(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033723
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】成膜方法および成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230306BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230306BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20230306BHJP
C23C 16/511 20060101ALI20230306BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/511
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139585
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】和田 真
(72)【発明者】
【氏名】藤野 豊
(72)【発明者】
【氏名】生田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 博一
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA29
4K030BA40
4K030BA41
4K030BA44
4K030DA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030JA10
4K030KA23
4K030KA41
4K030KA46
5F045AA08
5F045AB32
5F045AB33
5F045AB34
5F045AC01
5F045AC11
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5F045AD09
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5F045EB06
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5F045EK07
5F045EM05
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5F045HA13
5F058BA05
5F058BC02
5F058BC08
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5F058BF07
5F058BF23
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BG01
5F058BG02
5F058BH16
(57)【要約】
【課題】成膜処理後のフッ素含有ガスによる処理容器内のクリーニングの際に、クリーニングガスであるフッ素含有ガスとアルミニウムを含有する載置台との反応により生成するアルミニウムフッ化物の成膜に対する影響を抑制する。
【解決手段】成膜方法は、載置台上で基板を加熱しつつ処理容器内に成膜用のガスを供給して、1枚の基板に対して、または複数の基板に対して連続的に膜を形成する工程と、処理容器から基板を搬出した状態で、載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、フッ素含有ガスにより処理容器内をクリーニングする工程と、載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、クリーニングする工程に連続して、少なくとも前記載置台の表面にプリコート膜が形成されるようにプリコートを行う工程とを繰り返し行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、前記処理容器内で基板を載置するアルミニウムを含有する載置台とを有する成膜装置により基板に膜を形成する成膜方法であって、
前記載置台上で基板を加熱しつつ前記処理容器内に成膜用のガスを供給して、1枚の基板に対して、または複数の基板に対して連続的に膜を形成する工程と、
前記処理容器から前記基板を搬出した状態で、前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、フッ素含有ガスにより前記処理容器内をクリーニングする工程と、
前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、前記クリーニングする工程に連続して、少なくとも前記載置台の表面にプリコート膜が形成されるようにプリコートを行う工程と、
を繰り返し行う、成膜方法。
【請求項2】
前記膜を形成する工程は、前記載置台の温度を500℃以上にして実施される、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記膜を形成する工程は、Si含有膜を形成する、請求項1または請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記Si含有膜はSiN膜である、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記膜を形成する工程は、前記成膜用ガスのプラズマを生成して行われる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記プラズマはマイクロ波プラズマである、請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記クリーニングする工程は、フッ素含有ガスとしてプラズマにより励起されたNF3ガスを用いる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記プリコートを行う工程において形成される前記プリコート膜は、前記基板に形成される膜と同じ材料であるか、または前記膜の成分を含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
処理容器と、処理容器内で基板が載置されるアルミニウムを含有する載置台とを有する成膜装置により基板に膜を形成する成膜方法であって、
前記載置台に基板を載置し、前記基板を500℃以上に加熱しつつ前記処理容器内にSi含有ガスと窒素含有ガスを供給するとともに、これらガスのプラズマを生成して、1枚の基板に対して、または複数の基板に対して連続的に基板上にSiN膜を形成する工程と、
前記処理容器から前記基板を搬出した状態で、前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、フッ素含有ガスとしてのプラズマにより励起されたNF3ガスにより前記処理容器内をクリーニングする工程と、
前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、前記クリーニングする工程に連続して、少なくとも前記載置台の表面にプリコート膜が形成されるようにプリコートを行う工程と、
を繰り返し行う、成膜方法。
【請求項10】
前記膜を形成する工程のプラズマは、マイクロ波プラズマである、請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記プリコートを行う工程において形成される前記プリコート膜は、前記基板に形成される前記SiN膜または他のSi系の膜である、請求項9または請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記クリーニングする工程および前記プリコートを行う工程の際の前記載置台の温度は同じ温度である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記クリーニングする工程および前記プリコートを行う工程の際の前記載置台の温度は、前記膜を形成する工程の際の温度以下である、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記クリーニングする工程および前記プリコートを行う工程の際の前記載置台の温度は450℃以下である、請求項13に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記プリコートを行う工程に引き続いて前記膜を形成する工程を行う際に、前記載置台が昇温され、その際に前記処理容器に不活性ガスを導入して前記管理圧力を上昇させる、請求項13または請求項14に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記プリコートを行う工程の後、前記基板に形成する膜の成膜条件に適合した条件で第2のプリコートを行う工程をさらに含む、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記第2のプリコートを行う工程は、前記膜を形成する工程の際の温度と同じ温度で実施される、請求項16に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記載置台は窒化アルミニウム製である、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項19】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、基板を載置するアルミニウムを含有する載置台と、
前記載置台を加熱する加熱機構と、
前記処理容器内にガスを供給するガス供給機構と、
制御部と、
を有する成膜装置であって、
前記制御部は、
前記載置台上で基板を加熱しつつ前記処理容器内に成膜用のガスを供給して、1枚の基板に対して、または複数の基板に対して連続的に膜を形成する工程と、
前記処理容器から前記基板を搬出した状態で、前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、フッ素含有ガスにより前記処理容器内をクリーニングする工程と、
前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、前記クリーニングする工程に連続して、少なくとも前記載置台表面にプリコート膜が形成されるようにプリコートを行う工程と、
が繰り返し行われるように制御する、成膜装置。
【請求項20】
前記成膜用のガスのプラズマを生成するプラズマ源をさらに有する、請求項19に記載の成膜装置。
【請求項21】
前記プラズマ源はマイクロ波プラズマを生成する、請求項20に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイクロ波プラズマ処理装置において、処理容器内で成膜処理等を行った後に、プラズマにより励起されたNF3ガスを用いて処理容器内をクリーニングすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、成膜処理後のフッ素含有ガスによる処理容器内のクリーニングの際に、クリーニングガスであるフッ素含有ガスとアルミニウムを含有する載置台との反応により生成するアルミニウムフッ化物の成膜に対する影響を抑制できる成膜方法および成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る成膜方法は、処理容器と、前記処理容器内で基板を載置するアルミニウムを含有する載置台とを有する成膜装置により基板に膜を形成する成膜方法であって、前記載置台上で基板を加熱しつつ前記処理容器内に成膜用のガスを供給して、1枚の基板に対して、または複数の基板に対して連続的に膜を形成する工程と、前記処理容器から前記基板を搬出した状態で、前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、フッ素含有ガスにより前記処理容器内をクリーニングする工程と、前記載置台の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が前記処理容器内の管理圧力よりも低くなる温度にして、前記クリーニングする工程に連続して、少なくとも前記載置台の表面にプリコート膜が形成されるようにプリコートを行う工程と、を繰り返し行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、成膜処理後のフッ素含有ガスによる処理容器内のクリーニングの際に、クリーニングガスであるフッ素含有ガスとアルミニウムを含有する載置台との反応により生成するアルミニウムフッ化物の成膜に対する影響を抑制できる成膜方法および成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1の成膜装置のA-A断面を示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図4】成膜工程の後の処理容器内の状態を説明するための模式図である。
【
図5】クリーニングの際のAlF
xの発生、および発生したAlF
xが昇華した際の影響を説明するための図である。
【
図6】AlF
3の理論的な蒸気圧曲線と一般的な処理容器の管理圧力の関係を示す図である。
【
図7】プリコート工程により載置台表面のAlF
xを遮蔽した状態を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る成膜方法における載置台の温度変化を説明するための図である。
【
図9】載置台から昇華するAlF
3量を測定する方法を説明するための模式図である。
【
図10】他の実施形態に係る成膜方法におけるAlF
3の理論的な蒸気圧曲線と処理容器の管理圧力の関係を示す図である。
【
図11】他の実施形態に係る成膜方法において、成膜工程への昇温時、成膜の際の搬送時、成膜工程からの降温時も加圧運用を行う場合を説明するための図である。
【
図12】さらに他の実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図13】さらに他の実施形態に係る成膜方法において第2のプリコート工程を行った後の、第1のプリコート膜および第2のプリコート膜が形成された状態を示す図である。
【
図14】第1のプリコート膜と第2のプリコート膜との間に中間プリコート膜を形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施の形態について具体的に説明する。
【0009】
<成膜装置>
図1は一実施形態に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す断面図、
図2は
図1の成膜装置のA-A断面を示す断面図である。
【0010】
成膜装置100は、マイクロ波プラズマによりプラズマ処理を行うプラズマ処理装置として構成される。
【0011】
成膜装置100は、基板Wを収容する処理容器(チャンバ)1を有する。成膜装置100は、処理容器1内に放射されたマイクロ波によって処理容器1内の天壁部の内壁面近傍に形成される表面波プラズマにより、基板Wに対して成膜処理を行う。成膜処理により形成される膜は特に限定されないが、例えば窒化珪素膜(SiN膜)のようなSi含有膜が例示される。なお、基板Wとしては半導体ウエハが例示されるが、半導体ウエハに限らず、FPD基板やセラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【0012】
成膜装置100は、処理容器1の他に、プラズマ源2と、ガス供給機構3と、制御部4とを有する。
【0013】
処理容器1は、上部が開口された略円筒状の容器本体10と、容器本体10の上部開口を閉塞する天壁部20とを有しており、内部にプラズマ処理空間が形成される。容器本体10はアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなり、接地されている。天壁部20は、アルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなり円盤状をなす。容器本体10と天壁部20との接触面にはシールリング129が介装され、これにより、処理容器1の内部が気密にシールされている。
【0014】
処理容器1内には基板Wを載置する載置台11が水平に設けられ、処理容器1の底部中央に立設された筒状の支持部材12により支持されている。載置台11は、アルミニウム(Al)を含有する物質、例えば絶縁性セラミックである窒化アルミニウム(AlN)で構成されている。また、載置台11を構成する材料は、同じくAlを含有する絶縁性セラミックスであるアルミナ(Al2O3)であってもよい。支持部材12は金属であってもセラミックスであってもよい。支持部材12が金属の場合は、支持部材12と処理容器1の底部との間に絶縁部材12aが介装される。載置台11内には、ヒータ13が設けられており、ヒータ13にはヒータ電源14が接続されている。ヒータ電源14からヒータ13に給電されることにより、載置台11が例えば700℃までの任意の温度に加熱される。載置台11には基板Wを昇降するための3本の昇降ピン(図示せず)が設けられており、昇降ピンを載置台11の表面から突出させた状態で基板Wの受け渡しが行われるようになっている。なお、載置台11には基板Wを静電吸着するための静電チャックや、基板Wの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路等が設けられてもよい。また、載置台11に電極を設け、その電極にプラズマ中のイオンを引き込むための高周波バイアスを印加するようにしてもよい。
【0015】
処理容器1の底部には排気管15が接続されており、排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。排気装置16を作動させると処理容器1内が排気され、これにより、処理容器1内が所定の真空度まで高速に減圧される。処理容器1の側壁には、基板Wの搬入出を行うための搬入出口17と、搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0016】
プラズマ源2は、マイクロ波を生成し、生成したマイクロ波を処理容器1内に放射してプラズマを生成するためのものであり、マイクロ波出力部30と、マイクロ波伝送部40と、マイクロ波放射機構50とを有する。
【0017】
マイクロ波出力部30は、マイクロ波電源と、マイクロ波を発振させるマイクロ波発振器と、発振されたマイクロ波を増幅するアンプと、増幅されたマイクロ波を複数に分配する分配器とを有する。そして、マイクロ波を複数に分配して出力する。
【0018】
マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波は、マイクロ波伝送部40とマイクロ波放射機構50とを通って処理容器1の内部に放射される。また、処理容器1内には後述するようにガスが供給され、供給されたガスは、導入されたマイクロ波により励起され、表面波プラズマを形成する。
【0019】
マイクロ波伝送部40は、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送する。マイクロ波伝送部40は、複数のアンプ部42と、天壁部20の中央に配置された中央マイクロ波導入部43aと、天壁部20の周縁部に等間隔に配置された6つの周縁マイクロ波導入部43bとを有する。複数のアンプ部42は、マイクロ波出力部30の分配器にて分配されたマイクロ波を増幅するものであり、中央マイクロ波導入部43aおよび6つの周縁マイクロ波導入部43bのそれぞれに対応して設けられる。中央マイクロ波導入部43aおよび6つの周縁マイクロ波導入部43bは、それぞれに対応して設けられたアンプ部42から出力されたマイクロ波をマイクロ波放射機構50に導入する機能およびインピーダンスを整合する機能を有する。
【0020】
中央マイクロ波導入部43aおよび周縁マイクロ波導入部43bは、筒状の外側導体52およびその中心に設けられた棒状の内側導体53を同軸状に配置して構成される。外側導体52と内側導体53の間は、マイクロ波電力が給電され、マイクロ波放射機構50に向かってマイクロ波が伝播するマイクロ波伝送路44となっている。
【0021】
中央マイクロ波導入部43aおよび周縁マイクロ波導入部43bには、一対のスラグ54と、その先端部に位置するインピーダンス調整部材140とが設けられている。スラグ54を移動させることにより、処理容器1内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部30におけるマイクロ波電源の特性インピーダンスに整合させる。インピーダンス調整部材140は、誘電体で形成され、その比誘電率によりマイクロ波伝送路44のインピーダンスを調整するようになっている。
【0022】
マイクロ波放射機構50は、遅波材121および131、スロット122および132を有するスロットアンテナ124および134、ならびに、誘電体部材123および133を備える。遅波材121および131は、それぞれ天壁部20の上面の中央マイクロ波導入部43aに対応する位置、および天壁部20の上面の周縁マイクロ波導入部43bに対応する位置に設けられている。また、誘電体部材123および133は、それぞれ天壁部20の内部の中央マイクロ波導入部43aに対応する位置、および周縁マイクロ波導入部43bに設けられている。スロット122および132は、それぞれ天壁部20の遅波材121と誘電体部材123との間の部分、天壁部20の遅波材131と誘電体部材133との間の部分に設けられ、それらのスロットが形成された部分がスロットアンテナ124および134となる。
【0023】
遅波材121および131は、円板状をなし、内側導体53の先端部分を囲むように配置され、真空よりも大きい誘電率を有しており、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により構成されている。遅波材121および131は、マイクロ波の波長を真空中よりも短くしてアンテナを小さくする機能を有している。遅波材121および131は、その厚さによりマイクロ波の位相を調整することができ、スロットアンテナ124および134が定在波の「はら」になるようにその厚さを調整し、反射が最小で、スロットアンテナ124および134の放射エネルギーが最大となるようにする。
【0024】
誘電体部材123および133は、遅波材121および131と同様、例えば、石英、アルミナ(Al2O3)等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により形成されている。誘電体部材123および133は、天壁部20の内部に形成された空間に嵌め込まれており、天壁部20の下面の誘電体部材123および133に対応する部分には凹状をなす窓部21が形成されている。したがって、誘電体部材123および133は、処理容器1内に露出しており、マイクロ波をプラズマ生成空間Uに供給する誘電体窓として機能する。
【0025】
なお、周縁マイクロ波導入部43bおよび誘電体部材133の個数は6つに限らず、2つ以上であってよいが、3つ以上が好ましい。
【0026】
ガス供給機構3は、後述するように、成膜処理のためのガス、クリーニングのためのガス、クリーニング後のプラズマ処理のためのガスを処理容器1内に供給する。ガス供給機構3は、ガス供給部61と、ガス供給部61からガスを供給するガス供給配管62と、天壁部20に設けられたガス流路63と、ガス流路63からのガスを吐出するガス吐出口64とを有する。ガス吐出口64は、天壁部20の窓部21の誘電体部材123および133の周囲に複数設けられている(
図2参照)。
なお、ガス供給機構3は、本例のように天壁部20からガスを吐出するものに限るものではない。
【0027】
制御部4は、成膜装置100の各構成部の動作や処理、例えば、ガス供給機構3のガス供給、プラズマ源2のマイクロ波の周波数や出力、排気装置16による排気等の制御を行う。制御部4は、典型的にはコンピュータであり、主制御部と、入力装置と、出力装置と、表示装置と、記憶装置とを備えている。主制御部は、CPU(中央処理装置)、RAMおよびROMを有している。記憶装置は、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を有しており、制御に必要な情報の記録および読み取りを行うようになっている。制御部4では、CPUが、RAMを作業領域として用いて、ROMまたは記憶装置の記憶媒体に格納された処理レシピ等のプログラムを実行することにより、成膜装置100を制御する。
【0028】
<成膜方法>
次に、以上のように構成される成膜装置100における成膜方法について説明する。
図3は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【0029】
図3に示すように、本実施形態では、ステップST1、ステップST2、ステップST3を繰り返し実施する。ステップST1では、Alを含有する載置台11上で基板Wを加熱しつつ処理容器1内に成膜用のガスを供給して、1枚の基板Wに対して、または複数の基板Wに対して連続的に膜を形成する。ステップST2では、処理容器1から基板Wを搬出した状態で、載置台11の温度を、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が処理容器1内の管理圧力よりも低くなる温度にして、フッ素含有ガスにより処理容器1内をクリーニングする。ステップST3では、載置台11の温度を、ステップST2と同様、アルミニウムフッ化物の蒸気圧が処理容器1内の管理圧力よりも低くなる温度にして、クリーニング工程に連続して、少なくとも載置台表面にプリコート膜が形成されるようにプリコートを行う。
【0030】
ステップST1の成膜工程は、処理容器1内に後述するステップST3のプリコート処理が施された状態で、1枚の基板Wに対して、または複数枚の基板Wに対して連続的に膜形成が行われる。複数枚の基板Wとしては100枚程度までが例示される。形成される膜は特に限定されないが、シリコン(Si)含有膜、例えばSiN膜が好適な例として例示される。SiCN膜、SiO2膜、SiON膜等の他のSi含有膜であってもよい。
【0031】
SiN膜を形成する場合には、成膜用のガスとして、Si含有ガスと窒素含有ガスを用いることができる。Si含有ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、トリメチルシラン(SiH(CH3)3)ガスのようなシラン系化合物ガスを用いることができる。また窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、窒素(N2)ガス等を用いることができる。SiCN膜の場合には、成膜用のガスとして、上記のようなSi含有ガスおよび窒素含有ガスに、炭素含有ガスを添加したものを用いることができる。炭素含有ガスとしては、エチレン(C2H4)ガス、アセチレン(C2H2)ガス、エタン(C2H6)ガス、プロピレン(C3H6)ガス、トリメチルシラン((CH3)3SiH)ガスのような炭化水素系ガスを用いることができる。SiO2膜の場合は、Si含有ガスと酸素含有ガスを用いることができる。Si含有ガスとしては上記のようなシラン系化合物ガスを用いることができる。また、酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス等を用いることができる。SiON膜の場合は、成膜用のガスとして、上記のようなSi含有ガスと酸素含有ガスに、上記のような窒素含有ガスを添加したものを用いることができる。いずれの場合も、他のガスとして、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスを希釈ガスまたはプラズマ生成ガスとして用いてもよい。
【0032】
形成される膜はとしては、Si含有膜に限定されず、例えば、Ti膜、TiN膜のようなTi系膜や、カーボン膜であってもよい。
【0033】
ステップST1の成膜工程においては、まず、ゲートバルブ18を開け、搬送アーム(図示せず)上に保持された基板Wを搬入出口17から処理容器1内に搬入し、載置台11上に載置し、ゲートバルブ18を閉じる。このとき、載置台11はヒータ13により加熱され、載置台11上の基板Wの温度が制御される。上述したSiN膜の成膜の際には、基板Wの温度は500℃以上であることが好ましい。より好ましくは500~650℃である。そして、成膜する膜に応じて上述したガスを処理容器1に導入し、処理容器1内の圧力を制御し、プラズマCVDにより成膜処理を行う。処理容器1内の圧力は、プラズマ源から基板Wまでの距離、プラズマの広がり方、また、成膜速度や成膜する膜厚等に応じて任意に選択することができる。成膜する膜がSiN膜の場合には、266Pa以下の圧力を用いることができる。
【0034】
プラズマの生成にあたっては、処理容器1内にガスを導入しつつプラズマ源2のマイクロ波出力部30からマイクロ波を出力する。このとき、マイクロ波出力部30から分配されて出力されたマイクロ波は、マイクロ波伝送部40のアンプ部42で増幅された後、中央マイクロ波導入部43aおよび周縁マイクロ波導入部43bを伝送される。そして、伝送されたマイクロ波は、マイクロ波放射機構50の遅波材121および131、スロットアンテナ124および134のスロット122および132、ならびにマイクロ波透過窓である誘電体部材123および133を透過して処理容器1内に放射される。この際に、スラグ54を移動させることによりインピーダンスが自動整合され、電力反射が実質的にない状態で、マイクロ波が供給される。放射されたマイクロ波は天壁部20の表面を表面波となって伝播する。このマイクロ波の電界により処理容器1内に導入されたガスが励起されて、処理容器1内の天壁部20直下のプラズマ生成空間Uに表面波プラズマが形成される。この表面波プラズマによるプラズマCVDにより基板W上に例えばSiN膜が成膜される。
【0035】
本実施形態の成膜装置100では、基板Wは、プラズマ生成領域とは離れた領域に配置されており、基板Wへは、プラズマ生成領域から拡散したプラズマが供給されるため、本質的に低電子温度で高密度のプラズマとなる。プラズマの電子温度が低くコントロールされるため、形成される膜や基板Wの素子に対してダメージを与えることなく成膜を行うことができ、高密度のプラズマにより高品質の膜を得ることができる。また、成膜温度が高いほど膜質が向上することから、成膜する膜がSiN膜の場合、上述のように成膜温度を500℃以上と高温にすることにより、さらに高品質の膜を形成することができる。
【0036】
以上のようにしてSiN膜等の膜を成膜後、基板である基板Wを処理容器1から搬出し、ステップST1の成膜工程を完了させる。
【0037】
以上のようなステップST1の成膜工程の後、ステップST2のクリーニング工程を実施する。ステップST1の成膜工程の後の処理容器1内には、
図4に示すように、プリコート膜202と基板Wに形成された膜200と同様の成分の堆積物201が堆積されている。これらが堆積した状態で次の成膜を行うとパーティクル等の原因となるため、これらをクリーニング除去するクリーニング工程を実施する。
【0038】
ステップST2のクリーニング工程は、フッ素含有ガスにより行われる。フッ素含有ガスとして例えばプラズマにより励起されたNF3ガスのラジカルやイオンを用いることができる。この際のプラズマは、成膜装置100のプラズマ源2を用いて生成してもよいし、別のプラズマ源、例えばリモートプラズマを用いて生成してもよい。NF3ガスはガス供給機構3から処理容器1内に供給される。NF3ガスはArガスやHeガスで希釈されてもよい。また、クリーニング速度の調整のため、塩素(Cl2)ガス、O2ガス、N2ガス、臭化水素(HBr)ガス、四フッ化炭素(CF4)ガス等が添加されてもよい。プラズマにより励起されたNF3ガスは、例えば、基板W上に形成する膜がSiN膜のようなSi含有膜である場合に好適に用いることができる。
【0039】
クリーニングに用いるフッ素含有ガスとしては、F2ガス、CF系ガス、ClF3ガス等、NF3ガス以外のガスを用いることもできる。他のフッ素含有ガスは、プラズマにより励起されなくてもよく、ArガスやHeガスで希釈されてもよい。また、フッ素含有ガスに、他の添加ガスを添加してもよい。これらのフッ素含有ガスは、処理容器1内に付着・堆積される膜の材質に応じて選択することができる。
【0040】
ところで、クリーニング工程において、載置台11が高温であると、クリーニングガスとして用いるフッ素含有ガスと、載置台11を構成するAlNのようなAl含有物質とが反応する。これにより、
図5(a)に示すように、載置台11の表面に、意図せずに、三フッ化アルミニウム(AlF
3)に代表されるアルミニウムフッ化物(AlF
x)が生成されてしまう。例えば、プラズマにより励起されたNF
3ガスを用いる場合は、非常に反応性が高いため、150℃以上でAlF
xが生成される。高温ほどフッ化反応が進みやすく、AlF
xの生成量も多くなる。処理容器1内は高真空に維持されているため、載置台11の表面に生成されたAlF
xは昇華されやすい。
【0041】
図6は代表的なアルミニウムフッ化物であるAlF
3の理論的な蒸気圧曲線であるが、蒸気圧は温度に対して相関関係を有し、AlF
3は蒸気圧曲線よりも上の圧力で固体となり、蒸気圧曲線の下の圧力で気体となる。
図6に示すように、例えば600℃ではAlF
3の蒸気圧は2.4×10
-3Paとなり、これはプラズマCVDの処理容器1内の到達真空度付近に設定される管理圧力よりも高いため、AlF
3は容易に昇華してしまう。昇華されたAlF
xは載置台11の表面から拡散して、
図5(b)に示すように、温度の低い処理容器1の内壁、例えば天壁部20の表面に付着・堆積する。処理容器1の内壁にAlF
xが付着・堆積すると、プラズマ状態が変化する等により、成膜時に安定した均一な成膜が行われ難くなり、形成される膜の膜厚シフトが生じる。また、処理容器1の内壁にAlF
xが付着・堆積した状態で、成膜処理が行われると、
図5(c)に示すように、AlF
xが解離して、成膜中の膜300にコンタミ301として混入されてしまい、膜300の特性を劣化させることや、欠陥となる問題が発生する。さらに、AlF
xがパーティクル302となり、膜中および膜表面へ落下し、悪影響を及ぼす。
【0042】
そこで、本実施形態では、ステップST2のクリーニング工程において、載置台11を低温化し、アルミニウムフッ化物(AlF
x)の昇華を抑制する。より詳細には、載置台11の温度を、AlF
xの蒸気圧が処理容器1の到達真空度付近の管理圧力よりも低くなる温度に制御する。例えば、AlF
3の場合は、処理容器1内の到達真空度付近の管理圧力が
図6のAlF
3の蒸気圧曲線よりも高くなるような温度に載置台11の温度を制御する。本実施形態のようなプラズマCVDによる成膜処理の場合、到達真空度は
図6の斜線で示す1×10
-3~1×10
-4Pa程度であり、
図6からこの範囲の圧力であれば、載置台11の温度を500℃以下にすることによりAlF
3の昇華を抑制することができることが導かれる。この際の載置台11の温度は、ステップST1の成膜工程の際の載置台11の温度よりも低いことが好ましい。また、AlF
xの昇華を効果的に抑制するためには、AlF
xの蒸気圧が処理容器1の到達真空度に対してより低い側に存在することが有利であり、その点を考慮すると、載置台11の温度を450℃以下にすることがより好ましい。
【0043】
なお、クリーニング温度を下げることは、載置台11のAlNとクリーニングガスであるフッ素含有ガス(NF3ガス)とのフッ化物反応の反応温度を低減させる有効性もあり、発生するアルミニウムフッ化物(AlFx)の量自体も低減できる効果がある。
【0044】
ステップST2のクリーニング工程において、クリーニングガスを供給して実際にクリーニングを行う際の処理容器1内の圧力は、処理容器1の容積や、プラズマを用いる場合にはクリーニングで用いるプラズマの広がり方に応じて、基本的には任意に設定することができる。圧力としては10~1000Paの範囲、具体的には400Paが例示される。
【0045】
ステップST3のプリコートする工程は、ステップST2のクリーニング工程の後、次の成膜工程に先立って行われる。プリコート工程では、処理容器1内に基板Wが存在しない状態で、成膜工程で基板W上に形成される膜またはその膜の成分を含むプリコート膜を処理容器1の内部の少なくとも載置台11の表面に堆積させる。このとき、プリコート膜は、処理容器1の側壁や天壁部20の表面にも堆積される。プリコート膜としては、基板Wに成膜しようとする膜と同じ材料または成膜しようとする膜の成分を含む材料を用いることができる。例えば成膜しようとする膜がSiN膜の場合、同じSiN膜であってもよいし、SiCN膜や、SiON膜、SiOC膜等、他のSi系の膜であってもよい。
【0046】
ステップST3のプリコート工程は、ステップST2のクリーニング工程と同様、載置台11の温度を、アルミニウムフッ化物(AlF
x)の蒸気圧が処理容器1内の管理圧力よりも低くなる温度に制御して、クリーニング工程と連続して行う。また、ステップST3のプリコート工程の際の載置台11の温度は、クリーニング工程の場合と同様、ステップST1の成膜工程の際の載置台11の温度よりも低いことが好ましく、450℃以下にすることがより好ましい。さらに、ステップST3のプリコート工程の際の載置台11の温度は、ステップST2のクリーニング工程の際の載置台の温度と同じ温度であることが一層好ましい。このように載置台11を低温化してプリコートを行うことにより、プリコート工程中のAlF
xの昇華自体を抑制することができる。また、クリーニング工程に連続してプリコート工程を行うことにより、
図7に示すように、載置台11表面のAlF
xが残存していたとしてもプリコート膜401で遮蔽することができる。このように、プリコート膜401により載置台11表面のAlF
xが遮蔽されるので、以降の成膜工程への昇温過程および高温での成膜工程において、載置台11表面のAlF
xの昇華を抑制することができる。また、載置台11の表面にプリコート膜が被覆されることにより、半導体製造工程で問題となる基板W搬送時の裏面へのメタルコンタミの付着を防止することもできる。
【0047】
なお、ここでクリーニング工程に「連続して」プリコート工程を行うとは、クリーニング工程の後、他の工程を経ることなく速やかにプリコート工程を行うことを意味する。また、プリコート工程には、プリコート膜401を成膜する前に行われるプラズマ処理等の前処理が含まれてもよい。
【0048】
プリコート工程の際の処理容器1内の圧力は、載置台11の表面にプリコート膜が優先的に形成されるように、例えば100Pa以下の低圧で行うことが望ましい。
【0049】
以上のように、本実施形態では、
図8に示すように、ステップST2のクリーニング工程およびステップST3のプリコート工程を低温、例えば450℃で連続的に行い、次いで、載置台11を例えば600℃程度の高温に昇温して次のステップST1の成膜工程を行う。そして、成膜工程の後、載置台11を低温、例えば450℃に降温して次のクリーニング工程を行う。載置台11を昇降温する際には、載置台11の表面のAlF
xを遮蔽するようにプリコート膜が形成されているため、プリコート膜が剥離しないように昇降温を管理することが好ましい。
【0050】
次に、本実施形態の効果を確認した実験について説明する。
ここでは、以下のサンプルA~Cについて、以下に示す測定方法により、Alコンタミネーション量を測定した。サンプルAは高温(600℃)でクリーニングした後に同じ高温で成膜を行ったサンプル、サンプルBは低温(450℃)でクリーニングした後に高温で成膜を行ったサンプル、サンプルCは低温でのクリーニングおよびプリコートを連続して行った後に高温で成膜を行った本実施形態のサンプルである。測定方法は、
図9に示すように、載置台11の上面から突出させた昇降ピン501の上にサンプル基板502を載せ、載置台11から昇華してサンプル基板502の裏面に吸着するAlF
xをAlコンタミネーションとして、蛍光X線分析(XRF)により測定した。その結果、従来方法のサンプルAではAlコンタミネーション量が5.0×10
15(atoms/cm
2)以上の高い値となり、処理容器1内へのAlF
xの昇華量が多い結果となった。これに対してクリーニングのみを低温化したサンプルBの場合は、Alコンタミネーション量は3.1×10
15(atoms/cm
2)と僅かな減少にとどまり、AlF
xの昇華抑制効果は十分でないことが確認された。これに対し、本実施形態の方法を用いたサンプルCでは、Alコンタミネーション量は蛍光X線装置の測定下限の1.0×10
12(atoms/cm
2)以下であり、AlF
xの昇華が確実に抑制されていることが確認された。
【0051】
次に、他の実施形態について説明する。
処理容器1内の圧力は、一般的に、ガスフローがない状態で、処理容器1内のリークや残ガス管理のため、到達真空度付近の低い圧力に管理される。処理の際には、そのうえで、ガスフローと排気系の排気量の調整により圧力制御を行う。このような圧力管理の場合、例えば、低温のプリコート工程から高温の成膜工程に向けて載置台11を昇温する際に、到達真空度付近の低い圧力よりもAlF
xの蒸気圧のほうが高くなってAlF
xの昇華が生じ得る。このため、本実施形態では、載置台11の温度をプリコート工程の際の温度から成膜工程の際の温度に上昇させる際に、不活性ガス(ArガスまたはN
2ガス)をフローして、
図10に示すように処理容器1の管理圧力を上昇させる(加圧圧力管理)。これにより、処理容器1の管理圧力をAlF
xの蒸気圧以上に加圧しながら昇温することができ、これによりプリコート膜の下層に存在するAlF
xの昇華を更に抑制することができる。すなわち、AlF
xをプリコート膜により遮蔽することに加えて、加圧圧力管理を行うことによりAlF
xの昇華をさらに抑制することが可能である。
【0052】
また、
図11に示すように、プリコート工程から成膜工程への昇温時のみならず、高温で行われる成膜工程の際の基板W搬送時や、高温の成膜工程から低温のクリーニング工程に降温する際も同様に加圧圧力管理にすることにより、AlF
xの昇華抑制効果をさらに高めることができる。
【0053】
このような加圧圧力管理の際の圧力としては、例えば266Paなどが用いられる。この際の圧力は、昇温中などにおけるAlFxの昇華を抑制するため、AlFxの蒸気圧に対して、より差分が取れることが望ましい。
【0054】
次に、さらに他の実施形態について説明する。
本実施形態では、
図12に示すように、上述したステップST3のプリコート工程の後、ステップST4として、基板Wに形成する膜の成膜条件に適合した条件の第2のプリコートを行う。
【0055】
ステップST3の低温でのプリコート工程は、AlFxの昇華を抑制しつつ載置台11上のAlFxを遮蔽するために行われ、プリコート膜は緻密で膜密度が高く遮蔽効果の高いプリコート条件が望ましい。例えば、SiN膜を成膜するためのプリコート膜としてSiN膜を形成する場合、高い膜密度を得るためにはRI値(屈折率)が高いほうが望ましい。ステップST3の低温でのプリコート工程は、このような特性のプリコート膜を形成するのに適している。
【0056】
ところで、基板Wに膜を形成する際には、半導体デバイス側の種々の要求により、膜に求められる特性が異なる。例えば、基板WにSiN膜を形成する場合、RI値が低いSiN膜を形成したい要求や、形成したSiN膜の応力値を制御したい要求がある。SiN膜の物性値はSiN膜の成膜条件によって決定されるが、プリコート膜の膜質も影響する。基板Wに所望の特性のSiN成膜を形成するためには、プリコート膜自体の条件も基板Wに形成するSiN膜に近い方が好ましい。
【0057】
そこで、本実施形態では、ステップST3の低温でのプリコート工程の後、ステップST4の基板Wに形成する膜の成膜条件に適合した条件で第2のプリコートを行う。これにより、
図13に示すように、ステップST3のプリコート工程により載置台11の表面に形成された第1のプリコート膜401の上にステップST4の第2のプリコート工程により第2のプリコート膜402が形成される。載置台11側の第1のプリコート膜401はAlF
xを遮蔽するため低温の高密度条件で成膜され、表面側の第2のプリコート膜402は基板Wに形成される膜の物性値を調整するために、その後の成膜工程の温度へ昇温後、基板Wへの膜形成の際の成膜条件と同一あるいは近い条件で形成される。このようにプリコートを多層化することで、AlF
xの昇華を抑制することと、基板Wに形成する膜の膜質を制御することの両立が可能となる。
【0058】
また、
図14に示すように、ステップST3のプリコート工程により形成される第1のプリコート膜401と、ステップST4の第2のプリコート工程により形成される第2のプリコート膜402との間に中間プリコート膜403を形成してもよい。中間プリコート膜403は、第1のプリコート膜401と第2のプリコート膜402の応力を調整し、これらのプリコート膜間の密着性向上などの目的で用いる。このような構造とすることにより、プリコート膜の膜剥がれを防止して、パーティクル等の低減につなげることができる。
【0059】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0060】
例えば、上記実施形態では、成膜処理を行う成膜装置として、複数のマイクロ波導入部から処理容器内にマイクロ波を放射して生成された表面波プラズマを用いて成膜するものを例示したが、これに限るものではない。マイクロ波導入部は1本であってもよいし、また、プラズマ処理は、マイクロ波を放射してプラズマを生成するものに限らず、例えば、容量結合型プラズマ(CCP)や、誘導結合型プラズマ(ICP)、磁気共鳴(ECR)プラズマ等、他の種々のプラズマを用いたものであってよい。さらに、成膜装置としては、プラズマを用いない熱CVD等であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、成膜する膜としてSiN膜のようなSi含有膜を主に例示したが、これに限らず、上述したように、Ti系膜やカーボン膜のような他の膜であってもよい。さらに、上記実施形態では、クリーニングガスとしてNF3ガスをプラズマにより励起した例を示したが、上述したように、F2ガス、CF系ガス、ClF3ガス等の他のフッ素含有ガスを用いることもできる。クリーニングガスは、成膜する膜に応じて適切なものを用いることができる。例えば、SiNのようなSi含有ガスの場合はプラズマにより励起されたNF3ガスを好適に用いることができ、Ti系膜ではF2ガスやClF3ガス、カーボン膜の場合はCF4ガス等のCF系ガスを好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1;処理容器
2;プラズマ源
3;ガス供給機構
4;制御部
11;載置台
20;天壁部
30;マイクロ波出力部
40;マイクロ波伝送部
50;マイクロ波放射機構
100;成膜装置
300;基板上の膜
401;プリコート膜(第1のプリコート膜)
402;第2のプリコート膜
403;中間プリコート膜
W;基板