(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031956
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 9/04 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
G01L9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137759
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】青野 宇紀
(72)【発明者】
【氏名】金丸 昌敏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE11
2F055FF11
2F055GG12
(57)【要約】
【課題】圧力センサにおいて、ダイアフラム部の破損等を防止するとともに、圧力検出感度を維持する。
【解決手段】長手方向と短手方向とで寸法が異なる開口部を有するセンサ筐体と、開口部を塞ぐようにセンサ筐体に設置されダイアフラム部を形成するセンサチップと、センサチップに設けられた歪みゲージ部と、センサチップにキャップ接合剤で接合されたキャップ部材と、を有する圧力センサであって、キャップ接合剤の接合面のうち、ダイアフラム部の長手方向両端部の接合面は、ダイアフラム部の短手方向両端部の接合面よりも接合面積が大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と短手方向とで寸法が異なる開口部を有するセンサ筐体と、
前記開口部を塞ぐように前記センサ筐体に設置されダイアフラム部を形成するセンサチップと、
前記センサチップに設けられた歪みゲージ部と、
前記センサチップにキャップ接合剤で接合されたキャップ部材と、を有し、
前記キャップ接合剤の接合面のうち、前記ダイアフラム部の長手方向両端部の接合面は、前記ダイアフラム部の短手方向両端部の接合面よりも接合面積が大きい、圧力センサ。
【請求項2】
長手方向と短手方向とで寸法が異なる開口部を有するセンサ筐体と、
前記開口部を塞ぐように前記センサ筐体に設置されダイアフラム部を形成するセンサチップと、
前記センサチップに設けられた歪みゲージ部と、
前記センサチップにキャップ接合剤で接合されたキャップ部材と、を有し、
前記キャップ接合剤の接合面のうち、前記ダイアフラム部の長手方向両端部の接合面の長軸は、前記ダイアフラム部の短手方向両端部の接合面の長軸よりも長い、圧力センサ。
【請求項3】
長手方向と短手方向とで寸法が異なる開口部を有するセンサ筐体と、
前記開口部を塞ぐように前記センサ筐体に設置されダイアフラム部を形成するセンサチップと、
前記センサチップに設けられた歪みゲージ部と、
前記センサチップにキャップ接合剤で接合されたキャップ部材と、を有し、
前記キャップ部材は、前記開口部の前記長手方向に沿って設けられたリブを有する、圧力センサ。
【請求項4】
前記キャップ接合剤のうち、前記ダイアフラム部の前記短手方向両端部のキャップ接合剤は、前記ダイアフラム部の前記長手方向両端部のキャップ接合剤よりも貯蔵弾性率が小さい、請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記ダイアフラム部の前記短手方向両端部の前記接合面は、前記接合面積が0である、請求項1記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ピエゾ素子等を利用した圧力センサは、様々な分野に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動車のガソリンタンクに取り付けられ、燃料タンクシステムにおけるガソリン蒸気の圧力変化を検出するために用いられる半導体差圧センサが開示されている。特許文献1には、半導体差圧センサの圧力検出素子は、開口部に第2凸部が嵌め込まれた状態で、主面が接着剤により第1凸部の頂部に固定されていること、これにより、圧力検出素子の強固な保持力と高い位置精度が実現すること、第1圧力導入路への接着剤の流入を防ぐことができ、第1圧力導入路の閉塞を防止することができること等が開示されている。
【0004】
特許文献2には、平面視円形状の板状部材であるセンサチップであって、ダイアフラムと、ダイアフラムの表面に形成されたピエゾ拡散ゲージと、電気信号を取り出すための電極と、ピエゾ拡散ゲージと電極とを電気的に接続するリード拡散部と、ピエゾ拡散ゲージ及びリード拡散部を覆うように形成されたシリコン酸化膜(保護膜)と、シリコン酸化膜の表面の少なくとも一部を接合面としてセンサチップに接合されたカバー部材と、を有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-146318号公報
【特許文献2】特開2014-055868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ひずみセンサを用いた圧力センサの圧力検出感度を向上するためには、ひずみ検出部のダイアフラムを薄膜化し、圧力に対するひずみを増加させることが有効である。しかし、薄膜化の弊害として、ダイアフラムの強度が低下し、製造時のハンドリング性低下やチップ割れ等が懸念される。
【0007】
この課題を解決するためには、特許文献2に記載されているようなカバー部材をダイアフラムに接合して保護することが有効である。しかし、カバー部材の接合によってダイアフラムの剛性も増加するため、圧力検出感度が低下してしまう点で改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、圧力センサにおいて、ダイアフラム部の破損等を防止するとともに、圧力検出感度を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧力センサは、長手方向と短手方向とで寸法が異なる開口部を有するセンサ筐体と、開口部を塞ぐようにセンサ筐体に設置されダイアフラム部を形成するセンサチップと、センサチップに設けられた歪みゲージ部と、センサチップにキャップ接合剤で接合されたキャップ部材と、を有し、キャップ接合剤の接合面のうち、ダイアフラム部の長手方向両端部の接合面は、ダイアフラム部の短手方向両端部の接合面よりも接合面積が大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力センサにおいて、ダイアフラム部の破損等を防止するとともに、圧力検出感度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】圧力センサを含む分注装置を示す概略構成図である。
【
図3A】実施例1に係る圧力センサを示す分解斜視図である。
【
図4】
図3Bの圧力センサのセンサチップ部分を示す分解斜視図である。
【
図5A】従来の圧力センサの使用時における変形状態(長手方向)を示す縦断面図である。
【
図5B】
図5Aの圧力センサを短手方向に沿って見た縦断面図である。
【
図6A】実施例1に係る圧力センサの使用時における変形状態(長手方向)を示す縦断面図である。
【
図6B】
図6Aの圧力センサを短手方向に沿って見た縦断面図である。
【
図7】実施例2に係る圧力センサのセンサチップ部分を示す斜視図である。
【
図8】実施例3に係る圧力センサのセンサチップ部分を示す斜視図である。
【
図9】圧力センサのキャップ部材の変形例を示す上面図である。
【
図10】圧力センサのキャップ部材の他の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、圧力センサに関し、特に、分注装置等、流体の圧力を検出するために好適に用いられる圧力センサに関する。
【0013】
本開示に係る圧力センサは、キャップ部材によるセンサチップの変形抑制作用が、ダイアフラム部の長手方向に沿って強く働き、短手方向に弱く働くように構成されている。言い換えると、本開示に係る圧力センサは、ダイアフラム部の長手方向に変形しにくく、かつ、短手方向に変形しやすい構成を有する。
【0014】
以下、本開示に係る圧力センサを分注装置に適用した実施例について説明する。
【実施例0015】
図1は、圧力センサを含む分注装置を示す概略構成図である。
【0016】
本図に示すように、分注装置1の流路系は、ノズル2と、シリンジポンプ4と、電磁弁5と、ギアポンプ6と、水タンク7と、から構成され、各部品は、配管8で接続されている。また、シリンジポンプ4は、容器9と、プランジャ10と、ボールねじ11と、駆動モータ12と、で構成されている。分注装置1は、アーム16(分注アーム)も備えている。駆動モータ12は、サンプル分注機構13などを駆動するモータと同様に、制御部14により制御される。
【0017】
アーム16内には、圧力センサ15が設置されている。アーム16は、液体を吸引・吐出する位置に移動するため、回転動作及び上下動作が可能である。
【0018】
【0019】
図2においては、配管8内にシリンジ圧力伝達用の水21を吸引した直後の状態を示している。配管8内は、水21で満たされている。ノズル2には、液体22が入っている。水21と液体22との間には、分節空気23が入っている。水21は、圧力センサ15の位置に達している。
【0020】
シリンジポンプ4(
図1)により水21を加圧することにより、液体22に圧力を伝達することができ、ノズル2から液体22を吸引・吐出することができる。
【0021】
ノズル2から液体22を吸引するときは、電磁弁5(
図1)を閉にした状態で、シリンジポンプ4内のプランジャ10を引く。反対に、ノズル2から液体を吐出するときは、電磁弁5を閉にした状態で、シリンジポンプ4内のプランジャ10を容器9に押し込む。
【0022】
サンプルなどの液体22を吸引する場合は、液体22が配管8内の水21と混ざらないように、ノズル2で分節するための分節空気23を吸引した後、液体22の吸引を行う。また、吐出後には、ノズル2の洗浄を行う。ノズル2の洗浄では、ノズル2の外壁に洗浄用の水を当てると同時に、流路内部の水21を押し出す。洗浄時のノズル2内の水21の押し出しには、電磁弁5を開にしてギアポンプ6の圧力を利用することで、シリンジポンプ4で押し出すときよりも高圧で水21を送り出すことができる。
【0023】
圧力センサ15は、分注動作中に生じる可能性のあるノズル2の詰まりや空吸い等の異常を検知するため、配管8に設置されている。圧力センサ15は、水21の圧力をモニタリングし、異常な圧力変化を検出する。
【0024】
圧力センサ15は、ノズル2内の圧力変化を確実に検出するため、ノズル2に近い位置に設置することが望ましい。このため、本図においては、圧力センサ15は、アーム16内に設置している。ただし、圧力センサ15の設置位置は、アーム16内に限定されるものではなく、例えば、サンプル分注機構13の側面部であってもよい。
【0025】
つぎに、本開示に係る圧力センサの構造について更に詳細に説明する。
【0026】
図3Aは、
図2の圧力センサの一例を示す分解斜視図である。
【0027】
【0028】
図3Aに示すように、圧力センサ15は、センサチップ31と、キャップ部材34(カバー部材)と、センサ筐体32と、カバー40と、を有する。センサ筐体32の内部には、流路33が形成されている。流路33の両端部には、図示しないネジ部が設けられ、流路33を分注装置1の配管8に継手を介して接続可能となっている。
【0029】
また、センサ筐体32には、開口部35が設けられている。開口部35は、流路33に連通している。また、開口部35は、センサ筐体32の外面部に達している。言い換えると、開口部35は、センサ筐体32の外面部に向かって流路33から分岐し、センサ筐体32の外面部に至る構成である。
【0030】
センサ筐体32の外面部に位置する開口部35の終端部には、開口部35を塞ぐようにセンサチップ31が配置されている。センサチップ31は、センサチップ接合剤36でセンサ筐体32に接合されている。言い換えると、センサチップ31とセンサ筐体32との間には、センサチップ接合剤36で構成されたセンサチップ接合部が設けられている。センサチップ31の表面には、キャップ部材34が接合されている。センサチップ31からの出力を取り出すため、センサ筐体32には、プリント基板45が設置されている。プリント基板45は、ボンディングワイヤ46によりセンサチップ31の電極部に電気的に接続されている。プリント基板45は、ガラスエポキシ基板やフレキシブルプリント基板等である。
【0031】
図3Bに示すように、センサチップ31は、その変形部であるダイアフラム部31aを有する。センサチップ31の表面には、ダイアフラム部31aを保護するキャップ部材34(カバー部材)が接合されている。そして、センサ筐体32の外面部には、センサチップ31を覆うように、カバー40が設置されている。カバー40は、接着、ねじ止め、スナップフィット等により固定されている。
【0032】
ダイアフラム部31aは、流路33を流れる水21の圧力変化でたわみ変形する。その際の歪みをセンサチップ31で測定することによって、センサ筐体32内を流れる水21の圧力を測定する。歪みの測定は、センサチップ31の中央部表面に実装された歪みゲージによって行われる。
【0033】
図4は、
図3Bの圧力センサのセンサチップ部分を示す分解斜視図である。
【0034】
本図においては、センサチップ31は、開口部35の終端部にセンサチップ接合剤36により接合されている。センサチップ31のうち開口部35に対向する部分が圧力センサ15のダイアフラム部31aである。開口部35及びダイアフラム部31aは、長円形であり、長手方向及び短手方向に寸法が異なるものである。なお、開口部35及びダイアフラム部31aの形状は、長円形に限定されるものではなく、楕円形や、角部に曲率を有する長方形等であってもよい。
【0035】
センサチップ31の表面には、キャップ部材34が長手方向両端近傍接合剤37a及び短手方向両端近傍接合剤37bで接合されている。言い換えると、センサチップ31とキャップ部材34との間には、長手方向両端近傍接合剤37a及び短手方向両端近傍接合剤37bで構成された接合部(キャップ接合部)が設けられている。ここで、両端近傍は、「両端部」と言い換えることができる。ゆえに、長手方向両端近傍接合剤37aは、長手方向両端部に設けられた接合剤であり、短手方向両端近傍接合剤37bは、短手方向両端部に設けられた接合剤である。
【0036】
長手方向両端近傍接合剤37aの接合面は長手方向両端近傍接合面38a、短手方向両端近傍接合剤37bの接合面は短手方向両端近傍接合面38bである。長手方向両端近傍接合剤37a及び短手方向両端近傍接合剤37bは、熱硬化型接着剤、UV付加型接着剤、低融点ガラス、銀ペースト等がある。センサチップ31の表面中央部には、歪みを検出する歪みゲージ部31bが設けられている。
【0037】
なお、本実施例においては、長手方向両端近傍接合剤37a及び短手方向両端近傍接合剤37bは、貯蔵弾性率が等しいものを用いている。
【0038】
ダイアフラム部31aが水21からの圧力を受けて変形する時、ダイアフラム部31aにおいては、歪みゲージ部31bの長手方向と短手方向とで歪みの大きさに差が生じる。歪みゲージ部31bは、長手方向及び短手方向のそれぞれの歪みを検出し、その差を出力する。これは、歪みゲージ部31bの温度特性を相殺するためである。
【0039】
このような方式の圧力センサ15においてセンサ感度が高くなる条件としては、歪みゲージ部31bにおける歪みの絶対値が大きいことに加え、長手方向と短手方向との歪みの差が大きいことが重要である。歪みの絶対値を大きくする手段としては、センサチップ31を薄膜化して変形しやすくすることが有効である。しかし、薄膜化の弊害として、センサチップ31の強度が低下し、製造時のハンドリング性低下やチップ割れ等が懸念される。本実施例においては、この課題を解決するため、キャップ部材34をセンサチップ31に接合して強度を確保している。
【0040】
しかし、後述のように、キャップ部材34を接合するとダイアフラム部31aの剛性も増加し、歪みゲージ部31bにおける歪みの絶対値が低下することによってセンサ感度が低下してしまう。
【0041】
この課題を解決するため、キャップ部材34の接合面のうち、長手方向両端近傍接合面38aの方が短手方向両端近傍接合面38bよりも大きな接合面積となる構成としている。
【0042】
つぎに、
図4の構成による効果について、
図5A~
図6Bを用いて説明する。なお、これらの図は、歪みゲージ部31bを通る縦断面である。
【0043】
図5Aは、従来の圧力センサの使用時における変形状態(長手方向)を示す縦断面図である。
【0044】
図5Bは、
図5Aの圧力センサを短手方向に沿って見た縦断面図である。
【0045】
これらの図に示す圧力センサは、キャップ部材を取り付けていないため、センサチップ31が水21(
図3B)からの圧力pを受けると、大きく変形する。
【0046】
圧力pを受けてセンサチップ31が変形すると、歪みゲージ部31bには引張歪みが生じる。引張歪みのうち、長手方向成分をεx1、短手方向成分をεy1として、それぞれの図中に表記している。
【0047】
開口部35の長手方向と短手方向との寸法差により、歪みゲージ部31bの曲率に差が生じる。具体的には、曲率は、短手方向の方が長手方向よりも大きくなり、引張歪みの大小関係で表すと、εx1<εy1となる。センサ出力としては、これらの差分であるεy1-εx1が出力される。
【0048】
この変形により、センサチップ31のうちセンサチップ接合剤36により接合されている部分は、長手方向及び短手方向のいずれも内側(図中、左右から中央へ向かう方向)に変位する。この変位に伴い、センサチップ接合剤36は、センサチップ31からせん断力を受けてせん断変形した状態となる。
【0049】
図6Aは、実施例の圧力センサの使用時における変形状態(長手方向)を示す縦断面図である。
【0050】
図6Bは、
図6Aの圧力センサを短手方向に沿って見た縦断面図である。
【0051】
これらの図に示す圧力センサは、キャップ部材34を取り付けているため、センサチップ31が水21(
図3B)からの圧力pを受けても、
図5A及び
図5Bに示す従来例よりも変形量が小さくなる。
【0052】
図6A及び
図6Bのそれぞれの図中に示すように、引張歪みのうち、長手方向成分をεx2、短手方向成分をεy2としている。この場合、センサ出力は、εy2-εx2となる。
【0053】
本実施例においては、キャップ部材34の剛性により引張歪みが抑制される。
図6A及び
図6Bに示すように、センサチップ接合剤36、長手方向両端近傍接合剤37a及び短手方向両端近傍接合剤37bは、センサチップ31からせん断力を受けてせん断変形した状態となる。キャップ部材34による変形抑制作用によって、εx2及びεy2はいずれも、キャップ部材34を取り付けない場合と比べて小さくなってしまう。これがキャップ部材34の取り付けによる感度低下の原因となる。
【0054】
この感度低下を防止するため、本実施例においては、
図4に示すように、長手方向両端近傍接合面38aが短手方向両端近傍接合面38bよりも大きな接合面積になるように構成している。これにより、長手方向両端近傍接合剤37aと短手方向両端近傍接合剤37bとのせん断の変形しやすさに差が生じ、短手方向両端近傍接合剤37bの方がせん断変形しやすくなる。すなわち、キャップ部材34によるセンサチップ31の変形抑制作用が長手方向に沿って比較的強く、短手方向に沿って比較的弱く働く。その結果、長手方向成分の引張歪みεx2は比較的大きく減少する一方で、短手方向成分の引張歪みεy2は減少量が比較的小さいため、その差分であるセンサ出力εy2-εx2を大きくすることができる。
【0055】
このように、本実施例の構成によれば、キャップ部材34によってセンサチップ31の強度を確保するとともに、圧力センサの感度を維持することができる。
【0056】
なお、各接合剤は、長手方向及び短手方向に対して線対称な位置に配置されているが、線対称でなくともよく、接合面積の大小関係が成り立つ範囲で接合面を変えても同様の効果が達成される。また、キャップ部材34の形状も、図示した形状に限定されるものではない。
【0057】
また、上記の例においては、接合面積の大小に基いて説明しているが、同様の効果を得る構成としては、長手方向両端近傍接合面38aの長軸すなわち開口部35に近接する長手方向両端近傍接合面38aの長さが、短手方向両端近傍接合面38bの長軸すなわち開口部35に近接する短手方向両端近傍接合面38bの長さよりも長い構成がある。この構成も、
図4の構成に合致する。この場合、
図4に示すように、長手方向両端近傍接合面38a及び短手方向両端近傍接合面38bの短軸は、ほぼ同じであることを想定している。ただし、それぞれの短軸が異なっていてもよい。キャップ部材34による変形抑制作用は、長手方向両端近傍接合面38a及び短手方向両端近傍接合面38bの寸法のうち、短軸より長軸の寸法に影響されるからである。
本図に示す圧力センサ75においては、実施例1と同様の形状を有する長手方向両端近傍接合剤37a及び短手方向両端近傍接合剤77bにより、キャップ部材34とセンサチップ31とが接合されている。
本実施例の特徴は、短手方向両端近傍接合剤77bとして長手方向両端近傍接合剤37aよりも貯蔵弾性率が小さいものを選定したことである。これによって、実施例1のように同じ貯蔵弾性率の接合剤を使用した場合と比較して、キャップ部材34によるセンサチップ31の短手方向の変形抑制作用を更に小さくすることができる。したがって、短手方向成分の引張歪みεy2の減少量も更に小さくなり、センサ出力εy2-εx2を大きくすることができる。
本実施例の構成は、例えば、キャップ部材34の接合面積をなるべく大きくするとともに、センサ感度を高くしたい場合に有効である。キャップ部材34の接合面積を大きくとる目的は、接合強度の確保や外部振動による共振の防止等である。