(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031767
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】光ファイバ経路切替装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20230302BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H04B10/80 160
H04J14/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137462
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】川野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達也
(72)【発明者】
【氏名】中江 和英
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 ひろし
(72)【発明者】
【氏名】片山 和典
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH26
5K102AN03
5K102AN05
5K102MB11
5K102MH22
5K102PB01
5K102PD13
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微弱な光パワーの供給による光経路切替を実現する光ファイバ経路切替装置及び該装置が実行する方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ経路切替装置において、現用光ファイバ102と非常用光ファイバ103を切り替える光経路切替スイッチ1と、給電用電源装置2から発せられる給電用光信号の波長を分波するWDMカプラ3と、WDMカプラ3で分波された給電用光信号を電気に変換する光電変換器4と、光電変換器4から出力された電気を蓄える蓄電装置5と、蓄電装置5からの出力電圧を、光経路切替スイッチ1を動作させるために必要な電圧に昇圧させる電圧昇圧装置6と、光電変換器4からの出力電圧の監視、蓄電装置5の電圧の監視、電圧昇圧装置6の制御並びに光経路切替スイッチ1の電源及び経路切替の制御、を行う制御装置8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する局側伝送装置と加入者側伝送装置が光ファイバを介して信号光を送受信する光伝送路に用いられ、前記光ファイバとして現用光ファイバもしくは非常用光ファイバに経路を切替える光ファイバ経路切替装置において、
前記現用光ファイバと前記非常用光ファイバを切り替える光経路切替スイッチと、
給電用電源装置から発せられる給電用光信号の波長を分波するWDMカプラと、
前記WDMカプラで分波された給電用光信号を電気に変換する光電変換器と、
前記光電変換器から出力された電気を蓄える蓄電装置と、
前記蓄電装置からの出力電圧を、前記光経路切替スイッチを動作させるために必要な電圧に昇圧させる電圧昇圧装置と、
前記光電変換器からの出力電圧の監視、前記蓄電装置の電圧の監視、前記電圧昇圧装置の制御、並びに前記光経路切替スイッチの電源及び経路切替の制御、を行う制御装置と、
を備えることを特徴とした光ファイバ経路切替装置。
【請求項2】
前記蓄電装置が、
前記制御装置を動作させるための電力を蓄電する制御装置用コンデンサと、
前記光経路切替スイッチを動作させるための電力を蓄電する光経路切替スイッチ用コンデンサと、
前記光経路切替スイッチ用コンデンサへの充電開始および終了を制御する光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御スイッチと、
前記制御装置用コンデンサの電圧を監視し、当該電圧が設定電圧以上になると、前記光経路切替スイッチ用コンデンサの充電を開始するように、前記光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御スイッチを制御する光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御器と、
を備えることを特徴とした請求項1に記載の光ファイバ経路切替装置。
【請求項3】
前記蓄電装置が、
前記光電変換器と前記制御装置用コンデンサの間に接続され、前記制御装置用コンデンサからの逆流を防止するための制御装置用コンデンサ用逆流防止ダイオードと、
前記光電変換器と前記光経路切替スイッチ用コンデンサの間に接続され、前記光経路切替スイッチ用コンデンサからの逆流を防止するための光経路切替スイッチ用コンデンサ逆流防止ダイオードと、
を備えることを特徴とした請求項2に記載の光ファイバ経路切替装置。
【請求項4】
前記給電用光信号は、前記光経路切替スイッチを遠隔操作するための制御信号で強度変調されており、
前記制御装置は、前記光電変換器から出力される電気信号から前記制御信号を取得し、取得した前記制御信号に従って、前記光経路切替スイッチの切り替えを行う、
ことを特徴とした請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ経路切替装置。
【請求項5】
対向する局側伝送装置と加入者側伝送装置が光ファイバを介して信号光を送受信する光伝送路に用いられ、前記光ファイバとして現用光ファイバもしくは非常用光ファイバに経路を切替える光ファイバ経路切替装置が実行する方法において、
WDMカプラが、給電用光源装置から発せられる給電用光信号を分波し、
光電変換器が、前記WDMカプラで分波された給電用光信号を電気に変換し、
蓄電装置が、前記光電変換器から出力された電気を蓄え、
電圧昇圧装置が、前記蓄電装置からの出力電圧を、前記光経路切替スイッチを動作させるために必要な電圧に昇圧させ、
光経路切替スイッチが、前記蓄電装置で蓄積された電力を用いて、前記現用光ファイバと前記非常用光ファイバとを切り替える、
ことを特徴とした方法。
【請求項6】
前記光ファイバ経路切替装置は、
前記給電用光信号を用いて前記光経路切替スイッチの制御信号を受信すると、
前記光経路切替スイッチを起動した後、前記制御信号に従って、前記現用光ファイバと前記非常用光ファイバとを切り替える、
請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容易に電源を確保できない環境において、光給電により電力を供給し、光ファイバ経路を切替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ経路切替技術として、通信ビル内やユーザ施設等、商用電源が確保可能な場所において用いられる装置が提案されている。これは、現用および非常用の2系統の光ファイバ経路の通信光パワーをモニタし、光パワーが下がるなどの異常時には、問題のない系統に光ファイバ経路を切替える装置である。(例えば、非特許文献1参照。)
【0003】
商用電源を用いずに光ファイバ経路を切替える技術としては、光ファイバによる光エネルギーを電力に変換し、光ファイバ経路を切替える装置が提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。しかしながら、非特許文献2では、供給しなければならない光パワーが1W程度と非常に大きく安全面から実用化が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社デンソー:自動光伝送路切替装置、https://www.kk-denso.co.jp/products/automatic-light.php、 (Accessed 2020.12.16)
【非特許文献2】R. Helkey et al., “Remotely Powered Optical Switch for Remote Subscriber Aggregation and OTDR Measurement in PON,” 33rd European Conference and Exhibition of Optical Communication, Berlin, Germany, 2007, pp. 1-2, doi: 10.1049/ic:20070283.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、微弱な光パワーの供給による光経路切替を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、微弱な光パワーを時間をかけて蓄電し、光経路切替スイッチを動作させる時に大きな電力を取り出せるような構成を実現している。制御装置により蓄電状況を監視し、十分な電力を有しているかどうかを確認した後に、光経路切替スイッチを動作させることにより微弱な光パワーの供給による光経路切替を実現するものである。
【0007】
具体的には、本開示の光ファイバ経路切替装置は、
対向する局側伝送装置と加入者側伝送装置が光ファイバを介して信号光を送受信する光伝送路に用いられ、前記光ファイバとして現用光ファイバもしくは非常用光ファイバに経路を切替える光ファイバ経路切替装置において、
前記現用光ファイバと前記非常用光ファイバを切り替える光経路切替スイッチと、
給電用電源装置から発せられる給電用光信号の波長を分波するWDMカプラと、
前記WDMカプラで分波された給電用光信号を電気に変換する光電変換器と、
前記光電変換器から出力された電気を蓄える蓄電装置と、
前記蓄電装置からの出力電圧を、前記光経路切替スイッチを動作させるために必要な電圧に昇圧させる電圧昇圧装置と、
前記光電変換器からの出力電圧の監視、前記蓄電装置の電圧の監視、前記電圧昇圧装置の制御、並びに前記光経路切替スイッチの電源及び経路切替の制御、を行う制御装置と、
を備える。
【0008】
具体的には、本開示の光ファイバ経路切替方法は、
対向する局側伝送装置と加入者側伝送装置が光ファイバを介して信号光を送受信する光伝送路に用いられ、前記光ファイバとして現用光ファイバもしくは非常用光ファイバに経路を切替える光ファイバ経路切替装置が実行する方法において、
WDMカプラが、給電用光源装置から発せられる給電用光信号を分波し、
光電変換器が、前記WDMカプラで分波された給電用光信号を電気に変換し、
蓄電装置が、前記光電変換器から出力された電気を蓄え、
電圧昇圧装置が、前記蓄電装置からの出力電圧を、前記光経路切替スイッチを動作させるために必要な電圧に昇圧させ、
光経路切替スイッチが、前記蓄電装置で蓄積された電力を用いて、前記現用光ファイバと前記非常用光ファイバとを切り替える。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、微弱な光パワーの供給による光経路切替を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】光ファイバ経路切替システムの構成例を示す。
【
図3】光ファイバ経路切替装置における蓄電装置の内部構成を示す。
【
図4】光ファイバ経路切替装置を用いた光ファイバ経路切替方法を示す。
【
図5】光ファイバ経路切替システムの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態例について説明する。
図1は本開示の実施形態を示している。本開示の光ファイバ経路切替システムは、給電用光信号を発する給電用光源装置2と、光ファイバ経路切替装置と、を備える。光ファイバ経路切替装置は、対向する局側伝送装置100と加入者側伝送装置101が光ファイバを介して信号光を送受信する光伝送路に用いられ、地下マンホール内又は架空に設置されたクロージャ内などの容易に電源を確保できない環境に配置される。給電用光源装置2は、局側伝送装置100の設置されている通信ビルに設置されている。光ファイバ経路切替装置は、給電用光源装置2からの光給電により電力を供給され、前記光ファイバとして現用光ファイバ102もしくは非常用光ファイバ103に経路を切替える。
【0013】
より具体的には、本開示の光ファイバ経路切替装置は、
給電用電源装置2から発せられる給電用光信号の波長を合分波するWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ3と、
現用光ファイバと102非常用光ファイバ103を切り替える光経路切替スイッチ1と、
給電用光源装置2から発せられる給電用光信号の光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換器4と、
光電変換器4で変換された電気エネルギーを蓄える蓄電装置5と、
蓄電装置5からの出力電圧を、光経路切替スイッチ1を動作させるために必要な電圧に昇圧させる電圧昇圧装置6と、
光経路切替スイッチ1への電力供給を制御する光経路切替スイッチ電源スイッチ7と、
光電変換器4からの出力電圧の監視、蓄電装置5の電圧の監視、電圧昇圧装置6の制御、光経路切替スイッチ1の電源および経路切替を制御する制御装置8と、
を備える。
【0014】
給電用光源装置2から発せられる給電用光信号は、通信ビルに設置された光分岐カプラ104において、現用光ファイバ102に多重される。現用光ファイバ102に多重された給電用光信号は、WDMカプラ3により分離され、光電変換器4に供給される。
【0015】
給電用光信号は、光電変換器4において電気に変換され、蓄電装置5に供給される。蓄電装置5は、光電変換器4から供給された電気を蓄える。蓄電装置5で蓄えられている電力は、制御装置8および電圧昇圧装置6に供給される。
【0016】
制御装置8は、光電変換器4により変換された電圧を、光電変換器出力電圧監視信号線9を用いて監視する。また、制御装置8は、蓄電装置5に蓄えられた電気の電圧を、蓄電装置電圧監視信号線10より監視する。これにより、光経路切替スイッチ1における光経路切替動作に必要な電力が蓄積されているか否かを判定することができる。
【0017】
電圧昇圧装置6は、蓄電装置5に蓄電された電力の電圧を、光経路切替スイッチ1の動作に必要なレベルの電圧まで昇圧する。電圧昇圧装置6で昇圧された電気は、光経路切替スイッチ電源スイッチ7により光経路切替スイッチ1に供給又は停止される。これにより、本開示は、光経路切替スイッチ1に必要な電力を光経路切替スイッチ1に供給することができる。
【0018】
電圧昇圧装置6の起動及び停止の制御は、制御装置8より、電圧昇圧装置制御信号線13を介して行われる。光経路切替スイッチ電源スイッチ7のON/OFFは、制御装置8により、光経路切替スイッチ電源制御信号線12を介して行われる。制御装置8は、光経路切替スイッチ1における光経路切替動作に必要な電力を光経路切替スイッチ1に供給したあとで、光経路切替スイッチ制御信号線11を介して制御装置8より光経路の切替操作を行う。
【0019】
ここで、本開示では、蓄電装置5からの電力は、電圧昇圧装置6、光経路切替スイッチ電源スイッチ7、光経路切替スイッチ1の順に供給される。そのため、本開示では、電圧昇圧装置6の起動、光経路切替スイッチ電源スイッチ7のON、光経路切替スイッチ1の光経路切替、の順に実行される。
【0020】
これらの構成では、通常状態では制御装置8および蓄電装置5のみが動作している。制御装置8により蓄電装置5に蓄えられた電力が光経路切替スイッチ1を動作させるために十分な電力を保持しているかどうか確認しつつ、蓄電装置5への充電が行われる。必要最小限の電力にてシステム全体を動作させることにより、光給電により得られる0.5mW程度の微小な電力でも光経路切替スイッチ1を動作させる電力を確保することが可能になる。
【0021】
したがって、0.5mW程度の微弱な給電用光信号の光エネルギーであっても、光経路切替スイッチ1は、現用光ファイバ102から非常用光ファイバ103への光ファイバ経路切替およびその反対の動作を行うことが可能になる。
【0022】
図2は、給電用光源装置2を用いて、光経路切替スイッチ1を遠隔操作する例を示す。強度変調器21は、LD光源20から発する光の強度を、光経路切替スイッチ1を遠隔操作するための制御信号で変調する。これにより、給電用光源装置2から出力される給電光信号を用いて、光経路切替スイッチ1を遠隔操作するための制御信号を送信することが可能となる。
【0023】
なお、強度変調器21における光出力の変調は、コンピュータ等の光ファイバ経路切替指示装置24により光ファイバ経路切替指示信号線23を通じて強度変調器21を制御することで実現する。強度変調器21により変調された給電光信号は、光電変換器4において電気に変換される。このときの光電変換器4からの出力電圧を制御装置8で監視することによって、光ファイバ経路切替指示装置24から出力された制御信号を受信することが可能となる。
【0024】
図3は蓄電装置5の実施形態である。蓄電装置5は、制御装置8に供給するための制御装置用コンデンサ52と、光経路切替スイッチ1に供給するための光経路切替スイッチ用コンデンサ54を備える。光電変換器4からの電力は、制御装置用コンデンサ52および光経路切替スイッチ用コンデンサ54の2系統に供給される。光電変換器4と制御装置用コンデンサ52の間には制御装置用コンデンサ用逆流防止ダイオード51が接続され、光電変換器4と光経路切替スイッチ用コンデンサ54の間には光経路切替スイッチ用コンデンサ用逆流防止ダイオード53が接続されている。
【0025】
これら2系統の制御装置用コンデンサ52および光経路切替スイッチ用コンデンサ54に蓄電された電力は、制御装置用コンデンサ用逆流防止ダイオード51および光経路切替スイッチ用コンデンサ用逆流防止ダイオード53により、2系統のコンデンサ間を互いに行き来することはない。これにより、光経路切替スイッチ1を動作させるために光経路切替スイッチ用コンデンサ54から一時的に大電力を消費したとしても、制御装置用コンデンサ52には影響を与えないことから、制御装置8の安定な動作を継続することが可能となる。
【0026】
光電変換器4からの電力は、まず制御装置用コンデンサ52に充電される。制御装置用コンデンサ52の充電電圧は、制御装置用コンデンサ電圧監視信号線57を介して光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御器56により監視される。制御装置用コンデンサ52の充電電圧が設定電圧以上になると、光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御器56は、光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御スイッチ55を制御し、光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御スイッチ55から光経路切替スイッチ用コンデンサ54への充電を開始する。
【0027】
これらの構成により、光電変換器4からの電力は、まず制御装置用コンデンサ52に充電される。制御装置用コンデンサ52に充電された電力はすぐに制御装置8に供給され、まず制御装置8が起動する。そして、制御装置8の起動とともに、光電変換器4の出力電圧および蓄電装置5の電圧の監視を開始することができる。よって、本開示の光ファイバ経路切替装置は、光ファイバ経路切替指示装置24からの光ファイバ経路切替指示を受信し、光経路切替スイッチ1を動作させるための電力が賄えると判断した時に限り、現用光ファイバ102から非常用光ファイバ103へ、もしくは、非常用光ファイバ103から現用光ファイバ102への光ファイバ経路の切替が可能となる。
【0028】
図4は、本開示の実施形態である光ファイバ経路切替装置を用いた光ファイバ経路切替方法の一例を示す。
光電変換器出力電圧監視ステップS70では、光電変換器4からの出力電圧が例えば2V以上(HIGH)から0.5V以下(LOW)に低下した時間および回数を監視する。出力電圧がLOWの時をディジタルの1、HIGHの時を0に対応させることで、1と0を組み合わせた光経路切替スイッチ1への切替コマンドを受信することができる。また、一定時間以上出力電圧がLOWになっている場合は、現用光ファイバ102が断線したと判断することが可能である。このように、光電変換器出力電圧監視ステップS70では受信した切替コマンドが「非常用」もしくは「現用」なのか、現用光ファイバ102の「断線」もしくは「正常」なのかを判定する。
【0029】
判定した結果、「非常用」もしくは「現用」の場合は、蓄電装置電圧監視ステップS71により蓄電装置5の電圧を計測する。電圧が規定値以下の時は、一定時間後に再度蓄電装置電圧監視ステップS71により蓄電装置5の電圧を計測する。電圧が規定値より大きいときは電圧昇圧装置制御ステップS72により電圧昇圧装置6の昇圧を開始する。
【0030】
次に光経路切替スイッチ電源制御ステップS73において光経路切替スイッチ1への電力供給を開始した上で、光経路切替スイッチ制御ステップ74において光経路切替スイッチ1を操作し光経路を受信した切替コマンドに応じて「非常用」もしくは「現用」に切替える。光経路を切替えた後に光経路切替スイッチ電源制御ステップS73により光経路切替スイッチ1への電力供給を終了し、電圧昇圧装置制御ステップS72で電圧昇圧装置6での昇圧を終了する。
【0031】
一方、光電変換器出力電圧監視ステップS70において現用光ファイバ102の「断線」と判定した時は、直ちに光経路切替スイッチ1から非常用光ファイバ103への切替を行う。
【0032】
まず、電圧昇圧装置制御ステップS72により電圧昇圧装置6の昇圧を開始し、光経路切替スイッチ電源制御ステップS73により光経路切替スイッチ1に電力を供給し、光経路切替スイッチ制御ステップS74において光経路切替スイッチ1を非常用光ファイバ103に切替える操作を行う。
【0033】
その後、光電変換器出力電圧監視ステップS70により光電変換器4の出力電圧を監視する。出力電圧がHIGHになり現用光ファイバ102が「正常」に復帰したと判定した場合は、光電変換器出力監視ステップS70において「現用」と判定されたフローの蓄電装置電圧監視ステップS71に戻り、蓄電電圧が規定より大きくなった時点で光経路切替スイッチ1を現用光ファイバ102に切替える。
【0034】
また、「断線」状態により、蓄電装置5の電力が0となり、現用光ファイバ102が「正常」に復帰したとき、光電変換器出力電圧監視行程70を再開するためには、0からの蓄電が必要になる。そこで、
図5のように、非常用光ファイバ103にWDMカプラ111と光カプラ110を設けることで、非常用光ファイバ103を用いて伝搬された給電用光信号をWDMカプラ111で分波可能にする。これにより、現用光ファイバ102が「断線」状態にあっても微小な電力供給を実施することで、蓄電装置5に幾分かの電力を蓄電することが可能となり、「正常」に復帰した際の光電変換器出力電圧監視行程70の即時再開を可能とする。
【0035】
また、光分岐カプラ104の分岐比を、例えば6:4等の非等分にすることで、現用光ファイバ102が断線した場合と非常用光ファイバ103が断線した場合とで光電変換器4の受光パワーに差異が生じる。すなわち、光電変換器4の出力電圧に差異が生じるため、あらかじめ基準値を設ければ現用光ファイバ102の断線と非常用光ファイバ103の断線とを区別することが可能となる。
【0036】
なお、本実施形態では、光経路切替スイッチ1が1台の場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。光経路切替スイッチ1が複数台の場合においても、必要な電力が確保されているかどうか監視しながら、1台ずつ順次切り替えることにより実現可能であることは言うまでもない。
【0037】
(本開示の効果)
以上説明したように、本開示によれば通信用光ファイバにおいても安全なレベルの極微弱な光給電により光ファイバ経路を切替えることが可能になる。よって、地下マンホール内や、架空に設置されたクロージャ内等、従来であれば容易に電源を確保できない場所においても既存の通信用光ファイバを用いて光給電により電力を供給し光ファイバ経路を切替えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:光経路切替スイッチ
2:給電用光源装置
3:WDMカプラ
4:光電変換器
5:蓄電装置
6:電圧昇圧装置
7:光経路切替スイッチ電源スイッチ
8:制御装置
9:光電変換器出力電圧監視信号線
10:蓄電装置電圧監視信号線
11:光経路切替スイッチ制御信号線
12:光経路切替スイッチ電源制御信号線
13:電圧昇圧装置制御信号線
20:LD光源
21:強度変調器
23:光ファイバ経路切替指示信号線
24:光ファイバ経路切替指示装置
51:制御装置用コンデンサ用逆流防止ダイオード
52:制御装置用コンデンサ
53:光経路切替スイッチ用コンデンサ用逆流防止ダイオード
54:光経路切替スイッチ用コンデンサ
55:光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御スイッチ
56:光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御器
57:制御装置用コンデンサ電圧監視信号線
58:光経路切替スイッチ用コンデンサ充電制御スイッチ信号線
70:光電変換器出力電圧監視ステップ
71:蓄電装置電圧監視ステップ
72:電圧昇圧装置制御ステップ
73:光経路切替スイッチ電源制御ステップ
74:光経路切替スイッチ制御ステップ
100:局側伝送装置
101:加入者側伝送装置
102:現用光ファイバ
103:非常用光ファイバ
110:光カプラ
111:WDMカプラ