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特開2023-33176飛翔体発生方法、飛翔体転写方法及び画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033176
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】飛翔体発生方法、飛翔体転写方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/04 20060101AFI20230302BHJP
   B41J 2/07 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B41J2/04
B41J2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131000
(22)【出願日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2021137387
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宗朗
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃大
(72)【発明者】
【氏名】青戸 淳
(72)【発明者】
【氏名】尾松 孝茂
(72)【発明者】
【氏名】川口 晴生
(72)【発明者】
【氏名】梅里 慧
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AM40
2C057BF00
2C057DC01
2C057DC18
(57)【要約】
【課題】高解像度の画像を形成することができる光渦レーザーを用いた飛翔体発生方法の提供。
【解決手段】光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせる飛翔体発生方法であって、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整する飛翔体発生方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせ、
前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整することを特徴とする光渦レーザーを用いた飛翔体発生方法。
【請求項2】
前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を、空間光変調器及び螺旋位相板のいずれかにより変化させる、請求項1に記載の飛翔体発生方法。
【請求項3】
前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を、空間光変調器により変化させる、請求項2に記載の飛翔体発生方法。
【請求項4】
光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせ、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整し、
前記液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させることを特徴とする光渦レーザーを用いた飛翔体転写方法。
【請求項5】
光渦のエネルギーを変更することで前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴の移送速度を変化させ、前記液柱乃至液滴をレシーバー基板に転写する、請求項4に記載の飛翔体転写方法。
【請求項6】
光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせ、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整する光吸収材飛翔手段と、
前記液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させる転写手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体発生方法、飛翔体転写方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、インク滴を所望の位置に飛翔させることができることから、近年では、立体的な造形を行う3Dプリンタ分野、印刷技術により電子部品を形成するプリンテッドエレクトロニクス分野などにも応用が検討されている。
【0003】
具体的には、透明基板上に形成した転写対象材料(ドナー)層の透明基板側からレーザーを照射し、前記飛翔対象物を対面に配置したレシーバー基板の所望の位置に飛翔・転写する方法であるレーザー励起前方転写(Laser induced forward transfer(LIFT))があり、様々な用途に向けて研究されている。LIFTのレーザー光源として、円環上のプロファイルを有する光渦レーザーを用いることにより、高粘度インクを飛散せずに転写する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光吸収材の飛散がなく、飛翔する光吸収材の量を安定して制御することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の飛翔体発生方法は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、光渦レーザビームの照射方向にかつ光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を光吸収材から生じさせる飛翔体発生方法であって、
前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光吸収材の飛散がなく、飛翔する光吸収材の量を安定して制御することができる飛翔体発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、一般的なレーザビームにおける波面(等位相面)の一例を示す概略図である。
図1B図1Bは、一般的なレーザビームにおける光強度分布の一例を示す図である。
図1C図1Cは、一般的なレーザビームにおける位相分布の一例を示す図である。
図2A図2Aは、光渦レーザビームにおける波面(等位相面)の一例を示す概略図である。
図2B図2Bは、光渦レーザビームにおける光強度分布の一例を示す図である。
図2C図2Cは、光渦レーザビームにおける位相分布の一例を示す図である。
図3A図3Aは、一般的なレーザビームを光吸収材に照射させたときの一例を示す写真である。
図3B図3Bは、光渦レーザビームを光吸収材に照射させたときの一例を示す写真である。
図4A図4Aは、光渦レーザビームにおける空間強度分布計測の結果の一例を示す説明図である。
図4B図4Bは、中心に光強度0の点を有するレーザビームにおける空間強度分布計測の結果の一例を示す説明図である。
図5A図5Aは、本発明の画像形成装置の一例を示す説明図である。
図5B図5Bは、本発明の画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図5C図5Cは、本発明の画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図6A図6Aは、光吸収材供給手段及び被付着物搬送手段を付加した図5Bに示す画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
図6B図6Bは、光吸収材供給手段及び被付着物搬送手段を付加した図5Bに示す画像形成装置の他の一例を示す概略断面図である。
図7A図7Aは、定着手段を付加した図6Aに示す画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
図7B図7Bは、定着手段を付加した図6Aに示す画像形成装置の他の一例を示す概略断面図である。
図7C図7Cは、定着手段を付加した図6Aに示す画像形成装置の他の一例を示す概略断面図である。
図8A図8Aは、本発明の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
図8B図8Bは、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略断面図である。
図9図9は、本発明の立体造形物の製造装置の一例を示す概略断面図である。
図10A図10Aは、実施例1における、軌道角運動量量子数を1にしたときの光吸収材の飛翔状態の一例を示す写真である。
図10B図10Bは、実施例1における、軌道角運動量量子数を2にしたときの光吸収材の飛翔状態の一例を示す写真である。
図10C図10Cは、実施例1における、軌道角運動量量子数を3にしたときの光吸収材の飛翔状態の一例を示す写真である。
図11図11は、軌道角運動量の量子数(L)及び同径方向の量子数(P)と、光渦レーザビームの波面形状の関係を示す図である。
図12A図12Aは、実施例1における、軌道角運動量量子数を1にしたときのドットの一例を示す写真である。
図12B図12Bは、実施例1における、軌道角運動量量子数を2にしたときのドットの一例を示す写真である。
図12C図12Cは、実施例1における、軌道角運動量量子数を3にしたときのドットの一例を示す写真である。
図13図13は、実施例3における、軌道角運動量量子数を1にしたときのドットの一例を示す写真である。
図14A図14Aは、実施例3における、軌道角運動量量子数を1にしたときのワイヤーの一例を示す写真である。
図14B図14Bは、実施例3における、軌道角運動量量子数を2にしたときのワイヤーの一例を示す写真である。
図15図15は、比較例2における、ガウシアンビームでのワイヤーの一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(飛翔体発生方法、飛翔体転写方法、及び画像形成装置)
本発明の飛翔体発生方法は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、光渦レーザビームの照射方向にかつ光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を光吸収材から生じさせる飛翔体発生方法であって、
前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整する。
本発明の飛翔体転写方法は、光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせ、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整し、
前記液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させる。
即ち、本発明の飛翔体転写方法は、本発明の飛翔体発生方法により光吸収材から生じさせた小さな径の液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させる。
したがって、本発明の光渦レーザーを用いた飛翔体発生方法は、本発明の飛翔体転写方法の説明で足りるため、本発明の画像形成方法の説明を通じて本発明の光渦レーザーを用いた飛翔体発生方法の詳細についても明らかにする。
【0009】
本発明の飛翔体発生方法は、従来技術のレーザーを用いた飛翔体を形成する方法では、アクセプター基板への飛翔・転写時に転写対象材料である高粘度インクを飛翔させ、光渦の効果で飛散を抑制した飛翔を実現することができるが、画像形成装置等への応用に必要な、転写対象材料(ドナー)の量を制御する方法に関して言及がなく、高解像度な画像形成を行うための微細な量を安定に転写させることが難しいという知見に基づくものである。
【0010】
そこで、本発明の画像形成方法は、光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させることで、光渦レーザビームの液柱乃至液滴の量を調整する(制御する)ことができることを知見した。
【0011】
まず、光渦レーザビームについて説明する。
一般的なレーザビームは、位相が揃っているため、図1Aに示すように平面状の等位相面(波面)を有している。レーザビームのポインティングベクトルの方向が平面状の等位相面の直交方向であることにより、レーザビームの照射方向と同じ方向となるため、レーザビームが光吸収材に照射された場合には、光吸収材に対して照射方向に力が作用する。しかし、レーザビームの断面における光強度分布が、図1Bに示すようにビームの中心が最も強い正規分布(ガウシアン分布)であるため、光吸収材が飛散しやすい。また、位相分布の観察を行うと図1Cに示すように位相差がないことが確認される。
図2Aは、光渦レーザビームにおける波面(等位相面)の一例を示す概略図である。光渦レーザビームの一つであるラゲールガウスビームは、図2Aに示すように螺旋状の等位相面を有している。また、図2Bに示すように光強度分布がビームの中央が零となる凹んだ円環状の分布を有する。光渦レーザビームのポインティングベクトルの方向が螺旋状の等位相面に対して直交方向であるため、光渦レーザビームの進行方向に対してポインティングベクトルがわずかに傾き、その結果、レーザビーム断面内に円環の周回方向に沿った光圧、すなわち、軌道角運動量が現れる。光渦レーザビームが光吸収材に照射された場合には、円環の周回方向に沿った力が作用する。このため、光渦レーザビームを照射された光吸収材は、光渦レーザビームの照射方向に沿って飛翔し、被付着物に飛散しにくい状態で付着する。また、位相分布の観察を行うと図2Cに示すように位相差が発生していることが確認される。
【0012】
図3Aは、一般的なレーザビームを光吸収材に照射させたときの一例を示す写真である。図3Bは、光渦レーザビームを光吸収材に照射させたときの一例を示す写真である。
図3A図3Bとを比較すると、図3Aのほうが図3Bよりも光吸収材が飛散していることが確認できる。このことから、光渦レーザビームを照射された光吸収材は、円環状のエネルギーを放射圧として印加され、光渦レーザビームの照射方向に沿って飛翔し、軌道角運動量の影響で被付着物に飛散しにくい状態で付着することがわかる。
【0013】
光渦レーザビームか否かを判別する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の位相分布の観察、空間強度分布計測などが挙げられ、空間強度分布計測が一般的である。
空間強度分布計測は、レーザビームプロファイラ(Spiricon社製レーザビームプロファイラ、浜松ホトニクス株式会社製レーザビームプロファイラなど)を用いて観察でき、空間強度分布計測した結果の一例を図4A図4Bに示す。
図4Aは、光渦レーザビームにおける空間強度分布計測の結果の一例を示す説明図であり、図4Bは、中心に光強度0の点を有するレーザビームにおける空間強度分布計測の結果の一例を示す説明図である。
光渦レーザビームを空間強度分布計測すると、図4Aに示すように、空間強度分布計測が円環状であって、図1Cと同様に中心に光強度0の点を持つレーザビームであることが確認できる。
一方、中心に光強度0の点を有する一般的なレーザビームを空間強度分布計測すると、図4Bに示すように、図4Aで示した光渦レーザビームの空間強度分布計測と類似しているが、円環部のエネルギー分布が一様ではないことから、光渦レーザビームとの差異が確認できる。
【0014】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に行うことができる。
【0015】
本発明の画像形成装置は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面に光渦レーザビームを照射する。これにより、本発明の画像形成装置は、光渦レーザビームの照射方向にかつ光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を光吸収材から生じさせ、液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させる装置である。
画像形成装置は、光吸収材飛翔手段と、転写手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有することが好ましい。
【0016】
<光吸収材飛翔手段>
光吸収材飛翔手段は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、光渦レーザビームの照射方向にかつ光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を光吸収材から生じさ、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整する手段である。
【0017】
本発明における前記光吸収材飛翔手段は、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させることで、前記液柱乃至液滴の量を調整することができる。
前記軌道角運動量とは、全角運動量のうち、スピン角運動量を除く運動量である。
図11は、軌道角運動量の量子数(L)及び同径方向の量子数(P)と、光渦レーザビームの波面形状の関係を示す概略図である。図11に示すように、前記軌道角運動量量子数(L)が大きくなるにつれ、光渦レーザビームの強度分布が広がり、また、光渦レーザビームの円環における特異点(中心)の領域が広くなる。これにより、前記液柱乃至液滴の量を調整することができる。
前記軌道角運動量量子数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1以上3以下が好ましい。前記軌道角運動量量子数が、3以下であると、中心の特異点の分離が生じるのを防ぎ、比較的安定したビーム形状が得られる。
【0018】
また、光吸収材飛翔手段としては、例えば、レーザー光源と、光渦変換部と、偏光変換部とを有するものを用いることができ、光吸収材飛翔手段は、更に必要に応じて、その他の部材を有することが好ましい。
【0019】
<<レーザー光源>>
レーザー光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザビームを発生させる固体レーザー、気体レーザー、半導体レーザーなどが挙げられ、パルス発振可能なものが好ましい。
固体レーザーとしては、例えば、YAGレーザー、チタンサファイアレーザなどが挙げられる。
気体レーザーとしては、例えば、アルゴンレーザ、ヘリウムネオンレーザ、炭酸ガスレーザなどが挙げられる。
これらの中でも、出力が30mW程度の半導体レーザーが、装置の小型化及び低コスト化の点で好ましい。
レーザビームの波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300nm以上11μm以下が好ましく、350nm以上1100nm以下がより好ましい。
レーザビームのビーム径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上1mm以下が好ましく、1μm以上100μm以下がより好ましい。
レーザビームのパルス幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01ナノ秒以上100ナノ秒以下が好ましく、0.01ナノ秒以上10ナノ秒以下がより好ましい。
レーザビームのパルス周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500Hz以上が好ましい。
なお、レーザー光源としては、光渦レーザビームを出力可能なレーザー光源でもよい。
【0020】
<<光渦変換部>>
光渦変換部としては、レーザビームを光渦レーザビームに変換できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空間光変調器、螺旋位相板、マルチモードファイバなどが挙げられる。これらの中でも、レーザーの振幅及び位相を変調することができることから、空間光変調器が好ましい。
【0021】
なお、光渦レーザビームを発生させる方法としては、光渦変換部を用いる方法に限らず、例えば、レーザー共振器から光渦を固有モードとして発振させる方法、ホログラム素子を共振器に挿入する方法などが挙げられる。他の光渦レーザビームを発生させる方法としては、例えば、ドーナツビームに変換した励起光を用いる方法、暗点を有する共振器ミラーを用いる方法、側面励起固体レーザーで発生する熱レンズ効果を空間フィルタとして用いて光渦モード発振する方法などが挙げられる。
【0022】
<<偏光変換部>>
偏光変換部としては、光渦レーザビームに円偏光を付与する。偏光変換部としては、例えば、1/4波長板などが挙げられる。光学軸を+45°又は-45°に設置して光渦レーザビームに円偏光を付与する。以下の式(1)は、軌道角運動量と、偏光のスピン角運動量を合わせた全角運動量密度の式であり、軌道角運動量と偏光に由来するスピン角運動量の和の全角運動量密度の分布を示しており、レーザー照射時に生成する液柱の自転運動の回転数に寄与すると考えられる。液柱の自転により、画像形成装置は、光吸収材を安定的に飛翔させ、飛散を抑制した形状で被付着物に付着させる効果を大きくすることができる。
【0023】
【化1】
ただし、式(1)において、εは真空中の誘電率であり、ωは光の角周波数であり、Lは軌道角運動量量子数であり、Iは、下記数式(2)で表される光渦レーザビームの強度であり、Sは偏光に対するスピン角運動量量子数であり、rは円筒座標系の動径である。
【化2】
ただし、式(2)において、ωは光のビームウエストサイズである。
なお、ビームウエストサイズとは、光渦レーザビームにおけるビーム径の最小値を意味する。
【0024】
スピン角運動量量子数Sの値は、0,±1で、符号はそれぞれ円偏光の向き(右回り、左回り)を表し、直線偏光では0となる。
【0025】
画像形成装置は、例えば、レーザビームを光渦レーザビームに変換する光渦変換部、及び光渦レーザビームに円偏光を付与する偏光変換部を備え、高粘度又は固体の光吸収材の飛翔物の直線指向性を発現させ、光吸収材の飛散を抑制できる。
【0026】
<<その他の部材>>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーム径変更部材、ビーム波長変更素子、出力調整部などが挙げられる。
【0027】
―ビーム径変更部材―
ビーム径変更部材としては、レーザビーム又は光渦レーザビームのビーム径を変更できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、集光レンズなどが挙げられる。
光渦レーザビームのビーム径(照射径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以下が好ましい。光渦レーザビームの照射径が100μm以下であると、高解像度の画像を形成しやすい点で好ましい。
なお、ビーム径は、例えば、レーザスポット径及び集光レンズにより変更することが可能である。
また、光吸収材が分散体の場合、ビーム径としては、光吸収材の体積平均粒径の最大値以上が好ましく、分散体の最大値の3倍がより好ましい。ビーム径がより好ましい範囲内であると、光吸収材を安定して飛翔させることが可能となる点で有利である。
【0028】
―ビーム波長変更素子―
ビーム波長変更素子としては、レーザビーム又は光渦レーザビームの波長を、光吸収材が吸収可能であり、かつ後述する基材を透過可能である波長に変更できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ビーム波長変更素子としては、例えば、KTP結晶、BBO結晶、LBO結晶、CLBO結晶などが挙げられる。
【0029】
―出力調整部―
出力調整部としては、レーザビーム又は光渦レーザビームを適正な出力値に調整することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラスなどが挙げられる。
【0030】
光吸収材に照射する光渦レーザビームの出力値としては、照射方向を軸とした照射径の中心軸に回転運動をしながら照射径よりも小さい径に収束する液柱を生じ得る状態、あるいは一部が切り離され液滴を生じ得る状態を実現可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、以下では「出力値」を「照射エネルギー」と称することもある。
光渦レーザビームの照射エネルギーとしては、光吸収材の粘度や膜厚によっても適正値が変化するため、適宜調整されることが好ましいが、具体的には、100μJ/ドット以下がより好ましく、60μJ/ドット以下が更に好ましい。光渦レーザビームの照射エネルギーが60μJ/ドット以下であると、照射方向を軸とした照射径の中心軸に回転運動をしながら照射径よりも小さい径に収束する液柱を生じ得る状態、あるいは一部が切り離され液滴を生じ得る状態を実現しやすい点で有利である。
【0031】
<転写手段>
転写手段は、光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を光吸収材から生じさせた液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させる手段である。
転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材から生じさせた液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させる機構を備える手段などが挙げられる。具体的には、転写手段としては、例えば、被付着物と光吸収材との間隙を調整する機構や、被付着物を搬送する機構を有するようにしてもよい。
【0032】
<<被転写媒体>>
被転写媒体(被付着物)としては、光吸収材から生じさせた液柱乃至液滴が接触できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像形成装置で用いられる被記録媒体や中間転写ベルトなどが挙げられる。
【0033】
<その他の手段>
その他の手段としては、例えば、光吸収材供給手段、ビーム走査手段、被付着物搬送手段、定着手段、制御手段などが挙げられる。
また、光吸収材飛翔手段、基材、光吸収材供給手段、及びビーム走査手段を一体として光吸収体飛翔ユニットとして扱ってもよい。
その他の工程としては、例えば、光吸収材供給工程、ビーム走査工程、被付着物搬送工程、定着工程、制御工程などが挙げられる。
【0034】
光吸収材供給手段としては、光吸収材飛翔手段と被付着物との間の光渦レーザビームの光路上に、光吸収材を供給できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光吸収材供給手段としては、例えば、光路上に配置された円筒状の基材を介して光吸収材を供給するようにしてもよい。
具体的には、光吸収材が液体であって、基材に光吸収材を供給する場合には、光吸収材供給手段として供給ローラ及び規制ブレードを設けることが、非常に簡単な構成で光吸収材を基材の表面に一定の平均厚みで供給することができるため好ましい。
この場合、供給ローラは、光吸収材を貯蔵する貯蔵槽に表面が一部浸漬し、光吸収材を表面に担持しながら回転して、基材に当接することにより光吸収材を供給する。規制ブレードは、供給ローラの回転方向における貯蔵槽の下流側に配置され、供給ローラが担持した光吸収材を規制して平均厚みを均一にし、飛翔させる光吸収材の量を安定させる。平均厚みを非常に薄くすることにより、飛翔させる光吸収材の量を低減できるため、光吸収材を飛散が抑制された微小なドットとして被付着物に付着可能とし、網点が太るドットゲインを抑制することができる。なお、規制ブレードは、基材の回転方向における供給ローラの下流側に配置されていてもよい。
【0035】
また、光吸収材が高粘度である場合には、供給ローラの材質は、基材と確実に接触させるようにする点で、少なくとも表面が弾性を有するものが好ましい。光吸収材が比較的低粘度である場合には、供給ローラとしては、例えば、精密ウェットコーティングで用いられるような、グラビアロール、マイクログラビアロール、フォーワードロールなどが挙げられる。
【0036】
更に、供給ローラを設けない光吸収材供給手段としては、貯蔵槽内の光吸収材に基材を直接接触させた後にワイヤーバーなどで余分な光吸収材を掻き取ることにより基材の表面に光吸収材の層を形成するようにしてもよい。なお、貯蔵槽は、光吸収材供給手段とは別に設け、ホース等で光吸収材を光吸収材供給手段に供給するようにしてもよい。
光吸収材供給工程としては、光吸収材飛翔手段と被付着物との間の光渦レーザビームの光路上に、光吸収材を供給する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材供給手段を用いて好適に行うことができる。
【0037】
ビーム走査手段としては、光渦レーザビームを光吸収材に対して走査可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ビーム走査手段は、光吸収材飛翔手段から照射された光渦レーザビームを光吸収材に向けて反射させる反射鏡と、反射鏡の角度及び位置を変化させて光渦レーザビームを光吸収材に対して走査させる反射鏡駆動部とを有するようにしてもよい。
ビーム走査工程としては、光渦レーザビームを光吸収材に走査させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーム走査手段を用いて好適に行うことができる。
【0038】
被付着物搬送手段としては、被付着物を搬送することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ローラ対などが挙げられる。
被付着物搬送工程としては、被付着物を搬送する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、被付着物搬送手段を用いて好適に行うことができる。
【0039】
定着手段としては、被付着物に付着させた光吸収材を定着させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱加圧部材を用いた熱圧着方式のものなどが挙げられる。
加熱加圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱ローラ、加圧ローラ、加熱ローラ及び加圧ローラを組み合わせたものなどが挙げられる。他の加熱加圧部材としては、例えば、これらに定着ベルトを組合せたもの、これらのうち加熱ローラを加熱ブロックに代えたものなどが挙げられる。
【0040】
加圧ローラとしては、被付着物搬送手段により搬送される被付着物と等速度で加圧面が移動するものが、擦れによる画像劣化を抑制する点で、好ましい。この中でも、表面近傍に弾性層を形成したものが、被付着物に対して接触加圧しやすい点で、より好ましい。更に、最表面にシリコーン系の撥水性材料やフッ素化合物などの低表面エネルギーの素材で撥水性表面層を形成した加圧ローラが、表面に光吸収材が付着することによる画像の乱れを抑制する点で、特に好ましい。
シリコーン系の撥水性材料からなる撥水性表面層としては、例えば、シリコーン系離型剤の皮膜、シリコーンオイル又は各種変性シリコーンオイルの焼付皮膜、シリコーンワニスの皮膜、シリコーンゴムの皮膜、シリコーンゴムと各種金属、ゴム、プラスチック、セラミック等の複合物からなる皮膜などが挙げられる。
フッ素化合物からなる撥水性表面層としては、フッ素樹脂の皮膜、有機フッ素化合物の皮膜、フッ素オイルの焼付皮膜又は吸着膜、フッ素ゴムの皮膜、若しくはフッ素ゴムと各種金属、ゴム、プラスチック、セラミック等の複合物からなる皮膜などが挙げられる。
【0041】
加熱ローラにおける加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃以上200℃以下が好ましい。
【0042】
定着ベルトとしては、耐熱性があり、機械的強度が高ければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリイミド、PET、PEN等のフィルムなどが挙げられる。また、定着ベルトとしては、表面に光吸収材が付着することによる画像の乱れを抑制する点で、加圧ローラの最表面を形成する材料と同じものを用いることが好ましい。定着ベルトは、肉厚を薄くすることができることにより、ベルト自体を加熱するエネルギーを小さくできるため、電源を入れてすぐに使用することができる。このときの温度及び圧力は定着させる光吸収材の組成により変化するが、温度としては200℃以下が省エネの観点から好ましく、圧力としては1kg/cm以下が装置の剛性の点で好ましい。
【0043】
なお、2種以上の光吸収材を用いる場合は、各色の光吸収材が被付着物に付着する毎に定着させてもよく、全種の光吸収材が被付着物に付着して積層された状態で定着させてもよい。
また、光吸収材が非常に高粘度であって、乾燥が遅くなり被付着物に対する付着速度の向上が困難な場合には、被付着物を追加で加熱し、乾燥を促進させてもよい。
更に、光吸収材の被付着物への浸透及び濡れが遅く、付着させた光吸収材が十分に平滑化していない状態で乾燥させた場合、光吸収材が付着した被付着物の表面が粗くなるため、被付着物の表面の光沢が得られない場合がある。被付着物の表面の光沢を得るためには、加圧して定着させる定着手段とすることにより、被付着物に付着した光吸収材をつぶしながら被付着物に押し込むよう定着させて、被付着物の表面粗さを小さくするようにしてもよい。
定着手段は、特に粉体を押し固めて形成した固体の光吸収材を用いた場合などに、被付着物に定着させるために必要となる。なお、必要に応じて、定着手段とともに公知の光定着器を用いてもよい。
定着工程としては、被付着物に付着させた光吸収材を、被付着物に定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、定着手段を用いて好適に行うことができる。
【0044】
制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーケンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
【0045】
<光吸収材>
光吸収材は、光吸収物質を有し、更に必要に応じて適宜選択した、その他の物質を有する。
光吸収材としては、光渦レーザビームの波長に対する吸光度が1よりも大きいことが好ましく、2よりも大きいことがより好ましい。光吸収材が光渦レーザビームの波長に対する吸光度が2よりも大きいと、エネルギー効率を高めることができる点で有利である。
【0046】
<<光吸収物質>>
光吸収物質としては、所定の波長の光を吸収するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料、染料などの着色剤が挙げられる。
【0047】
光吸収物質における所定の波長の光の吸収性能としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、膜厚が3μmにおける塗膜状態での透過率(吸光度)として、80%以下(0.1以上)が好ましく、50%以下(0.3以上)がより好ましく、30%以下(0.5以上)が特に好ましい。
また、光吸収性能を有する光吸収材により形成された塗膜において、光吸収材の膜厚における透過率(吸光度)としては、10%以下(1以上)が好ましく、1%以下(2以上)がより好ましく、0.1%以下(3以上)がさらに好ましく、0.01%以下(4以上)が特に好ましい。透過率が好ましい範囲内であると、基材に吸収された光渦レーザビームのエネルギーが熱に変換されにくいため、光吸収材に乾燥や溶融などの変化を与えることが少ない点でも有利である。さらに、透過率が好ましい範囲内であると、光吸収材に与えるエネルギーが低下しにくいため、付着位置のバラつきが生じにくい点で有利である。
なお、透過率(吸光度)は、例えば、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV3600)などを用いて測定することができる。
【0048】
光吸収材としては、その形態、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
光吸収材の形態としては、例えば、液体、固体、粉体などが挙げられる。特に、高粘性体又は固体を飛翔可能としたことは、従来のインクジェット記録方式には成し得ない長所となっている。
また、光吸収材が固体又は粉体であれば、光吸収材の形態としては、光渦レーザビームを照射する際に光吸収材が粘性を有する状態であることが好ましい。具体的には、固体又は粉体を飛翔させたい場合には、例えば、光渦レーザビームを照射する前に加熱して溶融状態にして粘性を有する形態にすることが好ましい。
【0049】
液体の光吸収材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料及び溶剤を含むインク、導電体及び溶剤を含む導電性ペーストなどが挙げられる。なお、溶剤を含むインクに光渦レーザビームが照射されると、溶剤が光を吸収しない場合には、溶剤以外の光を吸収する含有物に光渦レーザビームのエネルギーが付与され、その含有物とともに溶剤が飛翔する。
液体の光吸収材の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1Pa・s以上が好ましく、1Pa・s以上20Pa・s以下がより好ましい。
なお、粘度は、例えば、回転粘度計(東機産業株式会社製、VISCOMATE VM-150III)などを用いて25℃の環境下で測定することができる。
【0050】
導電性ペーストは、導電体を含むインクであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回路基板の製造方法において公知乃至慣用の導電性ペーストなどが挙げられる。
導電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、金、銅、ニッケル、ITO、カーボン、カーボンナノチューブ等の導電性を有する無機粒子;ポリアニリン、ポリチオフェン(例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)等)、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性の有機高分子からなる粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性ペーストの体積抵抗率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常の電極用途として使用できる点から10Ω・cm以下が好ましい。
【0051】
粉体の光吸収材としては、例えば、顔料及び結着樹脂を含むトナーや半田ボールの様な金属微粒子などが挙げられる。この場合、光渦レーザビームが照射されると、顔料に光渦レーザビームのエネルギーが付与され、顔料とともに結着樹脂がトナーとして飛翔する。なお、粉体の光吸収材としては、顔料のみとしてもよい。
【0052】
固体の光吸収材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタや蒸着により製膜された金属薄膜、分散体などの粉体を押し固めたものなどが挙げられる。
【0053】
金属薄膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。金属としては、例えば、銀、金、アルミ、白金、銅など蒸着やスパッタ加工が可能な一般的な金属が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属薄膜を飛翔させて画像パターンを形成する方法としては、例えば、予めガラスやフィルムなどの基材上に金属薄膜を作成し、金属薄膜に光渦レーザビームを照射して飛翔させることで画像パターンを形成させる方法が挙げられる。また、他の方法としては、非画像部を飛翔させることで画像パターンを形成させる方法などが挙げられる。
【0054】
粉体を押し固めたものとしては、所定の平均厚みである層状であることが好ましく、基材の表面に層状の固体を担持されるようにしてもよい。
【0055】
光吸収材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
光吸収材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、10μm以上50μm以下が更に好ましい。光吸収材の平均厚みを上記の好ましい範囲とすることにより、光渦レーザビームを照射しときの光吸収材の飛散を抑制することができる。
光吸収材の平均厚みが好ましい範囲内であると、光吸収材を層状にして供給した場合、連続して飛翔させたときであっても層の強度を確保することができるため、安定した供給が可能となる点で有利である。また、光渦レーザビームのエネルギーが大きくなりすぎないため、特に光吸収材が有機物の場合、劣化や分解が発生しにくい点で有利である。
なお、塗布する方法によっては、一定のパターンを保持した層として供給することも可能となる。
【0056】
平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材に対して任意の複数の点を選択し、複数の点の厚みの平均を算出することにより求める方法などが挙げられる。平均としては、5点の厚みの平均が好ましく、10点の厚みの平均がより好ましく、20点の厚みの平均が特に好ましい。
平均厚みの測定機器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザー変位計やマイクロメータなどの非接触または接触方式の方法が挙げられる。
【0057】
光吸収材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像形成を行う場合にはトナーのような着色剤であってもよく、立体造形物を製造する場合には後述する立体造形剤であってもよい。
【0058】
-着色剤-
着色剤としては、光吸収材と同様に、その形状、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。以下、光吸収材を着色剤とした際に異なる点を説明する。
【0059】
液体の着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、溶剤としての水に、染料、顔料、着色粒子、着色油滴などの色材を分散させた水性インクが使用可能である。また、水性インクに限らず、溶剤として、例えば、炭化水素系の有機溶剤や各種アルコールなど、比較的低沸点の液体を含んだ着色剤も使用可能である。これらの中でも、揮発成分の安全性、爆発の危険性などの点から、水性インクが好ましい。
【0060】
また、画像形成装置では、版を用いるオフセット印刷用のプロセスインキ、JAPAN COLOR対応インキ、特色インキなどでも画像形成が可能であるため、オフセット印刷で用いる色に合わせたデジタル画像を無版で容易に再現することができる。
更に、UV硬化インキでも画像形成が可能であるため、定着工程において紫外線を照射して硬化することにより、重なった被記録媒体が貼り付くブロッキングの防止、及び乾燥工程の簡略化ができる。
【0061】
色材の材質としては、例えば、有機顔料、無機顔料、染料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
有機顔料としては、例えば、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンバイオレット、銅フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、サップグリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ポリアゾイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、イソインドリノンイエロー、ファーストイエロー、クロモフタルイエロー、ニッケルアゾイエロー、アゾメチンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、アリザリンレッド、キナクリドンレッド、ナフトールレッド、モノアゾレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド、アンスラキノニルレッド、ジケトピロロピロールレッド、ジケトピロロピロールオレンジ、ベンズイミダゾロンブラウン、セピア、アニリンブラックなどが挙げられ、有機顔料のうち金属レーキ顔料としては、例えば、ローダミンレーキ、キノリンイエローレーキ、ブリリアントブルーレーキなどが挙げられる。
【0063】
無機顔料としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、チタンイエロー、クロムチタンイエロー、ライトレッド、クロムオキサイドグリ-ン、マルスブラック、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、リトポン、ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン、クレー、ミネラルバイオレット、ローズコバルトバイオレット、シルバーホワイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム、黄銅、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉、真鍮顔料、アイボリーブラック、ピーチブラック、ランプブラック、カーボンブラック、プルシャンブルー、オーレオリン、雲母チタン、イエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー、カッセルアース、白亜、石膏、バーントシェンナ、バーントアンバー、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、オーピメント、辰砂、珊瑚末、胡粉、ベンガラ、群青、紺青、魚燐箔、酸化鉄処理パールなどが挙げられる。
【0064】
これらの中でも、ブラック顔料としては、色相、画像保存性の点から、カーボンブラックが好ましい。
シアン顔料としては、色相、画像保存性の点から、銅フタロシアニンブルーであるC.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
【0065】
マゼンタ顔料としては、キナクリドンレッドであるC.I.ピグメントレッド122、ナフトールレッドであるC.I.ピグメントレッド269、及びローダミンレーキであるC.I.ピグメントレッド81:4が好ましく、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、色相、画像保存性の点から、C.I.ピグメントレッド122及びC.I.ピグメントレッド269の混合物がより好ましく、C.I.ピグメントレッド122(P.R.122)及びC.I.ピグメントレッド269(P.R.269)の混合物としては、P.R.122:P.R.269が5:95以上80:20以下の混合物が特に好ましい。P.R.122:P.R.269が特に好ましい範囲内であると、色相がマゼンタ色として外れない。
【0066】
イエロー顔料としては、モノアゾイエローであるC.I.ピグメントイエロー74、ジスアゾイエローであるC.I.ピグメントイエロー155、ベンズイミダゾロンイエローであるC.I.ピグメントイエロー180、イソインドリンイエローであるC.I.ピグメントイエロー185が好ましい。これらの中でも、色相、画像保存性の点から、C.I.ピグメントイエロー185がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
光吸収材を着色剤としてのプロセスカラーインクとして用いる場合、4色のインクセットで用いることが好ましい。
【0068】
無機顔料は、体積平均粒径が10μmを超える粒子からなるものが多い。体積平均粒径が10μm以上の無機顔料を着色剤として用いる場合、着色剤としては、液体であることが好ましい。着色剤が液体であれば、静電気力など非静電付着力以外の力を用いることなく着色剤を安定した状態で維持できる点で有利である。また、この場合、ノズルつまりやインクの沈降などが顕著となりやすく、安定した連続印刷プロセスは望みにくいインクジェット記録方式と比較すると、本発明の画像形成方法は、非常に有効である。更に、着色剤の粒子の表面積が小さくなると十分な帯電量が得られず、安定した連続印刷プロセスとして成立しない電子写真方式と比較しても、本発明の画像形成方法は、非常に有効である。
【0069】
染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料、アントラキノン誘導体、アントロン誘導体、インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、フタロシアニン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、ポリメチン染料、アゾメチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料などが挙げられる。
【0070】
着色剤の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
被記録媒体に浸透する液体の着色剤を用いた場合、被記録媒体に付着した着色剤がフェザリングやブリーディングを発生することがあるが、本発明の画像形成装置で取り扱いが可能である高粘度の着色剤にすると、被記録媒体への浸透速度に対して乾きのほうが速いため、特にブリーディングの減少によって発色性の向上とエッジ部分の鮮鋭化が図れ、高画質の画像を形成することができる。また、着色剤を重ねて付着させる重ね打ちによる階調表現を行う場合にも、着色剤の量の増加による滲みも少なくすることができる。
更に、この画像形成方法は、液体の着色剤を飛翔させて付着させるものであるため、例えば、フィルム状の着色剤担持体から熱により着色剤を溶融転写するいわゆる熱転写方式と比較すると、被記録媒体に微小な凹凸が存在していても良好に記録を行うことができる。
【0071】
着色剤の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以下が好ましい。着色剤の平均厚みが100μm以下であると、着色剤を飛翔させるためのエネルギーを小さくできるため、着色剤担持体の耐久性、着色剤が有機物である場合の組成の分解などが発生しにくくなる点で有利である。なお、平均厚みの好ましい範囲は、被記録媒体、目的などにより変化する。
【0072】
例えば、一般的なオフセット印刷で用いられるコート紙や平滑なフィルムを被記録媒体として用いる場合には、着色剤の平均厚みとしては、0.5μm以上5μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、被記録媒体の微小な平均厚みの違いによる色差が人間の目でも判別しにくくなるためコート紙でも彩度の高い画像になりやすくなるとともに、網点のドットゲインが顕著とならず鮮鋭な画像が表現しやすくなる点で有利である。
【0073】
また、例えば、オフィスなどで用いられる上質紙など、表面粗さがコート紙やフィルムよりも大きな被記録媒体を用いる場合には、着色剤の平均厚みとしては、3μm以上10μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、被記録媒体の表面粗さに影響されにくく良好な画質を得やすくなるとともに、特にプロセスカラーの着色剤でフルカラー画像を表現する場合、複数の着色剤の層を重ね合わせても段差感が顕著となりにくい。
【0074】
更に、例えば、布、繊維などを染色する捺染に用いる場合、被記録媒体となる綿、絹、化学繊維などに着色剤を付着させるには、着色剤の平均厚みとしては、5μm以上の平均厚みが必要となる場合が多い。これは、繊維の太さが紙に比べ大きくなるため、多くの着色剤が必要となる場合が多い。
【0075】
<基材>
基材としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基材の形状としては、光吸収材を表面に担持し、裏面から光渦レーザビームを照射可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基材の形状としては、例えば、平板状、真円又は楕円等の筒状、筒状の一部を切り出した面、無端ベルト状などが挙げられる。これらの中でも、基材が筒状であって、周方向に回転する基材の表面に光吸収材を供給する光吸収材供給手段を有するようにすることが好ましい。筒状の基材の表面に光吸収材を担持すると、外周方向における被付着物の寸法に依存せずに供給することができる。また、この場合、筒状の内部には光吸収材飛翔手段を配置し、内部から外周に向けて光渦レーザビームを照射可能とし、基材が周方向に回転することで連続的に照射することができる。また、平板状の基材の形状としては、例えば、スライドガラスなどが挙げられる。
【0076】
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0077】
基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被付着物の幅に合わせた寸法とすることが好ましい。
【0078】
基材の材質としては、光を透過するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光を透過するもののうち、酸化珪素を主成分とする各種ガラスなどの無機材料、透明性の耐熱プラスチック、エラストマーなどの有機材料が、透過率と耐熱性の点で、好ましい。
【0079】
基材の表面粗さRaとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光渦レーザビームの屈折散乱を抑制し、光吸収材に付与するエネルギーを低下させない点で、表面及び裏面のどちらも1μm以下であることが好ましい。また、表面粗さRaが好ましい範囲内であると、被付着物に付着した光吸収材の平均厚みのばらつきを抑制することができ、所望の量の光吸収材を付着させることができる点で有利である。
表面粗さRaは、JIS B0601に従って測定することができ、例えば、共焦点式レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)や触針式表面形状測定装置(Dektak150、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて測定することができる。
【0080】
<被付着物>
被付着物(被転写媒体)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像を形成するための被記録媒体、立体造形物を形成するための造形物支持基板などが挙げられる。
【0081】
-被記録媒体-
被記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コート紙、上質紙、フィルム、布、繊維などが挙げられる。
【0082】
被付着物と光吸収材との間隙(ギャップ)としては、被付着物と光吸収材とを接触させなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm以上5mm以下が好ましく、0.10mm以上1mm以下がより好ましく、0.10mm以上0.50mm以下が特に好ましい。被付着物と光吸収材との間隙が好ましい範囲内であると、被付着物に対する光吸収材の付着位置の精度が低下しにくくなる点で有利である。また、被付着物と光吸収材とを接触させないことにより、光吸収材、被付着物の組成を選ばず光吸収材を被付着物に付着させることが可能となる。
更に、間隙は、例えば、被付着物の位置を一定に維持する位置制御手段などにより一定に保たれることが好ましい。この場合、光吸収材及び被付着物の位置変動、平均厚みのバラつきを考慮して各部位を配置することが重要となる。
【0083】
また、被転写媒体(被付着物)における、転写(付着)後の光吸収材の平均直径(平均ドット径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以下とすることが、形成する画像や立体造形物の解像度をより向上させることができる点で好ましい。本発明においては、飛翔する液滴の径は照射される光渦レーザビーム径よりも小さい径で飛翔するが、被転写媒体上では着滴時の衝撃及び被転写媒体表面との表面張力の関係によって形成されるドット径は変化する。
また、平均ドット径は、例えば、マイクロスコープ等で光吸収材のドット画像を取得して画像輝度情報からドット領域を検出し、検出したドット領域のピクセル数から各ドットの面積を算出、円形に換算した時の直径をドット径とし、これを平均することにより求めることができる。
【0084】
さらに、被転写媒体(被付着物)における、転写(付着)後の光吸収材の直径(ドット径)のばらつきの値としては、10%以下とすることが好ましく、6%以下とすることがより好ましい。被転写媒体における、転写後の光吸収材の直径のばらつきの値を、上記の好ましい範囲とすることにより、画像や立体造形物を形成する際の精度をより向上させることができる。
また、被転写媒体における、転写後の光吸収材の直径のばらつきの値は、例えば、マイクロスコープ等で光吸収材のドット画像を取得して画像輝度情報からドット領域を検出し、検出したドット領域のピクセル数から各ドットの面積を算出、円形に換算した時の直径をドット径とし、各ドットの粒径分布の平均粒径と標準偏差から算出することにより求めることができる。
【0085】
加えて、被転写媒体(被付着物)における、転写(付着)後の光吸収材の位置(ドット位置)のばらつきの値としては、10μm以下とすることが好ましく、5μm以下とすることがより好ましい。被転写媒体における、転写後の光吸収材の位置のばらつきの値を、上記の好ましい範囲とすることにより、画像や立体造形物を形成する際の精度をより向上させることができる。なお、被転写媒体における、転写後の光吸収材の位置のばらつきの値としては、例えば、光吸収材のドットを一列に付着させる場合には、そのドットの列と直行する方向における、光吸収材の位置のばらつきの値とすることができる。
例えば、マイクロスコープ等で光吸収材のドット画像を取得して画像輝度情報からドット領域を検出し、検出した各ドット領域の重心座標を算出、各重心の最小二乗法による近似直線からのずれを算出することにより求めることができる。
【0086】
なお、光吸収材飛翔手段、光吸収材供給手段、及びビーム走査手段を一体として着色剤飛翔ユニットとして扱ってもよい。
例えば、着色剤飛翔ユニットを画像形成装置に4つ設け、プロセスカラーであるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの着色剤を飛翔させるようにしてもよい。着色剤の色数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、必要に応じて着色剤飛翔ユニットの数を増減させてもよい。また、被記録媒体の搬送方向における、プロセスカラーの着色剤を有する着色剤飛翔ユニットの上流側に、白色の着色剤を有する着色剤飛翔ユニットを配置することで、白色隠蔽層を設けることが可能となるため、透明な被記録媒体に色再現性に優れた画像を形成できる。ただし、特にイエロー、白色、透明の着色剤においては、光渦レーザビームの波長の光の透過率(吸光度)が適正となるように、レーザー光源を、例えば、ブルーレーザビーム、紫外線レーザビームなどに適宜選択してしなければならない場合がある。
【0087】
更に、画像形成装置では、高粘度の着色剤を用いることができるので、被記録媒体上に順次異なる色の着色剤を重ねて画像を形成しても、着色剤が滲み出して交じり合うブリーディングの発生を抑制できるため、高画質のカラー画像を得ることができる。
【0088】
画像形成装置の小型化などを目的として、着色剤飛翔ユニットを1つだけ設け、供給ローラ及び着色剤担持体に供給する着色剤自体を切り替えて複数色の画像を形成するようにしてもよい。
【0089】
また、本発明の画像形成装置を、以下のように、立体造形物の製造装置に応用することもできる。
【0090】
(立体造形物の製造装置)
立体造形物の製造装置は、立体造形剤飛翔装置を少なくとも有し、立体造形剤硬化手段を有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の手段を有する。立体造形剤飛翔装置は、光吸収材が立体造形剤である画像形成装置であり、立体造形剤飛翔手段により立体造形剤を飛翔させる。
【0091】
<立体造形剤飛翔手段>
立体造形剤飛翔手段は、光吸収材が立体造形剤であり、被付着物が造形物支持基板であること以外は前述の光吸収材飛翔手段と同様であるため、その説明を省略する。なお、立体造形剤飛翔手段は、造形物支持基板に対して立体造形剤を層として積み重ね、立体的に付着させる。
【0092】
<立体造形剤硬化手段>
立体造形剤硬化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、立体造形剤が紫外線硬化性材料であれば、紫外線照射器などが挙げられる。
立体造形剤硬化工程としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、立体造形剤が紫外線硬化性材料であれば、紫外線照射工程などが挙げられ、立体造形剤硬化手段を用いて好適に行うことができる。
【0093】
<その他の手段>
その他の手段としては、例えば、立体造形剤供給手段、立体造形ヘッドユニット走査手段、基板位置調整手段、制御手段などが挙げられる。
【0094】
<<立体造形剤供給手段>>
立体造形剤供給手段は、光吸収材が立体造形剤であり、被付着物が造形物支持基板であること以外は前述の光吸収材供給手段と同様であるため、その説明を省略する。
【0095】
<<立体造形ヘッドユニット走査手段>>
立体造形ヘッドユニット走査手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収体飛翔ユニットと紫外線光吸収材飛翔手段とを一体とした立体造形ヘッドユニットを造形物支持基板上で装置の幅方向(X軸)に走査させてもよい。なお、立体造形ヘッドユニットは、例えば、光吸収体飛翔ユニットが付着させた紫外線硬化性の立体造形剤を紫外線光吸収材飛翔手段により硬化させるものとすることができる。また、立体造形ヘッドユニットは複数設けるようにしてもよい。
【0096】
<<基板位置調整手段>>
基板位置調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、装置の奥行き方向(Y軸)及び高さ方向(Z軸)に造形物支持基板の位置を調整可能な基体(ステージ)としてもよい。
【0097】
<<制御手段>>
制御手段は、前述した画像形成装置の制御手段と同様であるため、その説明を省略する。
【0098】
<立体造形剤>
立体造形剤としては、光吸収材と同様に、その形状、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。以下、光吸収材を立体造形剤とした際に異なる点を説明する。
【0099】
立体造形剤の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、求められる精密さなどにより変化するが、5μm以上500μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、立体造形物の精度、質感、滑らかさ、製造時間などの点で有利である。また、立体造形剤の平均厚みとしては、5μm以上100μm以下がより好ましい。平均厚みがより好ましい範囲内であると、光渦レーザビームのエネルギーを低く抑えられ、立体造形剤の劣化などを抑制する点で有利である。
【0100】
立体造形剤としては、硬化性材料を少なくとも含有してなり、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
【0101】
<<硬化性材料>>
硬化性材料としては、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)照射、加熱等により重合反応を生起し硬化する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物、熱硬化性化合物などが挙げられる。これらの中でも、常温で液体の材料が好ましい。
活性エネルギー線硬化性化合物は、分子構造中にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する比較的低粘度のモノマーであり、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。
【0102】
<<その他の成分>>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、有機溶剤、光重合開始剤、界面活性剤、着色剤、安定化剤、水溶性樹脂、低沸点アルコール、表面処理剤、粘度調整剤、接着性付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。
【0103】
<立体造形剤担持体>
立体造形剤担持体は、光吸収材を立体造形剤とした以外は前述の基材と同様であるため、その説明を省略する。
【0104】
<造形物支持基板>
造形物支持基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板位置調整手段によりY軸及びZ軸の位置が調整されるようにしてもよい。
【0105】
造形物支持基板と立体造形剤担持体との間隙としては、被付着物と基材との間隙と同じであるので、その説明を省略する。
【0106】
次に、本発明における画像形成装置の一例について図面を参照して説明する。
なお、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0107】
図5Aは、本発明の画像形成装置の一例を示す説明図である。
図5Aにおいて、画像形成装置300は、光吸収材飛翔手段1と、光を吸収する光吸収材20と、被付着物30と、基材40とを有する。画像形成装置300は、基材40に担持されている光吸収材20に、光吸収材飛翔手段1により光の光渦レーザビーム12を照射し、光渦レーザビーム12のエネルギーにより光吸収材20を照射方向に飛翔させ、被付着物30に付着させる装置である。
【0108】
光吸収材飛翔手段1は、レーザー光源2と、ビーム径変更部材3及び7と、ビーム波長変更部材4と、光渦変換部5と、偏光変換部6と、を有している。
【0109】
レーザー光源2は、例えば、チタンサファイアレーザであり、パルス発振させたレーザビーム11を発生させ、ビーム径変更部材3に照射する。
ビーム径変更部材3は、例えば、集光レンズであり、レーザー光源2が発生させたレーザビーム11の光路におけるレーザー光源2の下流に配置され、レーザビーム11の径を変更する。
ビーム波長変更部材4は、例えば、KTP結晶であり、レーザビーム11の光路におけるビーム径変更部材3の下流に配置され、レーザビーム11の波長を光吸収材20が吸収可能な波長に変更する。
光渦変換部5は、例えば、螺旋位相板であり、レーザビーム11の光路におけるビーム波長変更部材4の下流に配置され、レーザビーム11を光渦レーザビーム12に変換する。
偏光変換部6は、例えば、1/4波長板であり、光渦レーザビームに円偏光を付与する。
【0110】
光吸収材20は、光吸収材飛翔手段1から光渦レーザビーム12を照射され、光渦レーザビーム12の径の範囲におけるエネルギーを受けて飛翔し、被付着物30に付着する。
なお、飛翔した光吸収材20は、光渦レーザビーム12により付与された、適度なエネルギーによる前方推進とジャイロ効果により、ビーム径の中心軸近傍に収束しながら捩じ切られることにより、周辺への飛散を抑制されつつ被付着物30に付着する。
このとき、飛翔する光吸収材20の飛翔量は、光渦レーザビーム12が照射された光吸収材20の面積のうち一部であり、光渦変換部5により調整することができる。
【0111】
図5Bは、本発明の画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図5Bにおいて、画像形成装置301は、図5Aに示した画像形成装置300の各手段などに加え、基材40と、ビーム走査手段60とを有している。この画像形成装置301は、光吸収材飛翔手段1が発生させた光渦レーザビーム12を、ビーム走査手段60により光渦レーザビーム12の照射方向と直交する方向に走査する。これにより、画像形成装置301は、平板状の基材40が担持する光吸収材20の任意の位置に照射し、飛翔させた光吸収材20を被付着物30に付着させることができる。
【0112】
ビーム走査手段60は、光渦レーザビーム12の光路における光吸収材飛翔手段1の下流に配置され、反射鏡61を有している。
反射鏡61は、反射鏡駆動手段により図5B中矢印Sで示す走査方向に可動し、光渦レーザビーム12を光吸収材20の任意の位置に反射する。
なお、ビーム走査手段60は、例えば、光吸収材飛翔手段1自体を移動させるか、光吸収材飛翔手段1を回動させて光渦レーザビーム12の照射方向を変化させるようにしてもよい。あるいは、ビーム走査手段60は、反射鏡61としてポリゴンミラーを用いたりすることにより、任意の位置に光渦レーザビーム12を走査させるようにしてもよい。
【0113】
基材40は、光渦レーザビーム12の光路におけるビーム走査手段60の下流に配置され、例えば、光吸収材20が高粘度の液体である場合、光吸収材20が塗布されて固定する目的で用いられる。この基材40は、光を透過可能であって、光吸収材20を表面に担持し、裏面から光渦レーザビーム12により光吸収材20が照射される。
また、光吸収材20を基材40に担持される段階で、層を形成した光吸収材20の平均厚みが一定となるように制御することにより、光吸収材20の飛翔量を安定させることができる。
なお、光吸収材飛翔手段1と、ビーム走査手段60とを合わせたものを光渦レーザビーム照射ユニット100と称する。
【0114】
図5Cは、本発明の画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図5Cにおいて、画像形成装置301aは、図5Bに示した画像形成装置301におけるビーム走査手段60として、ガルバノスキャナ(ガルバノミラー)62a及び62bを有する。ガルバノスキャナ62a及び62bは、それぞれが独立した走査方向(2次元)に可動し、光渦レーザビーム12を光吸収材20の任意の位置に反射することができる。ビーム走査手段60としてガルバノスキャナ62a及び62bを用いることにより、光渦レーザビーム12の走査スピード及び走査精度をより向上させることができる。
また、画像形成装置301aにおいては、例えば、ガルバノスキャナ62bと基材40の間に、fθレンズを配置することも好ましい。
【0115】
図6Aは、光吸収材供給手段及び被付着物搬送手段を付加した図5Bに示す画像形成装置の一例を示す説明図である。
図6Aにおいて、画像形成装置302は、図5Bに示した画像形成装置301の各手段などに加え、光吸収材供給手段50と、被付着物搬送手段70とを有しており、平板状の基材40を円筒状の光吸収材担持ローラ41に変更したものである。また、光吸収材担持ローラ41の内側には、光渦レーザビーム照射ユニット100が配置されており、光吸収材担持ローラ41が外周に担持する被付着物30に光渦レーザビーム12を照射する。
【0116】
光吸収材供給手段50は、貯蔵槽51と、供給ローラ52と、規制ブレード53とを有している。
貯蔵槽51は、供給ローラ52の下方の近傍に配置され、光吸収材10を貯蔵する。
供給ローラ52は、光吸収材担持ローラ41と当接するように配置され、貯蔵槽51の光吸収材10に一部が浸漬されている。供給ローラ52は、回転駆動手段により、又は光吸収材担持ローラ41の回転に従動して図6A中矢印R2で示す回転方向に回転しながら光吸収材10を表面に付着させる。付着した光吸収材10は、規制ブレード53により平均厚みを均一にされ、光吸収材担持ローラ41に転移することにより層として供給される。光吸収材担持ローラ41の表面に供給された光吸収材10は、光吸収材担持ローラ41が回転することにより、光渦レーザビーム12が照射される位置に連続的に供給される。
規制ブレード53は、図中矢印R2で示す回転方向における光吸収材担持ローラ41の上流側に配置され、供給ローラ52が表面に付着させた光吸収材10を規制し、光吸収材担持ローラ41に供給する光吸収材10の平均厚みを均一にする。
【0117】
被付着物搬送手段70は、光吸収材担持ローラ41と搬送する被付着物30が接触しないように光吸収材担持ローラ41の近傍に配置され、被付着物搬送ローラ71と、被付着物搬送ローラ71に張架された被付着物搬送ベルト72とを有している。この被付着物搬送手段70は、回転駆動手段により被付着物搬送ローラ71を回転させ、被付着物搬送ベルト72により被付着物30を図6A中矢印Cで示す搬送方向に搬送する。
このとき、光渦レーザビーム照射ユニット100は、画像情報に従って光吸収材担持ローラ41の内側より光渦レーザビーム12を照射し、被付着物30に光吸収材20を付着させる。被付着物30を被付着物搬送ベルト72により移動させながら、このような光吸収材20を被付着物30に付着させる付着動作を行うことにより、被付着物30に2次元の画像を形成することができる。
【0118】
なお、光吸収材担持ローラ41の表面に担持されたが飛翔させなかった光吸収材20は、光吸収材担持ローラ41が回転し、供給ローラ52との当接により溜まっていき、やがて貯蔵槽51に落下して回収される。また、光吸収材20の回収方法としては、それに限られることなく、光吸収材担持ローラ41の表面の光吸収材20を掻き取るスクレーパなどを設けてもよい。
【0119】
図6Bは、光吸収材供給手段及び被付着物搬送手段を付加した図5Bに示す画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図6Bにおいて、画像形成装置303は、図6Aで示した画像形成装置302における円筒状の光吸収材担持ローラ41を、軸方向に沿って2分割した光吸収材担持部42とし、画像形成装置302の配置を変更したものである。
【0120】
光吸収材担持部42は、円筒状の一部の面となっており、かつ円筒中心線の対向側には面が無い形状である。このように対向面がない担持体とすることにより、光渦レーザビーム照射ユニット100を円筒状の光吸収材担持ローラ41に設けることなく、光渦レーザビーム12の光路が確保しやすくなるため、装置を単純化することができる。
【0121】
図7Aは、定着手段を付加した図6Aに示す画像形成装置の一例を示す説明図である。
図7Aにおいて、画像形成装置305は、図6Aに示した画像形成装置302の各手段などに加え、定着手段80を有しており、被付着物30に付着させた光吸収材20を定着させて平滑にするようにしている。なお、被付着物搬送手段70の位置は、図6Aでは光吸収材担持ローラ41の側面としたが、図7Aでは説明の便宜上、光吸収材担持ローラ41の上方とした。
【0122】
定着手段80は、加圧方式の定着手段であって、被付着物30の図7A中矢印Cで示す搬送方向において光吸収材担持ローラ41の下流側に配置され、加圧ローラ83と、対向ローラ84とを有している。この定着手段80は、光吸収材20が付着した被付着物30を、挟持しながら搬送することにより加圧して定着させる。
【0123】
加圧ローラ83は、対向ローラ84に向かって付勢されており、表面が被付着物30と接触し、対向ローラ84とにより被付着物30を挟持しながら加圧する。
対向ローラ84は、加圧ローラ83と当接する位置に配置され、被付着物30を加圧ローラ83とにより被付着物搬送ベルト72を介して挟持する。
【0124】
例えば、画像形成装置305を画像形成装置とし、1,000mPa・s以上である非常に高粘度の光吸収材20を用いると、光吸収材20の被付着物30への浸透又は濡れが遅くなりやすい。そして、光吸収材20がそのままの状態で乾燥してしまうと、画像の表面粗さが粗くなり、画像の光沢が低下してしまう場合がある。このような場合、定着手段80は、光吸収材20が付着した被付着物30を加圧ローラ83で加圧し、光吸収材20を被付着物30に押し込む、あるいは光吸収材20を潰すことができるため、光吸収材20が付着した被付着物30の表面粗さを小さくできる。
【0125】
図7Bは、定着手段を付加した図6Aに示す画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図7Bにおいて、画像形成装置306は、図7Aで示した画像形成装置305における加圧方式の定着手段80を加熱加圧方式の定着手段81に変更したものである。
定着手段81は、被付着物30の図7B中矢印Cで示す搬送方向において光吸収材担持ローラ41の下流側に配置され、加熱加圧ローラ85と、定着ベルト86と、従動ローラ87と、ハロゲンランプ88と、対向ローラ84とを有している。この定着手段81は、溶融が必要な材料を分散した分散液の光吸収材20として用いた場合で、加圧のみでは狙いの画像を得られないときに用いられる。
【0126】
加熱加圧ローラ85は、対向ローラ84に向かって付勢されており、定着ベルト86を介して、被付着物30を対向ローラ84と挟持しながら加熱及び加圧する。
定着ベルト86は、無端のベルト状であり、加熱加圧ローラ85及び従動ローラ87に張架され、表面が被付着物30と接触する。
従動ローラ87は、加熱加圧ローラ85の下方に配置され、加熱加圧ローラ85の回転に従って従動する。
ハロゲンランプ88は、加熱加圧ローラ85の内部に配置され、被付着物30に光吸収材20を定着させるための熱を発生させる。
対向ローラ84は、定着ベルト86と当接する位置に配置され、被付着物30を加圧ローラ83とにより被付着物搬送ベルト72を介して挟持する。
【0127】
図7Cは、定着手段を付加した図6Aに示す画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図7Cにおいて、画像形成装置307は、図7Aで示した画像形成装置305における加圧方式の定着手段80をUV照射方式の定着手段82に変更したものである。
定着手段82は、被付着物30の図7C中矢印Cで示す搬送方向において光吸収材担持ローラ41の下流側に配置され、UVランプ89を有している。この定着手段81は、光吸収材20として紫外線硬化性材料を用いた場合に使用され、UVランプ89によりUVを照射して被付着物30に定着させる。
【0128】
図8Aは、本発明の画像形成装置の一例を示す説明図である。
図8Aにおいて、画像形成装置200は、図7Bに示した画像形成装置306の各手段などに加え、光吸収体飛翔ユニット120を3つ有しており、光吸収材20を着色剤21に変更したものである。
また、光吸収体飛翔ユニット120は、光吸収材供給手段50と、光吸収材飛翔手段1と、ビーム走査手段60と、光吸収材担持ローラ41と、光吸収材20とにより構成される。
【0129】
光吸収体飛翔ユニット120Y、M、C、Kは、それぞれプロセスカラーであるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナーを着色剤21として貯蔵している。
これにより、被記録媒体31上に各色の画像を順次形成し、カラー画像を得るカラープロセスに適用することができる。
【0130】
図8Bは、本発明の画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図8Bにおいて、画像形成装置201は、図8Aに示した画像形成装置200の各手段などに加え、転写手段としての中間転写手段90を有している。
【0131】
中間転写手段90は、中間転写体91と、中間転写体駆動ローラ92と、中間転写体従動ローラ93とを有している。
中間転写体91は、例えば、無端状のベルトであり、4つの光吸収体飛翔ユニット120の上方に配置され、中間転写体駆動ローラ92と、中間転写体従動ローラ93とにより張架されている。
中間転写体駆動ローラ92は、回転駆動手段により図8B中矢印R2で示す回転方向に回転し、中間転写体91を回転させる。
中間転写体従動ローラ93は、中間転写体駆動ローラ92の回転に従って従動する。
このように、まず中間転写体91に画像を形成し、これを所望の被記録媒体31に転写するようにしてもよい。この画像形成装置201においても、画像形成装置200と同様に高画質のカラー画像を得ることができる。また、中間転写体91に形成した画像を被記録媒体31に転写する際に中間転写体駆動ローラ92により押圧するので、画像形成装置200と同様に、着色剤21を付着させた被記録媒体31の表面粗さを小さくすることができる。
【0132】
また、図5Bでは、光渦レーザビームを照射する方向を重力方向としたが、図5A及び図6A図8Bでは、光渦レーザビームを照射する方向を重力方向とは逆の方向にすることや、水平方向にすることを示した。
このように、本発明の画像形成方法では、基材40の表面への光渦レーザビームの照射方向が非重力方向であり、液柱乃至液滴が非重力方向に生ずるようにしてもよい。これにより、装置の設計において自由度を高めることができる。
【0133】
図9は、本発明の立体造形物の製造装置の一例を示す説明図である。
図9において、立体造形物の製造装置500は、造形物支持基板122と、ステージ123と、立体造形ヘッドユニット130とを有している。この立体造形物の製造装置500は、付着させた立体造形剤22を硬化しながら積層して立体造形物124を製造する。
立体造形ヘッドユニット130は、立体造形物の製造装置500の上部に配置され、駆動手段により図中矢印Lで示す方向に走査することができる。この立体造形ヘッドユニット130は、光吸収体飛翔ユニット120と、紫外線照射器121とを有している。
【0134】
光吸収体飛翔ユニット120は、立体造形ヘッドユニット130の中央に配置され、下方に光吸収体20を飛翔させ、造形物支持基板122又はすでに硬化させた光吸収体20に付着させる。
紫外線照射器121は、光吸収体飛翔ユニット120の両側面に配置され、光吸収体飛翔ユニット120が飛翔させた光吸収体20に紫外線を照射して硬化させる。
造形物支持基板122は、立体造形物の製造装置500の下部に配置され、立体造形ヘッドユニット130が立体造形剤22の層を形成する際の基板となる。
ステージ123は、造形物支持基板122の下方に配置され、駆動手段により造形物支持基板122を図中垂直方向に移動させることができる。また、このステージ123は、図中矢印Hで示す方向に移動させることができ、立体造形ヘッドユニット130と立体造形物124との間隙を調整することができる。
【0135】
なお、画像形成装置及び立体造形物の製造装置においては、被付着物、被記録媒体及び造形物支持基板を搬送又は移動させる例を示したが、これに限らず、被付着物などを静止させて光吸収体飛翔ユニットなどを移動させてもよい。あるいは、被付着物などと光吸収体飛翔ユニットなどの両者を移動させてもよい。
また、被記録媒体の全面の画像を同時に形成する場合などでは、少なくとも記録時には両者が静止しレーザーのみ動作してもよい。
【実施例0136】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下では、図5Bに示した光吸収材飛翔手段により、パルス発振させた光渦レーザビームを光吸収材としてのUVインクに照射して、被付着物にドットを形成するように付着させた実施例及び比較例について説明する。
【0137】
(実施例1)
<基材、光吸収材及び被付着物>
基材としてのスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、マイクロスライドガラスS7213;532nm波長光の透過率が99%)上に、光吸収材として、以下の配合のUVインクを表面に塗布して、平均厚み20μmとした膜を形成した。このとき、膜状の光吸収材における532nm波長光の透過率が0.01%以下(吸光度が4以上)であった。また、UVインクの粘度は、回転粘度計(VISCOMATE VM-150III、東機産業株式会社製)などを用いて25℃の環境下で測定したところ、4Pa・sであった。
・UV Core TYPE-A紅(株式会社T&K TOKA製) 100質量部
・UVフレキソ500紅 (株式会社T&K TOKA製) 50質量部
【0138】
次に、光吸収材を塗布した基材の表面を被付着物と対向させ、光吸収材の裏面から光渦レーザビームを垂直に照射できるように基材を設置した。
被付着物としては、PODグロスコート紙(三菱製紙株式会社製)を用い、被付着物と光吸収材との間隙(ギャップ)を1.5mmとした。
【0139】
<光吸収材飛翔手段>
光吸収材飛翔手段は、レーザー光源と、ビーム径変更部材と、ビーム波長変更素子と、光渦変換部としての空間光変調器(浜松ホトニクス製 LCOS-SLM X13267)と、偏光変換部としての1/4波長板とを有する。
【0140】
レーザー光源としては、千葉大学大学院融合科学研究科尾松研究室において自作したレーザー光源(YAG)を用いた。このレーザー光源を用いて、発生させたレーザビームにおける波長を532nm、ビーム径を1.25mm×1.23mm、パルス幅を2ナノ秒、パルス周波数を50Hz、とした1パルスのレーザビームを発生させた。発生させた1パルスのレーザビームを、空間光変調器(浜松ホトニクス製 LCOS-SLM X13267)を用いて光渦レーザビームに変換させた。次に、空間光変調器により変換させた光渦レーザビームを、空間光変調器の下流に配置されている1/4波長板(QWP;株式会社光学技研製)に通過させた。このとき、上記の式(1)で表されるトータルの回転モーメントJが2となるように、螺旋位相板と1/4波長板の光学軸を+45°に設定した。変換させた光渦レーザビームを、エネルギー調整フィルタ(シグマ光機株式会社製、NDフィルタ)に通過させることにより、光吸収材に照射させたときのレーザー出力を調整し、50μJ/ドットとした。光渦レーザビームは、集光レンズ(Thorlabs製、YAGレーザー集光レンズ)に照射して、光吸収材に照射させたときのビーム径をΦ80μmとなるようにした。
なお、実施例1では、軌道角運動量量子数を1、2及び3に変化させて飛翔体を形成させた。軌道角運動量量子数を1、2及び3に変化させたときの飛翔体の飛翔状態を図10Aから図10Cに示す。
【0141】
(実施例2)
実施例1において、光渦変換部を、空間光変調器から螺旋位相板に変更した以外は、実施例1と同様にして、膜を形成した。
【0142】
(比較例1)
実施例1において、エネルギー調整フィルタを設定して、液柱乃至液滴の径を変更した以外は、実施例1と同様にして、膜を形成した。
【0143】
実施例1~2及び比較例1において、「飛翔状態」、「付着状態」及び「付着量の制御性」を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0144】
<飛翔状態の評価>
実施例1~2及び比較例1において、光渦レーザビームを光吸収材としてのUVインクに照射したときの飛翔状態を、高速度ビデオカメラ(HyperVision HPV-X、株式会社島津製作所製)を用いて、光吸収材の飛翔方向に直交する方向から1フレーム100nsで撮影し、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
○: レーザビームの光路軸に収束し直進
△: レーザビームの光路軸に収束するが、直進性がやや乱れる
×: レーザビーム径以上に拡散して飛翔
【0145】
<付着状態の評価>
実施例1~2及び比較例1において、飛翔させた光吸収材が付着した被付着物の付着状態を、以下の基準で評価した。付着状態の結果を表1に示す。なお、本評価が○又は△であれば、実使用上問題ないレベルである。
〔評価基準〕
○:飛散なし
△:わずかに飛散あり
×:飛散あり
【0146】
<付着量の制御性の評価>
実施例1~2及び比較例1におけるレーザープロファイルと紙に転写したドットのドット径(μm)を、デジタルマイクロスコープ(VHX-5000,株式会社キーエンス製)を用いて測定し、3つのドットの平均ドット径D(μm)を算出した。また、紙に転写したドットの真円度を、自作の解析プログラムを用いて算出した。ドットの真円度は、以下の式で与えられる。
真円度=4π×(ドット面積)/(ドット周囲長)
なお、空間光変調器で起動角運動量子数Lを変更した場合、光渦のビームスポット径は、√(L+1)に比例する。図12Aから図12Cに、起動角運動量子数Lを1、2及び3に変更したときのドットの写真を示す。
〔評価基準〕
○:光渦レーザーの径に応じてドットが変化し、ドット径の真円度が0.7以上である
△:光渦レーザーの径に応じてドットが変化しているが、ドット径の真円度が0.7未満である。
×:ドットが飛散し、ドット径及び真円度を測定できない
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
(実施例3)
<基材、光吸収材及び被付着物>
基材としてのスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、マイクロスライドガラスS7213;532nm波長光の透過率が99%)上に、光吸収材として、銀ナノインク(株式会社ダイセル製、Picosil(登録商標)DNS351S)を表面に塗布して、平均厚み10μmとした膜を形成した。このとき、膜状の光吸収材における532nm波長光の透過率が0.01%以下(吸光度が4以上)であった。また、銀ナノインクの粘度は、スペックシートより12Pa・sであった。なお、銀ナノインクは200℃程度で加熱することで、導電性が発現する。
【0150】
次に、同様に、光吸収材を塗布した基材の表面を被付着物と対向させ、光吸収材の裏面から光渦レーザビームを垂直に照射できるように基材を設置した。
被付着物としては、上記と同様のスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、マイクロスライドガラスS7213)を用い、被付着物と光吸収材との間隙(ギャップ)を1.0mmとした。
【0151】
<光吸収材飛翔手段>
前記光吸収材飛翔手段の構成は実施例1と同様である。
変換させた光渦レーザビームを、エネルギー調整フィルタ(シグマ光機株式会社製、NDフィルタ)に通過させることにより、光吸収材に照射させたときのレーザー出力を調整できるようにした。光渦レーザビームは、集光レンズ(Thorlabs製、YAGレーザー集光レンズ)に照射して、光吸収材に照射させたときのビーム径をΦ40μmとなるようにした。
なお、軌道角運動量量子数を1としたときの銀ナノインクのドット列の写真を図13に示す。前記ドット列は、ホットプレートを用いて200℃で10分程度加熱した後のドット列である。
【0152】
実施例3では、図13に示すようにドット列をより密に形成することで、回路に必要な銀ナノインクのワイヤーの形成を実施した。さらに軌道角運動量量子数を1又は2に変化させて形成した銀ナノインクのワイヤーを図14Aから図14Bに示す。ワイヤーはドット列と同様、ホットプレートで用い200℃で10分程度の加熱した後のドット列である。これらのワイヤーの体積抵抗率を4端子法で計測すると、5~10μΩcmであったため、充分に配線として使用できる。
【0153】
(比較例2)
実施例2において、レーザー光源を光渦に変換せず、ガウシアンビームとした以外は、実施例2と同様にして、銀ナノインクのワイヤーの形成を行った。結果を図15に示す。
【0154】
実施例3及び比較例2において、「付着状態」を評価した。結果を表3に示す。
【0155】
<付着状態の評価>
実施例3及び比較例2において、銀ナノインクのワイヤーの状態(導通又は断線)を目視で観察し、さらに表面粗さRaを、レーザー顕微鏡(VK-X1000、株式会社キーエンス製)を用いて顕微鏡の視野の750μmの範囲において場所を変えて5回測定し、下記評価基準に基づき、付着状態を評価した。
計測方向は電流を流す長手方向とし、銀ナノインクワイヤーは5mm以上の長さで作成し、導通は5mmの長さで計測した。
前記表面粗さRaの基準値としては、表皮厚みで決定した。表皮厚みとは、配線に交流電流を流す際、周波数が高周波になると、導線表面にしか電流が流れなくなり、電気抵抗が上がって電流が流れにくくなる現象である。表皮厚みδよりも表面粗さRaが小さい場合、電流の損失(導体損失)が小さくなることが知られている。下記式(3)として表皮厚みδの算出式を示す。
【化3】
上記式(3)において、ωは電流の角周波数、μは透磁率、σは電気伝導度を表す。25℃における銀の物性値と5G通信を想定した28GHzを用いると、δ=0.39μmとなり、この値を表面粗さRaの基準とした。
〔評価基準〕
○:表面粗さRaが0.39μm以下、かつ導通している
△:表面粗さRaが0.39μm超、かつ導通している
×:断線している
【0156】
【表3】
【0157】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせ、
前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整することを特徴とする光渦レーザーを用いた飛翔体発生方法である。
<2> 前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を、空間光変調器及び螺旋位相板により変化させる、前記<1>に記載の飛翔体発生方法である。
<3> 前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を、空間光変調器により変化させる、前記<2>に記載の飛翔体発生方法である。
<4> 光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせ、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整し、
前記液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させることを特徴とする光渦レーザーを用いた飛翔体転写方法である。
<5> 光渦のエネルギーを変更することで前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴の移送速度を変化させ、前記液柱乃至液滴をレシーバー基板に転写する、前記<4>に記載の飛翔体転写方法である。
<6> 光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に光渦レーザビームを照射することにより、前記光渦レーザビームの照射方向にかつ前記光渦レーザビームの照射径よりも小さな径の液柱乃至液滴を前記光吸収材から生じさせ、前記光渦レーザビームの軌道角運動量量子数を変化させて前記液柱乃至液滴の量を調整する光吸収材飛翔手段と、
前記液柱乃至液滴を被転写媒体に接触させ、転写させる転写手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0158】
前記<1>から<3>のいずれかに記載の飛翔体発生方法、前記<4>から<5>のいずれかに記載の飛翔体転写方法、及び前記<6>に記載の画像形成装置によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0159】
1 光吸収材飛翔手段
2 レーザー光源
3、7 ビーム径変更部材
4 ビーム波長変更部材
5 螺旋位相板(光渦変換部)
6 1/4波長板(偏光変換部)
11 レーザビーム
12 光渦レーザビーム
20 光吸収材
21 着色剤
22 立体造形剤
30 被付着物
31 被記録媒体
40 基材
100 光吸収体飛翔ユニット
110 着色剤飛翔ユニット
120 立体造形剤飛翔ユニット
124 立体造形物
130 立体造形ヘッドユニット
300~307 画像形成装置
400、401 画像形成装置
500 立体造形物の製造装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0160】
【特許文献1】WO2016/136722号公報
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15