以下であることが特に好ましい。(B)EEA共重合体の190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは、例えば、0.01g/10min以上25g/10min以下であってよい。
異なるメルトフローレートを有するEEA共重合体をブレンドして、メルトフローレートを調整することもできる。例えば、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート30g/10minのEEA共重合体と190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート10g/10minのEEA共重合体とをブレンドすることにより、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート15g/10minのEEA共重合体を調製することができる
190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは、ISO1133に準拠する方法で、190℃及び荷重2.16kgの条件で測定した値である。
【0028】
本実施形態においては、エチレンとエチルアクリレート以外のコモノマー成分を実質的に含まないEEA共重合体を用いてもよく、その他のコモノマー成分を含むEEA共重合体を用いてもよい。
【0029】
エチレンとエチルアクリレート以外のコモノマー成分を実質的に含まないEEA共重合体は、エチレンとエチルアクリレート以外のコモノマーが、共重合モノマー中に3質量%以下となる量であり、1質量%以下となる量であることが好ましく、0質量%となる量であってよい。
【0030】
(B)EEA共重合体がエチレンとエチルアクリレート以外のコモノマー成分を含む場合、その他のコモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。例えば、グリシジル基などの反応性の高い官能基を含むコモノマーを用いてもよい。
エチレンとエチルアクリレート以外のコモノマー成分を含むEEA共重合体としては、例えば、エチレンエチルアクリレートとブチルアクリレート-メチルメタクリレートのグラフト共重合体(EEA-g-BAMMA共重合体)等が挙げられる。
【0031】
(B)EEA共重合体が、エチレンとエチルアクリレート以外のコモノマー成分を含むものである場合、エチレンとエチルアクリレートの合計量と、エチレンとエチルアクリレート以外のコモノマーの合計量との質量比は、例えば、95:5~50:50が好ましく、85:15~55:45がより好ましく、80:20~60:40がさらに好ましい。
【0032】
(B)EEA共重合体は、任意の方法で製造することができる。例えば、エチレンとエチルアクリレート(及びその他のコモノマー成分)を所定量混合し、ラジカル開始剤を用いて常法によりラジカル重合を行うことにより、EEA共重合体が得られる。また、例えば、エチレンとエチルアクリレートからなるEEA共重合体粒子中で、ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体成分の単量体とラジカル(共)重合性有機過酸化物とを共重合せしめたグラフト化前駆体を溶融混練し、重合体同士のグラフト化反応により、エチレンエチルアクリレートとブチルアクリレート-メチルメタクリレートのグラフト共重合体(EEA-g-BAMMA共重合体)を得ることができる。
【0033】
(B)EEA共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(B)EEA共重合体の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、10質量部以上25質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましい。
耐衝撃性の観点から、(B)EEA共重合体の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましい。一方、剛性の観点から、EEA共重応対の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
【0035】
(C)無機充填剤
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(D)無機充填剤を含有することができる。(D)無機充填剤を含有することで、機械的特性や耐熱性を向上させることができる。成形品の剛性を向上させる観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(D)無機充填剤を含有することが好ましい。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形収縮率や線膨張係数を低減することができる。
【0036】
(C)無機充填剤としては、例えば、繊維状無機充填剤[例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化珪素繊維、ウィスカー(アルミナ、窒化珪素などのウィスカー)など]、板状無機充填剤[例えば、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトなど]、粉状無機充填剤[例えば、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ミルドファイバー(ガラスなどのミルドファイバー)、ウォラストナイトなど]が挙げられ、これらの無機充填剤のうち、ガラス系充填剤(ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなど)、タルク、マイカ、ウォラストナイトなどが好ましく、中でもガラス繊維は、入手性や強度及び剛性の面から、好適に使用できる。また、板状や粉状の充填剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形収縮率や線膨張係数の異方性抑制の面から、好適に使用できる。これらの充填剤の使用に当たっては、必要に応じ公知の表面処理剤を使用することができる。
【0037】
(C)無機充填剤として繊維状充填剤を用いる場合、その形状は特に限定されないが、例えば長さは100μm~5mm、より好ましくは500μm~3mm程度であり、直径は例えば1~50μm、より好ましくは3~30μm程度である。また、板状充填剤又は粉状充填剤を用いる場合、その平均粒子径も特に限定されないが、例えば0.1~100μm、より好ましくは0.1~50μm程度である。これらの(C)充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
(C)無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して10質量部以上100質量部以下であることが好ましく、20質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上75質量部以下であることがさらに好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0039】
剛性の観点から、(C)無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましい。一方、流動性の観点から、(C)無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることがさらに好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0040】
(D)シリコーン系化合物
本実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(D)シリコーン系化合物を含むことが好ましい。
【0041】
シリコーン系化合物として好ましいのは、一般にシリコーンオイルとして知られている、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどの純シリコーン樹脂、純シリコーン樹脂をアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの変性用樹脂と反応させた変性シリコーンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、シリコーンオイルを吸収させた硬化シリコーンパウダー(以下、「シリコーンオイル吸収硬化シリコーンパウダー」と記載する場合もある)を用いてもよい。シリコーンオイル吸収硬化シリコーンパウダーとしては、例えば、微粉末状の硬化シリコーンに予めシリコーンオイルを0.5~80重量%配合し吸収させて任意の方法にてパウダー化することにより得られたもの用いることができる。
シリコーンオイルを吸収して硬化シリコーンパウダーを形成するシリコーンとしては、例えば、従来公知のシリコーンゴムあるいはシリコーンゲルが使用できる。
【0043】
なお、シリコーンオイルとしては、例えば、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。下記一般式(1)中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基又は水酸基であり、nは整数である。
SiO[RSiO]SiR (1)
上記一般式(1)式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基又は水酸基であるが、置換もしくは非置換の一価炭化水素基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;シクロアルキル基、β-フェニルエチル基などのアラルキル基;3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-アミノプロピル基、3-グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0044】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、アルカリ溶液に対する長期耐久性が低い傾向にある。例えば、樹脂成形品が、トイレ用洗浄剤、浴槽用洗浄剤、漂白剤、融雪剤等の、成分として水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、塩化カルシウム等を含む薬剤に接触する場所で使用される場合、樹脂成形品がアルカリ雰囲気下に曝されることになる。ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた樹脂成形品に、ネジ締め、金属圧入、かしめ等により過大な歪みがかかった状態で、上記のようなアルカリ雰囲気下に長時間曝されると、歪みとアルカリ成分の双方の影響で、いわゆる環境応力割れを起こし、成形品にクラックが発生する場合がある。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、金属又は無機固体(以下、金属等ともいう)をインサートするインサート成形品として使用される場合も多いが、そのようなインサート成形品では、射出成形時に樹脂が金属等を回り込んで合流する界面、いわゆるウエルド部が存在し、前記のような環境応力割れは、一般に成形品のウエルド部に発生することが多い。
【0045】
成形品の耐アルカリ性向上の観点から、(D)シリコーン系化合物の、25℃における動粘度は、1000~10000cSt(10~100cm/s)であることが好ましく、2000~8000cStであることがより好ましく、3000~8000cStであることがさらに好ましく、3000~6000cStであることがさらに好ましく、4000~6000cStであることがさらに好ましい。なお、先に述べたシリコーンオイル吸収硬化シリコーンパウダーを用いる場合は、吸収させるシリコーンオイルとして上記範囲の動粘度のものを用いればよい。
25℃における動粘度は、JIS Z8803に記載された方法により求めることができる。
【0046】
(D)シリコーン系化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(D)シリコーン系化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.6質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましく、0.7質量部以上1.1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0048】
成形品の耐アルカリ性向上の効果の観点から、(D)シリコーン系化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上であることがより好ましく、0.7質量部以上であることがさらに好ましい。
一方、成形品からの染み出しによる問題(例えば接点汚染等)を抑制する観点から、(D)シリコーン系化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0049】
(E)その他の成分
本実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、目的に応じて、上述の(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)エチレンエチルアクリレート共重合体、(C)無機充填剤、及び(D)シリコーン系化合物以外の成分を任意に含んでもよい。(E)その他の成分としては、酸化防止剤、安定剤、分子量調整剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤、赤外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、耐加水分解性向上剤、流動性改良剤、相溶化剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
なお、本実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、上記(A)~(D)成分の含有量の合計が、全組成物中の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であってもよい。
上記(A)~(D)成分の含有量の合計の上限は特に限定されず100質量%であってもよい。上記(A)~(D)成分の含有量の合計を上記範囲内とすることにより、靭性、剛性、外観のより優れた成形品を成形することが可能な樹脂組成物を得ることができる。
【0051】
流動性の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性は、ISO11443に準拠し、炉体温度260℃、キャピラリーφ1mm×20mmL、剪断速度1000sec-1にて測定した溶融粘度が、0.3kPa・s以下であることが好ましく、0.28kPa・s以下であることがより好ましく、0.25kPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0052】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法として知られる種々の方法によって製造することができる。好適な方法としては、例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出しペレットとする方法が挙げられる。
【0053】
<成形品>
上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてなる成形品について説明する。
【0054】
本発明の一実施形態は、上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて成形された成形品に関する。
この成形品は、例えば、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる樹脂部のみを含んでもよく、例えば、後述するように、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる樹脂部と、金属及び/又は無機固体からなるインサート部材とを含んでもよい。
【0055】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて成形品を得る方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して成形品を得ることができる。このような方法としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成分を溶融混練して押出して作製したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
本実施形態の成形品は、上記のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を、金属及び/又は無機固体からなるインサート部材とともに射出成形して得られるインサート成形品とすることもできる。
【0056】
本実施形態の成形品は、靭性及び剛性に優れるとともに、優れた外観を有することができる。表面の荒れが抑制された良好な外観の成形品を得る観点から、成形品の表面粗さは、JIS B 0601-2013による算術平均粗さRaとして、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましい。
【0057】
本実施形態の成形品は、たとえば、アルカリ溶液に接する部品として用いられる成形品(より好ましくは、インサート成形品)に適用してもよい。アルカリ溶液に接する部品として用いられる成形品(より好ましくは、インサート成形品)に適用する場合、特に、上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物として、25℃における動粘度が1000~10000cSt(より好ましくは、2000~8000cSt、さらに好ましくは、3000~8000cSt、さらに好ましくは4000~6000cSt)であるシリコーン系化合物を、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.5~2質量部含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0058】
本発明の実施形態は、下記を含むが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
<1> (A)固有粘度が0.65~0.90dL/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、
(B)エチレンエチルアクリレート共重合体5~30質量部と、
(C)無機充填剤10~100質量部とを含み、
前記(B)エチレンエチルアクリレート共重合体の190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以下である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
<2> 前記(B)エチレンエチルアクリレート共重合体の前記メルトフローレートが、5g/10min以下である、<1>に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
<3> さらに、(D)25℃における動粘度が3000~8000cStであるシリコーン系化合物を、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.5~2質量部含む、<1>又は<2>に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
<4> <1>~<3>のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてなる成形品。
<5> アルカリ溶液に接する部品に用いられる、<3>に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてなる成形品。
<6> 表面粗さが、JIS B 0601-2013に準拠した算術平均粗さRaとして、2μm以下である、<4>又は<5>に記載の成形品。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
表1~3に示す成分を同表に示す割合(質量部)で混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュ回転130rpmで溶融混練して押出し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。使用した各成分の詳細を以下に示す。
【0061】
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)
・PBT樹脂A-1:ポリプラスチックス株式会社製PBT樹脂(固有粘度(IV)=0.88dL/g)
・PBT樹脂A-2:ポリプラスチックス株式会社製PBT樹脂(固有粘度(IV)=0.69dL/g)
【0062】
(2)エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA共重合体)
・EEA共重合体B-1:株式会社ENEOS NUC製エチレンエチルアクリレート共重合体「NUC-6510」(エチルアクリレート含有量23質量%、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート0.5g/10min)
・EEA共重合体B-2:株式会社ENEOS NUC製エチレンエチルアクリレート共重合体「NUC-6520」(エチルアクリレート含有量24質量%、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート1.6g/10min)
・EEA共重合体B-3:株式会社ENEOS NUC製エチレンエチルアクリレート共重合体「DPDJ-9169」(エチルアクリレート含有量20質量%、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート20.0g/10min)
・EEA共重合体B-4:株式会社ENEOS NUC製エチレンエチルアクリレート共重合体「NUC-6570」(エチルアクリレート含有量25質量%、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート20.0g/10min)
・EEA共重合体B-5:株式会社ENEOS NUC製エチレンエチルアクリレート共重合体「NUC-6940」(エチルアクリレート含有量35質量%、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート20.0g/10min)
・EEA共重合体B-6:株式会社ENEOS NUC製エチレンエチルアクリレート共重合体「NUC-6070」(エチルアクリレート含有量25質量%、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート250.0g/10min)
・EEA共重合体B-7:日油株式会社製エチレンエチルアクリレートとブチルアクリレート-メチルメタクリレートのグラフト共重合体「モディパーA5300」(190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート0.1g/10min)
【0063】
(3)無機充填剤
・ガラス繊維(GF):日本電気硝子株式会社製「ECS03T-127」(平均繊維径13μm、平均繊維長3mm)
【0064】
(4)シリコーン系化合物
・シリコーン系化合物:25℃の動粘度5000cStのジメチルポリシロキサン
【0065】
(5)その他
・耐加水分解性向上剤(エポキシ樹脂):三菱ケミカル株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂「jER1004K」
・酸化防止剤:BASFジャパン株式会社製「Irganox1010」
・着色剤(カーボンブラック):コロンビヤンカーボン日本株式会社製「Raven UV-Ultra」
・相溶化剤:住友化学製エチレン・グリシジルメタクリレート「ボンドファーストE」
【0066】
<評価>
(1)外観
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃にて射出成形し、フィルムゲート、穴、及びウエルド部を有する、厚さ1mmt、一辺80mmの平板状の成形片を作製した。
【0067】
図1は得られた成形片を摸式的に示した図である。図1において、10は成形片、1はフィルムゲート、2は穴、3はウエルド部を、それぞれ摸式的に示す。4は、成形片のフィルムゲート側の端部を示し、5は、端部4とは穴2をはさんで反対側の端部を示す。また、図1中、XとX’とを結ぶ直線は、後述する表面粗さの測定範囲を示す。
【0068】
この成形片において、上面の端部5付近を目視で観察し、下記の基準で評価した。結果を表中に示す。また、下記の評価基準A、B、Cにそれぞれ該当する場合の参考例の写真を図2に示す。図2において、Aは、評価基準Aに該当する場合の参考例、Bは、評価基準Bに該当する場合の参考例、Cは評価基準Cに該当する場合の参考例の成形片表面の写真を示す。また、図2のBおよびCにおいて、白い枠で囲まれた部分は、白化が認められる部分である。
A:白化が認められない
B:一部に白化が認められる
C:全体的に白化が認められる
【0069】
(2)表面粗さ
表面粗さ測定器(株式会社ミツトヨ製、輪郭形状測定機「サーフテストエクストリームSV-3000CNC」)を用いて、外観の評価で作製した成形片のXとX’とを結ぶ4mmの範囲を測定し、JIS B 0601-2013に準拠した算術平均粗さRaを求めた。結果を表中に示す。
【0070】
(3)耐アルカリ性
外観の評価で作製した成形片を長手方向の略中央部がウエルド部となるよう、幅10mm、長さ80mmの短冊状に切削して試験片を準備した。試験片をたわませた状態で治具に固定し、常時1.0%の曲げ歪みがウエルド部に加わるようにした。この状態のまま、治具ごと10質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、周辺温度23℃にて静置し、24時間後に試験片にクラックが発生するか否かを観察した。評価は、各実施例・比較例のペレットについて3個ずつの試験片を用いて行った。表中に、評価結果を示す。Aは、3個の試験片のいずれにもクラックの発生がないことを意味し、Bは、3個のうち少なくとも1つの試験片にクラックの発生があることを意味する。
【0071】
(4)シャルピー衝撃強さ(靭性)
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを140℃で3時間乾燥後、成形温度260℃、金型温度80℃で射出成形し、シャルピー衝撃試験片を作製し、ISO179/1eAに定められる試験基準に従い、23℃の条件で評価した。結果を表中に示す。
【0072】
(5)溶融粘度
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットについて、ISO11443に準拠し、キャピログラフ1B(東洋精機製作所社製)を用いて、炉体温度260℃、キャピラリーφ1mm×20mmL、剪断速度1000sec-1の条件で溶融粘度を測定した。結果を表中に示す。
【0073】
(6)曲げ弾性率(剛性)
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、射出成形し、ISO3167に準じた曲げ試験片(80mm×10mm×4mm)を作製した。作製した試験片の曲げ弾性率をISO178に準拠して測定した。結果を表中に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表1~3に示すように、実施例1~10のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物では、外観、表面粗さ、シャルピー衝撃強さ及び曲げ弾性率のいずれにおいても優れた結果を示され、外観、靭性及び剛性に優れる成形品を得られることがわかる。
一方、EEA共重合体を含まない比較例1および2の組成物は、得られた成形品のシャルピー衝撃強さの値が低かった。また、190℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートの値が高いEEA共重合体を用いた比較例3~5の組成物は、得られた成形品の外観が悪く、表面粗さの値も大きかった。
図1
図2