(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031109
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】食酢、香辛料含有食品、及び、香辛料含有食品中の香辛料の風味及び香辛料含有食品の味の深みを増強する方法
(51)【国際特許分類】
C12J 1/00 20060101AFI20230301BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230301BHJP
【FI】
C12J1/00 Z
A23L27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136613
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591112371
【氏名又は名称】キユーピー醸造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】三上 晃史
(72)【発明者】
【氏名】富田 有香子
(72)【発明者】
【氏名】川島 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真成美
【テーマコード(参考)】
4B047
4B128
【Fターム(参考)】
4B047LF10
4B047LG09
4B047LG62
4B047LP02
4B047LP19
4B128BC03
4B128BL23
4B128BP23
(57)【要約】
【課題】香辛料含有食品中の香辛料の風味を増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みを増強することができる方法の提供。
【解決手段】本発明の食酢は、香辛料含有食品に添加するためのものであって、20℃におけるpHが2.0以上4.0未満であり、イソアミルアルコール及びフェネチルアルコールから選択される少なくとも1種の第1の香気成分と、ジアセチル及びイソ吉草酸から選択される少なくとも1種の第2の香気成分とを含み、第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppmとしたとき、
以下の数式(1):
(1)2.0<A/B
を満たすことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香辛料含有食品に添加するための食酢であって、
20℃におけるpHが2.0以上4.0未満であり、
イソアミルアルコール及びフェネチルアルコールから選択される少なくとも1種の第1の香気成分と、
ジアセチル及びイソ吉草酸から選択される少なくとも1種の第2の香気成分とを含み、
第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppmとしたとき、
以下の数式(1):
(1)2.0<A/B
を満たすことを特徴とする、
食酢。
【請求項2】
前記食酢中の酢酸換算酸度をC質量%としたとき、
以下の数式(2):
(2)5.0<(A+B)/C
を満たすことを特徴とする、
請求項1に記載の食酢。
【請求項3】
前記酢酸換算酸度が0.5質量%以上11質量%以下であることを特徴とする、
請求項2に記載の食酢。
【請求項4】
前記第1の香気成分の合計含有量が、10ppm以上であることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の食酢。
【請求項5】
前記数式(1)におけるA/Bが、30以下であることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の食酢。
【請求項6】
前記食酢中の酢酸換算酸度をC質量%としたとき、
以下の数式(3):
(3)(A+B)/C<100
を満たすことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の食酢。
【請求項7】
前記香辛料含有食品が、カレー風味を有することを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の食酢。
【請求項8】
前記香辛料含有食品が、カレーソース、カレールウ、カレーフィリング、カレースープ、カレーシーズニング、及びカレースナックからなる群から選択される1種のカレー風味食品であることを特徴とする、
請求項7に記載の食酢。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の食酢を含有することを特徴とする、
香辛料含有食品。
【請求項10】
香辛料含有食品中の香辛料の風味及び/又は香辛料含有食品の味の深みを増強する方法であって、
香辛料含有食品に食酢を添加する工程を含み、
前記食酢は、20℃におけるpHが2.0以上4.0未満であり、
イソアミルアルコール及びフェネチルアルコールから選択される少なくとも1種の第1の香気成分と、
ジアセチル及びイソ吉草酸から選択される少なくとも1種の第2の香気成分とを含み、
第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppmとしたとき、
以下の数式(1):
(1)2.0<A/B
を満たすことを特徴とする、
香辛料含有食品中の香辛料の風味及び香辛料含有食品の味の深みを増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食酢に関し、詳細には、香辛料含有食品に添加するための食酢に関する。また、本発明は、このような食酢を含有する香辛料含有食品にも関する。さらに、本発明は、香辛料含有食品中の香辛料の風味及び香辛料含有食品の味の深みを増強する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を製造する際には、所望の風味を付与するために香辛料が配合されてきた。一般的には、香辛料含有食品の風味を増強するためには、香辛料の配合量を多くすることが考えられる、しかし、香辛料が高価であるために、香辛料の使用量を増やさずに香辛料含有食品の風味を増強することが求められている。
【0003】
上記の問題に対して、香辛料含有食品に対して、香辛料以外の他の食品原料を配合することで、香辛料の風味を増強することが検討されてきた。例えば、特許文献1では、カレー等の香辛料含有食品に対して、イノシトールを0.3~5質量%配合する方法が提案されている。また、特許文献2では、カレーソース等の液状食品組成物に対して、アラビアガム、ガティガム、大豆多糖類及びプルランからなる群より選ばれる1種又は2種以上を配合する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-042095号公報
【特許文献2】特開2021-61825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、依然として、香辛料含有食品の香辛料の風味の増強効果に優れた方法が望まれている。さらに、本発明者等は、香辛料含有食品の味の深みも併せて増強できる方法も望まれている。したがって、本発明の目的は、香辛料含有食品中の香辛料の風味を増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みを増強することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、誠意研究を進めたところ、特定の香気成分の量を調節した食酢を香辛料含有食品に添加することで、意外にも、香辛料含有食品の香辛料の風味及び香辛料含有食品の味の深みを増強できることを知見した。本発明者らは、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一態様によれば、
香辛料含有食品に添加するための食酢であって、
20℃におけるpHが2.0以上4.0未満であり、
イソアミルアルコール及びフェネチルアルコールから選択される少なくとも1種の第1の香気成分と、
ジアセチル及びイソ吉草酸から選択される少なくとも1種の第2の香気成分とを含み、
第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppmとしたとき、
以下の数式(1):
(1)2.0<A/B
を満たすことを特徴とする、
食酢が提供される。
【0008】
本発明の態様においては、前記食酢中の酢酸換算酸度をC質量%としたとき、
以下の数式(2):
(2)5.0<(A+B)/C
を満たすことが好ましい。
【0009】
本発明の態様においては、前記酢酸換算酸度が0.5質量%以上11質量%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の態様においては、前記数式(1)におけるA/Bが、30以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、前記食酢中の酢酸換算酸度をC質量%としたとき、
以下の数式(3):
(3)(A+B)/C<100
を満たすことが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記香辛料含有食品が、カレー風味を有することが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記香辛料含有食品が、カレーソース、カレールウ、カレーフィリング、カレースープ、カレーシーズニング、及びカレースナックからなる群から選択される1種のカレー風味食品であることが好ましい。
【0014】
本発明の別の態様によれば、上記の食酢を含有する香辛料含有食品が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、
香辛料含有食品中の香辛料の風味及び/又は香辛料含有食品の味の深みを増強する方法であって、
香辛料含有食品に食酢を添加する工程を含み、
前記食酢は、20℃におけるpHが2.0以上4.0未満であり、
イソアミルアルコール及びフェネチルアルコールから選択される少なくとも1種の第1の香気成分と、
ジアセチル及びイソ吉草酸から選択される少なくとも1種の第2の香気成分とを含み、
第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppmとしたとき、
以下の数式(1):
(1)2.0<A/B
を満たすことを特徴とする、
香辛料含有食品中の香辛料の風味及び香辛料含有食品の味の深みを増強する方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、香辛料含有食品に添加することで、香辛料含有食品中の香辛料の風味を増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みを増強することができる食酢を提供することができる。このような食酢は消費者の食欲を惹起することができ、食酢のさらなる市場拡大が期待できる。また、本発明によれば、このような食酢を用いて、香辛料含有食品中の香辛料の風味及び香辛料含有食品の味の深みを増強する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<食酢>
本発明の食酢は、香辛料含有食品に添加するために用いられる。食酢は、水及び酢酸を主成分とする酸味調味料であり、下記の特定の香気成分を含むものである。本発明における食酢とは、消費者庁が定める「食品表示基準」に列挙される食酢が挙げられるが、これに類似する酸味調味料も含まれる。より詳細には、食酢としては、たとえば、米、麦芽、酒粕等の穀類もしくはそれらの加工品、ぶどう、りんご等の果実、タマネギ、ニンジン、トマト等の野菜、その他農産物、アルコール等を酢酸発酵させたものや、別途酢酸を添加したもの、又はこれらを混合したものが挙げられる。糖類、有機酸、アミノ酸、食塩等を加えたものもこれに含まれる。このような食酢としては、例えば、米酢、黒酢、五穀酢、ワインビネガー、りんご酢、トマト酢、もろみ酢、及び梅酢等が挙げられる。これらの食酢は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明の食酢の20℃におけるpHは、2.0以上4.0未満であり、下限値は好ましくは2.1以上であり、より好ましくは2.2以上であり、さらに好ましくは2.3以上であり、上限値は好ましくは3.8以下であり、より好ましくは3.6以下であり、さらにより好ましくは3.4以下である。食酢のpHが上記数値範囲内であれば、香辛料含有食品中の香辛料の風味をより増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みをより増強することができる。
なお、食酢のpHの値は、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて測定すればよい。
【0019】
食酢中の酢酸換算酸度は、食酢の全量に対して、好ましくは0.5質量%以上11質量%以下であり、下限値はより好ましくは0.8質量%以上であり、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、さらにより好ましくは1.5質量%以上であり、最も好ましくは2.0質量%以上であり、また、上限値はより好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは9.0質量%以下であり、さらにより好ましくは8.0質量%以下であり、最も好ましくは7.0質量%以下である。食酢中の酢酸換算酸度が上記数値範囲内であれば、香辛料含有食品中の香辛料の風味をより増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みをより増強することができる。
食酢中の酢酸換算酸度の測定方法は、醸造酢の日本農林規格で規定された「酸度」の測定方法に準じて測定すればよい。
【0020】
(香気成分)
本発明の食酢は、少なくとも、イソアミルアルコール及びフェネチルアルコールから選択される少なくとも1種の第1の香気成分と、ジアセチル及びイソ吉草酸から選択される少なくとも1種の第2の香気成分とを含むものである。本発明の食酢は、第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppmとしたとき、
以下の数式(1):
(1)2.0<A/B
を満たすものである。
また、本発明の食酢は、食酢中の酢酸換算酸度をC質量%としたとき、
以下の数式(2):
(2)5<(A+B)/C
を満たすことが好ましく、
以下の数式(3):
(3)(A+B)/C<100
を満たすことが好ましい。
【0021】
(第1の香気成分と第2の香気成分の含有比)
本発明の食酢は上記のとおり、第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppmとしたとき、A/Bは2.0超である。A/Bは、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3.0以上であり、さらにより好ましくは3.5以上であり、また、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは20以下である。第1の香気成分と第2の香気成分の含有比が上記数値範囲を満たすことで、香辛料含有食品中の香辛料の風味を増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みを増強することができる。一方、第1の香気成分と第2の香気成分の含有比が上記数値範囲よりも少ない場合、香辛料含有食品中の香辛料の風味が十分に増強されず、香辛料含有食品の味の深みが増強されない。
【0022】
(第1の香気成分の含有量)
本発明の食酢中の第1の香気成分の含有量は、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは20ppm以上であり、さらにより好ましくは30ppm以上であり、最も好ましくは50ppm以上であり、また、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、さらに好ましくは300ppm以下であり、最も好ましくは200ppm以下である。第1の香気成分の含有量が上記数値範囲を満たすことで、香辛料含有食品中の香辛料の風味をより増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みをより増強することができる。
【0023】
(第2の香気成分の含有量)
本発明の食酢中の第2の香気成分の含有量は、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは3ppm以上であり、さらにより好ましくは5ppm以上であり、また、好ましくは30ppm以下であり、より好ましくは25ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。第2の香気成分の含有量が上記数値範囲を満たすことで、香辛料含有食品の風味の臭みや癖を抑えることができる。
【0024】
(第1の香気成分と第2の香気成分の合計含有量と酢酸換算酸度の比)
本発明の食酢は上記のとおり、第1の香気成分の合計含有量をAppm、第2の香気成分の合計含有量をBppm、食酢中の酢酸換算酸度をC質量%としたとき、(A+B)/Cは、好ましくは5.0超である。(A+B)/Cは、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、さらにより好ましくは17以上であり、また、好ましくは100以下であり、より好ましくは80以下であり、さらに好ましくは40以下であり、さらにより好ましくは30以下である。第1の香気成分と第2の香気成分の合計含有量と酢酸換算酸度の比が上記数値範囲を満たすことで、香辛料含有食品中の香辛料の風味をより増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みをより増強することができる。
【0025】
本発明の食酢は、イソアミルアルコール、フェネチルアルコール、ジアセチル、及びイソ吉草酸以外にも、通常の食酢において含まれる香気成分を含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲で更なる他の香気成分を含んでもよい。
【0026】
食酢中のイソアミルアルコール、フェネチルアルコール、ジアセチル、及びイソ吉草酸の含有量を調節する方法は、特に限定されないが、例えば、食酢製造時における原料の選定や発酵条件により調製したり、食酢に、イソアミルアルコール、フェネチルアルコール、ジアセチル、及びイソ吉草酸をそれぞれ添加してもよい。また、食酢に、イソアミルアルコール、フェネチルアルコール、ジアセチル、及びイソ吉草酸が含まれる食品や食品添加物を配合してもよい。
【0027】
(香気成分の測定方法)
本発明の食酢の香気成分は、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)で測定することができる。
(1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:厚さ65μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサンのコーティング相を備えるSPMEファイバー(製品名:StableFlex/SS、 65μm、PDMS/DVB Coating、57293-U、SPELCO社製)
・揮発性成分抽出装置:AOC-5000Plus(島津製作所製)
・予備加温: 40℃,2min
・攪拌速度: 500rpm
・揮発性成分抽出: 40℃,30min
・脱着時間: 1min
(2)香気成分の測定方法
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、食酢中のn-アミルアルコール(内部標準として添加)のピーク面積に対する、イソアミルアルコール、フェネチルアルコール、ジアセチル、及びイソ吉草酸の各ピーク面積から濃度を求めた。ピーク面積と含有量の比率は、イソアミルアルコール、フェネチルアルコール、ジアセチル、イソ吉草酸、及びn-アミルアルコールを既知量添加した標準試料を同様に測定し、得られたガスクロマトグラムにおけるピーク面積から算出する。
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器: GC - 2010(島津製作所製)
・カラム: InertCap WAX(ジーエルサイエンス社製)長さ30m,口径0.32mm,膜厚0.25μm
・温度条件: 40℃(5min)保持→100℃まで3℃/min昇温
→220℃まで5℃/min昇温→10min保持
・キャリアー: Heガス、 ガス流量1.9mL/min
・インジェクション:スプリットレス
・インレット温度: 250℃
<質量分析条件>
・質量分析計: GCMS-QP2010Plus (島津製作所製)
・スキャン質量 m/z 30.0~350.0
・イオン化方式 EI(イオン化電圧70eV)
なお、信号強度が低い場合等は、スキャン測定ではなく、SIM(選択イオンモニタリング)測定を行っても良い。
また、測定装置は上記に限られず、例えばAgilent 7890B、Agilent 5977Sなどを使用してもよく、使用する測定機器の仕様に合わせて条件を適宜調整し測定することができる。
【0028】
(有機酸)
本発明の食酢は、酢酸以外の有機酸をさらに含んでもよい。有機酸としては、クエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸等、またはこれらの塩が挙げられる。これらの有機酸及び/又は有機酸塩は、1種単独で含まれてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0029】
(他の成分)
本発明の食酢は、上述した成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で食酢に通常用いられている各種成分を適宜選択して配合することができる。他の成分としては、例えば、アミノ酸、食塩、甘味料、増粘剤等が挙げられる。
【0030】
(香辛料含有食品)
本発明の香辛料含有食品は、香辛料を含有する食品であれば、特に限定されない。香辛料は、特に限定されず従来公知の香辛料を用いることができる。香辛料としては、例えば、アジョワン、アニス、オニオン、オールスパイス、オレガノ、カルダモン、カレーリーフ、ガーリック、キャラウェイ、クミン、グリーンペッパー、クローブ、ケーパー、コリアンダー、サフラン、山椒、紫蘇、シナモン、ジンジャー、八角、セージ、タイム、ターメリック、タラゴン、チリペッパー、ディル、レッドペッパー、ナツメグ、パセリ、バジル、バニラ、パプリカ、ハラペーニョ、フェヌグリーク、フェンネル、ブラックペッパー、ペッパー、ペパーミント、ポピー・シード、ホワイトペッパー、マジョラム、和がらし、洋がらし、マスタード、ミョウガ、ローズマリー、ローリエ、ワサビ、五香粉、ガラムマサラ、カレー粉、七味唐辛子及びチリパウダー等が挙げられる。これらの香辛料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
好適な香辛料含有食品としては、例えば、カレーソース、カレールウ、カレーフィリング、カレースープ、カレーシーズニング、カレースナック、ガパオライス、ウスターソース、トムヤムクン、ソース焼きそば、及びチャーハン等が挙げられる。特に好適な香辛料含有食品としては、カレー風味を有するものであり、カレーソース、カレールウ、カレーフィリング、カレースープ、カレーシーズニング、及びカレースナックからなる群から選択される1種のカレー風味食品であることがより好ましい。
【0032】
香辛料含有食品に対する食酢の添加量は、香辛料含有食品100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上4.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.15質量部以上3.0質量部以下であり、さらにより好ましくは0.3質量部以上2.0質量部以下であり、最も好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下である。食酢の添加量が、上記数値範囲内であれば、香辛料含有食品中の香辛料の風味をより増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みをより増強することができる。
【0033】
(香辛料含有食品の製造方法)
本発明の香辛料含有食品の製造方法は、上記の香辛料含有食品に上記の食酢を添加する工程を含むものである。本発明の香辛料含有食品の製造方法においては、香辛料含有食品を製造した後に食酢を添加してもよいし、香辛料含有食品の製造中に食酢を添加してもよいし、予め食酢を添加した原料を用いて香辛料含有食品を製造してもよい。
【0034】
香辛料含有食品の製造方法における食酢の添加量は、香辛料含有食品100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上4.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.15質量部以上3.0質量部以下であり、さらにより好ましくは0.3質量部以上2.0質量部以下であり、最も好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下である。食酢の添加量が、上記数値範囲内であれば、香辛料含有食品中の香辛料の風味をより増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みを増強することができる。
【0035】
(香辛料含有食品中の香辛料の風味及び/又は香辛料含有食品の味の深みを増強する方法)
本発明の香辛料含有食品中の香辛料の風味及び/又は香辛料含有食品の味の深みを増強する方法は、上記の香辛料含有食品に上記の食酢を添加する工程を含むものである。本発明の香辛料含有食品中の香辛料の風味を増強する方法においては、香辛料含有食品を製造した後に食酢を添加してもよいし、香辛料含有食品の製造中に食酢を添加してもよいし、予め食酢を添加した原料を用いて香辛料含有食品を製造してもよい。
【0036】
本発明の香辛料含有食品中の香辛料の風味及び香辛料含有食品の味の深みを増強する方法における食酢の添加量は、香辛料含有食品100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上4.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.15質量部以上3.0質量部以下であり、さらにより好ましくは0.3質量部以上2.0質量部以下であり、最も好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下である。食酢の添加量が、上記数値範囲内であれば、香辛料含有食品中の香辛料の風味をより増強し、かつ、香辛料含有食品の味の深みを増強することができる。
【実施例0037】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0038】
<試験例1>
[実施例1~14、比較例1~3]
酢酸の含有量が1~10質量%の食酢において、表1及び2に記載の割合になるように第1の香気成分(イソアミルアルコール、フェネチルアルコール)及び第2の香気成分(ジアセチル、イソ吉草酸)の含有量を調節した。
【0039】
<食酢の評価>
(香気成分の含有量の測定)
上記で得られた食酢中の香気成分の含有量は以下の方法により測定した。すなわち、上記で詳述した固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定し、得られたガスクロマトグラムにおけるイソアミルアルコールのピーク面積と、n-アミルアルコール(内部標準として添加)のピーク面積比により、イソアミルアルコールの含有量を定量した。さらに、フェネチルアルコール、ジアセチル、及びイソ吉草酸の含有量についても、イソアミルアルコールと同様の方法で定量した。ピーク面積と含有量の比率は、イソアミルアルコール、フェネチルアルコール、ジアセチル、イソ吉草酸、及びn-アミルアルコールを既知量添加した標準試料を同様に測定し、得られたガスクロマトグラムにおけるピーク面積より算出した。算出結果を表1及び2に示した。
【0040】
(pHの測定)
上記で得られた食酢について、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いてpHを測定した。測定結果を表1及び2に示した。
【0041】
(官能評価)
市販のカレールウを用いて製造したカレーソース100gに、上記で得られた食酢を1.0質量%になるように添加した。食酢を添加した各カレーソースについて、香辛料の風味増強効果及び香辛料含有食品の味の深み増強効果を評価した。当該評価は、複数(4人)の訓練されたパネルにより、食酢非添加のカレーソースを対照品として下記の基準で行った。評価結果を表1及び2に示した。下記の評価基準においては、数値が大きいほど良好な結果である。香辛料の風味増強効果の評価は、「3」点以上であることが実用上好ましく、香辛料含有食品の味の深み増強効果は、「2」点以上であることが実用上好ましい。
(香辛料の風味増強効果の評価基準)
5:対照品よりも、香辛料の風味が極めて強く増強された。
4:対照品よりも、香辛料の風味が強く増強された。
3:対照品よりも、香辛料の風味が増強された。
2:対照品よりも、香辛料の風味がわずかに増強されたが、十分ではなかった。
1:対照品と同等の香辛料の風味であった、または対照品よりも香辛料の風味が感じられなかった。
(香辛料含有食品の味の深み増強効果の評価基準)
4:対照品よりも、香辛料含有食品の味の深みが極めて強く増強された。
3:対照品よりも、香辛料含有食品の味の深みが増強された。
2:対照品よりも、香辛料含有食品の味の深みがわずかに増強された。
1:対照品と同等の味の深みであった。
【0042】
上記の官能評価の結果、以下の結果が得られた。
実施例4~7、10の食酢では、pH、及び第1の香気成分の合計含有量と第2の香気成分の合計含有量の比が特定の数値範囲を満たすことで、対照品よりも、香辛料の風味が極めて強く増強され、かつ、香辛料含有食品の味の深みが極めて強く増強された。
実施例13の食酢では、pH、及び第1の香気成分の合計含有量と第2の香気成分の合計含有量の比が特定の数値範囲を満たすことで、対照品よりも、香辛料の風味が強く増強され、かつ、香辛料含有食品の味の深みが極めて強く増強された。
実施例2、8、9の食酢では、pH、及び第1の香気成分の合計含有量と第2の香気成分の合計含有量の比が特定の数値範囲を満たすことで、対照品よりも、香辛料の風味が強く増強され、かつ、香辛料含有食品の味の深みが増強された。
実施例1、3、14の食酢では、pH、及び第1の香気成分の合計含有量と第2の香気成分の合計含有量の比が特定の数値範囲を満たすことで、対照品よりも、香辛料の風味が増強され、かつ、香辛料含有食品の味の深みが増強された。
実施例11、12の食酢では、pH、及び第1の香気成分の合計含有量と第2の香気成分の合計含有量の比が特定の数値範囲を満たすことで、対照品よりも、香辛料の風味が増強され、かつ、香辛料含有食品の味の深みがわずかに増強された。
一方、比較例1の食酢では、第1の香気成分及び第2の香気成分のいずれも含まれていないため、対照品よりも香辛料の風味がわずかに増強されたが十分ではなく、かつ、対照品と同等の味の深みであった。
比較例2の食酢では、第2の香気成分は含まれていたが、第1の香気成分が含まれていないため、対照品と同等の香辛料の風味であり、かつ、対照品と同等の味の深みであった。
比較例3の食酢では、第1の香気成分の合計含有量と第2の香気成分の合計含有量の比が特定の数値範囲を満たしていないため、対照品よりも、香辛料含有食品の味の深みが増強されたが、対照品よりも香辛料の風味はわずかにしか増強されず、十分ではなかった。
比較例4の食酢では、第1の香気成分は含まれていたが、第2の香気成分が含まれていないため、対照品よりも、香辛料の風味が強く増強されたが、対照品と同等の味の深みであった。
【0043】
【0044】
【0045】
<試験例2>
[実施例15~17]
市販のカレールウを用いて製造したカレーソース100gに、実施例4で得られた食酢をそれぞれ0.3質量%、0.5質量%、及び2.0質量%になるように添加した。食酢を添加した各カレーソースについて、香辛料の風味増強効果及び香辛料含有食品の味の深み増強効果を試験例1と同様にして官能評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0046】
【0047】
<試験例3>
[実施例18~73、比較例5~20]
市販のカレー粉、小麦粉、サラダ油、食塩、ブイヨン等を用いて製造したカレーソース100gに実施例1~14、比較例1~4の食酢をそれぞれ、0.3質量%、0.5質量%、1.0質量%、及び2.0質量%になるように添加した。食酢を添加した各カレーソースについて、香辛料の風味増強効果及び香辛料含有食品の味の深み増強効果を試験例1と同様にして官能評価を行った。評価結果を表4~11に示した。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
<試験例4>
[実施例74]
市販のガパオ(鶏肉のバジル炒め)100gに実施例4で得られた食酢を1.0質量%になるように添加した。食酢を添加したガパオについて、香辛料の風味増強効果及び香辛料含有食品の味の深み増強効果を試験例1と同様にして官能評価を行った。なお、食酢非添加のガパオを対照品とした。評価結果を表12に示した。
【0057】
[実施例75]
市販されているウスターソース100gに実施例4で得られた食酢を1.0質量%になるように添加して、香辛料の風味増強効果及び香辛料含有食品の味の深み増強効果を試験例1と同様にして官能評価を行った。なお、食酢非添加のウスターソースを対照品とした。評価結果を表12に示した。
【0058】