(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032937
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
H01L21/304 644A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139319
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡部 和樹
(72)【発明者】
【氏名】平澤 学
(72)【発明者】
【氏名】青木 竜彦
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA08
5F157AA14
5F157AA17
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157BA02
5F157BA07
5F157BA13
5F157BA31
5F157BB43
5F157BB44
5F157DB51
(57)【要約】
【課題】ブラシ洗浄によりシリコンウェーハの表面及び端面のパーティクルを効果的に除去し、ウェーハ端面に付着したパーティクルのウェーハ表面への再付着を抑制し、シリコンウェーハのLPD品質を向上すること。
【解決手段】シリコンウェーハWを回転させると共に、複数のブラシの集合体からなる洗浄部材3、4を回転させながら、前記シリコンウェーハの洗浄面に摺擦させることによって、前記洗浄面を清浄化するシリコンウェーハの洗浄方法であって、前記洗浄部材を前記シリコンウェーハの表面の中心部に摺擦させた後、前記中心部から、前記洗浄部材を摺擦した状態を維持しつつ、前記シリコンウェーハの外周縁から前記洗浄部材の一部が突出したオーバーハングする距離dまで移動させるとともに、前記洗浄部材の一部がオーバーハングした状態で、前記シリコンウェーハの外周端部と複数の前記ブラシの端面外周との交差点を4箇所以上6箇所以下とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハを回転させると共に、複数のブラシの集合体からなる洗浄部材を回転させながら、前記シリコンウェーハの洗浄面に摺擦させることによって、前記洗浄面を清浄化するシリコンウェーハの洗浄方法であって、
前記洗浄部材を前記シリコンウェーハの表面の中心部に摺擦させた後、
前記中心部から、前記洗浄部材を摺擦した状態を維持しつつ、前記シリコンウェーハの外周縁から前記洗浄部材の一部が突出したオーバーハングする距離まで移動させるとともに、
前記洗浄部材の一部がオーバーハングした状態で、前記シリコンウェーハの外周端部と複数の前記ブラシの端面外周との交差点を4箇所以上6箇所以下とすることにより、前記シリコンウェーハの表面と端面とを清浄化することを特徴とするシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄部材のブラシの先端側は、その先端から根元側に向かって3mm以上の長さ分が前記シリコンウェーハの表面に押し付けられることを特徴とする請求項1に記載されたシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記シリコンウェーハの1回転あたりの前記洗浄部材の回転数比が少なくとも10以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシリコンウェーハの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの洗浄方法に関し、特に研磨終了後のシリコンウェーハの表面に、回転させたブラシを押し当てて洗浄するシリコンウェーハの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体用基板を製造する種々のプロセスにおいて、研磨処理が終了したシリコンウェーハの表面や端面には、シリカ等のパーティクルが多く付着した状態となる。研磨後の洗浄処理でパーティクルが十分に除去されないと、その後に行われる最終洗浄処理の薬液内にパーティクルが放出されることになる。
洗浄処理中、薬液はフィルターを含む循環経路内を循環しているが、パーティクル個数が多い場合には洗浄時間中に十分にフィルタリングされず、ウェーハが薬液層から引き上げられる際に、ウェーハにパーティクルが再付着するリスクがある。そのため、研磨後のウェーハは、表裏面と端面の両方とも、パーティクルが少ないことが要求される。
【0003】
特許文献1においては、ウェーハの研磨終了直後に、オゾン水洗浄(O3W)処理によりウェーハ表面に酸化膜を形成し、その後、ウェーハ表面のブラシ洗浄を行っている。このブラシ洗浄処理によってウェーハ表面はある程度の清浄性が得られるが、ウェーハ端面(側面)に対しては洗浄効果が低く、ウェーハ端面にパーティクルが残存しやすいという問題がある。
このような課題に対し、特許文献2においては、ウェーハ端面専用の洗浄ブラシを設けた構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-17454号公報
【特許文献2】特開2010-40943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されるウェーハ洗浄装置のようにウェーハ端面専用のブラシを設ける構成とすれば、ウェーハ端面にパーティクルが残らないように洗浄することができる。
しかしながら、特許文献2に開示されるウェーハ洗浄装置の構成にあっては、ウェーハ端面専用のブラシによってウェーハ端面のみを洗浄するため、洗浄の際にブラシにより除去されたパーティクルがウェーハ表面へ飛散して再付着しやすい。そのため、ウェーハ端面の洗浄によりウェーハ表面に付着したパーティクルを除去する洗浄プロセスを更に設けなければ、ウェーハ表面の輝点欠陥(Light Point Defect)が増加する(LPD品質を低下させる)という課題があった。
【0006】
本願発明者は、ウェーハ表面を洗浄するブラシにより、ウェーハ周縁の表面側と同時にウェーハ端面(側面)を効果的に洗浄する方法を見出し、本発明をするに至った。
本発明の目的は、ブラシ洗浄によりシリコンウェーハの表面及び端面のパーティクルを効果的に除去し、ウェーハ端面に付着したパーティクルのウェーハ表面への再付着を抑制し、ウェーハ表面のLPD数を大幅に低減することのできるシリコンウェーハの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコンウェーハの洗浄方法は、シリコンウェーハを回転させると共に、複数のブラシの集合体からなる洗浄部材を回転させながら、前記シリコンウェーハの洗浄面に摺擦させることによって、前記洗浄面を清浄化するシリコンウェーハの洗浄方法であって、前記洗浄部材を前記シリコンウェーハの表面の中心部に摺擦させた後、前記中心部から、前記洗浄部材を摺擦した状態を維持しつつ、前記シリコンウェーハの外周縁から前記洗浄部材の一部が突出したオーバーハングする距離まで移動させるとともに、前記洗浄部材の一部がオーバーハングした状態で、前記シリコンウェーハの外周端部と複数の前記ブラシの端面外周との交差点を4箇所以上6箇所以下とすることにより、前記シリコンウェーハの表面と端面とを清浄化することに特徴を有する。
尚、前記洗浄部材のブラシの先端側は、その先端から根元側に向かって3mm以上の長さ分が前記シリコンウェーハの表面に押し付けられることが望ましい。
また、前記シリコンウェーハの1回転あたりの前記洗浄部材の回転数比が少なくとも10以上であることが望ましい。
【0008】
このような方法によれば、洗浄部材がシリコンウェーハの外周端部からオーバーハングした際、ウェーハの外周端部と複数のブラシの端面外周との交差点が、洗浄部材の回転に伴い、4箇所以上6箇所以下の範囲内に制御される。このとき、ブラシがウェーハの外周端部(側面)に接触し、ウェーハの表面だけでなく、同時に、ウェーハ端面(側面)に付着したパーティクルを効果的に除去することができる。その結果、ウェーハ端面に付着したパーティクルのウェーハ表面への飛散(再付着)を抑制し、ウェーハ表面のLPD数を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブラシ洗浄によりシリコンウェーハの表面及び端面のパーティクルを効果的に除去し、ウェーハ端面に付着したパーティクルのウェーハ表面への再付着を抑制し、ウェーハ表面のLPD数を大幅に低減することのできるシリコンウェーハの洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は一実施形態にかかるウェーハ洗浄装置を模式的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したウェーハ洗浄装置の主要な構成を示した概略平面図である。
【
図3】
図3(a)は、洗浄部材の平面図であり、
図3(b)は、その側面図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、洗浄部材がウェーハ表面から離れる位置を示す概略図であって、
図4(a)は複数のブラシとウェーハ外周との交差点が4つの場合、
図4(b)は複数のブラシとウェーハ外周との交差点が6つの場合を示す概略図である。
【
図5】
図5は、ウェーハ端面とブラシとの接触状態を示す側面図である。
【
図6】
図6は、比較例1のブラシとウェーハとの関係を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)、(b)は、洗浄部材の変形例を示す平面図である。
【
図8】
図8(a)、(b)は、洗浄部材の他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかるシリコンウェーハの洗浄方法の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
尚、
図1は一実施形態にかかるウェーハ洗浄装置を模式的に示す概略図であり、
図2は、
図1に示したウェーハ洗浄装置の主要な構成を示した概略平面図である。
【0012】
ウェーハ洗浄装置1は、
図1、
図2に示すように、ウェーハ(半導体基板)Wの外周縁を保持するための複数(この実施形態では4つ)のローラ2を有している。前記複数のローラ2のうち、一つのローラ2Aにはローラ用モータM1が設けられ、回転駆動可能に構成されている。一方、他のローラ2Bは回転駆動されずに、ウェーハWの外周縁を保持し、ウェーハWの回転に伴い、回転するように構成されている。
即ち、前記ローラ2Aがローラ用モータM1によって、矢印Aで示す方向に回転することにより、ローラ2A、2Bに保持されたウェーハWは、矢印Aとは反対方向(矢印Bで示す方向)に回転する。
【0013】
また、前記ウェーハ洗浄装置1は、ウェーハWの上面(洗浄面)を摺擦する洗浄部材3と、ウェーハWの下面(洗浄面)を摺擦する洗浄部材4とを備えている。
図3(a)は、前記洗浄部材3(洗浄部材4)の平面図であり、
図3(b)は、その側面図である。
図3(a)、(b)に示すように、洗浄部材3、4は、正円板状の支持部10の片側面に複数(本実施形態では8つ)の小径のブラシ11が保持されたものである。
【0014】
具体的には、洗浄部材3(4)は、例えば
図3(a)に示すように、支持部10の一面の中心に1本のブラシ11が配置され、その周りに等間隔に7本のブラシ11が配置される。
図3(a)、(b)に示すように、各ブラシ11の直径dは、15mm以上30mm以下(例えば20mm)、有効長さLは3mm以上に形成されている。ブラシ11の有効長さLが3mmより短いと、後述するように洗浄部材3(4)がシリコンウェーハWの外周端部からオーバーハングした際、ウェーハ側面全体にブラシ11が当たらず、パーティクル等の汚染物質(異物)を除去できない虞があり、好ましくない。
また、支持部10の直径はウェーハWの直径よりも小さく形成されている。前記洗浄部材3および洗浄部材4が有するブラシ11の材料としては、例えばPVA(ポリビニルアルコール)製のスポンジが好適に用いられる。
【0015】
更に、ウェーハ洗浄装置1は、前記洗浄部材3、4を駆動する洗浄部材駆動手段5を備えている。洗浄部材駆動手段5は、ウェーハWを介して対称となるように、ウェーハWの表面側及び裏面側に夫々設けられている。
この洗浄部材駆動手段5は、前記円板状の洗浄部材3、4の支持部10を回転駆動するモータM2と、前記モータM2が一端部に装着された可動アーム部5aと、前記可動アーム部5aの他端部側に装着された、前記可動アーム部5aを回転駆動するモータM3とを備えている。
即ち、前記モータM2によって洗浄部材3、4が回転すると共に、前記モータM3の回転軸を中心に、可動アーム部5aが回動するように構成されている。
【0016】
また、前記モータM3は支持台5bに装着され、前記支持台5bは載置台5cにスライド可能に取り付けられる。この載置台5cにはピストン・シリンダ5dが取り付けられ、前記支持台5bとピストン・シリンダ5dが連結されている。
即ち、このウェーハ洗浄装置1にあっては、ピストン・シリンダ5dが伸縮することによって、前記支持台5bがスライドし、洗浄部材3,4が洗浄面に摺接、あるいは離脱するように構成されている。
尚、
図3(b)に示すようにウェーハWの厚さをh1(例えば0.8mm)とすると、洗浄部材3、4のブラシ11の先端側は、その先端から根元側に向かってh2の長さ分(例えば0.4mm)がウェーハW表面から下方に押し付けられるようになされる。
【0017】
また、ウェーハ洗浄装置1は、前記したモータM1、モータM2、モータM3、ピストン・シリンダ5dの動作を制御する制御部6が設けられている。この制御は、いわゆるシーケンス制御により制御される。
【0018】
この制御部6の制御によって、前記円板状の洗浄部材3,4は回転しながら、前記ウェーハWの洗浄面Wa、Wbの中心部O1からウェーハWの外周側へ、摺擦しながら移動し、また所定の位置において洗浄面から離脱するように動作する。
即ち、前記洗浄部材3は可動アーム部5aが下降することにより、また洗浄部材4は可動アーム部5aが上昇することにより、
図1に示すように、ウェーハWの洗浄面Wa、Wbに当接する。そして、
図2に示すように、モータM2によって回転する洗浄部材3、4はウェーハWの表面に摺接しつつ、ウェーハWの洗浄面Wa、Wbの中心部O1からウェーハWの外周側へ、ウェーハWの中心O1を通る一点鎖線Dで示された円弧上を移動する。そして、洗浄部材3、4が所定位置(オーバーハング距離)に達すると、ウェーハWの洗浄面から一部離脱する。
【0019】
また、図示しないが、前記ウェーハ洗浄装置1には、前記ウェーハWに洗浄液を供給する洗浄液供給機構を備えている。
この洗浄液供給機構は、従来から用いられている洗浄液供給機構を用いることができる。具体的には、ウェーハWの上面に洗浄液を供給する洗浄液供給機構は、前記ウェーハWの上面(洗浄面)の中心部に洗浄液を滴下するように構成されている。また、前記ウェーハWの下面(洗浄面)に洗浄液を供給する洗浄液供給機構は、前記ウェーハWの下面(洗浄面)全体に洗浄液を噴射するように構成されている。
【0020】
続いて、ウェーハ洗浄装置1を用いたブラシ洗浄方法について説明する。尚、洗浄部材4の動作は、洗浄部材3の動作と同様であるため、説明を省略する。
まず、ローラ2により、ウェーハWの外周端部Wcを保持する。次に、前記洗浄液供給機構により洗浄液(図示せず)をウェーハWの表面Wa上に供給しつつ、前記ローラ用モータM2により、ローラ2を矢印Aで示す方向に回転させて、ウェーハWを矢印Bで示す方向に回転させる。このときのウェーハWの回転数は、例えば20rpmである。
【0021】
このとき、ウェーハWの外周端部Wcには、矢印Eで示す方向に、ローラ2の回転に伴う洗浄液の逆流が生ずる。そして、破線Fで示す位置にまで、洗浄液が逆流し、リング状の液溜まりXが形成される。
そして、前記洗浄部材駆動手段5により、回転しているウェーハWの表面に、ウェーハWの回転方向と同一方向(矢印Cで示す方向)に回転する洗浄部材3を押し付けながら移動させる。
【0022】
この洗浄部材3は、回転状態を維持しつつ(ウェーハWの表面を洗浄しつつ)、
図2に一点鎖線で示すように、ウェーハWの中心O1から外周縁部へ向い、所定の位置で洗浄部材3をウェーハWの表面から離す。具体的には、
図4(a)に示すように、洗浄部材3の半径をr、洗浄部材3の前記オーバーハング距離をd、洗浄液のローラ2による逆流距離をtとしたとき、洗浄部材3のオーバーハング距離が0<d≦r-tとなる位置で、洗浄部材3をウェーハWの表面から離す。このとき、洗浄部材3のオーバーハング距離が0<d≦r-tとなる位置で、洗浄部材3の移動を停止させることが好ましい。前記移動を停止し、洗浄部材3をウェーハWの表面から離すまでの時間は、例えば1秒~1分である。
【0023】
尚、オーバーハング距離dとは、ウェーハWの外周縁Wcから洗浄部材3、4の一部が突出した突出寸法であって、
図4に示すように、ウェーハWの中心O1と洗浄部材3の中心O2を結ぶ線分L1がウェーハWの外周端部Wcと交わる点P1におけるウェーハWの接線L2と、ウェーハWの中心O1と洗浄部材3の中心O2を結ぶ線分L1がウェーハWの外周縁Wcと交わる点P2における前記接線L2と平行な線分L3との間の距離をいう。
【0024】
また、洗浄液のローラ2による逆流距離tとは、ローラ2が存在することにより、またローラが回転することにより生じる液溜りXにおけるウェーハWの径方向の距離をいう。
前記逆流距離tは、前記ローラ2から離れるにしたがって、ウェーハWの回転の遠心力の影響を受けて減少するため、ここでは、
図4に示すように、ウェーハWの中心O1とローラの中心O3を結ぶ線分L4が横切る液溜りXの長さ寸法とする。
【0025】
図4(a)に示すように、洗浄部材3をウェーハ表面から離す位置(オーバーハングする距離d)が、0<d≦r-tの範囲内にある場合には、汚染した洗浄液の液溜まりは除去され、汚染したパーティクル等を含む洗浄水がウェーハWの外周縁から外方に排出され、より高清浄化を達成することができる。
更に、本発明にあっては、洗浄部材3がウェーハWの外周端部Wcからオーバーハングした際、ウェーハWの外周端部Wcと複数のブラシ11の端面外周との交差点Itが、洗浄部材3の回転に伴い、4箇所(
図4(a))以上6箇所(
図4(b))以下の範囲内に制御される。このとき、ブラシ11の有効高さ(
図3(b))が3mm以上に形成されているため、
図5に示すようにブラシ11がウェーハWの外周端部Wc(側面)に接触し、ウェーハWの表面だけでなく、同時に、ウェーハ外周端部Wc(側面)に付着したパーティクルを効果的に除去することができる。
その結果、ウェーハ外周端部Wcに付着したパーティクルのウェーハ表面Wa、Wbへの飛散(再付着)を抑制し、ウェーハ表面Wa、WbのLPD数を大幅に低減することができる。
【0026】
尚、洗浄部材3がウェーハWの外周端部Wcからオーバーハングした際、ウェーハWの外周端部Wcと複数のブラシ11の端面外周との交差点Itが、洗浄部材3の回転に伴い3箇所以下の場合、期待する洗浄効果が得られないため好ましくない。一方、前記交差点Itが、7箇所以上の場合、ブラシをより小さく形成する必要があり、ブラシの摩耗が早くなってライフ低下やブラシからの発塵が多くなるため好ましくない。
【0027】
また、ウェーハWに対する洗浄部材3の回転数比が少なくとも10以上となるようにするのが好ましい。
即ち、ウェーハ1回転あたりブラシの回転が10回転以上(例えば600rpm)であれば、ウェーハ全面にブラシが摺動するため、好適な洗浄性能を得ることができる。一方、ウェーハ1回転あたりブラシの回転が10回転未満の場合には、ウェーハに対するブラシの摺動が不均一となるため、好適な洗浄性能を得ることができず、パーティクル等の汚染物質(異物)を除去できない虞があり、好ましくない。
【0028】
尚、前記実施の形態においては、洗浄部材3(4)は、支持部10の一面の中心に1本のブラシ11が配置され、その周りに等間隔に7本のブラシ11が配置される構成を例に説明したが、本発明にあっては、それに限定されるものではない。
例えば、
図7(a)に示すように洗浄部材3(4)は、支持部10の一面の中心に1本のブラシ11aが配置され、その周りに等間隔に7本のブラシ11bがそれぞれ異なる偏心率で配置される構成でもよい。
或いは、
図7(b)に示すように支持部10の一面の中心に1本のブラシ11が配置され、その周りに等間隔に8本のブラシ11が配置される構成でもよい。この場合も、中心のブラシ以外のブラシの偏心率はそれぞれ異なるようにしてもよい。
【0029】
また、
図8(a)に示すように、例えば、支持部10の一面全体にブラシ11Aを形成した後、花びら状(楕円形状)の空隙部11Bをカットして形成し、これを周方向に沿って等間隔に複数(図では8つの場合であるが、その数は限定されない)設けた構成でもよい。或いは、
図8(b)に示すように、例えば、支持部10の一面全体にブラシ11Cを形成した後、支持部10の中心を通る複数の分割線11D(放射状の線)に沿ってカットし、ブラシ11Cを複数に等分(図では8つに等分した場合であるが、その数は限定されない)した構成でもよい。
【0030】
また、前記実施の形態においては、シリコンウェーハの両面を洗浄する構成としたが、本発明にあっては、シリコンウェーハの片面を洗浄する構成にも適用することができる。
また、前記実施の形態においては、ブラシの材質をPVAとしたが、本発明にあっては、ブラシの材質を限定するものではない。
【実施例0031】
本発明に係るシリコンウェーハの洗浄方法について、実施例に基づきさらに説明する。
φ300mmのシリコンウェーハに対して化学機械研磨(CMP)を行った。そして、
図1および
図2を用いて説明したウェーハ洗浄装置により、CMP後のシリコンウェーハの表面の洗浄を行った。以下に、洗浄条件を示す。
【0032】
シリコンウェーハの回転数は20rpm、また、洗浄液には純水を用い、その流量を1.0L/minとした。このとき、逆流距離tは10mmであった。また、円板状の洗浄部材の半径rは30mm、洗浄部材の移動速度(可動アーム部の回動速度)は4mm/s、ウェーハに対する洗浄部材の回転数比が約17.1、洗浄部材の回転数は600rpm、洗浄部材は、実施例1では、吸水率が1000%のPVA(ポリビニルアルコール)製のスポンジからなる8本の小径のブラシ(有効長さ3mm)を
図3に示すように配置したものを用い、比較例1では、
図6に示すようにPVAからなる1本の大径のブラシ11(有効長さ3mm)を配置したものを用いた。
【0033】
この条件において、洗浄部材をウェーハの中心から外周縁の所定位置(オーバーハング距離)まで1回、移動(摺擦)させた。そして、移動において、オーバーハング距離dを、逆流距離t、洗浄部材の半径rとの間で、0<d<r-tを満たす+15mmとした。
実施例1においては、洗浄部材がウェーハの外周端部から前記距離dだけオーバーハングした際、ウェーハの外周端部と複数のブラシの端面外周との交点Isが、4箇所~6箇所の範囲で変化した。
一方、比較例1においては、洗浄部材がウェーハの外周端部から前記距離dだけオーバーハングした際、ウェーハの外周端部Wcとブラシ11の端面外周との交点Isが、2箇所であった。
【0034】
実施例1、比較例1において、それぞれのウェーハ端面欠陥数、及びウェーハ表面のLPD数を測定した。尚、サンプル(シリコンウェーハ)数は各15枚とし、すべてのサンプルについてウェーハ端面欠陥数、及びウェーハ表面のLPDの値を求めた。
尚、所定位置(オーバーハング距離)において、洗浄部材は可動アーム部の移動が停止した状態で、1秒間ウェーハに摺擦、洗浄した後、ウェーハ表面から離脱させた。
【0035】
その後、夫々の場合における洗浄後のウェーハ端面の総欠陥個数、及びウェーハ表面の26nm以上のLPD(Light Point Defect)数を測定した。ウェーハ端面の総欠陥個数、及びLPDの測定には、暗視野レーザー散乱異物検査装置(KLATencor社製、Surfscan SP3)を用いた。
ウェーハ端面の総欠陥個数の結果を
図9に示し、ウェーハ表面のLPD数の結果を
図10に示す。なお、
図9、10において、各プロットはサンプル(15枚)における欠陥数の平均値、及びLPDの個数の平均値を示している。
【0036】
図9に示すように、比較例1では、ウェーハ端面の総欠陥数が過剰な数となり測定不能であった。一方、実施例1では、ウェーハ端面の総欠陥数が平均500個程度となり大幅に低減された。
また、
図10に示すように、比較例1では、80個以上のLPDが検出された。これは、もともとウェーハ外周に存在していたパーティクルがブラシで除去されなかったためと推察される。
これに対し、実施例1では、LPDが50個程度まで減少した。
以上の実施例の結果から、本発明に係るシリコンウェーハの洗浄方法によれば、ウェーハ端面のパーティクルを効果的に除去し、その結果、ウェーハ表面のLPDを大幅に低減できることを確認した。