(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034067
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】洗面台のオーバーフロー流路用の洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/10 20060101AFI20230306BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230306BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20230306BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20230306BHJP
C11D 3/395 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C11D3/10
C11D3/20
C11D1/14
C11D17/06
C11D3/395
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140137
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】野本 賢也
(72)【発明者】
【氏名】上田 統悟
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB09
4H003AB10
4H003AB15
4H003AB27
4H003BA01
4H003BA09
4H003DA05
4H003DA13
4H003DC02
4H003EA16
4H003EB08
4H003EE01
4H003EE09
4H003FA18
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、洗面台のオーバーフロー流路を簡易に洗浄できる洗浄剤組成物を提供することである。
【解決手段】炭酸塩、酸、及び界面活性剤を含む固形洗浄剤組成物を、洗面台の排水口から排水流路に投入して排水口を塞ぐことにより、固形洗浄剤の発泡により生じた泡が逆流してオーバーフロー流路を満たし、これによりオーバーフロー流路を洗浄できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素塩及び/又は炭酸塩と、酸と、界面活性剤とを含み、固形状である、洗面台のオーバーフロー流路用の洗浄剤組成物。
【請求項2】
更に、漂白剤を含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記酸がクエン酸である、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記アニオン性界面活性剤がα-オレフィンスルホン酸及び/又はその塩である、請求項4に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
洗面台の排水口から排水管内に投入した後に排水口を塞いで使用される、請求項1~5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の洗浄剤組成物を洗面台の排水口から排水管内に投入して排水口を塞ぐ、洗面台のオーバーフロー流路の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄剤組成物を洗面台の排水口から排水管内に投入した後に、水を排水口から排水管内に投入して排水口を塞ぐ、請求項7に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台のオーバーフロー流路を簡易に洗浄できる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、洗面台には、オーバーフロー流路が設けられている。オーバーフロー流路は、洗面台のボウル部の側面上部に設けられたオーバーフロー穴から排水路に接続しており、洗面台の水が溢れないよう水を逃がしたり、水を流す際に排水管の空気を逃がしたりする役割を担っている。
【0003】
一方、洗面台のオーバーフロー流路には、石鹸カス、歯磨き粉、ホコリ、毛髪、垢等が付着し易く、更に湿気が高い環境になっているため、ヌメリやカビが発生して悪臭を放つことがある。洗面台のオーバーフロー流路を衛生的な状態に維持するには、洗浄剤を用いた洗浄が必要になるが、オーバーフロー穴がボウル部の側面にあり且つ小さいため、一般的な排水管用の洗浄剤ではオーバーフロー流路を簡易且つ効率的に洗浄することが困難であった。
【0004】
従来、洗面台のオーバーフロー流路用の洗浄剤として、射量が1mL/秒以上であり、泡の50%液化時間が20秒以上であり、泡比重が0.3g/mL以下である、噴射により洗浄剤を含む泡が形成されるエアゾール製品が提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の技術では、エアゾール製品であるため、漂白剤を配合できず、カビによる黒ずみ等を除去する作用が弱いという欠点がある。更に、エアゾール製品では、1回使用量の価格が高く、容量の大きい上高温にならない保管場所の確保が必要であり、更にエアゾール容器の廃棄に手間がかかるという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、洗面台のオーバーフロー流路を簡易に洗浄できる洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、炭酸塩、酸、及び界面活性剤を含む固形洗浄剤組成物を、洗面台の排水口から排水流路に投入して排水口を塞ぐことにより、固形洗浄剤の発泡により生じた泡が逆流してオーバーフロー流路を満たし、これによりオーバーフロー流路を洗浄できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 炭酸水素塩及び/又は炭酸塩と、酸と、界面活性剤とを含み、固形状である、洗面台のオーバーフロー流路用の洗浄剤組成物。
項2. 更に、漂白剤を含む、項1に記載の洗浄剤組成物。
項3. 前記酸がクエン酸である、項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
項4. 前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
項5. 前記アニオン性界面活性剤がα-オレフィンスルホン酸及び/又はその塩である、項4に記載の洗浄剤組成物。
項6. 洗面台の排水口から排水管内に投入した後に排水口を塞いで使用される、項1~5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
項7. 項1~6のいずれかに記載の洗浄剤組成物を洗面台の排水口から排水管内に投入して排水口を塞ぐ、洗面台のオーバーフロー流路の洗浄方法。
項8. 前記洗浄剤組成物を洗面台の排水口から排水管内に投入した後に、水を排水口から排水管内に投入して排水口を塞ぐ、項7に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤組成物を洗面台の排水口から排水流路に投入すると、排水流路内の封水と接触により炭酸塩と酸が反応して発泡を開始する。排水流路で生じた泡は、本発明の洗浄剤組成物に含まれる界面活性剤の作用によって泡が維持され易くなっている。また、本発明の洗浄剤組成物の排水流路への投入後は排水口が塞がれているため、排水流路内で生じた泡は、排水流路を逆流してオーバーフロー流路に到達し、オーバーフロー流路を満たし、これによって、オーバーフロー流路が洗浄される。このように、本発明の洗浄剤組成物によれば、洗面台の排水口から排水流路に投入して排水口を塞ぐという簡便な手法により、洗面台のオーバーフロー流路を洗浄することができる。
【0010】
また、本発明の洗浄剤組成物には、漂白剤を配合することもできるので、オーバーフロー流路に付着したカビの除菌効果を増強することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】オーバーフローがある洗面台の模式図である。
【
図2】試験例1及び2で使用した試験用配管の模式図である。
【
図3】試験例3において、実施例1の洗浄剤組成物を洗面台の排水管内に投入し、洗面台の状態を観察した写真である。Aは、排水口の蓋をした場合の写真であり、Bは蓋をしなかった場合の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.洗浄剤組成物
本発明の洗浄剤組成物は、洗面台のオーバーフロー流路の洗浄に使用される固形洗浄剤組成物であって、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩と、酸と、界面活性剤とを含むことを特徴とする。以下、本発明の洗浄剤組成物について、詳述する。
【0013】
[炭酸水素塩及び/又は炭酸塩]
本発明の洗浄剤組成物は、発泡成分として炭酸水素塩及び/又は炭酸塩を含有する。
【0014】
炭酸水素塩の種類については、酸と反応して発泡できることを限度として特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩が挙げられる。また、炭酸塩の種類については、酸と反応して発泡できることを限度として特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物において、炭酸水素塩及び炭酸塩の中から1種の化合物を選択して単独で使用してもよく、またこれらの中から2種以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
また、炭酸水素塩と炭酸塩を組み合わせて使用する場合には、炭酸塩と炭酸水素塩の複塩を使用してもよい。炭酸塩と炭酸水素塩の複塩としては、例えば、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物において、発泡性を高め、より一層効率的にオーバーフロー流路の洗浄を行うという観点から、炭酸水素塩と炭酸塩を組み合わせて使用することが好ましい。炭酸水素塩と炭酸塩を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、炭酸水素塩100重量部当たり、炭酸塩が1~1000重量部、好ましくは10~250重量部、より好ましくは25~75重量部が挙げられる。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物における炭酸水素塩及び/又は炭酸塩の含有量としては、例えば、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩の総量で20~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~60重量%が挙げられる。このような含有量で炭酸水素塩及び/又は炭酸塩を含むことにより、優れた発泡性を付与でき、排水流路内で生じた泡をオーバーフロー流路まで逆流させて満たさせる特性を備え易くなる。
【0019】
[酸]
本発明の洗浄剤組成物は、発泡成分として炭酸水素塩及び/又は炭酸塩を含有する。本発明の洗浄剤組成物では、炭酸塩と共に酸を含むことにより、洗面台の排水口から排水流路に投入されて水と接触することにより炭酸ガスによる発泡が可能になる。
【0020】
酸は、固体状又は液状のいずれの形態のものであってもよいが、好ましくは固体状が挙げられる。また、酸は、有機酸又は無機酸のいずれであってもよいが、好ましくは有機酸が挙げられる。
【0021】
酸として、具体的には、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸等の有機酸;リン酸、スルファミン酸、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
これらの酸の中でも、好ましくは固体状の有機酸、更に好ましくはクエン酸が挙げられる。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物における酸の含有量としては、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩の含有量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、5~70重量%、好ましくは15~60重量%、より好ましくは30~50重量%が挙げられる。このような含有量で酸を含むことにより、優れた発泡性を付与でき、排水流路内で生じた泡をオーバーフロー流路まで逆流させて満たさせる特性を備え易くなる。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物において、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩と酸との比率については、前記各含有量に応じた範囲内であればよいが、例えば、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩との総量100重量部当たり、酸が総量で1~1000重量部、好ましくは20~200重量部、より好ましくは50~120重量部が挙げられる。
【0025】
[界面活性剤]
本発明の洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有する。界面活性剤は、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩と酸との反応で生じた泡を保持する作用を示すと共に、洗浄成分としてオーバーフロー流路に付着している汚れを除去する作用を示す。
【0026】
界面活性剤の種類については、洗浄剤の成分として使用可能なものであることを限度として特に制限されず、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれであってもよい。本発明の洗浄剤組成物において、界面活性剤は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
これらの界面活性剤の中でも、発泡した泡を安定に保持させて、オーバーフロー流路の洗浄効果をより向上させるという観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤が挙げ挙げられる。
【0028】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、αオレフィンスルホン酸及びその塩;ラウリル硫酸、ラウレス硫酸、ミリスチル硫酸、セチル硫酸、オレイル硫酸等のアルキル硫酸エステル及びその塩;N-ミリストイルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ステアロイルグルタミン酸、ココイルグリシン等のN-アシルアミノ酸及びその塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及びその塩;ラウロイルサルコシン等のN-アシルサルコシン酸及びその塩;ミリストイルメチルタウリン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン、ラウリルメチルタウリン等の高級脂肪酸アミドスルホン酸等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤において、アルキル基、アシル基、又はアルケニル基の平均炭素数としては、例えば8~20が挙げられる。また、これらのアニオン性界面活性剤の塩の形態としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤の中でも、発泡した泡を安定に保持させて、オーバーフロー流路の洗浄効果をより一層高めるという観点から、好ましくはαオレフィンスルホン酸及びその塩が挙げ挙げられる。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物における界面活性剤の含有量としては、界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.05~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは1~5重量%が挙げられる。このような含有量で界面活性剤を含むことにより、生じた泡を保持する作用と、オーバーフロー流路に対する洗浄作用とを良好に発揮することができる。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物において、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩と界面活性剤との比率については、前記各含有量に応じた範囲内であればよいが、例えば、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩との総量100重量部当たり、界面活性剤が総量で0.01~100重量部、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは1~10重量部が挙げられる。
【0031】
[漂白剤]
本発明の洗浄剤組成物には、前記成分に加えて、漂白剤が含まれていてもよい。漂白剤を含む場合には、オーバーフロー流路に付着したカビの除菌効果を向上させることが可能になり、オーバーフロー流路の洗浄効果をより一層向上させることができる。
【0032】
漂白剤の種類については、特に制限されないが、例えば、塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、還元系漂白剤等が挙げられる。本発明の洗浄剤組成物において、漂白剤は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
これらの漂白剤の中でも、好ましくは塩素系漂白剤が挙げ挙げられる。
【0034】
塩素系漂白剤としては、例えば、ジクロロイソシアヌル酸塩、次亜塩素酸塩等が挙げられる。ジクロロイソシアヌル酸塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。次亜塩素酸塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの塩素系漂白剤の中でも、好ましくはジクロロイソシアヌル酸塩が挙げられる。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物に漂白剤を含有させる場合、その含有量については、漂白剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは5~15重量%が挙げられる。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物に漂白剤を含有させる場合、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩と漂白剤との比率については、前記各含有量に応じた範囲内であればよいが、例えば、炭酸水素塩及び/又は炭酸塩との総量100重量部当たり、漂白剤が総量で0.1~100重量部、好ましくは1~50重量部、より好ましくは5~25重量部が挙げられる。
【0037】
[その他の成分]
本発明の洗浄剤組成物には、前記成分に加えて、必要に応じて、他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、キレート剤、pH調整剤、酵素、着色料、香料、消臭剤、増粘剤、保存剤、除菌剤、抗菌・殺菌剤、防腐剤、防錆剤、増量剤等が挙げられる。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物の形状については、固形状であることを限度として特に制限されず、粉末状、顆粒状、錠剤状等のいずれであってもよいが、粉末状であることが好ましい。
【0039】
[使用方法]
図1に示すように、オーバーフローがある洗面台は、ボウル部1の底部に排水口2と、ボウル部1の側面上部にオーバーフロー穴3とが設けられている。排水口2は排水流路(主排水流路)4に接続しており、オーバーフロー流路5はオーバーフロー穴3から排水流路4に接続している。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物は、オーバーフロー穴と排水流路を接続しているオーバーフロー流路を洗浄するために使用される。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物を使用して洗面台のオーバーフロー流路を洗浄するには、洗面台の排水口から排水管内に本発明の洗浄剤組成物を投入し、排水口を塞げばよい。
図1に示すように、洗面台の排水流路4は、所定の水位で水が封水として溜められるようにU字部41がある。洗面台の排水口から排水管内に投入された本発明の洗浄剤組成物は排水管のU字部の封水中に留まって発泡を開始する。排水管内で生じた泡は、排水口が塞がれた状態になっていれば排水口から泡が溢れ出ず、オーバーフロー流路に流入してオーバーフロー流路を満たすことになり、これによりオーバーフロー流路の洗浄が行われる。
【0042】
排水管内に投入する本発明の洗浄剤組成物の量については、洗浄剤組成物の組成、洗面台の大きさ、オーバーフロー流路の径や長さ等に応じて適宜設定すればよいが、通常、1回の洗浄当たり、本発明の洗浄剤組成物が10~30g程度、好ましくは10~22g程度、より好ましくは16~22g程度であればよい。
【0043】
また、本発明の洗浄剤組成物は、排水管内に投入された後に、生じた泡がオーバーフロー穴から溢れ出るように発泡性を備えていることが好ましい。このように、排水管内に投入された本発明の洗浄剤組成物によって生じた泡がオーバーフロー穴から溢れ出ることによって、オーバーフロー流路の洗浄効果を高めることができる。
【0044】
また、本発明の洗浄剤組成物を使用したオーバーフロー流路の洗浄時に、発泡性を高めて、オーバーフロー流路の洗浄効果を更に向上させるために、本発明の洗浄剤組成物を排水管内に投入した後に、排水管内に更に水を投入して排水口を塞ぐことが好ましい。本発明の洗浄剤組成物の投入後に水を投入する場合、投入される水量については、洗面台の大きさ、排水管のU字部に貯留できる封水の量等に応じて適宜設定すればよいが、通常15~100ml程度、好ましくは40~85ml程度、より好ましくは45~60ml程度が挙げられる。また、投入される水の温度については、特に制限されず、常温水又は冷水であってもよいが、発泡性を更に高めて、オーバーフロー流路の洗浄効果をより一層向上させるために、4~50℃程度、好ましくは20~50℃程度、より好ましくは38~40℃程度の温水が挙げられる。
【0045】
本発明の洗浄剤組成物を排水管内に投入して、10分間程度、好ましくは20分間程度、より好ましくは30分間程度が経過すると、オーバーフロー流路を満たした泡によってオーバーフロー流路が十分に洗浄された状態になるため、その後、オーバーフロー穴に適量の水を注いで、オーバーフロー流路内の泡を洗い流せばよい。
【0046】
本発明の洗浄剤組成物を排水管内に投入した後に排水口を塞ぐには、洗面台に付属している排水栓を使用することが簡便で好ましいが、濡れた布帛(雑巾やタオル等)等を用いて排水口を塞いでもよい。
【0047】
また、本発明の洗浄剤組成物を洗面台の排水管内に投入して排水口を塞ぐと、オーバーフロー流路だけでなく、排水管のU字部に貯留している封水の上面から排水口までの排水管内も泡で満たされるため、排水管の洗浄も同時に行うことができる。
【0048】
2.洗浄方法
本発明の洗浄方法は、洗面台のオーバーフロー流路を洗浄するための方法であって、洗面台の排水口から排水管内に前記洗浄剤組成物を投入した後に排水口を塞ぐことを特徴とする。当該洗浄方法に使用される洗浄剤組成物の組成、洗浄の具体的手法等については、前記「1.洗浄剤組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例0049】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0050】
試験例1
1.試験方法
図2に示す試験用配管を用意した。
図2に示す試験用配管6は、洗面台の配管を模しており、aの領域は排水流路、b及びcの領域はオーバーフロー流路を模している。当該試験用配管には排水口を模した穴Aが設けられており、
図2に示す試験用配管において、当該穴Aは栓7で蓋がされている状態になっている。また、当該試験用配管のaの領域の底部は、塞がれており、水8を貯留できるようになっている。当該試験用配管において、aの領域は292mm、bの領域は129mm、cの領域は507mm、配管の内径は32mmである。また、当該試験用配管は、透明プラスチックで形成されており、外部から試験用配管の内部が視認できるようになっている。
【0051】
表1に示す組成の粉末状の洗浄剤組成物を調製し、前記試験用配管を用いて、以下の試験条件1及び2で、試験用配管内での洗浄剤組成物の発泡性を評価した。
【0052】
【0053】
<試験条件1>
試験用配管の穴Aから38℃の水400mlを投入し、排水管を模したaの領域の底部に貯留させた。次いで、試験用配管の穴Aから洗浄剤組成物10g、20g、30g又は40gを投入し、試験用配管内の水中に浸漬させた。洗浄剤組成物の投入後直ぐに穴Aに栓をし、洗浄剤組成物の投入から5分後に、発泡量(形成されている泡の体積)を求めた。
【0054】
<試験条件2>
試験用配管の穴Aから4℃の水400mlを投入し、排水管を模したaの領域に貯留させた。次いで、試験用配管の穴Aから洗浄剤組成物10g、20g、30g又は40gを投入し、更に、試験用配管の穴Aから40℃の水を15ml、45ml、60ml又は75ml追加投入した。40℃の水の追加投入後直ぐに穴Aに栓をし、水の追加投入から5分後に、発泡量(形成されている泡の体積)を求めた。
【0055】
2.試験結果
結果を表2に示す。試験条件1及び2において、実施例1の洗浄剤組成物は、洗面台の配管を模した試験用配管内で高い発泡性を示し、十分な泡を生じさせていた。特に、洗浄剤組成物を投入後に40℃の水の追加投入した試験条件2では、発泡性が更に向上していた。洗面台において、排水管の封水の水面からオーバーフロー口までの流路の容積は通常150~547ml程度であることから、本試験において530ml程度以上の発泡量が認められている場合には、排水管内に投入するだけでオーバーフロー流路の殆どを泡で満たし、オーバーフロー流路の洗浄が可能になっているといえる。特に、本試験において、550ml以上、特に700ml以上の発泡量が認められる条件では、オーバーフロー流路を十分な泡で満たすことができ、オーバーフロー流路の洗浄効果の向上が十分に期待できる。
【0056】
【0057】
試験例2
1.試験方法
表3に示す組成の粉末状の洗浄剤組成物を調製し、以下の方法で発泡性を評価した。先ず、2L容のメスシリンダーに、5℃又は30℃の蒸留水を500ml入れた。次に、粉末状の洗浄剤組成物10gをメスシリンダー内に投入し、投入から1分後及び10分後の泡立ち量を求めた。泡立ち量は、泡の最上面の目盛の値から500mlを差し引くことにより求めた。
【0058】
2.試験結果
結果を表3に示す。実施例1~5の洗浄剤組成物は、排水管内に投入して生じた泡が逆流してオーバーフロー流路を満たし得る程度に、高い発泡性を示すことが分かった。特に、界面活性剤としてαオレフィンスルホン酸ナトリウムを使用した実施例1の洗浄剤組成物は、30℃の蒸留水を使用した場合に発泡性が顕著に高く、オーバーフロー流路の洗浄に特に好適であることが確認された。
【0059】
【0060】
試験例3
表1に示す実施例1の洗浄剤組成物を使用して、実際の洗面台(FTV1N-605SY/VP1W、株式会社LIXIL)のオーバーフロー流路の洗浄を行った。
【0061】
具体的には、実施例1の洗浄剤組成物20gを洗面台の排水口から排水管内に投入し、その後40℃の水を50ml投入して直ちに排水口に蓋をした。
図3のAに、水投入から3分後の洗面台の状態を観察した写真を示す。水を投入してから約1分後にはオーバーフロー口から洗浄剤組成物により生じた泡が溢れ出てきており、オーバーフロー流路を洗浄できていた。
【0062】
また、比較のために、水の投入後に排水口に蓋をしなかったこと以外は、前記と同条件で試験を行った。
図3のBに、水投入から3分後の洗面台の状態を観察した写真を示す。水の投入後に排水口に蓋をしなかった場合には、排水口から洗浄剤組成物により生じた泡が溢れ出てきたが、オーバーフロー口から泡があふれ出すことはなかった。
【0063】
即ち、実施例1の洗浄剤組成物を排水管内に投入して排水口を塞ぐことにより、洗浄剤組成物から生じた泡でオーバーフロー流路を満たすことができ、オーバーフロー流路を洗浄できることが分かった。