(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034003
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】基板に成膜を行う装置及び基板に成膜を行う方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140030
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】川口 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】堀田 隼史
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 英亮
(72)【発明者】
【氏名】山内 孝哉
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA20
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA05
4K030EA06
4K030EA11
4K030FA10
4K030GA02
4K030KA12
4K030KA23
4K030KA45
4K030LA15
(57)【要約】
【課題】 加熱部により加熱された載置台に基板を載置して成膜処理を行うにあたり、成膜処理の面内均一性を改善すること。
【解決手段】 真空雰囲下で基板の表面に反応ガスを供給して成膜処理が行われる処理容器内に配置された昇降軸は、基板の載置台を下面から支持した状態で上下方向に伸びるように設けられ、処理容器に設けられた貫通口を通って外部の昇降機構に接続されている。ケーシングは昇降軸の周囲を覆い、蓋部材は隙間を介して昇降軸を囲むように配置される。ケーシングにパージガス供給部から供給されたパージガスが、前記隙間を介して処理容器へと流れ込んだ後、載置台の裏面へ向かう方向から逸れて流れるように案内する案内部材を設ける。これによりパージガスは載置台から逸れて流れるので、載置台の温度が面内において揃い、成膜処理の面内均一性が改善する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に成膜を行う装置であって、
真空雰囲下で基板の表面に反応ガスを供給して成膜処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記基板が載置されると共に、当該基板を加熱するための加熱部が設けられた載置台と、
前記載置台を下面側から支持した状態で上下方向に伸びるように設けられ、前記処理容器に設けられた貫通口を通って外部の昇降機構に接続された昇降軸と、
前記処理容器と、前記昇降機構との間に設けられ、前記昇降軸の周囲を覆うケーシングと、
前記昇降軸の側周面との間に隙間を介して当該昇降軸を囲むように配置され、その下方側空間と上方側空間との連通が前記隙間以外の部位においては阻止されるように全周に亘って前記処理容器に取り付けられた蓋部材と、
前記ケーシング内にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記処理容器内へ向けて開口する前記隙間の端部と対向する位置に配置され、前記ケーシングに供給された前記パージガスが、前記隙間を介して前記処理容器へと流れ込んだ後、前記載置台の裏面へ向かう方向から逸れて流れるように案内する案内面が形成された案内部材と、を備えた、装置。
【請求項2】
前記昇降軸の側周面と前記蓋部材との間の前記隙間を第1の隙間と呼ぶとき、
前記案内部材は、前記昇降軸の側周面との間に形成される隙間である第2の隙間を介して当該昇降軸を囲むように配置されると共に、前記第2の隙間の寸法が、前記第1の隙間の寸法よりも小さくなるように形成された環状の部材である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の隙間の寸法に対する、前記第1の隙間の寸法の比が1よりも大きく2.5以下の範囲内の値である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記案内部材は、前記案内面と、前記蓋部材の上面との間に形成される隙間である第3の隙間を介して当該蓋部材の上方位置に配置されると共に、前記第3の隙間の寸法が、前記第2の隙間の寸法よりも大きくなるように配置されている、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の隙間の寸法に対する、前記第3の隙間の寸法の比が1.5~3.5の範囲内の値である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記蓋部材の上面には、下方側から上方側へ向けて次第に開口径が大きくなるテーパー面を有する凹部が形成され、前記案内部材は、上面側から見てこの凹部の開口を覆うように配置されていることにより、前記案内部材と前記凹部との間に形成される空間内に、前記パージガスの渦を形成する、請求項1ないし5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記案内部材の外縁は、前記凹部の開口の縁部よりも外方位置に配置されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
基板に成膜を行う方法であって、
真空雰囲下で基板の表面に反応ガスを供給して成膜処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記基板が載置されると共に、当該基板を加熱するための加熱部が設けられた載置台と、
前記載置台を下面側から支持した状態で上下方向に伸びるように設けられ、前記処理容器に設けられた貫通口を通って外部の昇降機構に接続された昇降軸と、
前記処理容器と、前記昇降機構との間に設けられ、前記昇降軸の周囲を覆うケーシングと、
前記昇降軸の側周面との間に隙間を介して当該昇降軸を囲むように配置され、その下方側空間と上方側空間との連通が前記隙間以外の部位においては阻止されるように全周に亘って前記処理容器に取り付けられた蓋部材と、
前記処理容器内へ向けて開口する前記隙間の端部と対向する位置に配置され、気体の流れ方向を案内するための案内面が形成された案内部材と、を備えた装置を用い、
前記載置台に載置された基板を加熱する工程と、
前記基板の加熱が行われている期間中、前記ケーシング内にパージガスを供給する工程と、
前記ケーシングに供給された前記パージガスが、前記隙間を介して前記処理容器へと流れ込んだ後、前記載置台の裏面へ向かう方向から逸れて流れるように、前記案内部材の案内面により前記パージガスの流れを案内する工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に成膜を行う装置及び基板に成膜を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である例えば半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と記載する)に成膜を行う手法として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、ALD(Atomic Layer Deposition)法が知られている。特許文献1には、基板処理チャンバ内に、基板を受容する受容面を備えたプレートに基板を設け、CVD法により成膜処理を行う成膜装置が記載されている。また特許文献2には、処理容器内に配置された載置台上にウエハを載置して、ALD法により成膜処理を行う成膜装置が記載されている。これらは、処理対象のウエハに対して1枚ずつ成膜を行う枚葉式の成膜装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平9-509534号公報
【特許文献2】国際公開第2014/178160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、加熱部により加熱された載置台に基板を載置して成膜処理を行うにあたり、成膜処理の面内均一性を改善することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、基板に成膜を行う装置であって、
真空雰囲下で基板の表面に反応ガスを供給して成膜処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記基板が載置されると共に、当該基板を加熱するための加熱部が設けられた載置台と、
前記載置台を下面側から支持した状態で上下方向に伸びるように設けられ、前記処理容器に設けられた貫通口を通って外部の昇降機構に接続された昇降軸と、
前記処理容器と、前記昇降機構との間に設けられ、前記昇降軸の周囲を覆うケーシングと、
前記昇降軸の側周面との間に隙間を介して当該昇降軸を囲むように配置され、その下方側空間と上方側空間との連通が前記隙間以外の部位においては阻止されるように全周に亘って前記処理容器に取り付けられた蓋部材と、
前記ケーシング内にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記処理容器内へ向けて開口する前記隙間の端部と対向する位置に配置され、前記ケーシングに供給された前記パージガスが、前記隙間を介して前記処理容器へと流れ込んだ後、前記載置台の裏面へ向かう方向から逸れて流れるように案内する案内面が形成された案内部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、加熱部により加熱された載置台に基板を載置して成膜処理を行うにあたり、成膜処理の面内均一性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の基板に成膜を行う装置の一実施形態を示す縦断側面図である。
【
図2】前記装置を構成する処理容器に設けられた蓋部材と案内部材等を示す分解斜視図である。
【
図3】前記装置を構成する処理容器とベローズとの接続部における縦断側面図である。
【
図5】案内部材が設けられていない比較例の作用を示す縦断側面図である。
【
図6】載置台に載置された基板の温度分布を示す平面図である。
【
図8】案内部材のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<成膜装置>
本開示の実施形態に係る、基板に成膜を行う装置(以下、「成膜装置」と記載する)の構成について、
図1を参照して説明する。成膜装置1は、成膜対象であり、例えば直径が300mmの円形のウエハ10の表面に、真空雰囲気下で反応ガスを供給して成膜処理を行う装置として構成されている。
図1に示すように、成膜装置1は、例えばアルミニウム等の金属により構成され、平面形状が概ね円形の処理容器2を備えている。処理容器2の側面には、外部の図示しない真空搬送室との間でウエハ10の受け渡しを行うための搬入出口22が、ゲートバルブ23により開閉自在に設けられている。
【0009】
搬入出口22よりも上方には、縦断面形状が角型の排気ダクト24が、処理容器2の本体を構成する側壁211の上に積み重なるように設けられている。排気ダクト24の内周面は、その周方向に沿って処理容器2内に向けてスリット状に開口しており、排気ダクト24の外壁面には排気口25が形成されている。この排気口25には、排気路261を介して、真空ポンプや圧力調節バルブ等からなる排気機構26が接続され、処理容器2内が真空雰囲気に設定されるように構成されている。排気ダクト24の上面には、円形の開口を塞ぐように円板状の天板27がOリング272を介して設けられている。
【0010】
<載置台>
処理容器2内の排気ダクト24の内側の位置には、ウエハ10が載置される載置台3が配置されている。載置台3は、ウエハ10よりも一回り大きい円板からなり、例えばセラミックスや金属により構成されている。載置台3の内部には、ウエハ10を加熱するための加熱部31が埋設され、載置台3の側方には、載置台3の側周面を囲むカバー部材32が設けられている。
【0011】
また、カバー部材32と、処理容器2の側壁211との間にはインナーリング33が設けられ、これにより、処理容器2の内部が、載置台3の上方の空間11と、載置台3の下方のボトムエリア12とに区画される。これらカバー部材32とインナーリング33との間には、ボトムエリア12内の雰囲気を排気ダクト24に連通させるための通流路34が形成されている。
載置台3の下方には、ウエハ10の受け渡し時に、ウエハ10を下面側から支持して持ち上げる複数の支持ピン28が、昇降機構281により昇降自在に設けられている。
図1中符号35は、支持ピン28用の貫通孔を指している。
【0012】
<昇降軸及び昇降機構>
載置台3の下面中央には、処理容器2の底面を貫通し、上下方向に伸びる棒状の昇降軸41が接続され、処理容器2の外部には、昇降軸41を上下方向に移動させる昇降機構4が設けられている。昇降機構4は、処理容器2の下方に水平に配置され、昇降軸41の下端が接続される昇降板42と、シリンダロッド43と、モーター44とを備えている。こうして、載置台3は、昇降機構4により、ウエハ10への成膜が行われる処理位置(
図1に示す位置)と、この処理位置の下方であって、搬入出口22を介して外部の図示しない搬送機構との間でウエハ10の受け渡しを行う受け渡し位置との間で昇降自在に構成される。
【0013】
<貫通口及びケーシング>
図1、
図3に示すように、処理容器2の底面212には、昇降軸41を通すための貫通口20が形成されている。また、処理容器2と昇降機構4との間、例えば、貫通口20の口縁と昇降板42との間には、昇降機構4の周囲を覆うケーシングが設けられている。この例におけるケーシングは、処理容器2内の雰囲気を外部と区画し、昇降板42の昇降動作に伴って伸び縮みするベローズ45よりなり、このベローズ45は昇降軸41の周囲を側方から覆うように取り付けられている。
【0014】
<シャワーヘッド>
処理容器2における天板27の下面には、載置台3に載置されるウエハ10と対向するように、シャワーヘッド5が配置されている。このシャワーヘッド5は、ガス拡散空間51を備え、その下面には多数のガス吐出口52が分散して形成されている。シャワーヘッド5には、天板27に形成されたガス導入路271を介してガス供給系6からガスが供給される。また、シャワーヘッド5の外縁は下方に伸び、カバー部材32との間に排気用の開口53を形成すると共に、載置台3とシャワーヘッド5の間に処理空間13を形成するように構成されている。こうして、載置台3の上面は処理空間13、載置台3の下面はボトムエリア12に、夫々晒されている。
【0015】
<ガス供給系>
ガス供給系6について、ウエハ10にタングステン膜(W膜)を成膜する場合を例にして説明する。この例の成膜装置1は、反応ガスとして、2種類のガスを交互に処理容器2に供給し、ALD法によりW膜を成膜するように構成されている。反応ガスとしては、Wを含む原料ガスと、水素を含む還元性の反応ガス(還元ガス)を用いることができる。
【0016】
原料ガスとしては、例えば五塩化タングステン(WCl5)ガスが用いられ、WCl5の供給源61が原料ガス供給路611、ガス導入路271を介してシャワーヘッド5に接続されている。
還元ガスとしては、例えば水素ガス(H2ガス)が用いられ、H2ガスの供給源62が反応ガス供給路621、ガス導入路271を介してシャワーヘッド5に接続されている。
【0017】
原料ガス供給路611及び反応ガス供給路621には、夫々ガスの給断を行うバルブV1、V2と、ガス供給量の調整を行う流量調整部612、622と、貯留タンク613、623とが設けられている。WCl5ガス及びH2ガスは、夫々貯留タンク613、623に一旦貯留され、これら貯留タンク613、623内にて所定の圧力に昇圧された後、処理容器2内に供給される。
【0018】
また、原料ガス供給路611及び反応ガス供給路621は、夫々置換ガス供給路631、641を介して置換ガスの供給源63、64に接続されている。置換ガスとしては、窒素ガス(N2ガス)やアルゴンガス(Arガス)等の不活性ガスを用いることができる。置換ガス供給路631、641は、夫々流量調整部632、642及びガス給断用のバルブV3、V4を備えている。
【0019】
<蓋部材>
図1及び
図3に示すように、貫通口20には、昇降軸41を囲むように蓋部材71が配置されており、この蓋部材71は、処理容器2と昇降軸41との間に、貫通口20を塞ぐように挿入されている。また、蓋部材71とベローズ45との間には筒状部材72が配置され、さらに、処理容器2の底面212には、これら蓋部材71、筒状部材72を支持するリング部材73が設けられている。
【0020】
蓋部材71は、処理容器2の底面212に設けられた貫通口20と、昇降軸41との間の空間を塞ぐ筒状の部材である。
図2にも示すように、蓋部材71の本体を成す円筒部材711の上端にはフランジ712が形成されており、蓋部材71はこのフランジ712の下面をリング部材73に係止させて貫通口20と昇降軸41との間に配置される。フランジ712の上面は、略水平に形成されている。
【0021】
この例における蓋部材71は、円筒部711の下部が、厚さ寸法の小さいスリーブ710として形成されている。円筒部711の内周面とスリーブ710の内周面は連続しており、これらにより蓋部材71の内周面が形成される。
また、蓋部材71の上面は、下方側から上方側へ向けて次第に開口径が大きくなるテーパー面713を有する凹部714を備えている。この凹部714は、蓋部材71の中央に形成され、昇降軸41から離れるにつれて開口径が大きくなり、開口の縁部715(テーパー面713の上縁)がフランジ712に接続されるように形成される。
【0022】
図3に示すように、蓋部材71は、昇降軸41の側周面と蓋部材71(円筒部711、スリーブ710)の内周面との間に、第1の隙間81を形成するように配置されていることにより、昇降軸41は蓋部材71の内側を上下方向に移動自在に構成されている。
この蓋部材71は、その下方側空間(ベローズ45内の空間)と上方側空間(処理容器2内の空間)との連通が、前記第1の隙間81以外の部位においては阻止されるように全周に亘って処理容器2に取り付けられている。
【0023】
筒状部材72は、円筒状の本体721の上端にフランジ722を設けた構造となっており、フランジ722をリング部材73に係止させることにより、蓋部材71と、ベローズ45との間に配置される。
図3に示すように、筒状部材72は、蓋部材71、筒状部材72を所定位置に配置したとき、筒状部材72の下端が蓋部材71(スリーブ710)の下端よりも下方に位置する高さ寸法となっている。
【0024】
リング部材73は、処理容器2の底面212上の貫通口20の周囲に配置、固定され、蓋部材71及び筒状部材72のフランジ712、722を係止させて、これら蓋部材71及び筒状部材72を支持するように構成されている。リング部材73の上面側内周縁には、リング部材73の上面と蓋部材71のフランジ712の下面との間に、筒状部材72のフランジ722を嵌め込んで固定するための段差731が形成されている。
【0025】
<パージガス供給部>
また、成膜装置1は、
図1及び
図3に示すように、ベローズ45内にパージガスを供給するパージガス供給部74を備えている。リング部材73の下面には、ベローズ45の内側にパージガスである不活性ガス、例えばN
2ガスを供給するための図示しない溝部が形成されている。この溝部が形成されたリング部材73を処理容器2の底面212上に固定することにより、これら溝部と処理容器2とで囲まれた空間がパージガス流路741となる。
【0026】
パージガス流路741の基端側に設けられたポート部742は、処理容器2に形成されたパージガス供給路213に接続され、
図1に示すようにこのパージガス供給路213は配管651を介してパージガス供給源65に接続されている。この配管651にはガス給断用のバルブV5と流量調整部652とが設けられている。
【0027】
パージガス流路741の末端には、リング部材73の内周面に向けて開口する例えば4個のパージガス吐出孔743(
図2参照)が設けられている。これらのパージガス吐出孔743は、リング部材73の内周面の周方向に沿ってほぼ等間隔に配置される。
パージガス供給源65やパージガス供給路213、パージガス流路741、パージガス吐出孔743等は、本実施の形態のパージガス供給部4を構成している。
【0028】
パージガス供給部74は、ベローズ45を介して処理容器2のボトムエリア12にパージガスを供給する。
図3を参照して、ベローズ45内のパージガスの流れを簡単に説明すると、パージガス吐出孔743からベローズ45内に供給されたパージガスは、破線矢印にて示すように、筒状部材72の外周面とベローズ45の内周面との間に形成された隙間内を上から下へ向けて流れる。次いで、パージガスは筒状部材72の下端に到達し、ベローズ45の内側の空間内に広がると共に、昇降軸41と蓋部材71との間に形成された第1の隙間81内に流入する。そして、第1の隙間81内を上へ向けて通流して、後述するように処理容器2に流れ込み、ボトムエリア12内に広がる。このようにボトムエリア12にパージガスを供給することによって、シャワーヘッド5から供給された反応ガスが通流路34を介してボトムエリア12に侵入することを抑制し、載置台3の裏面への反応ガスの回り込みを抑えている。
【0029】
<案内部材>
図1~
図3に示すように、ボトムエリア12における、蓋部材71と載置台3との間には、パージガスの流れを案内する案内面を備えた案内部材9が設けられている。案内部材9は、処理容器2内へ向けて開口する第1の隙間81の端部811と対向する位置に配置され、案内面は、パージガスを、載置台3の裏面へ向かう方向から逸れて流れるように案内する役割を果たしている。第1の隙間81の端部811とは、
図3に示すように、第1の隙間81の上端であり、昇降軸41の側周面と蓋部材71の内周面との間に形成された環状の開口である。案内部材9は、この端部811の上方側の位置に配置されていることにより、当該端部811と対向した状態となる。
【0030】
案内部材9は、
図2に示すように、環状の部材により構成されている。この例では、環状の部材は厚みが揃った板状部材よりなり、その下面が案内面91を成している。案内部材9の中央の開口部92は、昇降軸41を貫通させる領域を形成しており、案内部材9(開口部92の内周面)は、昇降軸41の側周面との間に形成される第2の隙間82を介して、蓋部材71の上方位置にて昇降軸41を囲むように配置される。
【0031】
また、案内部材9は、その内縁(開口部92の内周面)が、蓋部材71の内周面よりも昇降軸41側に寄った位置に配置されている。従って、昇降軸41の側周面と案内部材9の内縁との間に形成される第2の隙間82の寸法L2(
図4参照)は、昇降軸41の側周面と蓋部材71との間に形成される第1の隙間81の寸法L1よりも小さくなるように形成されている。これによって、第1の隙間81から上方に向かうパージガスは第2の隙間82を通過する際の圧力損失が大きくなり、当該パージガスが載置台3の裏面に向かって流れることが抑制される。
【0032】
例えば第2の隙間82の寸法L2に対する、第1の隙間81の寸法L1の比(L1/L2)は0.5~2.5の範囲内の値、好適には、1よりも大きく2.5以下の範囲内の値に設定されている。寸法L2を小さくし過ぎると、成膜装置1の組み立て時に、昇降軸41の周方向に沿って均一な第2の隙間82を形成する位置調節が難しくなる。一方、寸法L2を大きくし過ぎると、案内部材9の作用が働きにくく、第2の隙間82を通過するパージガスの量が増加するおそれがある。但し、寸法L1、寸法L2は成膜処理の種別や成膜装置のサイズ、後述する第3の隙間の寸法L3を考慮して設定され、夫々の寸法の一例を挙げると、第1の隙間81の寸法L1は1mm~5mm、第2の隙間82の寸法L2は2mmである。
【0033】
また、案内部材9は、上面側から見て、蓋部材71の凹部714の開口を覆うように設けられ、案内部材9の外縁は、凹部714の開口の縁部715よりも外方位置に配置されている。この例において、案内部材9の外縁近傍の領域は、凹部714の外方に形成されたフランジ712の上面と対向するように設けられる。こうして、案内部材9の下面(案内面)91と、蓋部材71の凹部714との間には、
図3及び
図4に示すように、縦断面形状が略三角形の環状の空間716が形成される。
【0034】
さらに、案内部材9は、蓋部材71の上面との間に、パージガスが通流する隙間(第3の隙間)83を形成するように、蓋部材71の上方位置に配置されている。この第3の隙間83は、平面的に見て、案内部材9が蓋部材71(フランジ712)と重なる位置にて、案内部材9の下面と蓋部材71(フランジ712)の上面との間に形成される隙間である。第3の隙間83の寸法L3は、前記第2の隙間の寸法L2よりも大きくなるように設定されている。こうして、パージガスは、第2の隙間82よりも圧力損失の小さな第3の隙間83を介して流れて行きやすくなる。この構成により、パージガスは、案内部材9の案内面91に案内され、処理容器2の底面212に沿って横方向に向けて流れることになる。
【0035】
例えば第2の隙間82の寸法L2に対する、第3の隙間83の寸法L3の比(L3/L2)は、1.5~3.5の範囲内の値に設定されている。この比は、パージガスの流量や成膜処理の種別等に応じて設定されるが、前記の範囲の上限を越えると、パージガスの流れ方向を規制する案内部材9の作用が弱まるおそれがある。一方、L3/L2の値が前記範囲の下限を下回ると、第2の隙間82、第3の隙間83を流れる際の圧力損失の差異が小さくなり、第2の隙間82を介してボトムエリア12に流れ込むパージガスの割合が増加する懸念がある。このため、L3/L2の値は、既述の範囲内の値に設定することが好ましい。夫々の寸法の一例を挙げると、第2の隙間82の寸法L2は2mm、第3の隙間83の寸法L3は5mmである。また、第1、第2及び第3の隙間81、82、83の寸法L1、L2、L3の関係を纏めると、L2<L1<L3となることが好ましい。
【0036】
このような案内部材9は、
図1及
図2に示すように、案内部材9と蓋部材71のフランジ712とが対向する領域において、例えば棒状の支持部材93により蓋部材71の上面に取り付けられている。例えば支持部材93は複数個設けられており、蓋部材71の周方向の複数箇所に、周方向に等間隔に配置されている。案内部材9の大きさや、第1の隙間81、第2の隙間82、第3の隙間83の寸法L1、L2、L3は、処理容器2やボトムエリア12、載置台3や昇降軸41の大きさ、成膜処理の種別等に応じて適宜設定される。
【0037】
<制御部>
図1に示すように、成膜装置1を構成する各部の動作を制御する制御部100を備えている。この制御部100は、例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には、後述するW膜の成膜を行うために必要な制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記憶されている。プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード、不揮発性メモリ等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0038】
<成膜装置におけるW膜の成膜>
続いて、以上に説明した構成を備えた成膜装置1を用いてW膜の成膜処理を行う方法について説明する。
先ず、予め処理容器2内を真空雰囲気に減圧した後、載置台3を受け渡し位置まで降下させ、図示しない外部の搬送機構と支持ピン28との協働作業により、加熱部31によって成膜温度に加熱された載置台3上にウエハ10を載置する。反応ガスとしてWCl5ガスとH2ガスを用いたW膜の成膜処理では、成膜温度は約450℃前後の温度である。また、パージガス供給部74からはベローズ45内へ4.5リットル/分~28リットル/分の範囲内の28リットル/分の流量でパージガス(N2ガス)を供給する。
【0039】
載置台3上にウエハ10が載置されると、ゲートバルブ23を閉じ、載置台3を処理位置まで上昇させて処理空間13を形成すると共に、処理容器2内の圧力調整を行う。
成膜装置1内は、排気機構26により排気ダクト24を介して排気されているので、処理空間13内の雰囲気は、シャワーヘッド5とインナーリング32との間に形成された開口53を介して排気ダクト24へ流入し、成膜装置1の外部に排気される。一方、成膜装置1内のボトムエリア12の雰囲気も、排気機構26の排気より、通流路34を介して排気ダクト24から排気される。
【0040】
次いで、成膜温度まで加熱されたウエハ10の表面に、ガス供給系6及びシャワーヘッド5を介してWCl5ガス→N2ガス→H2ガス→N2ガスの順に反応ガス(WCl5ガス、H2ガス)と置換用のガス(N2ガス)との供給を繰り返す。この結果、ウエハ10に吸着した2種類の反応ガスが互いに反応してタングステンの分子層が形成され、この分子層が積層されてタングステン膜(W膜)が成膜される。
こうして、上述の反応ガスや置換ガスの供給サイクルを数十回~数百回程度繰り返し、目的の膜厚のW膜を成膜する。この後、ガスの供給を停止し、載置台3を受け渡し位置まで降下させ、ゲートバルブ23を開いてウエハ10を取り出す。
【0041】
続いて、パージガスの流れについて説明する。パージガス吐出孔743からベローズ45内に流れ込んだパージガスは、既述のように、ベローズ45の内側の空間全体に広がると共に、昇降軸41と蓋部材71との間に形成された第1の隙間81内に流入する。ここで、原料ガス中のWCl5は拡散しやすい性質を持ち、通流路34を介して排気ダクト24へと流入するパージガスの流れに抗して、WCl5分子の一部が拡散によりボトムエリア12内に進入してしまう場合がある。ボトムエリア12に進入したWCl5分子は、載置台3の裏面側で分解し、堆積物が形成されると、載置台3の熱容量が面内で不均一となり、加熱部31によるウエハWの均一な加熱が阻害されるおそれがある。ウエハWの加熱温度が面内で不均一になると、W膜の膜厚の面内均一性も低下してしまうおそれがある。
【0042】
そこで、本例の成膜装置1は、WCl
5分子の拡散に伴う、載置台3の裏面への堆積物の形成を抑えるため、従来流量の6倍程度の28リットル/分の比較的大流量でパージガスの供給を行う。このような大流量のパージガスは、隙間寸法L1の狭い第1の隙間81内を上方(載置台3)に向けて大きな流速で勢いよく流れる。そしてパージガスは、第1の隙間81の端部811から上方に向けて噴出するが、パージガスの噴出する位置には案内部材9が配置されている。このため、パージガスは案内部材9の下面(案内面)に衝突し、
図4に破線の矢印にて示すように、案内部材9の案内面91に沿って、横方向に流れの向きを変えて第3の隙間83を通流していく。
【0043】
ここで、昇降軸41と案内部材9との間にも第2の隙間82が形成されているが、第2の隙間82の寸法L2は第3の隙間83の寸法L3よりも小さく設定されている。また、第3の隙間83の寸法L3は、第1の隙間81の寸法L1、第2の隙間82の寸法L2よりも大きくなるように形成されている。
従って、第2の隙間82は第3の隙間83よりも圧力損失が大きく、パージガスが流れにくい。このため、パージガスの大部分については第1の隙間81から第3の隙間83へ向かう流れが形成されやすい。この結果、パージガスは、載置台3の裏面へ向かう方向から逸れて横方向に進路を変え、処理容器2の底面212に沿ってボトムエリア12に流れ込む。そして、パージガスは、ボトムエリア12内において緩やかに流れ方向を変えながら、通流路34を介し排気ダクト24に向けて通流していく。なお、一部のパージガスが第2の隙間82を通過したとしても、その流量はごく僅かであって、流れの勢いが弱められたものとなっている。
【0044】
さらに、案内部材9の案内面91に衝突したパージガスの一部は、案内部材9と凹部714との間に形成される空間716内に向けて流れ方向を変えて渦を形成する。渦を形成したパージガスは、凹部714のテーパー面713に沿って下向きに流れ、次いで、昇降軸41の側周面に沿って上昇し、再び案内部材9に到達する。パージガスは、この渦の形成により、より一層流れの勢いが弱められ、流速が小さくなった状態でボトムエリア12へ流れ込む。以上に説明した作用により、第3の隙間83を通流するときのパージガスの流速は、第1の隙間81を通流するときのパージガスの流速よりも小さく、ボトムエリア12に流れ込むときの流速はさらに小さくなって行く。
【0045】
本願の発明者らが、パージガスの供給流量を28slmに設定した場合について流体シミュレーションを行ったところ以下のようなパージガスの流れを確認した。即ち、パージガスは、第3の隙間83端部から処理容器2の底面212に沿って、横方向にボトムエリア12に流れ込む。しかる後、第3の隙間83と比較して広い空間に進入したパージガスは、流速が低下すると共に緩やかに流れ方向を変え、既述の通流路34へ流れて行くことが認められた。また、第3の隙間83を通流するときの流速は、第1の隙間81を通流するときの流速の1/5程度に減少しており、ボトムエリア12内に拡散するときの流速は、さらに小さいことが確認された。
【0046】
このように、パージガスが処理容器2のボトムエリア12に流れ込んで行く際の流速は小さいが、パージガスは大流量で供給されているので、ボトムエリア12はパージガスで満たされ、処理空間13よりも圧力が上昇した状態となる。これにより、成膜処理の期間中、パージガスが狭い通流路34を通過する際の流速を上げ、WCl5が通流路34を介してボトムエリア12に進入することを抑制できる。従って、載置台3の裏面への反応ガスの回り込みが抑えられ、載置台3の裏面への堆積物の形成が抑制される。
【0047】
上述の実施形態によれば、ベローズ45内に供給されたパージガスが、昇降軸41と蓋部材71との間に形成された第1の隙間81を介して、処理容器2内に流れ込んだ後、案内部材9により載置台3の裏面へ向かう方向から逸れて流れるように案内される。
【0048】
このため、第1の隙間81から噴出したパージガスが昇降軸41に沿って上方に流れ、載置台3の裏面に衝突することが抑制される。これにより、パージガスが衝突した位置にて載置台3の温度が低下することが抑制され、載置台3の加熱状態の面内均一性の低下を抑えることができる。この結果、載置台3に載置されたウエハ10は、加熱部31により面内において良好な均一性を持って加熱されるので、成膜処理の面内均一性が維持され、ウエハWに形成されるW膜の膜厚や膜質の面内均一性も良好となる。
【0049】
ここで、比較形態として、案内部材9を備えない構成について、
図5を参照して説明する。この場合には、大流量のパージガスが、隙間寸法L1の狭い第1の隙間81を高速で流れた後、破線にて示すように、第1の隙間81の端部811から上方に向けて勢いよく噴出する。そして、噴出したパージガスは、高い流速を維持したまま、載置台3の裏面に到達するため、載置台3の裏面では、その一部領域に集中してパージガスが衝突する状態となる。パージガスは載置台3に比べて温度が低いため、パージガスが衝突した領域では、パージガスにより熱が奪われて温度が低下する。このため、載置台3の面内において局所的に温度が低い領域が形成され、載置台3の過熱状態の面内均一性が悪化する。この結果、ウエハ10の面内の温度分布にばらつきが発生し、成膜処理が面内において不均一に進行することになる。
【0050】
半導体デバイスの微細化に伴い、アスペクト比の高い凹部に膜を埋め込むため、反応ガスの流量を増加する傾向がある。この場合、載置台3の裏面への反応ガス分子の回り込みを抑制するために、処理容器2のボトムエリア12に供給されるパージガスの供給流量を従来の流量から6~7倍程度増量することが行われる。既述のように反応ガス分子の回り込みによって載置台3の裏面に堆積物が形成されると、載置台3の加熱むら生じ、載置台3の温度の面内均一性が悪化するためである。しかしながら、
図5を用いて説明したように、何らの対策も講じずにパージガスの流量を増加すると、パージガスによって載置台3の温度の面内均一性が低下するという問題が顕在化する。
【0051】
また、載置台3の裏面への堆積物の形成の影響を受けるほど、精密な温度調節が必要な成膜処理においては、ウエハ10のわずかな温度変化が膜厚や膜質に与える影響が大きい。このため、成膜処理の面内均一性を維持するために、ウエハ温度について高い面内均一性が要求される処理もある。従って、昇降軸41と蓋部材71との隙間(第1の隙間81)を介してパージガスを供給する構成において、パージガスの流量を増加しつつ、載置台3の温度について高い面内均一性を確保できる技術は、成膜処理の面内均一性を改善するために有効である。
【0052】
この点、
図1~
図4を用いて説明した成膜装置1の構成では、パージガスが、第3の隙間83から横方向に、低速でボトムエリア12内に流れ込むようにすることができる。このため、大流量のパージガスを供給する場合であっても、パージガスが高速で載置台3に衝突する流れの形成を抑制し、載置台3の加熱状態の面内均一性を維持することができる。
【0053】
また、成膜装置2を構成する部材は、公差の範囲内で加工誤差を有していることから、昇降軸41と蓋部材71との間に形成される第1の隙間81の寸法L1が周方向に揃わない場合もある。この場合に、不均一な第1の隙間81から噴出したパージガスが載置台3の裏面に衝突すると、当該パージガスが衝突する領域を周方向に沿って見ても、パージガスの衝突量の不均一が生じる。この結果、載置台3の加熱状態の面内均一性がさらに低下してしまう。
【0054】
この点、本開示の成膜装置1では、案内部材9を設けることにより、第1の隙間81から噴出したパージガスが載置台3の裏面に衝突することが避けられる。このため、寸法L1が周方向に不均一に形成されていたとしても、第1の隙間81からパージガスが不均一に噴出することが、載置台3の温度の面内均一性に影響を与えるおそれは小さい。
【0055】
<評価試験>
続いて、載置台温度の評価について
図6を参照して説明する。
図1に示す成膜装置1において、処理容器2内にパージガス供給部74からパージガスであるN
2ガスを28slmの流量で供給した。また、加熱部31により440℃に加熱された載置台3に対し、温度検出機能を備えたウエハを載置して、ウエハ温度の検出を行った。温度検出機能を備えたウエハでは、ウエハ面内の121箇所の温度が検出できる構成となっている。案内部材9は
図1~
図3を用いて説明した構成とし、第1の隙間81の寸法L1は2mm、第2の隙間82の寸法L2は2mm、第3の隙間83の寸法L3は5mm、処理容器2内の圧力は45Paとした(実施例)。また、案内部材9を備えない構成においても同様の評価を行なった(比較例)。
【0056】
実施例の結果を
図6(a)、比較例の結果を
図6(b)に夫々示す。実際の測定結果は、ウエハの異なる温度範囲に異なる色彩を割り当てたカラー画像となっているが、
図6には当該から画像をグレースケール変換した結果を示してある。同図中には、最も温度が高い高温領域101と、最も温度が低い低温領域102とに各々符号を付してある。
【0057】
図6(a)の実施例の結果を見ると、ウエハの中心は低温領域101、周縁は高温領域102となっており、ウエハの面内温度はほぼ同心円状に同じ温度が変化し、温度のばらつきが小さいことが認められた。成膜処理では、ウエハの温度分布は同心円状となることが好ましいため、成膜処理に適した温度分布が形成されることが確認された。
一方、
図6(b)の比較例の結果からは、局所的に高温領域101と、低温領域102とが存在し、同心円状の温度分布にはならず、周方向に沿って不均一な温度分布が形成されている。また、ウエハ面内における温度差も大きい。
【0058】
実施例及び比較例の結果から、案内部材9の有無により、ウエハの面内温度の均一性が大きく異なり、案内部材9を設けることにより、ウエハの面内温度の均一性が改善できることが理解される。また、
図6(b)の結果では、局所的に低温領域102が存在するため、パージガスが到達した載置台3の裏面では温度が低下し、載置台温度がそのままウエハに反映されることが認められた。さらに、
図6(b)の結果を見ると、低温領域102がウエハ10の片側に集中していることが分かる。既述のように、昇降軸41と蓋部材71との取り付けの公差により、パージガスの吹き出し量が周方向に不均一になり、これが載置台温度を介してウエハの温度に反映され、ウエハに偏った温度分布が形成されるものと推察される。
【0059】
一方、同じ成膜装置1にて、案内部材9を設けた構成では、
図6(a)に示すように、ウエハ温度の面内均一性は改善されている。このことから、案内部材9を設けることによって、仮に昇降軸41と蓋部材71との取り付けの公差により、パージガスの吹き出し量が周方向に不均一になる場合でも、載置台温度へ影響を与えるおそれが小さいことが理解される。
【0060】
また、実施例及び比較例について、パージガスの流体シミュレーションを行なった。これらのシミュレーション結果は、
図4、
図5を用いて説明したパージガスの流れと同様であった。即ち、実施例の構成では、第3の隙間83を流れるパージガスの流速は小さく、ボトムエリア12ではその流速がさらに低下して、載置台3の裏面におけるパージガスの流速は0.3m/s程度であった。一方、比較例の構成では、第1の隙間81を介して、載置台3に向けて大きな流速でパージガスが噴出するため、載置台3の裏面に衝突するパージガスの流速は最大で6m/s程度であった。このように、流体シミュレーションの結果からも、案内部材9を設けることで、載置台3の裏面近傍のパージガスの流速が小さくなり、載置台3の温度へほとんど影響を与えないことが認められる。
【0061】
さらに、実施例の構成及び比較例の構成において、載置台3にウエハ10を載置し、反応ガスとしてWCl5ガス及びH2ガス、置換ガスとしてN2ガスを用い、上述の手法でW膜を成膜し、膜厚の面内均一性を求めた。夫々複数枚のウエハに対して成膜を行い、その平均膜厚は29Åとした。その結果、実施例の膜厚の面内均一性は3.6%であるのに対し、比較例は4.5%であり、実施例の構成によって膜厚の面内均一性が改善されることが認められた。また、載置台3裏面に対しての成膜は目視では認められず、ボトムエリア12へのパージガスの供給により、反応ガスの載置台3裏面への回り込みが抑制されることが確認された。
実施例は、第1の隙間81と第2の隙間82を同じ寸法に設定したが、比較例に比べて、ウエハの面内温度や膜厚の面内均一性が改善されている。従って、第1の隙間81の寸法L1を第2の隙間82の寸法L2よりも小さく設定する場合には、ウエハの面内温度や膜厚の面内均一性のさらなる改善を見込むことができる。
【0062】
以上に説明した実施形態において、案内部材の案内面は、必ずしも蓋部材71のフランジと対向するように配置する必要はない。例えば
図7及
図8に示すように、環状の板状部材により構成された案内部材94、95を蓋部材71に対して傾斜するように配置してもよい。
図7に示す例は、案内部材94の内縁よりも外縁の高さ位置が高くなるように配置した例である。また、
図8に示す例は、案内部材95の内縁よりも外縁の高さ位置が低くなるように配置した例である。これらの場合には、案内部材94、95の下面と蓋部材71の上面との最も接近した部位の寸法が第3の隙間の寸法L3となる。このように案内部材94、95を配置しても、第1の隙間81を介して処理容器2に流れ込んだパージガスは、図中に破線にて示すように、案内部材94、95の案内面により、載置台3の裏面に向かう方向から逸れて流れるように案内される。
【0063】
また、案内部材は、必ずしも環状の部材には限らない。小片状の部材を昇降軸41の周囲を囲むように、蓋部材71の上方位置に並べて配置し、それらの裏面の集合により案内面を構成するようにしてもよい。小片状の部材同士の隙間を小さくすることにより、圧力損失を大きくし、これらの隙間を介して載置台3へ向かうパージガスの流れの勢いを低減して、パージガスの流れを側方に案内することができるからである。
【0064】
さらに、案内部材を環状の部材により構成する場合には、案内部材を板状に形成する必要はなく、厚みが径方向に変化する部材であってもよいし、案内部材の下面に形成される案内面は曲面であってもよい。また、案内部材の外縁が、蓋部材71の凹部714の開口の縁部715よりも内方位置に配置される構成であってもよい。これらの場合においても、案内部材の下面と、蓋部材71の上面との間に形成される第3の隙間において、最も両者が接近した部位の寸法が第3の隙間の寸法L3となる。これらの案内部材では、パージガスの流れ方向を載置台3の裏面へ向かう方向から逸れて流れるように案内することができるので、結果として載置台3の温度の高い面内均一性を確保し、成膜処理の面内均一性を改善することができる。
【0065】
さらに、ケーシングはベローズ45には限定されず、例えば昇降機構4全体を囲む筐体により構成してもよい。さらにまた、蓋部材71の上面には、必ずしも凹部714を形成する必要はない。また、凹部714を形成する場合であっても、上述の構成のテーパー面713を有する凹部714であることには限定されず、例えば縦断面が矩形状の切り欠きであってもよい。
【0066】
さらにまた、成膜装置に反応ガスを供給する構成はシャワーヘッドに限らず、単一の開口であってもよい。このほか、成膜装置において、ウエハの表面に成膜を行う手法は、ALD法に限られるものではない。CVD法を実行する成膜装置にも本発明は適用することができる。CVDやALDの実施に当たっては、反応ガスの活性化手段としてプラズマを用いてもよい。
【0067】
また、上述の成膜装置1にてW膜を成膜する場合、原料ガスとしては、WCl5ガス以外に六塩化タングステン(WCl6)ガスを用いることができ、還元ガスとしては、H2ガス以外にモノシラン(SiH4)ガス、ジボラン(B2H6)ガス、アンモニア(NH3)ガス、ホスフィン(PH3)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガスを用いることができる。
【0068】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 成膜装置
10 半導体ウエハ
2 処理容器
20 貫通口
3 載置台
31 加熱部
4 昇降機構
41 昇降軸
45 ベローズ
71 蓋部材
74 パージガス供給部
81 隙間(第1の隙間)
9 案内部材
91 案内面