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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033919
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】リハビリ装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A61H1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139884
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】512281722
【氏名又は名称】株式会社ピーアンドエーテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】303023061
【氏名又は名称】有限会社 ホロニック・システムズ
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】大関 一陽
(72)【発明者】
【氏名】武部 英輔
(72)【発明者】
【氏名】檜山 稔
(72)【発明者】
【氏名】三好 扶
(72)【発明者】
【氏名】出江 紳一
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA09
4C046AA42
4C046BB05
4C046CC04
4C046DD02
4C046DD07
4C046DD14
4C046DD22
4C046DD32
4C046EE02
4C046EE24
4C046EE32
4C046FF10
4C046FF22
4C046FF33
(57)【要約】
【課題】 左手が麻痺手で右手が健常手である場合、右手が麻痺手で左手が健常手である場合の麻痺の2態様に1台の装置で対応することができるようにして汎用性の向上を図る。
【解決手段】 右手Haに連係させられる右可動部Kaと、左手Hbに連係させられる左可動部Kbと、右可動部Kaを回動させる右モータMaと、左可動部Kbを回動させる左モータMbと、右モータMa及び左モータMbを制御するモータ制御手段を有した制御部とを備え、モータ制御手段は、右手Haの外力により右モータMaが回転させられ、または、左手Kbの外力により左モータMbが回転させられたとき、この外力により回転させられた一方のモータに追従させて他方のモータを、一方のモータの回転方向とは逆方向に電動により相似回転させるバイラテラル制御を行わせる構成にした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右何れか一方の手が健常な健常手であり他方の手が麻痺して不自由な麻痺手であるとき、上記麻痺手を健常手と同様に動かす訓練を行うためのリハビリ装置であって、
右手に連係させられる右可動部と、左手に連係させられる左可動部と、上記右可動部を電動により回動させる右モータと、上記左可動部を電動により回動させる左モータと、上記右モータ及び左モータを制御するモータ制御手段を有した制御部とを備え、
上記モータ制御手段は、
上記右モータを駆動する右モータ駆動手段と、
上記左モータを駆動する左モータ駆動手段と、
上記右手の外力により上記右可動部を介して右モータが回転させられまたは上記左手の外力により上記左可動部を介して上記左モータが回転させられたとき、該外力により回転させられた一方のモータに追従させて他方のモータを該一方のモータの回転方向とは逆方向に電動により相似回転させるバイラテラル制御を上記右モータ駆動手段及び上記左モータ駆動手段に行わせる駆動制御手段と
を備えたことを特徴とするリハビリ装置。
【請求項2】
上記右モータの回転角度を検知する右回転角度検知器と、
上記左モータの回転角度を検知する左回転角度検知器とを備え、
上記駆動制御手段は、上記右モータ駆動手段及び上記左モータ駆動手段に対し、上記右回転角度検知器が検知した回転角度及び上記左回転角度検知器が検知した回転角度に基づいて制御を行わせることを特徴とする請求項1記載のリハビリ装置。
【請求項3】
上記制御部は、
入力部からの入力により上記右可動部の起点位置を基準とした右可動角度範囲を設定する右可動角度範囲設定手段と、
上記入力部からの入力により上記左可動部の起点位置を基準とした左可動角度範囲を設定する左可動角度範囲設定手段と、
上記右可動角度範囲設定手段が設定した右可動角度範囲に対応する右モータの右モータ回転角度範囲及び上記左可動角度範囲設定手段が設定した左可動角度範囲に対応した左モータの左モータ回転角度範囲を記憶する記憶手段とを備え、
上記モータ制御手段は、
上記右回転角度検知器が検知した右回転角度が上記記憶手段に記憶した右モータ回転角度範囲のときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した右モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を制限する右回転角度制限手段と、
上記左回転角度検知器が検知した左回転角度が上記記憶手段に記憶した左モータ回転角度範囲のときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した左モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を制限する左回転角度制限手段と
を備えたことを特徴とする請求項2記載のリハビリ装置。
【請求項4】
上記制御部は、
入力部からの入力により上記右可動部の回動速度の上限である右上限速度を設定する右上限速度設定手段と、
上記入力部からの入力により上記左可動部の回動速度の上限である左上限速度を設定する左上限速度設定手段と、
上記右上限速度設定手段が設定した右上限速度に対応した右モータの右モータ上限速度及び上記左上限速度設定手段が設定した左上限速度に対応した左モータの左モータ上限速度を記憶する記憶手段とを備え、
上記モータ制御手段は、
上記右モータの回転速度を算出する右回転速度算出手段と、
上記左モータの回転速度を算出する左回転速度算出手段と、
上記右回転速度算出手段が算出した右回転速度が上記記憶手段に記憶した右モータ上限速度に満たないときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した右モータ上限速度以上になるときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を制限する右回転速度制限手段と、
上記左回転速度算出手段が算出した左回転速度が上記記憶手段に記憶した左モータ上限速度に満たないときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した左モータ上限速度以上になるときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を制限する左回転速度制限手段と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のリハビリ装置。
【請求項5】
上記制御部は、
入力部からの入力により上記右可動部の回動力の上限である右上限力を設定する右上限力設定手段と、
上記入力部からの入力により上記左可動部の回動力の上限である左上限力を設定する左上限力設定手段と、
上記右上限力設定手段が設定した右上限力に対応した右モータの右モータ上限負荷及び上記左上限力設定手段が設定した左上限力に対応した左モータの左モータ上限負荷を記憶する記憶手段とを備え、
上記モータ制御手段は、
上記右モータの負荷を算出する右負荷算出手段と、
上記左モータの負荷を算出する左負荷算出手段と、
上記右負荷算出手段が算出した右負荷が上記記憶手段に記憶した右モータ上限負荷に満たないときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した右モータ上限負荷以上になるときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を制限する右回転力制限手段と、
上記左負荷算出手段が算出した左負荷が上記記憶手段に記憶した左モータ上限負荷に満たないときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した左モータ上限負荷以上になるときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を制限する左回転力制限手段と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のリハビリ装置。
【請求項6】
上記制御部は、
異常信号に基づいて上記右モータ及び左モータの駆動を強制停止させる非常停止手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載のリハビリ装置。
【請求項7】
上記右可動部に連係した右手を撮像する右手撮像カメラと、上記左可動部に連係した左手を撮像する左手撮像カメラと、ディスプレイとを備え、
上記制御部は、
上記右手撮像カメラ及び左手撮像カメラを制御するカメラ制御手段と、
上記ディスプレイの表示を制御するディスプレイ表示手段と、
上記入力部からの入力により右手が健常手であり左手が麻痺手であるときの左手訓練モード及び右手が麻痺手であり左手が健常手であるときの右手訓練モードの何れかのモードに切換え設定を行うモード設定手段とを備え、
上記カメラ制御手段は、
上記モード設定手段が左手訓練モードを設定したとき上記右手撮像カメラからの撮像データを有効にし上記左手撮像カメラからの撮像データを無効にする一方、上記モード設定手段が右手訓練モードを設定したとき上記右手撮像カメラからの撮像データを無効にし上記左手撮像カメラからの撮像データを有効にする画像切換え手段と、
該画像切換え手段によって有効になる正画像を鏡面反転させた反転画像を生成する反転画像生成手段とを備え、
上記ディスプレイ表示手段は、上記画像切換え手段によって有効になる正画像及び上記反転画像生成手段によって生成された反転画像を上記ディスプレイに表示させる機能を備えたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載のリハビリ装置。
【請求項8】
上記健常手及び麻痺手の運動は、親指を除くその他の4指のMP関節からの曲がり動作であり、
上記右可動部及び左可動部を、夫々、基台に設けるとともに、上記4指を上下方向に位置させた状態でその内の小指を支承する支承部材と、該支承部材に立設され上記4指の外側及び内側に対峙してこれらの4指が当接する一対の当接板と、上記支承部材の下側に軸線が上下方向に沿って設けられ該支承部材を上記基台に対して回動させる回動軸とを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載のリハビリ装置。
【請求項9】
上記基台に、上記右可動部及び左可動部に夫々対応して設けられ、上記支承部材に4指を支承した手の手首側を保持する手首側保持部を設けたことを特徴とする請求項8記載のリハビリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳卒中の後遺症などにより身体の一部が麻痺した患者のリハビリのための装置に係り、特に、左右何れか一方の手が健常な健常手であり他方の手が麻痺して不自由な麻痺手であるとき、麻痺手を健常手と同様に動かす訓練を行うためのリハビリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリハビリ装置としては、例えば、特許第5928851号公報(特許文献1)に掲載された技術が知られている。このリハビリ装置は、左右何れか一方の手が健常な健常手であり他方の手が麻痺して不自由な麻痺手であるとき、麻痺手を健常手と同様に動かす訓練を行うためのリハビリ装置であって、麻痺手によって動かされる麻痺手可動部と、健常手によって動かされる健常手用可動部と、健常手の運動を検出する運動検出部と、麻痺手の麻痺手用可動部に運動検出部が検出した健常手の運動と略同等の運動が行われるように助力を付与する助力付与部と、健常手の運動を撮像した正画像及び該正画像を鏡面対象に反転させた反転画像を表示するディスプレイとを備えている。そして、運動検出部を、健常手の所定の動きを撮像するカメラで構成し、このカメラが撮像した画像データに基づいてディスプレイに所要の表示を行わせながら助力付与部の制御を行うようにしている。
【0003】
これにより、麻痺手の訓練を行うときは、患者は、麻痺手を麻痺手可動部に連係させ、健常手を健常手用可動部に連係させ、ディスプレイに表示された正画像及び反転画像を視認しながら健常手及び麻痺手を同様に動かしての運動を行う。この際、麻痺手は助力付与部により助力が付与されるので、麻痺手の運動を確実に行うことができるようになる。また、患者は、健常手も麻痺手も共に滑らかに動いているような映像を見ることになり、そのため、この視覚入力が脳に刺激を与え、麻痺のある麻痺手を患者自身がスムーズに動かしているという感覚をもつので、それだけ、麻痺手の運動を支援する作用が生じ、高いリハビリ効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5928851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、麻痺の態様としては、左手が麻痺手で右手が健常手である場合、右手が麻痺手で左手が健常手である場合の2態様あるが、上記従来のリハビリ装置にあっては、麻痺手可動部は麻痺手専用のものであり、健常手用可動部も健常手専用のものであるので、左手が麻痺手で右手が健常手である場合には、麻痺手可動部を左側に設置し、健常手用可動部を右側に設置した左手麻痺用の装置を用意し、その逆に、右手が麻痺手で左手が健常手である場合には、麻痺手可動部を右側に設置し、健常手用可動部を左側に設置した右手麻痺用の装置を用意しなければならない。そのため、この麻痺の2態様に対応するためには、左手麻痺用の装置と右手麻痺用の装置との2台の装置が必要になり、効率が悪いという問題があった。
【0006】
また、カメラが撮像した画像データに基づいて助力付与部の制御を行うので、健常手の動きを忠実に麻痺手に伝達することができないとともに、健常手の動きを麻痺手に反映させるのに多少のタイムラグが生じ、応答性に劣るという問題もあった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、麻痺の2態様に1台の装置で対応することができるようにして汎用性を向上させるとともに、健常手の動きを忠実に麻痺手に伝達できるようにし、しかも、その応答性も良くして性能を向上させて信頼性の向上を図ったリハビリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明のリハビリ装置は、左右何れか一方の手が健常な健常手であり他方の手が麻痺して不自由な麻痺手であるとき、上記麻痺手を健常手と同様に動かす訓練を行うためのリハビリ装置であって、右手に連係させられる右可動部と、左手に連係させられる左可動部と、上記右可動部を電動により回動させる右モータと、上記左可動部を電動により回動させる左モータと、上記右モータ及び左モータを制御するモータ制御手段を有した制御部とを備え、
上記モータ制御手段は、上記右モータを駆動する右モータ駆動手段と、上記左モータを駆動する左モータ駆動手段と、上記右手の外力により上記右可動部を介して右モータが回転させられまたは上記左手の外力により上記左可動部を介して上記左モータが回転させられたとき、該外力により回転させられた一方のモータに追従させて他方のモータを該一方のモータの回転方向とは逆方向に電動により相似回転させるバイラテラル制御を上記右モータ駆動手段及び上記左モータ駆動手段に行わせる駆動制御手段とを備えた構成としている。
【0009】
これにより、麻痺手の訓練を行うときは、患者は、麻痺手が右手であろうが左手であろうが、右可動部に右手を連係させ、左可動部に左手に連係させ、左右の手を同じように動かすようにする。この場合、右手の外力により右可動部を介して右モータが回転させられ、または、左手の外力により左可動部を介して左モータが回転させられると、駆動制御手段は、外力により回転させられた一方のモータに追従させて他方のモータを、一方のモータの回転方向とは逆方向に電動により相似回転させるバイラテラル制御を行う。一般には、健常手側の可動部の動きが円滑なので、健常手側の動きに追従して麻痺手側の可動部が動かされる。そのため、右手及び左手のどちらの手が麻痺手であっても、麻痺手を健常手と同様に動かすことができるようになり、そのため、左手が麻痺手で右手が健常手である場合、右手が麻痺手で左手が健常手である場合の麻痺の2態様に対し、1台の装置で対応することができるようになり、それだけ、汎用性を向上させることができる。
【0010】
また、駆動制御手段は、バイラテラル制御を行うので、健常手の動きを忠実に麻痺手に伝達できるようになり、しかも、その応答性も良いことから、従来に比較して、性能を向上させることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0011】
この場合、上記右モータの回転角度を検知する右回転角度検知器と、上記左モータの回転角度を検知する左回転角度検知器とを備え、
上記駆動制御手段は、上記右モータ駆動手段及び上記左モータ駆動手段に対し、上記右回転角度検知器が検知した回転角度及び上記左回転角度検知器が検知した回転角度に基づいて制御を行わせる構成が有効である。検知した回転角度を比較して、その角度の差分が減少するように互いのモータを逆転制御することができる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記制御部は、入力部からの入力により上記右可動部の起点位置を基準とした右可動角度範囲を設定する右可動角度範囲設定手段と、上記入力部からの入力により上記左可動部の起点位置を基準とした左可動角度範囲を設定する左可動角度範囲設定手段と、上記右可動角度範囲設定手段が設定した右可動角度範囲に対応する右モータの右モータ回転角度範囲及び上記左可動角度範囲設定手段が設定した左可動角度範囲に対応した左モータの左モータ回転角度範囲を記憶する記憶手段とを備え、
上記モータ制御手段は、上記右回転角度検知器が検知した右回転角度が上記記憶手段に記憶した右モータ回転角度範囲のときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した右モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を制限する右回転角度制限手段と、上記左回転角度検知器が検知した左回転角度が上記記憶手段に記憶した左モータ回転角度範囲のときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した左モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を制限する左回転角度制限手段とを備えた構成としている。
【0013】
これにより、入力部からの入力により右可動角度範囲設定手段で右可動角度範囲を設定するとともに、左可動角度範囲設定手段で左可動角度範囲を設定する。記憶手段には、右可動角度範囲に対応する右モータの右モータ回転角度範囲及び左可動角度範囲に対応した左モータの左モータ回転角度範囲が記憶される。この状態で、左右の手を同じように動かすと、右回転角度検知器が右モータの回転角度を検知し、左回転角度検知器が左モータの回転角度を検知しており、右回転角度制限手段は、右回転角度検知器が検知した右回転角度が右モータ回転角度範囲のときは右モータの電動による駆動を行い、右モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは右モータ駆動手段による右モータの電動による駆動を制限する。一方、左回転角度制限手段は、左回転角度検知器が検知した左回転角度が左モータ回転角度範囲のときは左モータの電動による駆動を行い、左モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは左モータ駆動手段による左モータの電動による駆動を制限する。従って、駆動が制限された右モータまたは左モータは電動による強制的な回転を行わないので、右可動部または左可動部の電動による動きを制限することができ、無理な回動を抑制することができる。
【0014】
例えば、左手が麻痺手で右手が健常手の場合、入力部からの入力により左可動角度範囲設定手段で左可動部の左可動角度範囲を設定する。右可動部の右可動角度範囲は、特に設定しなくても良い。一方、例えば、右手が麻痺手で左手が健常手の場合、入力部からの入力により右可動角度範囲設定手段で右可動部の右可動角度範囲を設定する。左可動部の左可動角度範囲は、特に設定しなくても良い。これにより、麻痺手側の可動部の回動範囲を限定できるので、麻痺手に無理な動きを行わせることを防止でき、麻痺手の安全を図ることができる。即ち、予め、麻痺手がいずれの手かが分かっており、また、麻痺手の動きが健常手に比較してどの程度動くかがある程度わかっているので、麻痺手に負担がかからないようにして訓練を行うことができるようになる。
【0015】
また、必要に応じ、上記制御部は、入力部からの入力により上記右可動部の回動速度の上限である右上限速度を設定する右上限速度設定手段と、上記入力部からの入力により上記左可動部の回動速度の上限である左上限速度を設定する左上限速度設定手段と、上記右上限速度設定手段が設定した右上限速度に対応した右モータの右モータ上限速度及び上記左上限速度設定手段が設定した左上限速度に対応した左モータの左モータ上限速度を記憶する記憶手段とを備え、
上記モータ制御手段は、
上記右モータの回転速度を算出する右回転速度算出手段と、上記左モータの回転速度を算出する左回転速度算出手段と、上記右回転速度算出手段が算出した右回転速度が上記記憶手段に記憶した右モータ上限速度に満たないときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した右モータ上限速度以上になるときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を制限する右回転速度制限手段と、上記左回転速度算出手段が算出した左回転速度が上記記憶手段に記憶した左モータ上限速度に満たないときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した左モータ上限速度以上になるときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を制限する左回転速度制限手段とを備えた構成にしている。
【0016】
これにより、入力部からの入力により右上限速度設定手段で右上限速度を設定するとともに、左上限速度設定手段で左上限速度を設定する。記憶手段には、右上限速度に対応する右モータの右モータ上限速度及び左上限速度に対応した左モータの左モータ上限速度が記憶される。この状態で、左右の手を同じように動かすと、右回転速度算出手段が右モータの回転速度を算出し、左回転速度算出手段が左モータの回転速度を算出しており、右回転速度制限手段は、右回転速度算出手段が算出した右回転速度が右モータ上限速度に満たないときは右モータ駆動手段による右モータの電動による駆動を許容し右モータ上限速度以上になるときは右モータ駆動手段による右モータの電動による駆動を制限する。一方、左回転速度制限手段は、左回転速度算出手段が算出した左回転速度が左モータ上限速度に満たないときは左モータ駆動手段による左モータの電動による駆動を許容し左モータ上限速度以上になるときは左モータ駆動手段による左モータの電動による駆動を制限する。従って、駆動が制限された右モータまたは左モータは電動による強制的な回転を行わないので、右可動部または左可動部の電動による動きを制限することができ、無理な回動を抑制することができる。
【0017】
例えば、左手が麻痺手で右手が健常手の場合、入力部からの入力により左上限速度設定手段で左可動部の左上限速度を設定する。右可動部の右上限速度は、特に設定しなくても良い。一方、例えば、右手が麻痺手で左手が健常手の場合、入力部からの入力により右上限速度設定手段で右可動部の右上限速度を設定する。左可動部の左上限速度は、特に設定しなくても良い。これにより、麻痺手側の可動部の回動速度を限定できるので、麻痺手に無理な動きを行わせることを防止でき、麻痺手の安全を図ることができる。即ち、予め、麻痺手がいずれの手かが分かっており、また、麻痺手の動きが健常手に比較してどの程度動くかがある程度わかっているので、麻痺手に負担がかからないようにして訓練を行うことができるようになる。
【0018】
更に、必要に応じ、上記制御部は、入力部からの入力により上記右可動部の回動力の上限である右上限力を設定する右上限力設定手段と、上記入力部からの入力により上記左可動部の回動力の上限である左上限力を設定する左上限力設定手段と、上記右上限力設定手段が設定した右上限力に対応した右モータの右モータ上限負荷及び上記左上限力設定手段が設定した左上限力に対応した左モータの左モータ上限負荷を記憶する記憶手段とを備え、
上記モータ制御手段は、
上記右モータの負荷を算出する右負荷算出手段と、上記左モータの負荷を算出する左負荷算出手段と、上記右負荷算出手段が算出した右負荷が上記記憶手段に記憶した右モータ上限負荷に満たないときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した右モータ上限負荷以上になるときは上記右モータ駆動手段による上記右モータの電動による駆動を制限する右回転力制限手段と、上記左負荷算出手段が算出した左負荷が上記記憶手段に記憶した左モータ上限負荷に満たないときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を許容し上記記憶手段に記憶した左モータ上限負荷以上になるときは上記左モータ駆動手段による上記左モータの電動による駆動を制限する左回転力制限手段とを備えた構成としている。
【0019】
これにより、入力部からの入力により右上限力設定手段で右上限力を設定するとともに、左上限力設定手段で左上限力を設定する。記憶手段には、右上限力に対応する右モータの右モータ上限負荷及び左上限力に対応した左モータの左モータ上限負荷が記憶される。この状態で、左右の手を同じように動かすと、右負荷算出手段が右モータの負荷を算出し、左負荷算出手段が左モータの負荷を算出しており、右回転力制限手段は、右負荷算出手段が算出した右負荷が右モータ上限負荷に満たないときは右モータ駆動手段による右モータの電動による駆動を許容し右モータ上限負荷以上になるときは右モータ駆動手段による右モータの電動による駆動を制限する。一方、左回転力制限手段は、左負荷算出手段が算出した左負荷が左モータ上限負荷に満たないときは左モータ駆動手段による左モータの電動による駆動を許容し左モータ上限負荷以上になるときは左モータ駆動手段による左モータの電動による駆動を制限する。従って、駆動が制限された右モータまたは左モータは電動による強制的な回転を行わないので、右可動部または左可動部の電動による動きを制限することができ、無理な回動を抑制することができる。
【0020】
例えば、左手が麻痺手で右手が健常手の場合、入力部からの入力により左上限力設定手段で左可動部の左上限力を設定する。右可動部の右上限力は、特に設定しなくても良い。一方、例えば、右手が麻痺手で左手が健常手の場合、入力部からの入力により右上限力設定手段で右可動部の右上限力を設定する。左可動部の左上限力は、特に設定しなくても良い。これにより、麻痺手側の可動部の回動力を限定できるので、麻痺手に無理な動きを行わせることを防止でき、麻痺手の安全を図ることができる。即ち、予め、麻痺手がいずれの手かが分かっており、また、麻痺手の動きが健常手に比較してどの程度動くかがある程度わかっているので、麻痺手に負担がかからないようにして訓練を行うことができるようになる。
【0021】
更にまた、必要に応じ、上記制御部は、異常信号に基づいて上記右モータ及び左モータの駆動を強制停止させる非常停止手段を備えた構成としている。安全を図ることができる。
【0022】
そしてまた、必要に応じ、上記右可動部に連係した右手を撮像する右手撮像カメラと、上記左可動部に連係した左手を撮像する左手撮像カメラと、ディスプレイとを備え、
上記制御部は、
上記右手撮像カメラ及び左手撮像カメラを制御するカメラ制御手段と、上記ディスプレイの表示を制御するディスプレイ表示手段と、上記入力部からの入力により右手が健常手であり左手が麻痺手であるときの左手訓練モード及び右手が麻痺手であり左手が健常手であるときの右手訓練モードの何れかのモードに切換え設定を行うモード設定手段とを備え、
上記カメラ制御手段は、
上記モード設定手段が左手訓練モードを設定したとき上記右手撮像カメラからの撮像データを有効にし上記左手撮像カメラからの撮像データを無効にする一方、上記モード設定手段が右手訓練モードを設定したとき上記右手撮像カメラからの撮像データを無効にし上記左手撮像カメラからの撮像データを有効にする画像切換え手段と、該画像切換え手段によって有効になる正画像を鏡面反転させた反転画像を生成する反転画像生成手段とを備え、
上記ディスプレイ表示手段は、上記画像切換え手段によって有効になる正画像及び上記反転画像生成手段によって生成された反転画像を上記ディスプレイに表示させる機能を備えた構成としている。
【0023】
これにより、ディスプレイに表示された正画像及び反転画像を視認しながら画像切換え手段により無効にした他方の撮像カメラ側に対応する手を動かす訓練を行うことができる。即ち、麻痺手の訓練を行うときは、先ず、モード設定手段によって、右手が健常手であり左手が麻痺手であるときは左手訓練モードに設定し、右手が麻痺手であり左手が健常手であるときは右手訓練モードに設定する。そして、訓練を行うときは、患者は、ディスプレイに表示された正画像及び反転画像を視認しながら健常手及び麻痺手を同様に動かしての運動を行う。この場合、ディスプレイには、健常手の正画像とその反転画像が表示されるので、患者は、麻痺手も健常手と同様に滑らかに動いているような映像を見ることになり、そのため、この視覚入力が脳に刺激を与え、麻痺のある麻痺手を患者自身がスムーズに動かしているという感覚をもつので、それだけ、麻痺手の運動を支援する作用が生じ、高いリハビリ効果を得ることができる。
【0024】
また、必要に応じ、上記健常手及び麻痺手の運動は、親指を除くその他の4指のMP関節からの曲がり動作であり、
上記右可動部及び左可動部を、夫々、基台に設けるとともに、上記4指を上下方向に位置させた状態でその内の小指を支承する支承部材と、該支承部材に立設され上記4指の外側及び内側に対峙してこれらの4指が当接する一対の当接板と、上記支承部材の下側に軸線が上下方向に沿って設けられ該支承部材を上記基台に対して回動させる回動軸とを備えて構成している。
【0025】
これにより、健常手及び麻痺手の運動は、親指を除くその他の4指がMP関節から曲げられる動作であり、麻痺手の重要な運動の支援を確実に行うことができる。健常手側においては4指をMP関節から内側に屈曲させるときは内側の当接板を押し、4指をMP関節から外側に伸展させるときは外側の当接板を押す。一方、麻痺手側においては、外側の当接板によって手は押されて屈曲させられ、内側の当接板によって手は押されて伸展させられる。この運動は、例えば、4指が親指に近接する所謂ツマミ動作であり、親指と人差し指とで摘む(掴む)ようにする運動能力の増進効果を促進できる。
【0026】
この場合、上記基台に、上記右可動部及び左可動部に夫々対応して設けられ、上記支承部材に4指を支承した手の手首側を保持する手首側保持部を設けたことが有効である。手首側を支持するので、4指による動作を円滑に行わせることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、左手が麻痺手で右手が健常手である場合と、右手が麻痺手で左手が健常手である場合との麻痺の2態様に対して、1台の装置で対応することができるようになるので、汎用性を向上させることができる。また、健常手の動きを忠実に麻痺手に伝達できるようになり、しかも、その応答性も良く、性能を向上させて信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置を使用状態とともに示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の収容ボックスを示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の収容ボックスの内部の構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の収容ボックスの内部の構成を示す裏面側斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の可動部の回転伝動機構を示す要部斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置において可動部を左右の手の屈曲時の状態で示す平面図である。
図7】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置において可動部を左右の手の伸展時の状態で示す平面図である。
図8】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の入力部と制御部の構成を示すブロック図である。
図9】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の制御部の要部の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の制御部の別の要部の構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置において可動角度範囲の設定例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置において上限速度の設定例を示すグラフ図である。
図13】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置において上限力の設定例を示すグラフ図である。
図14】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置においてディスプレイの表示例を示し、(a)は左右の手の屈曲時の状態を示す図、(b)は左右の手の伸展時の状態を示す図である。
図15】本発明の実施の形態に係るリハビリ装置の制御部の制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るリハビリ装置について詳細に説明する。
図1乃至図10に示すように、本発明の実施の形態に係るリハビリ装置Sは、対象とする患者の左右何れか一方の手が健常な健常手であり他方の手が麻痺して不自由な麻痺手であるとき、麻痺手を健常手と同様に動かす訓練を行うためのものである。実施の形態では、健常手及び麻痺手の運動は、親指を除くその他の4指がMP関節から曲げられる運動のためのものである。この運動としては、例えば、4指が親指に近接するツマミ動作(対立運動)がある。
【0030】
リハビリ装置Sは、患者が椅子(図示せず)に着座して健常手及び麻痺手のある肘から先の腕を略平行にして無理なく伸ばして載せることができる高さのテーブル(図示せず)に設置され健常手及び麻痺手を収容する前開放の矩形状の収容ボックス1と、収容ボックス1上に設置され患者が視認可能なディスプレイ2とを備えている。
【0031】
収容ボックス1内には、基台3が設けられており、この基台3上に、右手Haに連係させられる右可動部Kaと、左手Hbに連係させられる左可動部Kbとが設けられている。右可動部Ka及び左可動部Kbは、夫々、鏡面対称の位置関係で配置され、手の親指を除く4指を上下方向に位置させた状態でその内の小指を支承する支承部材4と、支承部材4に立設され4指の外側及び内側に対峙してこれらの4指が当接する一対の当接板5と、支承部材4の下側に軸線が上下方向に沿って設けられ支承部材4を基台3に対して回動可能に支持する回動軸6とを備えて構成されている。また、収容ボックス1の開放口側の基台3には、右可動部Ka及び左可動部Kbに夫々対応して設けられ、支承部材4に4指を支承した手の手首側を保持する手首側保持部7が設けられている。
【0032】
また、基台3上には、右可動部Kaを電動により回動させる右モータMaと、左可動部Kbを電動により回動させる左モータMbとが備えられている。各モータは、互いに性能を同じにする例えばサーボモータや脱調レスステッピングモータで構成することができる。右モータMaには、右モータMaの回転角度を検知するエンコーダからなる右回転角度検知器10aが付帯され、左モータMbには、左モータMbの回転角度を検知するエンコーダからなる左回転角度検知器10bが付帯されている。基台3の裏面側には、各モータMa,Mbの回転を夫々対応する可動部Ka,Kbに伝動する回転伝動機構11が設けられている。回転伝動機構11は、モータ軸に設けられた歯形の主プーリ12と、可動部Ka,Kbの回動軸6に設けられた歯形の従プーリ13と、主プーリ12及び従プーリ13間に掛け渡されるエンドレスのタイミングベルト14とからなる。回転比は、実施の形態では、1:1にしている。
【0033】
また、収容ボックス1内には、右可動部Kaに連係した右手Haを撮像する右手撮像カメラ15aと、左可動部Kbに連係した左手Hbを撮像する左手撮像カメラ15bと、右可動部Kaの照明を行う右LEDランプ16a(図8)、左可動部Kbの照明を行う左LEDランプ16b(図8)が設けられている。また、収容ボックス1には、入力部20からの入力に基づいて各種制御を行う制御部40が備えられている。
【0034】
図2及び図8に示すように、入力部20には、制御データを記憶する外部メモリ21が着脱可能に装着される装着部22が設けられている。また、入力部20には、種々の設定等を行うためのスイッチ,ボタンやボリュームが設けられ、これらは、「電源スイッチ23」,一対の「非常停止ボタン24」,「訓練開始ボタン25」,「訓練終了ボタン26」,「左麻痺/右麻痺・切り替えスイッチ27」,「訓練モード/設定モード・切り替えスイッチ28」,「角度制限ボリューム(伸展)30」,「角度制限ボリューム(屈曲)31」,「速度制限ボリューム32」,「力制限ボリューム33」からなる。図2に示すように、「角度制限ボリューム(伸展)30」,「角度制限ボリューム(屈曲)31」,「速度制限ボリューム32」,「力制限ボリューム33」は、タッチパネル34の機能で実現される。これらの機能については後述する。
【0035】
制御部40は、図8乃至図10に示すように、「電源スイッチ23」のオン,オフにより、ACアダプター35からの電源を、後述の右モータ駆動手段51a及び左モータ駆動手段51bをはじめ、各部に対して供給,停止制御する電源制御手段41を備えている。また、制御部40は、制御部40内の種々の制御手段に対してこれらの制御条件を設定するとともにその機能を実行させるための実行手段42を備えている。入力部20の「訓練モード/設定モード・切り替えスイッチ28」は、入力部20から実行手段42への各種設定を行う設定モードと、設定後に装置を実動させて訓練を行う訓練モードとの切換えを行う。「訓練開始ボタン25」は、訓練モードにおける装置の作動開始を指示し、「訓練終了ボタン26」は作動終了を指示する。
【0036】
また、制御部40は、右モータMa及び左モータMbを制御するモータ制御手段50を有している。モータ制御手段50は、電源供給されて右モータMaを駆動する右モータ駆動手段51aと、電源供給されて左モータMbを駆動する左モータ駆動手段51bと、右モータ駆動手段51a及び左モータ駆動手段51bの駆動制御手段52とを備えて構成されている。駆動制御手段52は、右手Haの外力により右可動部Kaを介して右モータMaが回転させられ、または、左手Hbの外力により左可動部Kbを介して左モータMbが回転させられたとき、この外力により回転させられた一方のモータに追従させて他方のモータを一方のモータの回転方向とは逆方向に電動により相似回転させるバイラテラル制御を行わせるものである。
【0037】
実施の形態では、駆動制御手段52は、右モータ駆動手段51a及び左モータ駆動手段51bに対し、右回転角度検知器10aが検知した回転角度及び左回転角度検知器10bが検知した回転角度を比較して、その角度の差分が減少するように互いのモータを逆転制御させる。即ち、駆動制御手段52は、右モータMa及び左モータMbが停止中あるいは回転中に、外力により何れか一方のモータが他方のモータよりも余分に回転させられたことを検知して他方のモータを回転させるようにする。
【0038】
また、実行手段42は、入力部20からの入力により右可動部Kaの起点位置を基準とした右可動角度範囲を設定する右可動角度範囲設定手段53aと、入力部20からの入力により左可動部Kbの起点位置を基準とした左可動角度範囲を設定する左可動角度範囲設定手段53bとを備えている。詳しくは、図11に示すように、実施の形態では、各可動部Ka,Kbは、4指を折り曲げた状態の可動部Ka,Kbの回動位置(屈曲方向の機械限界)を起点位置(0°)とし、この起点位置から75°回動させて4指を直状に伸ばした状態の可動部Ka,Kbの回動位置(伸展方向の機械限界)の範囲で角度範囲を設定できるようにしている。ここで、可動部Ka,Kbはストッパ(図示せず)によって停止させられるようになっており、機械的限界とはその停止角度位置をいう。入力部20に設けた「角度制限ボリューム(屈曲)31」の操作により屈曲位置における起点位置からの角度を設定し、「角度制限ボリューム(伸展)30」の操作により伸展位置における起点位置からの角度を設定する。例えば、図11に示すように、左手Hbが麻痺手で右手Haが健常手の場合、左手Hbの麻痺手側の角度を25°(屈曲位置)~65°(伸展位置)に設定する。右手Haの健常手側の角度を3°(屈曲位置)~70°(伸展位置)に設定する。尚、モータ制御手段50は、電源投入時及び「訓練終了ボタン26」が押釦されたときは、可動部Ka,Kbが屈曲位置に位置するように、右モータ駆動手段51a及び左モータ駆動手段51bにより右モータMa及び左モータMbを初期位置に位置させて停止させておく。
【0039】
実行手段42は、入力部20の「左麻痺/右麻痺・切り替えスイッチ27」からの入力により、右手Haが健常手であり左手Hbが麻痺手であるときの左手訓練モード及び右手Haが麻痺手であり左手Hbが健常手であるときの右手訓練モードの何れかのモードに切換え設定を行うモード設定手段54(図10)を備えている。そのため、モード設定手段54が左手訓練モードを設定したときは、右可動角度範囲設定手段53aへの入力は健常手側の右可動角度範囲設定になり、左可動角度範囲設定手段53bへの入力は麻痺手側の左可動角度範囲設定になる。右可動部Kaの右可動角度範囲は、特に設定しなくても良い。一方、モード設定手段54が右手訓練モードを設定したときは、右可動角度範囲設定手段53aへの入力は麻痺手側の右可動角度範囲設定になり、左可動角度範囲設定手段53bへの入力は、健常手側の左可動角度範囲設定になる。左可動部Kbの左可動角度範囲は、特に設定しなくても良い。
【0040】
また、制御部40は、記憶手段55を有しており、記憶手段55は、右可動角度範囲設定手段53aが設定した右可動角度範囲に対応する右モータMaの右モータ回転角度範囲及び左可動角度範囲設定手段53bが設定した左可動角度範囲に対応した左モータMbの左モータ回転角度範囲を記憶する。この場合、モータMa,Mbと可動部Ka,Kbとの回転比は、実施の形態では、1:1なので、モータMa,Mbの回転角度範囲は、可動部Ka,Kbの可動角度範囲と同じになる。
【0041】
また、モータ制御手段50は、右回転角度検知器10aが検知した右回転角度が記憶手段55に記憶した右モータ回転角度範囲のときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を許容し、記憶手段55に記憶した右モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を制限する右回転角度制限手段56aと、左回転角度検知器10bが検知した左回転角度が記憶手段55に記憶した左モータ回転角度範囲のときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を許容し記憶手段55に記憶した左モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を制限する左回転角度制限手段56bとを備えて構成されている。
【0042】
更に、実行手段42は、入力部20の「速度制限ボリューム32」からの入力により、右可動部Kaの回動速度の上限である右上限速度を設定する右上限速度設定手段57aと、入力部20からの入力により左可動部Kbの回動速度の上限である左上限速度を設定する左上限速度設定手段57bとを備えている。制御部40の記憶手段55は、右上限速度設定手段57aが設定した右上限速度に対応した右モータMaの右モータ上限速度及び左上限速度設定手段57bが設定した左上限速度に対応した左モータMbの左モータ上限速度を記憶する。詳しくは、図12に示すように、上限速度設定は、モータの定格角速度(deg/sec)の上限を、正転方向及び反転方向夫々において、一定にする操作を行う。
【0043】
モータ制御手段50は、右モータMaの回転速度を算出する右回転速度算出手段58aと、左モータMbの回転速度を算出する左回転速度算出手段58bと、右回転速度算出手段58aが算出した右回転速度が記憶手段55に記憶した右モータ上限速度に満たないときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を許容し、記憶手段55に記憶した右モータ上限速度以上になるときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を制限する右回転速度制限手段59aと、左回転速度算出手段58bが算出した左回転速度が記憶手段55に記憶した左モータ上限速度に満たないときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を許容し、記憶手段55に記憶した左モータ上限速度以上になるときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を制限する左回転速度制限手段59bとを備えて構成されている。
【0044】
モード設定手段54が左手訓練モードを設定したときは、右上限速度設定手段57aへの入力は健常手側の右上限速度設定になり、左上限速度設定手段57bへの入力は麻痺手側の左上限速度設定になる。右可動部Kaの右上限速度は、特に設定しなくても良い。一方、モード設定手段54が右手訓練モードを設定したときは、右上限速度設定手段57aへの入力は麻痺手側の右上限速度設定になり、左上限速度設定手段57bへの入力は、健常手側の左上限速度設定になる。左可動部Kbの左上限速度は、特に設定しなくても良い。
【0045】
更にまた、実行手段42は、入力部20の「力制限ボリューム33」からの入力により、右可動部Kaの回動力の上限である右上限力を設定する右上限力設定手段60aと、入力部20からの入力により左可動部Kbの回動力の上限である左上限力を設定する左上限力設定手段60bとを備えている。記憶手段55は、右上限力設定手段60aが設定した右上限力に対応した右モータMaの右モータ上限負荷及び左上限力設定手段60bが設定した左上限力に対応した左モータMbの左モータ上限負荷を記憶する。詳しくは、図13に示すように、実施の形態では、上限負荷としてはモータMa,Mbの定格電流値の上限を制限して定めた上限電流値を記憶する。負荷としての電流値は、モータのトルクに対応する。
【0046】
モータ制御手段50は、右モータMaの負荷(電流値)を算出する右負荷算出手段61aと、左モータMbの負荷(電流値)を算出する左負荷算出手段61bと、右負荷算出手段61aが算出した右負荷が記憶手段55に記憶した右モータ上限負荷に満たないときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を許容し、記憶手段55に記憶した右モータ上限負荷以上になるときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を制限する右回転力制限手段62aと、左負荷算出手段61bが算出した左負荷が記憶手段55に記憶した左モータ上限負荷に満たないときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を許容し、記憶手段55に記憶した左モータ上限負荷以上になるときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を制限する左回転力制限手段62bとを備えた構成としている。
【0047】
モード設定手段54が左手訓練モードを設定したときは、右上限力設定手段60aへの入力は健常手側の右上限力設定になり、左上限力設定手段60bへの入力は麻痺手側の左上限力設定になる。右可動部Kaの右上限力は、特に設定しなくても良い。一方、モード設定手段54が右手訓練モードを設定したときは、右上限力設定手段60aへの入力は麻痺手側の右上限力設定になり、左上限力設定手段60bへの入力は、健常手側の左上限力設定になる。左可動部Kbの左上限力は、特に設定しなくても良い。
【0048】
図8に示すように、モータ制御手段50は、実行手段42からの指令により作動させられるコントローラ63を有しており、コントローラ63は、上記の駆動制御手段52,右回転角度制限手段56a,左回転角度制限手段56b,右回転速度算出手段58a,左回転速度算出手段58b,右回転速度制限手段59a,左回転速度制限手段59b,右負荷算出手段61a,左負荷算出手段61b,右回転力制限手段62a及び左回転力制限手段62bが行う機能を備えている。
【0049】
また、制御部40は、「訓練開始ボタン25」の押釦により作動するタイマ(図示せず)を備えており、タイマの設定時間が到来すると右モータMa及び左モータMbの駆動を停止して訓練を停止する。タイマの設定時間は例えば3分に設定される。また、制御部40は、入力部20の「非常停止ボタン24」からの入力により異常信号を送出し、この異常信号に基づいて右モータMa及び左モータMbの駆動を電源制御手段41を介して強制停止させる非常停止手段64を備えて構成されている。
【0050】
更に、制御部40は、図8及び図10に示すように、右LEDランプ16a及び左LEDランプ16bを制御する照明制御手段65と、右手撮像カメラ15a及び左手撮像カメラ15bを制御するカメラ制御手段66と、ディスプレイ2の表示を制御するディスプレイ表示手段67とを備えている。照明制御手段65は、右LEDランプ16a及び左LEDランプ16bの照度を制御する。右LEDランプ16a及び左LEDランプ16bを点灯し、手を明るくして撮像カメラ15a,15bによる撮像画像を明瞭にするようにしている。
【0051】
カメラ制御手段66は、モード設定手段54が左手訓練モードを設定したとき右手撮像カメラ15aからの撮像データを有効にし左手撮像カメラ15bからの撮像データを無効にする一方、モード設定手段54が右手訓練モードを設定したとき右手撮像カメラ15aからの撮像データを無効にし左手撮像カメラ15bからの撮像データを有効にする画像切換え手段68と、画像切換え手段68によって有効になる正画像を鏡面反転させた反転画像を生成する反転画像生成手段69とを備えている。
【0052】
ディスプレイ表示手段67は、図14に示すように、画像切換え手段68によって有効になる正画像及び反転画像生成手段69によって生成された反転画像をディスプレイ2に表示させる機能を備えている。これにより、ディスプレイ2に表示された正画像及び反転画像を視認しながら画像切換え手段68により無効にした他方の撮像カメラ側に対応する手を動かす訓練を行なわせるようにしている。ディスプレイ表示手段67は、入力部20の「訓練モード/設定モード・切り替えスイッチ28」の入力により設定モードになった際には、初期設定画面(図示せず)を表示する機能等も備えている。
【0053】
従って、実施の形態に係るリハビリ装置Sを用いて、患者がリハビリを行うときは、以下のようになる。患者の補助者などによって、「電源スイッチ23」をオンにし、予め、「訓練モード/設定モード・切り替えスイッチ28」の入力により設定モードにし、初期設定を行う。ここでは、右手Haが健常手であり左手Hbが麻痺手の患者の場合で説明する。
【0054】
入力部20の「左麻痺/右麻痺・切り替えスイッチ27」からの入力により、左手訓練モードに設定する。そして、入力部20に設けた「角度制限ボリューム(屈曲)31」の操作により屈曲位置における起点位置からの角度を設定し、「角度制限ボリューム(伸展)30」の操作により伸展位置における起点位置からの角度を設定する。この場合、右可動角度範囲設定手段53aへの入力は健常手側の右可動角度範囲設定(一般には大きな角度範囲)になり、左可動角度範囲設定手段53bへの入力は麻痺手側の左可動角度範囲設定(一般には右より小さな角度範囲)になる。これにより、図11に示すように、右可動角度範囲設定手段53aが設定した右可動角度範囲に対応する右モータMaの右モータ回転角度範囲及び左可動角度範囲設定手段53bが設定した左可動角度範囲に対応した左モータMbの左モータ回転角度範囲が記憶手段55に記憶される。
【0055】
また、入力部20の「速度制限ボリューム32」からの入力により、右可動部Kaの回動速度の上限である右上限速度を設定するとともに、左可動部Kbの回動速度の上限である左上限速度を設定する。この場合、モード設定手段54が左手訓練モードに設定されているので、右上限速度設定手段57aへの入力は健常手側の右上限速度設定(一般には大きな上限速度)になり、左上限速度設定手段57bへの入力は麻痺手側の左上限速度設定(一般には右より小さな上限速度)になる。図12に示すように、右上限速度に対応した右モータMaの右モータ上限速度及び左上限速度設定手段57bが設定した左上限速度に対応した左モータMbの左モータ上限速度が設定され、記憶手段55に記憶される。
【0056】
更に、入力部20の「力制限ボリューム33」からの入力により、右可動部Kaの回動力の上限である右上限力を設定するとともに、左可動部Kbの回動力の上限である左上限力を設定する。この場合、モード設定手段54が左手訓練モードに設定されているので、右上限力設定手段60aへの入力は健常手側の右上限力設定(一般には大きな上限力)になり、左上限力設定手段60bへの入力は麻痺手側の左上限力設定(一般には右より小さな上限力)になる。図13に示すように、右上限力設定手段60aが設定した右上限力に対応した右モータMaの右モータ上限負荷及び左上限力設定手段60bが設定した左上限力に対応した左モータMbの左モータ上限負荷が記憶手段55に記憶される。
【0057】
入力部20での設定が終わったならば、「訓練モード/設定モード・切り替えスイッチ28」により、訓練モードに切換える。そして、図6に示すように、健常手である右手Haを右可動部Kaの支承部材4に載置し、麻痺手である左手Hbを左可動部Kbの支承部に載置する。この場合、手首側保持部7に、手の手首側を保持するので、4指の支承が確実になる。
【0058】
そして、図15に示すフローチャートを参照し、「訓練開始ボタン25」を押釦し、訓練を開始する。訓練が開始されると、照明制御手段65により右LEDランプ16a及び左LEDランプ16bが点灯し、カメラ制御手段66の画像切換え手段68により右手撮像カメラ15aの撮像データが有効になり、反転画像生成手段69によって撮像データの正画像を鏡面反転させた反転画像が生成される。図14に示すように、ディスプレイ2には、ディスプレイ表示手段67により、画像切換え手段68によって有効になる正画像及び反転画像生成手段69によって生成された反転画像が右手Ha及び左手Hbの位置に対応させて並べて表示される(S1)。
【0059】
また、モータ制御手段50において、駆動制御手段52が、右モータMa及び左モータMbの外力による回転を検出しており(S2)、右手Haの外力により右可動部Kaを介して右モータMaが回転させられ、または、左手Hbの外力により左可動部Kbを介して左モータMbが回転させられたとき(S2Yes)、この外力により回転させられた一方のモータに追従させて他方のモータを、一方のモータの回転方向とは逆方向に電動により相似回転させるバイラテラル制御を行う(S3)。
【0060】
一般には、健常手側の可動部の動きが円滑なので、図6及び図7に示すように、健常手側の動きに追従して麻痺手側の可動部が動かされる。そのため、左可動部Kbに連係した左手Hbの麻痺手を右可動部Kaに連係した右手Haの健常手と同様に動かすことができるようになる。即ち、右手Haを屈曲させて右可動部Kaを動かすと、左可動部Kbによって左手Hbも屈曲方向に動かされ、右手Haを伸展させて右可動部Kaを動かすと、左可動部Kbによって左手Hbも伸展方向に動かされる。これらの動作を、繰り返し行うことができる。この場合、駆動制御手段52は、バイラテラル制御を行うので、健常手の動きを忠実に麻痺手に伝達できるようになり、しかも、その応答性も良いことから、従来に比較して、性能を向上させることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
また、ディスプレイ2に表示された正画像及び反転画像を視認しながら手を動かす訓練を行うことができる。この場合、図14に示すように、ディスプレイ2には、右手Haの健常手の正画像とその反転画像が表示されるので、患者は、左手Hbの麻痺手も右手Haの健常手と同様に滑らかに動いているような映像を見ることになり、そのため、この視覚入力が脳に刺激を与え、麻痺のある麻痺手を患者自身がスムーズに動かしているという感覚をもつので、それだけ、麻痺手の運動を支援する作用が生じ、高いリハビリ効果を得ることができる。
【0062】
このバイラテラル制御の過程においては、右回転角度検知器10aが右モータMaの回転角度を検知し、左回転角度検知器10bが左モータMbの回転角度を検知しており(S4)、右回転角度制限手段56aは、右回転角度検知器10aが検知した右回転角度が右モータ回転角度範囲のときは右モータMaの電動による駆動を行い(S4Yes)、右モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったとき(S4No)は、右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を制限する(S5)。一方、左回転角度制限手段56bは、左回転角度検知器10bが検知した左回転角度が左モータ回転角度範囲のときは左モータMbの電動による駆動を行い(S4Yes)、左モータ回転角度範囲の上限若しくは下限になったとき(S4No)は、左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を制限する(S5)。
【0063】
従って、駆動が制限された右モータMaまたは左モータMbは電動による強制的な回転を行わないので、右可動部Kaまたは左可動部Kbの電動による動きを制限することができ、無理な回動を抑制することができる。即ち、左手Hbが麻痺手で右手Haが健常手のこの例の場合、右手Haの健常手側の右可動角度範囲は、左手Hbの麻痺手側の左可動角度範囲より大きいと、右可動部Kaは左可動部Kbの角度範囲を超えて回動するが、左可動部Kbは左可動角度の上限若しくは下限で動力が作用しないので強制的に動かされることがなく、左手Hbの麻痺手に無理な動きを行わせることを防止でき、左手Hbの麻痺手の安全を図ることができる。
【0064】
また、このバイラテラル制御の過程においては、右回転速度算出手段58aが右モータMaの回転速度を算出し、左回転速度算出手段58bが左モータMbの回転速度を算出しており、右回転速度制限手段59aは、右回転速度算出手段58aが算出した右回転速度が右モータ上限速度に満たないときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を許容し(S6No)、右モータ上限速度以上になるとき(S6Yes)は、右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を制限する(S7)。一方、左回転速度制限手段59bは、左回転速度算出手段58bが算出した左回転速度が左モータ上限速度に満たないときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を許容し(S6No)、左モータ上限速度以上になるとき(S6Yes)は、左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を制限する(S7)。
【0065】
従って、駆動が制限された右モータMaまたは左モータMbは電動による強制的な回転を行わないので、右可動部Kaまたは左可動部Kbの電動による動きを制限することができ、無理な回動を抑制することができる。即ち、左手Hbが麻痺手で右手Haが健常手のこの例の場合、右手Haの健常手側の右上限速度は、左手Hbの麻痺手側の左上限速度より大きいと、右可動部Kaは左可動部Kbの左上限速度を超えて回動するが、左可動部Kbは左上限速度よりスピードが上がらないので、左手Hbの麻痺手に無理な動きを行わせることを防止でき、左手Hbの麻痺手の安全を図ることができる。
【0066】
更に、このバイラテラル制御の過程においては、右負荷算出手段61aが右モータMaの負荷を算出し、左負荷算出手段61bが左モータMbの負荷を算出しており、右回転力制限手段62aは、右負荷算出手段61aが算出した右負荷が右モータ上限負荷に満たないときは右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を許容し(S8No)、右モータ上限負荷以上になるとき(S8Yes)は、右モータ駆動手段51aによる右モータMaの電動による駆動を制限する(S9)。一方、左回転力制限手段62bは、左負荷算出手段61bが算出した左負荷が左モータ上限負荷に満たないときは左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を許容し(S8No)、左モータ上限負荷以上になるとき(S8Yes)は、左モータ駆動手段51bによる左モータMbの電動による駆動を制限する(S9)。
【0067】
従って、駆動が制限された右モータMaまたは左モータMbは電動による強制的な回転を行わないので、右可動部Kaまたは左可動部Kbの電動による動きを制限することができ、無理な回動を抑制することができる。即ち、左手Hbが麻痺手で右手Haが健常手のこの例の場合、右手Haの健常手側の右上限力は、左手Hbの麻痺手側の左上限力より大きいと、右可動部Kaは左可動部Kbの左上限力を超えて回動するが、左可動部Kbは左上限力以上の力が出ないので、左手Hbの麻痺手に無理な動きを行わせることを防止でき、左手Hbの麻痺手の安全を図ることができる。
【0068】
このようなバイラテラル制御による訓練は、タイマの設定時間が到来するまで、あるいは、「訓練終了ボタン26」を押釦するまで行うことができる(S10No)。タイマの設定時間が到来し、あるいは、「訓練終了ボタン26」が押釦されると訓練を終了する(S10Yes)。また、訓練中に何らかの不具合があれば、「非常停止ボタン24」を押釦する。これにより、非常停止手段64により右モータMa及び左モータMbの駆動が電源制御手段41を介して強制停止されるので、安全を図ることができる。
【0069】
一方、上記とは逆に、右手Haが麻痺手であり左手Hbが健常手の患者の場合は、入力部20の「左麻痺/右麻痺・切り替えスイッチ27」からの入力により、右手訓練モードに設定する。そして、上記と同様に、左右の条件が逆になるように、「角度制限ボリューム(屈曲)31」及び「角度制限ボリューム(伸展)30」の操作により可動角度範囲を設定し、「速度制限ボリューム32」からの入力により可動部Ka,Kbの上限速度を設定し、「力制限ボリューム33」からの入力により、可動部Ka,Kbの回動力の上限力を設定する。入力部20での設定が終わったならば、「訓練モード/設定モード・切り替えスイッチ28」により、訓練モードに切換える。そして、麻痺手である右手Haを右可動部Kaの支承部材4に載置し、健常手である左手Hbを左可動部Kbの支承部に載置し、訓練を開始する。これにより、上記の左手Hbの麻痺手と同様に、右手Haの麻痺手の訓練を行うことができ、上記と同様の作用,効果を奏する。
【0070】
即ち、本リハビリ装置Sによれば、麻痺手の訓練を行うときは、患者は、麻痺手が右手Haであろうが左手Hbであろうが、右可動部Kaに右手Haを連係させ、左可動部Kbに左手Hbに連係させ、左右の手を同じように動かすようにする。この場合、右手Haの外力により右可動部Kaを介して右モータMaが回転させられ、または、左手Hbの外力により左可動部Kbを介して左モータMbが回転させられると、駆動制御手段52は、外力により回転させられた一方のモータに追従させて他方のモータを、一方のモータの回転方向とは逆方向に電動により相似回転させるバイラテラル制御を行う。
【0071】
一般には、健常手側の可動部の動きが円滑なので、健常手側の動きに追従して麻痺手側の可動部が動かされる。そのため、右手Ha及び左手Hbのどちらの手が麻痺手であっても、麻痺手を健常手と同様に動かすことができるようになり、そのため、左手Hbが麻痺手で右手Haが健常手である場合、右手Haが麻痺手で左手Hbが健常手である場合の麻痺の2態様に対し、1台の装置で対応することができるようになり、それだけ、汎用性を向上させることができる。
【0072】
また、駆動制御手段52は、バイラテラル制御を行うので、健常手の動きを忠実に麻痺手に伝達できるようになり、しかも、その応答性も良いことから、従来に比較して、性能を向上させることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0073】
尚、上記実施の形態において、各モータMa,Mbは、タイミングベルト14を有した回転伝動機構11介して可動部Ka,Kbに回転伝動を行うように構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ギヤ伝動機構で構成しても良く、またその回転比も適宜に定めて良く、適宜変更して差支えない。また、各モータMa,Mbを可動部Ka,Kbに直結して構成しても良い。また、可動部Ka,Kbは、親指を除くその他の4指のMP関節からの曲がり動作に対応するように構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の関節からの曲がりに対応できるように構成しても良く、適宜変更して差支えない。更に、入力部20や制御部40の構成も上述した構成に限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。要するに、本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
S リハビリ装置
Ha 右手
Hb 左手
1 収容ボックス
2 ディスプレイ
3 基台
Ka 右可動部
Kb 左可動部
4 支承部材
5 当接板
6 回動軸
7 手首側保持部
Ma 右モータ
Mb 左モータ
10a 右回転角度検知器
10b 左回転角度検知器
11 回転伝動機構
12 主プーリ
13 従プーリ
14 タイミングベルト
15a 右手撮像カメラ
15b 左手撮像カメラ
16a 右LEDランプ
16b 左LEDランプ
20 入力部
21 外部メモリ
22 装着部
23 電源スイッチ
24 非常停止ボタン
25 訓練開始ボタン
26 訓練終了ボタン
27 左麻痺/右麻痺・切り替えスイッチ
28 訓練モード/設定モード・切り替えスイッチ
30 角度制限ボリューム(伸展)
31 角度制限ボリューム(屈曲)
32 速度制限ボリューム
33 力制限ボリューム
34 タッチパネル
35 ACアダプター
40 制御部
41 電源制御手段
42 実行手段
50 モータ制御手段
51a 右モータ駆動手段
51b 左モータ駆動手段
52 駆動制御手段
53a 右可動角度範囲設定手段
53b 左可動角度範囲設定手段
54 モード設定手段
55 記憶手段
56a 右回転角度制限手段
56b 左回転角度制限手段
57a 右上限速度設定手段
57b 左上限速度設定手段
58a 右回転速度算出手段
58b 左回転速度算出手段
59a 右回転速度制限手段
59b 左回転速度制限手段
60a 右上限力設定手段
60b 左上限力設定手段
61a 右負荷算出手段
61b 左負荷算出手段
62a 右回転力制限手段
62b 左回転力制限手段
63 コントローラ
64 非常停止手段
65 照明制御手段
66 カメラ制御手段
67 ディスプレイ表示手段
68 画像切換え手段
69 反転画像生成手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15