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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031009
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】シート加工装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/06 20060101AFI20230301BHJP
   B65H 45/30 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B65H37/06
B65H45/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136459
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】篠田 淳
(72)【発明者】
【氏名】森 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
【テーマコード(参考)】
3F108
【Fターム(参考)】
3F108AA01
3F108AB01
3F108AC01
3F108BA04
3F108CB02
3F108GA01
3F108GB03
(57)【要約】
【課題】任意の数及び任意の向きのクリース加工を行うときのシート加工の生産性低下を抑制するシート加工装置を提供する。
【解決手段】シート材に折りスジを形成するシート加工装置において、軸方向に渡って外周面から突出した一又は複数のシート加工刃を備える回転体を備え、回転体は、シート材の移動経路において、シート材の移動方向と直交する方向に対向し、かつ、互いの外周面が接しない位置に離間して配置され、一のシート材が回転体の間を移動するとき、当該シート材の移動速度に応じて、対向し合う各シート加工刃を回動させながら当該シート材に接触させて複数の折りスジを形成し、当該折りスジの形成間隔は可変可能であるシート加工装置による。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材に折りスジを形成するシート加工装置であって、
軸方向に渡って外周面から突出した一又は複数のシート加工刃を備える回転体を備え、
前記回転体は、前記シート材の移動経路において、前記シート材の移動方向と直交する方向に対向し、かつ、互いの外周面が接しない位置に離間して配置され、
一の前記シート材が前記回転体の間を移動するとき、当該シート材の移動速度に応じて、対向し合う各シート加工刃を回動させながら当該シート材に接触させて複数の前記折りスジを形成し、
当該折りスジの形成間隔は可変可能である、
ことを特徴とするシート加工装置。
【請求項2】
前記シート加工刃が前記シート材に接触していないときの前記回転体の回転速度を可変し、前記折りスジの間隔を調整する、
請求項1に記載のシート加工装置。
【請求項3】
前記シート加工刃は前記回転体の軸方向に設けられた溝に嵌合し、着脱自在である、
請求項1又は2に記載のシート加工装置。
【請求項4】
前記回転体は、前記シート材に折りスジを形成せずに移動させるとき、前記シート加工刃を前記移動経路の外側に移動させる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシート加工装置。
【請求項5】
対向する前記シート加工刃が前記シート材に接触して前記折りスジを形成するとき、当該シート材の移動速度に合わせて前記回転体の回転速度が制御される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシート加工装置。
【請求項6】
前記シート加工刃を前記回転体の外周面において移動可能にする加工刃移動機構を備える、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシート加工装置。
【請求項7】
前記加工刃移動機構は、前記回転体の回転速度と異なる速度で当該回転体の外周面を移動する状態と、当該回転体の回転速度と同速で回動する状態と、を切り替え可能である、
請求項6に記載のシート加工装置。
【請求項8】
前記加工刃移動機構は、前記シート材が前記シート加工刃に接触する位置に移動するまでに、前記シート加工刃を所定の位置に移動させる、
請求項6に記載のシート加工装置。
【請求項9】
シート材に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像が形成された前記シート材に対してスジを付ける加工を行う請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシート加工装置と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート加工装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置や後処理周辺装置から排出されるシート材に折り処理を容易にするための折りスジ(クリース)を付ける装置として、シート加工装置が知られている。シート加工装置は、特に、冊子を作成するときに、複数のシート材をそれぞれ折りやすくするために、折り目となる位置に折りスジを付けるときに用いられる。
【0003】
折りスジを付けるクリース加工に関し、シート材の厚み分に対応する間隔で折りスジを付けるとき、冊子において、最も内側のシート材の折りスジよりも、外側の位置するシート材の折りスジの間隔を広げる技術が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術は、同一のシート材に対して、複数種類のクリース加工を施す場合、二つの面に異なる加工刃を持った加工部材を切り替える時間が発生する。そして、複数箇所にて複数種類のクリース加工を施す場合は、クリースの種類を切り替える時間がクリース加工の回数に相当する数だけ必要となるため、クリースの種類を切り替える動作に切り替え時間を合わせた切り替え待ち時間が発生する。この切り替え待ち時間は、加工部材の回転完了を待つ時間に当たるので、シート材の移動は停止させざるを得ない。そこで、クリース加工を行って冊子を生産するときの生産性が低下する、という課題がある。
【0005】
本発明は、任意の数及び任意の向きのクリース加工を行うときのシート加工の生産性低下を抑制するシート加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、シート材に折りスジを形成するシート加工装置であって、軸方向に渡って外周面から突出した一又は複数のシート加工刃を備える回転体を備え、前記回転体は、前記シート材の移動経路において、前記シート材の移動方向と直交する方向に対向し、かつ、互いの外周面が接しない位置に離間して配置され、一の前記シート材が前記回転体の間を移動するとき、当該シート材の移動速度に応じて、対向し合う各シート加工刃を回動させながら当該シート材に接触させて複数の前記折りスジを形成し、当該折りスジの形成間隔は可変可能である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、任意の数及び任意の向きのクリース加工を行うときのシート加工の生産性低下を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る画像形成システムの実施形態を示す構成図。
図2】本発明に係るシート加工装置の実施形態の基本構成を示す図。
図3】上記実施形態に係るシート加工装置の構成例を示す図。
図4】上記実施形態に係るシート加工装置の加工部材の構成の例を示す図。
図5】上記実施形態に係るシート加工装置の加工部材の構成の別例を示す図。
図6】上記実施形態に係るシート加工装置の加工部材の移動機構の例を示す図。
図7】上記実施形態に係るシート加工装置の加工部材の移動機構の別例を示す図。
図8】上記実施形態に係るシート加工装置のクリース加工の一工程を例示する図。
図9】上記実施形態に係るシート加工装置のクリース加工の一工程を例示する図。
図10】上記実施形態に係るシート加工装置のクリース加工の一工程を例示する図。
図11】上記実施形態に係るシート加工装置のクリース加工の一工程を例示する図。
図12】上記実施形態に係るシート加工装置のクリース加工の一工程を例示する図。
図13】上記実施形態に係るシート加工装置のクリース加工の一工程を例示する図。
図14】上記実施形態に係るシート加工装置のクリース加工の一工程を例示する図。
図15】上記実施形態に係るクリース加工処理の流れを示すフローチャート。
図16】上記実施形態に係るクリース加工処理の設定インターフェースの例を示す図。
図17】上記実施形態に係るクリース加工処理の設定インターフェースの別例を示す図。
図18】上記実施形態に係るクリース加工設定処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[画像形成システムの実施形態]
まず、本発明に係る画像形成システムの実施形態について説明する。図1は、画像形成システムの一例としてのプリントシステム1の構成を概略的に示す図である。プリントシステム1は、画像形成装置100と、後処理周辺装置200と、を連携して構成されている。後処理周辺装置200には、本発明に係るシート加工装置の実施形態としてのクリース加工装置210が設置されている。
【0010】
画像形成装置100は、画像形成処理を制御するための画像形成制御部としての情報処理部110と、画像形成処理に用いる各種設定を入力するための操作インターフェースとしての操作部120を備える。
【0011】
操作部120は、クリース加工に用いられる各種の情報設定に用いられる。そして、操作部120を介して入力された各種設定は、情報処理部110からクリース加工装置210に対して制御信号として通知される。クリース加工装置210は、画像形成装置100からの制御信号に応じて、後述するクリース加工を実行する。
【0012】
操作部120において入力される各種設定としては、例えば、シート材Sの大きさ、シート材Sの厚さ、シート材Sに形成する折りスジ(クリース)の位置などを示す情報が含まれる。なお、情報処理部110及び操作部120に相当する構成をクリース加工装置210が独立して備えてもよい。
【0013】
[クリース加工装置210の基本構成]
まず、本実施形態に係るクリース加工装置210の基本的な構成について図2を用いて説明する。図2に示すように、クリース加工装置210は、画像形成装置100から排出されてくるシート材Sの移動経路としての搬送経路Rに対し、対向して配置された一対のローラ211を備える。図2に示す搬送経路Rにおいて、Y方向がシート材Sの搬送方向(移動方向)に相当する。この搬送経路Rを移動中のシート材Sに対して、後述する嵌合位置X1において対向する加工刃213が嵌合するように動作することで、シート材Sの所定の位置にクリース(折りスジ)を形成することができる。なお、図2において、嵌合位置X1に相当しうる位置を破線円にて例示している。
【0014】
回転体としてのローラ211は、搬送経路Rの上流から下流への方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に、回転軸が延伸している長尺の円筒形部材である。ローラ211の外周の一部には、外周面から突出するように設けられた加工部材212を備えている。そして、一つの加工部材212には、シート加工刃としての加工刃213を一つ又は複数備えている。ローラ211の外周面は、搬送経路Rを挟んで対向して隙間を形成する状態で保持されている。すなわち、ローラ211の外周面同士は離間している。
【0015】
対向するローラ211の一方の外周面に備わる加工刃213と、他方のローラ211に備わる加工刃213は、ローラ211が回転することで移動し、搬送経路R上の特定のクリース形成処理位置としての嵌合位置X1において、互いに嵌合するようになっている。この加工刃213の嵌合においてシート材Sが加工刃213に挟み込まれて、加工刃213の形状に沿ったクリースが形成される。したがって、一方の加工刃213と他方の加工刃213は互いに嵌合し合う形状になっている。例えば、一方が凸形状であり、他方が凹形状である。
【0016】
凸形状の加工刃213(凸の加工刃213)とは、加工部材212の外壁(対向するローラ211側の面)から突出している加工刃213をいう。また、凹形状の加工刃213(凹の加工刃213)とは、加工部材212の外壁(対向するローラ211側の面)に凹みとして形成される加工刃213をいう。後述するように、凸の加工刃213と凹の加工刃213は、互いが設けられているローラ211の回転により、嵌合位置X1において嵌合する形状になっていて、この嵌合部分にシート材Sを挟み込むことで、加工刃213の形状に応じたクリースが形成される。
【0017】
シート材Sが嵌合位置X1を通過するときに二つの加工刃213で挟む状態になる。そして、シート材Sが嵌合位置X1に存在しないとき、又は、シート材Sにクリースを形成する位置が嵌合位置X1に無いときは、加工刃213は嵌合位置X1から離れた退避位置に移動する。なお、加工刃213は、ローラ211と同様に、シート材Sの搬送方向に直交する方向に延伸されている部材であるから、クリースはシート材Sの幅方向の全幅において形成される。
【0018】
すなわち、クリース加工装置210は、搬送されてくるシート材Sに折りスジを形成するにあたり、設定された折りスジの形成位置が嵌合位置X1に位置するときに、凸の加工刃213と凹の加工刃213が嵌合位置X1で嵌合するようにローラ211を回転させる。また、ローラ211の回転速度は、それぞれ個別に制御されてもよいし、同速度でもよい。また、嵌合位置X1において凸の加工刃213と凹の加工刃213が嵌合する時の加工刃213の角速度が、シート材Sの移動速度と同速になるようにローラ211の回転速度を調整すればよい。
【0019】
したがって、本実施形態に係るクリース加工装置210は、所定の折りスジ加工(クリース加工)を実行するときに、シート材Sの移動を停止させることなく、またシート材Sの移動速度を減速させることなく、所定の位置に折りスジを形成できる。
【0020】
[クリース加工装置210の第一実施形態]
次に、クリース加工装置210の第一実施形態について図3を用いて説明する。図3に示すように、本実施形態に係るクリース加工装置210は、ローラ211の外周面に複数の加工部材212を備えている。例えば、ローラ211の外周面において、90度間隔で設けられている。
【0021】
また、一つの加工部材212において、複数の加工刃213を備えてもよい。加工部材212には、それぞれ異なる加工刃213を備えておき、指定されたクリース加工の内容に応じた加工刃213が、所定のタイミングで嵌合位置X1へ移動するように回動させる。このとき、クリース加工に用いられない加工刃213は、シート材Sの搬送経路Rに掛からない位置にて退避させておけばよい。
【0022】
また、図3に示すように、一つの加工部材212に備える複数の加工刃213の種類は、複数あってもよい。したがって、指定されたクリース加工の内容に応じて、指定された種類のクリースを形成可能な加工刃213を備える加工部材212が、所定のタイミングで嵌合位置X1へと回動する。
【0023】
したがって、どの加工刃213を嵌合位置X1へ回動させて、どの加工刃213を退避位置に移動させるかは、操作部120を介してユーザーが指定したクリース加工に内容に応じて決定される。そして決定された内容に基づいて、ローラ211の回転方向及び回転量が制御されて、所定の加工刃213が嵌合位置X1へと回動するように制御される。
【0024】
なお、クリース加工を行うための加工刃213を嵌合位置X1に移動させるときのローラ211の回転速度は、シート材Sの搬送速度よりも速くてもよい。クリース加工を行うときには、シート材Sの搬送速度と加工刃213の角速度が同速になるように調整すれば、シート材Sの搬送速度と、クリース形成の速度の不一致により、シート材Sを損傷することを防止できる。
【0025】
[加工部材212の着脱構成]
また、加工部材212は、図4に示すように、ローラ211に対して着脱可能に設置されている。ローラ211の外周の一部には、ローラ211の軸方向の全幅に渡って溝2111が形成されている。そして、溝2111に対して、ローラ211の軸方向から加工部材212を挿入して装着する。溝2111は、たとえばローラ211の外周において90度間隔で形成されていて、それぞれの溝2111に異なる加工刃213を備える加工部材212を挿入することができる。
【0026】
一つの加工部材212に対して設けられている加工刃213の数や形状によって、様々なクリース加工を施すことができるので、ユーザーが任意で所定の加工刃213を交換することで、多様なクリース加工を行うことができる。
【0027】
なお、ローラ211に対して着脱自在に構成されている加工部材212にICチップ等の個体識別を可能にする構成を設けてもよい。この場合、加工部材212がローラ211に挿入されて嵌合されたときに、ローラ211に設けられているICチップリーダによって個体識別情報を読み取るように構成してもよい。ローラ211に装着されている加工部材212を識別することで、当該ローラ211に装着されている加工刃213の数や種類、ローラ211の外周における位置などの情報を情報処理部110に送信することができる。
【0028】
そして、情報処理部110では、装着されている加工刃213に関する情報を操作インターフェースとしての操作部120に表示させる。そして、ユーザーは表示されたものの中から任意の加工刃213を選択する操作を操作部120に対して行う。これによって、情報処理部110は、ユーザーによるクリース加工の設定を受け付けることができ、指定された設定に基づくクリース加工を制御することができる。
【0029】
[クリース加工装置210の第二実施形態]
次に、クリース加工装置210の第二実施形態を説明する。図5に示すように、本実施形態に係るクリース加工装置210は、ローラ211の外周面に設けられた加工部材212が、ローラ211の外周面上を移動可能な構成を備える。
【0030】
なお、加工部材212の回動の速度(角速度)は、クリース加工時におけるローラ211の回転速度と同速度である。
【0031】
図6は、加工部材212をローラ211の外周面上で移動させる加工刃移動機構の実施形態を示している。図6(a)に示すように、本実施形態に係るローラ211は、外周面に設けられた加工部材212と、これとは別体に、加工部材土台214を介して外周面の所定の位置に移動可能に設けられた加工部材212を備える。
【0032】
加工刃移動機構としての加工部材土台214は、ローラ211の回転軸に対して回動可能に支持されていて、回転軸を回転中心として、ローラ211の外周面に沿って回動するように構成されている。
【0033】
図6(b)は、本実施形態に係るクリース加工装置210をシート材Sの移動方向からみた図である。なお、ローラ211の回転軸であるローラ軸2112は、ローラ211の内部を貫通している部材であるが、図6(b)では説明の便宜上、明示している。
【0034】
図6(b)に示すように、加工部材土台214は、ローラ211の駆動源としてのローラ駆動用モータ215とは別の駆動源である加工部材移動用モータ217によって回動するように構成されている。
【0035】
加工部材移動用モータ217の回転軸に設けられている加工部材駆動用ギヤ2171が、加工部材移動用ギヤ218に嵌合するように構成されている。加工部材移動用ギヤ218は、加工部材土台214の端部に固定されているので、加工部材駆動用ギヤ2171が回転し、その駆動力によって加工部材移動用ギヤ218が回転すると、加工部材土台214がローラ軸2112とは独立して回動する。
【0036】
なお、ローラ211は、ローラ駆動用モータ215の駆動軸に設けられているローラ駆動用ギヤ2151がローラ回転用ギヤ216に嵌合することで回転するように構成されている。ローラ回転用ギヤ216は、ローラ211の回転軸としてのローラ軸2112の端部に設けられている。ローラ軸2112が回転することでローラ211は回転する。このとき、加工部材移動用ギヤ218はローラ軸2112に対して回転自在に保持されているので、ローラ軸2112の回転によって加工部材移動用ギヤ218は回転しない。
【0037】
本実施形態に係るクリース加工装置210は、加工刃213を回動させてシート材Sの搬送状況に対する相対的な位置を調整するときは、加工部材移動用モータ217の駆動力によって加工部材土台214をローラ211の外周面に沿って回動させる。この制御によって、ローラ211の回転とは独立して、加工刃213の位置を移動できる。
【0038】
そして、シート材Sに対してクリース加工を行う時には、ローラ駆動用モータ215と加工部材移動用モータ217をそれぞれ個別に駆動させて、ローラ211と加工部材土台214が同じ回転速度になるようにする。
【0039】
なお、図6では、加工部材土台214を一つだけ設けた構成を例示したが、これに限定されるものではなく、加工部材土台214を複数設けてもよい。また、一つの加工部材土台214に設けられる加工刃213を複数設けてもよい。
【0040】
[クリース加工装置210の第二実施形態の別例]
次に、クリース加工装置210の第二実施形態の別の例を説明する。図7(a)に示すように、本実施形態に係るローラ211も、外周面に設けられた加工部材212と、これとは別体に、加工部材土台214を介して外周面の所定の位置に移動可能に設けられた加工部材212を備える。
【0041】
そして、図7(b)に示すように、本実施形態では、加工部材212を移動させる加工部材土台214の駆動源を、ローラ211の駆動源としてのローラ駆動用モータ215のみにし、駆動力の伝達を切り替えるクラッチ機構2172を備える。
【0042】
本実施形態に係るクリース加工装置210が備えるローラ211は、ローラ軸2112の端部にローラ回転用ギヤ216が設けられていて、それよりも内側に加工部材移動用ギヤ218が設けられている。また、駆動源としてのローラ駆動用モータ215の回転軸にはローラ駆動用ギヤ2151が設けられている。そして、ローラ駆動用ギヤ2151の駆動力はクラッチ機構2172に伝達するように設けられている。
【0043】
加工部材土台214のみを回転させる場合、クラッチ機構2172を動作させて、ローラ駆動用ギヤ2151から伝達された駆動力が加工部材移動用ギヤ218のみに伝達されるように切り替える。このとき、物理的に連結を離す等の手段でローラ211への動力の伝達を遮断して、加工部材土台214のみに動力が伝達される状態にする。
【0044】
クリース加工時はクラッチ機構2172を動作させて駆動力の伝達を切り替えて、ローラ回転用ギヤ216をクラッチ機構2172のギヤに再嵌め込み等を行い、再度ローラ211への動力伝達を復活させる。これによって、ローラ211と加工部材土台214が同速度で回転する状態へ移行する。
【0045】
[クリース加工装置210の動作の流れ]
次に、シート材Sに対してクリース加工を行うときの、クリース加工装置210の動作の流れについて図8から図13を用いて説明する。図8は、プリントシステム1において画像形成処理が開始されから、クリース加工装置210にシート部材が搬送されてくるまでの待機状態を例示している。なお、複数枚のシート材Sが排出されてきて、それらに対して個別にクリース加工を施すときは、次にクリース加工を行うシート材Sの排出を待つときも、図8と同様の待ち状態から始まる。
【0046】
まず、画像形成指示に含まれるシート材Sの種別に関する設定(用紙設定)や、画像形成に関する指示設定に基づいて、クリース加工に用いられる加工刃213が決定される。そして、決定された加工刃213に基づいて、使用される加工部材212が決定される。そして、決定された加工部材212は、シート材Sにクリースを形成する位置が嵌合位置X1に至るタイミングに合うように、所定の回転開始位置で待機する。
【0047】
なお、第二実施形態として説明したクリース加工装置210のように、加工部材212がローラ211の外周面に沿って任意の位置に移動可能な構成であれば、待ち状態においてローラ211を回転させずに加工刃213のみを適切な位置に移動させる。移動後は、クリール加工時まで待機位置で固定される。
【0048】
以上のように、シート材Sが嵌合位置X1に搬送されてくるまでは、ローラ211、加工部材212、加工刃213のいずれもシート材Sの搬送経路R上に掛からない位置(退避位置)に退避して、シート材Sの搬送を阻害しない状態を維持する。
【0049】
続いて、図9に示すように、シート材Sが排出されて搬送されてきたことをシート検知センサ221によって検知する。シート検知センサ221は搬送経路Rにおいて移動するシート材Sの先端を検知するように調整されている。したがって、シート検知センサ221においてシート材Sが検知された時間と、シート材Sの搬送速度から、シート材Sが嵌合位置X1に到達する時刻を割り出すことができる。シート材Sの搬送速度は、搬送ローラ対220の回転速度によって調整される。
【0050】
ローラ211は、シート材Sのクリース位置が嵌合位置X1に到達するときには、加工刃213が嵌合位置X1に存在するように、所定の待ち処理の後に、クリース加工のための回転を開始する。なお、待ち処理を行う時間(待機時間)は、画像形成装置100又は後処理周辺装置200において設定された搬送線速で搬送されるシート材Sに対し、予め設定されたクリース加工位置が加工刃213の嵌合位置X1に到達するまでの時間と、ローラ211上の待機位置にある加工部材212及び加工刃213が回転を開始してから嵌合位置X1に到達するまでの時間の差分を補完するように設定される。
【0051】
続いて、図10に示すように、一度目のクリース加工が実行される。このとき、最初の加工部材212が備える加工刃213が嵌合位置X1において互いに嵌合し、シート材Sの所定の位置に最初のクリースが形成される。
【0052】
続いて、図11に示すように、クリース加工を複数回行う設定であれば、二度目以降のクリース加工を実行するために、設定されている加工刃213が嵌合位置X1に移動して嵌合するようにローラ211が回転する。このローラ211の回転速度を制御することにより、複数のクリースの形成間隔を可変することができる。
【0053】
なお、クリース加工を複数回行わない設定のときは、図12に示すように、一度目のクリース加工を実行する時に加工刃213が嵌合してから離間した後、加工部材212及び加工刃213をシート材Sの搬送を阻害しない位置まで移動させる。すなわち、搬送経路Rから離れた位置であって、シート材Sの搬送の障害にならない位置まで加工部材212及び加工刃213を移動させてから、ローラ211の回転を停止する。
【0054】
その後、シート材Sが嵌合位置X1を通過した後に、再度ローラ211を回転させて、図8に示したように、次のシート材Sの搬送を待つ状態へと移行する(図8参照)。
【0055】
一枚のシート材Sに対して複数回のクリース加工を行う設定のときは、図13に示すように動作する。すなわち、最後のクリース加工に使用された加工刃213がシート材Sから離間した後、シート材Sが嵌合位置X1を通過し終わるまでは、ローラ211が搬送経路Rに掛からない位置に加工刃213を停止させる。そして、シート材Sの通過後に再度加工刃213の移動を開始して、待機状態(次のクリース加工で使用する加工部材212及び加工刃213が最初に嵌合できる状態)に移行する。
【0056】
続いて、一つの加工部材212を用いて複数個所のクリース加工を行うときの動作について説明する。図14に示すように、一回目のクリース加工において、加工刃213が嵌合位置X1にてクリース加工を行い、シート材Sから離間した後、ローラ211の回転速度を変化させる。このときの回転速度は、2回目のクリース加工に間に合うように、嵌合位置X1までの加工刃213の角速度を制御する。例えば、シート材Sの搬送速度よりも速い角速度をもって加工刃213を回動させて、二度目のクリース加工位置が嵌合位置X1に到達するタイミングで、加工刃213が嵌合位置X1で嵌合するように制御する。
【0057】
二度目以降のクリース加工を実行するときにも、加工刃213が嵌合位置X1に到達するまでの加工刃213の角速度は、シート材Sの搬送速度よりも速くする。そして、嵌合位置X1を通過するときには、シート材Sの搬送速度と角速度が同速度になるように調整する。これによって、クリースの形成不良を抑制し、シート材Sの所定の位置において確実にクリース加工を行うことができる。
【0058】
[制御フロー]
次に、上記にて説明をしたクリース加工を実行するときの一連の制御処理の流れについて、図15に示すフローチャートを用いて説明する。プリントシステム1の動作として印刷処理が開始されたところから制御処理が開始される。
【0059】
まず、印刷処理に使用されるシート材Sの折り種別(クリース種別)や、一枚のシート材Sに対してクリース加工を施す回数(クリース本数)、各クリース加工のシート材Sにおける位置(クリース位置)を情報処理部110から読み込む(S1501)。したがって、「クリース種別」、「クリース本数」、「クリース位置」は、操作部120を介して予め情報処理部110に対して設定され記憶されているものとする。
【0060】
続いて、読み出した設定情報に基づいて、一枚のシート材Sに対するクリース処理に複数の加工部材212を使用する必要があるか否か(S1502)を判定する。また、使用する加工部材212がシート材Sにクリースを形成する順番が、ローラ211が回転して嵌合位置X1に至る順番と同じか否か(S1503)を判定する。
【0061】
一枚のシート材Sに対するクリース処理に複数の加工部材212を使用する必要がなければ(S1502:NO)、使用する加工部材212を待機位置に移動させる(S1505)。
【0062】
一枚のシート材Sに対するクリース処理に複数の加工部材212を使用する必要あるときは(S1502:YES)、ローラ211に装着されている加工部材212の順番を判定する。すなわち、回転方向における加工部材212の並び順が、ローラ211が回転して嵌合位置X1に至る順番と同じであれば(S1503:YES)、使用する加工部材212を待機位置に移動させる(S1505)。
【0063】
また、一枚のシート材Sに対するクリース処理に複数の加工部材212を使用する必要があるときに(S1502:YES)、ローラ211に装着されている加工部材212の順番と、ローラ211が回転して嵌合位置X1に至る順番が同じか否かを判定する(S1503)。ここで、順番が異なれば(S1503:NO)、順番が同じになるように、加工部材212の交換を促すよう情報をユーザーに通知する(S1504)。そして、加工部材212の順番が整った後に、使用する加工部材212を待機位置に移動させる(S1505)。
【0064】
なお、加工部材212を交換しなくても、必要な加工部材212を移動させることで対応できるときは、ユーザーへの通知の代わりに加工部材212の移動を行えばよい。
【0065】
シート材Sに形成すべきクリース位置が嵌合位置X1に至るタイミングでローラ211を回転させてクリース加工を実行する(S1506)。
【0066】
同一のシート材Sに更にクリース加工を行うときは(S1507:NO)、処理をS1505に戻す。同一のシート材Sに行うクリース加工が完了していれば(S1507:YES)、シート材Sが嵌合位置X1を通過し、加工部材212に接触しない位置に至るまで、加工部材212を退避位置で停止させる(S1508)。
【0067】
続いて、次のシート材Sの搬入に備える処理を実行する(S1509)。
【0068】
[ユーザーインターフェースの実施形態]
次に、操作部120に表示されるクリース加工の設定操作に用いるユーザーインターフェースの例について説明する。図16は操作部120に表示される折り処理選択画面の例である。
【0069】
図16に示すように、折り処理の設定を行う折り処理設定画面1200において、折り処理の種類を選択するための折り種類ボタン1201の他、「折り目にクリース加工を行う」ことを指定できるクリース加工指示ボタン1202が表示されている。このクリース加工指示ボタン1202を押下すると、折り種類ボタン1201にて選択された折り処理に基づき、シート材Sに形成すべきクリース位置が判定される。すなわち、折り処理を行うときに、クリース加工処理の有無をユーザーが任意に選択できる。
【0070】
クリース加工装置210は、判定されたクリース位置においてクリースが形成されるようにローラ211等を動作させる。
【0071】
図16において説明したとおり、折り処理を実行するときにクリース処理を合わせて実行するか否かを選択できる他、折り処理とは独立してクリース処理を実行することもできる。
【0072】
図17は、クリース処理の設定を行うクリース設定画面1210の例である。クリース設定画面1210には、クリース処理の設定を追加するための「追加ボタン1211」、追加した設定を解除するための「選択を解除ボタン1212」、設定を編集するための「編集ボタン1213」が表示されている。
【0073】
また、追加されたクリース加工の設定を選択するための「設定選択ボタン1214」と、設定選択ボタン1214で選択されている設定の詳細を表示する設定詳細表示欄1215も表示されている。
【0074】
設定詳細表示欄1215には、クリースの向きを指定する向き指定ボタンや、クリース位置をシート材Sの左端(搬送方向における先端)からの距離で規定するためのクリース位置規定欄などが含まれている。
【0075】
また、クリース設定画面1210には、設定詳細表示欄1215にて設定された内容のイメージ画像を表示する設定内容確認欄1216も含まれる。
【0076】
以上説明をしたユーザーインターフェースを介して、ユーザーは、折り処理の有無に関わらず、任意の位置に任意の設定でのクリース加工を選択できる。
【0077】
図18は、図16又は図17において設定されたクリース処理を実行するときに、情報処理部110において実行されるクリース位置決定処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、複数枚のシート材Sに対する折り処理を実行して冊子を作成するために、各シート材Sに実行されるクリース処理の位置を決定する処理の例を示している。
【0078】
まず、ユーザーの任意の位置でのクリース加工であるか否かを判定する(S1801)。例えば、図16に示すように、選択された折り処理に基づいて自動的にクリース加工の設定が決定される場合(S1801:NO)、まず、画像形成装置100において実行されるジョブの情報を読み込む。そして、当該ジョブにおいて画像形成処理が行われて、その後、クリース処理が施される各シート材Sに対して、設定されている折り種類と、当該シート材Sの厚さ(紙厚t)及び折り処理後の内側にあるシート材Sの枚数(n)を算出する。
【0079】
続いて、各シート材Sに対するクリース位置を算出する。ここで、算出方法の一例を示す、例えば、折り種類が「二つ折り」であれば、最初のシート材Sの搬送方向の長さの中点が折り位置になる。したがって、この折り位置に相当する位置がクリース位置になる。そして、二枚目以降のシート材Sにおけるクリース位置は、中点から先頭及び後方の両方において、「紙厚t×n」だけずらした位置になる。
【0080】
また、例えば、図17に示すように、ユーザーが任意にクリース位置を設定したときは(S1801:YES)、設定された値でクリース処理を実行する(S1802)。
【0081】
以上説明をしたとおり、クリース加工装置210は、本件届出書の発明は、対向するローラ211に配置された一乃至複数の加工刃213を、シート材Sのクリース加工予定位置でシート材Sと同速度かつ同移動方向で嵌合するように回転させることができる。これによってシート材Sの搬送速度を低下させることなく生産性を下げずにクリース加工を完了できる。
【0082】
更に、複数本数・複数種類のクリース加工を実行する際には、加工刃213が非嵌合状態のときの回転制御や使用する加工刃213の着脱による変更により、同様に生産性を下げずにクリース加工を実行可能にする。
【0083】
すなわち、本実施形態に係るクリース加工装置210によれば、プリントシステム1において、画像形成装置100や後処理周辺装置200から排出されるシート材Sに対し、個別に好適な位置でのクリース形成を可能にする。これによって、例えば、中綴じ処理後に冊子を作成するときに、冊子を構成するシート材Sの累積的な折り高さを低減させることできるので、積載数を増加させることができ積載効率を向上できる。
【0084】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 :プリントシステム
100 :画像形成装置
110 :情報処理部
120 :操作部
200 :後処理周辺装置
210 :クリース加工装置
211 :ローラ
212 :加工部材
213 :加工刃
214 :加工部材土台
215 :ローラ駆動用モータ
216 :ローラ回転用ギヤ
217 :加工部材移動用モータ
218 :加工部材移動用ギヤ
220 :搬送ローラ対
221 :シート検知センサ
1200 :折り処理設定画面
1201 :折り種類ボタン
1202 :クリース加工指示ボタン
1210 :クリース設定画面
2111 :溝
2112 :ローラ軸
2151 :ローラ駆動用ギヤ
2171 :加工部材駆動用ギヤ
2172 :クラッチ機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2018-070272号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18