(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034245
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】映像符号化装置及び映像符号化方法
(51)【国際特許分類】
H04N 19/115 20140101AFI20230306BHJP
【FI】
H04N19/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140394
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】新井 大地
(72)【発明者】
【氏名】岩村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】井口 和久
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 敦郎
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159SS02
5C159TA60
5C159TB01
5C159TB03
5C159TB04
5C159TC02
5C159TC08
5C159TC38
5C159TD02
5C159TD03
5C159TD05
5C159TD06
5C159TD12
5C159TD16
5C159TD17
5C159UA02
(57)【要約】
【課題】映像品質の向上を図る映像符号化装置及び映像符号化方法を提供すること。
【解決手段】複数の放送番組それぞれの映像信号を符号化し、符号化された各映像信号を同時に送信する映像符号化装置100であって、第1放送番組における第1映像信号に対して、ビットレートと映像品質の関係を表す第1RQカーブを推定するとともに、第2放送番組における第2映像信号に対して、第2RQカーブを推定するRQカーブ推定部120と、第1RQカーブに基づいて、第1映像信号の第1ビットレートを推定するとともに、第2RQカーブに基づいて、第2映像信号の第2ビットレートを推定するビットレート推定部130と、第1映像信号に対して第1ビットレートを用いて符号化を行うとともに、第2映像信号に対して第2ビットレートを用いて符号化を行う符号化部140と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放送番組それぞれの映像信号を符号化し、符号化された各前記映像信号を同時に送信する映像符号化装置であって、
第1放送番組における第1映像信号に対して、ビットレートと映像品質の関係を表す第1RQ(Rate Quality)カーブを推定するとともに、第2放送番組における第2映像信号に対して、第2RQカーブを推定するRQカーブ推定部と、
前記第1RQカーブに基づいて、前記第1映像信号の第1ビットレートを推定するとともに、前記第2RQカーブに基づいて、前記第2映像信号の第2ビットレートを推定するビットレート推定部と、
前記第1映像信号に対して前記第1ビットレートを用いて符号化を行うとともに、前記第2映像信号に対して前記第2ビットレートを用いて符号化を行う符号化部と
を備える映像符号化装置。
【請求項2】
前記ビットレート推定部は、前記第1ビットレートと前記第2ビットレートとの和が一定であることを条件に、前記第1ビットレートと前記第2ビットレートとを推定する、
請求項1記載の映像符号化装置。
【請求項3】
更に、前記第1映像信号を第1ビデオチャンクごとに分割するとともに、前記第2映像信号を第2ビデオチャンクごとに分割する映像分割部を備え、
前記RQカーブ推定部は、前記第1映像信号の前記第1ビデオチャンクごとに前記第1RQカーブを推定するとともに、前記第2映像信号の前記第2ビデオチャンクごとに前記第2RQカーブを推定し、
前記ビットレート推定部は、前記第1映像信号の前記第1ビデオチャンクごとに前記第1ビットレートを推定するとともに、前記第2映像信号の前記第2ビデオチャンクごとに前記第2ビットレートを推定する、
請求項1記載の映像符号化装置。
【請求項4】
前記第1ビデオチャンクの時間単位と前記第2ビデオチャンクの時間単位は一定又は可変である、請求項3記載の映像符号化装置。
【請求項5】
前記RQカーブ推定部は、RQカーブの教師データを保持するメモリを有し、
前記RQカーブ推定部は、前記教師データと前記第1映像信号とに基づいて、前記第1RQカーブを推定するとともに、前記教師データと前記第2映像信号とに基づいて、前記第2RQカーブを推定する、
請求項1記載の映像符号化装置。
【請求項6】
前記ビットレート推定部は、前記第1ビットレートと前記第2ビットレートとの和が一定であることと、前記第1ビデオチャンクと前記第2ビデオチャンクの映像品質が一定値以下とならないこととを制約条件として、前記第1映像信号の各前記第1ビデオチャンクの映像品質の平均値が最良となる前記第1ビットレートを推定するとともに、前記第2映像信号の各前記第2ビデオチャンクの映像品質の平均値が最良となる前記第2ビットレートを推定する、
請求項3記載の映像符号化装置。
【請求項7】
RQカーブ推定部と、ビットレート推定部と、符号化部とを有し、複数の放送番組それぞれの映像信号を符号化し、符号化された各前記映像信号を同時に送信する映像符号化装置における映像符号化方法であって、
前記RQカーブ推定部により、第1放送番組における第1映像信号に対して、ビットレートと映像品質の関係を表す第1RQカーブを推定するとともに、第2放送番組における第2映像信号に対して、第2RQカーブを推定し、
前記ビットレート推定部により、前記第1RQカーブに基づいて、前記第1映像信号の第1ビットレートを推定するとともに、前記第2RQカーブに基づいて、前記第2映像信号の第2ビットレートを推定し、
前記符号化部により、前記第1映像信号に対して前記第1ビットレートを用いて符号化を行うとともに、前記第2映像信号に対して前記第2ビットレートを用いて符号化を行う、
映像符号化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像符号化装置及び映像符号化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタル放送では、映像信号及び音声信号などに対して一定のビットレートを配分し、配分されたビットレートで映像信号及び音声信号に対して符号化が行われる場合がある。この場合、符号化された映像信号及び音声信号は、多重化されて伝送される。
【0003】
他方、複数の番組を同時に伝送する技術も注目されている。例えば、1つの物理チャネルを用いて複数の異なる番組の映像信号等を伝送することで、各家庭では、スポーツ番組とニュース番組等、異なる番組を同時に視聴することが可能となる。
【0004】
映像信号の符号化方法として、例えば、以下の技術がある。すなわち、大量の映像信号から、ビットレートと歪み(又は映像品質)との関係を表すR-D(Rate-Distortion)カーブの教師データを事前に算出してクラスタリングする。そして、入力映像の映像信号に対してその特徴量(動きベクトル等)に基づいて、機械学習によって、入力映像に対するR-Dカーブを推定する。最後に、推定したR-Dカーブから、入力映像に対する最適なビットレートを決定し、決定したビットレートを用いて符号化(AV1)を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rate Distortion Optimization Over Large Scale Video Corpus With Machine Learning, Sam John, Akshay Gadde and Balu Adsumilli, Google, 1286-1290. 10.1109/ICIP40778.2020.9191120, 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、映像品質の向上を図る映像符号化装置及び映像符号化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る映像符号化装置は、複数の放送番組それぞれの映像信号を符号化し、符号化された各前記映像信号を同時に送信する映像符号化装置であって、第1放送番組における第1映像信号に対して、ビットレートと映像品質の関係を表す第1RQ(Rate Quality)カーブを推定するとともに、第2放送番組における第2映像信号に対して、第2RQカーブを推定するRQカーブ推定部と、第1RQカーブに基づいて、第1映像信号の第1ビットレートを推定するとともに、第2RQカーブに基づいて、第2映像信号の第2ビットレートを推定するビットレート推定部と、第1映像信号に対して第1ビットレートを用いて符号化を行うとともに、第2映像信号に対して第2ビットレートを用いて符号化を行う符号化部と、を備える。
【0008】
第2の態様に係る映像符号化方法は、RQカーブ推定部と、ビットレート推定部と、符号化部とを有し、複数の放送番組それぞれの映像信号を符号化し、符号化された各前記映像信号を同時に送信する映像符号化装置における映像符号化方法であって、RQ推定部により、第1放送番組における第1映像信号に対して、ビットレートと映像品質の関係を表す第1RQカーブを推定するとともに、第2放送番組における第2映像信号に対して、第2RQカーブを推定し、ビットレート推定部により、第1RQカーブに基づいて、第1映像信号の第1ビットレートを推定するとともに、第2RQカーブに基づいて、第2映像信号の第2ビットレートを推定し、符号化部により、第1映像信号に対して第1ビットレートを用いて符号化を行うとともに、第2映像信号に対して第2ビットレートを用いて符号化を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、映像品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る映像符号化装置の構成例を表す図である。
【
図2】一実施形態に係る入力映像の例を表す図である。
【
図3】一実施形態に係るRQカーブの例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0012】
上述したように、複数の番組を同時に伝送する場合、番組ごとに一定のビットレートを配分し、配分されたビットレートを用いて、各番組における映像信号の符号化を行う場合がある。このようなビットレートを、符号化ビットレートと称する場合がある。
【0013】
しかし、番組ごとに映像は異なり、符号化において必要とするビットレートは時々刻々と変化する。このような状況において、一定のビットレートで映像信号を符号化しても、ビットレートが十分な場合もあれば、ビットレートが足りない場合もある。ビットレートが足りない場合において、当該ビットレートで映像信号を符号化しても、符号化後の映像品質が一定以下に劣化する場合もある。
【0014】
そこで、一実施形態では、映像品質の向上を図ることを目的としている。具体的な実施形態について、以下に説明する。
【0015】
(映像符号化装置の構成例)
図1は、一実施形態に係る映像符号化装置100の構成例を表す図である。
【0016】
図1に示すように映像符号化装置100は、映像分割部110と、RQ(Rate-Quality)カーブ推定部120、ビットレート推定部130、及び符号化部140を有する。
【0017】
映像分割部110は、複数の放送番組における各映像信号を入力する。そして、映像分割部110は、各映像信号を所定の時間単位で分割してビデオチャンクを生成する。映像分割部110は、生成したビデオチャンクをRQカーブ推定部120へ出力する。
【0018】
図2は、一実施形態に係る入力映像の例を表す図である。
図2の例では、天気予報番組に関する映像V1と、紀行番組に関する映像V2が入力される例を表している。この場合、映像分割部110は、第1放送番組(
図2の例では天気予報番組)における第1映像信号と、第2放送番組(
図2の例では紀行番組)における第2映像信号とを入力する。そして、映像分割部110は、第1映像信号を第1ビデオチャンクごとに分割し、第2映像信号を第2ビデオチャンクごとに分割する。
【0019】
なお、ビデオチャンクの時間単位は、フレーム単位でもよいし、GOP(Group Of Picture)単位でもよいし、数秒単位などの任意の時間単位でもよい。また、ビデオチャンクの時間単位は、一定でもよいし、可変でもよい。例えば、ビデオチャンクの時間単位は、映像のシーンチェンジに応じて可変としてもよい。第1ビデオチャンクと第2ビデオチャンクは同じ時間単位でもよいし、異なる時間単位でもよい。
【0020】
また、
図2の例では、映像符号化装置100は、2つの放送番組の各映像信号を入力する例を表しているが、3つ以上の放送番組の各映像信号を入力してもよい。
【0021】
さらに、
図1の例では、映像分割部110等を含む各ブロックには、複数の入力があり、複数の出力があるが、入力と出力ともに、それぞれ1本の線で表している。
【0022】
RQカーブ推定部120は、映像分割部110から出力された各ビデオチャンクに対して、RQカーブを推定する。
図2の例では、RQカーブ推定部120は、映像V1のビデオチャンクに対して、第1RQカーブを推定し、映像V2のビデオチャンクに対して、第2RQカーブを推定する。
【0023】
図3は、一実施形態に係るRQカーブの例を表す図である。
図3は、第1放送番組(
図2の例では天気予報番組)のあるビデオチャンクに対するRQカーブのグラフ例と、第2放送番組(
図2の例では紀行番組)のあるビデオチャンクに対するRQカーブのグラフ例を表している。RQカーブは、例えば、ビットレートと映像品質の関係を表す。
図3では、横軸がビットレートを表し、縦軸が映像品質を表している。
図3の例では、映像品質は、PSNR(Peak Signal to Noise Ratio)で表されているが、VMAF(Video Multimethod Assessment Fusion)又はSSIM(Structural Similarity)などの評価指標で表されてもよい。また、ビットレートと映像品質との関係が表されていればよく、RQカーブ以外にも、例えば、上述したR-Dカーブであってもよい。
【0024】
RQカーブ推定部120は、機械学習を用いて、RQカーブを推定する。ただし、以下においては、機械学習の例として、ニューラルネットワークを用いた場合で説明する。RQカーブの推定は、ニューラルネットワークによる機械学習以外の機械学習の手法が適用されてもよい。
【0025】
RQカーブの推定に関し、具体的には、RQカーブの教師データセットを作成する段階と、作成した教師データを用いた機械学習によるRQカーブの推定段階の2段階がある。以下、順番に説明する。
【0026】
(1)教師データセット作成段階
教師データ作成段階は、映像符号化装置100に実際に各映像信号が入力される前に行われる。
【0027】
最初に、任意のビデオチャンクに対して複数のビットレートで符号化が行われる。符号化自体は、例えば、映像符号化装置100の符号化部140を用いてもよいし、所定の装置を用いてもよい。
【0028】
そして、符号化の結果、ビットレートごとに、映像品質を測定する。測定自体は、例えば、当該所定の装置などを用いてもよい。これにより、ビットレートと映像品質との関係を得ることができる。これを、大量のビデオチャンクに対して実行し、大量のRQカーブを算出する。1つ1つのRQカーブは、あるビデオチャンク(の全画素値)における、ビットレートと映像品質との関係を表してよい。
【0029】
次に、算出したRQカーブに対して、公知のクラスタリング手法(例えば、k-means法など)を用いて、RQカーブをクラスタリングする。そして、各クラスタにラベルを割り当て、ラベルが割り当てられたRQカーブの教師データセットを作成する。
【0030】
このようなクラスタリングから教師データセットの作成までは、例えば、当該所定の装置で行われる。そして、作成された教師データセットは、例えば、映像符号化装置100のメモリに記憶される。当該メモリは、RQカーブ推定部120の内部に設けられてもよいし、RQカーブ推定部120の外部であって、映像符号化装置100の内部に設けられてもよい。
【0031】
(2)機械学習によるRQカーブの推定
次に、RQカーブの推定が行われる。具体的には、RQカーブ推定部120は、メモリに記憶した教師データセットを用いて、教師データと第1映像信号とに基づいて、第1RQカーブを推定するとともに、教師データと第2映像信号とに基づいて、第2RQカーブを推定する。例えば、
図2に示すように、RQカーブ推定部120は、第1映像信号の第1ビデオチャンクごとに第1RQカーブを推定するとともに、第2映像信号の第2ビデオチャンクごとに第2RQカーブを推定する。
【0032】
ここで、RQカーブ推定部120は、以下のようにして、ニューラルネットワークによる機械学習を用いて、各RQカーブを推定する。すなわち、RQカーブ推定部120は、映像分割部110から入力したビデオチャンクの全画素値を計算する。そして、RQカーブ推定部120は、当該全画素値を、ニューラルネットワークに対する入力とし、所定のRQカーブのクラスタラベルの出力を、ニューラルネットワークにより学習する。RQカーブ推定部120は、学習の結果得られたクラスタのRQカーブ(教師データ)の中央軌跡を、映像分割部110から入力したビデオチャンクに対応するRQカーブの推定結果として得ることができる。
【0033】
図3の例では、推定結果として、第1放送番組のあるビデオチャンクにおけるRQカーブ(第1RQカーブ)と、第2放送番組のあるビデオチャンクにおけるRQカーブ(第2RQカーブ)の例を表している。
【0034】
以上が、機械学習を用いたRQカーブの推定例である。
【0035】
図1に戻り、RQカーブ推定部120は、各放送番組における映像信号(のビデオチャンク)に対応するRQカーブをビットレート推定部130へ出力する。
【0036】
ビットレート推定部130は、各RQカーブに基づいて、各映像信号のビットレートを推定する。
図3の例では、ビットレート推定部130は、第1RQカーブに基づいて、第1映像信号の(第1ビデオチャンクにおける)第1ビットレートを推定するとともに、第2RQカーブに基づいて、第2映像信号の(第2ビデオチャンクにおける)第2ビットレートを推定する。
【0037】
ここで、ビットレート推定部130は、第1ビットレートと第2ビットレートとの和が一定であることと、第1ビデオチャンクと第2ビデオチャンクの映像品質が一定値以下とならないこととを制約条件として、第1映像信号の各第1ビデオチャンクの映像品質の平均値が最良となる第1ビットレートを推定するとともに、第2映像信号の各第2ビデオチャンクの映像品質の平均値が最良となる第2ビットレートを推定する。
【0038】
具体的には、ビットレート推定部130は、以下の式を解くことで、最適なRQ点を推定し、推定したRQ点におけるビットレートを推定する。
【0039】
【0040】
【数2】
ここで、nはビデオチャンク数、q
kはk番目のビデオチャンクの映像品質、r
kはk番目のビデオチャンクのビットレート、Rは送出ビットレートの和、Q
minは許容される映像品質の下限をそれぞれ表す。
【0041】
数2は制約条件を表す。各ビデオチャンクのビットレートr1,r2,…,rnの和が、送出ビットレートRと等しく、かつ、k番目のビデオチャンクの映像品質qkが、許容される映像品質の下限Qmin以上であることが制約条件となっている。そして、数1は、このような制約条件で、各ビデオチャンクの映像品質の平均値が最良となるRQ点を求めることを表している。
【0042】
図3は、第1放送番組における最適なRQ点と、第2放送番組における最適なRQ点の例を表している。
図3の例では、ビットレート推定部130は、第1放送番組のビットレートとして、8Mbpsを推定し、第2放送番組のビットレートとして12Mbpsを推定する例を表している。
【0043】
このように、ビットレート推定部130は、放送番組ごとに、数1と数2とを用いて最適なRQ点を求め、求めたRQ点から、各放送番組のビットレートを推定する。ビットレート推定部130は、推定した各放送番組のビットレートを符号化部140へ出力する。
【0044】
符号化部140は、映像分割部110から出力された各放送番組の映像信号に対して、ビットレート推定部130から出力された各放送番組のビットレートを用いて符号化を行う。
図2の例では、符号化部140は、第1映像信号(の第1ビデオチャンク)に対して第1ビットレート(例えば、8Mbps)を用いて符号化を行うとともに、第2映像信号(の第2ビデオチャンク)に対して第2ビットレート(例えば、12Mbps)を用いて符号化を行う。符号化は、例えば、映像信号に対する圧縮符号化である。圧縮符号化としては、MPEG(Moving Picture Experts Group)-2、HEVC(High Efficiency Video Coding)、VVC(Versatile Video Coding)などの公知の符号化方式が用いられてよい。
【0045】
また、符号化部140は、各放送番組の映像信号に対して、ビットレート推定部130で推定されたビットレートで、符号化後の映像信号が出力されるように調整を行ってもよい。符号化部140は、映像分割部110、RQカーブ推定部120、及びビットレート推定部130における処理に要する時間を考慮して、符号化対象の映像信号をメモリなどに一定時間バッファリングすることで、当該映像信号を遅延させるようにしてもよい。又は、符号化部140は、このようなバッファリングを行わないで、ビットレート推定部130における処理が完了次第、推定されたビットレートを符号化処理に反映するようにしてもよい。更に、符号化部140は、推定されたビットレートと現在のビットレートとの差が閾値より大きい場合、映像品質に急激な変化が生じないように、各映像のビットレートを緩やかに変化させて、推定されたビットレートに近づくように符号化を行ってもよい。
【0046】
映像符号化装置100は、例えば、各放送番組における符号化された映像信号を、多重化して送信する。映像符号化装置100から送信される符号化後の映像信号の送出ビットレートは、一定のビットレートである。そのため、ビットレート推定部130では、上述したように、推定した各放送番組のビットレートの和が一定の送出ビットレートとなることを条件に、各放送番組のビットレートを推定するようにしている。
【0047】
(映像符号化装置の動作例)
次に、映像符号化装置100における動作例について説明する。
【0048】
図4は、一実施形態に係る映像符号化装置100における動作例を表す図である。
【0049】
図4に示すように、ステップS10において、映像符号化装置100は処理を開始する。
【0050】
ステップS11において、映像分割部110は、複数の放送番組の各映像信号を所定の時間単位で分割してビデオチャンクを生成する。
【0051】
ステップS12において、RQカーブ推定部120は、映像分割部110で生成された、複数の放送番組の各ビデオチャンクに対して、RQカーブを推定する。上述したように、RQカーブ推定部120は、予めセットしたRQカーブの教師データを用いて、機械学習により、各ビデオチャンクに対するRQカーブを推定する。
【0052】
ステップS13において、ビットレート推定部130は、RQカーブ推定部120で推定された、複数の放送番組の各RQカーブに基づいて、各放送番組のビットレートを推定する。
【0053】
ステップS14において、符号化部140は、ビットレート推定部130で推定された各放送番組のビットレートを用いて、各放送番組の映像信号に対して符号化を行う。
【0054】
そして、ステップS15において、映像符号化装置100は、一連の処理を終了する。
【0055】
以上、一実施形態に係る映像符号化装置100について説明した。このような映像符号化装置100において、例えば、以下のような効果がある。
【0056】
すなわち、映像符号化装置100では、符号化前に、複数の映像の各々に特性に応じたRQカーブを推定するようにしている。そのため、映像符号化装置100では、複数の映像のRQ点の全体最適化が可能となる。
【0057】
この際、映像符号化装置100は、放送番組ごとにビットレートを推定し、推定したビットレートを用いて、各放送番組の映像信号を符号化する。映像符号化装置100では、各放送番組の映像の変化又は映像の符号化難易度などに応じたビットレートを推定することが可能であるため、そのような変化又は難易度に応じた符号化を行うことが可能となる。
【0058】
よって、映像符号化装置100は、放送番組ごとにその内容に関わらず一定のビットレートを配分して符号化を行う場合と比較して、伝送される映像の品質の向上を図ることが可能となる。
【0059】
また、一実施形態に係る映像符号化装置100では、各映像信号を時間単位で分割して、ビデオチャンクを生成し、生成したビデオチャンクごとに、ビットレートを推定するようにしている。そのため、映像符号化装置100では、例えば、映像シーンに対応したビットレートを推定することができ、映像の符号化難易度に応じたビットレートで符号化を行うことが可能となる。
【0060】
更に、一実施形態に係る映像符号化装置100では、RQカーブの教師データを用いて機械学習により、ビデオチャンクに対するRQカーブを推定するようにしている。そのため、ビデオチャンクに対して複数のビットレートで実際に符号化してRQカーブを推定する場合と比較して、映像符号化装置100では、そのような符号化を行わないでRQカーブを推定しているため、処理軽減を図ることが可能となる。
【0061】
(その他の実施形態)
上述したRQカーブ推定例は、ビデオチャンクの画素値をニューラルネットワークにおける入力とする例を説明した。例えば、画素値に加えて、符号化した際の動きベクトル、又はブロック分割などの情報を入力としてもよい。これにより、例えば、映像符号化装置100では、映像の特徴量の応じたRQカーブを推定することが可能となる。
【0062】
上述の装置(映像符号化装置100)が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。また、上述の装置(映像符号化装置100)が行う各処理を実行する回路を集積化し、当該装置を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。
【0063】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更などをすることが可能である。また、矛盾しない範囲で各例を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 :映像符号化装置 110 :映像分割部
120 :RQカーブ推定部 130 :ビットレート推定部
140 :符号化部