(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032586
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、およびこれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20230302BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138813
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江頭 友弘
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290BD01
2H290BF24
2H290DA01
2H290DA03
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA05
4J043SA06
4J043SB02
4J043TA22
4J043TB02
4J043UA011
4J043UA022
4J043UA042
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA381
4J043UB022
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB161
4J043UB211
4J043UB242
4J043UB282
4J043UB302
4J043XA13
4J043ZB23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好なコントラストおよび残像特性を有し、かつ、蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子を形成できる液晶配向膜を提供すること。
【解決手段】式(1)で表されるジアミンと、特定の一般構造式で表されるテトラカルボン酸二無水物類の少なくとも1つを同一ポリマー内に用いることで、液晶配向性の高い液晶配向膜が得られる。この液晶配向膜を用いることで、良好なコントラストおよび残像特性を有し、かつ、蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子が得られる。
式(1)において、R
1及びR
2は各々独立して水素原子等であり、Xは各々独立してハロゲン原子等であり、nは0から4の整数を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーと溶剤とを含む液晶配向剤であって、前記ポリマーの少なくとも1つがテトラカルボン酸二無水物類とジアミン類を反応させてなるポリマーであり、
前記ジアミン類が式(1)で表される化合物の少なくとも1つを含み、前記テトラカルボン酸二無水物類が式(2)または(3)で表される化合物およびその誘導化合物からなる群から選ばれる化合物の少なくとも1つを含む液晶配向剤。
式(1)において、R
1及びR
2は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基であり、R
1とR
2は一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよく、
Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基であり、
nは0から4の整数を表し、
式(2)および式(3)において、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1から6のアルキル基であり、式(3)において、Wは炭素数1~12のアルキレン基であり、前記アルキレン基の-(CH
2)
2-の隣り合わない1つ以上が-O-または-NH-のいずれかで置き換えられていてもよく、
式(1)、式(2)および式(3)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できることを表す。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、式(1-2)で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
式(1-2)において、R
1及びR
2は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基であり、R
1とR
2は一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。
【請求項3】
前記式(1)または式(1-2)において、2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置している、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記テトラカルボン酸二無水物類が、式(2-1)または式(3-1)で表される化合物およびその誘導化合物からなる群から選ばれる化合物の少なくとも1つを含む請求項1~3のいずれかに記載の液晶配向剤。
式(3-1)において、mは1~8の整数である。
【請求項5】
前記ジアミン類が、式(4)で表される化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
式(4)において、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1から6のアルキル基であり、kは1から6の整数を表す。
【請求項6】
前記式(4)で表される化合物が、式(4-1)で表される化合物である、請求項5に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
さらに、添加剤を含む請求項1~6のいずれかに記載の液晶配向剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶配向膜を有する液晶素子。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶配向剤を基板に塗布する工程と、その塗膜に偏光紫外線を照射する工程とを含む、液晶配向膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、およびこれを用いた液晶表示素子に関する。詳しくは、光配向方式の液晶配向膜(以降、「光配向膜」と称することがある)を形成するための液晶配向剤、この液晶配向剤を用いて形成される光配向方式の液晶配向膜とその製造方法、そして、この液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。さらには、前記液晶配向剤に用いられるポリアミック酸等のポリマー、およびその原料となるテトラカルボン酸二無水物類やジアミン類に関する。
【0002】
液晶表示素子として、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、VA(Vertical Alignment)モード等、様々な駆動方式のものが知られている。これらの液晶表示素子は、テレビ、携帯電話等、各種電子機器の画像表示装置に応用されており、さらなる表示品位の向上を目指して開発が進められている。具体的には、液晶表示素子の性能の向上は、駆動方式、素子構造の改良のみならず、素子に使用される構成部材によっても達成される。そして、液晶表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は表示品位に係わる重要な材料の1つであり、液晶表示素子の高品位化の要求に応えるべく、この液晶配向膜についても盛んに研究が進められている。
【0003】
ここで、液晶配向膜は、液晶表示素子の液晶層の両側に設けられた一対の基板上に、該液晶層に接して設けられ、液晶層を構成する液晶分子を、基板に対して一定の規則性を持って配向させる機能を有する。液晶配向性の高い液晶配向膜を用いることにより、コントラストが高く、残像特性が改善された液晶表示素子を実現することができる(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
こうした液晶配向膜の形成には、現在、ポリアミック酸、可溶性のポリイミドもしくはポリアミック酸エステルを有機溶剤に溶解させた溶液(ワニス)が主に用いられている。これらのワニスにより液晶配向膜を形成するには、ワニスを基板に塗布した後、加熱等により塗膜を固化してポリイミド系液晶配向膜を形成し、必要に応じて前述の表示モードに適する配向処理を施す。配向処理方法としては、布などで配向膜の表面を擦ってポリマー分子の方向を整えるラビング法と、配向膜に直線偏光の紫外線を照射することにより、ポリマー分子に光異性化や二量化、光転移等の光化学変化を起こさせて膜に異方性を付与する光配向法が知られており、このうち光配向法は、ラビング法に比べて配向の均一性が高く、また、非接触の配向処理法であるため膜に傷が付かないことや、発塵や静電気等の液晶表示素子の表示不良を発生させる原因を低減できる等の利点がある。
上記の光配向法のひとつとして、分解型の光配向法が知られている。この分解型光配向法は、例えば、ポリイミド膜に偏光紫外線を照射することで、分子構造の紫外線吸収の偏光方向依存性を利用して異方的な分解を生じさせ、分解せずに残されたポリイミドにより液晶を配向させる方法である(例えば、特許文献3を参照)。
また、別の光配向法として、特定のシクロプロパン構造を有するジアミン化合物をジアミンモノマーに用いて合成したポリアミック酸やその誘導体を液晶配向剤に用いることにより、液晶配向性が高い液晶配向膜が得られ、その液晶配向膜を用いることにより、高いコントラストを示す液晶表示素子が実現することが報告されている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-197999号公報
【特許文献2】国際公開第2013/157463号
【特許文献3】特開2007-248637号公報
【特許文献4】特許第6907424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、高品位な液晶表示素子の要求はますます高まっており、良好なコントラスト、残像特性を示し、蓄積した電荷の緩和が速いことが求められている。
前述した通り、コントラストが高く、残像特性が良好な液晶表示素子を実現することができるため、液晶配向性の高い液晶配向膜が求められている。また、液晶表示素子に印加された直流電圧により電荷が蓄積すると、焼き付きが発生することにより表示品位が低下する。そのため、蓄積電荷を速く緩和することができる液晶配向膜が要求されている。
【0007】
そこで本発明者らは、良好なコントラストおよび残像特性を有し、かつ、蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子を形成できる液晶配向膜を提供すること、そのような液晶配向膜を形成できる液晶配向剤を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、式(1)で表されるジアミン類と、式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類の少なくとも1つを同一ポリマー内に用いることで、液晶配向性の高い液晶配向膜が得られること、そして、この液晶配向膜を用いることで、良好なコントラストおよび残像特性を有し、かつ、蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の構成を含む。
【0009】
[1] 少なくとも1つのポリマーと溶剤とを含む液晶配向剤であって、前記ポリマーの少なくとも1つがテトラカルボン酸二無水物類とジアミン類を反応させてなるポリマーであり、
前記ジアミン類が式(1)で表される化合物の少なくとも1つを含み、前記テトラカルボン酸二無水物類が式(2)または(3)で表される化合物およびその誘導化合物からなる群から選ばれる化合物の少なくとも1つを含む液晶配向剤。
式(1)において、R
1及びR
2は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基であり、R
1とR
2は一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよく、
Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基であり、
nは0から4の整数を表し、
式(2)および式(3)において、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1から6のアルキル基であり、式(3)において、Wは炭素数1~12のアルキレン基であり、前記アルキレン基の-(CH
2)
2-の隣り合わない1つ以上が-O-または-NH-のいずれかで置き換えられていてもよく、
式(1)、式(2)および式(3)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できることを表す。
[2] 前記式(1)で表される化合物が、式(1-2)で表される化合物である、[1]に記載の液晶配向剤。
式(1-2)において、R
1及びR
2は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基であり、R
1とR
2は一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。
[3] 前記式(1)または式(1-2)において、2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置している、[1]または[2]に記載の液晶配向剤。
[4] 前記テトラカルボン酸二無水物類が、式(2-1)または式(3-1)で表される化合物およびその誘導化合物からなる群から選ばれる化合物の少なくとも1つを含む[1]~[3]のいずれかに記載の液晶配向剤。
式(3-1)において、mは1~8の整数である。
[5] 前記ジアミン類が、式(4)で表される化合物を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
式(4)において、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1から6のアルキル基であり、kは1から6の整数を表す。
[6] 前記式(4)で表される化合物が、式(4-1)で表される化合物である、[5]に記載の液晶配向剤。
[7] さらに、添加剤を含むことを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の液晶配向剤。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
[9] [8]に記載の液晶配向膜を有する液晶素子。
[10] [1]~[7]のいずれか1項に記載の液晶配向剤を基板に塗布する工程と、その塗膜に偏光紫外線を照射する工程とを含む、液晶配向膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶配向剤を使用することにより、液晶配向性の高い液晶配向膜を得ることができる。また、この液晶配向膜を用いることにより、残像特性およびコントラストに優れており、蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。本発明の実施の一形態として、光反応性構造を有する化合物を使用することで、本発明の液晶配向剤を光配向用液晶配向剤とすることができる。光配向用液晶配向剤は、その膜を基板上に形成し、偏光紫外線を照射することで異方性を付与することができる液晶配向剤であり、本明細書中では単に「液晶配向剤」ということもある。また、光配向用液晶配向剤から形成された配向膜を光配向膜と言うこともあれば、単に配向膜と言うこともある。また、本発明において「テトラカルボン酸二無水物類」とは、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルまたはテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を指す。「テトラカルボン酸二無水物の誘導化合物」または単に「誘導化合物」とは、テトラカルボン酸ジエステルまたはテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を指す。また本発明においては、ジアミンおよびジヒドラジドを「ジアミン類」と称することもある。
【0012】
<式(1)で表されるジアミン化合物>
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物類とジアミン類を反応させてなるポリマーを含む液晶配向剤であり、前記ジアミン類は以下の式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つである感光性ジアミンを含む。
【0013】
式(1)において、R
1及びR
2は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基である。R
1とR
2は一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基であり、nは0から4の整数である。式(1)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できることを表す。
【0014】
以下に、各式のR1、R2及びXにおけるハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、メチレン基の置換基について説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
炭素数1から6のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を例示することができる。
炭素数1から6のハロアルキル基としては、上記の炭素数1から6のアルキル基における任意の位置にある任意の数の水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン原子の具体例については、R1、R2及びXにおけるハロゲン原子の具体例を参照することができる。ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数は、1から5であることが好ましく、1から4であることがより好ましく、1から3であることがさらに好ましい。ハロアルキル基の具体例として、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3-フルオロプロピル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基等を挙げることができる。
炭素数1から6のアルコキシ基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルコシキ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、1-メチルブチルオキシ基、1-エチルプロピルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、1-エチルブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等を例示することができる。
メチレン基の置換基としては、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子や炭素数1から4のアルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基又は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、炭素数1から4のアルキル基もしくは炭素数1から4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基等を挙げることができる。
【0015】
式(1)で表されるジアミン化合物の好ましい例として、以下の式(1-1)で表される化合物が挙げられる。
式(1-1)における、R
1、R
2、Xおよびnは、式(1)におけるR
1、R
2、Xおよびnと同義である。環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基についても、式(1)の定義と同じである。式(1-1)で示されるジアミン化合物を用いて合成されたポリマーは、アミノ基がエステルに対してパラ位に位置しているため、直線性が高くなり、そのポリマーを用いた液晶配向膜は高い異方性を発現することができる。
【0016】
式(1-1)で示されるジアミン化合物の中でも、下記式(1-2)で示されるジアミン化合物が、その製造における原料入手の容易さの観点から有用である。
【0017】
式(1-2)におけるR
1及びR
2は、式(1)におけるR
1及びR
2と同義である。
【0018】
また、式(1)で表される化合物の中でも、シクロプロパン環上の2つのエステルがトランス配置しているものが好ましい。このような化合物は、直線性が高くなり、液晶配向膜の高い異方性に寄与する。式(1-2)を例に説明すると、式(1-2A)で表される化合物およびそのエナンチオマー(鏡像異性体)が好ましい。式(1-A)で表される化合物とそのエナンチオマーの混合物をポリマーの原料に用いてもよいし、当量混合してラセミ体としてポリマーの原料に用いてもよい。
【0019】
式(1-2A)におけるR
1及びR
2は、式(1)におけるR
1及びR
2と同義である。
【0020】
式(1)で表される化合物の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
【0021】
例えば式(1-2-1a)の化合物と化合物(1-2-1b)の関係のように、同じ番号でa、bと付している化合物は、それぞれエナンチオマーの関係にある。本明細書において、互いにエナンチオマーの関係にある化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物」と称することもある。このようなジアミン異性体混合物をジアミン化合物(1)として原料組成物に用いることもできる。これらの中でも、原料の入手の容易さおよび特性の点から式(1-2-1a)、式(1-2-1b)の化合物が好ましい。
【0022】
<式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類>
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物類とジアミン類を反応させてなるポリマーを含む液晶配向剤であり、テトラカルボン酸二無水物類として式(2)または式(3)で表される化合物およびその誘導化合物からなる群から選択された少なくとも1つを含む。本明細書において、式(2)または式(3)で表される化合物およびその誘導化合物を、「式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類」と称することがある。
式(2)および式(3)において、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1から6のアルキルであり、式(3)において、Wは炭素数1~12のアルキレンであり、前記アルキレンの-(CH
2)
2-の隣り合わない1つ以上が-O-および-NH-のいずれかで置き換えられていてもよく、式(2)および式(3)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できることを表す。
【0023】
以下に、式(2)および式(3)のR3における置換もしくは無置換の炭素数1から6のアルキル基について説明する。
炭素数1から6のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。無置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を例示することができる。
置換の炭素数1から6のアルキル基としては、上記の炭素数1から6のアルキル基における任意の位置にある任意の数の水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン原子の具体例については、式(1)のR1、R2及びXにおけるハロゲン原子の具体例を参照することができる。ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数は、1から5であることが好ましく、1から4であることがより好ましく、1から3であることがさらに好ましい。ハロアルキル基の具体例として、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3-フルオロプロピル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基等を挙げることができる。
【0024】
式(2)または式(3)で表される化合物としては、以下の式(2-1)または式(3-1)で表される化合物が挙げられる。
式(3-1)において、mは1から8の整数である。
【0025】
<式(4)で表されるジアミン類>
本発明のポリマーの原料には、式(4)で表されるジアミン類をさらに含んでもよい。蓄積電荷の緩和速度をさらに向上させることができる。
式(4)において、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1から6のアルキル基であり、kは1から6の整数を表す。
【0026】
式(4)で表される化合物としては、以下の式(4-1)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
<式(1)、式(2)、式(3)で表される化合物の製造方法>
本発明の式(1)で表される化合物の製造方法は、特許文献4を参照することができる。本発明の式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物の製造方法は、Polymer, 2008, 49, 1191-1198を参照することができる。
【0028】
<ポリマー>
本発明で液晶配向剤に用いる本発明のポリマーは、原料として式(1)で表されるジアミン類の少なくとも1つと、式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類の少なくとも1つを用いて得られた、ポリアミック酸、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸-ポリアミドコポリマー、およびポリアミドイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つである。本明細書中では、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸-ポリアミドコポリマー、およびポリアミドイミドを、「ポリアミック酸誘導体」と称することもある。
【0029】
以下に、ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体について詳細を説明する。
【0030】
ここで、ポリアミック酸は、例えば、式(AN)で表されるテトラカルボン酸二無水物と式(DI)で表されるジアミンとの重合反応により合成されるポリマーであり、式(PAA)で表される構成単位を有する。ポリアミック酸を含む液晶配向剤は、液晶配向膜を形成させる工程で加熱焼成すると、ポリアミック酸がイミド化され、式(PI)で表される構成単位を有するポリイミド液晶配向膜を形成することができる。
【0031】
式(AN)、式(PAA)、および式(PI)において、X1は4価の有機基である。式(DI)、式(PAA)、および式(PI)において、X2は2価の有機基である。X1の好ましい範囲と具体例については、式(1)、式(2)、および下記のその他のテトラカルボン酸二無水物の欄に記載したテトラカルボン酸二無水物類の対応する構造を参照することができる。X2の好ましい範囲と具体例については、下記の式(4)で表されるジアミン類、および下記のその他のジアミン類の欄に記載したジアミンまたはジヒドラジドの対応する構造についての記載を参照することができる。
【0032】
ポリアミック酸誘導体は、ポリアミック酸の一部分を他の原子または原子団に置き換えて特性を改変したポリマーであり、特に液晶配向剤に用いる溶剤への溶解性を高くしたものであることが好ましい。このようなポリアミック酸誘導体としては、具体的には1)ポリアミック酸のすべてのアミノ基とカルボキシル基とが脱水閉環反応したポリイミド、2)部分的に脱水閉環反応した部分ポリイミド、3)ポリアミック酸のカルボキシル基がエステルに変換されたポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物化合物に含まれる酸二無水物の一部を有機ジカルボン酸に置き換えて反応させて得られたポリアミック酸-ポリアミドコポリマー、さらに5)該ポリアミック酸-ポリアミドコポリマーの一部または全部を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。これらの誘導体のうち、例えばポリイミドとしては、上記式(PI)で表される構成単位を有するものを挙げることができ、ポリアミック酸エステルとしては、下記式(PAE)で表される構成単位を有するものを挙げることができる。
式(PAE)において、X
1は4価の有機基であり、X
2は2価の有機基であり、Yはそれぞれ独立してアルキル基である。X
1、X
2の好ましい範囲と具体例については、式(PAA)におけるX
1、X
2についての記載を参照することができる。Yは炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、またはターシャリーブチル基がより好ましい。
【0033】
ポリアミック酸の合成に用いる原料組成物中の、テトラカルボン酸二無水物類およびジアミン類は、それぞれ1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0034】
前述の本発明のポリアミック酸を、ポリアミック酸誘導体であるポリイミドとする場合には、得られたポリアミック酸溶液を、脱水剤である無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物、および脱水閉環触媒であるトリエチルアミン、ピリジン、コリジンなどの三級アミンとともに、温度20~150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることができる。あるいは、得られたポリアミック酸溶液から多量の貧溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒やグリコール系溶媒)を用いてポリアミック酸を析出させ、析出させたポリアミック酸を、トルエン、キシレン等の溶媒中で、上記の脱水剤および脱水閉環触媒とともに、温度20~150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることもできる。
【0035】
前記イミド化反応において、脱水剤と脱水閉環触媒の割合は、0.1~10(モル比)であることが好ましい。脱水剤と脱水閉環触媒の合計使用量は、当該ポリアミック酸の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物類のモル量の合計に対して1.5~10倍モルであることが好ましい。このイミド化反応に用いる脱水剤、触媒量、反応温度および反応時間を調整することによって、イミド化の程度を制御することができ、これによりポリアミック酸の一部のみがイミド化した部分ポリイミドを得ることができる。得られたポリイミドは、反応に用いた溶剤と分離し、他の溶剤に再溶解させて液晶配向剤として使用することもできるし、あるいは溶剤と分離することなく液晶配向剤として使用することもできる。
【0036】
ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸と水酸基含有化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等とを反応させることにより合成する方法で得ることができる。あるいは、テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸二無水物類である、テトラカルボン酸ジエステルもしくはテトラカルボン酸ジエステルジクロライドと、ジアミン類とを反応させることにより合成する方法で得ることができる。テトラカルボン酸ジエステルは、例えばテトラカルボン酸二無水物を2当量のアルコールと反応させ開環させて得ることができ、テトラカルボン酸ジエステルジクロライドは、テトラカルボン酸ジエステルを2当量の塩素化剤(例えば塩化チオニルなど)と反応させることで得ることができる。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
【0037】
本発明の液晶配向剤はこれらのポリアミック酸またはその誘導体、すなわちポリアミック酸、ポリアミック酸エステルおよびこれらをイミド化して得られるポリイミドのうちの1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0038】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体は、ポリイミドの膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸またはその誘導体と同様に製造することができる。テトラカルボン酸二無水物類の総仕込み量は、ジアミン類の合計1モルに対して、0.9~1.1モルとすることが好ましい。
【0039】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、5,000~500,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましい。ポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定から求めることができる。
【0040】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR(赤外分光法)、NMR(核磁気共鳴分析)で分析することによりその存在を確認することができる。またKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液による前記ポリアミック酸またはその誘導体の分解物の有機溶剤による抽出物をGC(ガスクロマトグラフィ)、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)またはGC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析法)で分析することにより、使用されているモノマーを確認することができる。
【0041】
<その他のジアミン類>
本発明のポリマーの原料に用いる式(1)または式(4)で表される化合物以外のジアミン類としては、公知のジアミン類から制限されることなく選択することができる。
【0042】
既知のジアミン類の例を以下の式(DI-1)~(DI-16)で表される化合物として示す。
上記の式(DI-1)において、G
20は、-CH
2-または式(DI-1-a)で表される基である。G
20が-CH
2-であるとき、m個の-CH
2-の少なくとも1つは-NH-、-O-に置き換えられてもよく、m個の-CH
2-の少なくとも1つの水素原子は水酸基またはメチル基で置換されてもよい。mは1~12の整数である。DI-1におけるmが2以上であるとき、複数のG
20は互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、G
20が式(DI-1-a)であるとき、mは1である。
式(DI-1-a)において、vはそれぞれ独立して1~6の整数である。
【0043】
式(DI-3)、式(DI-6)および式(DI-7)において、G21はそれぞれ独立して単結合、-NH-、-NCH3-、-O-、-S-、-S-S-、-SO2-、-CO-、-COO-、-CONCH3-、-CONH-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-(CH2)m-、-O-(CH2)m-O-、-N(CH3)-(CH2)k-N(CH3)-、-(O-C2H4)m-O-、-O-CH2-C(CF3)2-CH2-O-、-O-CO-(CH2)m-CO-O-、-CO-O-(CH2)m-O-CO-、-(CH2)m-NH-(CH2)m-、-CO-(CH2)k-NH-(CH2)k-、-(NH-(CH2)m)k-NH-、-CO-C3H6-(NH-C3H6)n-CO-、または-S-(CH2)m-S-であり、mはそれぞれ独立して1~12の整数であり、kはそれぞれ独立して1~5の整数であり、nは1または2である。
式(DI-4)において、sはそれぞれ独立して0~2の整数である。
【0044】
式(DI-5)において、G33は単結合、-NH-、-NCH3-、-O-、-S-、-S-S-、-SO2-、-CO-、-COO-、-CONCH3-、-CONH-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-(CH2)m-、-O-(CH2)m-O-、-(O-C2H4)m-O-、-O-CH2-C(CF3)2-CH2-O-、-O-CO-(CH2)m-CO-O-、-CO-O-(CH2)m-O-CO-、-(CH2)m-NH-(CH2)m-、-CO-(CH2)k-NH-(CH2)k-、-(NH-(CH2)m)k-NH-、-CO-C3H6-(NH-C3H6)n-CO-、または-S-(CH2)m-S-、-N(Boc)-(CH2)e-N(Boc)-、-NH-(CH2)e-N(Boc)-、-N(Boc)-(CH2)e-、-(CH2)m-N(Boc)-CONH-(CH2)m-、-(CH2)m-N(Boc)-(CH2)m-、下記式(DI-5-a)または下記式(DI-5-b)で表される基であり、mはそれぞれ独立して1~12の整数であり、kはそれぞれ独立して1~5の整数であり、nは1または2であり、eはそれぞれ独立して2~10の整数である。Bocはt-ブトキシカルボニル基である。
【0045】
式(DI-6)および式(DI-7)において、G22はそれぞれ独立して単結合、-O-、-S-、-CO-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0046】
式(DI-2)~式(DI-7)中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、-F、-Cl、炭素数1~3のアルキル基、-OCH3、-OH、-CF3、-CO2H、-CONH2、-NHC6H5、フェニル基、またはベンジル基で置換されてもよく、加えて式(DI-4)においては、ベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、下記式(DI-4-a)~(DI-4-i)のいずれかで表される基の群から選ばれる1つで置換されていてもよく、式(DI-5)においては、G33が単結合の時にはベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は-NHBocまたは-N(Boc)2で置換されてもよい。
【0047】
環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できることを表す。
そして、シクロヘキサン環またはベンゼン環への-NH
2の結合位置は、G
21、G
22またはG
33の結合位置を除く、結合可能な位置である。
式(DI-4-a)および式(DI-4-b)において、R
20はそれぞれ独立して水素原子または-CH
3である。式(DI-4-f)および式(DI-4-g)において、mはそれぞれ独立して0~12の整数であり、Bocはt-ブトキシカルボニル基である。
【0048】
式(DI-5-a)において、qはそれぞれ独立して0~6の整数である。R
44は水素原子、-OH、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0049】
式(DI-11)において、rは0または1である。式(DI-8)~式(DI-11)において、環に結合する-NH
2は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できる。
【0050】
式(DI-12)において、R
21およびR
22は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基またはフェニル基であり、G
23はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基またはアルキル基で置換されたフェニレン基であり、wは1~10の整数である。
式(DI-13)において、R
23はそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基または-Clであり、pはそれぞれ独立して0~3の整数であり、qは0~4の整数である。
式(DI-14)において、環Bは単環の複素環式芳香族基であり、R
24は水素原子、-F、-Cl、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、qは0~4の整数である。qが2以上であるとき、複数のR
24は互いに同一であっても異なっていてもよい。式(DI-15)において、環Cは複素環式芳香族基または複素環式脂肪族基である。式(DI-16)において、G
24は単結合、炭素数2~6のアルキレン基または1,4-フェニレン基であり、rは0または1である。そして、環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できることを表す。式(DI-13)~式(DI-16)において、環に結合する-NH
2は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できる。
【0051】
式(DI-1)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-1-1)~式(DI-1-9)に示す。
式(DI-1-7)および式(DI-1-8)において、kはそれぞれ独立して、1~3の整数である。式(DI-1-9)において、vはそれぞれ独立して1~6の整数である。
【0052】
式(DI-2)~式(DI-3)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-2-1)、式(DI-2-2)、式(DI-3-1)~式(DI-3-3)で表される化合物として示す。
【0053】
式(DI-4)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-4-1)~式(DI-4-27)に示す。
式(DI-4-20)および(DI-4-21)において、mはそれぞれ独立して1~12の整数である。
【0054】
式(DI-5)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-5-1)~式(DI-5-50)で表される化合部として示す。
式(DI-5-1)において、mは1~12の整数である。
【0055】
式(DI-5-12)および式(DI-5-13)において、mはそれぞれ独立して1~12の整数である。
【0056】
式(DI-5-16)において、vは1~6の整数である。
【0057】
【0058】
式(DI-5-35)~式(DI-5-37)、および式(DI-5-39)において、mはそれぞれ独立して1~12の整数であり、式(DI-5-38)および式(DI-5-39)において、kはそれぞれ独立して1~5の整数であり、式(DI-5-40)において、nは1または2の整数である。
【0059】
式(DI-5-42)~式(DI-5-44)において、eはそれぞれ独立して2~10の整数であり、式(DI-5-45)においてR
43はそれぞれ独立して水素原子、-NHBoc、または-N(Boc)
2である。式(DI-5-42)~式(DI-5-44)、および式(DI-5-45)のR
43において、Bocはt-ブトキシカルボニル基である。
【0060】
【0061】
式(DI-6)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-6-1)~式(DI-6-7)で表される化合物として示す。
【0062】
式(DI-7)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-7-1)~式(DI-7-11)に示す。
式(DI-7-3)および式(DI-7-4)において、mはそれぞれ独立して1~12の整数であり、nはそれぞれ独立して1または2である。
【0063】
【0064】
式(DI-8)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-8-1)~式(DI-8-4)で表和される化合物として示す。
【0065】
式(DI-9)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-9-1)~式(DI-9-3)に示す。
【0066】
式(DI-10)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-10-1)、式(DI-10-2)で表される化合物として示す。
【0067】
式(DI-11)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-11-1)~式(DI-11-3)で表される化合物として示す。
【0068】
式(DI-12)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-12-1)で表される化合物として示す。
【0069】
式(DI-13)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-13-1)~式(DI-13-13)で表されるか化合物として示す。
【0070】
式(DI-14)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-14-1)~式(DI-14-9)で表される化合物として示す。
【0071】
式(DI-15)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-15-1)~式(DI-5-12)で表される化合物として示す。
【0072】
式(DI-16)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-16-1)に示す。
【0073】
次に、本発明のポリマーの原料に用いるジヒドラジドについて説明する。既知のジヒドラジドとしては、以下の式(DIH-1)~(DIH-3)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
式(DIH-1)において、G
25は単結合、炭素数1~20のアルキレン基、-CO-、-O-、-S-、-SO
2-、-C(CH
3)
2-、または-C(CF
3)
2-である。
式(DIH-2)において、環Dはシクロヘキサン環、ベンゼン環またはナフタレン環であり、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基、またはフェニル基で置換されてもよい。
式(DIH-3)において、環Eはそれぞれ独立してシクロヘキサン環、またはベンゼン環であり、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基、またはフェニル基で置換されてもよい。Yは単結合、炭素数1~20のアルキレン基、-CO-、-O-、-S-、-SO
2-、-C(CH
3)
2-、または-C(CF
3)
2-である。
式(DIH-2)および式(DIH-3)において、環に結合する-CONHNH
2は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できる。
【0074】
式(DIH-1)~(DIH-3)のいずれかで表される化合物の例を以下の式(DIH-1-1)、式(DIH-1-2)、式(DIH-2-1)~式(DIH-2-3)、式(DIH-3-1)~式(DIH-3-6)で表される化合物として示す。
式(DIH-1-2)において、mは1~12の整数である。
【0075】
【0076】
上記ジアミン類は、VHR、残像特性等の特性を向上させる目的で取捨選択して使用することが好ましい。以下に、液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。
【0077】
液晶配向性を向上させることを重視する場合には、式(DI-1-3)、式(DI-5-1)、式(DI-5-5)、式(DI-5-9)、式(DI-5-12)、式(DI-5-13)、式(DI-5-29)、式(DI-6-7)、式(DI-7-3)、または式(DI-11-2)で表される化合物を用いるのが好ましい。式(DI-5-1)においては、m=2~8が好ましく、m=4~8がより好ましい。式(DI-5-12)においては、m=2~6が好ましく、m=5がより好ましい。式(DI-5-13)においては、m=1または2が好ましく、m=1がより好ましい。
【0078】
透過率を向上させることを重視する場合には、式(DI-1-3)、式(DI-2-1)、式(DI-5-1)、式(DI-5-5)、式(DI-5-24)、または式(DI-7-3)で表されるジアミンを用いるのが好ましく、式(DI-2-1)で表される化合物がより好ましい。式(DI-5-1)においては、m=2~8が好ましく、m=8がより好ましい。式(DI-7-3)においては、m=2または3、n=1または2が好ましく、m=3、n=1がより好ましい。
【0079】
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(DI-2-1)、式(DI-4-1)、式(DI-4-2)、式(DI-4-10)、式(DI-4-15)、式(DI-4-22)、式(DI-5-1)、式(DI-5-28)、式(DI-5-30)、または式(DI-13-1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI-2-1)、式(DI-5-1)、または式(DI-13-1)で表されるジアミンがより好ましい。式(DI-5-1)においては、m=1が好ましい。式(DI-5-30)においては、k=2が好ましい。
【0080】
液晶表示素子の蓄積電荷の緩和速度を向上させることを重視する場合には、式(DI-4-1)、式(DI-4-2)、式(DI-4-10)、式(DI-4-15)、式(DI-5-1)、式(DI-5-12)、式(DI-5-13)、式(DI-5-28)、式(DI-4-20)、式(DI-4-21)、または式(DI-16-1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI-4-1)、式(DI-5-1)、または式(DI-5-13)で表される化合物がより好ましい。式(DI-5-1)において、m=2~8が好ましく、m=4~8がより好ましい。式(DI-5-12)においては、m=2~6が好ましく、m=5がより好ましい。式(DI-5-13)においては、m=1または2が好ましく、m=1がより好ましい。
【0081】
上記ジアミン類以外にも、プレチルト角を大きくする目的に適した、大きな側鎖基を有するジアミンを使用することもできる。本発明の化合物は横電界型液晶表示素子(例えば、IPSモードやFFSモードの液晶表示素子)に用いる液晶配向剤に好適に用いることができるが、大きな側鎖基を有するジアミンを併用して、プレチルト角を大きくすることも可能である。プレチルト角を大きくする目的に適した側鎖基をもったジアミンとしては、特許文献4に記載の、プレチルト角を大きくする目的に適したジアミンに関する記載を参照することができる。
【0082】
本発明のポリマーの原料として使用する原料組成物において、ジアミン類の一部がモノアミンおよびモノヒドラジドからなる群から選択された少なくとも1つに置き換えられていてもよい。置き換える割合は、ジアミン類に対するモノアミンおよびモノヒドラジドからなる群から選択された少なくとも1つの比率が40モル%以下の範囲であることが好ましい。このような置き換えは、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。このため、このような置き換えによって、得られるポリマー(ポリアミック酸またはその誘導体)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノアミンまたはモノヒドラジドで置き換えられてもよいジアミン類は、本発明の効果が損なわれなければ、1種でも2種以上でもよい。前記モノアミンとしては、例えばアニリン、4-ヒドロキシアニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-エイコシルアミン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、および3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0083】
<その他のテトラカルボン酸二無水物類>
本発明のポリマーの原料に用いる式(2)または式(3)以外のテトラカルボン酸二無水物類としては、公知のテトラカルボン酸二無水物類から制限されることなく選択することができる。
【0084】
以下にテトラカルボン酸二無水物の例を挙げる。これらのテトラカルボン酸二無水物をテトラカルボン酸ジエステルやテトラカルボン酸ジエステルジクロライドに誘導した誘導化合物として、ポリマーの原料に用いてもよい。
【0085】
このようなテトラカルボン酸二無水物類は、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、および芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)の何れの群に属するものであってもよい。
【0086】
このようなテトラカルボン酸二無水物の例として、以下の式(AN-1)~式(AN-9)、式(AN-11)、式(AN-12)、式(AN-15)、式(AN-10-1)、式(AN-10-2)、および式(AN-16-1)~式(AN-16-17)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
[式(AN-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-1)において、G
11は単結合、炭素数1~12のアルキレン基、1,4-フェニレン基、または1,4-シクロヘキシレン基である。X
11はそれぞれ独立して単結合または-CH
2-である。G
12はそれぞれ独立して下記の3価の基のいずれかである。
G
12が>CH-であるとき、>CH-の水素原子はメチル基で置換されていてもよい。G
12が>N-であるとき、G
11は単結合および-CH
2-であることはなく、X
11は単結合であることはない。R
11はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基である。
【0088】
式(AN-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-1-1)~式(AN-1-15)で表される化合物を挙げることができる。
式(AN-1-2)および(AN-1-14)において、mはそれぞれ独立して1~12の整数である。
【0089】
[式(AN-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-2)において、R
61はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、またはフェニル基である。
【0090】
式(AN-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-2-1)~式(AN-2-3)で表される化合物を挙げることができる。
【0091】
[式(AN-3)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-3)において、環A
11はシクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0092】
式(AN-3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-3-1)、式(AN-3-2)で表される化合物を挙げることができる。
【0093】
[式(AN-4)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-4)において、G
13は単結合、-(CH
2)
m-、-O-、-S-、-C(CH
3)
2-、-SO
2-、-CO-、-C(CF
3)
2-、または下記式(G13-1)で表される2価の基であり、mは1~12の整数である。環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。G
13は環A
11の結合可能な炭素のいずれかと結合できる。
式(G13-1)において、G
13aおよびG
13bはそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CONH-、または-NHCO-で表される2価の基である。フェニレン基は、1,4-フェニレン基または1,3-フェニレン基であることが好ましい。
【0094】
式(AN-4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-4-1)~式(AN-4-31)で表される化合物を挙げることができる。
式(AN-4-17)において、mは1~12の整数である。
【0095】
【0096】
[式(AN-5)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-5)において、R
11はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基である。2つのR
11のうちベンゼン環におけるR
11は、ベンゼン環の置換可能な位置のいずれかに結合する。
【0097】
式(AN-5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-5-1)~式(AN-5-3)で表される化合物を挙げることができる。
【0098】
[式(AN-6)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-6)において、X
11はそれぞれ独立して単結合または-CH
2-である。X
12は-CH
2-、-CH
2CH
2-または-CH=CH-である。nは1または2である。nが2であるとき、2つのX
12は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0099】
式(AN-6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-6-1)~式(AN-6-12)で表される化合物を挙げることができる。
【0100】
[式(AN-7)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-7)において、X
11は単結合または-CH
2-である。
【0101】
式(AN-7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-7-1)、式(AN-7-2)で表される化合物を挙げることができる。
【0102】
[式(AN-8)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-8)において、X
11は単結合または-CH
2-である。R
12は水素原子、メチル基、エチル基、またはフェニル基である。環A
12はシクロヘキサン環またはシクロヘキセン環である。
【0103】
式(AN-8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-8-1)、式(AN-8-2)で表される化合物を挙げることができる。
【0104】
[式(AN-9)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-9)において、rはそれぞれ独立して0または1である。
【0105】
式(AN-9)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-9-1)~式(AN-9-3)で表される化合物を挙げることができる。
【0106】
[式(AN-10-1)および式(AN-10-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【0107】
[式(AN-11)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-11)において、環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0108】
式(AN-11)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-11-1)~式(AN-11-3)で表される化合物を挙げることができる。
【0109】
[式(AN-12)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-12)において、環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0110】
式(AN-12)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-12-1)~式(AN-12-3)で表される化合物を挙げることができる。
【0111】
[式(AN-15)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN-15)において、wは1~10の整数である。
【0112】
式(AN-15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-15-1)~式(AN-15-3)で表される化合物を挙げることができる。
【0113】
上記以外のテトラカルボン酸二無水物として、下記の式(AN-16-1)~式(AN-16-17)で表される化合物が挙げられる。
【0114】
上記テトラカルボン酸二無水物において、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。液晶配向性をさらに向上させることを重視する場合には、式(AN-1-2)、式(AN-4-17)、式(AN-4-21)、式(AN-4-29)、または(AN-16-17)で表される化合物がより好ましく、式(AN-1-2)においては、m=4~8が好ましく、m=4、6または8がより好ましい。式(AN-4-17)においては、m=4~8が好ましく、m=4または8がより好ましい。
【0115】
液晶表示素子の透過率を向上させることを重視する場合には、式(AN-1-1)、式(AN-1-2)、式(AN-2-1)、式(AN-3-1)、式(AN-4-17)、式(AN-4-30)、式(AN-5-1)、式(AN-7-2)、式(AN-10-1)、式(AN-16-3)、または式(AN-16-4)で表される化合物が好ましく、中でも式(AN-1-2)においては、m=4~8が好ましく、式(AN-4-17)においては、m=4~8が好ましい。
【0116】
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(AN-1-1)、式(AN-1-2)、式(AN-3-1)、式(AN-4-17)、式(AN-4-30)、式(AN-7-2)、式(AN-10-1)、式(AN-16-3)、式(AN-16-4)、または式(AN-2-1)で表される化合物が好ましく、式(AN-1-2)においては、m=4~8が好ましく、式(AN-4-17)においては、m=4~8が好ましい。
【0117】
液晶表示素子の蓄積電荷の緩和速度をさらに向上させることを重視する場合には、式(AN-1-13)、式(AN-3-2)、式(AN-4-21)、式(AN-4-29)、または式(AN-11-3)で表される化合物が好ましい。
【0118】
本発明のポリマーの原料として使用する原料組成物において、式(1)で表される化合物は、使用するジアミン類の全量に対して50~100モル%が好ましく、80~100モル%がさらに好ましい。式(4)で表される化合物を併用する場合、式(4)で表される化合物は、使用するジアミン類の全量に対して5~50モル%が好ましく、5~20モル%がさらに好ましい。式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類は、使用するテトラカルボン酸二無水物類の全量に対して、30~100モル%が好ましく、50~100モル%がより好ましい。
【0119】
本発明のポリマーは、その原料組成物としてモノイソシアネート化合物をさらに含んでいてもよい。モノイソシアネート化合物を原料組成物に含むことによって、得られるポリアミック酸またはその誘導体の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリアミック酸またはその誘導体を用いることにより、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。原料組成物中のモノイソシアネート化合物の含有量は、原料組成物中のジアミン類およびテトラカルボン酸二無水物類の総量に対して1~10モル%であることが、前記の観点から好ましい。前記モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、およびナフチルイソシアネートが挙げられる。
【0120】
<液晶配向剤>
以下において、本発明の液晶配向剤中のポリマー成分について詳細に説明する。本発明の液晶配向剤中のポリマー成分は、本発明のポリマー1種類を含有していてもよく、本発明のポリマー2種類以上を含有していてもよく、本発明のポリマーおよび、本発明以外のポリマーが混合されていてもよい。なお、本明細書において、ポリマー1種類で構成された液晶配向剤を「単層型液晶配向剤」と称することがある。ポリマーを2種以上混合する液晶配向剤を「ブレンド型液晶配向剤」と称することがある。ブレンド型液晶配向剤は、特にVHR信頼性やその他の電気的特性を重視する場合に用いられる。
【0121】
ブレンド型液晶配向剤に用いるポリマーとしては、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を原料として用いたポリマーと、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を原料として用いないポリマーで構成されていてもよく、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を原料として用いたポリマー2種類以上で構成されていてもよい。式(1)、式(2)または式(3)の化合物を原料として用いないポリマーとしては、原料として式(1)、式(2)または式(3)の化合物を含まないこと以外は、上記の本発明のポリマーの説明を参照することができる。
【0122】
2成分のポリマーを用いる場合、例えば、一方には液晶配向能に優れた性能を有するポリマーを選択し、他方には液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマーを選択する態様があり、液晶配向性と電気特性のバランスの良い配向剤を得るために好適である。
【0123】
この場合、それぞれのポリマーの構造や分子量を制御することにより、これらのポリマーを溶剤に溶解した液晶配向剤を、後述するように、基板に塗布し、予備乾燥を行って薄膜を形成する過程で、液晶配向能に優れた性能を有するポリマーを薄膜の上層に、液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマーを薄膜の下層に偏析させることができる。これには、混在するポリマーにおいて、表面エネルギーの小さなポリマーが上層に、表面エネルギーの大きなポリマーが下層に相分離する現象を応用することができる。このような相分離の確認は、形成された液晶配向膜の表面エネルギーが、上層に偏析させることを意図したポリマーのみを含有する液晶配向剤によって形成された膜の表面エネルギーと同じか、または近い値であることで確認することができる。
【0124】
上下二層の相分離構造を発現させる方法として、上層に偏析させたいポリマーの分子量を小さくすることも挙げられる。
【0125】
ポリマー同士の混合からなる液晶配向剤では、上層に偏析させたいポリマーをポリイミドとすることで上下二層の相分離構造を発現させることもできる。
【0126】
式(1)で表されるジアミン類は、前記薄膜の上層に偏析するポリマーの原料組成物として用いられてもよく、薄膜の下層に偏析するポリマーの原料組成物として用いられてもよく、両方のポリマーの原料組成物として用いられてもよいが、薄膜の上層に偏析するポリマーの原料組成物として用いることがより好ましい。
【0127】
式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類は、前記薄膜の上層に偏析するポリマーの原料組成物として用いられてもよく、薄膜の下層に偏析するポリマーの原料組成物として用いられてもよく、両方のポリマーの原料組成物として用いられてもよい。
【0128】
式(4)で表されるジアミン類は、前記薄膜の上層に偏析するポリマーの原料組成物として用いられてもよく、薄膜の下層に偏析するポリマーの原料組成物として用いられてもよく、両方のポリマーの原料組成物として用いられてもよい。
【0129】
前記薄膜の上層に偏析するポリマーを合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物類としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導化合物から制限されることなく選択することができる。
【0130】
薄膜の上層に偏析するポリマーを合成するために用いられる式(1)または式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物類以外のテトラカルボン酸二無水物類は、式(AN-1-1)、式(AN-1-2)、式(AN-2-1)、式(AN-3-1)、式(AN-4-5)、式(AN-4-17)、または式(AN-4-21)、で表される化合物またはその誘導化合物が好ましく、式(AN-4-17)または式(AN-4-21)がより好ましい。式(AN-4-17)においては、m=4~8が好ましい。
【0131】
薄膜の上層に偏析するポリマーを合成するために用いられるジアミン類としては、上記に例示した公知のジアミン類から制限されることなく選択することができる。
【0132】
薄膜の上層に偏析するポリマーを合成するために用いられるジアミン類としては、式(DI-4-1)、式(DI-4-13)、式(DI-4-15)、式(DI-5-1)、式(DI-7-3)、式(DI-13-1)、(V-2-1)、(V-2-13)、(V-2-14)、(V-2-15)、または(V-2-16)で表される化合物を用いるのが好ましい。中でも、式(DI-4-13)、式(DI-4-15)、式(DI-5-1)、式(DI-13-1)、(V-2-1)、(V-2-13)、または(V-2-15)で表される化合物を用いるのがより好ましい。式(DI-5-1)において、m=4~8が好ましい。式(DI-7-3)においてはm=3、n=1が好ましい。
【0133】
薄膜の下層に偏析するポリマーを合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物類としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導化合物から制限されることなく選択することができる。
【0134】
薄膜の下層に偏析するポリマーを合成するために用いられる式(1)または式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物類以外のテトラカルボン酸二無水物類としては、式(AN-1-1)、式(AN-1-13)、式(AN-2-1)、式(AN-3-2)、または式(AN-4-21)で表される化合物またはその誘導化合物が好ましく、式(AN-1-1)、式(AN-2-1)、または式(AN-3-2)がより好ましい。
【0135】
薄膜の下層に偏析するポリマーを合成するために好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物類は、テトラカルボン酸二無水物類の全量中芳香族テトラカルボン酸二無水物類を10モル%以上含むことが好ましく、30モル%以上含むことがより好ましい。
【0136】
薄膜の下層に偏析するポリマーを合成するために用いられるジアミン類としては、上記に例示した公知のジアミン類から制限されることなく選択することができる。
【0137】
薄膜の下層に偏析するポリマーを合成するために用いられるジアミン類としては、式(DI-4-1)、式(DI-4-2)、式(DI-4-10)、式(DI-4-18)、式(DI-4-19)、式(DI-5-1)、式(DI-5-9)、式(DI-5-28)、式(DI-5-30)、式(DI-13-1)、または式(DIH-1-2)で表される化合物が好ましい。式(DI-5-1)において、m=1または2である化合物が好ましく、式(DI-5-30)において、k=2である化合物が好ましい。中でも、式(DI-4-1)、式(DI-4-18)、式(DI-4-19)、式(DI-5-9)、式(DI-13-1)、または式(DIH-1-2)で表される化合物がより好ましい。
【0138】
薄膜の下層に偏析するポリマーを合成するために好ましく用いられるジアミン類は、芳香族ジアミンおよび芳香族ジヒドラジドからなる群から選択された少なくとも1つを、全ジアミン類に対して、30モル%以上含むものである事が好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましい。
【0139】
薄膜の上層に偏析するポリマー、および薄膜の下層に偏析するポリマーの合計量に対する薄膜の上層に偏析するポリマーの割合としては、5重量%~50重量%が好ましく、10重量%~40重量%がさらに好ましい。
【0140】
本発明のポリアミック酸又はその誘導体は、第1ポリマー鎖と、第1ポリマー鎖とは構造が異なる第2ポリマー鎖を含むブロックポリマーであってもよい。また、ブロックポリマーは、さらに第1ポリマー鎖及び第2ポリマー鎖と構造が異なる他のポリマー鎖を含んでいてもよい。
例えば、ポリアミック酸のブロックポリマーは、下記式(PAA)で示される特定のポリアミック酸(PAA1)の溶液と、ポリアミック酸(PAA1)とX
1及びX
2の組み合わせが異なるポリアミック酸(PAA2)の溶液を混合して加熱することにより形成することができる。こうして形成されるポリアミック酸のブロックポリマーは、(PAA1)
n1で表されるブロックと(PAA2)
n2で表されるブロックを含む。(PAA1)
n1及び(PAA2)
n2におけるn1及びn2は、各々独立して1以上の整数であり、好ましくは各々独立して2以上の整数である。ブロックポリマーにおいて、式(1)で表される化合物および、式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類を原料組成物に用いるポリマー鎖は、いずれか1つであってもよいし、2つ以上であってもよいし、全てのポリマー鎖であってもよい。
【0141】
ブロックポリマーにおいて式(1)で表される化合物および、式(2)または式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物類を原料組成物に用いるポリマー鎖は、ブロックポリマー全体の5~50重量%が好ましく、10~40重量%がより好ましい。
【0142】
ここで、ポリアミック酸のブロックポリマーは、2種以上のポリアミック酸をそれぞれ単独で製造した後に混合し、加熱して合成してもよい。または、1種類目のポリアミック酸を合成した後に同じ反応容器に2種類目のポリアミック酸の原料を加えて合成するなどのように、2種以上のポリアミック酸を同じ反応容器中で合成した後、加熱して合成してもよい。
【0143】
また、本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性や前記ポリアミック酸またはその誘導体の濃度の調整の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。前記溶剤は、ポリマー成分を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく適用可能である。前記溶剤は、ポリアミック酸、可溶性ポリイミド等のポリマー成分の製造工程や用途面で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。前記溶剤は1種でも2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0144】
溶剤としては、前記ポリマー成分の親溶剤や、塗布性改善を目的とした他の溶剤が挙げられる。
【0145】
前記ポリマー成分に対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、γ-ブチロラクトン、およびγ-バレロラクトン等が挙げられる。これらの中で、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、またはγ-バレロラクトンが好ましい。
【0146】
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。また、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1-ブトキシ-2-プロパノール等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ブチルセロソルブアセテート、フェニルアセテート、およびこれらアセテート類等のエステル化合物が挙げられる。さらにマロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、乳酸アルキル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、テトラリン、およびイソホロンが挙げられる。
【0147】
これらの中で、ジイソブチルケトン、4-メチル-2-ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、1-ブトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、またはブチルセロソルブアセテートが好ましい。
【0148】
本発明の液晶配向剤におけるポリマー濃度は特に限定されるものではなく、下記の種々の塗布法に合わせ最適な値を選べばよい。通常、塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、ワニス重量に対し、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~10重量%である。
【0149】
本発明の液晶配向剤の粘度は、塗布する方法、ポリマー成分の濃度、使用するポリマー成分の種類、溶剤の種類と割合によって好ましい範囲が異なる。例えば、印刷機による塗布の場合は5~100mPa・s(より好ましくは10~80mPa・s)である。5mPa・s以上であれば十分な膜厚が得られやすくなり、100mPa・s以下であれば印刷ムラを抑えやすくなる。スピンコートによる塗布の場合は5~200mPa・s(より好ましくは10~100mPa・s)が適している。インクジェット塗布装置を用いて塗布する場合は5~50mPa・s(より好ましくは5~20mPa・s)が適している。液晶配向剤の粘度は回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業製TVE-20L型)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
【0150】
本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤は、配向膜の各種特性を向上させるために、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。以下に例を示す。
【0151】
<アルケニル置換ナジイミド化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、上記の目的から、ポリマー成分に対して1~50重量%であることが好ましく、1~30重量%であることがより好ましく、1~20重量%であることがさらに好ましい。アルケニル置換ナジイミド化合物は、本発明で用いられるポリマー成分を溶解する溶剤に溶解させることができる化合物であることが好ましい。好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物には、特開2008-096979号、特開2009-109987号、特開2013-242526号に開示されているアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられる。特に好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物としては、ビス{4-(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’-m-キシリレン-ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)、またはN,N’-ヘキサメチレン-ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)が挙げられる。
【0152】
<ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。なお、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物にはアルケニル置換ナジイミド化合物は含まれない。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物には、好ましいものとして、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-ジヒドロキシエチレン-ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、4,4’-メチレンビス(N,N-ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)、シアヌル酸トリアリル、他に、特開2009-109987号、特開2013-242526号、国際公報2014/119682、国際公報2015/152014に開示されているラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、上記の目的から、ポリマー成分に対して1~50重量%であることが好ましく、1~30重量%であることがより好ましい。
【0153】
<オキサジン化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサジン化合物をさらに含有していてもよい。オキサジン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサジン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリマー成分に対して0.1~50重量%であることが好ましく、1~40重量%であることがより好ましく、1~20重量%であることがさらに好ましい。
【0154】
オキサジン化合物は、ポリマー成分を溶解させる溶剤に可溶であり、加えて、開環重合性を有するオキサジン化合物が好ましい。好ましいオキサジン化合物には、式(OX-3-1)、式(OX-3-9)、式(OX-3-10)で表されるオキサジン化合物、他に、特開2007-286597号、特開2013-242526号に開示されているオキサジン化合物が挙げられる。
【0155】
<オキサゾリン化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサゾリン化合物をさらに含有していてもよい。オキサゾリン化合物はオキサゾリン構造を有する化合物である。オキサゾリン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサゾリン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリマー成分に対して0.1~50重量%であることが好ましく、1~40重量%であることがより好ましく、1~20重量%であることがさらに好ましい。好ましいオキサゾリン化合物には、特開2010-054872号、特開2013-242526号に開示されているオキサゾリン化合物が挙げられる。より好ましくは、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼンが挙げられる。
【0156】
<エポキシ化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的、膜の硬度を向上させる目的、もしくはシール剤との密着性を向上させる目的から、エポキシ化合物をさらに含有していてもよい。エポキシ化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。エポキシ化合物の含有量は、上記の目的から、ポリマー成分に対して0.1~50重量%であることが好ましく、1~20重量%であることがより好ましく、1~10重量%であることがさらに好ましい。
【0157】
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ環を1つまたは2つ以上有する種々の化合物を用いることができる。膜の硬度を向上させる目的、もしくはシール剤との密着性を向上させる目的のためには、分子内にエポキシ環を2つ以上有する化合物が好ましく、3つまたは4つ有する化合物がより好ましい。
【0158】
エポキシ化合物としては、特開2009-175715号、特開2013-242526号、特開2016-170409号、国際公報2017/217413に開示されているエポキシ化合物が挙げられる。好ましいエポキシ化合物としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,3‘,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、1,4-ブタンジオールグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリス(2,3-エポキシプロピル)、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、またはN,N,N’,N‘-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンが挙げられる。
上記の他、エポキシ環を有するオリゴマーやポリマーを添加することもできる。エポキシ環を有するオリゴマーやポリマーは特開2013-242526号に開示されているオリゴマーやポリマーを使用することができる。
【0159】
<シラン化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、基板およびシール剤との密着性を向上させる目的から、シラン化合物をさらに含有していてもよい。シラン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリマー成分に対して0.1~30重量%であることが好ましく、0.5~20重量%であることがより好ましく、0.5~10重量%であることがさらに好ましい。
【0160】
シラン化合物としては、特開2013-242526、特開2015-212807号、特開2018-173545号、国際公報2018/181566に開示されているシランカップリング剤を使用することができる。好ましいシランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、または3-ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0161】
上記記載の添加剤の他、配向膜の強度を上げる目的、または液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、シクロカーボネート基を持つ化合物、ヒドロキシアルキルアミド部位や水酸基を持つ化合物を添加することもできる。具体的化合物としては、特開2016-118753号、国際公報2017/110976に開示されている化合物が挙げられる。好ましい化合物としては、以下の式(HD-1)~式(HD-4)が挙げられる。これらの化合物は、ポリマー成分に対して0.5~50重量%であることが好ましく、1~30重量%であることがより好ましく、1~10重量%であることがさらに好ましい。
【0162】
また、帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒を使用することもできる。イミド化触媒としては、特開2013-242526号に開示されているイミド化触媒が挙げられる。
【0163】
<液晶配向膜>
次に、本発明の液晶配向膜について説明する。
本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤を使用して形成されたものである。本発明の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成させる過程で加熱焼成すると、ポリイミド系液晶配向膜を形成させることができる。本発明の液晶配向剤は、配向処理方法としてラビング法を用いるラビング配向膜にも、原料として光反応性構造を有する化合物を併用すれば配向処理方法として光配向法を用いる光配向膜にも適用することができる。
【0164】
以下において、本発明の光配向用液晶配向剤による液晶配向膜の形成方法について説明する。
【0165】
本発明の液晶配向膜は、光配向用液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができる。本発明の液晶配向膜は、例えば、本発明の光配向用液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、塗膜を加熱乾燥して液晶配向剤の膜を形成する工程と、液晶配向剤の膜に光を照射して異方性を付与する工程と、異方性を付与した液晶配向剤の膜を加熱焼成する工程を経ることによって得ることができる。本発明の液晶配向膜については、塗膜工程、加熱乾燥工程の後に光を照射して異方性を付与し、その後加熱焼成工程を経るのが好ましい。
【0166】
塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。基板には、透明電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製、窒化ケイ素製、アクリル製、ポリカーボネイト製、ポリイミド製等の基板が挙げられる。
【0167】
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
【0168】
加熱乾燥工程は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。加熱乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、加熱焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。具体的には加熱乾燥温度は30℃~150℃の範囲であること、さらには50℃~120℃の範囲であることが好ましい。
【0169】
加熱焼成工程は、例えば、加熱乾燥工程後の微量の残存溶剤を除去するのに必要な条件、あるいはポリアミック酸またはその誘導体がイミド化反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。塗膜の焼成は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に90~300℃程度の温度で1分間~3時間行うことが好ましく、120~280℃がより好ましく、150~250℃がさらに好ましい。
【0170】
膜の異方性や、液晶表示素子を作製した際の残像特性を向上させることを重視する場合には、加熱工程の昇温を緩やかに行うことが好ましく、例えば、段階的に温度を上げながら、異なる温度で複数回加熱焼成する、または、低温から高温へと温度を変化させて加熱することができる。また、両方の加熱方法を組み合わせて行ってもよい。
【0171】
異なる温度で複数回加熱焼成する場合、異なる温度に設定された複数の加熱装置を用いてもよいし、1台の加熱装置を用いて、異なる温度に順次変化させながら行ってもよい。
【0172】
異なる温度で複数回加熱焼成する場合は、初めの焼成温度は90~180℃で行うのが好ましく、最後の温度は185℃~300℃で行うのが好ましい。例えば、110℃で加熱焼成した後220℃で加熱焼成、110℃で加熱焼成した後230℃で加熱焼成、130℃で加熱焼成した後220℃で加熱焼成、150℃で加熱焼成した後200℃で加熱焼成、150℃で加熱焼成した後220℃で加熱焼成、150℃で加熱焼成した後230℃で加熱焼成、または170℃で加熱焼成した後200℃で加熱焼成することが好ましい。さらに段階を増やして緩やかに昇温させながら加熱焼成することも好ましい。加熱温度を変えて2段階以上で加熱焼成を行う場合、各加熱工程での加熱時間は5分~30分であることが好ましい。
【0173】
低温度から高温へと温度を変化させて焼成を行なう場合、初期温度は90~180℃が好ましい。最終温度は185~300℃が好ましく、190~230℃がより好ましい。加熱時間は5分~60分が好ましく、20分~60分がより好ましい。昇温スピードは、例えば0.5℃/分~40℃/分とすることができる。昇温中の昇温スピードは一定でなくともよい。
【0174】
本発明の液晶配向膜の形成方法において、液晶を水平および/または垂直方向に対して一方向に配向させるために、薄膜へ異方性を付与する手段として、公知の光配向法を好適に用いることができる。
【0175】
光配向法による本発明の液晶配向膜の形成方法について、詳細に説明する。光配向法を用いた本発明の液晶配向膜は、塗膜を加熱乾燥した後の薄膜に、光を照射することにより、薄膜に異方性を付与し、その膜を加熱焼成することにより形成することができる。または、塗膜を加熱乾燥し、加熱焼成した後に、薄膜に光の直線偏光または無偏光を照射することにより形成する事ができる。液晶配向性の点から、光の照射工程は加熱焼成工程前に行うのが好ましい。
【0176】
さらに、液晶配向膜の液晶配向能を上げるために、塗膜を加熱しながら光を照射することもできる。光の照射は、塗膜を加熱乾燥する工程、または加熱焼成する工程で行ってもよく、加熱乾燥工程と加熱焼成工程の間に行ってもよい。
塗膜を加熱乾燥する工程、または加熱焼成する工程で光を照射する場合の加熱温度は、上記の加熱乾燥工程、または加熱焼成工程の記載を参考にできる。加熱乾燥工程と加熱焼成工程の間に光を照射する場合の加熱温度は、30℃~150℃の範囲であることが好ましく、50℃~110℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0177】
光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線または可視光を用いることができるが、200~400nmの光を含む紫外線が好ましい。また、直線偏光または無偏光を用いることができる。これらの光は、前記薄膜に液晶配向能を付与することができる光であれば特に限定されないが、液晶に対して強い配向規制力を発現させたい場合、直線偏光が好ましい。
【0178】
前記光照射工程における直線偏光の照射量は0.05~10J/cm2であることが好ましく、0.1~5J/cm2がより好ましい。直線偏光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、液晶に対する強い配向規制力を発現させたい場合、膜表面に対してなるべく垂直であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。また、本発明の液晶配向膜は、直線偏光を照射することにより、直線偏光の偏光方向に対して直角方向に液晶を配向させることができる。
【0179】
光を照射する工程に使用する光源には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、Deep UVランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、エキシマランプ、KrFエキシマレーザー、蛍光ランプ、LEDランプ、ナトリウムランプ、マイクロウェーブ励起無電極ランプ、などを制限なく用いることができる。
【0180】
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。
【0181】
本発明の液晶配向膜は、焼成または光照射後の膜を洗浄液で洗浄する工程を必須としないが、他の工程の都合で洗浄工程を設けることができる。洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
【0182】
本発明の液晶配向膜の液晶配向能を高めるために、加熱焼成工程の前後、または、偏光または無偏光の光照射の前後に、熱や光によるアニール処理を用いることができる。該アニール処理において、アニール温度が30~180℃、好ましくは50~150℃であり、時間は1分~2時間が好ましい。また、アニール処理に使用するアニール光には、UVランプ、蛍光ランプ、LEDランプなどが挙げられる。光の照射量は0.3~10J/cm2であることが好ましい。
【0183】
本発明の液晶配向剤から、ラビング法を用いて液晶配向膜を形成する場合は、ラビング用液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができ、例えば国際公開2019/031604に記載の方法を参照することができる。
【0184】
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10~300nmであることが好ましく、30~150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
【0185】
本発明の液晶配向膜は特に大きな配向の異方性を持つことを特徴とする。このような異方性の大きさは特開2005-275364等に記載の偏光IRを用いた方法で評価する事ができる。またエリプソメトリーを用いた方法によっても評価することができる。詳しくは、分光エリプソメータによって液晶配向膜のリタデーション値を測定することができる。膜のリタデーション値はポリマー主鎖の配向度に比例して大きくなる。
【0186】
本発明の液晶配向膜は、スマートフォン、タブレット、車載モニター、テレビ等、液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向制御に用いることができる。液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向用途以外に、光学補償材や液晶を用いたマイクロ波・ミリ波帯の広帯域可変移相器等、その他すべての液晶材料の配向制御に用いることができる。また本発明の液晶配向膜は大きな異方性を有するので、単独で光学補償材用途に使用することができる。
【0187】
<液晶表示素子>
次に、本発明の液晶表示素子について説明する。本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向膜を有する点に特徴があり、その残像特性、コントラストおよび蓄積電荷の緩和の速さから、高い表示品位を実現することができる。
【0188】
本発明の液晶表示素子について詳細に説明する。本発明は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層と、前記対向基板を挟むように設置されている一対の偏光フィルムとバックライトと駆動装置とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜が本発明の液晶配向膜により構成されている。
【0189】
電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IGZO(In-Ga-Zn Oxide)電極等の透明電極や金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPSモードの液晶表示素子(横電界型液晶表示素子)の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
【0190】
ホモジニアス配向の液晶表示素子(例えばIPSモード、FFSモードなど)の場合は、構成として、少なくとも、バックライト側からバックライト、第一の偏光フィルム、第一の基板、第一の液晶配向膜、液晶層、第二の基板、第二の偏光フィルムを有し、前記偏光フィルムの偏光軸は、第一の偏光フィルムの偏光軸(偏光吸収の方向)と第二の偏光フィルムの偏光軸は交差(好ましくは直交)するように設置される。この時、第一の偏光フィルムの偏光軸と液晶配向方向が平行になるように、または直交するように設置することができる。第一の偏光フィルムの偏光軸と液晶配向方向が平行になるように設置した液晶表示素子をO-モード、直交するように設置した液晶表示素子をE-モードと言う。本発明の液晶配向膜は、O-モード、E-モードどちらにも適用でき、目的によって選択することができる。
【0191】
多くの光異性化型材料には2色性を有する化合物が用いられている。そのため、液晶配向剤に対して異方性を付加させるために照射する偏光の偏光軸を、バックライト側に配置した偏光フィルムからの偏光の偏光軸と平行に揃える(本発明の液晶配向剤を使用した場合には、O-モードの配置とする)と、液晶配向膜の光吸収波長域の透過率が上昇する。その為、液晶表示素子の透過率を更に改善することができる。
【0192】
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサーを必要に応じて用いることができる。
【0193】
液晶層の形成方法としては、真空注入法とODF(One Drop Fill)法が知られている。
【0194】
真空注入法では、液晶配向膜面が対向するように、空隙(セルギャップ)を設けて、かつ液晶の注入口を残して、シール剤を印刷し、基板を張り合わせる。基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に、真空差圧を利用して液晶を注入充填した後、注入口を封止し、液晶表示素子を製造する。
【0195】
ODF法では、一対の基板のうちの一方の液晶配向膜面の外周にシール剤を印刷し、シール剤の内側の領域に液晶を滴下した後、液晶配向膜面が対向するように他方の基板を張り合わせる。そして、液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化し、液晶表示素子を製造する。
【0196】
基板の張り合わせに用いられるシール剤には、UV硬化型以外に熱硬化型も知られている。シール剤の印刷は、例えばスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0197】
液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の液晶組成物(ポジ型液晶組成物)には、特許3086228、特許2635435、特表平5-501735、特開平8-157826、特開平8-231960、特開平9-241644(EP885272A1)、特開平9-302346(EP806466A1)、特開平8-199168(EP722998A1)、特開平9-235552、特開平9-255956、特開平9-241643(EP885271A1)、特開平10-204016(EP844229A1)、特開平10-204436、特開平10-231482、特開2000-087040、特開2001-48822等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0198】
前記負の誘電率異方性を有する液晶組成物(ネガ型液晶組成物)の好ましい例として、特開昭57-114532、特開平2-4725、特開平4-224885、特開平8-40953、特開平8-104869、特開平10-168076、特開平10-168453、特開平10-236989、特開平10-236990、特開平10-236992、特開平10-236993、特開平10-236994、特開平10-237000、特開平10-237004、特開平10-237024、特開平10-237035、特開平10-237075、特開平10-237076、特開平10-237448(EP967261A1)、特開平10-287874、特開平10-287875、特開平10-291945、特開平11-029581、特開平11-080049、特開2000-256307、特開2001-019965、特開2001-072626、特開2001-192657、特開2010-037428、国際公開2011/024666、国際公開2010/072370、特表2010-537010、特開2012-077201、特開2009-084362等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0199】
誘電率異方性が正または負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0200】
また例えば、本発明の液晶表示素子に用いる液晶組成物は、例えば配向性を向上させる観点から、添加物をさらに添加してもよい。このような添加物は、光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。好ましい光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤には、国際公開2015/146330等に開示されている化合物が挙げられる。
【0201】
PSA(Polymer Sustained Alignment)モードの液晶表示素子に適合させるために重合可能な化合物を液晶組成物に混合することができる。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。好ましい化合物には、国際公開2015/146330等に開示されている化合物が挙げられる。
【実施例0202】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、実施例において用いる評価法および化合物は次の通りである。
【0203】
<重量平均分子量(Mw)>
ポリアミック酸の重量平均分子量は、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters製)を用いてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。得られたポリアミック酸をリン酸-DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)で、ポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈した。カラムはHSPgel RT MB-M(Waters製)を使用し、前記混合溶液を展開剤として、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定を行った。標準ポリスチレンは東ソー(株)製TSK標準ポリスチレンを用いた。
【0204】
<AC残像測定・コントラスト測定>
AC残像は国際公開第2000/43833号に記載の方法に従って測定した。具体的には、作製した液晶セルの輝度-電圧特性(B-V特性)を測定し、これをストレス印加前の輝度-電圧特性:B(before)とした。次に、液晶セルに4.5V、60Hzの交流を20分間印加した後、1秒間ショートし、再び輝度-電圧特性(B-V特性)を測定した。これをストレス印加後の輝度-電圧特性:B(after)とした。ここでは、測定した各輝度-電圧特性の電圧1.3Vにおける輝度を用い、下記式にて輝度変化率ΔB(%)を求めた。ΔB(%)の値が小さいほど、AC残像の発生を抑制できること、すなわち残像特性が良好であることを意味する。ΔBは、3%以下であれば残像特性が良好と言えるが、近年残像特性の要望はさらに高まっており、より低いことが好ましい。
ΔB(%)={[B(after)-B(before)]/B(before)}×100
また、ストレス印加前のB-V特性における最小輝度と最大輝度の比を用いてコントラスト(CR)を求めた。CRの値が大きいほど、明暗表示が鮮明であり、コントラストが良好であることを意味し、3000以上で優れたコントラストを有すると言える。
CR=B(before)max/B(before)min
式において、B(before)maxはストレス印加前のB-V特性における最大輝度を示し、B(before)minはストレス印加前のB-V特性における最小輝度を示す。
<DC緩和特性の評価>
液晶セルをAC2.5Vで10分間駆動させ、次に、AC2.5Vで駆動させつつDC0.3Vを20分間印加し、DC印加を終了してAC2.5Vで駆動した。この間、透過率を測定した。DC印加を終了してから、蓄積した電荷が緩和して、透過率が駆動開始直後の透過率に0.1%足した値以内になるまでの時間を緩和時間として算出した。緩和時間が短いほど、DC緩和特性は良好である。緩和時間が5分未満であれば「◎」、5分以上10分未満であれば「○」、10分以上20分未満であれば「△」、20分以上であれば「×」として評価し、「◎」「○」「△」であれば優れたDC緩和特性を有すると言える。
【0205】
【0206】
<テトラカルボン酸二無水物類>
式(3-1)で表わされる化合物におけるmの値は、表1に記載した。
【0207】
<溶剤>
NMP: N-メチル-2-ピロリドン
BC: ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0208】
<ワニスの調製>
本実施例で使用したワニスは、下記の手順で調製した。ここでワニスの調製例1~4で調製したワニスA1~A3、およびB1は、式(1)で表される化合物を原料として用いた、光反応性構造を有するポリアミック酸の溶液である。ワニスA1~A3は、原料として式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物の少なくとも1つを用い、場合によってさらに式(4)で表される化合物を用いた、本発明のポリアミック酸の溶液である。ワニスB1は、原料としてこれらの化合物を使用していない、比較用のポリアミック酸の溶液である。ワニスの調製例5~6で調製したブレンド用ワニスD1~D2は、光反応性構造を有する化合物を原料に用いないで得られたポリアミック酸の溶液であり、ワニスA1~A3、またはB1とブレンドして使用するものである。
【0209】
[ワニスの調製例1] ワニスA1の調製
攪拌翼、窒素導入管を装着した100mL3つ口フラスコに、ジアミン異性体混合物1(1.394g)を入れ、NMP(17.0g)を加え撹拌した。この溶液に、式(2-1)で表される化合物(1.429g)、および式(AN-1-1)で表される化合物(0.177g)を加え、12時間室温で攪拌させた。そこにNMP(15.0g)およびBC(15.0g)を加え、溶質のポリマーの重量平均分子量が所望する重量平均分子量になるまで、その溶液を70℃で加熱攪拌して、溶質の重量平均分子量がおよそ18,000であり、ポリマー濃度が6重量%であるワニスA1を得た。
【0210】
[ワニスの調製例2~6] ワニスA2~A3、ワニスB1、ワニスD1~D2の調製
ジアミン類及びテトラカルボン酸二無水物類として用いる化合物を、表1に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にしてポリマー濃度が6重量%のワニスA2~A3、ワニスB1、ワニスD1~D2を調整した。また、ワニスD1~D2においては、ポリマーの重量平均分子量が50,000程度になるように加熱撹拌の条件を調整した。生成したポリマーの重量平均分子量を表1に示す。なお、表1においてジアミン類として2つ以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてジアミン類として使用したことを意味し、テトラカルボン酸二無水物類として2つ以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてテトラカルボン酸二無水物類として使用したことを意味する。角括弧内の数値は、配合比(モル%)を表し、空欄はその欄に対応する化合物を使用していないことを意味する。なお、重量平均分子量は、有効数字2桁の値まで記載し、下3桁の数値は四捨五入した。
【0211】
【0212】
[実施例1]
<液晶配向剤の調製>
ワニスA1を、ポリマー濃度が4重量%になるようにNMP・BC混合溶液(NMP/BC=7/3重量比)で希釈、撹拌し、液晶配向剤E1を調製した。
<コントラストの測定、AC残像測定、DC緩和特性の評価>
FFS電極付きガラス基板およびカラムスペーサー付きガラス基板に、液晶配向剤E1をスピンナー法により塗布した。塗布後、基板を60℃で80秒間加熱し、溶剤を蒸発させた後、ウシオ電機(株)製マルチライトML-501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時の露光エネルギーは、ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT-150(受光器:UVD-S254)を用いて光量を測定し、波長254nmで0.5J/cm2になるよう、露光時間を調整した。その後、220℃にて30分間焼成処理を行い、膜厚およそ100nmの配向膜を形成した。
次いで、これらの液晶配向膜が形成された基板2枚を、液晶配向膜が形成されている面を対向させ、かつ、対向する液晶配向膜の間に液晶組成物を注入するための空隙を設けて貼り合わせた。この時、それぞれの液晶配向膜に照射された直線偏光の偏光方向が平行になるようにした。これらのセルにポジ型液晶組成物Aを注入し、セル厚5μmの液晶セル(液晶表示素子)を作製した。
【0213】
<ポジ型液晶組成物A>
(物性値)
相転移温度NI:100.1℃、誘電率異方性Δε:5.1、屈折率異方性Δn:0.093、粘度η:25.6mPa・s.
【0214】
作製した液晶セルを用いて、前述の評価法「AC残像測定・コントラスト測定・DC緩和特性の評価」に従ってAC残像測定、コントラスト測定、およびDC緩和特性の評価を行った。その結果、ΔBは1.8%、CRは3600、DC緩和特性は◎であった。
【0215】
[実施例2]~[実施例3]、[比較例1]
ワニスA1の代わりに、表2に記載のワニスを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ない、液晶配向剤E2~E3、およびF1を調製した。調製した液晶配向剤を用いて、実施例1と同様の操作を行い、コントラストの測定、AC残像測定、およびDC緩和特性の評価を行なった。結果を、実施例1の結果と共に表2に示す。
【0216】
【0217】
本発明の式(1)および、式(2)または式(3)または式(4)で表される化合物を使用したワニスA1~A3から調製した液晶配向剤E1~E3を使用した実施例1~3では、コントラストの値は3000以上を示し、優れたコントラストを示した。また、ΔBの値が2%以下と小さく、優れた残像特性を示した。DC緩和特性も良好な結果が得られ、コントラスト、残像特性およびDC緩和特性、全ての特性を満たす液晶表示素子が得られた。一方、本発明の式(2)または式(3)または式(4)で表される化合物を使用していない比較例1では、DC緩和特性が良好な液晶表示素子は得られなかった。
【0218】
[実施例4]
ワニスA1とワニスD1を重量比3:7になるようにブレンドし、さらにポリマー濃度が4重量%になるようにNMP・BC混合溶液(NMP/BC=7/3重量比)で希釈、撹拌し、液晶配向剤E4を調製した。
液晶配向剤E4を用いて、実施例1と同様の操作を行い、コントラストの測定、AC残像測定、およびDC緩和特性の評価を行った。
【0219】
[実施例5]~[実施例7]、[比較例2]
ワニスA1とワニスD1の代わりに、表3に示すワニスを使用し、表3に示すブレンド比に変更した以外は、実施例4と同様にして、液晶配向剤E5~E7、およびF2を調製した。調製した液晶配向剤を用いて、実施例4と同様に、コントラストの測定、AC残像測定、およびDC緩和特性の評価を行った。使用したワニス、ブレンド比および結果を、実施例4と共に表3に示す。表3における角括弧内の数値が、ブレンド比(重量比)である。
【0220】
【0221】
本発明の式(2)、式(3)または式(4)で表される化合物を使用したワニスA1~A3と、D1またはD2をブレンドしたブレンド型液晶配向剤E4~E7を使用した実施例4~7においても、コントラストの値は3000以上を示し、優れたコントラストを示した。また、ΔBの値が3%以下と小さく、優れた残像特性を示した。DC緩和特性も良好な結果が得られ、コントラスト、残像特性およびDC緩和特性、全ての特性を満たす液晶表示素子が得られた。一方、本発明の式(2)または式(3)または式(4)で表される化合物を使用していない比較例2では、DC緩和特性が良好な液晶表示素子は得られなかった。
本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜を使用すれば、良好なコントラストおよび残像特性を有し、かつ、蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子を得ることができる。本発明の液晶配向剤は、横電界型液晶表示素子に好適に適用することができる。