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特開2023-32885光学物品用水系プライマー組成物、光学積層体、光学物品、レンズ、及び眼鏡
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  • 特開-光学物品用水系プライマー組成物、光学積層体、光学物品、レンズ、及び眼鏡 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032885
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】光学物品用水系プライマー組成物、光学積層体、光学物品、レンズ、及び眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/23 20060101AFI20230302BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20230302BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20230302BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20230302BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230302BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G02B5/23
G02B1/14
G02C7/10
G02C7/00
C08F299/06
B32B27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139242
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】森 力宏
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
2K009
4F100
4J127
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BA04
2H006BE02
2H006BE05
2H148DA04
2H148DA12
2H148DA24
2K009AA15
2K009BB11
2K009CC21
2K009CC35
2K009DD02
2K009DD05
2K009DD06
2K009DD08
2K009EE01
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK41B
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK52C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA07B
4F100CA13B
4F100EJ54
4F100EJ65B
4F100GB71
4F100JB14
4F100JD09B
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK08
4F100JK12
4F100JL09
4F100YY00B
4J127AA03
4J127BB221
4J127BD411
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA24
(57)【要約】
【課題】本発明によると、特定波長の光吸収能を有し、環境負荷の小さい光学物品用水系プライマー組成物と、この光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含む光学積層体、光学物品、レンズ、及び眼鏡とが提供される。
【解決手段】一実施形態によると、光学物品用水系プライマー組成物が提供される。この光学物品用水系プライマー組成物は、ウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、水溶性機能性色素、及び、水を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、
水溶性機能性色素、及び、

を含む光学物品用水系プライマー組成物。
【請求項2】
前記水溶性機能性色素は、250nm以上420nm未満の波長領域に極大吸収ピークを有する水溶性紫外線吸収剤を含む請求項1に記載の光学物品用水系プライマー組成物。
【請求項3】
前記水溶性機能性色素は、420nm以上500nm以下の波長領域に極大吸収ピークを有する水溶性青色光吸収剤を含む請求項1又は2に記載の光学物品用水系プライマー組成物。
【請求項4】
前記水溶性機能性色素の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学物品用水系プライマー組成物。
【請求項5】
光学基材と、
前記光学基材の少なくとも一方の主面上に設けられ、請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含むプライマー層と、
前記プライマー層の前記光学基材と接する面とは反対側の面上に設けられ、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、及びシロキサン結合を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む樹脂層と
を備える光学積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の光学積層体を含む光学物品。
【請求項7】
前記光学基材がプラスチックレンズ基材である請求項5に記載の光学積層体を含むレンズ。
【請求項8】
ウレタンアクリレート及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体及び水溶性機能性色素を含むレンズ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のレンズを備えた眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学物品用水系プライマー組成物、光学積層体、光学物品、レンズ、及び眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡は、屈折異常の補正や眼の保護のために用いられる光学物品である。眼鏡に用いられるプラスチックレンズやガラスレンズの表面には、上記の目的以外の機能を持たせるために、機能層が積層されることがある。例えば、ハードコート層は、レンズ表面を傷つき等から保護するための機能層である。フォトクロミック層は、レンズにフォトクロミック性を持たせるための機能層である。
【0003】
機能層とレンズとの接着性を向上させるために、これらの間にプライマー層を設けることがある。プライマー層は、レンズ表面上にプライマー組成物を塗布し、得られた塗膜を硬化させることにより形成される。プライマー組成物は、例えば、ウレタン樹脂等の接着性成分と、この接着性成分を分散させるための溶媒とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2015/016313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特定波長の光吸収能を有し、環境負荷の小さい光学物品用水系プライマー組成物と、この光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含む光学積層体、光学物品、レンズ、及び眼鏡とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によると、光学物品用水系プライマー組成物が提供される。この光学物品用水系プライマー組成物は、ウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、水溶性機能性色素、及び、水を含む。
【0007】
実施形態によると、光学積層体が提供される。光学積層体は、光学基材と、プライマー層と、樹脂層とを含む。プライマー層は、光学基材の少なくとも一方の主面上に設けられ、実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含む。樹脂層は、プライマー層の光学基材と接する面とは反対側の面上に設けられ、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、及びシロキサン結合を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
【0008】
実施形態によると、実施形態に係る光学積層体を含む光学物品が提供される。
【0009】
実施形態によると、レンズが提供される。このレンズは、光学基材がプラスチックレンズ基材である実施形態に係る光学積層体を含む。
【0010】
実施形態によると、レンズが提供される。このレンズは、ウレタンアクリレート及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体及び水溶性機能性色素を含む。
【0011】
実施形態によると、実施形態に係るレンズを備えた眼鏡が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、特定波長の光吸収能を有し 、環境負荷の小さい光学物品用水系プライマー組成物と、この光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含む光学積層体、光学物品、レンズ、及び眼鏡とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る光学積層体の一例を概略的に示す断面図。
図2】実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物は、ウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、水溶性機能性色素、及び、水を含む。
【0015】
実施形態に係るプライマー組成物は、水溶性機能性色素を含むため、紫外線や青色光等の特定波長の光を吸収可能なプライマー層を形成できる。また、水溶性機能性色素を用いるため、分散媒として水を用いることができる。したがって、このプライマー組成物は、有機溶媒を分散媒として用いるプライマー組成物と比較して、毒性が低く、環境負荷が小さい。また、プラスチックレンズにクラック等を生じさせにくく、プラスチックレンズの種類を選ばずに適用できる。
【0016】
以下、実施形態に係る光硬化性組成物について、詳細に説明する。
【0017】
[光学物品用水系プライマー組成物]
(1)接着性成分
ウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物は、プライマー層に接着性をもたらす主成分である。これらの化合物の中でも、耐候密着性を高めるという観点からは、ウレタンアクリレートを用いることが好ましい。
【0018】
光学物品用水系プライマー組成物に占める上記化合物の割合は、例えば、5質量%以上70質量%以下であり、好ましくは、20質量%以上50質量%以下である。この割合が高いと、塗布時に膜厚が厚くなるため均一な膜厚のプライマー層を得られにくくなる傾向にある。この割合が低いと、塗布時に膜厚が薄すぎるために十分な光吸収能を有するプライマー層を得にくくなる傾向にある。この割合は、例えば、公知の固形分濃度を測定する方法により算出できる。
【0019】
これらの化合物は、粒子状であることが好ましく、コロイド粒子状であることがより好ましい。上記化合物の光散乱法による平均粒径は、例えば、0.001μm以上0.100μm以下であり、好ましくは、0.005μm以上0.050μm以下である。
【0020】
これらの化合物の数平均分子量は、1,000以上100,000以下であることが好ましい。数平均分子量が大きいと、密着性良好で強靭なプライマー膜を形成可能ではあるが、粘度が高く均一な膜厚のプライマー層が得られにくい傾向にある。平均分子量が小さいと、密着性が不十分な傾向にある。この平均分子量は、例えば、Malvern Panalytical製ゼータサイザーナノZSなどを用いた動的光散乱法により測定できる。
【0021】
これらの化合物は、アニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基を有すると、水溶媒中での分散性が高まる。アニオン性基としては、具体的にカルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、スルホベタインなどのべタイン構造含有基等が挙げられる。1分子中の化合物が有するアニオン性基の個数は、1個以上であることが好ましい。
【0022】
(1-1)ウレタンアクリレート
ウレタンアクリレートは、ポリウレタン骨格を有し、主鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーである。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む。ウレタンアクリレート中の(メタ)アクリロイル基の個数は、1分子中に2個以上であることが好ましく、4~30個であることがより好ましい。
【0023】
(1-2)アクリルモノマー
アクリルモノマーは、重合により(メタ)アクリル樹脂を形成するモノマーである。アクリルモノマーは、1以上の(メタ)アクリロイル基を有する。アクリルモノマーは、アクリルモノマー中に(メタ)アクリロイル基を、1分子中に2個以上有することが好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を意味する。
【0024】
(1-3)アクリル樹脂
アクリル樹脂は、アクリルモノマーの重合体である。アクリル樹脂は、アクリル酸エステルモノマーを乳化剤により乳化重合させたものであることが好ましい。
【0025】
(1-4)ウレタン樹脂
ウレタン樹脂は、分子の主鎖中にウレタン結合を有する重合体である。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応物であることが好ましい。ポリオールとしては、ポリアルキレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。ポリイソシアネートは、芳香族系ポリイソシアネートであってもよく、脂肪族系ポリイソシアネートであってもよい。ポリイソシアネートは、脂肪族系ポリイソシアネートであることが好ましい。
【0026】
(1-5)エステル樹脂
エステル樹脂は、分子の主鎖中にエステル結合を有する重量体である。エステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合により生成する樹脂であって、分子中にウレタン結合(-NHCOO-)を含まない樹脂が好ましい。
【0027】
(2)水溶性機能性色素
機能性色素とは、特定波長の光を吸収する色素である。機能性色素には、紫外線吸収剤、青色光吸収剤、染料、近赤外線吸収剤、及び赤外線吸収剤などが含まれる。機能性色素は、1種類のみであってもよく、複数種類の混合物を含んでいてもよい。水溶性機能性色素は、水溶性機能性色素0.5gを水100gに加え、20℃で3時間撹拌した際に溶解可能な色素である。水溶性機能性色素は、水溶性紫外線吸収剤及び水溶性青色光吸収剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0028】
光学物品用水系プライマー組成物において、水溶性機能性色素が占める割合は、例えば、0.01質量%以上20質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは、0.3質量%以上7質量%以下である。また、光学物品用水系プライマー組成物の固形物において、水溶性機能性色素が占める割合は、1質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、5質量%以上30質量%以下である。
【0029】
水溶性機能性色素は、親水基を有していることが好ましい。親水基としては、ヒドロキシル基、スルホ基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。水溶性機能性色素は、1分子中に1つの親水基を有していてもよく、2以上の親水基を有していてもよい。
【0030】
(2-1)水溶性紫外線吸収剤
水溶性紫外線吸収剤は、250nm以上420nm未満の波長領域に極大吸収ピークを示す。水溶性紫外線吸収剤の極大吸収ピークは、可視・紫外分光法(Ultraviolet Visible Absorption Spectroscopy:UV-Vis)により確認できる。具体的には、先ず、0.01mmol/Lの水溶性紫外線吸収剤水溶液を調製する。この水溶液について、1cm石英セルを用いてUV-Vis分光光度計で吸収スペクトル測定する。
【0031】
光学物品用水系プライマー組成物において、水溶性紫外線吸収剤が占める割合は、例えば、0.01質量%以上20質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは、0.5質量%以上5質量%以下である。
【0032】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、親水性官能基を有するピリミジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体などが挙げられる。より具体的には、下記式(1)に表されるピリミジン誘導体、下記式(2)に表されるメチロバミン、下記式(3)に表されるベンゾフェノン誘導体、下記式(4)に表されるヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、及び株式会社富士フイルム製 COMFOGUARD UV002を用いることができる。
【0033】
【化1】
【0034】
上記式(I)において、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素、メチル基又はエチル基を意味する。
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
水溶性紫外線吸収剤を含む光学物品用水系プライマー組成物を用いると、光学積層体の耐候密着性を向上できる。
【0039】
(2-2)水溶性青色光吸収剤
水溶性青色光吸収剤は、420nm以上500nm以下の波長領域に極大吸収ピークを示す。水溶性青色光吸収剤の極大吸収ピークは、UV-Vis分光法により確認できる。具体的には、先ず、0.01mmol/Lの水溶性青色光吸収剤水溶液を調製する。この水溶液について、1cm石英セルを用いてUV-Vis分光光度計で吸収スペクトル測定する。
【0040】
光学物品用水系プライマー組成物において、水溶性紫外線吸収剤が占める割合は、例えば、0.01質量%以上20質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは、0.5質量%以上5質量%以下である。
【0041】
水溶性青色光吸収剤は、420nm以上480nm以下の波長領域に極大吸収ピークを有することが好ましい。
【0042】
水溶性青色光吸収剤の例には、株式会社富士フイルム製 COMFOGUARD VIS-001が挙げられる。
【0043】
(3)水
水は、光学物品用水系プライマー組成物の分散媒である。実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物は、水を分散媒として用いるため、有機溶媒を分散媒として用いるものと比較して、安全性が高く、環境負荷が小さいプライマー組成物を実現できる。
【0044】
光学物品用水系プライマー組成物において、水が占める割合は、例えば、20質量%以上95質量%以下であり、好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。水の割合が高いと、塗布時に膜厚が薄すぎるために所望の光吸収能を付与することが難しくなる傾向にある。水の割合が低いと、プライマー組成物の粘度が高まり、均一な膜厚のプライマー層を付与するのが困難な傾向にある。この割合は、例えば、ガスクロマトグラフ法で測定できる。
【0045】
(4)その他の添加剤
光学物品用水系プライマー組成物は、上述した化合物の他に、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、光重合性開始剤、中和剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0046】
(4-1)光重合性開始剤
ウレタンアクリレート、及びアクリルモノマーなどの光重合性モノマーを使用した場合、プライマー組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。プライマー組成物における光重合開始剤の割合は、例えば、重合性モノマー100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下であり、好ましくは、0.05質量部以上2.0質量部以下である。光重合開始剤の割合が高いと、得られるプライマー層が硬くなり、十分な密着性を得られない傾向にある。光重合開始剤の割合が低いと、得られるプライマー層の硬化が不十分となり、十分な硬度、及び密着性を得られない傾向にある。
【0047】
光重合開始剤の具体例には、ベンゾフェノン;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;1,2-ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレート等のα-ジカルボニル系化合物;2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6-ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキシド系化合物;1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルなどが挙げられる。
【0048】
これらの光重合開始剤の中でも、液状、もしくは水溶性の光重合開始剤を使用することが好ましい。液状、もしくは水溶性の光重合開始剤として具体的には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(BASF社製DAROCUR1173)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの混合物(BASF社製IRGACURE500)、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルの混合物(BASF製IRGACURE754)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドの水分散体(BASF社製IRGACURE819DW)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの混合物(BASF社製DAROCUR4265)などが挙げられる。
【0049】
これらの光重合開始剤は1種、又は2種以上を混合して用いてもかまわない。また、3級アミン等の公知の重合促進剤を併用することも可能である。
【0050】
(5-1)中和剤
中和剤は、上記のウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を分散させるために配合され得る。
【0051】
中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類;N,N-ジメチルエタノールアミンなどのN,N-ジアルキルアルカノールアミン;トリエタノールアミンなどのトリアルカノールアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
【0052】
(5-2)有機溶媒
有機溶媒は、例えば、上記のウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を分散させるために配合される。
【0053】
有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、2-ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジオキサンなどのエーテル類;ジアセトンアルコールなどのケトン類等が挙げられる。
【0054】
プライマー層の製造工程において、光学基材へのクラックの発生や、安全性の高さ等を考慮すると、プライマー組成物に占める有機溶媒の割合は、低いことが好ましい。光学物品用水系プライマー組成物に占める有機溶媒の割合は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。有機溶媒の割合の下限値は0質量%である。
【0055】
(6)光学物品用水系プライマー組成物の製造方法
光学物品用水系プライマー組成物は、例えば、以下の方法で製造できる。
先ず、各原料を準備する。ウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の原料としては、各化合物の分散液を用いることが好ましい。各化合物の分散液は、各化合物粒子、溶剤、及び中和剤を含み得る。溶剤としては、水を用いることが好ましい。中和剤としては、上述したものを用いる。化合物粒子の分散液において、固形分が占める割合は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。すなわち、実施形態に係る光学物品用プライマー組成物は、ウレタンアクリレート、アクリルモノマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の分散液と、水溶性機能性色素と、任意のその他添加剤とを含み得る。
【0056】
次に、準備した原料を、例えば、常圧常温下で混合して光硬化性組成物を得る。準備した原料を混合する順序は、特に制限されない。
【0057】
以上の方法で得られた光学物品用水系プライマー組成物は水溶性機能性色素を含むため、このプライマー組成物を用いると、安全性が高く、かつ、機能性を有するプライマー層が得られる。
【0058】
光学物品用水系プライマー組成物の原料としては、ウレタンアクリレートの分散液及びウレタン樹脂分散液の少なくとも一方を用いることが好ましい。以下、ウレタンアクリレート分散液及びウレタン樹脂分散液について詳述する。
【0059】
ウレタンアクリレートの分散液において、その固形分の量は、10~70質量%であることが好ましく、さらに20~50質量%であることがより好ましい。
【0060】
ウレタンアクリレートの分散液としては、ダイセル・オルネクス社製のUcecoat(登録商標)などが好適に使用できる。
【0061】
ウレタンアクリレート分散液としては、ウレタンアクリレートの硬化体の25℃における伸び率が0.1%以上10%以下であるものを用いることが好ましい。このようなウレタンアクリレートを含むプライマー組成物を用いると、3次元に高度に架橋された硬化体を得ることができる。硬化体の25℃における伸び率は、0.5%以上5.0%以下であることがより好ましい。また、ウレタンアクリレートの硬化体の25℃における引っ張り強度は、10MPa以上50MPa以下であることが好ましく、15MPa以上30MPa以下であることがより好ましい。
【0062】
水分散性ウレタン(メタ)アクリレートの単独硬化体の伸び率、及び引っ張り強度は、下記の方法により測定できる。先ず、ウレタン(メタ)アクリレートの分散液に、光重合開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを、固形分100質量部に対して0.3質量部となるように添加して混合液を得る。この混合液を、乾燥後の固形分の膜厚が約500μmになるように、シャーレ等の容器に取り分ける。取り分けた混合物を、室温の暗所で24時間静置し、80℃の暗所で更に6時間静置し、120℃の暗所で更に20分静置して、十分に乾燥させて残留物を得る。この残留物を窒素ガス雰囲気中で、405nmにおける出力が200mW/cmになるように、90秒間にわたって光照射してフィルムを得る。光照射に際しては、例えば、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを搭載したF3000SQを用いる。得られたフィルムを、幅15mm、長さ200mmの大きさに切断した後、中央部に50mm間隔で標点を記し、測定用サンプルを作成する。この測定サンプルを引っ張り試験機に取り付け、試験機のつかみの間隔を100mmとし、200mm/分の速さでサンプルを破断するまで引っ張ることで伸び率を測定する。サンプルが破断した際の応力を引っ張り強度とし、伸び率は、下記式により求める。
【0063】
伸び率(%)=((破断時の標点間距離-試験前の標点間距離)/(試験前の標点間距離))×100。
【0064】
ウレタンアクリレートの分散液に含まれるウレタンアクリレートは、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、アニオン性基活性水素基含有化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させることにより得られる。
【0065】
ポリイソシアネート化合物の具体例には、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、オクタメチレン-1,8-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、2,4-メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6-メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン-2,6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン-1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン-1,4-ジイソシアネート、1,9-ジイソシアナト-5-メチルノナン、1,1-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-イソシアナト-4-[(4-イソシアナトシクロヘキシル)メチル]-1-メチルシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン-2,3-ジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、フェニレン-1,3-ジイソシアネート、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメトキシ(1,1’-ビフェニル)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、1,2-ジイソシアナトベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)-2,3,5,6-テトラクロロベンゼン、2-ドデシル-1,3-ジイソシアナトベンゼン、1-イソシアナト-4-[(2-イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2-メチルベンゼン、1-イソシアナト-3-[(4-イソシアナトフェニル)メチル)-2-メチルベンゼン、4-[(2-イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0066】
さらに、上記ポリイソシアネート化合物の多量体(例えば、二量体、三量体など);ポリイソシアネート化合物の多量体と水との反応により生成するビウレット変性体;ポリイソシアネート化合物の多量体とアルコール又は後述する低分子量ポリオールとの反応により生成するアロファネート変性体やポリオール変性体;ポリイソシアネート化合物の多量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、及びこれら変性体の多量体なども、本発明の水分散性ウレタン(メタ)アクリレートの原料として用いることが可能である。これらのポリイソシアネート化合物は単独で用いることも、或いは2種以上のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いることも可能である。
【0067】
上記のポリイソシアネート化合物の中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0068】
ポリオール化合物の具体例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコール類;ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)などのポリ(アルキレンアジペート)類;ポリ-ε-カプロラクトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリールなどのポリカプロラクトンポリオール類;ポリ(1,4-ブタンジエン)グリコール、ポリ(1,2-ブタンジエン)グリコールなどのポリブタジエングリコール類;ポリ(ヘキサメチレンカーボネートなどのポリ(アルキレンカーボネート)類;ポリエステルポリオール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの1分子中に3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール類;シリコーンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は単独で用いることも、或いは2種以上のポリオール化合物を組み合わせて用いることも可能である。
【0069】
これらのポリオール化合物の中でもポリアルキレングリコール類、3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール類、ポリアルキレンアジペート類、ポリアルキレンカーボネートポリオール類、ポリカプロラクトンポリオール類、ポリエステルポリオール類は、硬化させる際の加熱温度をより低くすることができ、基材の熱変形や変色をより確実に防止することができる点から好ましい。
【0070】
アニオン性基活性水素基含有化合物とは、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、スルホベタインなどのべタイン構造含有基などのアニオン性基を1つ以上有し、かつ、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を2つ以上有する化合物である。かかるアニオン性基活性水素基含有化合物の具体例には、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、シスチン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸などが挙げられる。
【0071】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とは、分子内に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物である。かかる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の具体例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ) アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2, 2-ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
【0072】
ウレタンアクリレートを製造する際の上記各成分の配合量は、目的の構造に応じて適宜決定すればよい。ウレタンアクリレートが容易に得られやすいという観点からポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の合計当量を、ポリオール化合物に含まれる水酸基、アニオン性基活性水素基含有化合物に含まれる水酸基、アミノ基などの活性水素基、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物に含まれる水酸基の合計当量に対して、0.95~2.0当量、特に1.0~1.5当量の範囲から選択することが好ましい。
【0073】
なお、ポリオール化合物に含まれる水酸基、アニオン性基活性水素基含有化合物に含まれる水酸基、アミノ基などの活性水素基、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物に含まれる水酸基の合計当量に対して、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の合計当量が1.0を超える場合には、水分散後に鎖延長剤を用いて鎖延長することができる。当該鎖延長剤としては、公知の鎖延長剤を用いることが可能である。かかる、鎖延長剤として具体的には、水、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの短鎖ジオール、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチルトリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、α,α’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、3,3’-ジクロル-α,α’-ビフェニルアミン、m-キシレンジアミン、イソホロンジアミン、N-メチル-3,3’-ジアミノプロピルアミンなどのポリアミン類が挙げられる。
【0074】
ウレタンアクリレートの水分散液は、上記ウレタンアクリレートと中和剤とを混合して水に分散させたものであり、ウレタンアクリレートのエマルジョン、ディスパージョン、コロイダル分散液等の形態にある。
【0075】
ウレタン樹脂分散液に含まれるウレタン樹脂は、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基含有化合物、及びポリイソシアネート化合物を反応させることにより得られる水分散性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0076】
さらに活性水素基含有アクリレート化合物および/またはアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物を反応させてなる、日本国特許5016266号公報や、国際公開第2008/001875号パンフレットなどに記載されている水分散性ポリウレタン樹脂を混合することがより好適である。
【0077】
上記水分散性ポリウレタン樹脂の原料であるポリオール化合物、アニオン性基活性水素基含有化合物、ポリイソシアネート化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、前述の水分散性ウレタン(メタ)アクリレートの原料と同様なものを使用することが可能である。また、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられ、具体的には、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル アミノプロピルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルジエトキシシラン、N,N’-ビス〔α-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミンなどが挙げられる。
【0078】
水分散性ウレタン樹脂は、活性水素基含有成分(すなわち、少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基含有化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および/またはアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物)と、ポリイソシアネート成分(すなわち、ポリイソシアネート化合物)とを、水分散性ウレタン(メタ)アクリレートと同様にして、ワンショット法やプレポリマー法などに反応させることにより合成することができ、プレポリマー法がより好ましい。また鎖伸長剤を使用することもできる。
【0079】
水分散性ポリウレタン樹脂を光硬化することにより得られるウレタン樹脂層の表面硬度は、光硬化しない場合と同等であり、光硬化による表面硬度の向上効果は認められない。
【0080】
上記水分散性ウレタン樹脂の中でも、フォトクロミック積層体の外観、及び密着性の観点から、該水分散性ウレタン樹脂を乾燥して得られるウレタン樹脂膜の25℃における引っ張り強度が20MPa以上70MPa以下、特に30MPa以上60MPa以下であり、25℃における伸び率が100%以上1000%以下、特に200%以上800%以下である水分散性ウレタン樹脂であることが好適である。水分散性ウレタン樹脂のウレタン樹脂膜の引っ張り強度及び伸び率は、ウレタンアクリレートと同様にして測定できる。
【0081】
また、水分散性ウレタン樹脂の中でも、得られるフォトクロミック積層体の外観向上、及び密着性の観点から、水分散性ウレタン樹脂の乾燥被膜のビッカース硬度が1以上8未満で、特に2以上6以下であるものが好ましい。水分散性ウレタン樹脂の乾燥被膜のビッカース硬度も、水分散性ウレタン(メタ)アクリレートと同様にして測定できる。
【0082】
上記水分散性ポリウレタン樹脂を使用する場合の水分散性ポリウレタン樹脂の配合割合は、得られるプライマーコート層の表面硬度の低下によるフォトクロミック層積層後の表面硬度の低下を防止し、また、密着性向上効果を十分に得るためには、水分散性ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して、水分散性ウレタン樹脂を5~200質量部混合することが好ましく、10~150質量部混合することがより好ましく、30~100質量部混合することが最も好ましい。
【0083】
また、水分散性ウレタン樹脂は、そのまま配合することも可能であるし、該ウレタン樹脂が水に分散された水分散液を配合することも可能である。
【0084】
水分散性ウレタン樹脂の分散液としては、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス420、株式会社トクヤマ製NJ-321A等を好適に使用できる。
【0085】
[光学積層体]
実施形態に係る光学積層体は、光学基材と、光学基材の少なくとも一方の主面上に設けられ、実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含むプライマー層と、プライマー層の光学基材と接する面とは反対側の面上に設けられ、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びシロキサン結合を有する樹脂などを含む樹脂層とを備える。
【0086】
図1は、実施形態に係る光学積層体の一例を概略的に示す断面図である。図1に示す光学積層体1は、光学基材2と、光学基材2の一方の主面上に設けられたプライマー層3と、プライマー層3上に設けられた樹脂層とを備える。光学基材2は、凹凸形状を有する。プライマー層3及び樹脂層4は、光学基材2の凸面側を被覆している。
【0087】
(1)光学基材
光学基材としては、光透過性を有する基材であれば特に限定せずに使用できる。光学基材の例には、ガラスレンズ、プラスチックレンズ、家屋若しくは車両の窓に用いられるガラスや樹脂が挙げられる。実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物は、水を分散媒として用いるため、有機溶剤を分散媒として用いるプライマー組成物と比較して、プラスチックに影響を与えにくい。したがって、実施形態に係るプライマー組成物は、光学基材としてプラスチックレンズを用いる光学積層体に好適である。
【0088】
プラスチックレンズとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂レンズ;多官能(メタ)アクリル樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂およびチオエポキシ系樹脂等の架橋性樹脂レンズ等、公知のものが使用できる。プラスチックレンズは、メタクリル系プラスチックレンズ又はチオウレタン系プラスチックレンズが好適である。すなわち、実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物により得られるプライマー層は、樹脂層と、これらのプラスチックレンズからなる光学基材とを接着するためのプライマー層として好適である。
【0089】
プラスチックレンズ基材の形状は、特に制限されるものではなく、公知の形状のものに適用できる。プラスチックレンズ基材の形状の例には、マイナスレンズ、プラスレンズ、斜角形状レンズ等が挙げられる。
【0090】
(2)プライマー層
プライマー層は、実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含み、この硬化体からなっていてもよい。プライマー層は、光学基材の一方の主面上に設けられていてもよく、両方の主面上に設けられていてもよい。プライマー層は、光学基材と樹脂層との接着性を高める。また、プライマー層は、水溶性機能性色素を含むため、この機能性色素による機能を有する。プライマー層の機能は、樹脂層と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0091】
プライマー層の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。
【0092】
プライマー層は、水溶性紫外線吸収剤及び水溶性青色光吸収剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。すなわち、実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物は、水溶性紫外線吸収剤及び水溶性青色光吸収剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0093】
水溶性紫外線吸収剤を含むプライマー層を備えると、光学積層体の耐候密着性が向上する傾向にある。すなわち、紫外線は、プラスチック系光学基材及びプライマー層自体の劣化を生じさせ得る。プライマー層に水溶性紫外線吸収剤が含まれると、このような紫外線を吸収することができるため、プライマー層自体、及び、プライマー層よりも紫外線照射体に対して内側に位置する光学基材に紫外線が届きにくくなる。また、紫外線は、人の眼に有害であり得る。したがって、水溶性紫外線吸収剤を含むプライマー層を備えた光学積層体は、眼鏡用プラスチックレンズとして好適である。
【0094】
水溶性青色光吸収剤が含まれるプライマー層は、青色光を吸収することができる。青色光は、可視光線の中でも強いエネルギーを持つ光であり、人の眼に悪影響を与え得る。したがって、水溶性青色光吸収剤を含むプライマー層を備えた光学積層体は、青色光カット機能を備えた眼鏡用レンズとして好適である。
【0095】
(3)樹脂層
樹脂層は、樹脂を含む。樹脂層は、機能性色素、ケイ素化合物、金属化合物、及び添加剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。樹脂層は、特定の成分を含有することにより、種々の機能を有し得る。例えば、樹脂、ケイ素化合物、及び遷移金属化合物を含む樹脂層は、光学基材を傷等から保護するためのハードコート層として機能し得る。機能性色素を含む樹脂層は、特定の波長の光を吸収できる。樹脂層は、後述する樹脂層形成用組成物の硬化体である。
【0096】
なお、樹脂層は単層であってもよく、複層構造を有していてもよい。例えば、樹脂層は、プライマー層上に設けられ、フォトクロミック化合物を含む第1樹脂層と、この第1樹脂層上に設けられ、ハードコート層として機能する第2樹脂層とを含んでいてもよい。
【0097】
樹脂層は、フォトクロミック化合物を含むフォトクロミック樹脂層、又は、ケイ素化合物を含むハードコート層であることが好ましい。すなわち、実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物により得られるプライマー層は、フォトクロミック樹脂層若しくはハードコート層と、光学基材とを接着するためのプライマー層として好適である。
【0098】
(3-1)樹脂
樹脂層に含まれる樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びシロキサン結合を有する樹脂を挙げられる。なお、(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂の少なくとも一方を意味する。
【0099】
(3-2)機能性色素
(3-2-1)フォトクロミック化合物
フォトクロミック化合物は、紫外線照射により可逆的に構造変化を生じる化合物である。フォトクロミック化合物を含む光学基材は、紫外線照射により無色透明から着色状態へと変化し得る。
【0100】
フォトクロミック化合物の例には、フルギド化合物、クロメン化合物及びスピロオキサジン化合物等が挙げられる。
【0101】
(3-2-2)サーモクロミック材料
サーモクロミック材料は、温度変化に伴い可逆的に構造変化を生じる材料である。サーモクロミック材料を含む光学基材は、温度変化によりその色が変化し得る。
【0102】
サーモクロミック材料の例には、ロイコ染料等が挙げられる。
【0103】
(3-2-3)ポルフィリン化合物
ポルフィリン化合物は、ポルフィリン骨格を有する化合物である。ポルフィリン化合物を含む光学基材は、可視光領域400~800nmの範囲における特定の波長を吸収させることができる。
【0104】
ポルフィリン化合物の例には、ポルフィリン骨格に中心金属としてZn2+、Cu2+、Ni2+、Co2+などが配位した化合物等が挙げられる。
【0105】
(3-2-4)近赤外線吸収剤
近赤外線吸収剤は、800nm以上2000nm以下の波長に吸収ピークを有する化合物である。近赤外線吸収剤を含む光学基材を用いると、太陽光などに含まれる近赤外線を効率よくカットすることができる。
【0106】
近赤外線吸収剤の例には、シアニン色素、フタロシアニン色素、ニッケルジチオレン錯体、スクアリウム色素、キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物などが挙げられる。
【0107】
(3-2-5)青色光吸収剤
青色光吸収剤は、420nm以上480nm以下の波長に吸収ピークを有する化合物である。青色光は、人の眼に対してまぶしさを感じさせたり、睡眠障害を生じさせたりすることがある。青色光吸収剤を含む光学基材を用いたメガネは、このような青色光が人の眼に届くことを抑制できる。
【0108】
青色光吸収剤の例には、420nm以上480nm以下の波長に吸収ピークを有するポルフィリン化合物が挙げられる。
【0109】
(3-2-6)偏光子
偏光子は、自然光から直線偏光を取り出すことができる光学素子である。偏光子を含む光学基材を用いると、反射光の透過率を低下させることができる。偏光子を含む光学基材を用いたメガネは、反射光が人の眼に届くことを抑制できるため、まぶしさを軽減できる。
【0110】
偏光子の例には、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質が挙げられる。二色性物質は、ポリビニルアルコールやポリエチレンテレフタラート等のフィルム内に分散されていてもよい。すなわち、樹脂層として、二色性物質が分散された偏光フィルムを用いてもよい。
【0111】
(3-2-7)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、水溶性紫外線吸収剤であってもよく、疎水性紫外線吸収剤であってもよく、これらの混合物であってもよい。プライマー層が紫外線吸収剤を含む場合、樹脂層に含まれる紫外線吸収剤の吸収ピークは、プライマー層に含まれる紫外線吸収剤の吸収ピークと異なっていることが好ましい。このような紫外線吸収剤を用いることにより、広範囲の紫外線をカット可能な光学積層体が得られる。水溶性紫外線吸収剤としては、プライマー組成物において説明したものと同種のものを用い得る。
【0112】
疎水性紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、トリアジン系などが挙げられる。
【0113】
(3-2-8)染料
染料は、上述した機能性色素以外の色素である。染料は、光学基材を所望の色に染めるために用いられる。染料の例には、アゾ染料、アントラキノン染料等が挙げられる。
【0114】
(3-3)ケイ素化合物
ケイ素化合物を含む樹脂層は、ハードコート層として機能し得る。ケイ素化合物は、有機シラン、二酸化ケイ素を含む。有機シランとしては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。有機シランは、1種類を用いてもよく、複数種類を用いてもよい。ケイ素化合物は、有機シラン及び二酸化ケイ素を含むことが好ましい。
【0115】
樹脂層に占めるケイ素化合物の割合は、例えば、10質量%以上99質量%以下であり、好ましくは、30質量%以上95質量%以下である。
【0116】
(3-4)金属化合物
金属化合物を含む樹脂層は、ハードコート層として機能し得る。金属化合物としては、金属元素の酸化物が挙げられる。金属化合物としては、Si、Al、Ti、Fe、In、Zr、Au、Sn、Sb、W及びCeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物または複合無機酸化物からなる微粒子が好適である。
【0117】
樹脂層に占める金属化合物の割合は、例えば、5質量%以上80質量%以下であり、好ましくは、10質量%上60質量%以下である。
【0118】
(3-5)その他の添加剤
その他の添加剤としては、光重合開始剤、レベリング剤及び光安定剤が挙げられる。光重合開始剤としては、プライマー組成物において説明したものと同種のものを用い得る。
【0119】
(3-5-1)レベリング剤
レベリング剤は、樹脂層の平滑化を目的として配合される。
レベリング剤としては、シリコーン鎖を有するシリコーン系の界面活性剤、またフッ化炭素鎖を有するフッ素系の界面活性剤などを用い得る。レベリング剤の具体例には、東レ・ダウコーニング株式会社製『L-7001』、『L-7002』、『L-7604』、『FZ-2123』、大日本インキ化学工業株式会社製『メガファックF-470』、『メガファックF-1405』、『メガファックF-479』、住友スリーエム社製『フローラッドFC-430』等が挙げられる。レベリング剤は、1種類のみを用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0120】
樹脂層に占めるレベリング剤の割合は、例えば、1ppm以上1000ppm以下であり、好ましくは、10ppm以上500ppm以下である。
【0121】
(3-5-2)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を使用できる。好適な例としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA-52、LA-57、LA-62、LA-63、LA-67、LA-77、LA-82、LA-87、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール、2,6-エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX 1010、1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、3790、5057、565等を挙げることができる。光安定剤は、1種類のみを用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0122】
樹脂層に占める光安定剤の割合は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下であり、好ましくは、0.05質量%以上3質量%以下である。
【0123】
(4)光学積層体の製造方法
光学積層体は、例えば、以下の方法で製造できる。
先ず、光学基材を準備する。プライマー層との密着性を高めるために、光学基材の表面に、アルカリ溶液、酸溶液などによる化学的処理、コロナ放電、プラズマ放電、研磨などによる物理的処理を行ってもよい。
【0124】
次に、この光学基材上に実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物を、例えば、スピンコート法により塗布して第1塗膜を得る。この第1塗膜上に、樹脂層形成用組成物を、例えば、スピンコート法により塗布して第2塗膜を得る。第1塗膜及び第2塗膜の積層体に対して、紫外線を照射し第1及び第2塗膜を硬化させて、光学積層体を得る。紫外線照射に際しては、例えば、窒素雰囲気下で行い、雰囲気温度は、例えば、10℃以上80℃以下とし、紫外線照射時間は、例えば、5秒以上120秒以下とする。紫外線強度は、365nmの波長で、50mW/cm以上500mW/cm以下とする。あるいは、第1及び第2塗膜を加熱により硬化させて、光学積層体を得る。加熱処理に際しては、例えば、空気下もしくは窒素雰囲気下で行い、雰囲気温度は、例えば、70℃以上130℃以下とし、加熱時間は、例えば、30分以上3時間以下とする。
【0125】
なお、第1塗膜を熱若しくは光硬化させてプライマー層を形成した後、このプライマー層上に樹脂層形成用組成物を塗布して第2塗膜を形成し、その後、第2塗膜を熱若しくは光硬化させて光学積層体を得てもよい。
【0126】
樹脂層形成用組成物は、樹脂及びモノマーの少なくとも一方と、任意成分とを含む。モノマーとしては、アクリルモノマーを用いることが好ましい。アクリルモノマーを用いると、樹脂層を紫外線照射により硬化させることができるため、熱により硬化させる場合と比較して、短時間で効率的に光学積層体を製造できる。
【0127】
アクリルモノマーとしては、公知の(メタ)アクリルモノマーを特に制限なく使用することが出来る。具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールA ジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量628の2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量804の2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2-ビス(4-アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量468のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、平均分子量330のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量736のポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量258のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量308のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量508のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量708のポリエチレングリコールジアクリレート、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物であるポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレートなどの多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレートなどの多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基を有し、かつケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を有するシルセスキオキサンモノマー、2-イソシアナトエチルメタクリレート、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
【0128】
なお、1)ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、及び2)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレートなどのなどの多官能(メタ)アクリレート、及び3)2,2-ビス[4-(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)などのビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレートを含む樹脂層形成用組成物、もしくは、4)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレートなどのなどの多官能(メタ)アクリレート、5)2,2-ビス[4-(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)などのビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレート、及び6)分子量600~2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600~2000のウレタンジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマーを含む樹脂層形成用組成物であることが好適である。さらには、1)~3)の(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、1)が10~30質量%、2)が35~50質量%、3)が10~65質量%であること、もしくは、3)~6)の(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、3)が35~70質量%、2)が10~40質量%、3)が10~40質量%であることがより好適である。
【0129】
[光学物品]
光学物品は、実施形態に係る光学積層体を含む。光学物品としては、プラスチック眼鏡用レンズ、このレンズを備えた眼鏡、自動車用窓、家屋窓等が挙げられる。
【0130】
実施形態に係るレンズは、ウレタンアクリレート、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体、水溶性機能性色素、及び光重合開始剤を含む。このようなレンズは、実施形態に係る光学物品用水系プライマー組成物の硬化体を含むと考えられる。すなわち、プラスチックレンズ等の光学基材や、光学基材を被覆する樹脂層に紫外線吸収剤を含有させる場合、樹脂等との相溶性を鑑みて、典型的には、疎水性紫外線吸収剤が用いられ、水溶性紫外線吸収剤は用いられない。プライマー層形成用組成物においては、樹脂成分等が占める割合が低く、また、水溶性の樹脂成分等は高い接着性を示すため、分散媒として水を使用できる。このようなプライマー層形成用組成物の硬化体であるプライマー層は、水溶性機能性色素を含み得る。
【0131】
図2は、実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す斜視図である。図3に示す眼鏡10は、2枚のレンズ11と、これらレンズ11を固定するフレーム12とを備える。2枚のレンズ11の少なくとも一方は、実施形態に係る光学積層体を含む。
【実施例0132】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0133】
<光学物品用水系プライマー組成物>
光学物品用水系プライマー組成物の材料としては、下記の材料を用いた。
【0134】
(A:水溶性機能性色素)
A1;ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム(285nm付近に級数極大を有する水溶性色素)
A2;メチロバミン(360nm付近に吸収極大を有する水溶性機能性色素)
A3;富士フィルム製COMFOGUARD UV-002(360nm付近に吸収極大を有する水溶性機能性色素)
(B:水溶性青色光吸収剤)
B1;富士フィルム製COMFOGUARD VIS-001(465nm付近に吸収極大を有する水溶性機能性色素)
(C:水分散性ウレタン(メタ)アクリレートの水分散液)
C1;カルボキシル基含有水分散ウレタンアクリレート ディスパージョン(ダイセル・オルネクス社製『Ucecoat7655』、平均粒子径150nm、固形分濃度35%、引っ張り強度25MPa、伸び率1.5%、)。
【0135】
C2;カルボキシル基含有水分散ウレタンアクリレート ディスパージョン(ダイセル・オルネクス社製『Ucecoat7849』、平均粒子径150nm、固形分濃度35%、引っ張り強度15MPa、伸び率1.3%)。
【0136】
C3;カルボキシル基含有水分散ウレタンアクリレート ディスパージョン(ダイセル・オルネクス社製『Ucecoat7674』、平均粒子径150nm、固形分濃度40%、引っ張り強度24MPa、伸び率18%)。
【0137】
(D:光重合開始剤)
D1;フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(BASF社製『Irgacure819』)。
【0138】
D2;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(BASF社製『DAROCUR1173』)
D3;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの混合物(BASF社製IRGACURE500)
D4;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの混合物(BASF製社DAROCUR4265)
(E:水分散性ウレタン樹脂分散液)
E1;水分散性ウレタン樹脂 ディスパージョン(第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス420」、固形分濃度32%、引っ張り強度30MPa、伸び率280%)。
【0139】
E2;水分散性ウレタン樹脂 ディスパージョン((株)トクヤマ製『NJ-321A』、固形分濃度35%、引っ張り強度50MPa、伸び率400%)。
【0140】
上記水分散性ウレタン(メタ)アクリレート、及び水分散性ウレタン樹脂の単独硬化体の引っ張り強度と伸び率は、上述した方法で測定した。
<フォトクロミック硬化性組成物>
フォトクロミック硬化性組成物の材料としては、下記の材料を用いた。
【0141】
((メタ)アクリルモノマー)
TMPT;トリメチロールプロパントリメタクリレート。
14G;ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が14であり、平均分子量が736)。
A-400;ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長9、平均分子量508)
SI-1:γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
GMA:グリシジルメタクリレート
RX-1:(メタ)アクリレート基を有するポリロタキサン
(国際公開第WO2018/030275号に記載の方法に従って、以下の特性を満足する(メタ)アクリレート基を有するポリロタキサンを合成した。
(メタ)アクリレート基を有するポリロタキサンの重量平均分子量Mw(GPC);880,000
アクリレート基変性割合:85モル%
側鎖に残存するOH基の割合;15モル%)
軸分子;分子量20,000の直鎖状ポリエチレングリコール(PEG)
包接環;α-シクロデキストリン(α-CD) 導入割合0.25
軸分子の末端;アダマンタンで封止
包接環に導入した側鎖;側鎖の(平均)分子量が約600
(フォトクロミック化合物)
PC1:下記式で表される化合物
【0142】
【化5】
【0143】
(重合開始剤)
CGI:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(商品名:Omnirad819、IGM社製)
(その他添加成分)
HALS:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(分子量508)(紫外線安定剤)
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)(紫外線安定剤)
L7001:東レ・ダウコーニング株式会社製 商品名;L7001(レベリング剤)
<光学積層体>
レンズ基材A:中心厚2.0mm、屈折率が1.60、チオウレタン系プラスチックレンズ。
レンズ基材C:中心厚2.0mm、屈折率1.67、チオウレタン系プラスチックレンズ
レンズ基材D:中心厚2.0mm、屈折率1.59、ポリカーボネートプラスチックレンズ。
レンズ基材E:中心厚2.0mm、屈折率1.50、メタクリル系プラスチックレンズ。
レンズ基材F:中心厚2.0mm、屈折率1.60、メタクリル系樹脂コーティング層(フォトクロミックコート層)付プラスチックレンズ
<実施例1>
(光学物品用光硬化性プライマー組成物(P1)の調製)
水溶性機能性色素(A1)3質量部、水分散ウレタンアクリレート(C1)100質量部、及び、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(D2)0.1質量部を十分に混合して混合物を得た。この混合物をセルロースアセテート製濾紙(目;0.8μm)で濾過し、光学物品用光硬化性プライマー組成物(P1)を得た。この組成物P1において、水溶関機能性色素A1は、溶解していた。
【0144】
(フォトクロミック硬化性組成物(F1)の調製)
TMPT 30質量部、A-400 21質量部、RX-1 3質量部、14G 40質量部、SI-1 3質量部、GMA 1質量部、PC1 2質量部、CGI 0.3質量部、HALS 3質量部、HP 1質量部、及びL7001 0.1質量部を混合し、これを70℃で15分間撹拌混合し、フォトクロミック硬化性組成物(F1)を得た。
【0145】
(光学積層体の製造)
レンズ基材として、中心厚が2.0mmで屈折率が1.60のチオウレタン系プラスチックレンズ(レンズ基材A)を用意した。このレンズ基材に対して、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃で5分間のアルカリエッチングを行った後、蒸留水で十分に洗浄した。
【0146】
スピンコーター(1H-DX2、MIKASA製)を用いて、レンズ基材の表面に、光学物品用水系プライマー組成物(P1)をスピンコートし塗膜を得た。この塗膜を、室温(20~25℃)で10分間乾燥させて、レンズ基材上に未硬化のプライマー層が積層された積層体を得た。未硬化のプライマー層の膜厚は、10μmとなるように調整した。
【0147】
次に、フォトクロミック硬化性組成物(F1) 約2gを、未硬化のプライマー層の表面上にスピンコートして、レンズ基材、未硬化のプライマー層、及び未硬化のフォトクロミック樹脂層(PC樹脂層)がこの順で積層された積層体を得た。フォトクロミック樹脂層の膜厚は、40±1μmとなるように調整した。窒素ガス雰囲気中で、この積層体の未硬化のフォトクロミック樹脂層に対して光照射し、未硬化のプライマー層及び未硬化のフォトクロミック樹脂層を硬化させた。光照射に際しては、405nmにおける出力が200mW/cmになるように調整した。光照射時間は90秒間とした。光照射には、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを搭載したF3000SQを用いた。
【0148】
次に、光硬化後の積層体に対して、100℃の恒温器にて、1時間の加熱処理を行い、フォトクロミック光学積層体を得た。
【0149】
<実施例2~8、比較例1>
表1に示した材料を用いた以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、実施例2~8及び比較例1に係るフォトクロミック光学積層体を製造した。
【0150】
<実施例9>
表1に示す材料を用いたこと、レンズ基材上にスピンコート法により形成した未硬化のプライマー層を、80℃で20分間乾燥させて硬化させたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、フォトクロミック光学積層体を得た。
【0151】
<実施例10、比較例2>
表1に示す材料を用いた以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で、実施例10及び比較例2に係るフォトクロミック光学積層体を製造した。
【0152】
<実施例11>
レンズ基材上に塗布した光学物品用水系プライマー組成物(P1)の塗膜を、光照射により硬化させた後、硬化後のプライマー層上にフォトクロミック硬化性組成物を塗布し、光照射によりフォトクロミック硬化性組成物の塗膜を硬化させたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法でフォトクロミック光学積層体を製造した。プライマー層及びフォトクロミック樹脂層の光硬化に際しては、実施例1に記載のフォトクロミック樹脂層の光硬化と同条件とした。
【0153】
<実施例12>
硬化後のプライマー層上に、フォトクロミック樹脂層を設ける代わりにハードコート層を積層させたこと、及び、プライマー層の膜厚を2.0~3.0μmの範囲内としたこと以外は、実施例11に記載したのと同様の方法で光学積層体を製造した。
【0154】
ハードコート層は、ハードコート用組成物をディップコーティング法により硬化後のプライマー層上に塗布した後、得られた塗膜を110℃の温度で2時間にわたって加熱させることにより設けた。ハードコート層の膜厚は3μmとした。ディップコーティング法において引き上げ速度15cm/分とした。
【0155】
ハードコート用組成物は、下記の方法で調製した。
先ず、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン58.8g、メチルトリエトキシシラン47.3g、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル47.5g、アセチルアセトン25.2g、t-ブチルアルコール82.8g、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「L-7001」)0.25gを混合して混合物を得た。40℃のこの混合物に、0.05N塩酸25g、0.1Nテトラメチルアンモニウムクロライドメタノール溶液13.9g、メタノール分散シリカゾル198.0g、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム(III)1.4gを順に攪拌しながら加え、48時間更に攪拌した。攪拌後の混合物に、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム(III)0.59gを混合して、ハードコート用組成物を調製した。
【0156】
<実施例13~16>
表1に示すレンズ基材を用いた以外は、実施例12に記載したのと同様の方法で、実施例13~16に係るフォトクロミック光学積層体を製造した。
【0157】
[評価試験]
<ビッカース硬度>
実施例1に係る光学積層体について、ビッカース硬度試験を行った。その結果、実施例1に係る光学積層体のビッカース硬度は12.0であった。
【0158】
<フォトクロミック性評価試験>
実施例1~11、比較例1及び2に係る光学積層体について、最大吸収波長、発色濃度、及び退色濃度を測定した。その結果、実施例1~11、比較例1及び2に係る光学積層体において、最大吸収波長は588nmであり、発色濃度は1.0であり、退色速度は56秒であった。なお、各測定方法の詳細は下記のとおりである。
【0159】
1)フォトクロミック特性
株式会社浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20±1℃、光学積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、フォトクロミック性を測定した。
・最大吸収波長(λmax):
株式会社大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。
・発色濃度{ε(120)-ε(0)}:
前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と光照射前の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
・退色速度〔t1/2(sec.)〕:
120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大吸収波長における吸光度が{ε(120)-ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0160】
<350nm透過率及び465nm透過率>
実施例1~16、比較例1及び2に使用したプライマー組成物を、それぞれの実施例、及び比較例と同じ膜厚になるように石英ガラス上にコーティングし、得られた積層体について、紫外可視分光法によりUV-visスペクトルを得た。このスペクトルから、350nmの透過率及び465nmの透過率を算出した。その結果を表1に示す。
【0161】
<密着性>
実施例1~16、比較例1及び2に係る光学積層体について、日本工業規格JISD-0202に準じてクロスカットテープ試験によって密着性を評価した。即ち、カッターナイフを使い、得られた光学積層体のフォトクロミック層又はハードコート層の表面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させた。このマス目上にセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、フォトクロミック層若しくはハードコート層が残っているマス目の数を数えた。この結果を表1に示す。
【0162】
<耐侯密着性>
実施例1~16、比較例1及び2に係る光学積層体について、以下の方法で耐候密着性を評価した。先ず、Q Lab Corporation製紫外線蛍光ランプ式促進耐侯性試験機(QUV)に光学積層体を設置し、60℃の温度で0.89w/mのUVA-340ランプ照射を8時間実施した。その後、光学積層体へのUV照射を停止し、温度50℃の加湿条件下で4時間静置した。これら一連の試験を1サイクルとして、2サイクル、すなわち、24時間毎に上述した密着性試験と同様の方法で密着性を評価した。100個のマス目のうち、剥離せずに残留したマス目が95個以上である状態を維持した最大時間を、表1に示す。なお、試験の最大時間は、360時間とした。
【0163】
【表1】
【0164】
以上の実施例1~16から明らかな通り、水溶性紫外線吸収剤を含む光学物品用水系プライマー組成物を用いて得られるプラスチックレンズは、優れた耐侯密着性を有することが分かる。しかしながら、比較例1、及び2では、耐侯密着性が不十分であった。
図1
図2