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  • 特開-液晶硬化フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034265
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】液晶硬化フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230306BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G02B5/30
B05D5/06 Z
B05D3/04 Z
B05D7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140424
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 祐輔
【テーマコード(参考)】
2H149
4D075
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB02
2H149FA05Z
2H149FA24Y
2H149FA58Y
2H149FB05
2H149FD20
2H149FD47
4D075AC02
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB06X
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075BB42Z
4D075BB52Z
4D075BB56Z
4D075BB60Z
4D075BB91Z
4D075BB92Y
4D075BB95Y
4D075BB95Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075DA04
4D075DB36
4D075DC24
4D075EA05
4D075EB14
4D075EB22
4D075EB24
4D075EB51
4D075EC30
4D075EC35
4D075EC37
4D075EC51
(57)【要約】
【課題】液晶起因の欠陥の発生を抑制できる液晶硬化フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の表面に設けられた液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、基材に、前記液晶化合物及び溶媒を含む液晶組成物を塗布して、液晶組成物層を形成する工程(a)と、第一乾燥室を通過するように前記液晶組成物層を搬送し、それにより前記液晶組成物層を前記第一乾燥室内で乾燥させる工程(b)と、前記第二乾燥室を通過するように前記液晶組成物層を搬送し、それにより前記液晶組成物層を前記第二乾燥室内で乾燥させる工程(c)と、前記液晶組成物層を硬化させて、前記液晶硬化層を得る工程(d)とをこの順で含み、前記第一乾燥室は、複数の区画を有し、最も上流の区画における溶媒のガス濃度が、メチルエチルケトンガス濃度換算で、0.29vol%以上である、液晶硬化フィルムの製造方法により、上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に設けられた液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、
基材に、前記液晶化合物及び溶媒を含む液晶組成物を塗布して、液晶組成物層を形成する工程(a)と、
第一乾燥室を通過するように前記液晶組成物層を搬送し、それにより前記液晶組成物層を前記第一乾燥室内で乾燥させる工程(b)と、
前記第二乾燥室を通過するように前記液晶組成物層を搬送し、それにより前記液晶組成物層を前記第二乾燥室内で乾燥させる工程(c)と、
前記液晶組成物層を硬化させて、前記液晶硬化層を得る工程(d)とをこの順で含み、
前記第一乾燥室は、複数の区画を有し、最も上流の区画における溶媒のガス濃度が、メチルエチルケトンガス濃度換算で、0.29vol%以上である、液晶硬化フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)において塗布される前記液晶組成物の粘度が、1mPa・s以上30mPa・s以下であり、前記工程(d)後における前記液晶硬化層の厚みが1.0μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載の液晶硬化フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記液晶組成物の塗布の開始点から前記第一乾燥室の搬入口までの搬送時間が、30秒以内である、請求項1または2に記載の液晶硬化フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、1,3-ジオキソラン及びシクロペンタノンの混合溶媒である、請求項1~3までのいずれか一項に記載の液晶硬化フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶硬化フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
あるフィルムの表面に組成物を塗布し、塗布された組成物を硬化させて、積層体を製造する方法がある。また、このような組成物の塗布及び硬化を含む方法により、光学用途の積層体を製造する技術が知られている。例えば、液晶性化合物を含む液晶組成物を樹脂フィルム上に塗布し、塗布された液晶組成物を硬化させて、液晶硬化フィルムを製造する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-173589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶組成物を用いて製造される液晶硬化フィルムは、通常、液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を備える。本発明者は、このような液晶硬化層において、液晶配向に起因する欠陥(液晶起因の欠陥)が生じる場合があることを知見した。「液晶起因の欠陥」とは、液晶硬化層に含まれる液晶化合物の配向状態の差異により生じる欠陥である。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたものであって、液晶起因の欠陥の発生を抑制できる液晶硬化フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、液晶硬化層における液晶起因の欠陥は、基材に液晶組成物を塗布して乾燥させる際の初期段階における乾燥環境の溶媒のガス濃度の影響を受けやすく、初期段階における乾燥環境の溶媒のガス濃度を高く調整することで欠陥の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記のものを含む。
【0007】
[1] 基材と、前記基材の表面に設けられた液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、基材に、前記液晶化合物及び溶媒を含む液晶組成物を塗布して、液晶組成物層を形成する工程(a)と、第一乾燥室を通過するように前記液晶組成物層を搬送し、それにより前記液晶組成物層を前記第一乾燥室内で乾燥させる工程(b)と、前記第二乾燥室を通過するように前記液晶組成物層を搬送し、それにより前記液晶組成物層を前記第二乾燥室内で乾燥させる工程(c)と、前記液晶組成物層を硬化させて、前記液晶硬化層を得る工程(d)とをこの順で含み、前記第一乾燥室は、複数の区画を有し、最も上流の区画における溶媒のガス濃度が、メチルエチルケトンガス濃度換算で、0.29vol%以上である、液晶硬化フィルムの製造方法。
[2] 前記工程(a)において塗布される前記液晶組成物の粘度が、1mPa・s以上30mPa・s以下であり、前記工程(d)後における前記液晶硬化層の厚みが1.0μm以上5.0μm以下である、[1]に記載の液晶硬化フィルムの製造方法。
[3] 前記液晶組成物の塗布の開始点から前記第一乾燥室の搬入口までの搬送時間が、30秒以内である、[1]または[2]に記載の液晶硬化フィルムの製造方法。
[4] 前記溶媒が、1,3-ジオキソラン及びシクロペンタノンの混合溶媒である、[1]~[3]までのいずれか一項に記載の液晶硬化フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液晶起因の欠陥の発生を抑制できる液晶硬化フィルムの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルムの製造装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示物及び実施形態を挙げて本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に挙げる例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0011】
以下の説明において、ある層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは、層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。面内レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、550nmである。面内レターデーションReは、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定できる。
【0012】
以下の説明において、「偏光板」、「円偏光板」、「λ/2波長板」及び「λ/4波長板」といった部材は、剛直な部材に限られるものではなく、フィルム状の可撓性を有するものであってもよい。
【0013】
「上流」及び「下流」とは、特に言及しない限り、液晶硬化フィルムの製造方法における、基材の流れ方向の上流及び下流を指すものとする。
【0014】
[1.液晶硬化フィルムの製造方法の概要]
本発明の一実施形態の液晶硬化フィルムの製造方法は、基材と、基材の表面に設けられた液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、基材に、液晶化合物及び溶媒を含む液晶組成物を塗布して、液晶組成物層を形成する工程(a)と、第一乾燥室を通過するように液晶組成物層を搬送し、それにより液晶組成物層を第一乾燥室内で乾燥させる工程(b)と、第二乾燥室を通過するように液晶組成物層を搬送し、それにより液晶組成物層を第二乾燥室内で乾燥させる工程(c)と、液晶組成物層を硬化させて、液晶硬化層を得る工程(d)とをこの順で含む。工程(b)において用いられる第一乾燥室は、複数の区画を有し、最も上流の区画における溶媒のガス濃度が、所定の値以上である。以下の説明においては、工程(b)での乾燥と、工程(c)での乾燥とを区別するため、工程(b)における乾燥を「第一乾燥」と記載し、工程(c)での乾燥を「第二乾燥」と記載して説明する場合がある。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルムの製造装置を模式的に示す側面図である。本実施形態に係る液晶硬化フィルムの製造装置1は、基材供給部100と、塗布処理部200と、第一乾燥室300と、第二乾燥室400と、硬化処理部500と、回収部600とを基材20の流れ方向の上流からこの順に備える。
【0016】
基材供給部100は、基材20を供給できるように設けられる。基材20としては、例えば、樹脂フィルムが好ましい。また、ロール・トゥ・ロール法によって、長尺の液晶硬化フィルムを効率よく製造する観点から、樹脂フィルムとしては長尺のものを用いることが好ましい。
【0017】
塗布処理部200は、基材20の表面に液晶組成物31を塗布して、液晶組成物層32を形成できるように設けられる。塗布処理部200としては、例えば、基材20に液晶組成物31を塗布できるコーター210を備えるものを用いうる。
【0018】
第一乾燥室300は、液晶組成物層32を乾燥させるために設けられる。第一乾燥室300においては、液晶組成物層32に含まれる溶媒を蒸発させるとともに、液晶組成物層32のレベリング性を高めうる。第一乾燥室300は、複数の区画n~nを有し、最も上流の区画nにおいて、液晶組成物に含まれる溶媒のガス濃度が所定の値以上となるように調整される。複数の区画とは2以上の区画を指し、図1においてはxは4以上の自然数をとりうる。
【0019】
第二乾燥室400は、液晶組成物層32を乾燥させるために設けられる。第二乾燥室400においては、液晶組成物層32を加熱することにより、液晶組成物層に含まれる溶媒を除去するとともに、液晶組成物層32に含まれる液晶化合物を配向させる配向処理を行うことが好ましい。
【0020】
硬化処理部500は、液晶組成物層32を硬化させられるように設けられる。液晶組成物層32の硬化により、基材20上に液晶硬化層30が形成されて液晶硬化フィルム10が得られる。液晶組成物層32の硬化は、通常、液晶組成物層に含まれる重合性の化合物の重合によって行う。本実施形態においては、硬化処理部500が、活性エネルギー線を照射できる照射装置510を備える例を示している。
【0021】
回収部600は、液晶硬化フィルム10を回収できるように設けられる。本実施形態においては回収部600が巻き芯610を備え、この巻き芯610が液晶硬化フィルム10を巻き取って回収する例を示している。
【0022】
本発明によれば、工程(b)において、第一乾燥室における最も上流の区画における溶媒のガス濃度を所定の値以上とすることで、液晶組成物層の初期乾燥における溶媒のガス濃度を高くすることができ、液晶起因の欠陥が抑制された液晶硬化層を有する液晶硬化フィルムを得ることができる。
【0023】
液晶起因の欠陥は、液晶硬化層に含まれる液晶化合物の配向状態の差異により生じる欠陥である。液晶起因の欠陥に対する、液晶組成物層の初期乾燥時の溶媒のガス濃度の影響について、本発明者は以下のように推測する。ただし、本発明の技術的範囲は、以下の仕組みに限定されない。
【0024】
液晶硬化層には、異物として析出しない液晶不純物(例えば、副反応物や未反応物)が含まれており、この液晶不純物を起点として液晶化合物の配向状態に乱れが生じることにより、液晶起因の欠陥が発生する。初期乾燥時における溶媒のガス濃度が低いと、溶媒が蒸発しやすくなり液晶組成物層に含まれる溶媒量が急激に変化することで、液晶組成物層の構成成分に偏りが生じやすくなる。その結果、液晶不純物が液晶組成物層中に局所的に存在しやすくなり、局所的に生じた液晶不純物を起点とする液晶起因の欠陥が生じやすくなる。これに対し、初期乾燥時における溶媒のガス濃度を高くすると、液晶組成物層中の溶媒量の急激な変化による構成成分の偏りが少なくなり、液晶組成物の局在化を抑制でき、液晶化合物の配向状態の乱れを抑制できる。
【0025】
[2.工程(a):液晶組成物層の形成]
工程(a)は、基材に、液晶化合物及び溶媒を含む液晶組成物を塗布して、液晶組成物層を形成する工程である。
【0026】
[2.1.液晶組成物]
液晶組成物は、液晶性化合物及び溶媒を含む。
【0027】
(液晶化合物)
液晶性化合物は、液晶性を有する化合物であり、通常、当該液晶性化合物を配向させた場合に、液晶相を呈することができる。液晶性化合物としては、逆分散液晶性化合物を用いてもよく、順分散液晶性化合物を用いてもよく、逆分散液晶性化合物と順分散液晶性化合物との組み合わせを用いてもよい。
【0028】
逆分散液晶性化合物とは、逆波長分散性を有する液晶性化合物を表す。また、逆波長分散性を有する液晶性化合物とは、当該液晶性化合物の層を形成し、その層において液晶性化合物をホモジニアス配向させた場合に、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N1)を満たす液晶性化合物をいう。このような逆分散液晶性化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現できる。
Δn(450)<Δn(550) (N1)
【0029】
順分散液晶性化合物とは、順波長分散性を有する液晶性化合物を表す。また、順波長分散性を有する液晶性化合物とは、当該液晶性化合物の層を形成し、その層において液晶性化合物をホモジニアス配向させた場合に、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N2)を満たす液晶性化合物をいう。このような順分散液晶性化合物は、通常、測定波長が長いほど、小さい複屈折を発現できる。
Δn(450)>Δn(550) (N2)
【0030】
液晶性化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶性化合物を含む層を形成し、その層における液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。また、前記の層の複屈折は、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から求められる。
【0031】
中でも、広い波長範囲においてその光学的機能を発揮できる液晶硬化層を得る観点から、液晶性化合物としては、逆分散液晶性化合物が好ましい。
【0032】
液晶性化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、液晶性化合物は、その分子が、重合性基を含むことが好ましい。重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。重合性を有する液晶性化合物は、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の配向状態を維持したまま重合体となることができる。よって、液晶組成物の硬化物において液晶性化合物の配向状態を固定したり、液晶性化合物の重合度を高めて液晶硬化層の機械的強度を高めたりすることが可能である。
【0033】
液晶性化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する液晶性化合物を用いることにより、液晶組成物の塗布性を特に良好にできる。
【0034】
測定波長550nmにおける液晶性化合物の複屈折Δnは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。このような範囲の複屈折Δnを有する液晶性化合物を用いることにより、通常は、配向欠陥の少ない液晶硬化層を得やすい。
【0035】
液晶性化合物の複屈折は、例えば、下記の方法により測定できる。
液晶性化合物の層を作製し、その層に含まれる液晶性化合物をホモジニアス配向させる。その後、その層の面内レターデーションを測定する。そして、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から、液晶性化合物の複屈折を求めることができる。この際、面内レターデーション及び厚みの測定を容易にするために、ホモジニアス配向させた液晶性化合物の層は、硬化させてもよい。
【0036】
液晶性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0037】
具体的な液晶性化合物の種類に制限は無い。例えば、逆分散液晶性化合物の例としては、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【0038】
【化1】
【0039】
[前記式(I)において、
Arは、下記式(II-1)~式(II-5)のいずれかで表される基を示す。ただし、式(II-1)~式(II-5)のいずれかで表される基は、D~D以外に置換基を有していてもよい。
【0040】
【化2】
【0041】
(前記式(II-1)~式(II-5)において、
*は、Z又はZとの結合位置を表す。
及びEは、それぞれ独立して、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
~Dは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表す。D及びDは、一緒になって環を形成していてもよい。D~Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、1~100である。
は、-C(R)=N-N(R)R、-C(R)=N-N=C(R)R、及び、-C(R)=N-N=Rからなる群より選ばれる基を表す。Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、通常、3~100である。Rは、水素原子;並びに、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。Rは、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。Rは、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。Rは、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
aは、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、および、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。ここで、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Xaは、置換基を有していてもよい炭素数1~20の有機基を表し、tは、0または1を表す。)
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、又は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G及びGの両末端のメチレン基が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。]
【0042】
式(I)で表される液晶性化合物については、例えば、国際公開第2019/146468号、国際公開第2021/131856号を参照しうる。
【0043】
液晶組成物における液晶性化合物の量は、液晶組成物100重量%に対して、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
【0044】
(溶媒)
液晶組成物は、通常、溶媒を含む。溶媒としては、液晶性化合物を溶解できるものが好ましい。このような溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。有機溶媒の例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;及びトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;が挙げられる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本実施形態において、好ましい溶媒としては、例えば、1,3-ジオキソラン及びシクロペンタノンの混合溶媒を挙げることができる。1,3-ジオキソラン(DOL)及びシクロペンタノン(CPN)の混合割合としては、重量比で、例えば、DOL/CPNが9/1以上、5/5以下であることが好ましく、8/2以上、6/4以下であることがさらに好ましい。
【0046】
溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、好ましくは60℃~250℃、より好ましくは60℃~150℃である。
【0047】
溶媒の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは200重量部以上、より好ましくは250重量部以上、特に好ましくは300重量部以上であり、好ましくは650重量部以下、より好ましくは550重量部以下、特に好ましくは450重量部以下である。
【0048】
また、溶媒の量は、液晶組成物の固形分濃度が特定の範囲に収まるように調整することが好ましい。固形分濃度とは、液晶組成物に含まれる溶媒以外の成分(固形分)の濃度を表す。液晶組成物の固形分濃度の範囲は、液晶組成物100重量%に対して、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
【0049】
(任意の成分)
液晶組成物は、必要に応じて、液晶性化合物に組み合わせて更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
【0050】
液晶組成物は、任意の成分として、通常、重合開始剤を含む。重合開始剤の種類は、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の種類に応じて選択しうる。例えば、重合性の化合物がラジカル重合性であれば、ラジカル重合開始剤を使用しうる。また、重合性の化合物がアニオン重合性であれば、アニオン重合開始剤を使用しうる。さらに、重合性の化合物がカチオン重合性であれば、カチオン重合開始剤を使用しうる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
重合開始剤の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは7重量部以下である。重合開始剤の量が前記範囲に収まる場合、重合を効率的に進行させることができる。
【0052】
液晶組成物は、任意の成分として、界面活性剤を含んでいてもよい。特に、配向性に優れた液晶硬化層を安定して得る観点から、界面活性剤としては、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤が好ましい。また、液晶硬化層の面状態及び配向性を良好にする観点では、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、重合性を有さなくてもよく、重合性を有していてもよい。界面活性剤としては、例えば、OMNOVA社PolyFoxの「PF-151N」、「PF-636」、「PF-6320」、「PF-656」、「PF-6520」、「PF-3320」、「PF-651」、「PF-652」;ネオス社フタージェントの「FTX-209F」、「FTX-208G」、「FTX-204D」;セイミケミカル社サーフロンの「KH-40」、「S-420」等が挙げられる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0053】
界面活性剤の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは1.0重量部以下である。界面活性剤の量が前記の範囲にある場合、配向性に優れた液晶硬化層を得ることができる。
【0054】
液晶組成物が含みうる他の任意の成分としては、例えば、金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;紫外線吸収剤;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;液晶性化合物以外の重合性の化合物;等が挙げられる。これらの成分の量は、液晶性化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部でありうる。
【0055】
(液晶組成物の物性)
液晶組成物の粘度は、好ましくは、1mPa・s以上であり、より好ましくは3mPa・s以上であり、好ましくは30mPa・s以下であり、より好ましくは20mPa・s以下である。粘度の測定は、音叉型振動式粘度計(例えば株式会社エー・アンド・デイ製の音叉型振動式粘度計SV-10)を用いて、測定温度25℃±2℃で行いうる。
【0056】
[2.2.基材]
基材は、液晶組成物層を支持するために用いられる。基材としては、液晶硬化層の面状態を良好にする観点から、凹部及び凸部の無い平坦面を用いることが好ましい。また、液晶硬化層の生産性を高める観点から、基材としては、長尺の基材であることが好ましい。ここで「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して1万倍以下でありうる。
【0057】
基材としては、通常、樹脂フィルム又はガラス板を用いる。特に、高い温度で配向処理を行う場合、その温度に耐えられる基材を選択するのが好ましい。樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。中でも、配向規制力の高さ、機械的強度の高さ、及びコストの低さといった観点から、樹脂としては、正の固有複屈折値を有する樹脂が好ましい。更には、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、ノルボルネン系樹脂等の、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることが好ましい。基材に含まれる樹脂の好適な例を商品名で挙げると、ノルボルネン系樹脂として、日本ゼオン社製「ゼオノア」を挙げられる。
【0058】
基材の表面には、液晶組成物層における液晶化合物の配向を促進するため、配向規制力を付与するための処理が施されていることが好ましい。配向規制力とは、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させることができる、面の性質をいう。このような配向規制力は、例えば、延伸処理によって付与できる。したがって、基材フィルムは、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムとは、延伸処理を含む製造方法によって製造されたフィルムを表す。
【0059】
延伸処理によれば、延伸されたフィルムに含まれる分子は、通常、延伸方向に配向する。そして、そのフィルムに含まれる分子の配向方向への液晶性化合物の配向を促進させる配向規制力が、その延伸されたフィルムには与えられうる。一般に、フィルム中の分子の配向方向と、そのフィルムの遅相軸方向とは平行又は垂直であるので、配向規制力によって液晶性化合物の配向が促進される方向は、遅相軸方向に平行又は垂直でありうる。したがって、基材フィルムの延伸方向及び遅相軸方向は液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させたい方向に平行又は垂直に設定されることが好ましい。例えば、幅方向に対して40°~50°の角度をなす方向に液晶性化合物を配向させたい場合、幅方向に対して40°~50°の角度をなす方向に遅相軸を有する基材フィルムを用いることが好ましい。
【0060】
また、配向規制力を付与するための処理としては、例えば、配向膜形成処理、光配向処理、ラビング処理、イオンビーム配向処理を挙げることができる。
【0061】
基材の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下である。
【0062】
[2.3.液晶組成物層の形成方法]
液晶組成物は、通常、流体状で用意される。そのため、通常は、支持面に液晶組成物を塗布して、液晶組成物の層を形成する。液晶組成物を塗布する方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。
【0063】
液晶組成物の塗布面積及び液晶組成物の供給量から計算される塗布厚み(液晶組成物層のWet厚み)は、好ましくは、10μm以上であり、好ましくは30μm以下である。
【0064】
工程(a)により形成された液晶組成物層は、第一乾燥室へと搬送される。液晶組成物層の初期乾燥における溶媒濃度を高くする観点からは、液晶組成物の塗布後、液晶組成物層の第一乾燥開始までの時間は短いことが好ましい。具体的には、液晶組成物の塗布開始点から第一乾燥室までの搬送時間が、30秒以内であることが好ましく、20秒以内であることがより好ましい。搬送時間は、例えば、塗布処理部及び第一乾燥室の距離r、並びに搬送速度により統制することができる。図1に示すように、ロール・トゥ・ロール法により、長尺の基材フィルムに液晶組成物を塗布する場合、塗布開始点はコーターの位置でありえる。
【0065】
[3.工程(b):液晶組成物層の第一乾燥]
工程(b)は、第一乾燥室を通過するように液晶組成物層を搬送し、それにより液晶組成物層を第一乾燥室内で乾燥させる工程である。液晶組成物層の第一乾燥においては、液晶組成物層に含まれる溶媒を乾燥させるとともに、液晶組成物層のレベリング性(平滑性)を高めうる。
【0066】
第一乾燥室は、複数の区画を有し、最も上流の区画における溶媒のガス濃度が、メチルエチルケトンガス濃度換算で、0.29vol%以上である。第一乾燥室における最も上流側の区画を他の区画と区別するため「第一室」と称して説明する場合がある。また、メチルケトンガス濃度を「MEK濃度」と称して説明する場合がある。また、溶媒のガス濃度を「溶媒ガス濃度」と称して説明する場合がある。
【0067】
第一室の溶媒ガス濃度は、液晶組成物層が形成された基材の幅方向の端部から20cm以内の距離にある溶媒ガス濃度の測定のための吸引口から採取したガスを用いて測定される。
【0068】
溶媒ガス濃度の測定装置としては、例えば、接触燃焼式センサを備える可燃性ガスの測定装置またはガス検知器を用いて測定しうる。接触燃焼式センサは、酸化触媒表面で可燃性ガスが接触燃焼する際、発生する燃焼熱を白金線コイルの温度及び抵抗変化として捉えることで、そのガス濃度を測定するセンサである。そのため、接触燃焼式センサは、可燃性ガスであればいずれのガスも検知が可能であるといった利点を有する。このような接触燃焼式センサを備える測定装置としては、例えば、耐圧防爆型吸引式ガス検知部(GD-D58シリーズ)が挙げられる。
【0069】
溶媒ガス濃度をMEK濃度に換算する換算式及び換算値は以下の方法により求めうる。
接触燃焼式センサにおいては、測定ガス濃度が0~100%LELの測定範囲において、センサ出力(mV)が測定ガス濃度(%LEL)に概ね比例する。そのため、センサ出力y(mV)は、測定ガス濃度x(%LEL)を用いて下記式(1)で表しうる。
y(mV)=α×x(%LEL)(αは定数)(1)
前記の式(1)は、例えば、測定ガス濃度x(%LEL)に対する、センサ出力y(mV)をプロットした検量線を作成することにより求めうる。
そこで、まず、接触燃焼式センサを用いて、MEK濃度x(MEK)(%LEL)に対するセンサ出力をプロットした検量線1から下記式(2)を求め、溶媒ガス濃度x(SOL)(%LEL)に対するセンサ出力をプロットした検量線2から下記式(3)を求める。次に、得られた下記式(3)の左辺に式(2)の右辺を代入して計算することにより、換算式(4)が得られる。換算式(4)において、α(SOL)/α(MEK)は換算値に相当する。
y(mV)=α(MEK)×x(MEK)(%LEL)(α(MEK)は定数)(2)
y(mV)=α(SOL)×x(SOL)(%LEL)(α(SOL)は定数)(3)
(MEK)(%LEL)=α(SOL)/α(MEK)×x(SOL)(%LEL)(4)
【0070】
第一室の溶媒ガス濃度は、MEK濃度換算で、0.29vol%以上であり、0.30vol%以上であってもよく、0.33vol%以上であってもよい。また、第一室内における溶媒ガスの取り扱いの観点から、第一室の溶媒ガス濃度は、例えば、MEK濃度換算で、0.45vol%以下であることが好ましい。
【0071】
第一室は、通常、外部から第一室内へ空気を供給する給気ノズルと第一室から外部へガスを排気する排気ノズルとを備え、空気の給気量とガスの排出量とにより、溶媒ガス濃度を調整することができる。また、第一乾燥は、通常、第一室で加熱をせずに行われるが、溶媒の種類に応じて、加熱をし、溶媒の蒸発を促すことにより溶媒ガス濃度を調整してもよい。
【0072】
第一乾燥室においては、通常、複数の区画のうち、第一室の溶媒ガス濃度が最も高くなる。第一乾燥室においては、第一室から下流側に向かって段階的または連続的に溶媒ガス濃度が低くなるよう調整しうる。第一乾燥室における上流側から下流側に向かい、溶媒ガス濃度を段階的または連続的に低くなるように調整することで、液晶組成物層中の溶媒濃度の変化を穏やかにすることができるため、液晶起因の欠陥をより効果的に抑制することができる。
【0073】
第一乾燥室の各区画において溶媒ガス濃度を調整する場合、第一乾燥室の各区画を構成する部屋が、それぞれ給気ノズル及び排気ノズルを備えていることが好ましい。このような第一乾燥室としては、例えば、複数のチャンバーを備えた乾燥装置やオーブンを用いることができる。
【0074】
第一乾燥後の液晶組成物層の厚みは、好ましくは、0.5μm以上であり、好ましくは、10μm以下である。
【0075】
[4.工程(c):液晶組成物層の第二乾燥]
工程(c)は、第二乾燥室を通過するように液晶組成物層を搬送し、それにより液晶組成物層を第二乾燥室内で乾燥させる工程である。
【0076】
液晶組成物層の第二乾燥においては、通常、液晶組成物層の温度を、液晶組成物層に含まれる溶媒を除去しうる温度に調整することにより、液晶組成物層を乾燥させる。また、第二乾燥においては、液晶組成物層の温度を特定の配向温度に調整することにより液晶性化合物を配向させうる。この場合、図1に示す第二乾燥室400は、配向処理部として機能しうる。
【0077】
配向温度は、通常、液晶組成物の液晶化温度以上でありうる。また、配向温度は、配向処理による基材フィルム10の歪みの発生を抑制する観点から、基材フィルム10に含まれる樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度であることが好ましい。具体的な配向温度の範囲は、好ましくは50℃~160℃である。また、配向時間は、例えば、30秒~5分でありうる。第二乾燥室としては、例えば、オーブンを用いうる。
【0078】
工程(c)後の液晶組成物層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。
【0079】
[5.工程(d):液晶組成物層の硬化]
工程(d)は、液晶組成物層32を硬化させて、液晶硬化層30を得る工程である。図1では、第二乾燥室400から送出された基材20及び液晶組成物層32が硬化処理部500へ供給され、この硬化処理部500において液晶組成物層32の硬化が行われる。図1では、照射装置510から液晶組成物層32に活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線の照射により、液晶組成物層32に含まれる重合性の化合物の重合が進行して、液晶組成物層32の硬化が達成される。
【0080】
例えば、液晶性化合物が重合性を有する場合、液晶性化合物は、通常、その分子の配向を維持したままで重合する。よって、前記の重合により、重合前の液晶組成物に含まれる液晶性化合物の配向状態は固定される。したがって、液晶性化合物の配向に応じた光学特性を有する液晶硬化層30を得ることができる。
【0081】
活性エネルギー線の照射条件は、液晶組成物層32の硬化が可能な範囲で適切に設定しうる。例えば、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線の照射強度は、好ましくは0.1mW/cm以上、より好ましくは0.5mW/cm以上であり、好ましくは10000mW/cm以下、より好ましくは5000mW/cm以下である。また、紫外線の照射量は、好ましくは0.1mJ/cm以上、より好ましくは0.5mJ/cm以上であり、好ましくは10000mJ/cm以下、より好ましくは5000mJ/cm以下である。
【0082】
硬化後の液晶硬化層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。
【0083】
[6.液晶硬化フィルム]
上述した製造方法によって製造される液晶硬化フィルムは、基材と、基材の表面に形成された液晶硬化層と、を備える。液晶硬化層は、液晶組成物の硬化物で形成されている。液晶組成物の硬化は、通常、液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成されるので、液晶硬化層は、液晶組成物が含んでいた成分の一部又は全部の重合体を含む。したがって、液晶性化合物が重合性を有する場合、その液晶性化合物が重合するので、液晶硬化層は、液晶性化合物の重合体を含みうる。この重合した液晶性化合物は、用語「液晶硬化層に含まれる液晶性化合物」に包含される。
【0084】
液晶組成物の硬化物においては、硬化前の流動性が失われるので、通常、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の配向状態は、硬化前の配向状態のまま、固定されている。よって、液晶硬化層は、当該液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の配向状態に応じた光学特性を発揮できる。液晶硬化層の具体的な光学特性は、液晶硬化層の用途に応じて適切に設定されることが好ましい。
【0085】
例えば、液晶硬化層をλ/4波長板として用いる場合、測定波長550nmにおける液晶硬化層の面内レターデーションReは、好ましくは108nm以上、より好ましくは128nm以上、特に好ましくは133nm以上であり、好ましくは168nm以下、より好ましくは148nm以下、特に好ましくは146nm以下である。
【0086】
また、例えば、液晶硬化層をλ/2波長板として用いる場合、測定波長550nmにおける液晶硬化層の面内レターデーションReは、好ましくは245nm以上、より好ましくは265nm以上、特に好ましくは270nm以上であり、好ましくは305nm以下、より好ましくは285nm以下、特に好ましくは280nm以下である。
【0087】
液晶硬化層は、逆波長分散性を有することが好ましい。即ち、液晶硬化層は、短波長より長波長の透過光について大きい面内レターデーションを示すことが好ましい。液晶硬化層は、可視光の帯域の少なくとも一部、好ましくは全部において、そのような逆波長分散性を有することが好ましい。具体的には、測定波長450nm及び550nmにおける液晶硬化層の面内レターデーションRe(450)及びRe(550)は、下記の式(N3)を満たすことが好ましい。このような逆波長分散性を液晶硬化層が有する場合、λ/4波長板又はλ/2波長板といった光学用途において、広い帯域において均一に機能を発現できる。
Re(450)<Re(550) (N3)
【0088】
液晶硬化層は、一の方向に遅相軸を有していてもよい。例えば、工程(c)において液晶組成物層に含まれる液晶性化合物がホモジニアス配向する場合、製造される液晶組成物の液晶硬化層は、一の方向に遅相軸を有しうる。この遅相軸の方向は、液晶硬化層の用途に応じて適切に設定されることが好ましい。例えば、長尺の基材フィルム上に長尺の液晶硬化層が形成される場合、液晶硬化層の遅相軸の方向は、基材フィルムの幅方向に平行でもよく、垂直でもよく、平行でも垂直でもない斜め方向にあってもよい。例えば、液晶硬化層の遅相軸が基材フィルムの幅方向に対してなす角度は、好ましくは15°±5°、22.5±5°、45°±5°、75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5±4°、45°±4°、75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5±3°、45°±3°、75°±3°といった特定の範囲でありうる。
【0089】
液晶硬化層の全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上、特に好ましくは88%以上である。液晶硬化層の全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長380nm~780nmの範囲で測定しうる。
【0090】
液晶硬化層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。液晶硬化層のヘイズは、JIS K7136に準拠して、ヘイズメーター(東洋精機社製「ヘイズガードII)を用いて測定しうる。
【0091】
液晶硬化層の厚みは、所望の光学特性が得られるように設定することが好ましい。液晶硬化層の具体的な厚みについては、上述の[5.工程(d):液晶組成物層の硬化]の項目で記載した厚みと同様である。
【実施例0092】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0093】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧(23℃1気圧)大気中の条件において行った。
【0094】
[液晶起因の欠陥の個数のカウント]
液晶硬化フィルムを幅方向に三等分したエリアに分け、各エリアから、任意の位置において、150mm×360mmの大きさのサンプルを切り出した。高輝度LEDバックライト上(5,000cd/m)上に、第一の直線偏光板(サンリッツ社製の偏光フィルム「HLC2-5618S」)を配置し、その上に、サンプルを配置し、さらにその上に、第二の直線偏光板(サンリッツ社製の偏光フィルム「HLC2-5618S」)を配置した。第二の直線偏光板側から目視観察を行い、視認される点欠陥の個数をカウントした。目視観察は、第一の直線偏光板と第二の直線偏光板とをパラニコル状態及びクロスニコル状態の両方の配置において、視認される点欠陥の個数をカウントし、両方の状態で重複して観察される欠陥については1個とカウントした。3エリアのサンプルで確認された点欠陥の個数の算術平均値を求め、さらにサンプルの面積(0.054m)で除することにより1m当たりの欠陥数を算出した。
【0095】
[溶媒ガス濃度の測定方法]
溶媒ガス濃度の測定装置として、耐圧防爆型吸引式ガス検知部(GD-D58シリーズ)を用いた。溶媒ガス濃度の測定の前準備として、下記の方法により、シクロペンタノン、1,3-ジオキソラン、及びこれらの混合溶媒のガス濃度(%LEL)をメチルエチルケトンガス濃度(%LEL)換算するための換算値を求めた。換算値については、表1に示す。
【0096】
耐圧防爆型吸引式ガス検知部(GD-D58シリーズ)は接触燃焼式センサを備える装置である。この装置を用いて、メチルエチルケトン、シクロペンタノン(CPN)、1,3-ジオキソラン(DOL)、及びこれらの混合溶媒のガス濃度x(%LEL)に対する、センサ出力y(mV)をプロットした検量線を作成した。メチルエチルケトンの検量線の式(y(mV)=α(MEK)×x(MEK)(%LEL))及びシクロペンタノンの検量線の式(y(mV)=α(CPN)×x(CPN)(%LEL))から、シクロペンタノンのガス濃度をMEK濃度に換算する換算式(x(MEK)(%LEL)=α(CPN)/α(MEK)×x(CPN)(%LEL))を算出し、換算値α(CPN)/α(MEK)を求めた。同様にして、1,3-ジオキソラン、並びにシクロペンタノン及び1,3-ジオキソランの混合溶媒についても、溶媒ガス濃度をMEK濃度に換算するための換算式および換算値を求めた。具体的な換算値を表1に示す。表1中、換算値をAで示す。
【0097】
【表1】
【0098】
混合溶媒中の1,3-ジオキソランの含有率を横軸(原点を0%とする)、換算値Aを縦軸とした散布図を作成し、近似曲線を求めたところ、y=-0.0004x+0.7965(R=0.9876)となり、得られた近似曲線から液晶組成物の混合溶媒(DOL:CPN=7:3)の換算値を求めたところ、A=0.7666となった。
【0099】
得られた換算値、及びメチルエチルケトンの爆発限界の下限:1.8vol%から、測定値をβ(%LEL)とし、メチルエチルケトンガス換算の溶媒ガス濃度をγ(vol%)とし、γ(vol%)=A×β(%LEL)×1.8vol%との計算式から、A=0.7666のときの、γ(vol%)を算出した。
【0100】
[製造例1:基材フィルムの製造]
シクロオレフィンポリマーからなる厚み115μmの長尺の基材(ゼオノアフィルム(登録商標)1215、日本ゼオン社製)を繰り出し、延伸装置に搬送し、延伸倍率1.5で、基材の幅方向に対して45°方向に斜め延伸した。斜め延伸処理により、基材に配向規制力を付与して基材1Aとした。配向規制力が付与された基材1Aは、面内方向のレターデーションReが140nmであり、厚み77μmであった。
【0101】
[製造例2:液晶組成物の製造]
光重合性液晶化合物として、下記式(B1)で示された液晶化合物Aを用意した。
【0102】
【化3】
【0103】
液晶化合物Aを17.42部、架橋剤としてのトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名「NKエステルA-DCP」、新中村化学工業社製)1.74部(重合性液晶化合物100部に対して10部)、界面活性剤(商品名「メガファックF-562」、DIC社製)0.06部(重合性液晶化合物100部に対して0.33部)、光重合開始剤(ADEKA社製「NCI-730」)0.77部(重合性液晶化合物100部に対して4.4部)、酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール;BHT)を0.02部量り取り、これらに混合溶媒(1,3-ジオキソラン:シクロペンタノン=7:3)を、固形分が20重量%となるように混合し、液晶組成物を得た。液晶組成物の比重は1.04g/cmであった。
【0104】
[実施例1]
製造例1で得た基材フィルムに対し、ダイコーターを用いて、製造例2で得た液晶組成物Aを塗布し、硬化後の液晶硬化層の厚みが約2.8μmとなるように、液晶組成物層を形成した。
【0105】
液晶組成物層の形成後から30秒以内に、液晶組成物層が形成された基材フィルムを、第一乾燥室へ搬送した。第一乾燥室は、複数の区画に分けられており、最も上流側の区画における混合溶媒のガス濃度がメチルエチルケトンガス換算で、0.29vol%となるように調整した。第一乾燥室の条件は、大気圧下、温度:常温(加熱なし)とし、ガス濃度の調整は、第一乾燥室への給気量及び第一乾燥室からの排気量を調整することにより行った。
【0106】
第一乾燥室による乾燥後、第二乾燥室内で、液晶組成物の層を、110℃に設定したオーブンで約10分間加熱して、配向処理及び乾燥処理を行った。この処理により、液晶組成物の層に含まれる液晶化合物が配向した。
【0107】
その後、液晶組成物の層に、窒素雰囲気下で、300mJ/cmの紫外線を照射して、液晶組成物の層を硬化させて、厚み約2.8μmの液晶硬化層を形成した。これにより、液晶硬化層及び基材フィルムが積層された液晶硬化フィルムを得た。
【0108】
[実施例2]
実施例1と別の日に、実施例1と同様の条件で液晶硬化フィルムを作製した。
【0109】
[実施例3]
第一乾燥室の最も上流側の区画のガス濃度を0.30vol%とした点以外は、実施例1と同様にして液晶硬化フィルムを得た。
【0110】
[比較例1~3]
第一乾燥室の最も上流側の区画のガス濃度を0.25vol%(比較例1)、0.23vol%(比較例2)及び0.19vol%(比較例3)としたこと以外は、実施例1と同様にして液晶硬化フィルムを作製した。
【0111】
[結果]
実施例1~3及び比較例1~3の結晶起因の欠陥の個数を表3に示す。表3に示すように、比較例1~3においては500個以上の結晶起因の欠陥が確認されたのに対し、実施例1~3においては、欠陥数を130個以下、実施例1及び2においてはさらに2桁以下とすることができ、欠陥の発生数を大幅に少なくすることができた。
【0112】
【表2】
【符号の説明】
【0113】
1 製造装置
10 液晶硬化フィルム
20 基材
30 液晶硬化層
31 液晶組成物
32 液晶組成物層
100 基材供給部
200 塗布処理部
210 コーター
300 第1乾燥室
第1室
400 第2乾燥室
500 硬化処理部
510 照射装置
600 回収部
610 巻き芯
図1