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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031059
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】長鎖アルキル変性石油樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 240/00 20060101AFI20230301BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20230301BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20230301BHJP
   D04H 1/4282 20120101ALI20230301BHJP
【FI】
C08F240/00
C08L57/02
C08L23/04
D04H1/4282
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136533
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小室 雄司
(72)【発明者】
【氏名】岡野 匡貴
(72)【発明者】
【氏名】南 裕
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4L047
【Fターム(参考)】
4J002BA012
4J002BB031
4J002GK00
4J100AB02Q
4J100AR22P
4J100BC37P
4J100CA03
4J100CA31
4J100DA25
4J100FA08
4J100FA19
4J100HA03
4J100HA33
4J100HB02
4J100HB30
4J100HC01
4J100HD16
4J100JA11
4L047AA18
(57)【要約】
【課題】ポリエチレンに添加することで、ポリエチレンの成形性を向上させることができる長鎖アルキル変性石油樹脂、及び該長鎖アルキル変性石油樹脂及びポリエチレンを含有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する長鎖アルキル変性石油樹脂、及び該長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンを含有する樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する長鎖アルキル変性石油樹脂。
【請求項2】
長鎖アルキル基の炭素数が10以上50以下である、請求項1に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
【請求項3】
前記長鎖アルキル変性石油樹脂が、芳香族系石油樹脂又は脂肪族-芳香族共重合石油樹脂である、請求項1又は2に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
【請求項4】
前記長鎖アルキル変性石油樹脂が、水添石油樹脂である、請求項1~3のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
【請求項5】
長鎖アルキル変性石油樹脂が、オレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位であって、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位と、炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位からなり、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位中、1~50モル%である、請求項1~4のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
【請求項6】
ガラス転移点が-120℃以上120℃以下である、請求項1~5のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
【請求項7】
酸触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のα-オレフィンを反応させて、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する長鎖アルキル変性石油樹脂を得る、長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法。
【請求項8】
芳香族を有する石油樹脂が、1H-NMR測定における芳香族水素の積分比率[6.5~7.5ppm領域のピークの積分値/(0.0~3.0ppm領域のピークの積分値と6.5~7.5ppm領域のピークの積分値の和)]が0.5%以上である、請求項7に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法。
【請求項9】
酸触媒が、固体酸触媒である、請求項7又は8に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂、及びポリエチレンを含有する、樹脂組成物。
【請求項11】
長鎖アルキル変性石油樹脂の含有量が1~30質量%である、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
ポリエチレンが高密度ポリエチレンである、請求項10又は11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖アルキル変性石油樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、引張強さや衝撃強さ等の機械的特性に優れ、防水性、耐薬品性に優れているばかりでなく、ヒートシール性も有するため、包装容器等、幅広い分野で用いられている。
一方、石油樹脂は、ホットメルト型接着剤や粘着テープの粘着性付与剤として使用されるが、ポリオレフィン等のプラスチックに添加して、プラスチックが有する結晶性等を調節し、物性や加工性等を向上させる検討がされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、水蒸気バリア性と透明性の改善を目的として、立体規則性の高い結晶性ポリプロピレンと、極性基を含まない石油樹脂等とからなるポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、遮断性の改善を目的として、10000ダルトン未満の重量平均分子量の樹脂であって、たとえばC9炭化水素供給原料流れの重合から誘導される樹脂と、ポリエチレンを含み、樹脂で変性しないフィルムと比較して水蒸気透過率が減少しているポリエチレンフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-076641号公報
【特許文献2】特開2009-102651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエチレンは、ポリオレフィンのなかでも強度、バリア性、低温特性、ヒートシール性等に優れるが、結晶化度が高く、結晶化が速いため、成形時に破断が生じやすい。したがって、より成形性の高いポリエチレンが望まれている。
前記のように石油樹脂は、プラスチックの改質剤として優れており、特許文献2では、遮断性を向上させるために用いられているが、成形性は不十分であった。そのため、ポリエチレンの成形性を向上させることができる樹脂添加剤が求められていた。
そこで、本発明の課題は、ポリエチレンに添加することで、ポリエチレンの成形性を向上させることができる長鎖アルキル変性石油樹脂、及び該長鎖アルキル変性石油樹脂及びポリエチレンを含有する樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、石油樹脂の芳香環に炭素数10以上の長鎖アルキル基を結合させることで、前記の課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<14>に関する。
<1>芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する長鎖アルキル変性石油樹脂。
<2>長鎖アルキル基の炭素数が10以上50以下である、前記<1>に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
<3>前記長鎖アルキル変性石油樹脂が、芳香族系石油樹脂又は脂肪族-芳香族共重合石油樹脂である、前記<1>又は<2>に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
<4>前記長鎖アルキル変性石油樹脂が、水添石油樹脂である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
<5>長鎖アルキル変性石油樹脂が、オレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位であって、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位と、炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位からなり、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位中、1~50モル%である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
<6>ガラス転移点が-120℃以上120℃以下である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂。
<7>酸触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のα-オレフィンを反応させて、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する長鎖アルキル変性石油樹脂を得る、長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法。
<8>芳香族を有する石油樹脂が、1H-NMR測定における芳香族水素の積分比率[6.5~7.5ppm領域のピークの積分値/(0.0~3.0ppm領域のピークの積分値と6.5~7.5ppm領域のピークの積分値の和)]が0.5%以上である、前記<7>に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法。
<9>酸触媒が、固体酸触媒である、前記<7>又は<8>に記載の長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法。
<10>前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の長鎖アルキル変性石油樹脂、及びポリエチレンを含有する、樹脂組成物。
<11>長鎖アルキル変性石油樹脂の含有量が1~30質量%である、前記<10>に記載の樹脂組成物。
<12>ポリエチレンが高密度ポリエチレンである、前記<10>又は<11>に記載の樹脂組成物。
<13>前記<10>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる成形体。
<14>前記<10>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる不織布。
【発明の効果】
【0008】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂は、ポリエチレンに添加することで、ポリエチレンの成形性を向上させることができる。また、該長鎖アルキル変性石油樹脂及びポリエチレンを含有する樹脂組成物は、成形性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[長鎖アルキル変性石油樹脂]
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂は、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する。
【0010】
前記長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10以上10,000以下であり、更に好ましくは10以上1,000以下であり、より更に好ましくは10以上100以下であり、より更に好ましくは10以上50以下であり、より更に好ましくは16以上50以下であり、より更に好ましくは20以上40以下である。
炭素数が前記範囲の長鎖アルキル基であると、ポリエチレンへの分散性に優れ、かつ反応性にも優れる。
【0011】
前記長鎖アルキル基は、炭化水素のみからなる無置換アルキル基であることが好ましい。
前記長鎖アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基及び環状アルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。
具体的には、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0012】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂における炭素数10以上の長鎖アルキル基は、石油樹脂部分の芳香環に結合している。
長鎖アルキル基が、石油樹脂の側鎖部分である芳香環に結合していることで、石油樹脂骨格の剛直性を大きく変化させることなく、長鎖アルキル基によって、ポリエチレンとの相溶性を向上させることができるため、ポリエチレンの改質効果が高まり、成形性が向上するものと考えられる。
【0013】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂は、オレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位であって、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位と、炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位からなることが好ましく、前記の芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位と、炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位からなる場合の、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量は、全構成単位中、好ましくは1~50モル%であり、より好ましくは2~30モル%であり、更に好ましくは5~20モル%である。芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量は、1H-NMR測定によって求めることができる。具体的には実施例に記載の方法によって求めることができる。芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量が前記範囲であることによって、ポリエチレンと混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
また、本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂において、炭素数10以上の長鎖アルキル基の含有量は、長鎖アルキル変性石油樹脂に対して、好ましくは5~90質量%であり、より好ましくは6~60質量%であり、更に好ましくは10~40質量%であり、より更に好ましくは25~35質量%である。長鎖アルキル基の含有量が前記範囲であることによって、ポリエチレンと混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
【0014】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂は、石油樹脂を主鎖とし、石油樹脂の芳香環に炭素数10以上の長鎖アルキル基が結合しているものである。以下に主鎖となる石油樹脂について説明する。
石油樹脂は、ナフサなど石油類の熱分解によるエチレンなどのオレフィン製造時に副生物として得られる炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素を、重合または共重合して得られる樹脂である。具体的には、石油樹脂は、炭素数4~10の脂肪族オレフィン類や脂肪族ジオレフィン類、あるいは炭素数8以上でかつオレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物から選ばれる1種または2種以上の不飽和化合物を、重合または共重合して得られる樹脂である。
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂は、芳香族系石油樹脂又は脂肪族-芳香族共重合石油樹脂であることが好ましく、脂肪族-芳香族共重合石油樹脂であることがより好ましい。
芳香族系石油樹脂は、オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物を重合した石油樹脂であり、脂肪族-芳香族共重合石油樹脂は、脂肪族オレフィン類や脂肪族ジオレフィン類と、オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物とを共重合した石油樹脂である。
【0015】
オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物は、好ましくは炭素数8以上のオレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物であり、具体的にはスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン類、インデン、メチルインデン、エチルインデン等のインデン類等が挙げられる。
また、脂肪族オレフィン類は、好ましくは炭素数4~10の脂肪族オレフィン類であり、具体的にはブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン等が挙げられる。
脂肪族ジオレフィン類は、好ましくは炭素数4~10の脂肪族ジオレフィン類であり、具体的にはブタジエン、ペンタジエン、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、メチルペンタジエン等が挙げられる。
また、この石油樹脂の原料化合物は、その全てがナフサなど石油類の熱分解によるオレフィン製造時の副生物である必要はなく、化学合成された不飽和化合物を用いてもよい。
【0016】
前記石油樹脂の好適例としては、シクロペンタジエンやジシクロペンタジエンとスチレン類を共重合させて得られるジシクロペンタジエン-スチレン系石油樹脂、インデンやビニルトルエン等のC9モノマーの重合により得られるC9系石油樹脂が挙げられる。
【0017】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂は、水添石油樹脂であることが好ましい。
水添石油樹脂とは、前記石油樹脂に水素原子を付加した石油樹脂である。水添石油樹脂としては、不飽和結合が実質的に残存しない完全水添石油樹脂及び不飽和結合が残存する部分水添石油樹脂があり、完全水添石油樹脂であることが好ましい。ただし、前記炭素数10以上の長鎖アルキル基が結合する芳香環は残存する。
前記水添石油樹脂としては、水添脂肪族-芳香族共重合石油樹脂が好ましい。
【0018】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂の臭素価は、好ましくは1~30g/100gであり、より好ましくは2~25g/100gである。臭素価は、JIS K 2605に基づく電気滴定法によって求めることができる。臭素価が前記範囲であることによって、ポリエチレンとの分散性に優れ、反応にも優れるため、長鎖アルキル基を必要量導入することができる。
【0019】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂の分子量は、好ましくは100~5,000であり、より好ましくは300~3,000である。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって求めることができる。分子量が前記範囲であることによって、ポリエチレンと混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
【0020】
本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂のガラス転移点は、好ましくは-120℃以上120℃以下であり、より好ましくは-20℃以上80℃以下である。ガラス転移点は、DSC(示差走査型熱量計)で求めることができ、具体的には実施例の方法で求めることができる。ガラス転移点が前記範囲であることによって、ポリエチレンと混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。特に前記範囲であると、長鎖アルキル変性石油樹脂のガラス転移点がポリエチレンのガラス転移点より高く、ポリエチレンの融点より低く調整できるため、ポリエチレンの結晶性を維持したまま長鎖アルキル変性石油樹脂を混合することができ、ポリエチレンの特性を保ちつつ、成形性を向上させることができる。
【0021】
[長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法]
前記長鎖アルキル変性石油樹脂を製造する方法には制限はないが、次の方法によることが好ましい。
前記長鎖アルキル変性石油樹脂の好適な製造方法は、酸触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のα-オレフィンを反応させて、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する長鎖アルキル変性石油樹脂を得る方法である。
また、炭素数10以上のα-オレフィンにかえて、炭素数10以上のハロゲン化アルキル又は炭素数10以上のアルコールを用いてもよい。すなわち、前記長鎖アルキル変性石油樹脂の製造方法は、酸触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のハロゲン化アルキル又は炭素数10以上のアルコールを反応させて、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する長鎖アルキル変性石油樹脂を得る方法であってもよい。
【0022】
(芳香環を有する石油樹脂)
本製造方法で用いられる芳香環を有する石油樹脂は、前記[長鎖アルキル変性石油樹脂]の項で説明した長鎖アルキル変性石油樹脂主鎖の「石油樹脂」と同じであるが、以下に説明する。
【0023】
芳香環を有する石油樹脂は、ナフサなど石油類の熱分解によるエチレンなどのオレフィン製造時に副生物として得られる炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素を、重合または共重合して得られる樹脂である。具体的には、石油樹脂は、炭素数4~10の脂肪族オレフィン類や脂肪族ジオレフィン類、あるいは炭素数8以上でかつオレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物から選ばれる1種または2種以上の不飽和化合物を、重合または共重合して得られる樹脂である。
芳香環を有する石油樹脂は、芳香族系石油樹脂又は脂肪族-芳香族共重合石油樹脂であることが好ましく、脂肪族-芳香族共重合石油樹脂であることがより好ましい。
芳香族系石油樹脂は、オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物を重合した石油樹脂であり、脂肪族-芳香族共重合石油樹脂は、脂肪族オレフィン類や脂肪族ジオレフィン類と、オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物とを共重合した石油樹脂である。
【0024】
オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物は、好ましくは炭素数8以上のオレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物であり、具体的にはスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン類、インデン、メチルインデン、エチルインデン等のインデン類等が挙げられる。
また、脂肪族オレフィン類は、好ましくは炭素数4~10の脂肪族オレフィン類であり、具体的にはブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン等が挙げられる。
脂肪族ジオレフィン類は、好ましくは炭素数4~10の脂肪族ジオレフィン類であり、具体的にはブタジエン、ペンタジエン、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、メチルペンタジエン等が挙げられる。
また、この芳香環を有する石油樹脂の原料化合物は、その全てがナフサなど石油類の熱分解によるオレフィン製造時の副生物である必要はなく、化学合成された不飽和化合物を用いてもよい。
【0025】
芳香環を有する石油樹脂の好適例としては、シクロペンタジエンやジシクロペンタジエンとスチレン類を共重合させて得られるジシクロペンタジエン-スチレン系石油樹脂、インデンやビニルトルエン等のC9モノマーの重合により得られるC9系石油樹脂が挙げられる。
【0026】
芳香環を有する石油樹脂は、水添石油樹脂であることが好ましい。
水添石油樹脂とは、前記石油樹脂に水素原子を付加した石油樹脂である。水添石油樹脂としては、不飽和結合が実質的に残存しない完全水添石油樹脂及び不飽和結合が残存する部分水添石油樹脂があり、完全水添石油樹脂であることが好ましい。ただし、前記炭素数10以上の長鎖アルキル基が結合する芳香環は残存する。
前記水添石油樹脂としては、水添脂肪族-芳香族共重合石油樹脂が好ましい。
【0027】
芳香環を有する石油樹脂の1H-NMR測定における芳香族水素の積分比率[6.5~7.5ppm領域のピークの積分値/(0.0~3.0ppm領域のピークの積分値と6.5~7.5ppm領域のピークの積分値の和)]は、0.5%以上であることが好ましく、0.5%以上90%以下であることがより好ましく、0.5%以上50%以下であることが更に好ましい。
1H-NMR測定における芳香族水素の積分比率は、具体的には実施例に記載された方法によって測定できる。
1H-NMR測定における芳香族水素の積分比率は、芳香環を有する石油樹脂における芳香族性部位の比率を示す値であり、1H-NMR測定における芳香族水素の積分比率が前記範囲であることによって、得られた長鎖アルキル変性石油樹脂がポリエチレンとの分散性に優れ、芳香環を有する石油樹脂とオレフィンとの反応性も優れるため、長鎖アルキル基を必要量導入することができる。
【0028】
芳香環を有する石油樹脂の臭素価は、好ましくは1~30g/100gであり、より好ましくは2~25g/100gである。臭素価は、JIS K 2605に基づく電気滴定法によって求めることができる。臭素価が前記範囲であることによって、得られた長鎖アルキル変性石油樹脂がポリエチレンとの分散性に優れ、芳香環を有する石油樹脂とオレフィンとの反応性も優れるため、長鎖アルキル基を必要量導入することができる。
【0029】
芳香環を有する石油樹脂の分子量は、好ましくは100~5,000であり、より好ましくは300~3,000である。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって求めることができる。分子量が前記範囲であることによって、得られた長鎖アルキル変性石油樹脂をポリエチレンと混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
【0030】
(炭素数10以上のα-オレフィン)
本製造方法で用いられる炭素数10以上のα-オレフィンの炭素数は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10以上10,000以下であり、更に好ましくは10以上1,000以下であり、より更に好ましくは10以上100以下であり、より更に好ましくは10以上50以下であり、より更に好ましくは16以上50以下であり、より更に好ましくは20以上40以下である。
炭素数が前記範囲のα-オレフィンであると、得られた長鎖アルキル変性石油樹脂のポリエチレンへの分散性に優れ、かつ芳香環を有する石油樹脂との反応性にも優れる。
【0031】
前記α-オレフィンは、直鎖α-オレフィン、分岐α-オレフィン及び環状α-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、直鎖α-オレフィンであることがより好ましい。
具体的には、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
【0032】
本製造方法において、炭素数10以上のα-オレフィンの使用量は、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂が、オレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位であって、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位と、炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位からなる場合の、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位中、好ましくは1~50モル%となるように用いることが好ましい。より好ましくは2~30モル%であり、更に好ましくは5~20モル%である。α-オレフィンの使用量が前記範囲であることによって、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンを混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
また、本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂において、炭素数10以上のα-オレフィンの使用量は、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂に対して、好ましくは5~90質量%となるように用いることが好ましい。より好ましくは6~60質量%であり、更に好ましくは10~40質量%であり、より更に好ましくは25~35質量%である。α-オレフィンの使用量が前記範囲であることによって、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンとを混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
【0033】
(炭素数10以上のハロゲン化アルキル)
本製造方法で用いられる炭素数10以上のハロゲン化アルキルの炭素数は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10以上10,000以下であり、更に好ましくは10以上1,000以下であり、より更に好ましくは10以上100以下であり、より更に好ましくは10以上50以下であり、より更に好ましくは16以上50以下であり、より更に好ましくは20以上40以下である。
炭素数が前記範囲のハロゲン化アルキルであると、得られた長鎖アルキル変性石油樹脂のポリエチレンへの分散性に優れ、かつ芳香環を有する石油樹脂との反応性にも優れる。
【0034】
前記ハロゲン化アルキルは、直鎖ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル及び環状ハロゲン化アルキルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、直鎖ハロゲン化アルキルであることがより好ましい。
具体的には、1-フルオロデカン、1-フルオロウンデカン、1-フルオロドデカン、1-フルオロトリデカン、1-フルオロテトラデカン、1-フルオロペンタデカン、1-フルオロヘキサデカン、1-フルオロヘプタデカン、1-フルオロオクタデカン、1-フルオロノナデカン、1-フルオロエイコサン、1-クロロデカン、1-クロロウンデカン、1-クロロドデカン、1-クロロトリデカン、1-クロロテトラデカン、1-クロロペンタデカン、1-クロロヘキサデカン、1-クロロヘプタデカン、1-クロロオクタデカン、1-クロロノナデカン、1-クロロエイコサン、1-ブロモデカン、1-ブロモウンデカン、1-ブロモドデカン、1-ブロモトリデカン、1-ブロモテトラデカン、1-ブロモペンタデカン、1-ブロモヘキサデカン、1-ブロモヘプタデカン、1-ブロモオクタデカン、1-ブロモノナデカン、1-ブロモエイコサン等が挙げられる。
【0035】
本製造方法において、炭素数10以上のハロゲン化アルキルの使用量は、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂が、オレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位であって、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位と、炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位からなる場合の、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位中、好ましくは1~50モル%となるように用いることが好ましい。より好ましくは2~30モル%であり、更に好ましくは5~20モル%である。ハロゲン化アルキルの使用量が前記範囲であることによって、得られた長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンを混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
また、本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂において、炭素数10以上のハロゲン化アルキルの使用量は、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂に対して、好ましくは5~90質量%となるように用いることが好ましい。より好ましくは6~60質量%であり、更に好ましくは10~40質量%であり、より更に好ましくは25~35質量%である。α-オレフィンの使用量が前記範囲であることによって、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンとを混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
【0036】
(炭素数10以上のアルコール)
本製造方法で用いられる炭素数10以上のアルコールの炭素数は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10以上10,000以下であり、更に好ましくは10以上1,000以下であり、より更に好ましくは10以上100以下であり、より更に好ましくは10以上50以下であり、より更に好ましくは16以上50以下であり、より更に好ましくは20以上40以下である。
炭素数が前記範囲のアルコールであると、得られた長鎖アルキル変性石油樹脂のポリエチレンへの分散性に優れ、かつ芳香環を有する石油樹脂との反応性にも優れる。
【0037】
前記アルコールは、直鎖飽和脂肪族アルコール、分岐飽和脂肪族アルコール及び環状飽和脂肪族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、直鎖飽和脂肪族アルコールであることがより好ましい。
具体的には、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-エイコサノール等が挙げられる。
【0038】
本製造方法において、炭素数10以上のアルコールの使用量は、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂が、オレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位であって、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位と、炭素数4~11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体に由来する構成単位からなる場合の、芳香環に結合する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位中、好ましくは1~50モル%となるように用いることが好ましい。より好ましくは2~30モル%であり、更に好ましくは5~20モル%である。アルコールの使用量が前記範囲であることによって、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンを混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
また、本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂において、炭素数10以上のアルコールの使用量は、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂に対して、好ましくは5~90質量%となるように用いることが好ましい。より好ましくは6~60質量%であり、更に好ましくは10~40質量%であり、より更に好ましくは25~35質量%である。アルコールの使用量が前記範囲であることによって、得られる長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンとを混合して得られる樹脂組成物の成形性が優れるものとなる。
【0039】
(酸触媒)
本製造方法に用いられる酸触媒は、フリーデル・クラフツ触媒又は固体酸触媒であることが好ましく、固体酸触媒であることがより好ましい。固体酸触媒であれば、ハロゲン化水素等の副生もなく、生成物との分離が容易である。
フリーデル・クラフツ触媒は、ルイス酸、強プロトン酸等が挙げられ、ルイス酸が好ましい。
ルイス酸としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、塩化第二スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、塩化アルミニウムが好ましい。
強プロトン酸としては、硫酸、フッ化水素酸等が挙げられる。フリーデル・クラフツ触媒としては、塩化アルミニウムがより好ましい。前記フリーデル・クラフツ触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体酸触媒は、シリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカボリア、アルミナボリア、塩素化アルミナ、フッ素化アルミナ、シリカゲルやアルミナゲルに塩酸、硫酸、リン酸、BF3などを付着させたもの、陽イオン交換樹脂、合成ゼオライト、粘土鉱物が挙げられ、陽イオン交換樹脂が好ましい。粘土鉱物は、酸性白土、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイト等が挙げられる。固体酸触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(反応条件)
本製造方法において、酸触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のα-オレフィン、炭素数10以上のハロゲン化アルキル又は炭素数10以上のアルコールを反応させる方法の好適な方法として、次の3つが挙げられる。
方法1:固体酸触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のα-オレフィンを反応させる方法
方法2:フリーデル・クラフツ触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のα-オレフィンを反応させる方法
方法3:フリーデル・クラフツ触媒存在下、芳香環を有する石油樹脂と、炭素数10以上のハロゲン化アルキル又は炭素数10以上のアルコールを反応させる方法
これらのなかでは、方法1及び方法2が好ましく、方法1がより好ましい。固体酸触媒とα-オレフィンを用いることで、ハロゲン化水素等の副生もなく、溶媒も使用せずに反応を行うことができる。
【0041】
(方法1:固体酸触媒とα-オレフィンを使用する方法)
方法1において、固体酸触媒の量は、原料である芳香環を有する石油樹脂とα-オレフィンの合計量に対して、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは5~20質量%である。
方法1において、溶媒は用いてもよいが、溶媒を使用しなくても本反応を行うことができる。溶媒の量は少ない方が好ましく、原料である芳香環を有する石油樹脂とα-オレフィンの合計量(質量)に対して、好ましくは1倍以下であり、より好ましくは0.1倍以下であり、溶媒を用いないことが更に好ましい。
溶媒を用いる場合、溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素溶媒が挙げられる。
反応温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは100℃以上250℃以下であり、更に好ましくは120℃以上200℃以下である。本方法では、溶媒を用いず、原料を溶融させることで反応を行うことができる。
反応時間は、触媒の量や反応温度によって適宜調整すればよいが、好ましくは1~200時間であり、より好ましくは5~100時間であり、更に好ましくは30~100時間である。
反応終了後に、固体酸触媒を固液分離によって除去することで、目的の長鎖アルキル変性石油樹脂を得ることができる。
【0042】
(方法2:フリーデル・クラフツ触媒とα-オレフィンを使用する方法)
方法2において、フリーデル・クラフツ触媒の量は、原料である芳香環を有する石油樹脂とα-オレフィンの合計量に対して、好ましくは1~30質量%であり、5~20質量%である。
方法2における反応では、溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素溶媒が挙げられる。
溶媒の量は、原料である芳香環を有する石油樹脂とα-オレフィンの合計量(質量)に対して、好ましくは1~100倍であり、より好ましくは5~50倍であり、更に好ましくは10~30倍である。
反応温度は、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは0℃以上100℃以下であり、更に好ましくは10℃以上50℃以下である。
反応時間は、触媒の量や反応温度によって適宜調整すればよいが、好ましくは1~200時間であり、より好ましくは5~100時間であり、更に好ましくは10~50時間である。
反応終了後に、水で触媒及びその分解物等を除去し、溶媒を除去することで、目的の長鎖アルキル変性石油樹脂を得ることができる。必要に応じて、再沈殿等の精製を行って、残余の触媒や溶媒を除去してもよい。
【0043】
(方法3:フリーデル・クラフツ触媒とハロゲン化アルキル又はアルコールを使用する方法)
方法3において、フリーデル・クラフツ触媒の量は、原料である芳香環を有する石油樹脂とハロゲン化アルキル又はアルコールの合計量に対して、好ましくは1~30質量%であり、5~20質量%である。
方法3における反応では、溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素溶媒が挙げられる。
溶媒の量は、原料である芳香環を有する石油樹脂とハロゲン化アルキルの合計量(質量)に対して、好ましくは1~100倍であり、より好ましくは5~50倍であり、更に好ましくは10~30倍である。
反応温度は、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは0℃以上100℃以下であり、更に好ましくは10℃以上50℃以下である。
反応時間は、触媒の量や反応温度によって適宜調整すればよいが、好ましくは1~200時間であり、より好ましくは5~100時間であり、更に好ましくは10~50時間である。
反応終了後に、水で触媒及びその分解物等を除去し、溶媒を除去することで、目的の長鎖アルキル変性石油樹脂を得ることができる。必要に応じて、再沈殿等の精製を行って、残余の触媒や溶媒を除去してもよい。
【0044】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、前記長鎖アルキル変性石油樹脂、及びポリエチレンを含有する。
ポリエチレンの改質剤として前記長鎖アルキル変性石油樹脂を用いることで、ポリエチレンの有する特性を維持しつつ、成形性を向上させることができる。
【0045】
(ポリエチレン)
本発明の樹脂組成物に用いられるポリエチレンは、エチレンの単独重合体、及びエチレンを主成分とする共重合体が挙げられ、エチレンの単独重合体が好ましい。
エチレンの単独重合体は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられるが、強度の点から、高密度ポリエチレンが好ましい。すなわち、本発明の樹脂組成物に用いられるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンが好ましい。高密度ポリエチレンは、結晶化が速く、結晶化度が高いため、成形時に破断が生じやすいが、前記長鎖アルキル変性石油樹脂を用いることで、高密度ポリエチレンであっても優れた成形性を付与することができる。
【0046】
エチレンの単独重合体の密度は、好ましくは0.930g/cm3以上であり、より好ましくは0.940g/cm3以上であり、そして、好ましくは0.965g/cm3以下であり、より好ましくは0.960g/cm3以下である。また、190℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.01g/10分以上であり、より好ましくは0.10g/10分以上であり、更に好ましくは0.50g/10分以上であり、そして、好ましくは200g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以下であり、更に好ましくは50g/10分以下である。190℃でのメルトフローレートが上記範囲内であれば、成形体の製膜性に不具合を生じるおそれがない。
【0047】
エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体、及びエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとのブロック共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体のなかでも、軽量且つ成形性に優れる樹脂組成物を得るという観点から、190℃でのメルトフローレートが0.01g/10分以上200g/10分以下であるエチレン共重合体が好ましい。190℃でのメルトフローレートが範囲内であれば、成形体の流動性及び成形体の製膜性に不具合を生じるおそれがより低減される。
【0048】
エチレンを主成分とする共重合体の190℃でのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01g/10分以上であり、より好ましくは0.05g/10分以上であり、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、より更に好ましくは1.0g/10分以上であり、そして、好ましくは200g/10分以下であり、より好ましくは50g/10分以下であり、更に好ましくは30g/10分以下であり、より更に好ましくは20g/10分以下である。なお、MFRは、ISO 1133:1997で規定された測定方法により測定され、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
【0049】
エチレン以外のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数3~8のα-オレフィンが挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、及び1-エイコセン等が挙げられる。
エチレンを主成分とする共重合体としては、炭素数3~20、好ましくは炭素数3~8のα-オレフィン含有量が1モル%以上10モル%以下であるエチレン共重合体が挙げられる。
市販のポリエチレンとしては、株式会社プライムポリマー製の各種ポリエチレン「ハイゼックス」、「ネオゼックス」、「ウルトゼックス」、「モアテック」、「エボリュー」の各シリーズ(例えば、高密度ポリエチレン「ハイゼックス2200J」)、及び東ソー株式会社製の低密度ポリエチレン(例えば、「ペトロセン190」)等が挙げられる。
【0050】
(樹脂組成物の組成)
本発明の樹脂組成物における、前記長鎖アルキル変性石油樹脂の含有量は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは2~20質量%であり、更に好ましくは5~15質量%である。長鎖アルキル変性石油樹脂の含有量が前記範囲であると、樹脂組成物からなる成形体の強度を維持しつつ、成形性も向上するものとなる。
また、長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンの質量比[変性石油樹脂/ポリエチレン]は、1/99~30/70であり、より好ましくは2/98~20/80であり、更に好ましくは5/95~15/85である。長鎖アルキル変性石油樹脂とポリエチレンの質量比が前記範囲であると、樹脂組成物からなる成形体の強度を維持しつつ、成形性も向上するものとなる。
【0051】
(添加剤)
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、核剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、エラストマーなどを配合することができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、イオウ系、ラクトン系、有機ホスファイト系、有機ホスフォナイト系の酸化防止剤、あるいはこれらを数種類組み合わせた酸化防止剤等を使用することができる。酸化防止剤は、樹脂組成物100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲で配合することが好ましい。
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれら飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることができる。これらの内でも、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。スリップ剤は、樹脂組成物100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲で配合することが好ましい。
アンチブロッキング剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状もしくは液状のシリコン樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、架橋されたアクリル樹脂やメタクリル樹脂粉末のような微粉末状架橋樹脂を挙げることができる。これらの内では、微粉末シリカおよび微粉末状架橋樹脂が好ましい。
【0052】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物は、前記長鎖アルキル変性石油樹脂と前記ポリエチレンを混合して製造することができる。混合の方法としては、溶融混練することが好ましい。
前記長鎖アルキル変性石油樹脂、前記ポリエチレン、更に必要に応じて前記添加剤を加え、溶融混練することにより製造することが好ましい。たとえば、ポリエチレンのペレット及び長鎖アルキル変性石油樹脂のペレットをドライブレンド後、押出機のホッパーに投入して溶融混練することができる。また、重合装置によってポリエチレンを製造した後、長鎖アルキル変性石油樹脂のペレットを添加し、重合装置に連結された押出機を用いて溶融混練してもよい。また、溶媒中に長鎖アルキル変性石油樹脂が存在する状態で、ポリエチレンを添加し、溶媒除去及び乾燥工程を経てペレットあるいは塊を得てもよい。混練は、混合混練機を使用して行うことができる。混合混練機としては、高速ミキサー、バンバリーミキサー、連続ニーダー、一軸又は二軸押出機、ロール、ブラベンダープラストグラフ等が挙げられる。押出機以外の混練機で混練後、押出機を用いてペレット化してもよい。
【0053】
[成形体]
本発明の成形体は、前記樹脂組成物からなる。
本発明の成形体の形態に、制限はなく、たとえば、フィルム、シート、容器、パイプ、チューブ、発泡成形体、不織布、繊維等があげられるが、ポリエチレンの特性を活かしつつ、本発明の効果である成形性を発揮する観点から、フィルム又は不織布が好ましい。すなわち、本発明の成形体の好適な1つの実施形態は、前記樹脂組成物からなるフィルムである。また、本発明の成形体の好適な別の実施形態は、前記樹脂組成物からなる不織布である。
【0054】
(フィルム)
本発明の成形体の好適な1つの実施形態は、前記樹脂組成物からなるフィルムである。
前記フィルムは、前記樹脂組成物からなる。該フィルムは、前記樹脂組成物を用いて、例えば、公知の所定の形状の金型(ダイ)から公知の条件で押し出すことで製造することができる。例えば、押出成形により得られた前記樹脂組成物からなるフィルムをチルロールで冷却することで得ることができる。前記樹脂組成物からなるフィルムは良好な伸び、光沢を有する。
前記フィルムの厚さは、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下、更に好ましくは2000μm以下である。
【0055】
前記フィルムは、多層にしてもよく、多層フィルムの少なくとも1層が前記樹脂組成物を含むものである。該多層フィルムは、前記樹脂組成物を用いて、例えば、公知の所定の形状の金型(ダイ)から公知の条件で押し出すことで製造することができる。例えば、押出成形により得られた前記樹脂組成物からなる層を含む多層フィルムをチルロールで冷却することで得ることができる。
前記多層フィルムの厚さは、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、そして、5000μm以下、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下である。
【0056】
[不織布]
本発明の成形体の好適な1つの実施形態は、前記樹脂組成物からなる不織布である。
特に不織布のなかでもスパンボンド不織布の製造、メルトブローン不織布の製造時の成形性改良にも好適に用いることができる。前記樹脂組成物からなる不織布は良好な伸び、強度を有する。
【実施例0057】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
[分析・評価]
〔1.長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量及び長鎖アルキル基の含有量〕
長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量は、1H-NMR測定によって次のようにして求めた。
実施例の長鎖アルキル変性石油樹脂について、下記測定条件で1H-NMR測定を行った。
製造例1及び3の原料単量体であるジシクロペンタジエン及びスチレンに由来する構成単位に特徴的なピークのピーク面積をそれぞれ求めた。更に石油樹脂に結合している長鎖アルキル基に特徴的なピークのピーク面積を求めた。以上のピーク面積の比から、それぞれのモル量を算出し、1つの長鎖アルキル基は1つの単量体に結合しているものとして、これを長鎖アルキル基を有する構成単位とし、次式より、長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量を算出した。
長鎖アルキル基を有する構成単位の含有量(モル%)=長鎖アルキル基を有する構成単位(ピーク面積から算出したモル量)/原料単量体に由来する全構成単位(ピーク面積から算出したモル量)×100
長鎖アルキル基の含有量は、前記で算出したモル量にそれぞれの分子量を掛けて、それぞれの質量を求め、次式より、算出した。
長鎖アルキル基の含有量(質量%)=長鎖アルキル基部分の質量/(長鎖アルキル基部分の質量+原料単量体に由来する全構成単位の質量)×100
1H-NMR測定条件)
NMR装置:ECA-500(株式会社JEOL RESONANCE製)
プローブ:TH5 5φNMR試料管対応
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
積算回数:256回
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム又はテトラクロロエタン
測定温度:室温
【0059】
〔2.ガラス転移点〕
下記示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下にて室温から320℃/分で-40℃に冷却し、-40℃で5分間保持した後、150℃まで10℃/分で昇温させた。次に、150℃で5分間保持した後、再び-40℃まで10℃/分で冷却し、5分間保持した。最後に、10℃/分で150℃まで昇温した時に観測されたベースラインのシフトをガラス転移点とした。
(DSC)
装置:商品名:DSC8500(パーキン・エルマー社製)
方式:入力補償
温度の校正:インジウム(156.60℃±0.3℃)、鉛(327.47℃±0.3℃)
熱量の校正:インジウム(28.45±0.2J/g)
【0060】
〔3.分子量〕
長鎖アルキル変性石油樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)を用いて次の条件で求めた。
(GPC条件)
試験機器:TOSOH HLC 8220(東ソー株式会社製)
カラム:TOSOH TSK-GEL GHXL-L、G4000HXL、G2000HXL(東ソー株式会社製)
溶媒:THF
温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出器:RI
注入濃度:10mg/10mL
注入量:0.1mL
ポリスチレン標準物質:(分子量)190,000、96,400、37,900、17,400、10,200、5,060、2,550、1,013、578、474、370、266
【0061】
〔4.加熱引張試験(成形性)〕
<試験片の作製>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、下記の条件でプレス成形して厚さ0.5mmのフィルムを作製した。室温(25℃)で1日間保存し、状態調節したのち、10mm×50mmの短冊形状の試験片を作製した。
(プレス成形条件)
成形温度200℃、予熱時間5分(シート)、加圧時間5分、冷却時間5分(水冷10℃)
【0062】
<加熱引張試験>
得られた試験片を一軸延伸装置(エバー測機株式会社)を用いて延伸性の評価を行った。チャック間距離を15mmに設定したクリップに10×50mmの短冊を挟み、延伸温度に設定した炉内で1分間120℃に予熱ののち、速度60mm/sで延伸を行い、破断するまで延伸をし、以下の伸び、降伏値(A)、延伸倍率を変えたときの降伏値を求めた。
(伸び)
破断するまでの倍率を伸び(%)とした。伸びの値が大きいほど、樹脂組成物が破れることなく延伸できていることを示しており、成形性が良好であることを示している。
(降伏値(A))
横軸を延伸倍率として、検出された荷重を縦軸とした二次元座標軸上に曲線を引き、曲線の最初の変曲点(低延伸倍率から高延伸倍率に延伸倍率を変化させた際に現れる最初の変曲点)の最大値を降伏値(A)(kg重)とした。降伏値(A)が小さいほど、降伏力が小さく、均一延伸が可能となり、成形性に優れることを示す。
(延伸倍率を変えたときの降伏値、及び延伸倍率毎の降伏値/降伏値(A))
さらに延伸倍率が3倍、5倍、7倍のときの降伏値(kg重)を求めた。次に延伸倍率を変えたときの各降伏値を降伏値(A)で除した値(延伸倍率毎の降伏値/降伏値(A))を求めた。(延伸倍率毎の降伏値/降伏値(A))の値が大きいほど、降伏力の変化が小さいために均一に延伸することができ、成形性に優れることを示す。なお、表2において「破断」は、その延伸倍率に到達する前に試験片が破断し、測定できなかったことを示す。
【0063】
[石油樹脂及び水添石油樹脂の製造]
製造例1(石油樹脂1の製造)
1リットルのオートクレーブに、キシレン60gを投入し、260℃に昇温した。次に、ジシクロペンタジエン100gとスチレン100gの混合物を2時間かけて投入した。この温度でさらに160分間維持し、重合反応を行い、重合体混合物を得た。
その後、得られた重合体混合物からキシレンを回収し、次いで20mmHgで2時間維持して低沸点物を留去して、石油樹脂1を得た。得られた石油樹脂の軟化点は103℃であった。
【0064】
製造例2(水添石油樹脂1の製造)
製造例1で得られた石油樹脂1 180g、エチルシクロヘキサン180g、日揮触媒化成株式会社製ニッケル系触媒(N110シリーズ)4gを1リットルのオートクレーブに投入した。水素を5MPaとなるように投入し、室温から230℃に昇温した。その後、水素圧を5MPaに保ちながら、8時間、水添反応を実施し、水添石油樹脂1を得た。得られた水添石油樹脂の軟化点は140℃、臭素価は2、芳香族水素の積分比率は0.9%であった。
【0065】
製造例3(石油樹脂2の製造)
1リットルのオートクレーブに、キシレン180gを投入し、260℃に昇温した。次に、ジシクロペンタジエン100gとスチレン100gの混合物を3時間かけて投入した。この温度でさらに75分間維持し、重合反応を行い、重合体混合物を得た。
その後、得られた重合体混合物からキシレンを回収し、次いで20mmHgで2時間維持して低沸点物を留去して、石油樹脂2を得た。得られた石油樹脂の軟化点は63.0℃であった。
【0066】
製造例4(水添石油樹脂2の製造)
製造例3で得られた石油樹脂2 180g、エチルシクロヘキサン180g、日揮触媒化成株式会社製ニッケル系触媒(N110シリーズ)4gを1リットルのオートクレーブに投入した。水素を5MPaとなるように投入し、室温から230℃に昇温した。その後、水素圧を5MPaに保ちながら、8時間、水添反応を実施し、水添石油樹脂2を得た。得られた水添石油樹脂の軟化点は100℃、臭素価は2.5、芳香族水素の積分比率は0.8%であった。
【0067】
[長鎖アルキル変性石油樹脂の製造]
実施例1
5Lの触媒瓶に、製造例2で得られた水添石油樹脂1 150gと、炭素数18のα-オレフィン(炭素数18、「リニアレン18」、出光興産株式会社製)52.8mL、溶媒としてジクロロメタン 3000mLを投入し、室温(25℃)で30分間撹拌し、樹脂を溶解した。触媒として無水塩化アルミニウム 22gを投入し、一晩(20時間)撹拌して、反応を行った。
次に、精製水を加えて、洗浄し、水相のpHが7になるまで洗浄を行った。洗浄後の有機相をメタノールに滴下して再沈殿させ、吸引ろ過で固液分離した。得られた固体を真空乾燥機で50℃、1時間の条件で乾燥させ、長鎖アルキル変性水添石油樹脂1を得た。
【0068】
実施例2
炭素数18のα―オレフィン(「リニアレン18」)52.8mLを、炭素数12のα―オレフィン(炭素数12、「リニアレン12」、出光興産株式会社製)31.3mLに変更した以外は実施例1と同様の方法により長鎖アルキル変性水添石油樹脂2を得た。
【0069】
実施例3
1Lのセパラブルフラスコに、製造例2で得られた水添石油樹脂1 90.0gと炭素数24~40のα-オレフィン(炭素数24~40、平均炭素数30、「リニアレン26+」、出光興産株式会社製) 38.2gを投入し、160℃で溶融した。触媒として陽イオン交換樹脂(「Amberlyst45」、ダウ社製)15gを投入し、160℃で72時間撹拌して、反応を行った。次に、撹拌を停止して、イオン交換樹脂を沈殿させ、上澄みを回収し、長鎖アルキル変性水添石油樹脂3を得た。
【0070】
実施例4
水添石油樹脂1 150gを、製造例4で得られた水添石油樹脂2 109gに変更した以外は実施例1と同様の方法により長鎖アルキル変性水添石油樹脂4を得た。
【0071】
実施例5
水添石油樹脂1 150gを、製造例4で得られた水添石油樹脂2 109gに変更した以外は実施例2と同様の方法により長鎖アルキル変性水添石油樹脂5を得た。
【0072】
実施例6
1Lのセパラブルフラスコに、製造例4で得られた水添石油樹脂2 33.0gと炭素数24~40のα-オレフィン(炭素数24~40、平均炭素数30、「リニアレン26+」、出光興産株式会社製) 19.1gを投入し、160℃で溶融した。触媒として陽イオン交換樹脂(「Amberlyst45」、ダウ社製)7.5gを投入し、160℃で72時間撹拌して、反応を行った。次に、撹拌を停止して、イオン交換樹脂を沈殿させ、上澄みを回収し、長鎖アルキル変性水添石油樹脂6を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
[樹脂組成物の製造]
実施例7
実施例3で得られた長鎖アルキル変性水添石油樹脂3 10質量部、高密度ポリエチレン(MFR7.0g/10min、「HF560」、日本ポリエチレン株式会社製) 90質量部に、酸化防止剤としてIrganox1076とIrgafos168をそれぞれ各1000ppm(長鎖アルキル変性石油樹脂と高密度ポリエチレンに対する質量ppm)添加し、ラボプラストミル(東洋精機株式会社製)を用いて160℃で5分間溶融混練し、樹脂組成物を得た。
【0075】
実施例8
実施例3で得られた長鎖アルキル変性水添石油樹脂3 10質量部を、実施例1で得られた長鎖アルキル変性水添石油樹脂1 10質量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0076】
実施例9
実施例3で得られた長鎖アルキル変性水添石油樹脂3 10質量部を、実施例2で得られた長鎖アルキル変性水添石油樹脂2 10質量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0077】
比較例1
実施例3で得られた長鎖アルキル変性水添石油樹脂3を用いずに、高密度ポリエチレン(HF560)のみを100質量部用いた以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0078】
比較例2
実施例3で得られた長鎖アルキル変性水添石油樹脂3 10質量部を、製造例2で得られた水添石油樹脂1 10質量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0079】
【表2】
【0080】
表2の結果から、実施例の樹脂組成物は、加熱引張試験における伸びの値が大きく、降伏値(降伏力)が小さく、延伸倍率が高い場合も破断せず、延伸倍率が高い場合の降伏力の変化が小さいことから、成形性に優れることがわかる。すなわち、本発明の長鎖アルキル変性石油樹脂と高密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物は、高密度ポリエチレンのみ、又は未変性石油樹脂を含有する樹脂組成物に比べ、成形性に優れることがわかる。