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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031938
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】医療用膨張・収縮駆動装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/139 20210101AFI20230302BHJP
   A61M 60/295 20210101ALI20230302BHJP
   A61M 60/497 20210101ALI20230302BHJP
   A61M 60/531 20210101ALI20230302BHJP
   A61M 60/554 20210101ALI20230302BHJP
   A61M 60/546 20210101ALI20230302BHJP
   A61M 60/585 20210101ALI20230302BHJP
【FI】
A61M60/139
A61M60/295
A61M60/497
A61M60/531
A61M60/554
A61M60/546
A61M60/585
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137729
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克明
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077DD09
4C077HH03
4C077HH13
4C077HH15
4C077JJ08
4C077JJ19
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】配管系の圧力異常が発生したときに、無駄に駆動停止頻度を高めることがなく、ユーザの負担を軽減できる医療用膨張・収縮駆動装置を提供する。
【解決手段】ガス圧力室11内の内部ガスをバルーン110に対し流入・流出操作する圧力伝達隔壁装置10と、駆動圧Piを変化させて流入操作時には内部ガス圧をバルーン110の収縮後安定圧(P1)側から上昇させる一方、流出操作時にはバルーン110の膨張後安定圧(P4)側から降下させる方向切替部13と、ガス圧力室11と補助圧力室41の連通状態に応じて内部ガス圧を調節するガス調節部59と、内部ガス圧を検出する圧力センサ51とを備えた装置で、流体接続ラインL2における圧力異常と判定すると、補助圧力室41をガス圧力室11から遮断しつつ内部ガス圧を上昇させる異常解除動作を行い、圧力異常が解除されると、駆動圧Piに応じたバルーン110のガス駆動を実行する対処を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張および収縮が可能な被駆動機器内に連通接続されるガス圧力室を有し、入力される駆動圧に応じて前記ガス圧力室内のガスを前記被駆動機器に対する流入方向および流出方向に移動操作可能なガス操作部と、
前記駆動圧を変化させて前記移動操作の方向を切り替え、前記流入方向への移動操作時には前記ガス圧力室の圧力を前記被駆動機器における収縮後安定圧側から上昇させる一方、前記流出方向への移動操作時には前記ガス圧力室の圧力を前記被駆動機器における膨張後安定圧側から降下させる方向切替部と、
前記ガス圧力室に遮断可能に連通接続される補助圧力室を有し、前記ガス圧力室と前記補助圧力室との連通状態に応じて前記ガス圧力室の圧力を調節するガス調節部と、
前記ガス圧力室の圧力を検出する圧力検出部と、を備えた医療用膨張・収縮駆動装置であって、
前記圧力検出部の検出情報を基に、前記被駆動機器内から前記ガス圧力室内までの流体接続ラインにおける圧力異常の有無を判定する圧力判定部と、
前記圧力判定部によって前記流体接続ラインの圧力異常があると判定された場合には、前記補助圧力室を前記ガス圧力室から遮断した状態下で前記ガス圧力室の圧力を上昇させる異常解除動作を実行させる異常解除動作部と、
をさらに備え、
前記圧力判定部の判定結果に基づき、前記異常解除動作により前記圧力異常が解除されたときには、前記駆動圧入力に応じた前記被駆動機器の膨張および収縮の駆動を実行させ、前記異常解除動作によっても前記圧力異常が解除されないときには、前記駆動圧入力に応じた前記被駆動機器の膨張および収縮の駆動を停止させることを特徴とする医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項2】
前記異常解除動作部は、前記圧力判定部が前記圧力検出部の検出情報を基に前記流体接続ラインにおける圧力異常が有ると判定した場合に、前記ガス操作部の移動操作を停止させた状態下で、前記圧力検出部の検出情報を基に前記収縮後安定圧を測定する収縮後安定圧測定手段を有しており、前記圧力判定部によって前記流体接続ラインの圧力異常があると判定された場合であって、前記収縮後安定圧測定手段により測定された圧力値が予め設定された基準圧に対する許容範囲内に入ったときに、前記補助圧力室を前記ガス圧力室から遮断した状態下で、前記異常解除動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項3】
前記異常解除動作部による前記異常解除動作を所定回数実行することによっても、前記圧力判定部により、前記流体接続ラインの圧力異常があると判定されたきには、前記駆動圧入力に応じた前記被駆動機器の膨張および収縮の駆動を停止させるとともに、所定の警報出力を実行する警報発生手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項4】
手動操作により前記ガス操作部に前記駆動圧に応じた作動開始を指令する駆動開始スイッチが設けられており、
前記異常解除動作部は、前記警報発生手段による前記所定の警報出力後に前記駆動開始スイッチの手動操作がなされた場合であって、前記圧力判定部により前記流体接続ラインの圧力異常があると判定される状態が継続しているとき、再度作動することを特徴とする請求項3に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項5】
前記ガス圧力室内のガスを大気側に排気可能な排気手段と、
前記排気手段により前記ガス圧力室内のガスを大気側に排気可能にした状態下で、前記補助圧力室側から前記ガス圧力室内に新たなガスを補充するガス置換手段と、をさらに有し、
前記異常解除動作部は、前記排気手段および前記ガス置換手段と協働して前記異常解除を実行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項6】
前記被駆動機器が、補助循環用デバイスであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項7】
前記ガス操作部は、前記駆動圧を受圧する可動の受圧部材を有しており、
該受圧部材が、片面側で前記駆動圧を受圧し、他の片面側で前記被駆動機器内および前記ガス圧力室内のガスの圧力を受圧することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用膨張・収縮駆動装置に関し、特に補助循環法による循環器系の機能補助装置(以下、補助循環用デバイスという)の駆動に好適な医療用膨張・収縮駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膨張・収縮が可能な被駆動機器をガス駆動する医療用膨張・収縮駆動装置は、いわゆる補助循環用デバイス、例えば大動脈内バルーンポンプ(IABP)に使用されている。
【0003】
このような医療用膨張・収縮駆動装置においては、IABP用のバルーンカテーテルが大腿動脈から挿入されて胸部下行大動脈内にそのバルーンが留置されたとき、心臓の拍動に応じてバルーンを膨張・収縮させるガス駆動を行うことで、心臓の働きを補助して患者の負担を軽減させることができるようになっており、バルーンのガス駆動が患者の心臓の膨張・収縮に対して適切なタイミングおよび圧力で行われることが要求される。
【0004】
従来のこの種の医療用膨張・収縮駆動装置としては、例えばIABP用のバルーンカテーテルの配管系に接続し陽圧と陰圧を交互に印加する圧力発生手段と、配管系に接続され、内圧差に応じて配管系からガスを吸入したり配管系にガスを排出したりする補助タンクと、補助タンクと配管系との間に介在する弁手段と、圧力発生手段から配管系への圧力の印加に応じて弁手段を制御する制御手段とを備えたものが知られている。
【0005】
この医療用膨張・収縮駆動装置では、圧力発生手段から配管系への印加圧力の切換え後に弁手段を開弁させることで、補助タンク接続に伴うガス駆動容積の増加により陽圧印加時のオーバーシュート後の安定圧力と陰圧印加時のアンダーシュート後の安定圧力との圧力差を抑えると共に、次の印加圧力の切換え前に弁手段を閉弁させることで、補助タンク遮断に伴うガス駆動容積の減少により次の印加圧力の切換えに対応するバルーンのガス駆動速度を高めることで、所要の応答性を確保するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、この医療用膨張・収縮駆動装置には、配管系のガス圧を検出する圧力センサと、圧力センサの検出圧力の低下時に配管系にガスタンクを介してガスを補充するガス補充手段と、ガス補充手段のガス補充量の経時変化を基にガス漏れと判定したときに警報出力するガス漏れ警報手段とが、さらに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/114779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の従来の医療用膨張・収縮駆動装置では、バルーンの膨張・収縮駆動がなされているときにモニタ表示される配管系内の圧力(一般的にはバルーン内圧と称される)の波形(以下の記載において、バルーン内圧波形と称する場合がある)を定期的に目視確認することで、その圧力波形の変化に応じ、バルーンの膨張が不十分であったりカテーテルの内部ガスの移動抵抗が増大していたりするような何らかの異常が発生していることを判断することができる。しかも、ガス漏れ判定時に警報出力するガス漏れ警報手段が設けられているので、表示波形からは判断し難いガス漏れ異常の発生をユーザに的確に報知することができる。
【0009】
また、前述の従来の医療用膨張・収縮駆動装置では、バルーンが膨張し切ってバルーン内圧波形がオーバーシュートした後の内部ガス圧力(以下、プラトー圧という)が通常よりも高くなったときや、バルーンが収縮し切ってバルーン内圧波形がアンダーシュートした後の内部ガス圧力(以下、基準圧という)が通常よりも低くなったときに、何らかの異常状態があると自動的に判断して警報出力するようにすれば、圧力異常状態の発生をもユーザに確実に報知することができると考えられる。
【0010】
しかしながら、配管系のガス圧を検出する圧力センサの検出圧力を基に一律に異常判定を行ったのでは、カテーテルの姿勢変化によっては容易に圧力異常状態の解除が可能な場合等であっても医療用膨張・収縮駆動装置を停止しなければならず、警報に対する対処・判断の要求頻度が高まってしまうという問題が残る。また、そのような問題は、目視確認による異常判定を行ったとしても生じ得ることである。
【0011】
より具体的には、例えば、陽圧印加状態下でありながらバルーンの留置位置が蛇行血管であることやバルーンについた巻きぐせ等の影響によりバルーンの膨らみが不十分になったり、カテーテルの捩れによるガス移動通路の狭窄が生じたりしているといった異常発生には至らないものの、通常時よりもバルーンカテーテルや配管系の内部の圧力が上昇しやすい状態となっているためにガスの高速移動に対する抵抗が大きくなっているような場合がある。そのような場合、内部の圧力の変化によるバルーンカテーテルの形状・姿勢のわずかな変化で、圧力異常状態が容易に解消し得ることがあり、そのようなときにまで、被駆動機器のガス駆動を停止してユーザの対処・判断を要求するのは、患者の負担やユーザのカテーテル操作負担を考慮すれば、妥当でない。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点を解消すべくなされたものであり、配管系の圧力異常が発生したときに、無駄に駆動停止頻度を高めることがなく、ユーザの負担を軽減できる医療用膨張・収縮駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の医療用膨張・収縮駆動装置は、上記目的達成のため、膨張および収縮が可能な被駆動機器内に連通接続されるガス圧力室を有し、入力される駆動圧に応じて前記ガス圧力室内のガスを前記被駆動機器に対する流入方向および流出方向に移動操作可能なガス操作部と、前記駆動圧を変化させて前記移動操作の方向を切り替え、前記流入方向への移動操作時には前記ガス圧力室の圧力を前記被駆動機器における収縮後安定圧側から上昇させる一方、前記流出方向への移動操作時には前記ガス圧力室の圧力を前記被駆動機器における膨張後安定圧側から降下させる方向切替部と、前記ガス圧力室に遮断可能に連通接続される補助圧力室を有し、前記ガス圧力室と前記補助圧力室との連通状態に応じて前記ガス圧力室の圧力を調節するガス調節部と、前記ガス圧力室の圧力を検出する圧力検出部と、を備えた医療用膨張・収縮駆動装置であって、前記圧力検出部の検出情報を基に、前記被駆動機器内から前記ガス圧力室内までの流体接続ラインにおける圧力異常の有無を判定する圧力判定部と、前記圧力判定部によって前記流体接続ラインの圧力異常があると判定された場合には、前記補助圧力室を前記ガス圧力室から遮断した状態下で前記ガス圧力室の圧力を上昇させる異常解除動作を実行させる異常解除動作部と、をさらに備え、前記圧力判定部の判定結果に基づき、前記異常解除動作により前記圧力異常が解除されたときには、前記駆動圧入力に応じた前記被駆動機器の膨張および収縮の駆動を実行させ、前記異常解除動作によっても前記圧力異常が解除されないときには、前記駆動圧入力に応じた前記被駆動機器の膨張および収縮の駆動を停止させることを特徴とする。
【0014】
この構成により、本発明では、圧力判定部により流体接続ラインの圧力異常があると判定されると、異常解除動作部により、補助圧力室がガス圧力室から遮断された状態下でガス圧力室の圧力が高められる異常解除動作が実行される。そして、異常解除動作により圧力異常が解除されたときには、駆動圧入力に応じた被駆動機器の膨張・収縮駆動が継続実行される。したがって、配管系の圧力異常が発生したときに、無駄に駆動停止頻度を高めることがなく、駆動停止によるユーザの負担を有効に軽減可能となる。
【0015】
(2)本発明の好ましい実施形態においては、前記異常解除動作部は、前記圧力判定部が前記圧力検出部の検出情報を基に前記流体接続ラインにおける圧力異常が有ると判定した場合に、前記ガス操作部の移動操作を停止させた状態下で、前記圧力検出部の検出情報を基に前記収縮後安定圧を測定する収縮後安定圧測定手段を有しており、前記圧力判定部によって前記流体接続ラインの圧力異常があると判定された場合であって、前記収縮後安定圧測定手段により測定された圧力値が予め設定された基準圧に対する許容範囲内に入ったときに、前記補助圧力室を前記ガス圧力室から遮断した状態下で、前記異常解除動作を実行する構成とすることができる。
【0016】
この場合、圧力判定部により流体接続ラインに圧力異常があると判定されると、被駆動装置の膨張・収縮駆動のためのガス移動操作が停止された状態で、収縮後安定圧が予め設定された基準圧に対し許容範囲内であるかチェックされ、その許容範囲内に入るときに、補助圧力室をガス圧力室から遮断した状態下で、ガス圧力室を昇圧させる異常解除動作が実行される。したがって、流体接続ラインの圧力異常の有無が的確に判定され、圧力異常解除の蓋然性が高く、ガス漏れや流体接続ラインの完全閉塞等の重大な異常でないときに確実に異常解除動作を実行可能となる。
【0017】
(3)本発明の好ましい実施形態においては、前記異常解除動作部による前記異常解除動作を所定回数実行することによっても、前記圧力判定部により、前記流体接続ラインの圧力異常があると判定されたきには、前記駆動圧入力に応じた前記被駆動機器の膨張および収縮の駆動を停止させるとともに、所定の警報出力を実行する警報発生手段を有する構成とすることもできる。
【0018】
このように構成すると、異常解除動作を所定回数実行する程度では流体接続ラインの圧力異常が解消されないときに、駆動圧入力に応じた被駆動機器の膨張および収縮駆動が停止されるとともに、所定の警報出力が実行される。したがって、その警報出力によって異常発生による駆動停止の状態をユーザに報知でき、より有効な異常解除の手動操作を促すことが可能となる。
【0019】
(4)本発明の好ましい実施形態においては、手動操作により前記ガス操作部に前記駆動圧に応じた作動開始を指令する駆動開始スイッチが設けられており、前記異常解除動作部は、前記警報発生手段による前記所定の警報出力後に前記駆動開始スイッチの手動操作がなされた場合であって、前記圧力判定部により前記流体接続ラインの圧力異常があると判定される状態が継続しているとき、再度作動する構成としてもよい。この場合、警報出力に対するユーザの対処がなされ、圧力異常状態が解消されていれば、駆動開始スイッチの手動操作に応じて通常駆動が開始され、一方、圧力異常の状態が解消されていなければ、再度、異常解除動作やユーザの更なる対処が実行され得ることとなる。
【0020】
(5)本発明の好ましい実施形態においては、前記ガス圧力室内のガスを大気側に排気可能な排気手段と、前記排気手段により前記ガス圧力室内のガスを大気側に排気可能にした状態下で、前記補助圧力室側から前記ガス圧力室内に新たなガスを補充するガス置換手段と、をさらに有し、前記異常解除動作部は、前記排気手段および前記ガス置換手段と協働して前記異常解除を実行するように構成してもよい。
【0021】
このように構成すると、排気手段によりガス圧力室および被駆動装置内のガスを大気側に排気した状態下で、ガス置換手段によって補助圧力室側からガス圧力室内に新たなガスを補充するので、被駆動装置の膨張・収縮駆動に供する作動ガスの漏れや汚染によって駆動性能や応答性が低下することにも対応可能となる。
【0022】
(6)本発明の好ましい実施形態においては、前記被駆動機器が、補助循環用デバイスである構成とすることができる。この構成により、補助循環用デバイス、例えばバルーンカテーテルに好適な膨張・収縮駆動が可能となる。なお、ここにいう被駆動機器は、経皮的補助人工心臓でもよい。
【0023】
(7)本発明の好ましい実施形態においては、前記ガス操作部は、前記駆動圧を受圧する可動の受圧部材を有しており、該受圧部材が、片面側で前記駆動圧を受圧し、他の片面側で前記被駆動機器内および前記ガス圧力室内のガスの圧力を受圧する構成とすることもできる。このようにすると、ガス操作部を簡素な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、配管系の圧力異常が発生したときに、無駄に駆動停止頻度を高めることがなく、ユーザの負担を軽減できる医療用膨張・収縮駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置の全体構成図で、IABP用バルーンカテーテルを接続した状態を示している。
図2】本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置においてIABP用バルーンカテーテルを膨張・収縮させるガス駆動の加速機能を発揮する補助装置の概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置で使用可能なIABP用バルーンカテーテルの要部概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置によるIABP用バルーンカテーテルの膨張・収縮駆動による効果の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置におけるバルーン内圧の変化とバルーン内圧の調整操作の手順を示すタイミングチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置における補助装置の機能説明図で、(a)はIABP用バルーンカテーテルを膨張・収縮させる際に補助装置を作動させない場合、例えば異常解除動作時のバルーン内圧変化およびバルーン容積変化を示し、(b)はIABP用バルーンカテーテルを膨張・収縮させる際に補助装置を作動させる通常動作時のバルーン内圧変化およびバルーン容積変化を示している。
図7】本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置における圧力異常検出時に異常解除動作や警報処理を実行する異常対処処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(一実施形態)
図1ないし図6は、本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置の構成を示しており、本発明を一例の被駆動機器であるIABP(intra-aortic balloon pumping)用のバルーンカテーテルの膨張・収縮駆動に使用する場合を例示している。
【0028】
まず、構成について説明する。
【0029】
図1および図2に示すように、本実施形態の医療用膨張・収縮駆動装置1は、IABP用バルーンカテーテル100(以下、単にカテーテル100という)が着脱可能に接続される圧力伝達隔壁装置10と、この圧力伝達隔壁装置10の一次側に陽圧と陰圧に交互に変化する駆動圧Piを空気圧(流体圧)によって印加するポンピング駆動機構13とを有している。
【0030】
カテーテル100の構成は、例えば前述の特許文献1に記載されているのと略同様であるが、バルーン110の膨張前後の形態が本発明にいう圧力異常と関係するので、カテーテル100の具体的構成を先に説明する。
【0031】
図3に示すように、カテーテル100は、膨張(拡張)および収縮可能なバルーン110(被駆動機器)をカテーテル管124の遠位端側に装着したものであり、カテーテル100を血管に挿入するときには、バルーン110は内管130の外周に折り畳んで巻回されるようになっている。
【0032】
このカテーテル100は、カテーテル管124の内方に小径の内管130を挿通してその内方に血圧測定用ルーメンを形成するとともに、内管130の外方のカテーテル管124内に存在する内部ガスをバルーン110の膨張方向および収縮方向に往復移動させるシャトルガス用のルーメンを形成する構成となっている。
【0033】
より具体的には、バルーン110は、例えば膜厚50~150μm程度の筒状のバルーン膜で構成されており、このバルーン110の膨張状態における形状は、例えば円筒形状もしくは多角筒形状である。また、バルーン110の遠位端は、先端チップ125を介してまたは直接に内管130の遠位端外周に熱融着または接着によって取り付けられている。このバルーン110の近位端は、金属チューブ127などの造影マーカーを介してまたは直接に、カテーテル管124の遠位端に接合されている。そして、カテーテル管124の内部に形成されたシャトルガス用のルーメンを第1のルーメンとして、カテーテル100の内部ガスがバルーン110に対し流入方向および流出方向に往復移動することで、バルーン110が膨張または収縮するようになっている。バルーン110とカテーテル管124との接合は、例えば熱融着あるいは紫外線硬化樹脂などの接着剤によりなされている。
【0034】
内管130の遠位端はカテーテル管124の遠位端より外方に突出しており、内管130の近位端は、カテーテル100の近位端側の分岐部126の第2ポート132に連通している。そして、内管130の内部の血圧測定用のルーメンを第2のルーメンとして、遠位端の開口端23側の血圧を分岐部126の第2ポート132から図外の血圧変動測定装置に伝播させ、そこで血圧の変動が逐次測定されるようになっている。バルーン110内に位置する内管130の内方のルーメンは、カテーテル100を動脈内に挿入する際にガイドワイヤー用の挿通管腔としても用いられる。
【0035】
一方、カテーテル100が着脱可能に接続される圧力伝達隔壁装置10は、カテーテル100が連通接続されるガス圧力室11を形成する圧力容器12と、ポンピング駆動機構13からの駆動圧Piを導入する駆動圧室14と、圧力容器12内を一次側の駆動圧室14と二次側のガス圧力室11とに気密的に仕切るダイヤフラム15(受圧部材)とを有している。
【0036】
ガス圧力室11は、カテーテル100が圧力伝達隔壁装置10に接続されたとき、圧力容器12の連通孔12aを介して二次配管系L2をなすカテーテル100の基端側から先端側のバルーン110内に連通するようになっている。このガス圧力室11には、後述する補充装置30から補助装置40を介して所定の内部ガス、例えばヘリウムガスが供給されるようになっている。なお、圧力容器12内のガス圧力室11内と、カテーテル100のバルーン110内と、それらを連通させる、医療用膨張・収縮駆動装置1内の配管およびカテーテル100の管状部分と、を総称して、二次配管系L2と称するものとする。
【0037】
圧力容器12は、例えば略円板状の中空容器であり、ダイヤフラム15によって仕切られた一次側の駆動圧室14と二次側のガス圧力室11もそれぞれ略円板状である。また、ダイヤフラム15は、一次側の駆動圧室14に印加される駆動圧Piに応じて少なくとも一部を図1中の左右方向に弾性変形させるか変位させることで、圧力容器12内における二次側のガス圧力室11の容積を増減させて、カテーテル100の内部ガスをバルーン110への流入方向およびバルーン110からの流出方向に往復移動させ得るようになっている。
【0038】
すなわち、圧力伝達隔壁装置10は、駆動圧室14側からの交互の陽圧および陰圧を駆動圧Piとしてダイヤフラム15が受圧するとき、ガス圧力室11がそのダイヤフラム15の弾性変形または変位に応じて内部ガスを収容可能な容積を変化させることで、ガス圧力室11内のガスをバルーン110の膨張方向および収縮方向に往復移動操作するガス操作部として機能するようになっている。
【0039】
ポンピング駆動機構13は、前述の通り、圧力伝達隔壁装置10の一次側の駆動圧室14に対して、陽圧および陰圧を交互に印加することができるようになっている。
【0040】
具体的には、ポンピング駆動機構13は、陽圧駆動バルブ21を介して駆動圧室14に断接可能に接続される陽圧タンク22と、測定される患者の血圧より十分に高圧の陽圧を陽圧タンク22内に蓄圧可能な吐出圧で吐出する陽圧ポンプ23と、陽圧ポンプ23から陽圧タンク22への供給圧を所定の陽圧値に調圧するレギュレータバルブ24と、陰圧駆動バルブ26を介して駆動圧室14に断接可能に接続された陰圧タンク27と、吸入口(陰圧口)側で可変絞り弁28を介して陰圧タンク27に接続された陰圧ポンプ29と、陽圧タンク22および陰圧タンク27における陽圧および陰圧をそれぞれ駆動圧室14に伝達するための接続を行う一次配管系L1と、図示しない複数の圧力調整用バルブ等を含んでいる。
【0041】
補充装置30は、ヘリウムガスボンベ等のガス供給源31からレギュレータバルブ32および第1電磁バルブ33を介して補充タンク34に蓄圧可能に供給したガスを、カテーテル100内に補充すべく、この補充タンク34から第2電磁バルブ35を介して補助装置40側に供給するようになっている。
【0042】
補助装置40は、補充装置30から補充されるガスを蓄圧可能に収容する補助圧力室を形成する補助タンク41と、補助タンク41からガス圧力室11もしくはカテーテル100内(圧力容器12の二次配管系L2側)にガスを選択的に供給可能な補助バルブ42と、補助タンク41に接続されて補助タンク41から真空タンク44内にガスパージ(排気)させることができるパージバルブ43とを有しており、補充装置30からカテーテル100への補充ガスの流れを補助できるようになっている。
【0043】
ここで、補助タンク41は、そのタンク内圧と二次配管系L2との圧力差に応じて、二次配管系L2内にタンク内のガスの一部を供給したり、二次配管系L2からタンク内にガスの一部を戻したりすることができるガスタンクであり、補助バルブ42を介して二次配管系L2に接続される。
【0044】
また、カテーテル100もしくは圧力伝達隔壁装置10には、二次配管系L2内のガス圧力を検出する圧力センサ51が装着されており、補助装置40の補助タンク41には、そのタンク内圧を検出する圧力センサ55が装着されている。さらに、ポンピング駆動機構13の陽圧タンク22および陰圧タンク27や、補充装置30の補充タンク34等には、それぞれの内圧を検出する圧力センサ52、53、54等が装着されている。そして、ポンピング駆動機構13、補充装置30および補助装置40の作動制御は、陽圧ポンプ23および陰圧ポンプ29の作動や複数のバルブ21、26、33、35、42、43等の弁開閉をコントローラ60により制御することで、達成されるようになっている。
【0045】
コントローラ60は、内蔵する複数の制御プログラムに対応する複数の機能部として、入力監視制御部61、情報出力制御部62、ポンピング駆動制御部63およびガス補充制御部64を有している。また、コントローラ60には、複数の圧力センサ51-55等がそれぞれの圧力情報を取り込み可能に接続されるとともに、調整操作入力部71、警報解除操作部72、血圧変動測定器73および心電計測器74がそれぞれ信号授受可能に接続されている。
【0046】
さらに、コントローラ60には、画像や数値などの画面表示出力が可能な表示出力部65(圧力表示部)と、光や音声情報出力が可能な警報出力部66とが接続されている。
【0047】
具体的には、コントローラ60は、マイクロプロセッサやプログラマブルコントローラ等で構成され、記憶格納された制御プログラムに従って装置各種の演算処理を実施することにより、入力監視制御部61による各種入力情報の監視や計算、情報出力制御部62による表示や警報出力の制御、ポンピング駆動制御部63によるバルーン110のポンピング(膨張および収縮)駆動の制御、ガス補充制御部64によるガス補充の制御を実行させるようになっている。
【0048】
また、入力監視制御部61に取り込まれる各種入力情報は、それぞれ図示しない入力インターフェースを介して取り込み可能な信号形態に変換され、情報出力制御部62、ポンピング駆動制御部63およびガス補充制御部64から出力される各種制御信号は、図示しない出力インターフェースやドライバ回路によって必要な制御信号形態に変換されるようになっている。
【0049】
より具体的には、入力監視制御部61は、複数の圧力センサ51-55等からの圧力情報や血圧変動測定器73および心電計測器74等の測定情報に基づき、必要な入力情報、例えば心拍数、収縮期圧、拡張期圧、平均圧、オーグメンテーション圧等を算出する。
【0050】
情報出力制御部62は、入力監視制御部61での監視情報や算出情報を基に、表示出力部65および警報出力部66から出力すべき画面表示や数値表示情報等を生成する情報出力手段62aと、入力監視制御部61での監視情報や算出情報を基に後述する警報を発生させる警報発生手段62bを有している。
【0051】
ポンピング駆動制御部63は、予め設定された監視圧力や、調整操作入力部71からの調整操作入力に応じたポンピング駆動圧の調整比(アシスト比)や駆動タイミング等の設定条件をメモリに記憶しており、それらの記憶情報を基にポンピング駆動機構13の作動を制御するようになっている。そして、そのポンピング駆動制御部63の機能で、陽圧駆動バルブ21、陰圧駆動バルブ26、陽圧ポンプ23および陰圧ポンプ29等を制御することにより、ガス圧力室11内のガスにダイヤフラム15を介し陽圧および陰圧を交互に印加できるようになっている。
【0052】
また、ポンピング駆動制御部63は、その制御プログラムに従って心電波形や血圧波形における所定の信号変化をトリガとして検出し、そのトリガを基準として陽圧駆動バルブ21および陰圧駆動バルブ26を交互に開弁させるようになっている。
【0053】
さらに、ポンピング駆動制御部63は、陽圧駆動バルブ21および陰圧駆動バルブ26の交互の開弁作動により、ガス圧力室11内のガスに対し所定のタイミングおよび時間の陽圧および陰圧を印加することで、心拡張期開始時における大動脈弁の閉鎖と略同時にバルーン110を膨張させていわゆるダイアストリックオーグメンテーション効果(冠動脈血流量の増加や平均大動脈圧の維持等;図4中にDで示す)を発揮させたり、拡張末期動脈圧が略最低値を示すタイミングでバルーン110を収縮させたりしていわゆるシストリックアンローディング効果(拡張末期および収縮期の血圧低下による心仕事量の低下や心筋酸素消費量の抑制;図4中にSで示す)を発揮させたりすることができるようになっている。
【0054】
ポンピング駆動制御部63は、具体的には、図5に示すように、ポンピング駆動機構13の陽圧駆動バルブ21の開弁により、ダイヤフラム15を内蔵する圧力容器12を介して二次配管系L2内に陽圧の印加を開始した時点(陰圧から陽圧への切換え時点)tpから陽圧駆動時間である第2の所定時間T2、例えば150msec程度が経過した後に、陽圧駆動バルブ21を閉弁させる。また、ポンピング駆動制御部63は、前述の陽圧の印加を開始した時点tpから所定の膨張補助待ち時間Ta、例えば160msec程度の経過後(すなわち、陽圧駆動バルブ21の閉弁時点から10msec程度後)に補助バルブ42を開き、次の切換えである陽圧から陰圧への切換えの前、例えば次の切換え時点tnの10msec程度前に補助バルブ42を閉弁させる制御を実行する。
【0055】
陽圧タンク22内の陽圧が補助タンク41内の内圧より高い圧力であることにより、陽圧駆動バルブ21が開弁し二次配管系L2に陽圧が印加される状態下で補助バルブ42が開弁すると、二次配管系L2内に加えて補助タンク41内のガスにも陽圧が印加され、二次配管系L2内のガスの圧力が陽圧駆動直後のピーク圧P5より低下して収束する。したがって、通常、バルーン110が膨張しきってオーバーシュートした後のバルーン内圧(通常、ガス圧力室11内部の圧力に等しい)の安定圧(膨張後安定圧)は、図5(a)に示すように、バルーン内圧波形中のプラトー圧P4付近で収束し、次の切換えまでそのプラトー圧P4付近で略一定圧状態となる。
【0056】
同様に、ポンピング駆動制御部63は、ポンピング駆動機構13の陰圧駆動バルブ26の開弁により、ダイヤフラム15を内蔵する圧力容器12を介して二次配管系L2内に陰圧の印加を開始した時点tn(陽圧から陰圧への切換え時点)から陰圧駆動時間である第3の所定時間T3、例えば150msec程度が経過した後に、陰圧駆動バルブ26を閉弁させる。また、ポンピング駆動制御部63は、前述の陰圧の印加を開始した時点tn(陽圧から陰圧への切換え時点)から所定の収縮補助待ち時間Tb、例えば160msec程度が経過した後(すなわち、陰圧駆動バルブ26の閉弁時点から10msec程度後)に補助バルブ42を開き、次の切換えである陰圧から陽圧への切換えの前、例えば次の切換え時点tpの10msec程度前に補助バルブ42を閉弁させる制御を実行する。
【0057】
陰圧タンク27内の陰圧が補助タンク41内の内圧より低い圧力であることにより、陰圧駆動バルブ26が開弁し二次配管系L2に陰圧が印加される状態下で補助バルブ42が開弁すると、二次配管系L2内の圧力は、補助タンク41からのガスの供給量に応じて上昇する。したがって、通常、バルーン110が収縮しきってアンダーシュートした後のバルーン内圧は、図5(a)に示すように、バルーン内圧波形中に次の切換えまで基準圧P1付近の略一定圧状態の波形部分として現れる。この基準圧P1は、大気圧(0 mmHg)より陰圧側の圧力値である。
【0058】
ここで、補助バルブ42を開くタイミング(前述の膨張補助待ち時間Ta、収縮補助待ち時間Tb)は、バルーン110の膨らみまたは縮みの状態との関係で最適な時間を選定することができ、例えば陽圧への切換え時点からバルーン110が膨らみきる時点まで、または陰圧への切換え時点からバルーン110が縮みきる時点までの時間として設定できる。この所定時間は、例えば背圧70mmHg(ゲージ圧)での模擬試験により実験的にバルーン110に陽圧または陰圧を印加し、バルーン110の容積変化を実測することで、求めることができる。
【0059】
このように、ポンピング駆動制御部63がポンピング駆動機構13を作動させることで、カテーテル100のバルーン110を含む二次配管系L2内に陽圧が印加されるときには、その二次配管系L2内の圧力が一旦はプラトー圧を超えてオーバーシュートした後、プラトー圧まで減少し、次の切換え(陰圧への切換え)まで略一定の状態となり、次の陰圧への切換えにより、二次配管系L2内の圧力が下降するときには、その二次配管系L2内の圧力が基準圧(バルーン110が縮みきったときの圧力)P1よりもアンダーシュートした後、基準圧P1まで上昇し、次の陽圧への切換え時点まで略一定の状態となり、これらを順次繰り返すことになる。その結果、入力監視制御部61で得られる心拍(一定時間毎の心臓の拍動)等に合わせたバルーン110の膨張および収縮が可能になり、カテーテル100を用いる補助循環治療が可能となる。
【0060】
ここで、ポンピング駆動機構13は、ダイヤフラム15に印加する駆動圧Piをポンピング駆動制御部63からの入力信号に応じて変化させ、ガス圧力室11内のガスの移動操作の方向を切り替える方向切替部となっている。
【0061】
ガス補充制御部64は、ガス圧力室11内へのガスの供給や補充、排出等を制御すべく、複数の圧力センサ51-55等からの圧力情報や、調整操作入力部71および警報解除操作部72への操作入力情報、血圧変動測定器73および心電計測器74等からの測定情報に基づいて、複数のバルブ21、26、33、35、42、43等と、陽圧ポンプ23および陰圧ポンプ29との作動を制御するようになっている。
【0062】
このガス補充制御部64は、例えば二次配管系L2の内圧と補助タンク41の内圧との圧力差に応じ、所定のタイミングで補助バルブ42を開弁させることにより、補助タンク41側のガスの一部を二次配管系L2内に補充させたり、二次配管系L2内のガスの一部を補助タンク41側に排出させたりすることができる。
【0063】
また、圧力容器12には、不純物除去フィルタ等を介しガス圧力室11から漏れを生じさせる排気バルブ17が接続されており、前述のような複数の機能部を有するコントローラ60は、圧力センサ51で検出されるガス圧力室11内の圧力(以下の記載において、この圧力をバルーン内圧と称する場合がある)が所定圧力を超えると、大気圧側への排気バルブ17を開弁させ、ガス圧力室11に対し漏れによる必要量の減圧処理を実行できるようになっている。
【0064】
また、圧力センサ52で検出される陽圧タンク22内の空気圧が所定陽圧値を超えると、コントローラ60によって図示しない漏れ調整用のバルブや大気圧側への圧力解放用のバルブが開弁制御され、圧力センサ53で検出される陰圧タンク27内の空気圧が所定陰圧範囲から外れると、漏れ調整用のバルブ等が開弁制御される。
【0065】
さらに、コントローラ60により、圧力センサ52で検出される陽圧タンク22内の空気圧および圧力センサ53で検出される陰圧タンク27内の空気圧に応じて陽圧ポンプ23または陰圧ポンプ29が駆動されることで、陽圧タンク22内の空気圧が所定の陽圧レベルに高められるとともに、陰圧タンク27内の空気圧が所定の陰圧範囲内に保持されるようになっている。
【0066】
前述の圧力センサ51-54の検出圧力や、補助タンク41内のガス圧力を検出する圧力センサ55(ガス圧測定部)の検出圧力の情報は、所定時間ごとにコントローラ60の入力監視制御部61に取り込まれる。
【0067】
そして、コントローラ60により、圧力センサ51-55等の検出情報に基づいてガス供給源31からレギュレータバルブ32および第1電磁バルブ33を介して補充タンク34にガスが供給され、この補充タンク34から第2電磁バルブ35の開閉に応じて補助タンク41にガスが補充される。そのときの補充量は、補助タンク41の内容積と、補助タンク41内のガス補充前の圧力に対するガス補充完了後の圧力差とに比例する。
【0068】
また、圧力センサ51-55等の検出情報に基づき、必要に応じて補助バルブ42(あるいは更にパージバルブ43)がコントローラ60により制御され、補助タンク41からカテーテル100のバルーン110内への補充方向のガスの流れ(流れの方向および流量)、あるいは陰圧タンク27側への排出方向のガスの流れが調整できるようになっている。
【0069】
上述のように、入力監視制御部61での監視情報や算出情報を基にポンピング駆動制御部63によりポンピング駆動機構13の作動が制御され、圧力伝達隔壁装置10によりガス圧力室11内のガスの移動操作がなされるとき、補助バルブ42は、コントローラ60によって開弁制御されることで、必要に応じ、補助タンク41を二次配管系L2内に連通させるようになっている。
【0070】
ここで、補助装置40の補助タンク41および補助バルブ42とコントローラ60のガス補充制御部64は、圧力伝達隔壁装置10により移動操作されるガス圧力室11内のガスの流れを調節し、バルーン110の内圧を所定の調圧期間において変動収束後の安定圧として予め設定されたプラトー圧P4や基準圧P1側に調圧可能なガス調節部59を構成している。
【0071】
このガス調節部59は、ポンピング駆動機構13による陽圧駆動直後の二次配管系L2内の圧力を、補助バルブ42を開弁させて変動収束方向に収束させ、二次配管系L2内のプラトー圧と同等な補助タンク41内の圧力を補助バルブ42の閉弁により蓄圧保持できるようになっている。そして、コントローラ60の情報出力制御部62は、その蓄圧保持状態の補助タンク41の内圧を圧力センサ55により測定させ、その測定値をプラトー圧相当値の監視圧力として表示出力部65に数値表示させるようになっている。
【0072】
また、ガス調節部59は、パージバルブ43を作動させることで、補助タンク41の内圧を選択的に減圧する機能を併有している。
【0073】
前述のようなガス圧力室11へのガスの供給や補充、排出等の制御に加え、コントローラ60は、内部に格納された制御プログラムに従い、圧力センサ51-55等からの圧力情報に基づいて第1電磁バルブ33、第2電磁バルブ35、補助バルブ42およびパージバルブ43の開閉を制御することで、ガス圧力室11およびカテーテル100内のガスの初期の充填作業や所定期間経過後のガスの入れ替え(ガス置換)作業を行うことができるようになっている。
【0074】
表示出力部65および警報出力部66は、入力監視制御部61で監視している入力情報やそれに基づく計算値等に異常が検出されたとき、例えばバルーン110の収縮時の基準圧P1に相当する収縮後安定圧が所定範囲(大気圧より陰圧側で、かつ、下限圧力P1j(=P1-10mmHg以上の範囲)から低圧側に外れたときには、圧力異常として表示や音声による警報動作を実行し、ユーザに異常を報知できるようになっている。
【0075】
情報出力制御部62および表示出力部65は、少なくともガス圧力室11の内圧を測定する圧力センサ51の逐次の測定圧力P3を、例えば図5中に実線で示すようなバルーン内圧波形として表示出力するようになっている(同図(a)参照)。
【0076】
警報出力部66は、例えばバルーン110の内圧が通常範囲から外れるとき、視覚的および聴覚的な警報出力を行う。この警報出力部66は、例えば表示出力部65の中央上部に配置されるパイロットランプや警報音発生器を有しており、監視圧力が所定範囲外になる圧力異常が発生すると、パイロットランプを赤色点滅させるとともに、警報音発生部から断続的に警報音を発生させ、その警報動作後も圧力異常が解消しないか警報動作を解除する解除信号が入力されない場合、コントローラ60は、バルーン110のポンピング駆動を停止させることができるようになっている。
【0077】
調整操作入力部71は、バルーン110の内圧を調整操作するための操作信号を、前述の監視圧力を参照するユーザからの入力操作に応じて発生する調整操作入力部となっている。
【0078】
警報解除操作部72は、表示出力部65および警報出力部66での警報出力を一時停止させる指令操作および警報解除の指令操作を行うことができるようになっている。
【0079】
このように、本実施形態においては、ガス操作部である圧力伝達隔壁装置10によりガス圧力室11内のガスがバルーン110の膨張方向に移動操作されるとき、ガス調節部59が補助バルブ42を所定のタイミングで開弁させることにより、バルーン110の内圧を、図5(e)に示す所定の膨張側補助期間Ti中に、同図(a)に示すプラトー圧P4に収束させる。
【0080】
また、圧力伝達隔壁装置10によりガス圧力室11内のガスがバルーン110の収縮方向に移動操作されるとき、ガス調節部59が補助バルブ42を所定のタイミングで開弁させる(パージバルブ43を同時に開弁させてもよい)ことにより、バルーン110の内圧を、図5(e)に示す所定の収縮側補助期間Td中に、基準圧P1の一定範囲内、例えばP1j(=P1-10[mmHg])以上の範囲内に収束させる。
【0081】
方向切替部であるポンピング駆動機構13は、駆動圧Piを陽圧と陰圧に変化させて圧力伝達隔壁装置10による内部ガスの移動操作の方向をバルーン110に対する流入方向と流出方向に切り替えるとともに、流入方向への移動操作時には、ガス圧力室11の圧力をバルーン110の収縮後安定圧側(基準圧P1側)から上昇させ、一方、流出方向への移動操作時には、ガス圧力室11の圧力をバルーン110の膨張後安定圧側(プラトー圧P4側)から降下させる。
【0082】
また、補助装置40による補助動作の際に、補助圧力室41とガス圧力室11との連通状態に応じて、ガス調節部59がガス圧力室11の圧力を調節することで、補助タンク41内に供給されたガスは、次の補助動作(補助バルブ42の開弁)によって二次配管系L2内に供給される。したがって、二次配管系L2の内部ガスの一部が新たなガスに置換(半パージ)されることになる。また、この動作を適宜な回数繰り返すことによって、二次配管系L2内のガスを全体的に交換(全パージ)することができる。
【0083】
ところで、コントローラ60の入力監視制御部61には、圧力センサ51の検出情報を基に、バルーン110内からガス圧力室11内までの流体接続ラインである二次配管系L2内における圧力(バルーン内圧)について、圧力異常の有無を判定する圧力判定部61aが設けられており、コントローラ60のポンピング駆動制御部63には、主たる駆動制御手段63aに加えて、圧力判定部61aによって流体接続ライン2の圧力異常があると判定された場合に、補助バルブ42を閉弁させて補助圧力室41をガス圧力室11から遮断し、その遮断により二次配管系L2内の容積が小さくなった状態下で、陽圧の駆動圧Piを印加することにより圧力異常の異常解除動作を実行させる異常解除動作手段63b(異常解除動作部)が設けられている。
【0084】
この異常解除動作手段63bは、カテーテル100の初回動作時におよび圧力異常発生時に、二次配管系L2内の容積が小さくなった状態下でガス圧力室11の圧力を上昇させることによって、カテーテル100内の圧力を大きく上昇させて、バルーン110を膨張させ、その力や反動によって、圧力異常の原因となっている状態を解消あるいは緩和させることを目的とする異常解除動作を実行させる制御を実行するようになっている。この異常解除動作によって解消あるいは緩和されうる圧力異常の原因となる状態としては、バルーン110の留置位置における血管の蛇行、バルーン110についた巻きぐせ、カテーテル管124の捩れを例示することができる。
【0085】
コントローラ60は、圧力判定部61aの判定結果に基づき、異常解除動作手段63bが作動し、その異常解除動作により圧力異常が解除されたときには、駆動圧Piの入力に応じたバルーンカテーテル100のバルーン110の膨張および収縮の駆動を実行させるとともに、圧力異常が解消したことを所定回数の収縮後安定圧力が基準圧Piの所定範囲内に入るか否かをチェックする。
【0086】
一方、異常解除動作手段63bの作動(異常解除動作)によっても圧力異常が解除されないときには、コントローラ60は、駆動圧Piの入力に応じたバルーンカテーテル100のバルーン110の膨張および収縮の駆動を停止させるようになっている。
【0087】
また、コントローラ60の入力監視制御部61は、圧力判定部61aが圧力センサ51の検出情報を基に流体接続ラインである二次配管系L2に圧力異常が有ると判定した場合に、まず、圧力伝達隔壁装置10の移動操作を停止させた休拍状態下で、圧力センサ51の検出情報を基に収縮後安定圧(P1´)を測定する基準圧測定手段61b(収縮後安定圧測定手段)をさらに有している。
【0088】
そして、圧力判定部61aによって流体接続ラインである二次配管系L2の圧力異常があると判定された場合であって、基準圧測定手段61bにより測定された収縮後安定圧(P1)が予め設定された基準圧P1対する許容範囲(大気圧>(P1)>P1j[mmHg])内に入ったときに、補助圧力室41をガス圧力室11から遮断した状態下で、異常解除動作手段63bによる異常解除動作を、所定回数、例えば初回起動時と同様な条件で1回実行するようになっている。
【0089】
さらに、コントローラ60は、異常解除動作手段63bによる異常解除動作を所定回数実行することによっても、まだ、圧力判定部61aにより流体接続ラインである二次配管系L2に圧力異常があると判定されたきには、駆動圧Piの入力に応じたバルーンカテーテル100のバルーン110の膨張および収縮の駆動を停止させるとともに、警報発生手段62bによって所定の警報信号を発生させ、警報出力部66から出力させるようになっている。
【0090】
また、コントローラ60には、警報発生手段62bによって所定の警報信号が出力された場合に通常駆動に戻すよう手動操作され、圧力伝達隔壁装置10に駆動圧Piに応じた作動開始を指令する駆動開始スイッチ75が装着されている。この駆動開始スイッチ75は、警報発生手段62bによる所定の警報出力後にユーザによる必要な対処がなされてから手動操作されるようになっている。さらに、コントローラ60は、通常駆動に戻すよう駆動開始スイッチ75が手動操作され、かつ、圧力判定部61aにより流体接続ラインである二次配管系L2の圧力異常があると判定される状態が継続しているときには、異常解除動作手段63bを再度作動させるようになっている。よって、所定の警報出力に対するユーザの対処がなされ、圧力異常状態が解消されていれば、駆動開始スイッチ75の手動操作に応じて医療用膨張・収縮駆動装置1の通常駆動が開始され、一方、圧力異常の状態が解消されていなければ、再度、異常解除動作手段63bによる異常解除動作やユーザの更なる対処が実行され得ることとなる。
【0091】
本実施形態の医療用膨張・収縮駆動装置1は、ガス圧力室11内のガスを大気側に排気可能な排気手段としての排気バルブ17と、排気バルブ17によりガス圧力室11内のガスを大気側に排気可能にしつつ、補助タンク41側からガス圧力室11内に新たなガスを補充するガス置換手段としてのガス補充制御部64とを具備しているので、コントローラ60のポンピング駆動制御部63において、異常解除動作手段63bは、これら排気バルブ17およびガス補充制御部64と協働して異常解除を実行するようになっている。
【0092】
次に、動作について説明する。
【0093】
まず、概略の動作を述べると、本実施形態では、ポンピング駆動機構13(圧力発生手段)による陽圧または陰圧の駆動圧Piの印加に伴う二次配管系L2内の圧力の変化は、陽圧が印加された場合には、同配管系L2内の圧力が上昇し、その圧力はプラトー圧P4よりも高くオーバーシュートした後にプラトー圧まで減少して、次の切り換え(陰圧への切り換え)まで略一定の膨張後安定圧となる。その後、陰圧への切り換えにより、二次配管系L2内の圧力が下降し、その圧力は基準圧P1よりもアンダーシュートした後、基準圧P1近傍に上昇して、次の切り換え(陽圧への切り換え)まで略一定の収縮後安定圧となる。そして、このような二次配管系L2内の圧力の変化が、駆動圧Piの陽圧、陰圧への交互の切換えに応じて繰り返される。
【0094】
また、陽圧に切り換えられた時点から所定時間の経過後に補助バルブ42が開くとき、二次配管系L2内には陽圧が印加されているので、その二次配管系L2内のガスの一部が補助タンク41内に吸入される補助動作がなされる。一方、陰圧に切り換えられた時点から所定時間の経過後に補助バルブ42が開くときには、二次配管系L2内には陰圧が印加されているので、補助タンク41内のガスの一部が二次配管系L2との圧力差により二次配管系L2内に排出される補助動作がなされる。したがって、陽圧、陰圧への各切換え時点からの所定時間を最適化する(例えば、被駆動機器が膨らみきった時点または縮みきった時点の近傍とする)ことにより、図6(a)に示すように補助バルブ42の開弁による補助動作が無い場合のプラトー圧P4´と基準圧P1´の差に比較して、図6(b)に示すように補助バルブ42の開弁による補助動作が有る場合には、プラトー圧P4および基準圧P1の差を小さくすることができる。よって、バルーン110を膨張させるガス駆動時には、基準圧P1近傍の収縮後基準圧からプラトー圧P4近傍の膨張後安定圧への到達時間を短縮する加速機能を発揮させることができ、バルーン110を収縮させるガス駆動時には、プラトー圧P4近傍の膨張後安定圧から基準圧P1近傍の収縮後基準圧への到達時間を短縮する加速機能を発揮させることができる。その結果、バルーン110の膨張・収縮駆動の応答性が向上することになる。
【0095】
図5に示すように、本実施形態においては、血圧波形や心電波形における所定の信号変化をトリガとして、そのトリガを基準とする第1の所定時間T1後のタイミングで、陽圧駆動バルブ21および陰圧駆動バルブ26が交互に開弁駆動されることで、バルーン110が膨張するバルーン膨張期間とバルーン110が収縮するバルーン収縮期間とが交互に生じる。
【0096】
また、バルーン膨張(拡張)期間の開始直後に陰圧駆動バルブ26の閉弁状態下で陽圧駆動バルブ21が所定の陽圧駆動期間T2だけ開弁した後、バルーン膨張期間の開始時点から膨張補助待ち時間Taが経過すると、補助バルブ42が所定の膨張側補助期間Tiにわたって開弁する。さらに、陽圧駆動バルブ21の閉弁状態下で陰圧駆動バルブ26が所定の陰圧駆動期間T3だけ開弁した後、バルーン収縮期間の開始時点から収縮補助待ち時間Tbが経過すると、補助バルブ42が所定の収縮側補助期間Tdにわたって開弁する。
【0097】
したがって、陽圧駆動バルブ21および陰圧駆動バルブ26の交互の開弁に応じて、ガス圧力室11に接続する二次配管系L2内のガスに対し駆動圧室14側からダイヤフラム15を介して膨張方向および収縮方向の移動操作がなされるとともに、補助タンク41側のガスが二次配管系L2内への流出入を伴う前述の補助動作が可能となる。
【0098】
その結果、例えば心拡張期開始時における大動脈弁の閉鎖と同時にバルーン110を膨張させてダイアストリックオーグメンテーション効果(冠動脈血流量の増加や平均大動脈圧の維持)を発揮させたり、拡張末期動脈圧が最低値を示すタイミングでバルーン110を収縮させてシストリックアンローディング効果(拡張末期および収縮期の血圧低下による心仕事量の低下や心筋酸素消費量の抑制)を図ったりすることができる。
【0099】
次に、前述のような動作中に圧力異常が発生した場合の処理について説明する。
【0100】
本実施形態では、一連のバルーンポンピング動作中、図7に示すような圧力異常検出および対応処理が実行される。
【0101】
まず、所定時間ごとにコントローラ60に取り込まれる圧力センサ51の検出圧力のうち所定の検出タイミングでの検出圧力を基に、流体接続ラインである二次配管系L2内の圧力異常の有無が、圧力判定部61aによって判定される(ステップS11)。
【0102】
ここにいう所定の検出タイミングとは、図6中に示す収縮後安定圧の検出タイミングtc3かその直前であり、所定の検出タイミングでの検出圧力とは、収縮後安定圧(図中(P1)で示す)に相当するガス圧力室11(二次配管系L2)内の圧力(バルーン内圧)である。そして、この検出タイミングtc3での検出されるバルーン内圧が、収縮後安定圧の下限圧力P1j(例えばP1-10[mmHg])以上であれば(ステップS11でNoの場合)、圧力異常がないと判定され、所定時間後に再度、二次配管系L2内の圧力異常の有無が、圧力判定部61aによって判定される(ステップS11)。なお、ステップS11における圧力異常判定のための圧力モニタ期間中、図6中の検出タイミングtc3で検出されるバルーン内圧が一度、正常な収縮後安定圧の下限圧力P1j以上でなくなると、その後、所定時間(例えば4秒間)の間、検出タイミングtc3で検出されるバルーン内圧が所定回数チェックされ、複数回の検出値によって二次配管系L2内の圧力異常の有無が判定される。
【0103】
そして、このとき、この検出タイミングtc3での検出されるバルーン内圧が、収縮後安定圧の下限圧力P1j未満であり、圧力異常があると判定されると(ステップS11でYesの場合)、バルーン110の膨張・収縮駆動のためのガス移動操作が停止された休拍状態に移行し(ステップS12)、その休拍後に、バルーン内圧が予め設定された基準圧P1の許容範囲内(大気圧以下かつ下限圧力P1j以上)であるかチェックされる(ステップS13)。このとき、二次配管系L2にガス漏れが生じていたり、カテーテル管124が完全に閉塞していたり等の重大な異常が生じていなければ、検出タイミングtc3での検出されるバルーン内圧は、基準圧P1として正常な値である、基準圧P1の許容範囲内(大気圧以下かつ下限圧力P1j以上)となる。
【0104】
したがって、この休拍後のチェック時に、バルーン内圧が基準値P1の許容範囲内に入らない基準圧異常状態であれば(ステップS13でYesの場合)、ガス漏れ等の疑いがあると判定し、特許文献1に記載されるガス漏れ警告と同様なガス漏れ時の処理(ガス補充手段のガス補充量の経時変化を基にガス漏れと判定したときに警報出力する)に遷移させるイベント処理を実行し(ステップS14)、今回の処理を終了する。
【0105】
また、休拍後のチェック時に、バルーン内圧が基準値P1の許容範囲内に入る場合(ステップS13でNoの場合)には、補助タンク41内をガス圧力室11から遮断した状態下で、ガス圧力室11をバルーンカテーテル100の初回動作時と同様な条件で昇圧させる異常解除動作が、バルーン110の巻きぐせをとる等の程度にバルーン内圧を高める動作として実行される(ステップS15)。
【0106】
次いで、補助動作(補助バルブ駆動状態)を伴う通常の膨張・収縮駆動状態に戻り(ステップS16)、所定時間の間、検出タイミングtc3で収縮後安定圧(P1)に相当するバルーン内圧が、予め設定された基準圧P1の許容範囲内にまだ戻らない警報未解消の圧力異常状態か否かがチェックされる(ステップS17)。
【0107】
そして、圧力異常が未解消であれば(ステップS17のYesの場合)、異常発生をユーザに知らせる警報信号が警報発生手段62bで生成されて、警報出力部66から所定の警報出力がされる(ステップS18)。
【0108】
ユーザはその警報に基づき自ら圧力異常の原因を調べて対処を行い、ユーザが圧力異常の原因が解消されたと判断した場合には、ユーザにより駆動開始スイッチ75が手動操作される。そして、駆動開始スイッチ75が操作されると、再び、図7に示す圧力異常検出および対応処理が開始され、警報発生手段62bによる所定の警報出力後に駆動開始スイッチ75の手動操作がなされた場合であって、圧力判定部61aにより二次配管系L2内の圧力異常が解消されていると判定されれば、通常の膨張・収縮駆動が実行される。
【0109】
また、駆動開始スイッチ75の手動操作がなされたものの、圧力判定部61aにより二次配管系L2内の圧力異常があると判定される状態が継続しているときは、コントローラ60が異常解除動作手段63bを再度作動させることができ、ユーザによる再度の対処が可能となる。
【0110】
一方、圧力異常が解消されていれば(ステップS17のNoの場合)、異常発生をユーザに知らせる警報信号が警報発生手段62bで生成されることはなく、警報出力部66から警報出力がなされることなく、バルーン110の膨張・収縮駆動が継続実行される(ステップS19)。
【0111】
このように、本実施形態においては、異常解除動作により二次配管系L2内の圧力異常が解除されたときには、駆動圧Piの入力に応じたバルーン110の膨張・収縮駆動が継続実行される。したがって、二次配管系L2(流体接続ライン)に生じた圧力異常による医療用膨張・収縮駆動装置1の駆動停止という事態を未然に有効に回避可能となり、その駆動停止頻度を確実に低下させることができることになる。
【0112】
また、本実施形態では、圧力判定部61aにより流体接続ラインの圧力異常の有無が的確に判定され、圧力異常解除の蓋然性が高く、ガス漏れや流体接続ラインの完全閉塞等の重大な異常でないときに確実に異常解除動作手段63bによる異常解除動作を実行することで、無駄な駆動停止の頻度を確実に低減させることができる。
【0113】
さらに、異常解除動作手段63bにより異常解除動作を所定回数実行する程度では二次配管系L2内の圧力異常が解消されないときには、駆動圧Piの入力に応じたバルーン110の膨張および収縮駆動が停止されるとともに、所定の警報出力が実行されるので、その警報出力によって異常発生による駆動停止の状態をユーザに確実に報知でき、より有効な異常解除の手動操作その他の対処・判断を促すことができる。
【0114】
加えて、本実施形態では、駆動開始スイッチ75の手動操作によって異常解除動作が容易にかつ有効に実行可能となる。
【0115】
また、排気バルブ17によりガス圧力室11およびバルーン110内のガスを大気側に排気した状態下で、ガス補充制御部64によって補助タンク41内側からガス圧力室11内に新たなガスを補充するので、バルーン110の膨張・収縮駆動に供する作動ガスの漏れによって駆動性能が悪化することや、作動ガスの汚染や劣化によりバルーンポンピングの応答性が低下することにも十分に対応可能となる。
【0116】
さらに、本実施形態では、IABP用のバルーンカテーテル100のような補助循環用デバイスを被駆動機器としているので、そのバルーンカテーテル100の適切な膨張・収縮駆動が可能となる。
【0117】
また、本実施形態では、ポンピング駆動機構13がダイヤフラムポンプ型の構成を有しているので、圧力伝達隔壁装置10を簡素な構成とすることができる。
【0118】
このように、本実施形態においては、二次配管系L2に圧力異常が発生したときに、無駄に駆動停止頻度を高めることがなく、ユーザの負担を軽減できる医療用膨張・収縮駆動装置1を提供することができる。
【0119】
なお、上述の一実施形態においては、IABP用のバルーンカテーテル100のような補助循環用デバイスを被駆動機器としていたが、本発明の医療用膨張・収縮駆動装置が経皮的補助人工心臓(PVAD)その他の補助循環用デバイスにも適用可能であることはいうまでもない。
【0120】
また、ポンピング駆動機構13は、陽圧駆動バルブ21および陰圧駆動バルブ26の選択的な開弁動作によって圧力伝達隔壁装置10の駆動圧室14に供給する流体圧Pi(例えば空気圧)を陽圧と陰圧に切り替える構成としていたが、駆動圧室14に供給する流体圧を一実施形態と同様に変化させることができる流体圧回路、もしくは駆動圧室14に供給する流体圧を一実施形態と同様に変化させることができる吐出圧制御が可能なポンプを膨張・収縮駆動機構として用いることも考えられる。
【0121】
さらに、圧力伝達隔壁装置10は、圧力容器12に内蔵するダイヤフラム15によってその両側のガス圧力室11と駆動圧室14とを圧力伝達可能に仕切る構成となっていたが、ポンピング駆動機構や圧力伝達隔壁装置(容量制限装置またはアイソレータとも呼ばれる)が他の方式であってもよいことはいうまでもなく、例えば両端閉止形のベローズの伸縮により陽圧と陰圧を発生させてバルーン内に供給する構成とすることもできるし、あるいは、その伸縮駆動されるベローズから駆動圧室14内に陽圧と陰圧を交互に供給することも考えられる。
【0122】
以上説明したように、本発明は、被駆動機器を膨張・収縮駆動するための流体接続ラインに圧力異常が発生しても、無駄に駆動停止頻度を高めることがなく、ユーザの負担を軽減できる医療用膨張・収縮駆動装置1を提供することができる。かかる本発明は、補助循環用デバイスの駆動に好適な医療用の医療用膨張・収縮駆動装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0123】
1 医療用膨張・収縮駆動装置
10 圧力伝達隔壁装置(ガス操作部)
11 ガス圧力室
12 圧力容器
13 ポンピング駆動機構(方向切替部)
14 駆動圧室
15 ダイヤフラム(受圧部材)
17 排気バルブ(排気手段)
21 陽圧駆動バルブ
22 陽圧タンク
23 陽圧ポンプ
24 レギュレータバルブ
26 陰圧駆動バルブ
27 陰圧タンク
29 陰圧ポンプ
30 補充装置
31 ガス供給源
32 レギュレータバルブ
33 バルブ(第1電磁バルブ)
34 補充タンク
35 バルブ(第2電磁バルブ)
40 補助装置
41 補助タンク(補助圧力室)
42 補助バルブ
43 パージバルブ
44 真空タンク
51 圧力センサ(圧力検出部)
52、53、54、55 圧力センサ
59 ガス調節部
60 コントローラ(異常解除動作部)
61 入力監視制御部
61a 圧力判定部
61b 基準圧測定手段(収縮後安定圧測定手段)
62 情報出力制御部
62a 情報出力手段
62b 警報発生手段
63 ポンピング駆動制御部
63a 駆動制御手段
63b 異常解除動作手段
64 ガス補充制御部(ガス置換手段)
65 表示出力部
66 警報出力部
71 調整操作入力部
72 警報解除操作部
73 血圧変動測定器
74 心電計測器
75 駆動開始スイッチ
100 カテーテル(IABP用バルーンカテーテル、補助循環用デバイス、被駆動機器)
110 バルーン
124 カテーテル管
125 先端チップ
126 分岐部
127 金属チューブ
130 内管
132 第2ポート
L1 一次配管系
L2 二次配管系(流体接続ライン)
P1 基準圧
P1j 下限圧力
P3 測定圧力(バルーン内圧の逐次検出圧力)
P4 プラトー圧
P5 ピーク圧(バルーン膨張時ピーク圧)
T2 第2の所定時間(陽圧駆動期間)
T3 第3の所定時間(陰圧駆動期間)
tc3 検出タイミング(収縮後安定圧の検出タイミング)
(P1)、(P1´) 収縮後安定圧
(P4)、(P4´) 膨張後安定圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7