(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032729
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】熱分解設備
(51)【国際特許分類】
C10B 53/02 20060101AFI20230302BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20230302BHJP
C10L 5/40 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C10B53/02
C10B53/00 A
C10L5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139019
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅本 賢
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 史朗
【テーマコード(参考)】
4H012
4H015
【Fターム(参考)】
4H012HA01
4H012JA03
4H012JA09
4H012JA13
4H015AA09
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】バイオマス、及び、廃プラスチックを有効に利用して、効率よく燃料・化学原料の成分を得る。
【解決手段】熱分解設備1では、炭化手段2によりバイオマスを炭化して炭化物を得る一方、熱分解手段3、吸着手段4で廃プラスチックを熱分解して重質成分(常温で液体、固体)、及び、熱分解ガスを生成すると共に、固体の炭化物に重質成分を吸着し、重質成分が分離された軽質成分(高品位な熱分解ガス)、及び、重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを炭化して炭化物を得る炭化手段と、
前記炭化手段で得られた炭化物、及び、廃プラスチックが投入され、前記廃プラスチックを熱分解して重質成分、及び、ガスを生成すると共に、前記炭化物に前記重質成分を吸着させる熱分解吸着手段とを備えた
ことを特徴とする熱分解設備。
【請求項2】
請求項1に記載の熱分解設備において、
前記炭化手段は、
一端から前記バイオマスが投入され、投入された前記バイオマスが他端に搬送されて炭化物を得る第1加熱本体と、前記第1加熱本体を覆い前記第1加熱本体の内部を所望温度に加熱する第1加熱手段とを有し、
前記熱分解吸着手段は、
前記第1加熱本体の他端から排出された炭化物、及び、前記廃プラスチックが一端から投入され、投入された前記廃プラスチック、及び、前記炭化物が他端に搬送され、前記廃プラスチックを熱分解して重質成分、及び、ガスを得ると共に、前記炭化物に前記重質成分を吸着させる第2加熱本体と、前記第2加熱本体を覆い前記第2加熱本体の内部を所望温度に加熱する第2加熱手段とを有し、
前記第2加熱本体の端部からは、前記重質成分が吸着された炭化物、及び、前記重質成分が分離された前記廃プラスチックの生成物である軽質成分が排出される
ことを特徴とする熱分解設備。
【請求項3】
請求項1に記載の熱分解設備において、
前記炭化手段、及び、前記熱分解吸着手段は、
一端から前記廃プラスチックが投入される内側筒部、及び、前記内側筒部の外周に配され、一端から前記バイオマスが投入される外側筒部からなる前筒本体部と、
前記前筒本体部の外周部に配され、前記外側筒部に投入された前記バイオマスを炭化すると共に、前記内側筒部に投入された前記廃プラスチックを熱分解する温度に前筒本体部を加熱する第1加熱部と、
前記前筒本体部の他端側に配され、前記外側筒部の前記炭化物、及び、前記内側筒部の前記廃プラスチックが熱分解されて生成された生成物が搬入される後筒本体部と、
前記後筒本体部の外周部に配され、前記炭化物に対して前記廃プラスチックの生成物である重質成分を吸着させる温度に前記後筒本体部を加熱する第2加熱部とを有し、
前記後筒本体部からは、前記重質成分が吸着された前記炭化物、及び、前記重質成分が分離された前記廃プラスチックの生成物である軽質成分が排出される
ことを特徴とする熱分解設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス、及び、廃プラスチックを原料とする熱分解設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の使用で排出される温室効果ガスの排出の削減が求められている。一方で、炭素資源は社会の様々な原料、燃料として活用されており、必要不可欠となっている。利用できる炭素資源を多様化することで、温室効果ガスの排出を削減しつつ、資源環境に寄与する技術の開発が求められている。
【0003】
発電や各種工業における石炭利用の一部を代替えして炭素資源を多様化するためには、バイオマスの炭化物を用いることが一つの手段として考えられる(特許文献1)。また、化学工業における石油の一部代替えとして炭素資源を多様化するためには、廃プラスチックの熱分解製品を用いることが一つの手段として考えられる(特許文献2)。
【0004】
バイオマスの炭化は、粉砕性を向上させ、石炭の代替えとして有効である。しかし、炭化のための熱分解時に相当量の揮発分が生成され、元の発熱量の一部が失われてしまうのが現状である。また、廃プラスチックの熱分解は油化等を目的として実施されているが、残渣やスラッジ等の重質な成分は用途がほとんどないのが現状である。特に、重質油は配管の閉塞等の原因となるため、廃プラスチックの熱分解で得られた重質成分は、触媒等で分解除去されたり、別途装置で除去されたりしている。
【0005】
このため、化石燃料の代替えとしてバイオマスを用いたり、廃プラスチックを用いたりすることに関しては、様々な工夫の余地があるのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012―31356号公報
【特許文献2】特開2007―246912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、バイオマス、及び、廃プラスチックを有効に利用して、効率よく燃料・化学原料の成分を得ることができる熱分解設備を提供することを目的とする。
【0008】
具体的には、バイオマス、及び、廃プラスチックを原料として、軽質分としての熱分解ガス、及び、重質分が吸着されて高い発熱量の炭化物を得ることができる熱分解設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の熱分解設備は、バイオマスを炭化して炭化物を得る炭化手段と、前記炭化手段で得られた炭化物、及び、廃プラスチックが投入され、前記廃プラスチックを熱分解して重質成分、及び、ガスを生成すると共に、前記炭化物に前記重質成分を吸着させる熱分解吸着手段(熱分解手段、及び、吸着手段)とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、炭化手段によりバイオマスを炭化して炭化物を得る一方、熱分解吸着手段(熱分解手段、及び、吸着手段)で廃プラスチックを熱分解して重質成分(100℃以下で液体、固体)、及び、ガスを生成すると共に、固体の炭化物に重質成分を吸着させる。重質成分が分離された軽質成分(高品位なガス)、及び、重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物が燃料・化学原料として利用される。
【0011】
バイオマスとしては、林地残材、間伐材、未利用樹、製材廃材、建設廃材などの木質バイオマスや、稲、麦わら、もみ殻などの未使用のバイオマス、古紙、家畜の糞尿、食品残渣、汚泥などの廃棄物系バイオマスを用いることが可能である。
【0012】
これにより、バイオマス、及び、廃プラスチックを有効に利用して、効率よく燃料・化学原料の成分を得ることが可能になる。
【0013】
また、請求項2に係る本発明の熱分解設備は、請求項1に記載の熱分解設備において、前記炭化手段は、一端から前記バイオマスが投入され、投入された前記バイオマスが他端に搬送されて炭化物を得る第1加熱本体と、前記第1加熱本体を覆い前記第1加熱本体の内部を所望温度に加熱する第1加熱手段とを有し、前記熱分解吸着手段は、前記第1加熱本体の他端から排出された炭化物、及び、前記廃プラスチックが一端から投入され、投入された前記廃プラスチック、及び、前記炭化物が他端に搬送され、前記廃プラスチックを熱分解して重質成分、及び、ガスを得ると共に、前記炭化物に前記重質成分を吸着させる第2加熱本体と、前記第2加熱本体を覆い前記第2加熱本体の内部を所望温度に加熱する第2加熱手段とを有し、前記第2加熱本体の端部からは、前記重質成分が吸着された炭化物、及び、前記重質成分が分離された前記廃プラスチックの生成物である軽質成分が排出されることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、第1加熱手段で第1加熱本体が加熱されてバイオマスが炭化され、第2加熱手段で第2加熱本体が加熱されて廃プラスチックが熱分解されて重質成分が分離され、炭化物に重質成分が吸着される。重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物、及び、重質成分が分離された熱分解ガス(軽質成分:エチレン等)が燃料・化学原料として排出される。
【0015】
尚、第2加熱手段で加熱される第2加熱本体は、炭化物に重質成分が吸着される温度に調整される(冷却される)構成とされている。例えば、第2加熱本体は、上流側が第2加熱手段で加熱され、下流側の一部は第2加熱手段で加熱されない構成とすることが好ましい。また、吸着を促進する温度に調整する冷却手段を備えることも可能である。
【0016】
つまり、請求項2に係る本発明の設備は、バイオマスを炭化する炭化手段と、廃プラスチックの熱分解を行い炭化物に重質成分を吸着させる熱分解吸着手段とが別構成になっている。炭化物に対する重質成分の吸着量を増すためには、炭化物を賦活化(空気や水蒸気により一部ガス化)することが考えられる。また、第1加熱本体にバイオマスの供給がない場合、使用済みの炭化物を賦活化して再利用することができる。
【0017】
第1加熱本体、第2加熱本体は、ロータリーキルン方式の設備、電気炉を用いた設備等を適用することができる。第1加熱本体で得られた熱分解ガスは、燃焼ガスとして第1加熱手段の加熱源とすることができる。第1加熱手段の余剰熱は、第2加熱手段の加熱源とすることができる。
【0018】
また、請求項3に係る本発明の熱分解設備は、請求項1に記載の熱分解設備において、前記炭化手段、及び、前記熱分解吸着手段は、一端から前記廃プラスチックが投入される内側筒部、及び、前記内側筒部の外周に配され、一端から前記バイオマスが投入される外側筒部からなる前筒本体部と、前記前筒本体部の外周部に配され、前記外側筒部に投入された前記バイオマスを炭化すると共に、前記内側筒部に投入された前記廃プラスチックを熱分解する温度に前筒本体部を加熱する第1加熱部と、前記前筒本体部の他端側に配され、前記外側筒部の前記炭化物、及び、前記内側筒部の前記廃プラスチックが熱分解されて生成された生成物が搬入される後筒本体部と、前記後筒本体部の外周部に配され、前記炭化物に対して前記廃プラスチックの生成物である重質成分を吸着させる温度に前記後筒本体部を加熱する第2加熱部とを有し、前記後筒本体部からは、前記重質成分が吸着された前記炭化物、及び、前記重質成分が分離された前記廃プラスチックの生成物である軽質成分が排出されることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る本発明では、第1加熱部により、前筒本体部が加熱され(例えば、600℃から800℃)、外側筒部のバイオマスが炭化されると共に、内側筒部で廃プラスチックが熱分解される。炭化物、及び、熱分解で生成された生成物(重質成分、軽質成分)は後筒本体部に送られ、第2加熱部により、廃プラスチックの生成物である重質成分を炭化物に吸着させる温度(例えば、100℃以下)に後筒本体部が加熱される。重質成分が炭化物に吸着され、重質成分が分離された熱分解ガス(軽質成分:エチレン等)が得られ、重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物、及び、重質成分が分離された熱分解ガス(軽質成分:エチレン等)が燃料・化学成分として排出される。
【0020】
つまり、請求項3に係る本発明の設備は、バイオマスを炭化する炭化手段と、廃プラスチックの熱分解を行い炭化物に重質成分を吸着させる熱分解吸着手段とが一つの設備で構成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱分解設備は、バイオマス、及び、廃プラスチックを有効に利用して、効率よく燃料・化学原料の成分を得ることが可能になる。具体的には、バイオマス、及び、廃プラスチックを原料として、軽質分としての熱分解ガス、及び、重質分が吸着されて高い発熱量となった炭化物を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施例に係る熱分解設備の概略系統図である。
【
図2】本発明の第2実施例に係る熱分解設備の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には本発明の第1実施例に係る熱分解設備の全体の構成を説明する概略系統を示してある。
【0024】
第1実施例の熱分解設備1は、バイオマスを炭化して炭化物を得る炭化手段2と、炭化手段2で得られた炭化物、及び、廃プラスチックが投入され、廃プラスチックを熱分解して重質成分、及び、ガスを生成すると共に、炭化物に重質成分を吸着させる熱分解手段3、及び、吸着手段4とから構成されている(熱分解吸着手段)。
【0025】
炭化手段2は、一端の第1入口部11からバイオマスが投入され、投入されたバイオマスが他端の第1出口部12に向けて順次搬送されて炭化物を得る第1加熱本体13を備えている。第1加熱本体13は駆動手段により回転される回転体で構成され、第1加熱本体13の回転によりバイオマスが第1出口部12に向けて搬送される。
【0026】
第1加熱本体13は第1加熱ドラム14(第1加熱手段)で覆われ、第1加熱本体13と第1加熱ドラム14の間(第1加熱ドラム14の内側)には、燃料等を用いた燃焼器15から熱風が供給される。第1加熱本体13と第1加熱ドラム14の間(第1加熱ドラム14の内側)に熱風が供給されることで、第1加熱本体13の内部のバイオマスが、例えば、500℃から800℃で炭化される。燃焼器15には第1加熱本体13で発生した熱分解ガスを燃料として供給することもできる。
【0027】
熱分解手段3は、第1加熱本体13の第1出口部12から排出された炭化物、及び、廃プラスチックが、一端の第2入口部21から投入され、投入された炭化物、及び、廃プラスチックが他端の第2出口部22に向けて順次搬送される第2加熱本体23を備えている。
【0028】
第2加熱本体23の上流側は第2加熱ドラム24(第2加熱手段)で覆われ、第2加熱本体23と第2加熱ドラム24の間(第2加熱ドラム24の内側)には、化石燃料等を用いた燃焼器15から熱風、及び、第1加熱本体13からの余剰熱が供給される。
【0029】
吸着手段4の吸着部本体25は重質成分が吸着される温度(例えば、100℃以下)に調整される(冷却される)構成とされている。
【0030】
第2加熱本体23の上流側と第2加熱ドラム24の間(第2加熱ドラム24の内側)に余剰熱が供給され、例えば、500℃程度に加熱されることで、廃プラスチックが熱分解されて重質成分、及び、熱分解ガス(軽質分)が得られる。そして、吸着手段4の吸着部本体25の温度が降温されて炭化物に重質成分が吸着される。
【0031】
尚、第2加熱本体23と第2加熱ドラム24の間(第2加熱ドラム24の内側)には、第1加熱本体13からの余剰熱を単独で供給したり、燃焼器15からの熱風を単独で供給したりすることも可能である。
【0032】
吸着手段4の吸着部第1出口部26からは、重質成分が分離された軽質成分(高品位なガス)である生成ガス(エチレン等)が排出され、燃料・化学原料として利用される。また、吸着手段4の吸着部第2出口部27からは、重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物が排出され、燃料・化学原料として利用される。
【0033】
上記構成の熱分解設備1は、バイオマスを炭化する炭化手段2と、廃プラスチックの熱分解を行い炭化物に重質成分を吸着させる熱分解手段3とが別構成とされている。炭化物に対する重質成分の吸着量を増すためには、炭化物を賦活化(空気や水蒸気により一部ガス化)することが考えられる。また、第1加熱本体13にバイオマスの供給がない場合、使用済みの炭化物を賦活化して再利用することができる。
【0034】
上述した熱分解設備1では、炭化手段2によりバイオマスが炭化されて炭化物が得られる一方、熱分解手段3で廃プラスチックが熱分解されて重質成分(100℃以下で液体、固体)、及び、熱分解ガスが生成されると共に、吸着手段4で固体の炭化物に重質成分が吸着される。これにより、重質成分が分離された軽質成分(高品位な熱分解ガス)、及び、重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物を燃料・化学原料として利用することができる。
【0035】
これにより、バイオマス、及び、廃プラスチックを有効に利用して、効率よく燃料・化学原料の成分を得ることが可能になる。
【0036】
尚、バイオマスとしては、林地残材、間伐材、未利用樹、製材廃材、建設廃材などの木質バイオマスや、稲、麦わら、もみ殻などの未使用のバイオマス、古紙、家畜の糞尿、食品残渣、汚泥などの廃棄物系バイオマスを用いることが可能である。
【0037】
図2に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
図2には本発明の第2実施例に係る熱分解設備の全体の構成を説明する概略系統を示してある。
【0038】
第2実施例の熱分解設備6は、バイオマスを炭化して炭化物を得る炭化手段7と、炭化手段7で得られた炭化物、及び、廃プラスチックが投入され、廃プラスチックを熱分解して重質成分、及び、ガスを生成する熱分解手段8(熱分解吸着手段)と、炭化物に重質成分を吸着させる吸着手段(熱分解吸着手段:後述する後筒本体部37)とから構成されている。そして、炭化手段7と熱分解手段8が一つの設備で構成されている。
【0039】
炭化手段7、及び、熱分解手段8は、一端である第1上端部31から廃プラスチックが投入される内側筒部32、及び、内側筒部32の外周に同軸上に配され、一端である第2上端部33からバイオマスが投入される外側筒部34からなる前筒本体部35を備えている。前筒本体部35の外周部には第1加熱部36が配され、第1加熱部36により、内側筒部32、及び、外側筒部34の内部が所定の温度に加熱される。尚、内側筒部32と外側筒部34の配置は、同軸上に限らない。
【0040】
即ち、第1加熱部36により、外側筒部34に投入されたバイオマスを炭化すると共に、内側筒部32に投入された廃プラスチックを熱分解する温度に加熱される。例えば、外側筒部34の内部が600℃から800℃、内側筒部32の内部が500℃程度になるように、第1加熱部36により、前筒本体部35が加熱される。
【0041】
第1加熱部36の熱源は、原料である木質バイオマスや廃プラスチック、または、生成物である熱分解ガスや炭化物の一部、もしくは他の燃料を外部で燃焼させたガス、または余剰電力によるヒーター加熱とすることが可能である。もしくは、第1加熱部36の代わりに、第2上端部33から空気または酸素を供給することにより、バイオマスの一部を燃焼させることにより熱を得ることも可能である。
【0042】
前筒本体部35の他端側である下端側には後筒本体部37(熱分解吸着手段:吸着手段)が配され、後筒本体部37(吸着手段)には、外側筒部34で生成された炭化物、及び、内側筒部32で熱分解されて生成された廃プラスチックの生成物が搬入される。後筒本体部37(吸着手段)の外周部には第2加熱部38が配され、第2加熱部38により後筒本体部37(吸着手段)の内部が所定の温度に加熱される。
【0043】
即ち、第2加熱部38により、後筒本体部37(吸着手段)に搬入された炭化物に対して廃プラスチックの生成物である重質成分、及び、バイオマス由来の熱分解ガスに含まれる重質成分を吸着させる温度(例えば、100℃以下)に後筒本体部37(吸着手段)の内部が加熱、または、冷却される。
【0044】
そして、後筒本体部37(吸着手段)の出口部39からは、重質成分が吸着された炭化物が排出され、燃料・化学原料として利用される。また、後筒本体部37の出口部39からは、重質成分が分離された軽質成分(高品位なガス)である熱分解ガスとしての生成ガス(エチレン等)が排出され、燃料・化学原料として利用される。
【0045】
上記構成の熱分解設備6は、バイオマスを炭化する炭化手段7と、廃プラスチックの熱分解を行う熱分解手段8と、炭化物に重質成分を吸着させる後筒本体部37(吸着手段)とが一つの設備で構成されている。そして、第1加熱部36により、前筒本体部35が加熱され(例えば、600℃から800℃)、外側筒部34のバイオマスが炭化されると共に、内側筒部32で廃プラスチックが熱分解される。
【0046】
炭化物、及び、熱分解で生成された生成物(重質成分、軽質成分)は後筒本体部37(吸着手段)に送られ、第2加熱部38により、廃プラスチックの生成物である重質成分とバイオマス由来の熱分解ガスの重質成分を炭化物に吸着させる温度(例えば、100℃以下)に後筒本体部37(吸着手段)が温度調節される。
【0047】
重質成分が炭化物に吸着され、重質成分が分離された熱分解ガス(軽質成分:エチレン等)が得られ、重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物、及び、重質成分が分離された熱分解ガス(軽質成分:エチレン等)が燃料・化学原料として排出される。
【0048】
第1実施例と同様に、炭化物に対する重質成分の吸着量を増すためには、炭化物を賦活化(空気や水蒸気により一部ガス化)することが考えられる。また、外側筒部34にバイオマスの供給がない場合、使用済みの炭化物を賦活化して再利用することができる。
【0049】
上述した熱分解設備6では、一つの設備で構成された、炭化手段7によりバイオマスが炭化されて炭化物が得られる一方、熱分解手段8で廃プラスチックが熱分解されて重質成分(100℃以下で液体、固体)、及び、熱分解ガスが生成されると共に、固体の炭化物に重質成分が吸着される。
【0050】
このため、一つの設備により、重質成分が分離された軽質成分(高品位な熱分解ガス)、及び、重質成分が吸着されて発熱量が確保された炭化物を得ることができ、一つの設備で得られた高品位な熱分解ガス、及び、発熱量が確保された炭化物を燃料・化学原料として利用することができる。
【0051】
これにより、バイオマス、及び、廃プラスチックを一つの設備を用いて有効に利用して、効率よく燃料・化学原料の成分を得ることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は熱分解設備の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、6 熱分解設備
2、7 炭化手段
3、8 熱分解手段
4 吸着手段
11 第1入口部
12 第1出口部
13 第1加熱本体
14 第1加熱ドラム
15 燃焼器
21 第2入口部
22 第2出口部
23 第2加熱本体
24 第2加熱ドラム
25 吸着部本体
26 吸着部第1出口
27 吸着部第2出口
31 第1上端部
32 内側筒部
33 第2上端部
34 外側筒部
35 前筒本体部
36 第1加熱部
37 後筒本体部(吸着手段)
38 第2加熱部
39 出口部