(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033106
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】光受信ユニット
(51)【国際特許分類】
G01S 5/16 20060101AFI20230302BHJP
G01S 1/70 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G01S5/16
G01S1/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022090039
(22)【出願日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10 2021 209 393.0
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・マイスナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ミッターライター
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・メッツケ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュテップタート
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ビルンバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル・シェーラー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・エーベルル
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・シュトルム
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアプフェル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・プーヒャー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・プレチャハー
(57)【要約】
【課題】本発明は、空間位置情報を特定する位置測定システムのための光受信ユニットであって、機械的および/または熱的な歪がかかっても誤った測定を生じさせないことを確実にする光受信ユニットを提供する。
【解決手段】本発明は、空間位置情報を特定する位置測定システムのための光受信ユニットに関する。受信ユニットは、測定セルを備え、その測定セルは、ベースプレートと、走査格子を備えた透明なカバープレートと、ベースプレートとカバープレートとの間の一または複数のスペーサと、光電子工学式の検出器とを有し、その感光面カバープレートの方を向いている。検出器は、セルフセンタリング補償部材を介して測定セルのベースプレート上に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間位置情報を特定する位置測定システムのための光受信ユニットであって、測定セルを備え、当該測定セルは、ベースプレートと、走査格子を備えた透明なカバープレートと、ベースプレートとカバープレートとの間の一または複数のスペーサと、光電子工学式の検出器とを有し、その感光面がカバープレートの方を向いている光受信ユニットにおいて、
検出器(146)は、セルフセンタリング補償部材(147)を介して測定セル(141)のベースプレート(142)上に配置されていることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の光受信ユニットにおいて、ベースプレート(142)に熱的または機械的な影響が作用する際に、検出器表面に垂直な方向の軸線の周りの検出器(146)の回転並びに横方向の位置変化が、補償部材(147)の構成を介して阻止されることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光受信ユニットにおいて、
- 補償部材(147)は、閉じた面領域を取り囲む互いに隣接する複数のステー(147.1-147.4)からなり、
- これらのステー(147.1-147.4)は、それぞれ少なくとも一つの検出器取り付け領域(147.1a-147.4a)および複数のテーパー領域(147.1_1-147.1_4)を備え、
- 補償部材(147)は、複数のさらなる測定セル取り付け領域(147.1b-147.4b)を備え、当該領域が、それぞれ、隣接するステー(147.1-147.4)の境界領域に形成されている
ことを特徴とする光受信ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の光受信ユニットにおいて、
- 補償部材(147)は、測定セル取り付け領域(147.1b-147.4b)を介してベースプレート(142)の凹部(142.1)の上方に配置され、
- 補償部材(147)は、テーパー領域(147.1_1-147.1_4)を四つずつ備えた四つのステー(147.1b-147.4b)を有し、
- 補償部材(147)の角部には、それぞれ一つの測定セル取り付け領域(147.1b-147.4b)が形成され、それら測定セル取り付け領域を介して補償部材(147)が凹部(142.1)に隣接してベースプレート(142)上に取り付けられ、
- 各ステー(147.1-147.4)は、中央の二つのテーパー領域(147.1_2,147.1_3)の間に一つの検出器取り付け領域(147.1a-147.4a)を備え、
- 各ステー(147.1-147.4)は、前記測定セル取り付け領域(147.1b-147.4b)に隣接させて、外側のさらなる二つのテーパー領域(147.1_1,147.1_4)を備えている
ことを特徴とする光受信ユニット。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光受信ユニットにおいて、
- 補償部材(147)は、測定セル取り付け領域(147.1b-147.4b)を介してベースプレート(142)に面で接着され、
- 検出器(146)は、検出器取り付け領域(147.1a-147.4a)を介して補償部材(147)に面で接着されている
ことを特徴とする光受信ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の光受信ユニットにおいて、
検出器(146)の感光面は、走査格子(144)の方を向いたベースプレート(142)の側と面一に配置されていることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項7】
請求項1から6の少なくともいずれか一つに記載の光受信ユニットにおいて、
測定セル(141)は、複数のフレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)を介してマウントケーシング(160)内に支持されて配置され、フレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)は、マウントケーシング(160)内での測定セル(141)の運動学的に定まった支持を保証していることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の光受信ユニットにおいて、
- フレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)は、それぞれ二つの脚部(150.1a,150.1b)を有し、当該脚部が複数の脚部セクション(150.1a_1,150.1a_4,150.1b_1,150.1b_4)および複数のフレクシャジョイント(151.a_1-151.a_4,151.b_1-151.b_4)を備え、
- フレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)は、両方の脚部(150.1a,150.1b)の接続領域において測定セル(141)に接続されているとともに、両方の脚部(150.1a,150.1b)の自由端部によってマウントケーシング(160)に接続され、
- フレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)は、測定セル(141)の外周に対して接線方向に配置されている
ことを特徴とする光受信ユニット。
【請求項9】
請求項7または8に記載の光受信ユニットにおいて、
フレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)は、それぞれ、二つの並進自由度が拘束され且つ第三の並進自由度および三つの回転自由度に関する可動性のみ許されているように形成されている
ことを特徴とする光受信ユニット。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の光受信ユニットにおいて、
三つのフレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)が協働することにより測定セル(141)がいかなる空間方向にも自由に動けなくなるように、三つのフレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)が、測定セル(141)の中心周りに120°の角度間隔で配置されていることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の光受信ユニットにおいて、
フレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)は、測定セル(141)に対し、それぞれ、その接線方向の配置の向きに沿った剛性が、この向きに直行する方向における剛性に比べて高いことを特徴とする光受信ユニット。
【請求項12】
請求項7から11のいずれかに記載の光受信ユニットにおいて、
フレクシャジョイント・バイポッド(150.1-150.3)は、インバーから形成されていることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の光受信ユニットにおいて、
ベースプレート(142)、少なくとも一つのスペーサ(145)およびカバープレート(143)が同じ材料からなることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項14】
請求項1から13の少なくともいずれかに記載の光受信ユニットにおいて、
走査格子(144)は、検出器(146)の方を向いたカバープレート(143)の側に配置されていることを特徴とする光受信ユニット。
【請求項15】
複数の識別可能な光源が配置されている空間内を動くことのできる測定対象の位置と向きを特定する光学式位置測定システムにおいて、静止させた状態で配置された一または複数の請求項1から14のいずれかに記載の光受信ユニット(140)を特徴とする光学式位置測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間位置情報を特定する位置測定システムにおいて使用することができる光受信ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より、空間2D角度測定システムとして構成され、空間位置情報を特定するために使用することができる光学式位置測定システムが公知である。このシステムは、一方において、空間的な位置と向き、つまり姿勢が特定される空間内を動くことのできる測定対象に設けられた送信ユニットを有し、送信ユニットとしては、例えば、適した光源がその役割を担うことができる。他方においては、一または複数の光受信ユニットが、動くことのできる送信ユニットに対して静止した状態で設けられており、これらの光受信ユニットのいずれも大抵は走査格子および光電子工学式の検出器を備えているが、受信ユニットの相応しい構造についてのさらなる詳細は、上記文献からは分からない。このようなシステムを用いることで、いわゆる多角測量(Multiangulation)によって、送信ユニットの空間内における姿勢を特定することができる。この目的のために、各受信ユニットから見た送信ユニットへの見通し線(Line Of Sight)(Sichtlinie)の方向が、二つの角度測定によって特定される。二つの受信ユニットの相対位置が既知であれば、特定された見通し線の交点から、送信ユニットの姿勢を割り出すことができる。そのような測定原理のさらなる詳細に関しては、上記文献を参照されたい。
【0003】
類似の測定システムは、特許文献2からも知られている。この文献の
図2はここで、使用される光受信ユニットの可能な構造も示している。このユニットは、上側に検出器が配置されているベースプレートを備えた測定セルからなり、走査格子を備えたカバープレートが、スペーサを介して検出器から一定の距離を隔てて設けられている。そのような測定セルが、例えば物体にネジ留めすることで取り付けられると、測定セルが機械的に歪んでしまう可能性があり、それが位置特定の精度に悪い影響を与える。つまり、測定セルが変形することに起因して、例えば、検出器と走査格子の間の距離が変化する結果になりかねない。さらには、検出器と走査格子との間の横方向の位置変化がもたらされるか或いは走査格子の変形がもたらされるか少なくともそのいずれかということもあり得る。同様の影響は、さらに温度変化によっても生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/38828号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3557182号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3739287号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3175949号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、空間位置情報を特定する位置測定システムのための光受信ユニットであって、機械的および/または熱的な歪が加わっても誤った測定を生じさせないことを確実にする光受信ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴部を備えた光受信ユニットにより解決される。
【0007】
本発明による光受信ユニットの有利な実施態様は、従属請求項に記載された構成から明らかになる。
【0008】
本発明による光受信ユニットは、空間位置情報を特定する位置測定システムにおいて使用することができる。光受信ユニットは、測定セルを備え、その測定セルは、ベースプレートと、走査格子を備えた透明なカバープレートと、ベースプレートとカバープレートとの間の一または複数のスペーサと、光電子工学式の検出器とを有し、その感光面がカバープレートの方を向いている。検出器は、セルフセンタリング補償部材を介して測定セルのベースプレート上に配置されている。
【0009】
ベースプレートに熱的または機械的な影響が作用する際に、検出器表面に垂直な方向の軸線の周りの検出器の回転並びに横方向の位置変化が、補償部材の構成を介して阻止されることを確実にすることができる。
【0010】
有利にも、
- 補償部材は、閉じた面領域を取り囲む互いに隣接する複数のステーからなり、
- これらのステーは、それぞれ少なくとも一つの検出器取り付け領域および複数のテーパー領域を備え、
- 補償部材は、複数のさらなる測定セル取り付け領域を備え、当該領域が、それぞれ、隣接するステーの境界領域に形成されている
ように設けられている。
【0011】
ここで、
- 補償部材は、測定セル取り付け領域を介してベースプレートの凹部の上方に配置され、
- 補償部材は、テーパー領域を四つずつ備えた四つのステーを有し、
- 補償部材の角部には、それぞれ一つの測定セル取り付け領域が形成され、それら測定セル取り付け領域を介して補償部材が凹部に隣接してベースプレート上に取り付けられ、
- 各ステーは、中央の二つのテーパー領域の間に一つの検出器取り付け領域を備え、
- 各ステーは、測定セル取り付け領域に隣接させて、外側のさらなる二つのテーパー領域を備えている
ことができる。
【0012】
さらに、
- 補償部材は、測定セル取り付け領域を介してベースプレートに面で接着され、
- 検出器は、検出器取り付け領域を介して補償部材に面で接着されている
ように設けられていてもよい。
【0013】
好ましくは、検出器の感光面は、走査格子の方を向いたベースプレートの側と面一に配置されている。
【0014】
有利な実施形態において、測定セルは、複数のフレクシャジョイント・バイポッドを介してマウントケーシング内に支持されて配置されていてよく、フレクシャジョイント・バイポッドは、マウントケーシング内での測定セルの運動学的に定まった支持を保証している。
【0015】
このとき、
- フレクシャジョイント・バイポッドは、それぞれ二つの脚部を有し、当該脚部が複数の脚部セクションおよび複数のフレクシャジョイントを備え、
- フレクシャジョイント・バイポッドは、両方の脚部の接続領域において測定セルに接続されているとともに、両方の脚部の自由端部によってマウントケーシングに接続され、
- フレクシャジョイント・バイポッドは、測定セルの外周に対して接線方向に配置されている
ことができる。
【0016】
有利なことに、フレクシャジョイント・バイポッドは、それぞれ、二つの並進自由度が拘束され且つ第三の並進自由度および三つの回転自由度に関する可動性のみ許されているように形成されている。
【0017】
三つのフレクシャジョイント・バイポッドが協働することにより測定セルがいかなる空間方向にも自由に動けなくなるように、三つのフレクシャジョイント・バイポッドが、測定セルの中心周りに120°の角度間隔で配置されていることが可能である。
【0018】
ここで、有利にも、フレクシャジョイント・バイポッドは、測定セルに対し、それぞれ、その接線方向の配置の向きに沿った剛性が、この向きに直行する方向における剛性に比べて高いときに有利であることが判明した。
【0019】
フレクシャジョイント・バイポッドは、インバーから形成することができる。
【0020】
ベースプレート、少なくとも一つのスペーサおよびカバープレートが同じ材料からなることが好ましい。
【0021】
さらに、走査格子は、検出器の方を向いたカバープレートの側に配置されていることが有利である。
【0022】
従って、複数の識別可能な光源を備えた空間内を動くことのできる測定対象の位置と向きを特定する光学式位置測定システムを構成することができ、そのシステムが、静止させた状態で配置された一または複数の本発明による光受信ユニットを有している。
【0023】
かくして、本発明の解決手段により、光受信ユニットへの機械的および/または熱的な影響により生じる可能性のある空間位置特定の際の測定誤差を最小化することが保証される。これは、機械的および/または熱的な影響とは無関係に常に走査格子に対する検出器の安定的な相対位置がもたらされることにより達成される。さらに、同じように測定誤差につながる可能性のある走査格子、検出器および測定セルの歪みが回避される。
【0024】
本発明のさらなる詳細および長所は、本発明による装置の実施例の以下の図と関連させた説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による複数の光受信ユニットが使用される空間位置情報を特定する位置測定システムの概略図である。
【
図2】本発明による光受信ユニットの実施例の断面図である。
【
図3】
図2の光受信ユニットの測定セルの部分斜視図である。
【
図4】
図2の光受信ユニットの測定セルの補償部材の斜視図である。
【
図5】二つのフレクシャジョイント・バイポッドと接続している
図2の光受信ユニットの測定セル全体の斜視図である。
【
図6a】本発明による光受信ユニットのフレクシャジョイント・バイポッドの側面図である。
【
図6b】本発明による光受信ユニットのフレクシャジョイント・バイポッドの斜視図である。
【
図7a】本発明による光受信ユニットにおけるフレクシャジョイント・バイポッドの動作の仕方を説明するための図である。
【
図7b】本発明による光受信ユニットにおけるフレクシャジョイント・バイポッドの動作の仕方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、空間内を動くことのできる測定対象の位置と向き(以下では測定対象の姿勢ともいう。)を特定する若しくは空間位置情報を特定するのに適した光学式位置測定システムがかなり概略的な形で表されている。この例では、測定対象として測定ヘッド10が設けられ、この測定ヘッドが、単に概略的にのみ表示された運動学的機構20を介して空間内に位置決め可能とされ且つその姿勢が光学式位置測定システムを用いて特定される。測定ヘッド10として例えば、製造されたワークピースを触覚プロービングによって計測するために工作機械の加工領域に運動学的機構20を介して位置決めされる公知のスイッチングプローブを用いることができる。
【0027】
位置測定システムは、本実施例では、例えば冒頭に引用した文献である特許文献1から基本的には知られているような複数の空間的な2D角度測定システムからなる。ここで補足的に、特許文献3並びに特許文献4をさらに挙げておきたい。これらはいずれもこの種の2D角度測定システムを特殊な光学式位置測定システムに用いることを示している。これらの文献の開示内容およびそこに含まれる適切な2D角度測定システムの詳細についての情報をここでは明示的に参照する。
【0028】
適した位置測定システムは、姿勢を特定するために、一方では、測定ヘッド10に配置された識別可能な複数の光源31.1-31.6を有している。図示された例では、合計8個の光源31.1-31.6が測定ヘッド10に設けられており、これらが、対をなして測定ヘッド10の周りに90°ずれた状態で配置され、図にはそのうち6個の光源31.1-31.6だけが看取できる。他方では、位置測定システムは、本発明による複数の光受信ユニット40.1,40.2を有し、これらが、動くことのできる測定ヘッド10側の光源31.1-31.6に対して静止した状態で配置されている。図示した実施例では、そのような光受信ユニット40.1,40.2が二つしか設けられていないが、もちろん、このようなユニットがこの種の位置測定システムにより多く使用されてもよいし、同じように、使用される光源の数も当然変更できる。光受信ユニット40.1,40.2は、静止した適切な物体に配置され、例えば、(不図示の)機械フレームに配置されている。
【0029】
以下でさらに詳細に説明する光受信ユニット40.1,40.2を用いることで、対応する受信ユニット40.1,40.2のそれぞれについて、光源31.1-31.6から来る光ビームの入射方向若しくは測定された光源31.1-31.6の角度位置を検出することができる。さらに、静止した二つの受信ユニット40.1,40.2の相対位置が互いに既知であれば、特定された入射方向若しくは光源31.1-31.6への視線の交点から、測定ヘッド10の姿勢を特定することができる。それを行なうために、光受信ユニット40.1,40.2で生成された信号は、信号処理ユニット50により処理されて姿勢計算ユニット60に転送され、そこから姿勢計算ユニットが測定ヘッド10の姿勢若しくは空間的な位置と向きを特定する。次に、これらの情報は、運動学的機構20を介して測定ヘッド10を空間内に適切に位置決めするために機械制御部70により使用可能とされる。
【0030】
以下に、さらなる図面に基づいて本発明による光受信ユニット140の一実施例を詳細に説明する。ここで、
図2は、測定セル141とマウントケーシング160を備えた受信ユニット140の断面図を示し、
図3および
図5は、それぞれ受信ユニット140の測定セル141の斜視図を示し、
図4,6aおよび6bは、受信ユニット140のさらに他の構成要素を示す。
【0031】
受信ユニット140は、標準的に備える機能的要素として、マウントケーシング160内に配置された測定セル141を備えており、その個々の構成要素は、
図2中、ハッチングで強調されている。測定セル141およびマウントケーシング160は、それぞれ円筒形に形成されており、測定セル141は、マウントケーシング160の内部に運動学的に適切に支持されて配置されている。マウントケーシング160は、測定セル141の上側に透明なカバー162を備え、これが、繊細な測定セル141を保護するのに基本的に役立っている。受信ユニット140は、このマウントケーシング160を介して物体に取り外し可能に取り付けることができ、その目的で、マウントケーシング160の外周側に一または複数の円筒形の孔161が設けられ、この孔を介して、ケーシングがネジ結合により静止した物体に取り付け可能とされている。
【0032】
測定セル141は、基本的に、ベースプレート142と、走査格子144を備えた透明なカバープレート143と、ベースプレート142およびカバープレート143の間の一または複数のスペーサ145と、光電子工学式の検出器146とを有し、検出器の感光面は、カバープレート143若しくは走査格子144の方を向いている。
図2に概略的にのみ示された走査格子144は、透明なカバープレート143の、検出器146の方を向いた側に配置されている。
【0033】
測定セル141のベースプレート142、スペーサ145およびカバープレート143は、いずれも同じ材料からなり、その材料は、できるだけ小さな熱膨張係数を有していることが好ましい。この例では、これらの測定セルの構成要素の材料として石英ガラスが選択されているが、代わりに他の材料、例えばBK7も適していると考えられる。これにより、一方では、測定セル141の堅牢な構造がもたらされ、他方では、異なる構成要素が同じ材料であることによって、測定セル141により検出される計測量が熱により殆ど変らないことが保証されている。つまり、それにより熱的な影響に対する一定の安定性が確保されている。このことは、例えば、均一に温度が上昇する場合、全ての測定セルの構成要素の熱膨張係数が同じであるおかげで、検出器146と走査格子144の間の距離が、カバープレート143に配置された走査格子144が膨張してその格子定数が大きくなるのと同程度に拡大することを意味する。このようにして、温度が変化しても、受信ユニット140に対する光源の、受信ユニット140により特定される角度位置が不変に保たれる。
【0034】
検出面にできる周期的な縞模様は、光電子工学式の検出器146を用いて検出される。この模様は、光源から放射された光束と走査格子144との相互作用から生じる。検出器146上の縞模様の位置は、測定される光源の光の、受信ユニット140に対する入射方向に依存するので、検出面における縞模様の位置から光源の角度位置を特定することができることになる。好ましくは、受信ユニット140の走査格子144は、二次元型の交差格子として形成され、光電子工学式の検出器146は、行と列に配置された光電子工学式の検出素子を備えた二次元型の検出器として形成されている。
【0035】
こうして、生成された二次元の縞模様の検出器146上における位置から、二次元走査格子144の主方向に対する方向性を有した二つの入射角を特定することができる。つまり、検出器146上の縞模様の位置を分析することにより、測定技術的に、対応する受信ユニット140について、それぞれの光源から来る光線の入射方向若しくは測定される光源の角度位置を検出することができる。こういった理由から、対応する位置検出装置との関連で空間2D角度測定システムとも称される。
【0036】
検出器146により生成された信号をさらに処理するために、測定セル140のベースプレート142の下側の回路基板150上に、複数の信号処理モジュール151.1-151.5が光受信ユニット140内に配置されている。ここで、これらは例えば、増幅器、A/Dコンバータ、或いはラインドライバのモジュールとすることができる。
【0037】
光受信ユニット140に熱的な影響がある場合の上述の問題を回避するために、特に、検出器146と走査格子144の間の距離および/または相対位置の温度による変化を防ぐために、測定セル141のベースプレート142上にセルフセンタリング補償部材147を介して検出器146を配置する構成とされている。この構成により、検出器の材料であるシリコンと、測定セルの材料である石英ガラスと、そして場合によっては、検出器の基板材料の異なる熱膨張係数によって生じる変化であって、温度による検出器146と走査格子144の間の相対的な位置関係の望ましくない変化を回避することができる。そうしない場合、こういった変化が測定誤差として光源の角度位置の特定に入り込んでしまうことになると考えられる。
【0038】
使用されるセルフセンタリング補償部材147は、その形態を介して、ベースプレート142と検出器146の間の横方向の相対位置の変化と、検出器表面に対して垂直な方向の軸線周りの検出器146の回転のいずれも防止することを保証する。こういった動きは、熱的または力学的な影響が測定セル141のベースプレート142に作用するときに生じ得ると考えられる。例えば、検出器146が、測定セル141のベースプレート142に対して温度に起因して膨張すると、本発明による解決手段においてセルフセンタリング補償部材147が相応の力学的な変形を吸収する一方、検出器146も測定セル141も変形しない。
【0039】
検出面内の回転軸線周りの検出器146の回転は、補償部材147の構成上、基本的には依然として可能ではあるが、そのような検出器146の動きは測定精度にさほど影響を与えない。
【0040】
本実施例では、
図4に斜視図で示されている補償部材147は、一つの閉じた面領域を取り囲む互いに隣接する四つのステー147.1-147.4からなる。補償部材147として、ここではインバーを想定しているが、代替的に、他の材料、例えばアルミニウムや鋼も適していると考えられる。図示した例では、四つのステー147.1-147.4がそれぞれ同じ長さとされていることにより、これらのステーにより正方形の面領域が取り囲まれるようになっているが、この形状に関しても、もちろん代わりの変形例が可能であろう。個々のステー147.1-147.4はそれぞれ、検出器取り付け領域147.1a-147.4aおよび複数のテーパー部147.1_i,147.1_ii,147.1_iii,147.1_ivを備えており、見やすくするために、
図4には、この例で設けられたステー147.1の四つのテーパー部147.1_1,147.1_2,147.1_3,147.1_4にのみ符号が付され、残りの三つのステー147.2-147.4は、ステーの符号の記載を省略した。
【0041】
さらに、隣接したステー147.1-147.4の境界領域には、それぞれ測定セル取り付け領域147.1b-147.4bが設けられている。補償部材147は、検出器取り付け領域147.1a-147.4aを介して検出器146にそれぞれ面接着により接合され、測定セル取り付け領域147.1b-147.4bにおけるさらなる面接着を介して、補償部材147が測定セル141のベースプレート142とそれぞれ接合される。
【0042】
図示された例では、補償部材147の各ステー147.1-147.4は、中央の二つのテーパー部147.1_2,147.1_3を備え、それらの間に、各検出器取り付け領域147.1a-147.4aが位置している。また、各ステー147.1-147.4には、それぞれ外側の二つのテーパー部147.1_1,147.1_4が測定セル取り付け領域147.1b-147.4bに隣接してさらに設けられている。
【0043】
補償部材147は、本実施例では、正方形の凹部142.1若しくはベースプレート142の窪みの上に配置されている。ここで、凹部142.1の面積は、補償部材147に取り付けられた検出器146の面積よりも若干大きめに選択されている。補償部材147の四つのステー147.1-147.4により取り囲まれた正方形の面領域は、ベースプレート142内の正方形の凹部142.1に対して45°だけ回転させられている。この目的のために、四つの測定セル取り付け領域147.1b-147.4bは、それぞれ、凹部の辺の中央の高さ位置で、凹部142.1の外側においてベースプレート142に接着される。従って、この例では、正方形の検出器146の側縁は、ベースプレート142内の凹部の辺に対して平行に揃えられている。
【0044】
上述した接着接合は、測定セル141のベースプレート142の方を向いた検出器取り付け領域147.1a-147.4aの側と測定セル取り付け領域147.1b-147.4bの側とに設けられている。従って、検出器146の感光面は、走査格子144の方を向いたベースプレート142の側に配置されているが、これはつまり、それによって検出器146の検出面が凹部142.1の外側のベースプレート142の上面と同じ高さにあるということである。温度が変化する場合、検出器146のこの構成のおかげで、それらの位置状態が不変に保たれ、その結果、検出器146と走査格子144の間の距離も変化しないこと、そして、測定誤差が発生するようなことにはならないことが保証される。
【0045】
静止した物体への取り付けにより本発明による光受信ユニット140および特に測定セル141が機械的に変形をきたすことを防ぐために、さらに他の手段が設けられている。すなわち、測定セル141は、複数のフレクシャジョイント・バイポッド150.1,150.2,150.3によるヘキサポッド構造を介してアセンブリハウジング160内に接続されている。本例ではこのとき、円筒形の測定セル141の外周周りに接線方向に配置された三つのフレクシャジョイント・バイポッド150.1,150.2,150.3を介して、マウントケーシング160内における測定セル141の機械的に定まった支持が保証される。このようにして、測定セル141は、受信ユニット140内でマウントケーシング160から切り離されて配置されており、それにより、マウントケーシング160に対する起こり得る機械的な影響が測定セル141に働かない。例えば、受信ユニット140が、マウントケーシング160を介して複数のネジ接続により平らでない取り付け面に異なるトルクでネジ固定される場合、フレクシャジョイント・バイポッド150.1,150.2,150.3の構造と形状により、測定セル141が変形をきたさないことが保証されている。
【0046】
測定セル141への機械的な影響を低減すること以外にも、測定セル141とマウントケーシング160のこの種の分離が、例えばマウントケーシングが機械フレームとの接触を介して熱くなる場合の熱的な影響のさらなる最小化をも確実にする。
【0047】
図6aおよび6bには、設けられる三つのフレクシャジョイント・バイポッドの一つ150.1が詳細に図示されている。フレクシャジョイント・バイポッド150.1のための材料として、本例では、それぞれインバーが用いられている。図から分かるように、フレクシャジョイント・バイポッドは、それぞれ、二つの脚部150.1a,150.1bを有し、それらの脚部が、脚部セクション150.1a_1,150.1a_2,150.1a_3,150.1b_1,150.1b_2,150.1b_3および板バネの形態の複数のフレクシャジョイント151.a_1-151.a_4,151.b_1-151.b_4を備えている。脚部150.1a,150.1bごとに、それぞれ三つの脚部セクション150.1a_1,150.1a_2,150.1a_3,150.1b_1,150.1b_2,150.1b_3および二対のフレクシャジョイント151.a_1-151.a_4,151.b_1-151.b_4が設けられており、それらが対をなして互いに直交する向きに向けられている。
【0048】
フレクシャジョイント・バイポッド150.1は、両方の脚部150.1a,150.1bの接続領域152において測定セルに接続され、両方の脚部150.1a,150.1bの自由端部153.a,153.bでは、マウントケーシング上の適切な取り付け点にフレクシャジョイント・バイポッド150.1が接続若しくは取り付けられている。このとき、この取り付けは、フレクシャジョイント・バイポッド150.1のこの部分に設けられたピンを介して行なわれ、測定セル若しくはマウントケーシングには、そのピンにフィットする凹部が存在する。フレクシャジョイント・バイポッドのそれぞれの外側脚部セクション150.1a_1,150.1a_3,150.1b_1,150.1b_3と接続部152,153a,153.bとの間には、やはりそれぞれフレクシャジョイント151.a_1,151.a_4,151.b_1,151.b_4が設けられている。
【0049】
こうして、このように構成されたフレクシャジョイント・バイポッドを介して、それに接続された測定セルおよびマウントケーシングのそれぞれ二つの並進自由度、すなわち、
図6bにおいてzとyが付された方向に沿った並進を拘束することができる。これに対して、残りの四つの自由度において測定セルとマウントケーシング間の相対的な動きが許されており、それは、x方向に沿った並進運動と、三つの方向x,yおよびz周りの回転運動である。
【0050】
本発明による光受信ユニットには、この種の三つのフレクシャジョイント・バイポッド150.1,150.2,150.3が、測定セル141の中心の周りに120°の角度間隔で配置されており、その配置は、それぞれ、フレクシャジョイント・バイポッド150.1,150.2,150.3が、その長い延在方向を測定セル141に対する接線方向にして配置されるようにして行なわれる。三つのフレクシャジョイント・バイポッド150.1,150.2,150.3が協働することで、測定セル141がどの空間方向にも自由に動けないことを保証している。
図7bでは、矢印201,202,203がそれぞれ紙面内における測定セル141の拘束された自由度を表し、黒塗りの円301,302,303が紙面に垂直な測定セル141の拘束された自由度を表している。
【0051】
各フレクシャジョイント・バイポッドは、z方向に沿って特に高い剛性を備えているので、測定セルは、z方向に沿った並進に対して、また、x方向およびy方向周りの回転について、空間内に一義的に固定されていることになる。加えて、各フレクシャジョイント・バイポッドは、測定セルに対する接線方向にも高い剛性をさらに備えており、その結果、測定セルは、z方向周りに回転することもできない。しかも、フレクシャジョイント・バイポッドを測定セルの中心に対して120°で配置することにより、また、それらを接線方向に配置することにより、x方向およびy方向に沿った並進自由度も拘束されている。
【0052】
従って、全体として測定セルは、空間内において6個の自由度全てで一義的に定まっている。つまり、測定セルは、いかなる空間方向にも自由に動くことができない。その結果、このように支持された測定セルの固有振動数が非常に高くなり、実際に約2kHzに達する。測定セルをこのように運動学的に支持することの格別な利点は、測定セルから見て全てのフレクシャジョイント・バイポッドが半径方向に非常にフレキシブルである結果、測定セルに非常に僅かな力しか働かないことにあるが、これについては、矢印401,402,403が三つのフレクシャジョイント・バイポッドの可撓性のある方向を表している
図7aを参照されたい。
図7aと
図7bの比較から明らかなように、フレクシャジョイント・バイポッドは、それらの接線方向の配置方向201,202,203に沿って、それらに直交する方向401,402,403におけるよりもより高い剛性を有している。この利点は、フレクシャジョイント・バイポッドの脚部の取り付け点が、マウントケーシングに外力が作用することよって、或いは、熱膨張によって移動するかもしれない場合にも保たれたままとなる。
【0053】
熱的または機械的な原因で生じるかもしれない取り付け点の変位運動はこのとき、6個の自由度全てで可能であるが、それは、それらの変位運動が、柔らかい板バネを通して各フレクシャジョイント・バイポッドにより弾力的に吸収され、測定セルに反力が発生しないからである。
【0054】
フレクシャジョイント・バイポッドから測定セルへの反力は、取り付け点の変位にも関わらず、これらの方向におけるフレクシャジョイントの極めて低い剛性の故に低いままとなる。高い剛性は、脚部セクションの長手延在方向に沿ってのみ存在する。従って、測定セルは変形を受けない。その結果、測定セル内の検出器と走査格子との間の距離が一定のままとなり、走査格子は、膨張や圧縮により予期せぬ歪を受けない。
【0055】
説明した本発明による装置の実施例に加えて、もちろん本発明の範囲内でまださらに可能な態様が存在する。
【外国語明細書】