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特開2023-32176再生可能エネルギー消費量の保証方法、再生可能エネルギーの取引支援システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032176
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】再生可能エネルギー消費量の保証方法、再生可能エネルギーの取引支援システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230302BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138141
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】399114359
【氏名又は名称】オリックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙司
(72)【発明者】
【氏名】佐川 大志
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギー消費量の立証を容易にする。
【解決手段】プラットフォーム141は、電気機器101等の電力消費量を計量し、電気機器101等に対して再生可能エネルギーを供給する発電装置161の発電量を表す発電量データを受領する。そして、受領した発電量データが表す発電量が計量された電力消費量に対して所定割合以上のときに、当該発電量を電気機器101等が消費した再生可能エネルギー消費量であることを保証するデータを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の電力消費量を計量し、前記電気機器に対して再生可能エネルギーを供給する発電装置の発電量を表す発電量データを受領するとともに、受領した前記発電量データが表す発電量が計量された前記電力消費量に対して所定割合以上のときに当該発電量を前記電気機器が消費した再生可能エネルギー消費量と保証するデータを出力することを特徴とする、再生可能エネルギー消費量の保証方法。
【請求項2】
電気機器の電力消費量を計量する計量手段と、
前記電気機器に対して再生可能エネルギーを供給する発電装置の発電量を表す発電量データを受領する受領手段と、
受領した前記発電量データが表す発電量が前記計量手段で計量された電力消費量に対して所定割合以上のときに当該発電量を前記電気機器が消費した再生可能エネルギー消費量であることを保証するデータを出力する保証手段と、を有することを特徴とする、
再生可能エネルギーの取引支援システム。
【請求項3】
前記計量手段は、前記電気機器と一体化された電力メーターであることを特徴とする、
請求項2に記載の取引支援システム。
【請求項4】
複数のコンピュータが接続された通信ネットワークとの間で通信を行う通信手段と、
前記電気機器の電力消費量、前記発電量、および保証された前記再生可能エネルギー消費量をブロックチェーンに保存するブロックチェーン処理手段を有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の取引支援システム。
【請求項5】
前記計量手段は、前記電気機器の電力消費量のほかに再生可能エネルギー非対応電気機器の電力消費量との合計電力消費量を計量するものであり、
前記合計電力消費量、前記電気機器の電力消費量及び前記再生可能エネルギーを供給する発電装置の発電量に基づいて前記電気機器の電力消費に対して当該電気機器の使用者が負担すべき料金を算出する料金算出手段をさらに有することを特徴とする、
請求項2、3又は4に記載の取引支援システム。
【請求項6】
前記電気機器は、前記再生可能エネルギー消費量を保証された事業者又は当該事業者から販売された他の事業者から前記使用者に販売され、あるいは、貸与されたものであり、
前記料金算出手段は、保証された再生可能エネルギー量に応じて前記使用者が負担すべき電気料金を減額する、
請求項5に記載の取引支援システム。
【請求項7】
前記料金算出手段は、前記使用者が負担すべき電気料金を前記保証された再生可能エネルギー消費量にかかわらず固定額を減額することを特徴とする、
請求項6に記載の取引支援システム。
【請求項8】
情報処理装置を請求項2から7のいずれか一項に記載された取引支援システムとして動作させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギー取引を支援する技術に関する。再生可能エネルギー取引とは、再生可能エネルギー発電設備を所有している事業者から買い上げた再生可能エネルギーを消費者側で消費可能にする取引である。
【背景技術】
【0002】
複数の電気機器を備えた組織における電力消費量を計量する技術として、スマート電源タップを利用して当該電力消費量を測定するスマートグリッドと呼ばれる技術が特許文献1に開示されている。スマート電源タップは、電源タップに接続された電気機器の電力消費量の測定機能と、測定された電力消費量を所定の端末へ送信する機能とを有し、顧客毎の電気機器の電力消費量を端末側で把握することを可能にする。また、再生可能エネルギー取引にブロックチェーンを用い、かつ、再生可能エネルギーをリアルタイムで取引するための技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-225833号公報
【特許文献2】特許第6863508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再生可能エネルギー取引の目的の一つは、サプライチェーン排出量の削減である。サプライチェーン排出量とは、事業者の原料調達・製造・物流・販売・廃棄など一連の流れ全体(サプライチェーン)における組織活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量をいう。サプライチェーン排出量を削減しようとする事業者は、自己が販売し、あるいはリース等によって提供する電気機器の電力が、確かに再生可能エネルギー発電機から所定量以上供給され、消費されていることを保証する必要がある。
しかしながら、特許文献1、2に開示された技術のように、複数の電気機器が一つの電源タップやコンセント等に接続されている環境では、個々の電気機器の電力が再生可能エネルギー発電機から供給されていることの証明が困難である。
【0005】
本発明は、エネルギー消費設備における再生可能エネルギー消費量の客観的な証明を可能にする技術の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、再生可能エネルギー消費量の保証方法、取引支援システム及びコンピュータプログラムにより、上記課題を解決する。
再生可能エネルギー消費量の保証方法は、電気機器の電力消費量を計量し、前記電気機器に対して再生可能エネルギーを供給する発電装置の発電量を表す発電量データを受領するとともに、受領した前記発電量データが表す発電量が計量された前記電力消費量に対して所定割合以上のときに当該発電量を前記電気機器が消費した再生可能エネルギー消費量と保証するデータを出力することを特徴とする。
【0007】
再生可能エネルギーの取引支援システムは、電気機器の電力消費量を計量する計量手段と、前記電気機器に対して再生可能エネルギーを供給する発電装置の発電量を表す発電量データを受領する受領手段と、受領した前記発電量データが表す発電量が前記計量手段で計量された電力消費量に対して所定割合以上のときに当該発電量を前記電気機器が消費した再生可能エネルギー消費量であることを保証するデータを出力する保証手段と、を有することを特徴とする。この取引支援システムは、コンピュータを取引支援システムとして動作させるためのコンピュータプログラムにより、実現が可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、再生可能エネルギー消費量の計量結果の確からしさを担保することができる。そのため、再生可能エネルギーの消費量の証明(立証)が容易となる。また、電気機器等の製造者等による再生可能エネルギーの消費量の認証制度の利用も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の説明図。
図2】第1実施形態の効果例を示す説明図。
図3】第2実施形態の説明図。
図4】第2実施形態の効果例を示す説明図。
図5】第2実施形態における電気料金の支払いイメージの説明図。
図6】第3実施形態における取引支援システムの概略構成図。
図7】第3実施形態における取引支援システムの模式図。
図8】第4実施形態の説明図。
図9】第4実施形態の効果例を示す説明図。
図10】ブロックチェーンサーバーの構成図。
図11】ブロックチェーンサーバーの機能ブロック図。
図12】再エネ消費量の保証方法の処理ステップを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態例を説明する前に、本開示が適用され得る再生可能エネルギーの範囲と、再生可能エネルギー消費量の扱いについて、説明を補充しておく。
本開示における再生可能エネルギーは、石油、石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギー、例えば電力全般をいう。これに対して、化石エネルギーは、本開示では非再生可能エネルギーと呼ぶ。再生可能エネルギーは、枯渇せず、どこにでも存在し、温室効果ガスを増加させないことが、非再生可能エネルギーとの大きな相違点となる。以後の説明では、便宜上、再生可能エネルギーを「再エネ」、非再生可能エネルギーを「非再エネ」と略称する場合がある。
【0011】
再エネ取引の現場の多くでは、IoTメーターやスマートメーターという計量器が使用される。IoTメーターは、再エネ発電機の発電量及び再エネ消費者側の電力消費量に関するデータを、ネットワークを通じて、送信する通信機能付きの計量器の一種である。IoTは「Internet of Things」の略であり、従来はインターネットにつながっていなかったモノをつなぐことを意味し、モノのインターネットとも呼ばれる。IoTメーターは、計量対象となる電気機器毎に、簡単に取り外せない措置を講じて取り付けられる。
【0012】
スマートメーターは、再エネか非再エネかを問わず、電気事業者(電力会社等)が電気料金徴集用に電力供給先に設けた親メーターであり、電力消費量に関するデータをリアルタイムで電気事業者へ送信する通信機能付の計量器の一種である。送信は、通常、電力線と併設されたネットワーク回線を通じて行われる。電気事業者は、スマートメーターを用いることで、電力供給先のエリアや個別の家庭等における電力消費量をリアルタイムに把握することができる。
【0013】
本開示では、発電・変電・送電・配電を統合した設備を電力系統と呼ぶ。電力系統には、現状、再エネ発電機で発電された電力と、非再エネ発電機で発電された電力とが混在して供給される。
【0014】
サプライチェーン排出量に関する指標の一つとして、GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)が知られている。GHGプロトコルには「スコープ」という考え方がある。例えば「スコープ1」は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出を意味し、これによる排出量は「スコープ1排出量」と呼ばれる。「スコープ2」は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出を意味し、これによる排出量は「スコープ2排出量」と呼ばれる。「スコープ3」は、「スコープ1」および「スコープ2」以外の間接排出を意味し、これによる排出量は「スコープ3排出量」と呼ばれる。GHGプロトコルによれば、スコープ1排出量とスコープ2排出量とスコープ3排出量との合算値がサプライチェーン排出量となる。
【0015】
サプライチェーン排出量の扱い、特に温室効果ガス排出の会計方法は、以下のように、エネルギー消費設備の一例となる電気機器が、販売によるものか、あるいはリースかによっても異なる。
(1)販売された電気機器の場合
製造業者にとっては、販売され、設置される顧客の場所において、電気機器を直接制御することができない。そのため、その電気機器の電力消費量に対しての温室効果ガスの排出は、GHGプロトコルの「スコープ3」という扱いとなる。「スコープ3」の温室効果ガスの排出量を削減するために必要なのは、製造業者が例えば再エネ証書(例えばグリーン電力証書、非化石証書等)を購入することではなく、顧客を電気機器の電力消費量に対応する所定割合の再エネ供給を許すように促すこととされる。つまり、製造業者の立場では、顧客の設置場所で電気機器のために消費されるエネルギーの所定量が再エネ由来であることを証明するだけで十分ということになる。
【0016】
(2)電気機器がファイナンシャルリース物件の場合
ファイナンシャルリースは、リース物件のほぼすべての耐用年数以上にわたって実行される、またはリース物件のほぼすべてのコスト以上をカバーするリース形態である。このリース形態の場合、リース業者にとって、GHGプロトコルの扱いは、電気機器が販売された場合と殆ど同じであり、その電気機器の電力消費量に対しての温室効果ガス排出は、GHGプロトコルの「スコープ3」という扱いとなる。リース業者は、製造業者そのものになることもある。
【0017】
(3)電気機器がオペレーティングリース物件の場合
オペレーティングリースは、リース物件の耐用年数の大部分を超えない、またはリース物件のコストの大部分をカバーしない短期リースの形態となる。このようなリース形態の場合、リース業者にとって、リース業者とリース物件である電気機器の利用者との関わり方によって、GHGプロトコルにおけるスコープの扱いが異なるものとなる。リース業者は、製造業者そのものになることもある。
【0018】
例えば経営支配の判断方法が営業の管理(operational control)に基づく場合、リース物件が顧客の場所にあり、そのリース業者が直接制御できないことから、リース物件の電力消費量に対しての温室効果ガス排出は、GHGプロトコルの「スコープ3」という扱いとなる。他方、経営支配の判断方法が株式又は財政的な管理(equity share or financial control)に基づく場合、リース物件はリース業者がそれを所有したままであり、財政的な利益を享受していることから、そのリース物件の電力消費量に対しての温室効果ガス排出は、GHGプロトコルの「スコープ2」という扱いとなる。「スコープ2」において温室効果ガス排出量を削減しようとするリース業者は、電気代を払わなくても、電気機器の電力消費量に比例して上述の再エネ証書を取得する必要がある。
【0019】
再エネ取引に参加する企業は、商用パートナーと呼ばれる。本開示では、商用パートナーとなる企業(製造業者、リース業者を含む)を「参加社」と表現する。再エネ取引に不参加の企業については、本開示では、「非参加社」と表現する。
【0020】
次に、本発明を適用した実施の形態例を説明する。再エネ取引の態様は、需要量と供給量との関係に応じて多種多様である。本開示では、どのような再エネ取引の態様においても実施が可能となる再エネ消費量の保証方法およびその方法の実施に適した取引支援システムの実施形態について説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の説明図である。第1実施形態では、P2P(Peer・to・Peerネットワーク)取引のプラットフォーム141が再エネ取引支援システムとして動作する。プラットフォーム141については、後で詳しく説明する。
図1において、実線は電力の流れ、点線はデータの流れを表す。データは、有線、無線(Wi-Fi、Z-Wave等)のいずれにより通信されてもよい。IoTメーター111とスマートメーター121との間は、通常は送電用の電線で接続される。ただし、IoTメーター111に、電力検出用センサが設けられ、スマートメーター121の方で、電力を再生できる場合は、電力検出用センサの検出結果を無線でスマートメーター121に送信する態様であってもよい。
【0022】
図1において、電気事業者の顧客が所有する建物1には、参加社1が製造・販売し、顧客が購入して使用する電気機器101~103と、非参加社が製造・販売し、顧客が購入して使用する電気機器104とが配置されている。電気機器101~103は、再エネ取引のための電力消費量の計量対象となるエネルギー消費設備の一種である。電気機器104は再エネ取引とは無関係の設備である。
【0023】
電気機器101にはIoTメーター111が一体不可分に接続され、当該電気機器における電力消費量が個別に計量される。同様に、電気機器102にはIoTメーター112、電気機器103にはIoTメーター113が、それぞれ一体不可分に接続されている。そのため、IoTメーター111~113は、公的機関が定める特定計量制度のガイドラインが定める「計量器」としての要件を満たすものである。一方、電気機器104は、再エネ取引の対象外であることから、IoTメーターは接続されていない。
【0024】
IoTメーター111~113には、固有のIoTメーター情報として、IoTメーター自体の識別情報が相互に関連付けて記憶されている。当該IoTメーターが取り付けられた電気機器の識別情報及び参加社1の識別情報は、IoTメーターの識別情報との一致のためにブロックチェーンに保存される。IoTメーター111~113は、建物内スマートメーター121に、主として電線で接続されている。一方、電気機器104は、ダイレクトに建物内スマートメーター121に接続されている。電力系統151からの電力は、建物内スマートメーター121を介して電気機器101~104に供給されている。
【0025】
建物内スマートメーター121は、電力網への出口付近に設けられ、電気機器101~103の電力消費量のほか、電気機器104の電力消費量を無差別に合計で計量し、計量結果を内蔵のストレージに記憶するアクティブ型の計量器である。計量結果は、建物全体において消費された電力量(Wh)、時間(h)、日付(d)等の消費履歴を含む。
建物内スマートメーター121には、それ自身の識別情報も記憶されている。建物内スマートメーター121は、上記計測結果にそれ自身の識別情報を付加したデータを建物内ルーター131へ出力する。IoTメーター111~113は、接続されているそれぞれの電気機器101、102、103において消費された電力量(Wh)、時間(h)、日付(d)等の消費履歴を記憶しておき、所定のタイミングでそのデータを建物内ルーター131へ出力する。
【0026】
建物内ルーター131は、個別のIoTメーター111~113から取得した計量結果と建物内スマートメーター121から取得した電力消費量のデータとを個別の電気機器と建物1全体の電力消費量を表すデータとしてパッケージ化する。そして、パッケージ化したデータをプラットフォーム141宛に出力する。
【0027】
次に、電力系統151の発電側について説明する。電力系統151には、再エネ側スマートメーター122を介して再エネ発電機161が接続されている。電力系統151には、また、非再エネ側スマートメーター123を介して非再エネ発電機162が接続されている。
【0028】
再エネ側スマートメーター122は、再エネ発電機161の発電量を計量し、計量結果を内蔵のストレージに記憶する。計量結果は、再エネ発電機161で発電された電力量(Wh)、時間(h)、日付(d)を含む。再エネ側スマートメーター122には、その識別IDも記憶されている。再エネ側スマートメーター122は、上記計測結果に識別IDを付加したデータを再エネ側ルーター132へ出力する。再エネ側ルーター132は、再エネ側スマートメーター122から取得したデータをプラットフォーム141宛に出力する。
【0029】
非再エネ側スマートメーター123は、非再エネ発電機162の発電量を計量し、計量結果を内蔵のストレージに記憶する。計量結果は、非再エネ発電機162で発電された電力量(Wh)、時間(h)、日付(d)を含む。非再エネ側スマートメーター123には、その識別IDも記憶されている。非再エネ側スマートメーター123は、上記計測結果に識別IDを付加したデータを非再エネ側ルーター133へ出力する。非再エネ側ルーター133は、非再エネ側スマートメーター123から取得したデータをプラットフォーム141宛に出力する。
【0030】
プラットフォーム141は、プラットフォーム事業者が運営する取引支援システムであり、通信機能とストレージ機能とを有する情報処理装置が本発明のサーバ用プログラムを読み込んで実行することにより、建物1の使用者である顧客や参加社1に対して再エネ取引に関する様々な支援処理を行う。
【0031】
一例を挙げれば、プラットフォーム141は、電気機器101~103が消費する再エネ電力と電気機器104が消費する非再エネ電力とを顧客に販売(請求書発行)するとともに、顧客が支払う電気料金を受領して管理する処理を行う。再エネ電力と非再エネ電力とを販売することを「電力ミックス販売」といい、それに対して顧客が電気料金を支払うことを「電力ミックス支払い」という。
【0032】
プラットフォーム141は、また、建物内ルーター131、再エネ側ルーター132および非再エネ側ルーター133から出力される上記各データを取得し、取得した各データを用いて再エネ発電機161の発電量と建物1内の電気機器101~103における再エネ消費量とを区別して管理する処理を行う。
【0033】
プラットフォーム141には、複数のブロックチェーン142が通信可能に接続されている。ブロックチェーン142は、分散型ネットワークを構成する複数のコンピュータ端末が協働して特定の暗号データを共有する公知の仕組みである。プラットフォーム141は、ブロックチェーン142を、不変のオンライン元帳として利用する。
【0034】
すなわち、プラットフォーム141は、顧客の固有情報、参加社1の固有情報、IoTメーター111~113の計量結果、再エネ発電機161の稼働状況など、再エネ取引および再エネ取引に関して必要となるデータをブロックチェーン142に保存する処理を行う。顧客の固有情報等は、電気事業者との電力使用の契約時、あるいは、計量対象となる電気機器101~103の購入時などにプラットフォーム141に登録される。その他のデータは、適宜取得され、ブロックチェーン142に保存される。
【0035】
プラットフォーム141は、上記各処理のほか、さまざまな機能を実現する。その一つは、マッチングの機能である。マッチングの機能は、例えば、電気機器101~103の電力消費量と再エネ発電機161の発電量とが、リアルタイムないしそれと同一視できるタイミングで所定割合以上で合致するかどうかの対応付けを試み、対応付けができる場合(マッチングに成功した場合)、電気機器101が消費した再エネ消費量が、上記割合で再エネ発電機161で発電された発電量であることを保証するデータを出力する機能である。このマッチングの機能は、例えば、スマートコントラクトと呼ばれる技術を用いることにより実現が可能である。
【0036】
なお、マッチングに用いる所定時間は、例えば1時間、1日、1週間のような、公的機関において認められる単位時間であってもよい。
【0037】
マッチングに成功した場合、その事実と根拠データとを関連付けてブロックチェーン142に保存しておくことができる。上記の通り、プラットフォーム141は、ブロックチェーン142を、不変のオンライン元帳として利用するので、マッチングに成功したときの事実とその根拠データをブロックチェーン142に保存しておけば、その読み出しがいつでも可能であり、マッチングについても再現性があることから、ブロックチェーン142に保存されているマッチングの結果およびその根拠データには証拠性が認められる。そのため、これらを公的機関に対する各種申請に必要な証拠として用いることができる。
【0038】
プラットフォーム141の他の機能は、欠損値補間の機能である。本例では、IoTメーター111~113から出力される電気機器101~103における電力消費量の計測結果が建物内ルーター131を経てプラットフォーム141に伝達される。そのため、通信環境等の影響を受けてデータ欠損が生じる場合がある。そこで、プラットフォーム141は、定期的あるいは非定期に、取得した計測結果に欠損値が生じているかどうかを監視し、生じている場合は、例えば多重代入法のような欠損値補間アルゴリズムを実行することで、欠損値を補間する。これにより、電気機器101~103における電力消費量の分析、解析その他の処理の正確性が担保される。
【0039】
本実施形態では、上述した特定計量制度の対象となる計量器としてIoTメーター111~113を電気機器101~103に一体不可分な態様で設け、電気機器101~103について再エネ取引に参加する顧客の情報がIoTメーター111~113の識別情報およびそれぞれの計測結果と関連付けてブロックチェーン142に保存されているので、電気機器101~103による温室効果ガス排出量の削減効果を立証することが容易になる。そのため、電気機器101~103に対する再エネ証書の申し込み、提供ないし取得および保管を代行することが可能となる。
【0040】
再エネ証書を取得することの目的の一つは、温室効果ガスを発生させる製品、本例では電気機器101~103の製造業者か顧客が、当該製品の電力消費量に比例したオフセット(「カーボンオフセット」と呼ばれることもある)のためである。オフセットとは、やむを得ず発生してしまった温室効果ガス排出量を別の誰かが埋め合わせる(例えば金銭的貢献をする)、国が認めたクレジットの一つの仕組みである。再エネ証書を提供ないし取得することを便宜上「再エネ認証」と呼ぶ場合がある。
【0041】
製造業者にとって、電気機器の電力消費に対しての温室効果ガス排出がGHGプロトコルの「スコープ2」に該当する場合、製造業者が電気機器の電力消費量に比例して再エネ証書を取得することになるが、「スコープ3」に該当する場合は、再エネ取引の目標から離れ、再エネ証書が必要なくなるので、製造業者における金銭的貢献の度合いが変化する可能性がある。
【0042】
また、GHGプロトコルの「スコープ2」か「スコープ3」のいずれかに該当するかとは関係なく、個別の電気機器101~103がどの程度再エネで供給されているかという情報は、定期的なレポートとして、プラットフォーム141が参加社に報告することができる。そのようなトラッキングのサービスもまた、再エネ取引ないし再エネ認証の一態様となる。「スコープ3」に該当する参加社にとっては、そのような態様の再エネ取引が主なサービスになって、その見返りに参加社がプラットフォーム141の運営に金銭的貢献することとなる。その場合は、状況によって異なるが、基本的に顧客が再エネ証書を取得する事となる。
【0043】
次に、本実施形態による効果について説明する。図2は、第1実施形態における再エネ取引の一態様を示す概略図である。ここでは、プラットフォーム141による再エネ証書の申請代行の機能により、参加社1が、電気機器101から収集したデータに基づいて電気機器毎の再エネ認証トラッキングを受ける場合の例が示されている。
【0044】
電気機器101は、顧客が購入した設備なので、参加社1にとってその電力消費がGHGプロトコルの「スコープ3」に該当する。そのため、参加社1は、再エネ証書を取得しないで電気機器101についての再エネ認証トラッキングを受けるとともに、金銭的貢献をプラットフォーム141に対して支払うことになる。この場合の金銭的貢献は、状況に応じて貢献内容(例えば支払う金額)が変わる。ある状況では、プラットフォーム事業者は、参加社1からの金銭的貢献の程度、すなわち電力消費量に応じて顧客にキャッシュバックを行うことができる。この場合、顧客は、電気機器101の電力消費量に応じたキャッシュバックを受ける利益を享受し、参加社1は、「スコープ3」排出量の削減のために、販売した電気機器のトラッキングし、再エネ供給を証明できる利益を享受することになる。
【0045】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の説明図である。第2実施形態では、図1の参加社1が図3では参加社2となっており、電気機器101、102、103は、それぞれ参加社2の電気機器101a、102a、103aとなっている。電気機器104は、第1実施形態と同様、非参加社が製造・販売し、顧客が購入して使用する電気機器である。その他の要素については、第1実施形態と同じである。
【0046】
第1実施形態では、参加社1は電気機器101、102、103を顧客に販売するので、これらの所有権は顧客が保有していた。これに対して、第2実施形態では、参加社2はプラットフォーム事業者に対して電気機器101a、102a、103aを販売する。そのため、電気機器101a、102a、103aの所有権はプラットフォーム事業者が保有することになる。顧客は、プラットフォーム事業者との間でリース契約を結び、リース料支払いを条件として電気機器101a、102a、103aを使用するが、電気機器101aにIoTメーター111、電気機器102aにIoTメーター112、電気機器103aにIoTメーター113を設置することを許可することになる。
【0047】
電気料金の支払いについては、第1実施形態とは異なる点がある。電気機器101a、102a、103aのリース料には、それぞれの予測電力消費料が固定額として含まれている。つまり、電気機器101aが予想以上に使用されて電力消費量が増加した場合でも、追加の電気料金は発生しない。そのため、顧客は、建物1全体の電力消費量のうち、電気機器101a、102a、103aを除く電力消費量に応じた電気料金を、リース料と共にプラットフォーム141へ支払う契約をプラットフォーム事業者と結ぶことになる。
【0048】
第2実施形態による効果について説明する。図4は、第2実施形態における再エネ認証の一態様を示す概略図である。ここでは、プラットフォーム141による申請代行の機能により、参加社2が、電気機器101aから収集したデータに基づいて再エネ認証トラッキングを受ける場合の例が示されている。参加社2にとっては、電気機器がプラットフォーム事業者に販売されたので、その電力消費がGHGプロトコルの「スコープ3」に該当する。そのため、参加社2は、再エネ証書を取得しないで電気機器101aについての再エネ認証トラッキングを受けるとともに、金銭的貢献をプラットフォーム141に対して支払うことになる。その金銭的貢献は、状況に応じて形態が変わる。プラットフォーム141は、参加社2からの金銭的貢献に応じて顧客にキャッシュバックを行うことができる。
【0049】
なお、第2実施形態の変形例として、リース料を電力消費量に応じて変動させるという電力消費量ベースでの支払いに切り替えることができる。このようにすれば、電力消費量が増えるとリース料もそれに応じて増えることから、消費電力節減(省エネ)を間接的に促進できる効果が期待される。
【0050】
図5に、第2実施形態におけるリース料の月ベースの支払いと、その変形例における電力消費量ベースでの支払いとを比較した図である。図示されるように、月ベースの支払い金額は、電気機器の値段、補修などのサービス費用、予測電力消費量、およびリースの月数に基づいて決定される。例えば、機器の値段と、リース期間における補修などのサービス費用と、リース期間における予測電力消費量・電力単価(円/Wh)との和をリースの月数で除算することで、月ごとに支払われる固定額が決定される。一方、変形例における電力消費量ベースの支払い金額は、機器の値段、補修などのサービス、予測電力消費量と、実際の電力消費量とに基づいて、月ごとの電力ベースによる支払い金額が決定される。
【0051】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の説明図である。第3実施形態では、図1の参加社1が参加社3となっており、電気機器101、102、103は、それぞれ参加社3の電気機器101b、102b、103bとなっている。電気機器101b、102b、103bはいずれも自動販売機であり、参加社3は飲料販売事業者である。その他の構成については図1と同様である。第1および第2実施形態と異なるのは、電気機器101b等の所有権が顧客でもプラットフォーム事業者でもなく、参加社3にある点と、顧客が電気機器101b、102b、103bについて参加社3とリース契約を結んで使用し、電気料金も負担する点である。
【0052】
自動販売機のリース契約内容は、普段機器のリース料がなくて、顧客は電力消費だけを支払う。顧客は、自分の施設で設置場所を提供する見返りに、飲料会社からその特定の自動販売機の売上高の手数料を払われる。飲料の調達と物流は、飲料会社が負担する。
【0053】
第3実施形態の効果について説明する。図7は、第3実施形態における再エネ取引の一態様を示す概略図である。ここでは、プラットフォーム141による申請代行の機能により、参加社3が、電気機器103bから収集したデータに基づいて再エネ認証トラッキングを受けた場合の例が示されている。図示の通り、プラットフォーム141は、再エネ認証を受けた電気機器101b~103bと、再エネ認証を受けていない電気機器104とについて、上述した電力ミックス販売を行い、顧客は、それに対して電力ミックス支払いを行うことになる。電気機器103bについては、上記のようにリース料が発生しない。そのため、顧客は、顧客の建物全体の電力消費量のうち、電気機器101b~103bを含む電力消費量に応じた料金をプラットフォーム141に支払う。飲料の売上高の手数料は、顧客と飲料会社の間で直接決済される。
【0054】
自動販売機のリース契約は、ファイナンシャルリースなので、参加社3にとってGHGプロトコルの「スコープ3」に該当する。そのため、参加社3は、再エネ証書を取得しないで電気機器103bについての再エネ認証トラッキングを受ける場合、金銭的貢献をプラットフォーム事業者に対して支払うことになる。その金銭的貢献は、状況に応じて形態が変わる。プラットフォーム141は、参加社3からの金銭的貢献(例えば支払われた金額)に応じて顧客に対してキャッシュバックを行うことができる。
【0055】
なお、第3実施形態において、再エネ認証を受けたことを表すデザインを電気機器101b、102b、103bに施すようにしてもよい。これにより、環境問題に関心のある人々の購買意欲を高めて飲料の売り上げを向上させることが期待される。
また、顧客が、上記デザインを施した電気機器101b、102b、103bによる飲料の売上高に応じて利益が得られるという契約としてもよい。また、顧客がコンビニエンスストア等の店舗を営んでいる場合、その店舗の前に上記デザインを施した電気機器101bを設置することで、顧客の店舗の集客にもつながることが期待される。
【0056】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の説明図である。第4実施形態では、図1の参加社1が参加社4となっており、電気機器101、102、103は、それぞれ参加社4の電気機器101c、102c、103cとなっている。電気機器101c、102c、103cはいずれも産業機械であり、参加社4はその産業機械を所有して顧客にリースする会社である。その他の構成については、図1と同様である。
【0057】
第1、2実施形態と異なるのは、電気機器101c等の所有権が、顧客でもプラットフォーム事業者でもなく、参加社4にある点と、顧客が電気機器101c、102c、103cについて参加社4とリース契約を結んで使用し、電気料金も負担する点である。
第3実施形態と異なるのは、顧客がリース料を普通に支払うし、リース契約が特定の条件を満たしたことで、ファイナンシャルリースではなくオペレーティングリースになる点である。つまり、GHGプロトコルによると電気機器の電力消費量に対しての温室効果ガス排出の会計方法が変わり、第3実施形態が「スコープ3」に含まれるファイナンシャルリースの例となり、第4実施形態が「スコープ2」に含まれるオペレーティングリースの例となる。
【0058】
第4実施形態の効果について説明する。図9は、第4実施形態における再エネ取引の一態様を示す概略図である。ここでは、プラットフォーム141による申請代行の機能により、参加社4が、電気機器103cから収集したデータに基づいて再エネ認証トラッキングと再エネ証書を受けた場合の例が示されている。図示の通り、プラットフォーム141は、再エネ認証を受けた電気機器101c~103cと、再エネ認証を受けていない電気機器104とについて、上述した電力ミックス販売を行い、顧客は、それに対して電力ミックス支払いを行うことになる。電気機器103cについては、上記のように、顧客がリース料を参加社4に支払う。顧客は、顧客の建物1全体の電力消費量のうち、電気機器101c~103cを含む電力消費量に応じた料金をプラットフォーム141に支払う。
【0059】
第4実施形態は、リース契約がオペレーティングリースとして会計されるので、第3実施形態と違って、電気機器の電力消費量に対しての温室効果ガス排出が参加社4にとってGHGプロトコルの「スコープ2」に含まれる。「スコープ3」にならないような条件として、参加社4は、温室効果排出の会計のために経営支配の判断方法が株式又は財政的な管理(equity share or financial control)を利用する。そのため、参加社4は、電気機器の電力消費量に比例して温室効果ガス排出を削減しようとすると、プラットフォーム141からの再エネ取引の定期的なレポートだけで足りず、再エネ証書を取得する必要が生じる。電気機器103cについて再エネ認証トラッキングを受け、再エネ証書を取得すると、参加社4は、金銭的貢献をプラットフォーム141に対して電気機器の電力消費量に比例して支払う。プラットフォーム141は、参加社4から支払われた金銭的貢献に応じて顧客に対してキャッシュバックを行うことができる。
【0060】
<実施例>
次に、第1ないし第4実施形態で説明した取引支援システムとして動作するプラットフォーム141の実施例について説明する。図10のハードウェア構成図に示されるように、プラットフォーム141は、CPU(Central Processing Unit)50、ROM(Read Only Memory)51、RAM(Random Access Memory)52、記憶装置53およびI/Oインタフェース54を有する情報処理装置とサーバ用プログラムとの協働により実施が可能となる。CPU50、ROM51、RAM52、記憶装置53およびI/Oインタフェース54は、バス55を介して通信可能に接続される。
【0061】
I/Oインタフェース54には、入力装置56および出力装置57が接続される。I/Oインタフェース54には、インターネットやイントラネット等の通信ネットワークが接続される。ブロックチェーン142を実現するための複数のコンピュータ端末、プラットフォーム事業者の管理システム、電気事業者の管理システム、参加社1~4の社内システム、再エネ証書を発行する機関の情報処理システム、再エネ取引を行う公的機関の情報処理システム等もまた、通信ネットワークに接続される。
【0062】
入力装置56は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル、USBメモリ等であるが、I/Oインタフェース54の入力ポートもまた、入力装置56の一例となる。出力装置57は、例えばディスプレイ、プリンタ、スピーカ、USBメモリ等であるが、I/Oインタフェース54の出力ポートもまた出力装置57の一例となる。
【0063】
記憶装置53は、例えばSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能なストレージ手段である。記憶装置53は、情報処理装置の内部に設けられる構成であってもよく、バス55と通信ケーブルを介して接続される外部装置であってもよい。記憶装置53は、また、通信ネットワーク上のクラウドに設けられるオンラインストレージであってもよい。
【0064】
CPU50は、例えば記憶装置53に格納されているサーバ用プログラム実行することにより、情報処理装置を、再エネ取引又は再エネ取引に関わる様々な機能実現の基盤(プラットフォーム)として動作させる。上述した再エネの取引支援システムは、複数の機能実現体の一例となる。ROM51には、CPU50の動作を可能にする基本制御プログラム、例えばオペレーティングシステムやファイルシステムなどが格納される。RAM52は、CPU50に対してワークエリアを提供する。CPU50は、I/Oインタフェース54を介して入力装置56から入力されたデータ等を受け付ける。CPU50は、また、I/Oインタフェース54を介して出力装置57により情報を出力する。CPU50は、また、I/Oインタフェース54を介して記憶装置53へのアクセス(書き込みおよび読み出し)を可能にする。
【0065】
図11は、プラットフォーム141の機能ブロック図である。プラットフォーム141は、入力部61、出力部62、制御部63、マッチング部64、申請等代行部65、料金算出部66、およびブロックチェーン処理部67の機能ブロックを有する。
【0066】
入力部61は、入力装置56を通じて入力された情報、例えばプラットフォーム事業者の管理システムからの指示、参加社1~4の社内システムからの各種申請代行要求ないし指示、電気事業者の管理システムからの請求ないし要求、ブロックチェーン142を実現する複数のコンピュータ端末からの処理報告、再エネ証書、再エネ取引の書証、建物内ルーター131および再エネ側ルーター132並びに非再エネ側ルーター133からのデータを受け付ける入力手段として機能する。入力された情報は、制御部63による制御のもと、記憶装置53に蓄積され、適宜読み出される。
【0067】
出力部62は、出力装置57を通じて出力する情報、例えばブロックチェーン142への各種情報および保存指示、プラットフォーム事業者の管理端末や参加社1~4の社内システムへの各種報告(再エネ証書や再エネ取引を含む)、電気事業者の管理システムへの応答、記憶装置53に蓄積されている各種情報を出力する出力手段として機能する。図11の例においては、顧客情報、発電機情報、履歴情報及び認証情報(あるいは認証データ)が蓄積されている。出力部62は、情報出力時にそれを図示しないログデータとして保存する。
【0068】
マッチング部64は、上述したマッチングを行う保証手段として機能する。
【0069】
申請等代行部65は、参加社1~4の要請に応じて、計量対象となりその計量結果が判明している電気機器101~103に対する再エネ証書の申し込み、取得および保管を代行したり、再エネ取引の申請および申請後の書面受領を代行する申請等代行手段として機能する。
【0070】
料金算出部66は、計量対象となる電気機器101~103、101a~103a、101b~103b、101c~103cの電力消費量のほかに計量対象外となる電気機器104の電力消費量との合計電力消費量が計量される場合、合計電力消費量、電気機器101~103、101a~103a、101b~103b、101c~103cの電力消費量及び再エネ発電機161の発電量に基づいて電気機器101~103、101a~103a、101b~103b、101c~103cの電力消費に対して当該電気機器の使用者が負担すべき料金を算出する料金算出手段として機能する。
【0071】
計量対象となる電気機器が再エネ消費量の認証を受けた事業者又は当該事業者から販売された他の事業者から使用者に販売され、あるいは、貸与される場合もある。この場合、料金算出部66は、認証された再エネ消費量に応じて使用者が負担すべき電気料金を減額する機能も有する。なお、料金算出部66の電気料金の算出態様はさまざまであり、例えば、使用者が負担すべき電気料金を認証された再エネ消費量に拘わらず固定額を減額するようにしてもよい。このようにすれば、料金算出の態様は、よりシンプルになり、顧客数や電気事業者数が増えても、それに伴う処理量の肥大化が抑制される。又、プラットフォーム事業者が参加社からの金銭的貢献に応じて再エネ認証を受けた電気機器の利用者にキャッシュバックを行わない事にすると、それとも貢献が金銭的ではないと、その機能を利用しない可能性もある。
【0072】
ブロックチェーン処理部67は、計量対象となる電気機器101~103、101a~103a、101b~103b、101c~103cの電力消費量、発電量、および認証された再エネ消費量をブロックチェーン142に保存するブロックチェーン処理手段として機能する。保存に際しては、顧客の再エネ取引の回数に応じて更新されるハッシュ値を含むブロックを作成していくことになる。ブロックチェーン処理部67は、再エネ消費量だけでなく、プラットフォーム141が関与した再エネ取引や再エネ取引のための根拠情報をブロックチェーン142に保存するようにしてもよい。
【0073】
制御部63は、記憶装置53への情報の格納および読み出しを制御するとともに、入力部61、出力部62、マッチング部64、申請等代行部65、料金算出部66、ブロックチェーン処理部67の起動実行のタイミングを統括的に制御する。
【0074】
<再エネ消費量の保証方法>
再エネ取引の支援において、プラットフォーム141としての取引支援システムが果たす役割は様々であるが、上述した第1~第4実施形態においても共通に必要になるのは、再エネ消費量を保証するデータである。以下、図12を参照して、再エネ消費量の保証方法の処理ステップ例を説明する。この処理ステップは、制御部63が主体的に実行する。
【0075】
制御部63は、計量対象となる電気機器101等の電力消費量を計量する(S101)。制御部63は、また、電気機器101等に対して再エネ発電機161の発電量を表す発電量データを受領する(S102)。そして、受領した発電量データが表す発電量が、所定時間における計量された電力消費量に対して所定割合以上合致するかどうかを計測し(S103)、所定割合以上合致するかを判別する(S104)。合致しない場合(S104:N)、制御部63は処理を終了する。合致する場合(S104:Y)、制御部63は、当該発電量を電気機器101等が消費した再エネ消費量であることを保証するデータ(保証データ)を出力し(S105)、処理を終了する。この保証データは、その根拠情報がブロックチェーン142に保存され、誰でも何時でも客観的に合致の有無を判別できることに起因する。そのため、保証データは、再エネ取引の申請の根拠情報として使用することができ、再エネ取引の利用促進を図ることができる。
【0076】
<変形例>
本開示では、上述の内容以外でも様々な変形で実施することが可能である。例えば、第1~第4実施形態では、再エネ取引のために計量対象となる電気機器101等について、予めIoTメーター111等が当該電気機器101等と一体不可分に設けられている場合の例を説明したが、既に販売されている非再エネを用いた電気機器104等に対して事後的にIoTメーターを一体化させて取り付けることで、当該電気機器104等に対して再エネ取引を受けることが可能である。このような変形例は、電気機器が第2および第3実施形態で説明したようなリース物件(レンタル物件であってもよい)である場合に有用な手段となり得る。
【0077】
第1~第4実施形態では、再エネ取引の根拠情報等をブロックチェーン142に保存する例について説明したが、唯一絶対性が保証される他の保存手段、例えば公的機関が提供する機密情報ストレージ手段に保存しても本発明は、実施が可能である。
【0078】
第1~第4実施形態では、参加社1~4からプラットフォーム141への貢献が金銭的貢献である例を説明したが、金銭的貢献に限らず、役務支援であったり、技術の供与など、非金銭的貢献であってもよい。又、第1~3実施形態のように電気機器の電力消費に対しての温室効果ガス排出がGHGプロトコルの「スコープ3」に該当したとしても、金銭的貢献は電気機器ごとに証明された電力量に比例して設定することも選択肢としてある。又、第4のように自動販売機の場合、飲料売り上げの手数料率の増加も可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12