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特開2023-32934フィルム、および、フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032934
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】フィルム、および、フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230302BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20230302BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08L23/14
C08L23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139315
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大西 健介
(72)【発明者】
【氏名】桑▲崎▼ 直人
(72)【発明者】
【氏名】金坂 将
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AA20
4F071AA82
4F071AA88
4F071AF11Y
4F071AF59Y
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4J002BB04X
4J002BB14W
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】ヒートシール性に比較的優れたフィルム、および、フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るフィルムは、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含むプロピレン系重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含むエチレン系重合体と、を含有し、プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、エチレン系重合体の含有量が5質量%以上50質量%以下であり、少なくとも一方のフィルム表面から深さ10μmまでの領域におけるフィルムの流れ方向(MD)へのラメラ配向指数が1.20以上3.20以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含むプロピレン系重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含むエチレン系重合体と、を含有し、
プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、エチレン系重合体の含有量が5質量%以上50質量%以下であり、
少なくとも一方のフィルム表面から深さ10μmまでの領域におけるフィルムの流れ方向(MD)へのラメラ配向指数が1.20以上3.20以下である、フィルム。
【請求項2】
前記ラメラ配向指数が1.20以上2.00以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記プロピレン系重合体が、
プロピレンに由来する構造単位を95質量%以上含む重合体成分Aと、
プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上85質量%以下、並びに、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる1種以上に由来する構造単位を15質量%以上50質量%以下含む重合体成分Bと、を含有し、
重合体成分Aの含有量および重合体成分Bの含有量の合計100質量%に対して、重合体成分Aの含有量が50質量%以上85質量%以下であり、重合体成分Bの含有量が15質量%以上50質量%以下である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記エチレン系重合体が、
エチレンに由来する構造単位を65質量%以上98質量%以下、並びに、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%以上35質量%以下含み、
密度が860kg/m以上930kg/m以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
厚さが30μm以上200μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含むプロピレン系重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含むエチレン系重合体と、を含有し、プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、エチレン系重合体の含有量が5質量%以上50質量%以下である樹脂組成物を200℃以上350℃以下の条件で溶融混練する工程(1)と、
溶融混練された樹脂組成物を、フィルムの表層部を形成する樹脂組成物として、スクリューを備える押出機を用いてTダイより押し出す工程であって、スクリュー回転数:20rpm以上200rpm以下、押出量:10kg/時以上500kg/時以下、Tダイの押出温度:T℃の条件で押し出す工程(2)と、
押し出された樹脂組成物を、冷却温度:T℃、製膜速度:10m/分以上70m/分未満の条件で製膜する工程(3)と、を含み、
下記式(11)を満たす、フィルムの製造方法。
180≦T-T≦250 (11)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、および、該フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の被包装物を包装するフィルムとして、基材フィルムとシーラントフィルムとを積層させた多層フィルムが広く用いられている。このような多層フィルムは、シーラントフィルムが内側となるように重ねて、被包装物を収容する空間を形成するようにヒートシールすることで、包装袋とされる。
【0003】
シーラントフィルムには、ヒートシール性および耐衝撃性に優れることが求められる。また、シーラントフィルムを用いて形成された包装袋は、殺菌等の目的で加熱される場合があるため、該シーラントフィルムには、耐熱性に優れることも求められる。このような性能を有するシーラントフィルムとして、例えば、特許文献1では、プロピレン系重合体とエチレン系重合体とを含有するフィルムが開示されている。このようなフィルムにおいて、プロピレン系重合体は耐熱性およびヒートシール性を向上させ、エチレン系重合体は耐衝撃性を向上させる役割を担うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-46471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなフィルムであっても、ヒートシール性については改善の余地があり、より優れたヒートシール性を有するフィルムが要望されている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ヒートシール性に比較的優れたフィルム、および、フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフィルムは、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含むプロピレン系重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含むエチレン系重合体と、を含有し、プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、エチレン系重合体の含有量が5質量%以上50質量%以下であり、少なくとも一方のフィルム表面から深さ10μmまでの領域におけるフィルムの流れ方向(MD)へのラメラ配向指数が1.20以上3.20以下である。
【0008】
本発明に係るフィルムの製造方法は、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含むプロピレン系重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含むエチレン系重合体と、を含有し、プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、エチレン系重合体の含有量が5質量%以上50質量%以下である樹脂組成物を200℃以上350℃以下の条件で溶融混練する工程(1)と、溶融混練された樹脂組成物を、フィルムの表層部を形成する樹脂組成物として、スクリューを備える押出機を用いてTダイより押し出す工程であって、スクリュー回転数:20rpm以上200rpm以下、押出量:10kg/時以上500kg/時以下、Tダイの押出温度:T℃の条件で押し出す工程(2)と、押し出された樹脂組成物を、冷却温度:T℃、製膜速度:10m/分以上70m/分未満の条件で製膜する工程(3)と、を含み、下記式(11)を満たす、フィルムの製造方法。
180≦T-T≦250 (11)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシール性に比較的優れたフィルム、および、フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るフィルム11についてラメラ配向指数を測定する方法を説明する図面であり、フィルム11を模式的に示す図面である。
図2図2は、図1に示すフィルム11から切り出された切片21を模式的に示す図面である。
図3図3は、図2に示す切片21から切り出された薄片31を模式的に示す図面である。
図4図4は、図3に示す薄片31において、ビーム径42が5~10μmのX線を照射する場合の測定方法を模式的に説明する図面である。
図5図5は、図3に示す薄片31において、ビーム径52が5μm未満のX線を照射する場合の測定方法を模式的に説明する図面である。
図6図6は、図3に示す薄片31を設置する位置を模式的に説明する図面である。
図7図7は、図3に示す薄片31について小角X線散乱法による測定を行い、得られた2次元散乱像の一例、および、該2次元散乱像からqプロファイルを測定する方法を説明する図面である。
図8図8は、図7に示す2次元散乱像から得られたqプロファイルを示す図面である。
図9図9は、図8に示すqプロファイルから得られたKratkyプロットを示す図面である。
図10図10は、図8に示すqプロファイルおよび図9に示すKratkyプロットから得られた方位角プロファイル、および、図7に示す2次元散乱像から方位角プロファイルを測定する方法を説明する図面である。
図11図11は、本実施形態に係るフィルムの製造方法において用いられるフィルム製膜機10の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[フィルム]
本実施形態に係るフィルムは、プロピレン系重合体と、エチレン系重合体と、を含有する。
【0013】
<プロピレン系重合体>
プロピレン系重合体は、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含む重合体であり、すなわち、プロピレン単独重合体、または、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含むプロピレン系共重合体である。プロピレン系共重合体に含まれるプロピレン以外の構造単位としては、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位が挙げられる。
【0014】
プロピレン系共重合体としては、プロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。プロピレン系ランダム共重合体としては、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィン三元共重合体等が挙げられる。
【0015】
炭素原子数4~12のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンであり、より好ましくは、共重合特性、経済性等の観点から、1-ブテンまたは1-ヘキセンであり、さらに好ましくは、1-ブテンである。
【0016】
プロピレン系重合体は、好ましくは、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体であり、より好ましくは、プロピレン単独重合体またはプロピレン-エチレンランダム共重合体である。本実施形態に係るフィルムは、プロピレン系重合体を1種のみ含んでもよく、構造単位の種類や含有量の異なるプロピレン系重合体を2種以上含んでもよい。
【0017】
プロピレン系重合体がプロピレン-エチレンランダム共重合体である場合、エチレンに由来する構造単位を、通常、0.1質量%以上20質量%以下含み、好ましくは、0.5質量%以上10質量%以下含み、より好ましくは、0.5質量%以上6質量%以下含み、さらに好ましくは、2質量%以上6質量%以下含む。
【0018】
プロピレン系重合体がプロピレン-エチレン-α-オレフィン三元共重合体である場合、エチレンに由来する構造単位を、通常、0.1質量%以上20質量%以下含み、好ましくは、0.5質量%以上10質量%以下含み、より好ましくは、0.5質量%以上5質量%以下含み、さらに好ましくは、0.5質量%以上3質量%以下含む。また、α-オレフィンに由来する構造単位を、通常、0.1質量%以上20質量%以下含み、好ましくは、0.5質量%以上10質量%以下含み、より好ましくは、1質量%以上10質量%以下含み、さらに好ましくは、3質量%以上10質量%以下含む。
【0019】
プロピレン系重合体の融点は、耐熱性の観点から、好ましくは、120℃以上170℃以下であり、より好ましくは、130℃以上170℃以下である。
【0020】
プロピレン系重合体は、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは1g/10分以上10g/10分以下であり、より好ましくは、1g/10分以上5g/10分以下である。なお、プロピレン系重合体のMFRは、JIS K7210-1に規定されたA法に従って測定される。
【0021】
プロピレン系重合体の製造方法としては、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒またはメタロセン触媒の存在下、プロピレンを単独重合する方法、および、プロピレン以外のオレフィンとプロピレンとを共重合する方法が挙げられる。
【0022】
チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とを組み合わせて用いる触媒が挙げられる。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族~第6族の遷移金属化合物と助触媒成分とを組み合わせて用いる触媒が挙げられる。
【0023】
重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒中で行われるスラリー重合法および溶液重合法、並びに、溶媒の不存在下に行われる液相重合法および気相重合法が挙げられる。
【0024】
プロピレン系重合体の製造において、残留溶媒、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、生成したプロピレン系重合体が融解する温度以下の温度で、プロピレン系重合体の乾燥を行ってもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55-75410号、特許第2565753号公報に記載された方法が挙げられる。
【0025】
プロピレン系重合体は、該プロピレン系重合体を構成する成分を二段階以上の多段階で重合して得られるプロピレン系多段重合体であってもよい。プロピレン系重合体を構成する成分の組合せは、プロピレン単独重合体成分同士であってもよいし、プロピレン単独重合体成分およびプロピレン系共重合体成分であってもよいし、プロピレン系共重合体成分同士であってもよい。少なくとも2種のプロピレン系重合体成分を多段階で重合する場合、プロピレン系多段重合体は、少なくとも2種のプロピレン系重合体成分を含有するプロピレン系重合体組成物である。
【0026】
一態様として、好ましくは、プロピレン系重合体が、プロピレンに由来する構造単位を95質量%以上含む重合体成分Aと、プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上85質量%以下、並びに、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる1種以上に由来する構造単位を15質量%以上50質量%以下含む重合体成分Bと、を含有する。
【0027】
重合体成分Aに含まれるプロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは100%、すなわち、プロピレン単独重合体である。重合体成分Bに含まれるエチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる1種以上に由来する構造単位の含有量は、好ましくは、10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは、15質量%以上40質量%以下である。
【0028】
重合体成分Aの含有量および重合体成分Bの含有量の合計100質量%に対して、重合体成分Aの含有量は、好ましくは、50質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは、65質量%以上85質量%以下である。また、重合体成分Bの含有量は、好ましくは、15質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは、15質量%以上35質量%以下である。
【0029】
<エチレン系重合体>
エチレン系重合体は、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含む重合体であり、すなわち、エチレン単独重合体、または、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含むエチレン系共重合体である。エチレン系共重合体に含まれるエチレン以外の構造単位としては、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位が挙げられる。
【0030】
エチレン系重合体がエチレン系共重合体である場合、エチレンに由来する構造単位を、好ましくは、65質量%以上98質量%以下含み、より好ましくは、75質量%以上95質量%以下含む。また、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を、好ましくは、2質量%以上35質量%以下含み、より好ましくは、5質量%以上25質量%以下含む。
【0031】
エチレン系重合体の密度は、好ましくは、860kg/m以上930kg/m以下であり、より好ましくは、880kg/m以上930kg/m以下である。エチレン系重合体の密度が860kg/m以上であることで、剛性に優れたフィルムを得ることができる。また、エチレン系重合体の密度が930kg/m以下であることで、低温での耐衝撃性に優れたフィルムを得ることができる。なお、密度は、JIS K7112-1980に規定されたA法に従って測定される。
【0032】
エチレン系重合体は、一態様として、好ましくは、エチレンに由来する構造単位を65質量%以上98質量%以下、並びに、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%以上35質量%以下含み、密度が860kg/m以上930kg/m以下である。
【0033】
エチレン系重合体は、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.5g/10分以上30g/10分以下であり、より好ましくは、0.5g/10分以上10g/10分以下であり、さらに好ましくは、1g/10分以上5g/10分以下である。MFRが0.5g/10分以上であることで、フィルムの表面に微細な凹凸(所謂、ゆず肌)を発生してしまうのを抑制することができる。また、MFRが30g/10分以下であることで、フィルムのヒートシール性を良好なものとすることができる。なお、エチレン系重合体のMFRは、JIS K7210-1に規定されたA法に従って測定される。
【0034】
エチレン単独重合体は、いわゆる「高圧法」で製造されることが好ましい。「高圧法」によるエチレン単独重合体の製造は、一般に、槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140~300MPa、重合温度200~300℃でエチレンを重合することによって実施される。
【0035】
エチレン系共重合体の製造方法としては、公知のラジカル重合触媒やイオン重合触媒を用いた、公知の重合方法による製造方法が挙げられる。公知の触媒としては、例えば、過酸化物触媒、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒等が挙げられる。公知の重合方法としては、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、高圧ラジカル重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係るフィルムでは、プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が、50質量%以上95質量%以下であり、好ましくは、70質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは、75質量%以上95質量%以下である。また、エチレン系重合体の含有量が、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、5質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは、5質量%以上25質量%以下である。
【0037】
また、本実施形態に係るフィルムが2種以上のプロピレン系重合体を含有し、少なくとも1種のプロピレン系重合体がプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体であり、少なくとももう1種のプロピレン系重合体がプロピレン系多段重合体である場合、プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が、50質量%以上95質量%以下であり、好ましくは、70質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは、75質量%以上95質量%以下である。また、エチレン系重合体の含有量が、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、5質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは、5質量%以上25質量%以下である。
【0038】
<その他の成分>
本実施形態に係るフィルムは、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて、添加剤、その他の樹脂等のその他の成分を含有してもよい。なお、その他の成分は、あらかじめプロピレン系重合体に混合させて、ペレット状のプロピレン系重合体組成物としてもよい。
【0039】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、メルトフローレート調整剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、および、これらの共重合体の水素添加物が挙げられる。
【0040】
酸化防止剤とは、ポリオレフィン系樹脂の熱、光、酸素等による分解を防止する作用を有する化合物である。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、金属不活性化剤が挙げられ、好ましくは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤である。
【0041】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、テトラキス[メチレン-3(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオビス-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-tert-アミル-6-(1-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート、トコフェロール類が挙げられる。
トコフェロール類としては、α-トコフェロールであるビタミンEが挙げられ、好ましくは、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、テトラキス[メチレン-3(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートまたはビタミンEであり、より好ましくは、テトラキス[メチレン-3(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートまたはビタミンEである。
【0042】
フェノール系酸化防止剤の含有量は、フィルムの全質量100質量部に対して、通常、0.01質量部以上2質量部以下であり、好ましくは、0.01質量部以上1質量部以下であり、より好ましくは、0.01質量部以上0.5質量部以下である。
【0043】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ジフェニレンジホスホナイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、2-(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)-5-エチル-5-ブチル-1,3,2-オキサホスホリナン、2,2’,2’’-ニトリロ[トリエチル-トリス(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト、2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンが挙げられ、好ましくは、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトまたは2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンである。
【0044】
リン系酸化防止剤の含有量は、フィルムの全質量100質量部に対して、通常、0.01質量部以上2質量部以下であり、好ましくは、0.01質量部以上1質量部以下であり、より好ましくは、0.01質量部以上0.5質量部以下である。
【0045】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、トリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキル(C12~C14)チオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィドが挙げられ、好ましくは、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネートまたはジステアリル3,3’-チオジプロピオネートである。
【0046】
硫黄系酸化防止剤の含有量は、フィルムの全質量100質量部に対して、通常、0.01質量部以上2質量部以下であり、好ましくは0.01質量部以上1質量部以下であり、より好ましくは、0.01質量部以上0.5質量部以下である。
【0047】
中和剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。これらの中和剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
その他の添加剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルに代表される滑剤;炭素原子数8~22の脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等の帯電防止剤;合成シリカ粉末、合成アルミノシリケート粉末、ポリマービーズ、シリコーン樹脂化合物に代表される抗ブロッキング剤;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド等に代表される防曇剤が挙げられる。
【0049】
<ラメラ配向指数>
本実施形態に係るフィルムは、少なくとも一方のフィルム表面から深さ10μmまでの領域におけるフィルムの流れ方向(MD)へのラメラ配向指数が、1.20以上3.20以下であり、好ましくは、1.20以上2.00以下である。プロピレン系重合体は、フィルム中で配向相または球晶相の結晶構造を形成する。ラメラ配向指数が上記の範囲内であると、フィルム中に、適度にプロピレン系重合体の配向相が存在する。その結果、前記フィルムは、ヒートシール性に比較的優れる。
【0050】
ラメラ配向指数を上記範囲内に調整する方法としては、後述するフィルムの製造方法において、溶融混練温度、スクリュー回転数、押出量、押出温度、冷却温度および製膜速度を所定の範囲に調整する方法が挙げられる。これらの製造条件を所定の範囲に調整することにより、プロピレン系重合体における配向相および球晶相のバランスを制御することができ、その結果、ラメラ配向指数を上記範囲内に調整することができる。
【0051】
ラメラ配向指数は、小角X線散乱法による測定される。具体的な測定手順について、図1~10を参照しつつ説明する。
【0052】
(測定試料)
フィルムから小角X線散乱法による測定を行うための薄片を切り出し、切り出された薄片を測定試料とする。
【0053】
(薄片の作製)
図1に示すように、フィルム11の一部を、トリミングナイフ等を用いて切削し(図1中の点線部)、図2に示す切片21を得る。図2に示すように、切片21の一部を、スライサー等を用いて切削し(図2中の点線部)、図3に示す薄片31を得る。
【0054】
以下、薄片31の厚み方向(ND)をA方向、フィルムの流れ方向(MD)をB方向、フィルムの幅方向(TD)をC方向と呼称する(図3参照)。
【0055】
薄片31のサイズは、B方向については5~10mm、C方向についてはX線が透過する厚み(通常、100μm)とする。なお、A方向についてはフィルムの厚みと同じとなる。
【0056】
(小角X線測定)
図4および図5に示すように、薄片31において、フィルム表面(すなわち、図4および図5中のB方向に沿う表面)から深さ10μmまでの領域について小角X線測定を行う。X線は、そのビーム径が10μm以下のものを用いる。図4に示すように、X線のビーム径42が5~10μmの場合、薄片31のフィルム表面から深さ5μmの位置にビームの中心を合わせて測定を行う。図5に示すように、X線のビーム径52が5μm未満の場合、薄片31のフィルム表面からA方向に沿ってX線をビーム径52の間隔53で走査しながら測定を行う。測定回数は下記式(12)を満たす。X線のビーム径52が5μm未満の場合、2次元散乱像が複数得られるため、各2次元散乱像から算出されたラメラ配向指数の平均値を用いる。
X線のビーム径×測定回数≦10μm<X線のビーム径×(測定回数+1) (12)
【0057】
X線源は、そのビーム径が小さいため、その散乱強度が低くなる。そのため、X線源としては、十分なシグナル/ノイズ比が得られるように、放射光X線を用いる。X線の露光時間は、十分なシグナル/ノイズ比が得られるように調整したものを用いればよい。
【0058】
(薄片の設置)
図6に示すように、X線源61からX線が照射される位置に薄片31を設置し、薄片31の後方に検出器63を設置する。小角X線散乱法による測定を行い、2次元散乱像を得る。得られた2次元散乱像において、薄片31のA方向と平行な方向をX方向、薄片のB方向と平行な方向をY方向と呼称する。
【0059】
(ラメラ配向指数の算出方法)
得られた2次元散乱像から、以下の手順に従いラメラ配向指数を算出する。
【0060】
図7に、得られた2次元散乱像の一例を示す。得られた2次元散乱像における散乱強度をI(q)とし、二次元散乱像の中心からY方向に切り出したプロファイルをqプロファイルとする(図8参照)。
【0061】
qは、下記式(13)により算出される。
q=4πsinθ/λ (13)
(式中、πは円周率を示し、θは散乱角/2を示し、λはX線の波長(nm)を示す。)
【0062】
(qmaxの算出)
上記のqプロファイルのシグナル/ノイズ比が十分でない場合(3以下)、±45°以下の範囲で円環方向に平均化を行うことが好ましい。シグナル/ノイズ比が5以上であると好ましい。得られたqプロファイルをKratkyプロットし、I(q)×qが最大である位置qをqmaxとする(図9参照)。Kratkyプロットの方法は、例えば「放射光 Nov. 2006 Vol.19 No.6」に開示されている。
【0063】
(方位角プロファイルの作成)
中心からqmax離れた位置の散乱強度を方位角に対して散乱強度をプロットすることにより、方位角プロファイルを得る(図10参照)。方位角プロファイルにおいて、方向Yと平行な点を0°および180°とする。180°における散乱強度をI(180°)、135°における散乱強度をI(135°)とし、下記式(14)により、ラメラ配向指数(H)を算出する。
H=I(180°)/I(135°) (14)
【0064】
Kratkyプロットおよび方位角プロファイルは、必要に応じて、スムージング等の処理を行う。スムージング等の処理としては、例えば、隣接平均が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係るフィルムにおいて、厚さは、好ましくは、30μm以上200μm以下であり、より好ましくは、50μm以上100μm以下である。
【0066】
本実施形態に係るフィルムは、他のフィルムと積層されて使用されてもよい。他のフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン二軸延伸フィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリテレフタル酸エチルフィルム、および、アルミニウム箔等が挙げられる。本実施形態に係るフィルムと他のフィルムとを積層する方法としては、例えば、ドライラミネート法、押出ラミネート法等が挙げられる。
【0067】
また、本実施形態に係るフィルムは、袋状に形成されて内容物が収容される包装袋の材料として使用することができる。斯かる包装袋は、例えば、シャンプー、リンス、醤油、鍋つゆ等の液状物を収容するものであってもよく、塩、砂糖等の粉状物を収容するものであってもよく、レトルト食品等を収容するものであってもよい。
【0068】
[フィルムの製造方法]
本実施形態に係るフィルムの製造方法では、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含むプロピレン系重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含むエチレン系重合体と、を含有し、プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン系重合体の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、エチレン系重合体の含有量が5質量%以上50質量%以下である樹脂組成物を200℃以上350℃以下の条件で溶融混練する工程(1)と、溶融混練された樹脂組成物を、フィルムの表層部を形成する樹脂組成物として、スクリューを備える押出機を用いてTダイより押し出す工程であって、スクリュー回転数:20rpm以上200rpm以下、押出量:10kg/時以上500kg/時以下、Tダイの押出温度:T℃の条件で押し出す工程(2)と、押し出された樹脂組成物を、冷却温度:T℃、製膜速度:10m/分以上70m/分未満の条件で製膜する工程(3)と、を含む。
【0069】
本実施形態に係るフィルムの製造方法では、図11に示すように、スクリュー1aを備える押出機101を有するフィルム製膜機10が用いられる。具体的には、溶融混練された樹脂組成物を押し出す押出機101と、複数の押出機101を用いる場合に各押出機101から押し出された樹脂組成物の合流部分となるフィードブロック102と、該フィードブロック102から供給される樹脂組成物をシート状に押し出すTダイ103と、該Tダイ103から供給されるシート状の樹脂組成物を冷却する複数の冷却ロール104と、を有するフィルム製膜機10が用いられる。
【0070】
スクリュー1aの直径(D;螺旋状に形成される羽部の径)は、好ましくは40mm以上200mm以下であり、より好ましくは50mm以上200mm以下である。また、スクリュー1aの長さ(L)は、好ましくは800mm以上6000mm以下である。スクリュー1aの直径に対するスクリュー1aの長さの割合(L/D)は、好ましくは15以上40以下であり、より好ましくは20以上35以下である。なお、押出機101においてスクリュー1aは、少なくとも一つ備えていればよく、複数備えるように構成されていてもよい。
【0071】
<工程(1)>
工程(1)では、プロピレン系重合体とエチレン系重合体とを含有する樹脂組成物を溶融混練する。溶融混練とは、溶融した状態の樹脂組成物を混練することであり、具体的には、溶融した状態の樹脂組成物を、押出機101内でスクリュー1aの回転によって混練する。そして、溶融した状態の樹脂組成物をスクリュー1aの回転によって混練しつつ、押出機101の出口側へ向かって搬送する。
【0072】
押出機101に供給される樹脂組成物は、上述のプロピレン系重合体および上述のエチレン系重合体を含有する。プロピレン系重合体の含有量およびエチレン系重合体の含有量についても、上述の範囲とすることができる。押出機101に供給される樹脂組成物は、予め溶融した状態のものであってもよく、溶融前の状態(ペレット状のもの)であってもよい。溶融前のペレットを押出機101に供給する場合、ペレットは、押出機101内で溶融される。
【0073】
溶融混練温度は、200℃以上350℃以下であり、好ましくは、220℃以上300℃以下である。溶融混練温度が上記の範囲内の条件で工程(1)を行うことで、ヒートシール性に比較的優れたフィルムを得ることができる。押出機101は、供給された樹脂組成物の溶融状態が維持されるように、ヒーター等の加熱手段(図示せず)を備えていてもよい。該加熱手段は、前記樹脂組成物を上述の溶融混練温度に加熱するように構成される。
【0074】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)において溶融混練された樹脂組成物を、フィルムの表層部を形成する樹脂組成物として、スクリュー1aを備える押出機101を用いてTダイ103より押し出す。具体的には、スクリュー1aの回転により樹脂組成物の搬送を継続することで、押出機101の出口から樹脂組成物を押し出す。
【0075】
スクリュー1aの回転数は、20rpm以上200rpm以下であり、好ましくは40rpm以上150rpm以下である。スクリュー1aの回転数が上記の範囲内の条件で工程(2)を行うことで、ヒートシール性に比較的優れたフィルムを得ることができる。
【0076】
押出量は、10kg/時以上500kg/時以下であり、好ましくは70kg/時以上500kg/時以下である。押出量が上記の範囲内の条件で工程(2)を行うことで、ヒートシール性に比較的優れたフィルムを得ることができる。
【0077】
Tダイ103の押出温度Tは、好ましくは220℃以上300℃以下であり、より好ましくは230℃以上280℃以下である。なお、Tダイ103の押出温度Tは、Tダイ103自体の温度である。
【0078】
押出機101の出口圧力は、好ましくは10Mpa以上35Mpa以下であり、より好ましくは15Mpa以上30Mpa以下である。なお、出口圧力とは、押出機101の出口付近において溶融樹脂にかかる圧力である。出口圧力の測定方法としては、押出機101の出口付近に圧力計を設置して測定する方法等が挙げられる。
【0079】
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)において押し出された樹脂組成物を製膜する。具体的には、押出機101から押し出された樹脂組成物が、フィードブロック102を介してTダイ103に供給される。そして、押出機101から押し出された樹脂組成物がTダイ103から排出されることで、所定の厚さに成膜される。成膜された樹脂組成物は、冷却ロール104と接触することで冷却されて、フィルムFが形成される。
【0080】
製膜速度は、10m/分以上70m/分未満であり、好ましくは30m/分以上60m/分以下である。製膜速度が上記の範囲内の条件で工程(3)を行うことで、ヒートシール性に比較的優れたフィルムを得ることができる。
【0081】
成膜された樹脂組成物は、好ましくは30μm以上200μm以下の厚さ、より好ましくは50μm以上100μm以下の厚さに成膜される。
【0082】
冷却ロール104の冷却温度Tは、好ましくは20℃以上60℃以下であり、より好ましくは20℃以上50℃以下である。なお、冷却ロール104の冷却温度Tは、冷却ロール104自体の温度である。
【0083】
Tダイ103の押出温度Tおよび冷却ロール104の冷却温度Tは、下記式(11)を満たす。斯かる構成により、ヒートシール性に比較的優れたフィルムを得ることができる。
180≦T-T≦250 (11)
【0084】
なお、本実施形態に係るフィルムおよびフィルムの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記以外の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、上記の1つの実施形態に係る構成や方法等を上記の他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい。
【実施例0085】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
<プロピレン系重合体組成物(1)>
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合した。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、プロピレン系多段重合体を得た。得られたプロピレン系多段重合体は、プロピレン単独重合体(重合体成分A)の含有量が77質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(重合体成分B)の含有量が23質量%であった。また、重合体成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30質量%であった。
得られたプロピレン系多段重合体100質量部、水酸化カルシウム0.005質量部、スミライザーGP(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学株式会社製)0.075質量部、スミライザーGS(2,4―ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、住友化学株式会社製)0.03質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系重合体組成物(1)を得た。得られたプロピレン系重合体組成物(1)は、230℃で測定したメルトフローレートが3g/10分であった。
【0087】
なお、プロピレン系多段重合体における重合体成分Aおよび重合体成分Bの含有量は、重合体成分Aおよび重合体成分Bの重合時の物質収支から得られたものである。
【0088】
プロピレン系重合体組成物(1)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1に規定されたA法に従って、温度230℃、荷重2.16kgで測定したものである。
【0089】
プロピレン系多段重合体の重合体成分Bにおいて、エチレンに由来する構造単位の含有量は、プロピレン系重合体組成物(1)の全体のIRスペクトル測定を行い、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている「(ii)ブロック共重合体に関する方法」に従い、下記式(15)により算出されたものである。
=(E-E×P)/P (15)
(式中、E、EおよびEは、それぞれ、プロピレン系重合体組成物(1)、重合体成分Aおよび重合体成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量を示し、PおよびPは、それぞれ、重合体成分Aおよび重合体成分Bの含有量を示す。)
【0090】
<エチレン系重合体(1)>
エチレン系重合体(1)として、エチレン-ブテン-1共重合体(タフマー A4085s、三井化学株式会社製)を用いた。エチレン系重合体は、エチレンに由来する構造単位の含有量が80質量%、1-ブテンに由来する構造単位の含有量が20質量%であり、190℃で測定したメルトフローレートが3.6g/10分であり、密度が885kg/mであった。
【0091】
エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1に規定されたA法に従って、温度190℃、荷重2.16kgで測定したものである。
【0092】
エチレン系重合体の密度は、JIS K7112-1980に規定されたA法に従って測定したものである。なお、試料には、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った。
【0093】
<フィルム製膜機1>
図11に示すフィルム製膜機10において、押出機101を1台とし、押出機101からフィードブロック102を介してTダイ103に接続し、Tダイ103から押出された溶融樹脂を冷却ロール104で冷却固化して巻き取るフィルム製膜機を用いた。押出機101内のスクリュー1aの直径(D)は50mm、長さ(L)は1600mmであり、L/Dは32であった。Tダイ103のダイ幅は400mm、リップ開度は0.8mmであった。
【0094】
<フィルム製膜機2>
図11に示すフィルム製膜機10において、押出機101を、フィルムの中間部を形成する樹脂組成物を押出すメイン押出機1台と、フィルムの表層部を形成する樹脂組成物を押出すサテライト押出機2台との合計3台とし、上記3台の押出機101がフィードブロック102を介してTダイ103に接続し、Tダイ103から押出された溶融樹脂を冷却ロール104で冷却固化して巻き取るフィルム製膜機を用いた。3台の押出機のうち、メイン1台のスクリュー1aの直径(D)は90mm、長さ(L)は2970mmであり、L/Dは33であり、サテライト2台のスクリュー1aの直径(D)は65mm、長さ(L)は1885mmであり、L/Dは29であった。Tダイ103のダイ幅は1250mm、リップ開度は0.8mmであった。
【0095】
<実施例1>
プロピレン系重合体組成物(1)90質量%とエチレン系重合体(1)10質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物をフィルム製膜機1に供給して、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。フィルム製膜機1におけるスクリュー1aの回転数を50rpm、溶融混練温度を270℃、Tダイ103の押出温度Tを250℃、冷却ロール104の冷却温度Tを50℃、製膜速度を10m/分とした。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は13kg/時であった。製膜条件を表1に示す。
【0096】
<実施例2>
フィルム製膜機1におけるスクリュー1aの回転数を80rpm、製膜速度を20m/分とした以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は27kg/時であった。製膜条件を表1に示す。
【0097】
<実施例3>
フィルム製膜機1における冷却ロール104の冷却温度Tを20℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は13kg/時であった。製膜条件を表1に示す。
【0098】
<実施例4>
フィルム製膜機1におけるTダイ103の押出温度Tを280℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は13kg/時であった。製膜条件を表1に示す。
【0099】
<比較例1>
フィルム製膜機1におけるスクリュー1aの回転数を10rpm、製膜速度を3m/分、冷却ロール104の冷却温度Tを20℃とした以外は、実施例4と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は4kg/時であった。製膜条件を表1に示す。
【0100】
<比較例2>
フィルム製膜機1における冷却ロール104の冷却温度Tを20℃とした以外は、実施例4と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は13kg/時であった。製膜条件を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
<実施例5>
プロピレン系重合体組成物(1)90質量%とエチレン系重合体(1)10質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物をフィルム製膜機2に供給して、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。フィルム製膜機2におけるメイン押出機のスクリュー1aの回転数を22rpm、溶融混練温度を260℃、サテライト押出機のスクリュー1aの回転数を25rpm、溶融混練温度を260℃、Tダイ103の押出温度Tを250℃、冷却ロール104の冷却温度Tを50℃、製膜速度を20m/分とした。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は76kg/時であった。製膜条件を表2に示す。
【0103】
<実施例6>
フィルム製膜機2におけるメイン押出機のスクリュー1aの回転数を65rpm、サテライト押出機のスクリュー1aの回転数を92rpm、製膜速度を50m/分とした以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は210kg/時であった。製膜条件を表2に示す。
【0104】
<実施例7>
フィルム製膜機2におけるメイン押出機のスクリュー1aの回転数を65rpm、サテライト押出機のスクリュー1aの回転数を154rpm、製膜速度を66m/分とした以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は272kg/時であった。製膜条件を表2に示す。
【0105】
<比較例3>
フィルム製膜機2におけるメイン押出機のスクリュー1aの回転数を53rpm、サテライト押出機のスクリュー1aの回転数を80rpm、製膜速度を50m/分、冷却ロール104の冷却温度Tを80℃とした以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は179kg/時であった。製膜条件を表2に示す。
【0106】
<比較例4>
フィルム製膜機2におけるメイン押出機のスクリュー1aの回転数を57rpm、サテライト押出機のスクリュー1aの回転数を133rpm、製膜速度を65m/分、冷却ロール104の冷却温度Tを80℃とした以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ70μmのシーラントフィルムを得た。Tダイ103から押出される溶融樹脂の押出量は239kg/時であった。製膜条件を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
<ラメラ配向指数の測定>
シーラントフィルムの表面から深さ10μmまでの領域のラメラ配向指数を、下記の方法で測定した。
【0109】
<測定試料(薄片)の作製>
シーラントフィルムから、スライサーを用いて、上述のA方向70μm、B方向10mm、C方向100μmの薄片を切り出し、測定試料とした。
【0110】
小角X線散乱法による測定は、大型放射光施設SPring-8(兵庫県)に設置されている高分子専用ビームラインBL03XUを用いて、以下の条件で実施した。
・X線波長:0.1nm
・X線ビーム径:2μm
・カメラ長校正の標準試料:べヘンサン銀
・薄片と検出器の距離:1m
・検出器:2次元半導体X線検出器PILATUS(リガク製、ピクセルサイズ172μm)
・測定範囲:散乱ベクトルq=0.01nm-1~2nm-1
・X線の走査方向:薄片のA方向
・X線の走査間隔:2μm
・測定点数:50点
・露光時間:3秒
・小角X線測定で得られた2次元散乱像を、測定試料を設置せずに取得した2次元散乱像(エアブランク)を用いて補正した。
【0111】
補正した散乱像から、Y方向±45°範囲のqプロファイルを取得し、Kratkyプロットを行って、qmaxを算出した。qmaxにおける方位角プロファイルに基づき、前述の式(ii)を用いて、ラメラ配向指数を算出した。5点のラメラ配向指数の平均値をラメラ配向指数とした。測定結果を表3に示す。
【0112】
<複合フィルム>
シーラントフィルムと、アルミ箔(厚み7μm)と、ポリエチレンテレフタラートフィルム(厚み12μm)とを、この記載の順でドライラミネート法により積層し、複合フィルムを得た。
【0113】
<ヒートシール強度>
東洋テスター工業株式会社製ヒートシーラーを用いて、2枚の複合フィルムを、シーラントフィルム側が内側になるように重ね合わせ、シーラントフィルムの流れ方向(MD)に対する直角方向とシールバーの向きが合うようにして、以下の条件で帯状にヒートシールした。
・シールバー:平面両面加熱
・シール温度:200℃
・シール圧力:1.0kg/cm
・シール時間:1.0sec
・シール幅:10mm
【0114】
ヒートシールされた複合フィルムから、シール幅方向に対して直角方向に15mm幅の試験片を切り出した。引張試験機(オリエンテック製テンシロン)を用いて、剥離角90°、引張速度200mm/minの条件で、試験片を剥離し、剥離強度の最大値をヒートシール強度とした。測定結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表3の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例のフィルムは、各比較例のフィルムと比較してヒートシール強度が高く、すなわち、ヒートシール性に優れる。
【符号の説明】
【0117】
11,F フィルム
21 切片
31 薄片
42,52 ビーム径
53 走査間隔
61 X線源
63 検出器
1a スクリュー
10 フィルム製膜機
101 押出機
102 フィードブロック
103 Tダイ
104 冷却ロール
図1
図2
図3
図4
図5
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図11