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特開2023-34044積層体の製造方法、硬化パターン形成方法、積層体及び感光性組成物
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  • 特開-積層体の製造方法、硬化パターン形成方法、積層体及び感光性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034044
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、硬化パターン形成方法、積層体及び感光性組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/095 20060101AFI20230306BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230306BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20230306BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20230306BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G03F7/095
G03F7/004 503Z
G03F7/032 501
G03F7/004 501
G03F7/09 501
G03F7/004 512
C08G59/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140105
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】増島 正宏
(72)【発明者】
【氏名】山形 憲一
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
【Fターム(参考)】
2H225AE06P
2H225AE14P
2H225AF23P
2H225AF63P
2H225AF78P
2H225AF79P
2H225AM61N
2H225CA11
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC12
2H225CD05
2H225DA22
2H225DA25
4J036AA01
4J036AA04
4J036AF08
4J036AJ01
4J036AJ09
4J036DA04
4J036DD01
4J036GA26
4J036HA02
4J036JA09
4J036KA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パターンの高アスペクト化が図れ、かつ、支持体から剥がれにくい樹脂硬化膜となり得る積層体の製造方法、及び、当該積層体の最下層を形成する材料として有用な感光性組成物を提供する。
【解決手段】支持体20上に、第1の感光性組成物を用いて第1のレジスト層11を形成する工程と、第1のレジスト層11上に、第2の感光性組成物を用いて第2のレジスト層12を形成する工程とを有する、積層体10の製造方法であって、第1の感光性組成物として、第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物を用いる。第1の感光性組成物には、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、脂環式エポキシ化合物とを含有する感光性組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、第1の感光性組成物を用いて第1のレジスト層を形成する工程と、
前記第1のレジスト層上に、第2の感光性組成物を用いて第2のレジスト層を形成する工程と、
を有する、積層体の製造方法であって、
前記第1の感光性組成物として、前記第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物を用いる、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の感光性組成物は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物とを含有する感光性組成物である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【化1】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【請求項3】
前記第2の感光性組成物は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤とを含有する感光性組成物(但し、前記脂環式エポキシ化合物を含有するものを除く)である、請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記支持体は、ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む基板を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法により製造された積層体を露光する工程と、
前記露光後の積層体を現像して、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを硬化させて硬化パターンを得る工程と、
を有する、硬化パターン形成方法。
【請求項6】
前記硬化パターンは、コイル形状のパターンである、請求項5に記載の硬化パターン形成方法。
【請求項7】
前記硬化パターンは、インダクタにおける絶縁部を構成する、請求項6に記載の硬化パターン形成方法。
【請求項8】
第1のレジスト層と第2のレジスト層との積層体であって、
前記第1のレジスト層は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物とを含む層であり、
前記第2のレジスト層は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤とを含む層(但し、前記脂環式エポキシ化合物を含有するものを除く)である、積層体。
【化2】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【請求項9】
多官能芳香族エポキシ化合物と、
光酸発生剤と、
下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物と
を含有し、
インダクタにおける絶縁部の、支持体と接する層を形成するための感光性組成物。
【化3】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法、硬化パターン形成方法、積層体及び感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子回路の受動素子の一つであるインダクタとして、樹脂硬化膜からなる絶縁部と、銅などのめっき層からなるコイルパターンと、を有する巻線型インダクタが利用されている。
図5は、巻線型インダクタの一例を示す一部断面図である。図5に示す巻線型インダクタ200は、支持体20上に形成されたコイル形状の硬化パターン120と、硬化パターン120のスペースを埋めるめっき層30とからなる。
巻線型インダクタは、支持体上にレジスト層を形成し、このレジスト層に対してフォトマスクを介して選択的に露光し、現像した後に硬化させて、絶縁部となるコイル形状の硬化パターン(樹脂硬化膜)を形成し、次いで、この絶縁部間にめっきを施すことにより製造される。
【0003】
巻線型インダクタの製造に関する技術としては、従来、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に形成され、スパイラル状に巻回されたコイルパターンと、前記第1の絶縁層上に形成され、前記コイルパターンに沿って配置された層内絶縁パターンと、前記コイルパターン及び前記層内絶縁パターンを覆う第2の絶縁層と、を備えたコイル部品の製造方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-136466号公報
【特許文献2】特開2020-136467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気電子部品の多機能化が進み、インダクタにおいては、小型化及び電流容量維持が求められる。かかる要求に応えるためには、インダクタを構成する絶縁部の微細化が必要である。しかしながら、絶縁部の微細化に伴い、絶縁部を形成する硬化パターン(樹脂硬化膜)のアスペクト比が大きくなり、樹脂硬化膜と支持体との接する面積が狭くなる。これに対して、従来の製造方法では、支持体から樹脂硬化膜が剥がれやすく、短絡が起こるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パターンの高アスペクト化が図れ、かつ、支持体から剥がれにくい樹脂硬化膜となり得る積層体及びその製造方法、並びに、当該積層体の最下層を形成する材料として有用な感光性組成物、及び硬化パターンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討により、巻線型インダクタの絶縁部となるコイル形状の硬化パターン(樹脂硬化膜)を形成するに際し、第1のレジスト層と第2のレジスト層との積層体を活用し、支持体と接する第1のレジスト層の材料である第1の感光性組成物の感度を、第1のレジスト層に隣接する第2のレジスト層の材料である第2の感光性組成物の感度よりも高くすることで、支持体と第1のレジスト層との密着性が高められて、支持体からの樹脂硬化膜の剥がれ、硬化パターンの倒れが抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の態様は、支持体上に、第1の感光性組成物を用いて第1のレジスト層を形成する工程と、前記第1のレジスト層上に、第2の感光性組成物を用いて第2のレジスト層を形成する工程と、を有する、積層体の製造方法であって、前記第1の感光性組成物として、前記第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物を用いることを特徴とする、積層体の製造方法である。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る積層体の製造方法により製造された積層体を露光する工程と、前記露光後の積層体を現像して、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを硬化させて硬化パターンを得る工程と、を有することを特徴とする、硬化パターン形成方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1のレジスト層と第2のレジスト層との積層体であって、前記第1のレジスト層は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物とを含む層であり、前記第2のレジスト層は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤とを含む層(但し、前記脂環式エポキシ化合物を含有するものを除く)であることを特徴とする、積層体である。
【0011】
【化1】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【0012】
本発明の第4の態様は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物とを含有することを特徴とし、インダクタにおける絶縁部の、支持体と接する層を形成するための感光性組成物である。
【0013】
【化2】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パターンの高アスペクト化が図れ、かつ、支持体から剥がれにくい樹脂硬化膜となり得る積層体及びその製造方法、並びに、当該積層体の最下層を形成する材料として有用な感光性組成物、及び硬化パターンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】支持体20上に形成された積層体10の一実施形態を示す断面図である。
図2】支持体20上に形成された積層体10を露光する工程(iv)を説明するための模式図である。
図3】露光後の積層体10を現像して、レジストパターン110を形成する工程(v)を説明するための模式図である。
図4】レジストパターン110を硬化させて、樹脂硬化膜10cからなる硬化パターン120を得る工程(vi)を説明するための模式図である。
図5】巻線型インダクタの一例を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、芳香族性を持たない化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合と、の両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0017】
本発明は、インダクタにおける絶縁部を構成し得る、硬化パターンの最下層(支持体と接する層)を形成するための感光性材料に特徴があり、当該最下層以外の構成については公知の技術を適用できる。
図1~4は、インダクタにおける絶縁部を構成する硬化パターンの形成プロセスの一実施形態を説明するための模式図である。
以下、添付の図面を参照しながら、硬化パターンの形成プロセスについて説明する。
なお、図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素を模式的に示している場合があり、構成要素によっては寸法の縮尺を異ならせて示すこともある。
【0018】
(積層体の製造方法)
本発明の第1の態様は、支持体上に、第1の感光性組成物を用いて第1のレジスト層を形成する工程と、前記第1のレジスト層上に、第2の感光性組成物を用いて第2のレジスト層を形成する工程と、を有する、積層体の製造方法である。かかる積層体の製造方法においては、前記第1の感光性組成物として、前記第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物を用いることを特徴とする。
【0019】
かかる積層体の製造方法の一実施形態として、例えば図1に示す積層体10の製造方法について説明する。
図1は、支持体20上に形成された積層体10の一実施形態を示す断面図である。
積層体10は、支持体20と接する第1のレジスト層11と、第2のレジスト層12と、第3のレジスト層13と、第4のレジスト層14とがこの順に積層したものである。
【0020】
積層体10は、支持体20上に、第1の感光性組成物を用いて第1のレジスト層11を形成する工程(i)と、第1のレジスト層11上に、第2の感光性組成物を用いて第2のレジスト層12を形成する工程(ii)と、第2のレジスト層12上に、第3のレジスト層13及び第4のレジスト層14をこの順に形成する工程(iii)と、を有する製造方法により製造することができる。
以下、工程(i)~(iii)の各工程について説明する。第1の感光性組成物及び第2の感光性組成物の詳細については後述する。
【0021】
<工程(i)>
工程(i)では、支持体20上に、第1の感光性組成物を用いて第1のレジスト層11を形成する。本実施形態において、第1の感光性組成物には、後述の工程(ii)で使用する第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物を用いる。
支持体20上に第1のレジスト層11を形成する方法としては、例えば、溶液状態の第1の感光性組成物を支持体上に塗布してプレベーク(PAB)処理を行う方法でもよいし、膜(フィルム)形状の第1の感光性組成物と支持体とをラミネートする方法でもよい。
【0022】
溶液状態の第1の感光性組成物を用いる場合、まず、支持体20上に、溶液状態の第1の感光性組成物を、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば50~150℃の温度条件にて2~60分間施すことにより、支持体20上に第1のレジスト層11(感光性樹脂膜)を形成する。
【0023】
膜(フィルム)形状の第1の感光性組成物を用いる場合、上記と同様にして感光性樹脂膜を基材フィルム上に予め形成した積層フィルム(1)を、感光性樹脂膜と支持体20とが隣接するようにラミネートすることにより、支持体20上に第1のレジスト層11(感光性樹脂膜)を形成する。
第1の感光性組成物を用いた感光性樹脂膜と支持体20とをラミネートする際の条件については、例えば温度30~100℃、圧力0.1~0.5MPa、加工速度0.2~1.0m/minとすることが好適である。
【0024】
第1のレジスト層11(感光性樹脂膜)の厚さは、50μm以下が好ましく、より好ましくは5~50μmであり、さらに好ましくは10~40μmである。
【0025】
前記積層フィルム(1)を構成する基材フィルムとしては、公知のものを使用でき、例えば熱可塑性樹脂フィルム等が用いられる。この熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。基材フィルムの厚さは、好ましくは2~150μmである。
【0026】
支持体20としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。
電子部品用の基板として、より具体的には、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、パラジウム、チタンタングステン、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。
配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。
また、支持体20としては、上記のような基板上に、有機材料の膜が設けられたものであってもよい。有機材料の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や、多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
また、支持体20としては、上記のような基板に、熱硬化性樹脂を含浸させたもの(熱硬化性樹脂を含む基板)であってもよい。ここでの熱硬化性樹脂としては、ビスマレイミドトリアジン樹脂などが挙げられる。
本実施形態における支持体20には、耐熱性、電気特性、加工しやすさ、コスト等の点から、熱硬化性樹脂を含む基板を備えるものを用いることが好ましく、ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む基板を備えるものを用いることがより好ましい。
【0027】
<工程(ii)>
工程(ii)では、第1のレジスト層11上に、第2の感光性組成物を用いて第2のレジスト層12を形成する。本実施形態において、第2の感光性組成物には、第1の感光性組成物に比べて低い感度を持つ感光性組成物を用いる。
第1のレジスト層11上に第2のレジスト層12を形成する方法としては、膜(フィルム)形状の第2の感光性組成物と、第1のレジスト層11とをラミネートする方法が挙げられる。
膜(フィルム)形状の第2の感光性組成物を用い、上記と同様にして感光性樹脂膜を基材フィルム上に予め形成した積層フィルム(2)を、第2の感光性組成物を用いた感光性樹脂膜と第1のレジスト層11とが隣接するようにラミネートすることにより、第1のレジスト層11上に第2のレジスト層12を形成する。
第2の感光性組成物を用いた感光性樹脂膜と、第1のレジスト層11とをラミネートする際の条件については、例えば温度30~100℃、圧力0.1~0.5MPa、加工速度0.2~1.0m/minとすることが好適である。
【0028】
第2のレジスト層12(感光性樹脂膜)の厚さは、80μm以下が好ましく、より好ましくは40~80μmであり、さらに好ましくは50~70μmである。
【0029】
前記積層フィルム(2)を構成する基材フィルムとしては、公知のものを使用でき、例えば熱可塑性樹脂フィルム等が用いられる。この熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。基材フィルムの厚さは、好ましくは2~150μmである。
【0030】
<工程(iii)>
工程(iii)では、第2のレジスト層12上に、第3のレジスト層13及び第4のレジスト層14をこの順に形成する。
第3の感光性組成物、第4の感光性組成物には、それぞれ、前記工程(ii)で使用する第2の感光性組成物と同じものを用いることができる。
工程(iii)における操作としては、まず、第2のレジスト層12と、膜(フィルム)形状の第3の感光性組成物とをラミネートして、第2のレジスト層12上に第3のレジスト層13を形成する。次いで、第3のレジスト層13と、膜(フィルム)形状の第4の感光性組成物とをラミネートして、第3のレジスト層13上に第4のレジスト層14を形成する。
【0031】
第3のレジスト層13を形成する際のラミネート条件、第4のレジスト層14を形成する際のラミネート条件については、それぞれ、第2のレジスト層12を形成する際の条件と同様である。
第3のレジスト層13(感光性樹脂膜)の厚さは、80μm以下が好ましく、より好ましくは40~80μmであり、さらに好ましくは50~70μmである。
第4のレジスト層14(感光性樹脂膜)の厚さは、80μm以下が好ましく、より好ましくは40~80μmであり、さらに好ましくは50~70μmである。
【0032】
次いで、支持体20上に積層した第1から第4のレジスト層に対し、必要に応じてベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば30~50℃の温度条件にて20~60分間施す。
以上により、第1のレジスト層11と、第2のレジスト層12と、第3のレジスト層13と、第4のレジスト層14と、がこの順に積層した積層体10を、支持体20上に製造することができる。
【0033】
積層体10について:
上述した工程(i)、工程(ii)及び工程(iii)を有する製造方法により製造された積層体10は、4層のレジスト層が積層したものである。
図1において、支持体20表面からの積層体10の高さ、すなわち、4層のレジスト層全体の厚さは、例えば60~260μmである。
【0034】
<感光性組成物>
本実施形態の積層体の製造方法においては、前記第1の感光性組成物として、前記第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物を用いることを特徴とする。
【0035】
「第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物」とは、各感光性組成物を用いてそれぞれ、同一の条件でレジストパターンを形成した際、ターゲットとする所定形状のレジストパターンが形成される最適露光量Eop(mJ/cm)が、第2の感光性組成物を用いた場合の最適露光量Eopに比べて少ない値を示す感光性組成物をいう。
【0036】
例えばターゲットサイズをライン幅20μm/スペース幅50μmとしたラインアンドスペースパターン(LSパターン)の形成を試みる際、厚さ25μmの感光性樹脂膜に対して、ghi線を照射し、90℃で5分間の露光後加熱を行った場合で、第1の感光性組成物の最適露光量Eop(1)と、第2の感光性組成物の最適露光量Eop(2)との差(Eop(2)-Eop(1))は、好ましくは10(mJ/cm)以上であり、より好ましくは30(mJ/cm)以上であり、さらに好ましくは50~100(mJ/cm)である。
前記の差(Eop(2)-Eop(1))が、好ましい範囲の下限値以上であれば、支持体と第1のレジスト層との密着性が強まり、支持体から剥がれにくい積層体が製造されやすくなる。
【0037】
レジストパターンを形成する際に感度が異なる感光性組成物としては、露光における放射線の吸収性が相違する組成物を組み合わせて用いること、又は樹脂成分の重合速度が相違する組成物を組み合わせて用いることが好ましい。
【0038】
以下、樹脂成分の重合速度が相違する組成物の組合せの一例、すなわち、第1の感光性組成物として感光性組成物(R1)と、第2の感光性組成物として感光性組成物(R2)との組合せについて説明する。
感光性組成物(R1)と感光性組成物(R2)とは、一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物を含有するか否か、の点で異なる。
【0039】
≪感光性組成物(R1)≫
第1の感光性組成物の一実施形態として、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物と、を含有する感光性組成物(R1)が挙げられる。
この感光性組成物(R1)は、一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物を含有するため、樹脂成分の重合速度が高められて、レジストパターンを形成する際に高感度化が図られる。
【0040】
第1の感光性組成物の一実施形態である感光性組成物(R1)は、多官能芳香族エポキシ化合物(以下「(A)成分」ともいう)と、光酸発生剤(以下「(I)成分」ともいう)と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物(以下「(m1)成分」ともいう)と、を含有する。
かかる感光性組成物(R1)を用いて感光性樹脂膜(レジスト層)を形成し、該感光性樹脂膜に対して選択的に露光を行うと、該感光性樹脂膜の露光部では、(I)成分から酸が発生し、該酸の作用により(A)成分中のエポキシ基が開環重合して、有機溶剤を含有する現像液に対する該感光性樹脂膜の溶解性が減少する一方で、該感光性樹脂膜の未露光部では、有機溶剤を含有する現像液に対する該感光性樹脂膜の溶解性が変化しないため、該感光性樹脂膜の露光部と未露光部との間で、有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像すると、未露光部が溶解除去されて、ネガ型のパターンが形成される。
【0041】
多官能芳香族エポキシ化合物((A)成分)について:
(A)成分は、露光によってネガ型のパターンを形成するのに充分なエポキシ基を1分子中に有する化合物が挙げられる。
本実施形態の感光性組成物(R1)で用いられる(A)成分としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0042】
≪ノボラック型エポキシ樹脂≫
ノボラック型エポキシ樹脂(以下「(A1)成分」ともいう)としては、下記一般式(anv0)で表されるエポキシ樹脂が好適に挙げられる。
【0043】
【化3】
[式中、Rp1及びRp2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基である。複数のRp1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のRp2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。nは、1~5の整数である。REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0044】
前記式(anv0)中、Rp1、Rp2の炭素原子数1~5のアルキル基は、例えば炭素原子数1~5の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
なかでもRp1、Rp2としては、水素原子又は直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
式(anv0)中、複数のRp1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のRp2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0045】
前記式(anv0)中、nは、1~5の整数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
【0046】
前記式(anv0)中、REPは、エポキシ基含有基である。
EPのエポキシ基含有基としては、特に限定されるものではなく、エポキシ基のみからなる基;脂環式エポキシ基のみからなる基;エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基が挙げられる。
脂環式エポキシ基とは、3員環エーテルであるオキサシクロプロパン構造を有する脂環式基であって、具体的には、脂環式基とオキサシクロプロパン構造とを有する基である。
脂環式エポキシ基の基本骨格となる脂環式基としては、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。また、これら脂環式基の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等で置換されていてもよい。
エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基の場合、式中の酸素原子(-O-)に結合した2価の連結基を介してエポキシ基又は脂環式エポキシ基が結合することが好ましい。
【0047】
ここで、2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0048】
置換基を有していてもよい2価の炭化水素基について:
かかる2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
2価の炭化水素基における脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0049】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましく、2又は3が最も好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0050】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0051】
2価の炭化水素基における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、(4n+2)個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は、5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0052】
2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
2価の炭化水素基としての、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0053】
2価の炭化水素基としての、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0054】
2価の炭化水素基としての、芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記脂環式炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0055】
ヘテロ原子を含む2価の連結基について:
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0056】
ヘテロ原子を含む2価の連結基において、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-;-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。);-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、上述した2価の連結基としての説明で挙げた「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0057】
なかでも、REPにおけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
【0058】
また、(A1)成分としては、下記一般式(anv1)で表される構成単位を有する樹脂も好適に挙げられる。
【0059】
【化4】
[式中、REPは、エポキシ基含有基である。Ra22及びRa23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。]
【0060】
前記式(anv1)中、Ra22、Ra23の炭素原子数1~5のアルキル基は、前記式(anv0)中のRp1、Rp2の炭素原子数1~5のアルキル基と同様である。
a22、Ra23のハロゲン原子は、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
前記式(anv1)中、REPは、前記式(anv0)中のREPと同様であって、グリシジル基が好ましい。
【0061】
以下に、前記式(anv1)で表される構成単位の具体例を示す。
【0062】
【化5】
【0063】
(A1)成分は、前記構成単位(anv1)のみからなる樹脂であってもよく、構成単位(anv1)と他の構成単位とを有する樹脂であってもよい。
この他の構成単位としては、例えば、下記一般式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0064】
【化6】
[式中、Ra24は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。Ra25~Ra26、Ra28~Ra30は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。Ra27は、エポキシ基含有基又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。]
【0065】
前記式(anv2)中、Ra24は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。置換基を有していてもよい炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0066】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0067】
a24が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0068】
a24の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
a24における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0069】
前記式(anv2)、(anv3)中、Ra25~Ra26、Ra28~Ra30は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。
炭素原子数1~5のアルキル基、ハロゲン原子は、それぞれ、前記Ra22、Ra23と同様である。
【0070】
前記式(anv3)中、Ra27は、エポキシ基含有基、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。Ra27のエポキシ基含有基は、前記式(anv0)中のREPと同様である。Ra27の置換基を有していてもよい炭化水素基は、前記式(anv2)中のRa24と同様である。
【0071】
以下に、前記式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位の具体例を示す。
【0072】
【化7】
【0073】
(A1)成分が、構成単位(anv1)に加えて他の構成単位を有する場合、(A1)成分中の各構成単位の割合は、特に限定されるものではないが、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、エポキシ基を有する構成単位の合計が10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましい。
【0074】
(A1)成分の市販品としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂として、jER-152、jER-154、jER-157S70、jER-157S65(以上、三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON N-740、EPICLON N-740、EPICLON N-770、EPICLON N-775、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695、EPICLON HP5000(以上、DIC株式会社製)、EOCN-1020(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0075】
(A1)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物(R1)中、(A1)成分の含有量は、(A)成分の全質量(質量%)に対して、50質量%以上でもよいし、70質量%以上でもよいし、90質量%以上でもよいし、100質量%であってもよい。
【0076】
≪ビスフェノール型エポキシ樹脂≫
ビスフェノール型エポキシ樹脂(以下「(A2)成分」ともいう)としては、ビスフェノール骨格を含む構成単位を有する樹脂であればよく、そのなかでも固形ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
固形ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、25℃において固体状の、ビスフェノール骨格を含む構成単位を有する樹脂をいう。
(A2)成分におけるエポキシ当量は、例えば、800g/eq.以上であることが好ましく、800~1200g/eq.がより好ましく、900~1100g/eq.がさらに好ましい。
【0077】
(A2)成分としては、下記一般式(abp1)で表されるエポキシ樹脂が好適に挙げられる。
【0078】
【化8】
[式中、REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。Ra31及びRa32は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。na31は、1~50の整数である。]
【0079】
前記式(abp1)中、REPは、前記式(anv0)中のREPと同様であり、グリシジル基が好ましい。
前記式(abp1)中、Ra31、Ra32における炭素原子数1~5のアルキル基は、前記式(anv0)中のRp1、Rp2における炭素原子数1~5のアルキル基と同様である。なかでもRa31、Ra32としては、それぞれ、水素原子又はメチル基が好ましい。
a31、Ra32における炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基は、前記のRa31、Ra32における炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
前記式(abp1)中、na31は、1~50の整数であり、好ましくは4~15の整数であり、より好ましくは5~8の整数である。
【0080】
(A2)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A2)成分として使用可能な市販品は、例えば、jER-4005、jER-4007、jER-4010(以上、三菱ケミカル株式会社製);jER-827、jER-828、jER-834、jER-1001、jER-1002、jER-1003、jER-1055、jER-1007、jER-1009、jER-1010(以上、三菱ケミカル株式会社製);EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0081】
また、上記の(A1)成分及び(A2)成分以外の多官能芳香族エポキシ化合物には、上述したもの以外に、下記化学式(A3-1)で表される化合物、下記化学式(A3-2)で表される化合物をそれぞれ使用してもよい。
下記化学式(A3-1)で表される化合物として使用可能な市販品は、例えば、TECHMORE VG-3101L(プリンテック株式会社製)等が挙げられる。
下記化学式(A3-2)で表される化合物として使用可能な市販品は、例えば、ショウフリー(登録商標)BATG(昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
【0082】
【化9】
【0083】
また、上述したもの以外の多官能芳香族エポキシ化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、エリスリトールテトラグリシジルエーテル;キシリトールペンタグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタグリシジルエーテル、イノシトールペンタグリシジルエーテル;ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、イノシトールヘキサグリシジルエーテル等も挙げられる。
【0084】
本実施形態の感光性組成物(R1)において、(A)成分としては、(A1)成分を含むものが好適に用いられる。
(A)成分のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは100~300000であり、より好ましくは200~200000であり、さらに好ましくは300~200000である。このような重量平均分子量とすることにより、支持体と第1のレジスト層との剥離が生じにくくなる。
【0085】
実施形態の感光性組成物(R1)中の(A)成分の含有量は、形成しようとする第1のレジスト層の厚さ等に応じて調整すればよい。
【0086】
光酸発生剤((I)成分)について:
実施形態の感光性組成物(R1)において、(I)成分には、紫外線、遠紫外線、KrF、ArF等のエキシマレーザー光、X線、電子線等といった活性エネルギー線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となり得る、光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。
本実施形態の感光性組成物(R1)で用いられる(I)成分としては、オニウムボレート塩(以下「(I1)成分」ともいう)、(I1)成分以外の光カチオン重合開始剤(その他光カチオン重合開始剤)が挙げられる。
【0087】
≪オニウムボレート塩≫
オニウムボレート塩((I1)成分)は、露光により比較的に強い酸を発生する。このため、(I1)成分を含有する感光性組成物(R1)を用いてパターンを形成することにより、充分な感度が得られて良好なパターンが形成される。また、(I1)成分の使用は、毒性や金属腐食のおそれも低い。
(I1)成分としては、例えば、下記一般式(I1)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0088】
【化10】
[式中、Rb01~Rb04は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、又はフッ素原子である。qは1以上の整数であって、Qq+は、q価の有機カチオンである。]
【0089】
・アニオン部
前記式(I1)中、Rb01~Rb04におけるアリール基は、炭素原子数が5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。具体的には、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基などが挙げられ、入手が容易であることからフェニル基が好ましい。
b01~Rb04におけるアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数は1~5が好ましい)、ハロゲン化アルキル基が好ましく、ハロゲン原子又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基がより好ましく、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が特に好ましい。アリール基がフッ素原子を有することにより、アニオン部の極性が高まり好ましい。
中でも、式(I1)のRb01~Rb04としては、それぞれ、フッ素化されたフェニル基が好ましく、パーフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0090】
前記式(I1)で表される化合物のアニオン部の好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C);テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF);ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF);トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF);テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。
中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)が特に好ましい。
【0091】
・カチオン部
前記式(I1)中、Qq+としては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好適に挙げられ、下記の一般式(ca-1)~(ca-5)でそれぞれ表される有機カチオンが特に好ましい。
【0092】
【化11】
[式中、R201~R207、およびR211~R212は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。R201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して、式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表す。R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。L201は、-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表す。xは、1または2である。W201は、(x+1)価の連結基を表す。]
【0093】
201~R207、およびR211~R212におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201~R207、およびR211~R212におけるヘテロアリール基としては、前記アリール基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されたものが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。このヘテロアリール基として、9H-チオキサンテンから水素原子を1つ除いた基;置換ヘテロアリール基として、9H-チオキサンテン-9-オンから水素原子を1つ除いた基などが挙げられる。
201~R207、およびR211~R212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
201~R207、およびR211~R212におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
201~R207、およびR210~R212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、オキソ基(=O)、アリール基、下記の式(ca-r-1)~(ca-r-10)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0094】
【化12】
[式中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0095】
前記の式(ca-r-1)~(ca-r-10)中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。
【0096】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、環状の脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0097】
R’201における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
R’201における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、もしくはこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環、又は、これらの芳香環もしくは芳香族複素環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R’201における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)、前記芳香環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環(例えばアントラキノン等)から水素原子を1つ除いた基、芳香族複素環(例えば9H-チオキサンテン、9H-チオキサンテン-9-オンなど)から水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0098】
R’201における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0099】
なかでも、R’201における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0100】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0101】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
R’201の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0102】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
R’201の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0103】
R’201の環式基、鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、オキソ基、上記R’201における環式基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基等が挙げられる。
【0104】
なかでも、R’201は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。
【0105】
201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CONH-または-N(R)-(該Rは炭素原子数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0106】
前記式(ca-3)中、R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0107】
前記式(ca-3)中、R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
【0108】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
201におけるアリーレン基は、R’201における芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、R’201における鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0109】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、xは、1または2である。
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、上記式(A1)中のREPで例示した置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様の基が好ましい。W201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基、又はアリーレン基のみからなる基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
201における3価の連結基としては、前記W201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0110】
前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-1-1)~(ca-1-24)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0111】
【化13】
【0112】
【化14】
[式中、R”201は、水素原子又は置換基である。該置換基としては、前記R201~R207およびR210~R212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0113】
また、前記式(ca-1)で表されるカチオンとしては、下記一般式(ca-1-25)~(ca-1-35)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0114】
【化15】
【0115】
【化16】
[式中、R’211はアルキル基である。Rhalは、水素原子又はハロゲン原子である。]
【0116】
また、前記式(ca-1)で表されるカチオンとしては、下記化学式(ca-1-36)~(ca-1-48)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0117】
【化17】
【0118】
前記式(ca-2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0119】
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0120】
【化18】
【0121】
前記式(ca-4)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-4-1)~(ca-4-2)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0122】
【化19】
【0123】
また、前記式(ca-5)で表されるカチオンとしては、下記一般式(ca-5-1)~(ca-5-3)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0124】
【化20】
[式中、R’212はアルキル基又は水素原子である。R’211はアルキル基である。]
【0125】
上記の中でも、カチオン部[(Qq+1/q]は、一般式(ca-1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca-1-1)~(ca-1-48)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましく、式(ca-1-25)で表されるカチオン、式(ca-1-29)で表されるカチオン、式(ca-1-35)で表されるカチオン、式(ca-1-47)で表されるカチオン、式(ca-1-48)で表されるカチオンがさらに好ましい。
【0126】
以下に、好適な(I1)成分の具体例を挙げる。
【0127】
【化21】
【0128】
≪その他光カチオン重合開始剤≫
上記(I1)成分以外の光カチオン重合開始剤としては、例えば、下記一般式(I2-1)又は(I2-2)で表される化合物(以下「(I2)成分」という);下記一般式(I3-1)又は(I3-2)で表される化合物(以下「(I3)成分」という)が挙げられる。
【0129】
(I2)成分について:
(I2)成分は、下記一般式(I2-1)又は(I2-2)で表される化合物である。
(I2)成分は、露光により比較的に強い酸を発生するため、(I)成分を含有する感光性組成物を用いてパターンを形成する場合に、充分な感度が得られて良好なパターンが形成される。
【0130】
【化22】
[式中、Rb05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のRb05は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。qは1以上の整数であって、Qq+は、q価の有機カチオンである。]
【0131】
【化23】
[式中、Rb06は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のRb06は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。qは1以上の整数であって、Qq+は、q価の有機カチオンである。]
【0132】
・アニオン部
前記式(I2-1)中、Rb05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のRb05は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
b05におけるフッ素化アルキル基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~8がより好ましく、1~5がさらに好ましい。具体的には、炭素数1~5のアルキル基において、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
中でも、Rb05としては、フッ素原子又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
【0133】
式(I2-1)で表される化合物のアニオン部は、下記一般式(b0-2a)で表されるものが好ましい。
【0134】
【化24】
[式中、Rbf05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基である。nbは、1~5の整数である。]
【0135】
式(b0-2a)中、Rbf05における置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基としては、前記Rb05で挙げた、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基と同様である。
式(b0-2a)中、nbは、1~4の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、3が最も好ましい。
【0136】
前記式(I2-2)中、Rb06は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のRb06は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
b06におけるフッ素化アルキル基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~8がより好ましく、1~5がさらに好ましい。具体的には、炭素数1~5のアルキル基において、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
中でも、Rb06としては、フッ素原子又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子がさらに好ましい。
【0137】
・カチオン部
式(I2-1)、式(I2-2)中、qは1以上の整数であって、Qq+は、q価の有機カチオンである。
このQq+としては、上記式(I1)中のQq+と同様のものが挙げられ、その中でも、一般式(ca-1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca-1-1)~(ca-1-48)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましく、式(ca-1-25)で表されるカチオン、式(ca-1-29)で表されるカチオン、式(ca-1-35)で表されるカチオン、式(ca-1-47)で表されるカチオンがさらに好ましい。
【0138】
以下に、好適な(I2)成分の具体例を挙げる。
【0139】
【化25】
【0140】
(I3)成分について:
(I3)成分は、下記一般式(I3-1)又は(I3-2)で表される化合物である。
【0141】
【化26】
[式中、Rb11~Rb12は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。mは1以上の整数であって、Mm+は、それぞれ独立に、m価の有機カチオンである。]
【0142】
{(I3-1)成分}
・アニオン部
式(I3-1)中、Rb12は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であって、上述したR’201の説明中の環式基、鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基のうち、置換基を有しないもの又はハロゲン原子以外の置換基を有するものが挙げられる。
b12としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。
鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
b12の炭化水素基は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(I3-2)のRb11における炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよいハロゲン原子以外の置換基と同様のものが挙げられる。
ここでいう「ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい」とは、ハロゲン原子のみからなる置換基を有する場合を排除するのみではなく、ハロゲン原子を1つでも含む置換基を有する場合(例えば、置換基がフッ素化アルキル基である場合等)を排除するものである。
【0143】
以下に、(I3-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0144】
【化27】
【0145】
・カチオン部
式(I3-1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
m+の有機カチオンとしては、上記一般式(ca-1)~(ca-5)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、これらの中でも、上記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましい。この中でも、上記一般式(ca-1)中のR201、R202、R203のうちの少なくとも1つが、置換基を有していてもよい炭素原子数16以上の有機基(アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基)であるスルホニウムカチオンが、解像性やラフネス特性が向上することから特に好ましい。
前記の有機基が有していてもよい置換基としては、上記と同様であり、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、オキソ基(=O)、アリール基、上記式(ca-r-1)~(ca-r-10)でそれぞれ表される基が挙げられる。
前記の有機基(アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基)における炭素原子数は、好ましくは16~25、より好ましくは16~20であり、特に好ましくは16~18であり、かかるMm+の有機カチオンとしては、例えば、上記式(ca-1-25)、(ca-1-26)、(ca-1-28)~(ca-1-36)、(ca-1-38)、(ca-1-46)、(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンが好適に挙げられ、その中でも、上記式(ca-1-29)で表されるカチオンが特に好ましい。
【0146】
{(I3-2)成分}
・アニオン部
式(I3-2)中、Rb11は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であって、上述したR’201の説明中の環式基、鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基のうち、置換基を有しないもの又はハロゲン原子以外の置換基を有するものが挙げられる。
【0147】
これらのなかでも、Rb11としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、ラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの組合せが挙げられる。
エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)でそれぞれ表される連結基が好ましい。
なお、下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)において、上記式(I3-2)中のRb11と結合するのが、下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)中のV’101である。
【0148】
【化28】
[式中、V’101は、単結合または炭素原子数1~5のアルキレン基である。V’102は、炭素原子数1~30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0149】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素原子数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0150】
V’101およびV’102におけるアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
V’101およびV’102におけるアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH-];-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;エチレン基[-CHCH-];-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n-プロピレン基)[-CHCHCH-];-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[-CHCHCHCH-];-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[-CHCHCHCHCH-]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素原子数5~10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、R’201の環状の脂肪族炭化水素基(単環式の脂環式炭化水素基、多環式の脂環式炭化水素基)から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましく、シクロへキシレン基、1,5-アダマンチレン基又は2,6-アダマンチレン基がより好ましい。
【0151】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基もしくはナフチル基がより好ましい。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0152】
b11としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基が好ましい。
以下に、(I3-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0153】
【化29】
【0154】
・カチオン部
式(I3-2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(I3-1)中のMm+と同様である。
【0155】
また、(I)成分は、樹脂膜の高弾性化、及び、残渣無く微細構造を形成しやすい点から、露光によりpKa(酸解離定数)が-5以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることが好ましい。より好ましくはpKaが-6以下、さらに好ましくはpKaが-8以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤を用いることにより、露光に対する高い感度を得ることが可能となる。(I)成分が発生する酸のpKaの下限は、好ましくは-15以上である。かかる好適なpKaの酸を発生する光カチオン重合開始剤を用いることで、高感度化が図られやすくなる。
ここで「pKa(酸解離定数)」とは、対象物質の酸強度を示す指標として一般的に用いられているものをいう。なお、本明細書におけるpKaは、25℃の温度条件における値である。また、pKa値は、公知の手法により測定して求めることができる。また、「ACD/Labs」(商品名、Advanced Chemistry Development社製)等の公知のソフトウェアを用いた計算値を用いることもできる。
【0156】
以下に、好適な(I3)成分の具体例を挙げる。
【0157】
【化30】
【0158】
(I)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物(R1)において、(I)成分は、(I1)成分、(I2)成分及び(I3)成分からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、(I1)成分と(I3)成分とを含むもの、(I2)成分と(I3)成分とを含むものがより好ましく、(I1)成分と(I3)成分とを含むもの、一般式(I2-1)で表される化合物と(I3)成分とを含むものがさらに好ましく、(I1)成分と一般式(I3-1)で表される化合物とを含むもの、一般式(I2-1)で表される化合物と一般式(I3-1)で表される化合物とを含むものが特に好ましい。
【0159】
本実施形態の感光性組成物(R1)中、(I)成分の含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、0.1~5質量部であることが好ましく、0.15~3質量部であることがより好ましく、0.2~1質量部であることがさらに好ましい。
(I1)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、充分な感度が得られて、レジストパターンのリソグラフィー特性がより向上する。加えて、樹脂硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、感度が適度に制御され、良好な形状のレジストパターンが得られやすくなる。
【0160】
一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物((m1)成分)について:
【0161】
【化31】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【0162】
前記式(m1)中、R~R18におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0163】
前記式(m1)中、R~R18における有機基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの2つ以上が結合した基を含む炭化水素基等が挙げられる。
【0164】
~R18における有機基について、上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基等が挙げられる。
炭素数1~20のアルキル基のなかでも、好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。
炭素数2~20のアルケニル基のなかでも、好ましくは炭素数2~10のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数2~4のアルケニル基である。
炭素数2~20のアルキニル基のなかでも、好ましくは炭素数2~10のアルキニル基であり、特に好ましくは炭素数2~4のアルキニル基である。
【0165】
~R18における有機基について、上記脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数4~15の架橋環式炭化水素基等が挙げられる。
炭素数3~12のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
炭素数3~12のシクロアルケニル基としては、例えばシクロヘキセニル基等が挙げられる。
炭素数4~15の架橋環式炭化水素基としては、例えばビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0166】
~R18における有機基について、上記芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基等が挙げられる。
炭素数6~14のアリール基のなかでも、好ましくは炭素数6~10のアリール基であり、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0167】
~R18における有機基について、上記の「これらの2つ以上が結合した基」としては、例えば、シクロへキシルメチル基等の炭素数3~12のシクロアルキル置換炭素数1~20のアルキル基;メチルシクロヘキシル基等の炭素数1~20のアルキル置換炭素数3~12のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~18のアラルキル基(特に好ましくは、炭素数7~10のアラルキル基);シンナミル基等の炭素数6~14のアリール置換炭素数2~20のアルケニル基;トリル基等の炭素数1~20のアルキル置換炭素数6~14のアリール基;スチリル基等の炭素数2~20のアルケニル置換炭素数6~14のアリール基等が挙げられる。
【0168】
~R18における有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、例えば、酸素原子又はハロゲン原子を含む炭化水素基、あるいは、置換基を有していてもよいアルコキシ基が挙げられる。
酸素原子又はハロゲン原子を含む炭化水素基としては、上記の炭化水素基における少なくとも1つの水素原子が、酸素原子を有する基又はハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0169】
酸素原子を有する基としては、例えば、ヒドロキシ基;ヒドロパーオキシ基;炭素数1~10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等);炭素数2~10のアルケニルオキシ基(アリルオキシ基等);炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、ハロゲン原子及び炭素数1~10のアルコキシ基からなる群より選択される置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリールオキシ基(例えば、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等);炭素数7~18のアラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等);炭素数1~10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等);炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等);炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、ハロゲン原子及び炭素数1~10のアルコキシ基からなる群より選択される置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等);炭素数7~18のアラルキルオキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基等);グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;炭素数1~10のアシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等);イソシアナート基;スルホ基;カルバモイル基;オキソ基;あるいはこれらの2つ以上が単結合又は炭素数1~10のアルキレン基等を介して結合した基等が挙げられる。
【0170】
ハロゲン原子を含む炭化水素基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0171】
~R18における有機基について、アルコキシ基としては、炭素数1~10のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等が挙げられる。
【0172】
~R18における有機基について、前記アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基、炭素数6~14のアリールオキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数2~10のアルケニルチオ基、炭素数6~14のアリールチオ基、炭素数7~18のアラルキルチオ基、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数6~14のアリールオキシカルボニル基、炭素数7~18のアラルキルオキシカルボニル基、アミノ基、モノ又はジ炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、エポキシ基含有基、オキセタニル基含有基、炭素数1~10のアシル基、オキソ基、又はこれらの2つ以上が単結合もしくは炭素数1~10のアルキレン基等を介して結合した基等が挙げられる。
【0173】
前記式(m1)中のR~R18は、上記の中でも、水素原子が好ましく、R~R18の全部が水素原子であるものが特に好ましい。
【0174】
前記式(m1)中、Xにおける、2価の連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド基、又はこれらの複数が連結した基等が挙げられる。
上記の二価の炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~18のアルキレン基(好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~3のアルキレン基);炭素数3~12のシクロアルキレン基;炭素数3~12のシクロアルキリデン基(好ましくは、炭素数3~6のシクロアルキレン基、又は炭素数3~6のシクロアルキリデン基)等が挙げられる。
直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。
炭素数3~12のシクロアルキレン基としては、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0175】
前記式(m1)中のXは、上記の中でも、単結合であることが好ましい。
【0176】
好適な(m1)成分としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン等が挙げられる。
【0177】
(m1)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物(R1)中、(m1)成分の含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、0.5~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。
(m1)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、レジストパターンを形成する際に高感度化が図られて、支持体と感光性樹脂膜(第1のレジスト層)との密着性を高められやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、フィルム化が容易になる。
【0178】
任意成分について:
本実施形態の感光性組成物(R1)は、上述した(A)成分、(I)成分及び(m1)成分以外に、必要に応じてその他成分(任意成分)を含有してもよい。
感光性組成物(R1)には、所望により、混和性のある添加剤、例えば金属酸化物、シランカップリング剤、増感剤成分、溶剤、膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、塩基性化合物、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0179】
金属酸化物((M)成分)としては、例えば、ケイ素(金属ケイ素)、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の金属の酸化物が挙げられる。これらの中でも、ケイ素の酸化物が好ましく、この中でもシリカを用いることが特に好ましい。(M)成分を併有することで、膜強度、耐熱性が高められた樹脂硬化膜が得られやすく、また、良好な形状で高解像のレジストパターンを形成し得る。(M)成分の形状は、粒子状であることが好ましい。
【0180】
シランカップリング剤としては、例えば、カルボキシ基、メタクリロイル基、イソシアナート基、エポキシ基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0181】
増感剤成分としては、露光によるエネルギーを吸収して、そのエネルギーを他の物質に伝達し得るものであれば特に限定されるものではない。増感剤成分として具体的には、ベンゾフェノン、p,p’-テトラメチルジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光増感剤、カルバゾール系光増感剤、アセトフェン系光増感剤、1,5-ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン系光増感剤、フェノール系光増感剤、9-エトキシアントラセン等のアントラセン系光増感剤、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン、フェノチアジン、アントロン等の公知の光増感剤を用いることができる。
【0182】
本実施形態の感光性組成物(R1)は、さらに、溶剤(以下「(S)成分」ということがある)を含有してもよい。
(S)成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0183】
(S)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0184】
(S)成分を含む場合の使用量は、特に限定されず、感光性組成物を基板等に液垂れが無く塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。
たとえば、固形分濃度が50質量%以上となるように(S)成分を使用することができ、固形分濃度が60質量%以上となるように(S)成分を使用することができる。
また、(S)成分を実質的に含まない態様(すなわち、固形分濃度が100質量%である態様)も採用できる。
【0185】
≪感光性組成物(R2)≫
第2の感光性組成物の一実施形態として、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、を含有する感光性組成物(R2)(但し、上記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物を含有するものを除く)が挙げられる。
上述のように、感光性組成物(R1)と感光性組成物(R2)とは、一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物を含有するか否か、の点で相違する。この相違によって、感光性組成物(R1)が感光性組成物(R2)に比べて高い感度を持つように調整する。
【0186】
第2の感光性組成物の一実施形態である感光性組成物(R2)は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、を含有する。
かかる感光性組成物(R2)を用いて感光性樹脂膜(レジスト層)を形成し、該感光性樹脂膜に対して選択的に露光を行うと、該感光性樹脂膜の露光部では、光酸発生剤から酸が発生し、該酸の作用により多官能芳香族エポキシ化合物中のエポキシ基が開環重合して、有機溶剤を含有する現像液に対する該感光性樹脂膜の溶解性が減少する一方で、該感光性樹脂膜の未露光部では、有機溶剤を含有する現像液に対する該感光性樹脂膜の溶解性が変化しないため、該感光性樹脂膜の露光部と未露光部との間で、有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像すると、未露光部が溶解除去されて、ネガ型のパターンが形成される。
【0187】
多官能芳香族エポキシ化合物について:
感光性組成物(R2)が含有する多官能芳香族エポキシ化合物としては、上述した感光性組成物(R1)が含有する多官能芳香族エポキシ化合物((A)成分)と同様のものが挙げられる。
本実施形態の感光性組成物(R2)において、多官能芳香族エポキシ化合物としては、上記(A1)成分を含むものが好適に用いられる。
実施形態の感光性組成物(R2)中の多官能芳香族エポキシ化合物の含有量は、形成しようとする第2のレジスト層の厚さ等に応じて調整すればよい。
【0188】
光酸発生剤について:
感光性組成物(R2)が含有する光酸発生剤としては、上述した感光性組成物(R1)が含有する光酸発生剤((I)成分)と同様のものが挙げられる。
本実施形態の感光性組成物(R2)において、光酸発生剤としては、上記の(I1)成分、(I2)成分及び(I3)成分からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、(I1)成分を含むもの、一般式(I2-2)で表される化合物を含むものがより好ましく、(I1)成分を含むものがさらに好ましい。
本実施形態の感光性組成物(R2)中、光酸発生剤の含有量は、多官能芳香族エポキシ化合物の全質量部を100質量部としたときに、0.1~5質量部であることが好ましく、0.15~3質量部であることがより好ましく、0.2~2質量部であることがさらに好ましい。
【0189】
任意成分について:
本実施形態の感光性組成物(R2)は、上述した多官能芳香族エポキシ化合物及び光酸発生剤以外に、必要に応じてその他成分(任意成分)を含有してもよい。
感光性組成物(R2)には、所望により、混和性のある添加剤、例えば金属酸化物、シランカップリング剤、増感剤成分、溶剤、膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、塩基性化合物、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0190】
以上説明した第1の態様に係る積層体の製造方法においては、支持体20と接する第1のレジスト層11を形成するための第1の感光性組成物として、第2のレジスト層12を形成するための第2の感光性組成物に比べて高い感度を持つ感光性組成物が用いられている。このため、かかる積層体の製造方法によれば、支持体20から剥がれにくい樹脂硬化膜となり得る積層体10を製造することが可能である。
【0191】
上述した積層体の製造方法の一実施形態では、第1の感光性組成物及び第2の感光性組成物として、樹脂成分の重合速度が相違する組成物の組合せを採用したが、両者の感度が異なる組成物の組合せであれば、本発明はこれに限定されるものではない。
【0192】
上述した積層体の製造方法の一実施形態では、第3のレジスト層13を形成するための第3の感光性組成物、及び第4のレジスト層14を形成するための第4の感光性組成物には、それぞれ、第2のレジスト層12を形成するための第2の感光性組成物と同じものを用いることができるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の効果を奏する範囲で、第3の感光性組成物及び第4の感光性組成物をそれぞれ適宜選択することができる。
【0193】
上述した積層体の製造方法の一実施形態では、工程(ii)及び工程(iii)において、第2のレジスト層12、第3のレジスト層13、第4のレジスト層14をそれぞれ積層する方法を、膜(フィルム)形状の感光性組成物をラミネートする方法としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、下層を溶解しにくい溶剤を選択し、溶液状態の感光性組成物を下層上に塗布してプレベーク(PAB)処理を行う方法により、第2のレジスト層12、第3のレジスト層13、第4のレジスト層14をそれぞれ積層することもできる。
【0194】
上述した積層体の製造方法の一実施形態では、積層体を4層構造としたが、これに限定されず、2層以上の構造であればよく、層数については所望の高さ、アスペクト比に応じて設定すればよい。
上述した積層体の製造方法の一実施形態では、工程(i)~(iii)を有する方法について説明したが、これに限定されず、必要に応じて、これら以外の工程を有していてもよい。
【0195】
(硬化パターン形成方法)
本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る積層体の製造方法により製造された積層体を露光する工程と、前記露光後の積層体を現像して、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを硬化させて硬化パターンを得る工程と、を有する、硬化パターン形成方法である。
【0196】
硬化パターンは、図1に示される支持体20上に形成された積層体10を露光する工程(iv)と、露光後の積層体10を現像して、レジストパターン110を形成する工程(v)と、レジストパターン110を硬化させて、樹脂硬化膜10cからなる硬化パターン120を得る工程(vi)と、を有する製造方法により製造することができる。
以下、工程(iv)~(vi)の各工程について説明する。
【0197】
<工程(iv)>
工程(iv)では、支持体20上に形成された積層体10を露光する。
例えば、公知の露光装置を用いて、図2で示すように、積層体10に対し、コイル形状のパターンが形成されたフォトマスク90を介した選択的露光を行う。
工程(iv)における露光処理により、露光後の積層体10は、露光により現像液に対する溶解性が変化した露光部10bと、変化のない未露光部10dとなる。
【0198】
前記の選択的露光を行った後、露光後の積層体10に対し、必要に応じてベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば50~80℃の温度条件にて30~60分間施す。
【0199】
露光に用いる波長は特に限定されず、放射線、例えば波長が300~500nmの紫外線、i線(波長365nm)又は可視光線を選択的に照射(露光)する。これらの放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。
ここで放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100~2000mJ/cmである。
【0200】
積層体10に対する露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
【0201】
<工程(v)>
工程(v)では、露光後の積層体10を現像して、コイル形状のレジストパターン110を形成する。
例えば、第1の感光性組成物として感光性組成物(R1)と、第2の感光性組成物として感光性組成物(R2)との組合せの場合、露光後の積層体10を、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)で現像することにより、図3に示すように、積層体10の未露光部10dが溶解除去され、露光部10bが残像して、ネガ型のレジストパターン110が形成される。
現像の後、好ましくはリンス処理を行う。必要に応じてベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0202】
有機系現像液が含有する有機溶剤としては、感光性組成物の配合成分を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0203】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)等が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶剤としては、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)が好ましい。
【0204】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶剤としては、酢酸ブチル又はPGMEAが好ましい。
【0205】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオ二トリル、バレロニトリル、ブチロ二トリル等が挙げられる。
【0206】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤、又は非イオン性のシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0207】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば、支持体上の積層体を現像液中に一定時間浸漬する方法(ディップ法)、積層体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、積層体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している積層体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0208】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、たとえば一定速度で回転している積層体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に積層体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、積層体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
リンス処理は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0209】
<工程(vi)>
工程(vi)では、工程(v)で形成されたレジストパターン110を硬化させて硬化パターン120を得る。
例えば、工程(v)で形成されたレジストパターン110に対し、加熱処理(キュア操作)を行い、硬化させることにより、図4に示すように、樹脂硬化膜10cからなる硬化パターン120が得られる。
樹脂硬化膜10cにおいては、第1~第4のレジスト層が硬化して一体化している。
工程(vi)での前記加熱処理(キュア操作)は、例えば温度100~250℃、0.5~2時間の条件で行うことができる。
【0210】
硬化パターン120について:
図4において、硬化パターン120は、コイル形状のパターンであり、永久膜としてインダクタにおける絶縁部を構成し得る。そして、樹脂硬化膜10cと樹脂硬化膜10cとの間は、銅などでめっきが施されることになる。
硬化パターン120の高さ(h)は、例えば60~260μmである。
硬化パターン120の幅(w)は、例えば1~100μmである。
硬化パターン120のアスペクト比(h/w)は、例えば1~80である。
【0211】
以上説明した第2の態様に係る硬化パターン形成方法においては、第1の態様に係る積層体の製造方法により製造された積層体10が用いられている。このため、かかる硬化パターン形成方法によれば、支持体20から剥がれにくい樹脂硬化膜10cを製造することが可能である。
【0212】
上述した実施形態では、第1の感光性組成物として感光性組成物(R1)と、第2の感光性組成物として感光性組成物(R2)と、を採用している。感光性組成物(R1)と感光性組成物(R2)とは、一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物((m1)成分)を含有するか否か、の点で異なる。
積層体10においては、支持体20上に第1のレジスト層11と第2のレジスト層12とがこの順に積層している。第1のレジスト層11は感光性組成物(R1)により形成され、第2のレジスト層12は感光性組成物(R2)により形成されている。
感光性組成物(R1)に含有される(m1)成分は、芳香族エポキシ化合物に比べて、エポキシ基の開環重合の速度が高い。このため、(m1)成分を含有する感光性組成物(R1)は、樹脂成分の重合速度が高められ、高感度化が図られる。
そして、レジストパターン110を形成する際に、支持体20と接する第1のレジスト層11の方が、第1のレジスト層11に隣接する第2のレジスト層12を形成するための感光性組成物(R2)よりも高感度化が図られることで、支持体20と第1のレジスト層11との密着性が強められる。これによって、パターンの高アスペクト化が図れ、かつ、支持体20から剥がれにくい樹脂硬化膜10cが形成され、パターン倒れが抑制されるなど、コイル形状の硬化パターン120を安定に製造することができる。
【0213】
また、かかる硬化パターン形成方法によれば、インダクタを構成する絶縁部の微細化を安定に実現することが可能である。したがって、かかる硬化パターン形成方法は、インダクタにおける絶縁部の製造に有用な方法である。
【0214】
上述した硬化パターン形成方法の一実施形態では、工程(v)において、露光後の積層体10を、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)で現像したが、本発明はこれに限定されるものではなく、感光性組成物の特性に応じて、アルカリ現像液で現像する場合であってもよい。アルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
【0215】
(積層体)
本発明の第3の態様は、第1のレジスト層と第2のレジスト層との積層体である。かかる積層体において、前記第1のレジスト層は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物とを含む層であり、前記第2のレジスト層は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤とを含む層(但し、前記脂環式エポキシ化合物を含有するものを除く)であることを特徴とする。
【0216】
【化32】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【0217】
かかる積層体の一実施形態としては、上述した(積層体の製造方法)における工程(i)及び工程(ii)により製造される、第1のレジスト層11と第2のレジスト層12との積層体が挙げられる。
第1のレジスト層についての説明は、上述した第1のレジスト層11、並びに、これを形成するための感光性組成物(R1)が含有する多官能芳香族エポキシ化合物、光酸発生剤、一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物及び任意成分についての説明とそれぞれ同様である。
第2のレジスト層についての説明は、上述した第2のレジスト層12、並びに、これを形成するための感光性組成物(R2)が含有する多官能芳香族エポキシ化合物、光酸発生剤及び任意成分についての説明とそれぞれ同様である。
【0218】
以上説明した第3の態様に係る積層体においては、第1のレジスト層と第2のレジスト層とが、一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物((m1)成分)を含むか否か、の点で異なる。
この(m1)成分は、芳香族エポキシ化合物に比べて、エポキシ基の開環重合の速度が高い。このため、(m1)成分を含有する第1のレジスト層は、レジストパターンの形成において、樹脂成分の重合速度が高められ、高感度化が図られる。
そして、レジストパターンを形成する際に、支持体と接する第1のレジスト層の方が、第1のレジスト層に隣接する第2のレジスト層よりも高感度化が図られることで、支持体と第1のレジスト層との密着性が強められる。このため、かかる積層体によれば、パターンの高アスペクト化が図れ、かつ、支持体から剥がれにくい樹脂硬化膜が形成され、パターン倒れが抑制されるなど、コイル形状の硬化パターンを安定に製造することが可能となる。
【0219】
(感光性組成物)
本発明の第4の態様は、多官能芳香族エポキシ化合物と、光酸発生剤と、下記一般式(m1)で表される脂環式エポキシ化合物とを含有する、感光性組成物である。かかる感光性組成物は、インダクタにおける絶縁部の、支持体と接する層を形成するための感光性組成物として好適なものである。
【0220】
【化33】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。Xは、2価の連結基又は単結合である。]
【0221】
かかる感光性組成物についての説明は、上述した(積層体の製造方法)における感光性組成物(R1)についての説明と同様である。
かかる感光性組成物は、上述した(積層体)における第1のレジスト層、図1に示す積層体10における第1のレジスト層11、すなわち、積層体の最下層(支持体と接する層)を形成する材料として有用である。
【実施例0222】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0223】
<感光性組成物の調製>
表1に示す各成分を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に混合して溶解し、PTFEフィルター(孔径1μm、PALL社製)を用いて濾過を行い、各例の感光性組成物(固形分50~80質量%の溶液)をそれぞれ調製した。
【0224】
【表1】
【0225】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は、各成分の配合量(質量部;固形分換算)である。
(A)-1:下記化学式(A1-1)で表されるノボラック型エポキシ樹脂。商品名「jER-157S70」、三菱ケミカル株式会社製。
(A)-2:下記化学式(A1-2)で表されるノボラック型エポキシ樹脂。商品名「EPICLON N-770」、DIC株式会社製。
【0226】
【化34】
【0227】
(I)-1:下記化学式(I2-2-1)で表される光酸発生剤。
(I)-2:下記化学式(I1-4)で表される光酸発生剤。
(I)-3:下記化学式(I2-1-1)で表される光酸発生剤。
(I)-4:下記化学式(I1-5)で表される光酸発生剤。
(I)-5:下記化学式(I3-1-1)で表される光酸発生剤。
【0228】
【化35】
【0229】
【化36】
【0230】
(m1)-1:下記化学式(m1-1)で表される脂環式エポキシ化合物。商品名「セロキサイド8000」、株式会社ダイセル製。
【0231】
【化37】
【0232】
<感光性組成物の感度Eopの測定>
上記の感光性組成物(1)~(7)の感度を、以下のようにして測定した。
感光性組成物(1)~(7)を用い、5インチのシリコンウェーハ上に、各組成の感光性樹脂膜を厚さ25μmでそれぞれ形成した。
その後、前記感光性樹脂膜に対し、アライナー(キヤノン株式会社製、PLA-501F)を用いて、パターンを有するマスクを前記感光性樹脂膜に密着させて、ghi線を照射した。
その後、90℃のホットプレートで、5分間の露光後加熱を行った。
その後、23℃にて、PGMEAで120秒間パドル現像を行い、振り切り乾燥を行って、ラインアンドスペースパターン(以下単に「LSパターン」ということがある。)を得た。最適露光量(Eop)の評価のために、ターゲットサイズであるライン幅20μm/スペース幅50μmのLSパターンを得た。
上記LSパターンの形成において、ターゲットとするLSパターンが形成される最適露光量Eop(mJ/cm)を求めた。その結果を「感度Eop(mJ/cm)」として表2に示した。
【0233】
<硬化パターンの形成>
感光性組成物(1)~(7)を用いて、コイル形状の硬化パターンの形成を試みた。
【0234】
積層フィルムの作製:
感光性組成物(4)を、基材フィルム上に、アプリケーターを用いて塗布し、オーブンにて70℃、10分間の乾燥を行うことにより、膜厚20μmの感光性樹脂膜(4)を形成して、感光性の積層フィルム(F4)を得た。
【0235】
感光性組成物(4)を感光性組成物(5)へ変更した以外は、前記のように塗布、乾燥を行うことにより、基材フィルム上に膜厚20μmの感光性樹脂膜(5)を形成して、感光性の積層フィルム(F5)を得た。
【0236】
感光性組成物(4)を感光性組成物(1)へ変更した以外は、前記のように塗布、乾燥を行うことにより、基材フィルム上に膜厚55μmの感光性樹脂膜(1)を形成して、感光性の積層フィルム(F1)を得た。
【0237】
感光性組成物(4)を感光性組成物(2)へ変更した以外は、前記のように塗布、乾燥を行うことにより、基材フィルム上に膜厚65μmの感光性樹脂膜(2a)を形成して、感光性の積層フィルム(F2a)を得た。
【0238】
感光性組成物(4)を感光性組成物(2)へ変更した以外は、前記のように塗布、乾燥を行うことにより、基材フィルム上に膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)を形成して、感光性の積層フィルム(F2b)を得た。
【0239】
(実施例1)
第1のレジスト層を形成する工程:
積層フィルム(F4)の基材フィルム上に形成した前記感光性樹脂膜(4)と、ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板(支持体)とを、前記感光性樹脂膜(4)と前記支持体とが隣接するように、45℃、0.3MPa、0.5m/minの条件でラミネートして、前記支持体上に第1のレジスト層を形成した。
【0240】
第2のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第1のレジスト層を構成する感光性樹脂膜(4)に接する基材フィルムを剥離し、その露出した感光性樹脂膜(4)と、積層フィルム(F2a)の基材フィルム上に形成した前記感光性樹脂膜(2a)とを、50℃、0.3MPa、0.5m/minの条件でラミネートして、支持体と第1のレジスト層と第2のレジスト層との積層体(4a)を得た。
【0241】
第3のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第2のレジスト層を構成する感光性樹脂膜(2a)に接する基材フィルムを剥離し、その露出した感光性樹脂膜(2a)と、積層フィルム(F2a)の基材フィルム上に形成した前記感光性樹脂膜(2a)とを、50℃、0.3MPa、0.5m/minの条件でラミネートして、積層体(4a)と第3のレジスト層との積層体(4b)を得た。
【0242】
第4のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第3のレジスト層を構成する感光性樹脂膜(2a)に接する基材フィルムを剥離し、その露出した感光性樹脂膜(2a)と、積層フィルム(F2a)の基材フィルム上に形成した前記感光性樹脂膜(2a)とを、50℃、0.3MPa、0.5m/minの条件でラミネートして、前記支持体上に第1~第4のレジスト層がこの順に積層した積層体(4)を得た。
そして、得られた積層体(4)に対し、温度40℃、30分間のベーク処理(PAB)を行った。
【0243】
積層体(4)について
支持体:ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板
第1のレジスト層:膜厚20μmの感光性樹脂膜(4)
第2のレジスト層:膜厚65μmの感光性樹脂膜(2a)
第3のレジスト層:膜厚65μmの感光性樹脂膜(2a)
第4のレジスト層:膜厚65μmの感光性樹脂膜(2a)
【0244】
積層体を露光する工程:
次いで、ベーク処理(PAB)後の積層体(4)に対し、アライナー(キヤノン株式会社製、PLA-501F)を用い、コイル形状のパターンを有するマスクを介して、1000mJ/cm(i線積算値)を露光した。
その後、60℃のホットプレートで、45分間の露光後加熱を行った。
【0245】
現像する工程:
次いで、露光後加熱を行った後の積層体(4)に対し、現像液としてPGMEAを用いて、23℃で45分間の溶剤現像(Dip,Vertical)を行い、コイル形状のレジストパターンを得た。
その後、PGMEAを用いて1分間のリンス処理を行った。
【0246】
硬化パターンを得る工程:
次いで、リンス処理後のレジストパターンに対し、オーブンにて温度200℃、1時間の加熱処理を行い、コイル形状の硬化パターンを得た。
【0247】
(実施例2)
第1~第4のレジスト層を形成する工程:
積層フィルム(F4)を積層フィルム(F5)へ変更した以外は、実施例1と同様にして、ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板(支持体)上に第1~第4のレジスト層がこの順に積層した積層体(5)を得た。
そして、得られた積層体(5)に対し、温度40℃、30分間のベーク処理(PAB)を行った。
【0248】
積層体(5)について
支持体:ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板
第1のレジスト層:膜厚20μmの感光性樹脂膜(5)
第2のレジスト層:膜厚65μmの感光性樹脂膜(2a)
第3のレジスト層:膜厚65μmの感光性樹脂膜(2a)
第4のレジスト層:膜厚65μmの感光性樹脂膜(2a)
【0249】
積層体を露光する工程、現像する工程、硬化パターンを得る工程:
次いで、ベーク処理(PAB)後の積層体(5)に対し、実施例1と同様にして、積層体を露光する工程、現像する工程、及び硬化パターンを得る工程の各操作を行い、コイル形状の硬化パターンを得た。
【0250】
(比較例1)
第1~第4のレジスト層を形成する工程:
積層フィルム(F4)を積層フィルム(F1)へ変更し、加えて、積層フィルム(F2a)を積層フィルム(F2b)へ変更した以外は、実施例1と同様にして、ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板(支持体)上に第1~第4のレジスト層がこの順に積層した積層体(1)を得た。
そして、得られた積層体(1)に対し、温度40℃、30分間のベーク処理(PAB)を行った。
【0251】
積層体(1)について
支持体:ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板
第1のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(1)
第2のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第3のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第4のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
【0252】
積層体を露光する工程、現像する工程:
次いで、ベーク処理(PAB)後の積層体(1)に対し、実施例1と同様にして、積層体を露光する工程、及び現像する工程の各操作を行ったところ、前記支持体から積層体(1)が剥離し除去されて、コイル形状のレジストパターン形成は不可であった。
【0253】
(比較例2)
第1~第4のレジスト層を形成する工程:
積層フィルム(F4)を積層フィルム(F2b)へ変更し、加えて、積層フィルム(F2a)を積層フィルム(F2b)へ変更した以外は、実施例1と同様にして、ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板(支持体)上に第1~第4のレジスト層がこの順に積層した積層体(2)を得た。
そして、得られた積層体(2)に対し、温度40℃、30分間のベーク処理(PAB)を行った。
【0254】
積層体(2)について
支持体:ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板
第1のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第2のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第3のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第4のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
【0255】
積層体を露光する工程、現像する工程:
次いで、ベーク処理(PAB)後の積層体(2)に対し、実施例1と同様にして、積層体を露光する工程、及び現像する工程の各操作を行ったところ、前記支持体から積層体(2)が剥離し除去されて、コイル形状のレジストパターン形成は不可であった。
【0256】
(実施例3)
第1のレジスト層を形成する工程:
前記支持体上に、感光性組成物(6)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度90℃で5分間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、第1のレジスト層として膜厚25μmの感光性樹脂膜(6)を形成した。
【0257】
第2のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第1のレジスト層を構成する感光性樹脂膜(6)と、積層フィルム(F2b)の基材フィルム上に形成した前記感光性樹脂膜(2b)とを、40℃、0.3MPa、0.5m/minの条件でラミネートして、支持体と第1のレジスト層と第2のレジスト層との積層体(6a)を得た。
【0258】
第3のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第2のレジスト層を構成する感光性樹脂膜(2b)に接する基材フィルムを剥離し、その露出した感光性樹脂膜(2b)と、積層フィルム(F2b)の基材フィルム上に形成した前記感光性樹脂膜(2b)とを、40℃、0.3MPa、0.5m/minの条件でラミネートして、積層体(6a)と第3のレジスト層との積層体(6b)を得た。
【0259】
第4のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第3のレジスト層を構成する感光性樹脂膜(2b)に接する基材フィルムを剥離し、その露出した感光性樹脂膜(2b)と、積層フィルム(F2b)の基材フィルム上に形成した前記感光性樹脂膜(2b)とを、40℃、0.3MPa、0.5m/minの条件でラミネートして、前記支持体上に第1~第4のレジスト層がこの順に積層した積層体(6)を得た。
そして、得られた積層体(6)に対し、温度40℃、60分間のベーク処理(PAB)を行った。
【0260】
積層体(6)について
支持体:ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板
第1のレジスト層:膜厚25μmの感光性樹脂膜(6)
第2のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第3のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第4のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
【0261】
積層体を露光する工程:
次いで、ベーク処理(PAB)後の積層体(6)に対し、アライナー(キヤノン株式会社製、PLA-501F)を用い、コイル形状のパターンを有するマスクを介して、1000mJ/cm(i線積算値)を露光した。
その後、60℃のホットプレートで、45分間の露光後加熱を行った。
【0262】
現像する工程:
次いで、露光後加熱を行った後の積層体(6)に対し、現像液としてPGMEAを用いて、23℃で40分間の溶剤現像(Dip,Vertical)を行い、コイル形状のレジストパターンを得た。
その後、PGMEAを用いて5分間のリンス処理を行った。
【0263】
硬化パターンを得る工程:
次いで、リンス処理後のレジストパターンに対し、オーブンにて温度200℃、1時間の加熱処理を行い、コイル形状の硬化パターンを得た。
【0264】
(実施例4)
第1のレジスト層を形成する工程:
前記支持体上に、感光性組成物(7)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度90℃で5分間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、第1のレジスト層として膜厚25μmの感光性樹脂膜(7)を形成した。
【0265】
第2~第4のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第1のレジスト層である感光性樹脂膜(7)上に、実施例3と同様にして、積層フィルム(F2b)を用いて第2~第4のレジスト層(それぞれ前記感光性樹脂膜(2b))を形成する工程の各操作を行い、前記支持体上に第1~第4のレジスト層がこの順に積層した積層体(7)を得た。
そして、得られた積層体(7)に対し、温度40℃、60分間のベーク処理(PAB)を行った。
【0266】
積層体(7)について
支持体:ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板
第1のレジスト層:膜厚25μmの感光性樹脂膜(7)
第2のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第3のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第4のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
【0267】
積層体を露光する工程、現像する工程、硬化パターンを得る工程:
次いで、ベーク処理(PAB)後の積層体(7)に対し、実施例3と同様にして、積層体を露光する工程、現像する工程、及び硬化パターンを得る工程の各操作を行い、コイル形状の硬化パターンを得た。
【0268】
(比較例3)
第1のレジスト層を形成する工程:
前記支持体上に、感光性組成物(3)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度90℃で5分間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、第1のレジスト層として膜厚25μmの感光性樹脂膜(3)を形成した。
【0269】
第2~第4のレジスト層を形成する工程:
次いで、前記第1のレジスト層である感光性樹脂膜(3)上に、実施例3と同様にして、積層フィルム(F2b)を用いて第2~第4のレジスト層(それぞれ前記感光性樹脂膜(2b))を形成する工程の各操作を行い、前記支持体上に第1~第4のレジスト層がこの順に積層した積層体(3)を得た。
そして、得られた積層体(3)に対し、温度40℃、60分間のベーク処理(PAB)を行った。
【0270】
積層体(3)について
支持体:ビスマレイミドトリアジン樹脂を含む5インチシリコン基板
第1のレジスト層:膜厚25μmの感光性樹脂膜(3)
第2のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第3のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
第4のレジスト層:膜厚55μmの感光性樹脂膜(2b)
【0271】
積層体を露光する工程、現像する工程:
次いで、ベーク処理(PAB)後の積層体(3)に対し、実施例3と同様にして、積層体を露光する工程、及び現像する工程の各操作を行ったところ、前記支持体から積層体(3)が剥離し除去されて、コイル形状のレジストパターン形成は不可であった。
【0272】
上記<硬化パターンの形成>において、各例におけるパターン形成後の状態を、SEM観察(倍率500倍)により目視で評価した。かかる評価は、下記の評価基準に基づいて行い、その結果を表2に示した。
評価基準
A:コイル形状の硬化パターンの形成が確認された。
B:積層体又は硬化パターンを確認できなかった。
かかる評価がAであれば、支持体と硬化パターン(樹脂硬化膜)との密着性が強く、支持体から硬化パターンが剥がれにくい、と言える。
【0273】
【表2】
【0274】
表2に示す結果から、実施例1~4の硬化パターン形成方法によれば、パターンの高アスペクト化が図れ、かつ、支持体から剥がれにくい樹脂硬化膜となり得る積層体、及びコイル形状の硬化パターンを形成できること、が確認された。
【0275】
実施例1~4で用いた感光性組成物(4)~(7)は、比較例1~3で用いた感光性組成物(1)~(3)に比べて、当該積層体の最下層を形成する材料として有用であること、が確認された。
【0276】
以上、添付の図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明はかかる形態例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0277】
10 積層体、10b 露光部、10c 樹脂硬化膜、10d 未露光部、11 第1のレジスト層、12 第2のレジスト層、13 第3のレジスト層、14 第4のレジスト層、20 支持体、90 フォトマスク、110 レジストパターン、120 硬化パターン
図1
図2
図3
図4
図5