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特開2023-34294樹脂フィルムの製造装置、樹脂フィルムの製造方法、及び樹脂フィルムの検査方法
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  • 特開-樹脂フィルムの製造装置、樹脂フィルムの製造方法、及び樹脂フィルムの検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034294
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの製造装置、樹脂フィルムの製造方法、及び樹脂フィルムの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/896 20060101AFI20230306BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G01N21/896
G02B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140458
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】菊川 賢
【テーマコード(参考)】
2G051
2H087
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB02
2G051BA01
2G051BB01
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB02
2G051CC09
2G051DA06
2H087KA12
2H087LA01
2H087NA02
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】検査に暗室を必要としない検査装置を含む、コンパクトな樹脂フィルムの製造装置。
【解決手段】長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する搬送装置と、連続的に搬送される前記樹脂フィルムを検査する検査装置とを含み、前記検査装置は、前記搬送装置により搬送される前記樹脂フィルムの主面に平行光線を照射する光源及び撮像装置を含み、前記撮像装置は、テレセントリックレンズ及び撮像素子を含み、前記テレセントリックレンズは、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して前記撮像素子に結像させる、樹脂フィルムの製造装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する搬送装置と、連続的に搬送される前記樹脂フィルムを検査する検査装置とを含み、
前記検査装置は、前記搬送装置により搬送される前記樹脂フィルムの主面に平行光線を照射する光源及び撮像装置を含み、
前記撮像装置は、テレセントリックレンズ及び撮像素子を含み、
前記テレセントリックレンズは、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して前記撮像素子に結像させる、樹脂フィルムの製造装置。
【請求項2】
前記撮像装置を複数含み、
前記撮像装置に含まれる前記テレセントリックレンズの光軸と前記樹脂フィルムの主面との交点Pが、前記樹脂フィルムの幅方向と平行な直線に沿って並ぶように、複数の前記撮像装置が配置される、請求項1に記載の樹脂フィルムの製造装置。
【請求項3】
隣り合う前記交点Pに対応する前記テレセントリックレンズの光軸のそれぞれと前記樹脂フィルムの主面の垂線とがなす角度の符号が逆となるように、複数の前記撮像装置が配置される、請求項2に記載の樹脂フィルムの製造装置。
【請求項4】
前記テレセントリックレンズの光軸と前記樹脂フィルムの主面の垂線とがなす角度、及び、前記光源の光軸と前記樹脂フィルムの主面の垂線とがなす角度が、それぞれ変更可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置。
【請求項5】
前記撮像装置と前記樹脂フィルムの主面との距離が、変更可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置。
【請求項6】
長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する工程、
搬送される前記樹脂フィルムの主面に、平行光線を照射する工程、及び
テレセントリックレンズが、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して撮像素子に結像させる工程、
を含む、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する工程、
搬送される前記樹脂フィルムの主面に、平行光線を照射する工程、及び
テレセントリックレンズが、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して撮像素子に結像させる工程、
を含む、樹脂フィルムの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの製造装置、樹脂フィルムの製造方法、及び樹脂フィルムの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示装置には、樹脂で形成された樹脂フィルムを光学要素として備える場合がある。光学的欠陥を有する樹脂フィルムを光学要素として用いると、製品の品質を低下させる場合がある。そのため、樹脂フィルムを製造する工程において、欠陥の有無について様々な方法で検査が行われている。
【0003】
例えば、スクリーン上に投影された光学フィルムの欠陥に対する画像を取得して、光学フィルムの欠陥を取得するシステムが考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、フィルムの表面の法線方向から検査光を照射して、透過光を用いて検査する第一検査手段と、90°よりも小さい角度から検査後を照射して、その透過光を用いて検査する第二検査手段とを備える検査装置が考案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、フィルムの反射画像データと透過画像データとを含むデータを用いて、欠陥の種類を判別する方法が考案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2019-516989号公報
【特許文献2】特開2007-298416号公報
【特許文献3】特開2012-167975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術のように、スクリーン上に欠陥画像を投影するシステムは、検査に暗室が必要となり、フィルムの製造設備が複雑となる。
【0008】
また、特許文献2の技術のように、複数の検査手段を備える検査装置、及び、特許文献3の技術のように、反射光と透過光との双方を用いる検査装置は、配置に必要とされる空間が大きくなりがちであり、フィルムを製造する装置への配置が難しくなる場合がある。
【0009】
したがって、検査に暗室を必要としない検査装置を含むコンパクトな樹脂フィルムの製造装置;コンパクトな装置で暗室を必要とせずに実施できる樹脂フィルムの製造方法;コンパクトな装置で暗室を必要とせずに実施できる樹脂フィルムの検査方法;が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、樹脂フィルムの製造装置に含まれる検査装置を、特定の光源及び特定の撮像装置を含むものとすることにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0011】
[1] 長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する搬送装置と、連続的に搬送される前記樹脂フィルムを検査する検査装置とを含み、
前記検査装置は、前記搬送装置により搬送される前記樹脂フィルムの主面に平行光線を照射する光源及び撮像装置を含み、
前記撮像装置は、テレセントリックレンズ及び撮像素子を含み、
前記テレセントリックレンズは、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して前記撮像素子に結像させる、樹脂フィルムの製造装置。
[2] 前記撮像装置を複数含み、
前記撮像装置に含まれる前記テレセントリックレンズの光軸と前記樹脂フィルムの主面との交点Pが、前記樹脂フィルムの幅方向と平行な直線に沿って並ぶように、複数の前記撮像装置が配置される、[1]に記載の樹脂フィルムの製造装置。
[3] 隣り合う前記交点Pに対応する前記テレセントリックレンズの光軸のそれぞれと前記樹脂フィルムの主面の垂線とがなす角度の符号が逆となるように、複数の前記撮像装置が配置される、[2]に記載の樹脂フィルムの製造装置。
[4] 前記テレセントリックレンズの光軸と前記樹脂フィルムの主面の垂線とがなす角度、及び、前記光源の光軸と前記樹脂フィルムの主面の垂線とがなす角度が、それぞれ変更可能である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置。
[5] 前記撮像装置と前記樹脂フィルムの主面との距離が、変更可能である、請求項[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置。
[6] 長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する工程、
搬送される前記樹脂フィルムの主面に、平行光線を照射する工程、及び
テレセントリックレンズが、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して撮像素子に結像させる工程、
を含む、樹脂フィルムの製造方法。
[7] 長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する工程、
搬送される前記樹脂フィルムの主面に、平行光線を照射する工程、及び
テレセントリックレンズが、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して撮像素子に結像させる工程、
を含む、樹脂フィルムの検査方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査に暗室を必要としない検査装置を含む、コンパクトな樹脂フィルムの製造装置;コンパクトな装置で暗室を必要とせずに実施できる樹脂フィルムの製造方法;コンパクトな装置で暗室を必要とせずに実施できる樹脂フィルムの検査方法;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置を概略的に示す側面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置に含まれる検査装置を概略的に示す正面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置に含まれる検査装置の一部分を概略的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置に含まれる撮像装置の撮像範囲を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。また、図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0015】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0016】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の文言は、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する。
【0017】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0018】
[1.樹脂フィルムの製造装置]
本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置は、長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する搬送装置と、連続的に搬送される前記樹脂フィルムを検査する検査装置とを含む。前記検査装置は、前記搬送装置により搬送される前記樹脂フィルムの主面に平行光線を照射する光源及び撮像装置を含む。前記撮像装置は、テレセントリックレンズ及び撮像素子を含む。前記テレセントリックレンズは、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して前記撮像素子に結像させる。
【0019】
本実施形態の樹脂フィルムの製造装置が、平行光線を照射する光源及び透過光を受光して撮像素子に結像させるテレセントリックレンズを含むことにより、簡易な構成で樹脂フィルムの欠陥を検査できる。そのため、本実施形態の樹脂フィルム製造装置に含まれる検査装置をコンパクトにでき、ひいては樹脂フィルムの製造装置をコンパクトにできる。また、暗室設備を必要としない樹脂フィルムの製造装置としうる。
【0020】
以下、図を用いて本実施形態の樹脂フィルムの製造装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置を概略的に示す側面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置に含まれる検査装置を概略的に示す正面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置に含まれる検査装置の一部分を概略的に示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置1000は、搬送装置としての、搬送ロール11、搬送ロール12、搬送ロール13、及び搬送ロール14、並びに、検査装置100を備える。検査装置100は、光源110a、光源110b、光源110c、及び光源110d、並びに、撮像装置120a、撮像装置120b、撮像装置120c、及び撮像装置120dを備える。
【0022】
長尺の樹脂フィルム1は、図示されないダイから押し出されて、図示されないキャストロールにキャストされ、搬送装置としての、搬送ロール11、搬送ロール12、搬送ロール13、及び搬送ロール14により順に搬送され、巻き取り機15によりロール状に巻き取られる。
搬送ロール12及び搬送ロール13は、どちらも樹脂フィルム1が有する一方の主面1Dに接触し、回転することにより、樹脂フィルム1を搬送しうる。
【0023】
樹脂フィルム1は、これら搬送ロール以外の搬送装置により連続的に搬送されてもよい。例えば、搬送装置は、ニップロール、駆動装置などの、樹脂フィルム1を連続的に搬送するための任意の要素を含みうる。
【0024】
図1及び図2に示すように、樹脂フィルム1の一方の主面1D側には、複数の光源110a、110b、110c、110dが配置されている。光源110a、110b、110c、110dは、架台150に取り付けられ、搬送ロール12及び搬送ロール13により搬送される樹脂フィルム1の主面1D側に、光線を照射しうるように配置されている。
【0025】
光源110a、110b、110c、110dは、平行光線を照射しうるように構成されている。光源110a、110b、110c、110dとしては、発光素子とコリメータとを組み合わせた光源を用いうる。発光素子と組み合わせるコリメータの方式は、特に限定されず、反射式コリメータ及び屈折式コリメータのどちらをも用いうる。
【0026】
光源110a、110b、110c、110dが発する光は、可視光域の波長を有する光であっても、赤外光であっても、紫外光であってもよい。光源としては、例えば、メタルハライドランプ、発光ダイオードなどの発光素子を含むものを用いうる。
【0027】
光源110a、110b、110c、110dは、発する平行光線が、後述するテレセントリックレンズの光軸と平行となるように配置されることが好ましい。これにより、様々な種類の欠陥を検出しうる。
【0028】
架台150には、複数の撮像装置120a、120b、120c、120dが取り付けられ、樹脂フィルム1の他方の主面1U側に配置されている。撮像装置120a、120b、120c、120dは、それぞれ、テレセントリックレンズ121a、121b、121c、121d及び撮像素子122a、122b、122c、122dを備える。
【0029】
テレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dは、テレセントリック性を有する光学系を有する光学素子である。テレセントリック性とは、主光線が光軸と平行である性質を意味する。
テレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dは、物側テレセントリック性を有していてもよく、像側テレセントリック性を有していてもよく、両側テレセントリック性を有していてもよく、好ましくは像側テレセントリック性を有する。
テレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dは、レンズ、絞り、ミラーなどの複数の要素により構成されていてもよい。
【0030】
撮像素子122a、122b、122c、122dとしては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を用いた固体撮像素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いた固体撮像素子などの固体撮像素子を用いることができる。
【0031】
撮像装置120a、120b、120c、120dは、後述する画像処理装置へ接続されていてもよい。
【0032】
本実施形態では、検査装置が複数の光源及び複数の撮像装置を備えているが、別の実施形態では、検査装置は一台の光源のみ及び一台の撮像装置のみを備えていてもよい。また、検査装置が備える光源の台数及び撮像装置の台数は、本実施形態ではそれぞれ4台であるが、特に限定されず、例えば、それぞれ2台、それぞれ3台、それぞれ5台、それぞれ6台、それぞれ7台、それぞれ8台、それぞれ9台、それぞれ10台であってもよい。検査装置が備える光源の台数と、撮像装置の台数とは、一致していてもよく、一致していなくてもよい。好ましくは、検査装置が備える光源の台数と撮像装置の台数とは、一致している。
【0033】
検査装置100が、複数の光源110a、110b、110c、110d及び複数の撮像装置120a、120b、120c、120dを備えることによって、以下の利点を有する。
一台の光源及び一台の撮像装置により、樹脂フィルム1を幅方向全体に亘って撮像するためには、テレセントリックレンズとして、通常直径が樹脂フィルム1の幅と同じか又は樹脂フィルム1の幅より大きいものを用いる。通常テレセントリックレンズの画角が0°又はそれに近い大きさのためである。
一方、複数の光源及び複数の撮像装置により、樹脂フィルム1を幅方向全体に亘って撮像する場合、撮像装置に含まれるテレセントリックレンズとしては、通常直径が樹脂フィルム1の幅よりも小さいものを用いうる。そのため、検査装置100のサイズを、よりコンパクトにできる。
【0034】
撮像装置120a、120b、120c、120dに含まれるテレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dの光軸C1a、C1b、C1c、C1dのそれぞれと、樹脂フィルム1の主面1Uとの交点Pa、Pb、Pc、Pdが、樹脂フィルム1の幅方向TDと平行な直線L1に沿って並ぶように、撮像装置120a、120b、120c、120dが樹脂フィルム1の主面1U側の空間に配置されている。
これにより、樹脂フィルム1の幅方向全体を、複数の撮像装置120a、120b、120c、120dにより撮像しうる。
【0035】
ここで、複数の撮像装置120a、120b、120c、120dに対応する複数の交点Pa、Pb、Pc、Pdのすべてが直線L1上に存在するように撮像装置120a、120b、120c、120dを配置してもよく、複数の交点Pa、Pb、Pc、Pdの一部又は全てが、直線L1の近傍(好ましくは、直線L1との距離が、700mm以下である位置)に存在するように、撮像装置120a、120b、120c、120dを配置してもよい。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの製造装置に含まれる撮像装置の撮像範囲を示す模式図である。
図4に示すように、撮像装置120aに対応する交点Paと、撮像装置120bに対応する交点Pbと、撮像装置120cに対応する交点Pcと、撮像装置120dに対応する交点Pdとは、樹脂フィルム1の幅方向と平行な直線L1に沿って並んでいる。撮像範囲Aa、撮像範囲Ab、撮像範囲Ac、及び撮像範囲Adはそれぞれ、撮像装置120a、撮像装置120b、撮像装置120c、及び撮像装置120dの、樹脂フィルム1における撮像範囲である。
撮像範囲Aaと撮像範囲Abと、及び撮像範囲Ab及び撮像範囲Acと、及び撮像範囲Acと撮像範囲Adとはそれぞれ、共通する範囲を有する。これらの共通する範囲内を直線L1が通るように、撮像装置120a、120b、120c、120dのそれぞれが配置され、撮像装置120a、120b、120c、120dのそれぞれの撮像範囲Aa、Ab、Ac、Adが設定されている。
このように、撮像装置120a、120b、120c、120dにより、樹脂フィルム1の幅方向全体が撮像されうる。
【0037】
隣り合う交点Pに対応するテレセントリックレンズの光軸のそれぞれと樹脂フィルム1の主面1Uの垂線とがなす角度の符号が逆となるように、複数の撮像装置120a、120b、120c、120dが配置されている。
ただし、光軸を、交点Pを中心として光軸を含む平面内である一方向に回転させることにより、樹脂フィルム1の主面1Uの垂線と一致させうる場合の角度の符号を正とし、光軸を、交点Pを中心として光軸を含む平面内である一方向とは逆の方向に回転させることにより、樹脂フィルム1の主面1Uの垂線と一致させうる場合の角度の符号を負とする。複数の撮像装置120a、120b、120c、120dをこのように配置することで、複数の撮像装置により樹脂フィルム1を幅方向全体に亘って撮像することができる。
【0038】
その理由は以下のとおりである。
撮像装置に含まれるテレセントリックレンズは、画角が0°又はそれに近い大きさであるため、複数の撮像装置を樹脂フィルム1の幅方向に一列に配置すると、樹脂フィルム1の幅方向において、撮像されない範囲が生じる場合がある。前記のとおり、隣り合う交点Pに対応するテレセントリックレンズの光軸のそれぞれと樹脂フィルム1の主面1Uの垂線とがなす角度の符号が逆となるように、複数の撮像装置を配置することで、複数の撮像装置の樹脂フィルム1における撮像範囲が重なるようにできるので、複数の撮像装置により樹脂フィルム1を幅方向全体に亘って撮像することができる。
【0039】
隣り合う前記交点Pに対応するテレセントリックレンズの光軸のそれぞれと、前記垂線とがなす角度の絶対値は、同一であるか、略同一であることが好ましい。
テレセントリックレンズの光軸と、樹脂フィルム1の主面1Uの垂線とがなす角度θの絶対値の算術平均値をθaveとしたとき、θave-|θ|の値は、好ましくは0°±35°の範囲内であり、より好ましくは0°±25°の範囲内であり、更に好ましくは0°±20°の範囲内である。
【0040】
本実施形態の製造装置1000における複数の撮像装置120a、120b、120c、120dの配置を、図3を用いて説明する。
図3にしめすように、交点Paに対応するテレセントリックレンズ121aの光軸C1aと交点Paを通る樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vaとがなす角度は、θaであり、交点Paに隣り合う交点Pbに対応するテレセントリックレンズ121bの光軸C1bと交点Pbを通る樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vbとがなす角度は、θbであり、交点Pbに隣り合う交点Pcに対応するテレセントリックレンズ121cの光軸C1cと交点Pcを通る樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vcとがなす角度は、θcであり、交点Pcに隣り合う交点Pdに対応するテレセントリックレンズ121dの光軸C1dと交点Pdを通る樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vdとがなす角度は、θdである。
【0041】
本実施形態において、θaの符号は正であり、θbの符号は負であり、θcの符号は正であり、θdの符号は負である。また、|θa|、|θb|、|θc|、及び|θd|の算術平均値をθaveとすると、(θave-|θa|)、(θave-|θb|)、(θave-|θc|)、及び(θave-|θd|)の値は、それぞれ0°である。
【0042】
テレセントリックレンズの光軸と、樹脂フィルム1の主面1Uの垂線とがなす角度θの大きさは特に限定されないが、例えば、θの絶対値(|θ|)は、例えば5°以上、例えば10°以上、例えば35°以下、例えば20°以下としうる。
【0043】
テレセントリックレンズ121aの光軸C1aと樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vaとがなす角度θa、テレセントリックレンズ121bの光軸C1bと樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vbとがなす角度θb、テレセントリックレンズ121cの光軸C1cと樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vcとがなす角度θc、及びテレセントリックレンズ121dの光軸C1dと樹脂フィルム1の主面1Uの垂線Vdとがなす角度θdをそれぞれ変更可能であるように、撮像装置120a、120b、120c、120dは架台150に取り付けられている。これにより、検査条件を調整することが容易となる。
【0044】
さらに、撮像装置120a、120b、120c、120dのそれぞれと、前記樹脂フィルム1の主面1Uとの距離が、それぞれ変更可能であるように、撮像装置120a、120b、120c、120dは架台150に取り付けられている。これにより、検査条件を調整することが容易となる。
【0045】
また、光源110a、110b、110c、110dの光軸と樹脂フィルム1の主面1Uの垂線とがなす角度がそれぞれ変更可能であるように、光源110a、110b、110c、110dは架台150に取り付けられている。これにより、検査条件を調整することが容易となる。
【0046】
撮像装置120a、120b、120c、120d、及び、光源110a、110b、110c、110dは、架台150へ任意の手段により取り付けることができ、例えば、ジンバル機構を有する部材などの取り付け手段により、架台150へ取り付けることができる。
【0047】
樹脂フィルム1は、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。
【0048】
樹脂フィルム1は、樹脂で形成されており、樹脂を含む。樹脂フィルム1を形成する樹脂の例としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂は、通常重合体を含みうる。
重合体の例としては、セルロース系重合体(例、トリアセチルセルロース);脂環式構造を含有する重合体(例、シクロオレフィン重合体);ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート);アクリル重合体(例、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル);ポリカーボネート;ポリスチレン;ポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリ酢酸ビニル;ポリオレフィン;が挙げられる。
樹脂フィルム1を形成する樹脂は、重合体を一種単独で含んでいてもよく、二種以上の組み合わせとして含んでいてもよい。また、重合体は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。樹脂は、重合体の他に、任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0049】
脂環式構造を含有する重合体の例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物が好ましい。
【0050】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。
【0051】
ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0052】
検査対象である樹脂フィルム1は、透明性が高いことが好ましい。樹脂フィルム1のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下であり、通常0%以上である。これにより、樹脂フィルム1の欠陥を精度よく検査しうる。
【0053】
検査装置100は、樹脂フィルム1の種々の欠陥を検査しうる。検査装置100は、例えば、線状欠陥、点状欠陥などの欠陥を検査しうる。
【0054】
[2.樹脂フィルムの製造方法]
前記の樹脂フィルムの製造装置1000を用いて、樹脂フィルムを製造する方法について以下説明する。
本発明の一実施形態に係る、樹脂フィルムの製造方法は、長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する工程(以下工程(1)ともいう。)、搬送される前記樹脂フィルムの主面に、平行光線を照射する工程(以下工程(2)ともいう。)、及びテレセントリックレンズが、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して撮像素子に結像させる工程(以下工程(3)ともいう。)を含む。工程(1)、工程(2)、及び工程(3)は、通常同時に行われる。
【0055】
(工程(1))
工程(1)では、長尺の樹脂フィルム1を連続的に搬送する。樹脂フィルム1は、例えば、搬送装置としての搬送ロール11、12、13、14により連続的に搬送される。
【0056】
(工程(2))
工程(2)では、搬送される樹脂フィルム1の主面1Dに、平行光線を照射する。
平行光線の照射は、例えば、複数の光源110a、110b、110c、110dにより行いうる。平行光線は、好ましくは、テレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dの光軸と平行である。
【0057】
(工程(3))
工程(3)では、テレセントリックレンズが、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して撮像素子に結像させる。
テレセントリックレンズは、例えば、複数のテレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dであって、複数のテレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dは、例えば複数の光源110a、110b、110c、110dより照射された平行光線の透過光を受光する。テレセントリックレンズ121a、121b、121c、121dは、受光した樹脂フィルム1の透過光を、例えば、複数の撮像素子122a、122b、122c、122dに結像させる。
【0058】
(工程(4))
本実施形態の樹脂フィルムの製造方法は、工程(1)~(3)以外に、工程(4)を含んでいてもよい。工程(4)は、通常工程(2)~(3)の後に行われる。
工程(4)は、撮像素子により得られた画像データを処理して、欠陥を検出する工程である。
例えば、工程(4)は画像処理装置により行われる。例えば、画像処理装置は、入力インターフェイスと、出力インターフェイスと、CPU(Central Processing Unit)と、主記憶装置と、補助記憶装置とを備える。入力インターフェイスと、出力インターフェイスと、CPUと、主記憶装置と、補助記憶装置とは、バスにより接続され、データ及び制御情報を交換する。CPUは、主記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行し、画像処理装置を、画像データを処理する画像処理部、処理された画像データに基づき樹脂フィルムの欠陥を検出する欠陥検出部として機能させる。
入力インターフェイスには、例えば撮像装置120a、120b、120c、120dが接続される。出力インターフェイスには、例えばディスプレイが接続され、樹脂フィルムの検査結果を表示しうる。
【0059】
工程(4)は、工程(4a)及び工程(4b)を含んでいてもよい。
工程(4a)では、画像処理装置の画像処理部が、撮像素子により得られた画像データを処理する。
工程(4b)では、画像処理装置の欠陥検出部が、処理された画像データに基づき、樹脂フィルムの欠陥を検出する。欠陥検出部は、樹脂フィルムが有する欠陥の有無の他、欠陥の種類及び大きさのうち少なくとも一つを検出してもよい。
【0060】
(その他の任意工程)
本実施形態の樹脂フィルムの製造方法は、工程(1)~(4)以外の任意の工程を含みうる。例えば、長尺の樹脂フィルムが溶融押出法により製造される場合には、溶融樹脂をダイより押し出す工程、及び押し出されたフィルムをキャストロール上で冷却する工程を含みうる。例えば、長尺の樹脂フィルムが溶液流延法により製造される場合には、樹脂を含む溶液を流延する工程、及び流延された溶液を乾燥させる工程を含みうる。
【0061】
また、本実施形態の樹脂フィルムの製造方法は、例えば、樹脂フィルムを延伸する工程、樹脂フィルムを巻き取り機15に巻き取る工程、樹脂フィルムを切断する工程を含みうる。樹脂フィルムを延伸する工程は、工程(1)~(3)の前に行われてもよく、工程(1)~(3)の後に行われてもよい。
樹脂フィルムの製造方法が、工程(1)~(3)を含むことによって、欠陥が検査された樹脂フィルムを、コンパクトな装置で暗室を必要とせずに製造しうる。
【0062】
[3.樹脂フィルムの検査方法]
本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの検査方法は、長尺の樹脂フィルムを連続的に搬送する前記の工程(1)、搬送される前記樹脂フィルムの主面に、平行光線を照射する前記の工程(2)、及びテレセントリックレンズが、前記樹脂フィルムの主面に照射された平行光線の透過光を受光して撮像素子に結像させる前記の工程(3)を含む。樹脂フィルムの検査方法は、前記の工程(1)~(3)に加えて、任意の工程を含みうる。例えば、樹脂フィルムの検査方法は、前記の工程(4)を含んでいてもよい。
樹脂フィルムの検査方法が、工程(1)~(3)を含むことによって、樹脂フィルムの有する欠陥の検査を、コンパクトな装置で暗室を必要とせずに実施しうる。
【符号の説明】
【0063】
1 樹脂フィルム
1D 主面
1U 主面
11、12、13、14 搬送ロール(搬送装置)
15 巻き取り機
110a、110b、110c、110d 光源
120a、120b、120c、120d 撮像装置
121a、121b、121c、121d テレセントリックレンズ
122a、122b、122c、122d 撮像素子
100 検査装置
150 架台
1000 製造装置
C1a、C1b、C1c、C1d 光軸
Pa、Pb、Pc、Pd 交点
Va、Vb、Vc、Vd 垂線
図1
図2
図3
図4