(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034414
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20230306BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140648
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB11
2H147AC01
2H147BA05
2H147BD01
2H147BE03
2H147BE13
2H147BE15
2H147BE20
2H147CB02
2H147CD02
2H147DA12
2H147EA05A
2H147EA05C
2H147EA12A
2H147EA12B
2H147EA12C
2H147EA13A
2H147EA13B
2H147EA13C
2H147GA25
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA13
2K102DA05
2K102DB04
2K102DB05
2K102DB08
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA07
2K102EA16
2K102EA18
(57)【要約】
【課題】凸状光導波路と信号電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現する。
【解決手段】基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、を有し、光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、信号電極は、上記湾曲部において2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、2本の信号線路と2本の並行導波路とが交差する交差領域において、2本の信号線路の少なくとも一方が交差領域以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有するか、または、2本の信号線路の一方が他方よりも速い信号伝搬速度を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、
前記基板上に形成された、前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、
を有する光導波路素子であって、
前記光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、
前記信号電極は、前記湾曲部において前記2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、
前記2本の信号線路と前記2本の並行導波路とが交差する前記基板上の領域である交差領域において、前記2本の信号線路の少なくとも一方が前記交差領域以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有するか、または、前記2本の信号線路の一方が他方よりも速い信号伝搬速度を有する、
光導波路素子。
【請求項2】
前記基板には、前記基板と前記信号線路との間に中間層が設けられており、
前記交差領域における前記中間層の厚さは、前記交差領域以外の部分における厚さより大きい、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記交差領域には、前記基板と前記信号線路との間に中間層が設けられており、
前記基板上において、前記中間層は、前記交差領域以外の部分には設けられていない、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記交差領域における前記中間層の厚さは、前記交差領域以外の部分における厚さの2倍以上大きい、
請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、
前記交差領域における前記中間層は、前記2本の信号線路の前記一方の下部における厚さが、前記他方の下部における厚さより大きい、
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記2本の信号線路は、前記交差領域における厚さが、前記交差領域以外の部分における厚さより大きい、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記2本の信号線路は、前記交差領域における厚さが、前記交差領域以外の部分における厚さより2倍以上大きい、
請求項6に記載の光導波路素子。
【請求項8】
前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、
前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方の厚さは、前記2本の信号線路の他方の厚さより大きい、
請求項6または7に記載の光導波路素子。
【請求項9】
前記2本の信号線路は、前記交差領域における幅が、前記差動信号の伝搬方向に沿って前記交差領域より上流の部分における幅よりも狭い、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項10】
前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、
前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方の幅は、前記2本の信号線路の他方の幅よりも狭い、
請求項1または9に記載の光導波路素子。
【請求項11】
前記基板上にはグランド電極が設けられ、
前記交差領域における前記2本の信号電極と前記グランド電極との間隔は、前記交差領域以外の部分における間隔より広い、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項12】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
を備える光変調器。
【請求項13】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュール。
【請求項14】
請求項12に記載の光変調器または請求項13に記載の光変調モジュールと、
前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、基板上に形成された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、で構成される光導波路素子としての光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
特に、光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっており、基幹光伝送ネットワークにおいて用いられるほか、メトロネットワークにも導入されつつある。
【0004】
また、近年では、光変調器自身を小型化しつつ更なる低電圧駆動および高速変調を実現するため、基板中における信号電界と導波光との相互作用をより強めるべく、薄膜化(又は薄板化)したLN基板(例えば、厚さ20μm以下)の表面に帯状の凸部を形成して構成されるリブ型光導波路またはリッジ型光導波路(以下、総称して凸状光導波路という)を用いた光変調器も実用化されつつある(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
また、光変調素子そのものの小型化に加えて、電子回路と光変調素子とを一つの筐体に収容し、光変調モジュールとして集積化する等の取り組みも進められている。例えば、光変調素子と当該光変調素子を駆動する高周波ドライバアンプとを一つの筐体内に集積して収容し、光入出力部を当該筐体の一の面に並列配置することで、小型・集積化を図った光変調モジュールが提案されている。このような光変調モジュールに用いられる光変調素子では、当該光変調素子を構成する基板の一の辺に光導波路の光入力端と光出力端とが配されるように、光導波路は、基板上において光の伝搬方向が折り返されるように形成される(例えば、特許文献3)。以下、このような光伝搬方向の折返し部分を含む光導波路で構成される光変調素子を折返し型光変調素子という。
【0006】
ところで、QPSK変調を行う光変調器(QPSK光変調器)やDP-QPSK変調を行う光変調器(DP-QPSK光変調器)は、いわゆるネスト型と呼ばれる入れ子構造になった複数のマッハツェンダ型光導波路を備え、そのそれぞれが、高周波信号が印加される信号電極を少なくとも一つ備える。基板上に形成されるこれらの信号電極は、基板外部の電気回路との接続のため、LN基板の外周近傍まで延在するように形成される。このため、基板上には、複数の光導波路と複数の信号電極とが複雑に交差し、光導波路の上を信号電極が横断する複数の交差部が形成される。
【0007】
このような交差部では、光導波路の上を交差する信号電極から当該信号電極の下部にある光導波路の部分に電界が印加されることとなり、当該光導波路を伝搬する光の位相を僅かながら変化させて当該位相を変調することとなる。このような交差部における光の位相変化ないし位相変調は、信号電極によって光導波路内に発生する正常な変調のための光位相変化に対する雑音として働き、光変調動作を擾乱し得る。以下、このような交差部において発生する雑音としての位相変調を、擾乱変調と称する。
【0008】
光変調器における光変調動作に対する擾乱変調の雑音効果の程度は、交差部において信号電極から光導波路に加わる電界が強いほど大きく、また、交差部の数に比例した加算効果によっても(例えば、信号電極に沿った交差部の長さ(交差長)の総和に応じて)大きくなる。
【0009】
例えば、従来の、LN基板の平らな表面にTi等の金属を拡散して形成された光導波路(いわゆる、平面光導波路)と、そのLN基板の基板平面に形成される信号電極と、が交差する構成においては、信号電極は光導波路の上面(基板面)にのみ形成されるのに対し、上述のような凸状光導波路と信号電極とが交差する構成では、信号電極は凸状光導波路の凸部の上面及び2つの側面にも形成され得る。このため、交差部において信号電極から光導波路に加わる電界は、平面導波路の場合に比べて凸状光導波路の場合に強くなり、更に強閉じ込め化された光波との相互作用も強くなり、したがって、擾乱変調による雑音は、平面光導波路の場合に比べて凸状光導波路においてより大きく発生し得る。
【0010】
また、上述したような折返し型光変調素子では、光の折返し部を含まない光導波路で構成される非折返し型の光変調素子に比べて、電極と光導波路との交差部はより多く存在することとなり(例えば、特許文献3の
図1参照)、擾乱変調による雑音もより大きなものとなり得る。例えば、上述したDP-QPSK変調素子の場合、非折返し型の光変調素子では、一つの電極における交差部の数は2ないし4個程度であって交差長の総和は数十ミクロン(例えば20μmから40μmの範囲)であるのに対し、折返し型光変調素子では、一つの電極における交差部の数は十数か所に及ぶ場合があり、交差長の総和は数百ミクロンから数ミリとなり得る。
【0011】
したがって、特に凸状光導波路を用いて構成される折返し型光変調素子においては、交差部で発生する擾乱変調による雑音は、正常な光変調動作に対し無視し得ないほど大きなものとなり得る。また、特に、2本の並行導波路で構成されるマッハツェンダ型光導波路においては、上記擾乱変調は、これらの並行導波路を伝搬するそれぞれの光信号に雑音を発生させるだけでなく、これら2つの信号光間の位相差にも雑音を生じさせる。この位相差雑音は、これらの光波がマッハツェンダ型光導波路内において合波される際に、光干渉作用によってより大きな雑音を生じさせることとなり、光変調動作に多大な影響を与え得る。
【0012】
また、上記のような交差部は、LN基板に限らずInP等の半導体を基板に用いた光導波路素子や、Siを基板に用いるシリコン・フォトニクス導波路デバイスなどの、種々の光導波路素子でも同様に形成され得る。また、そのような光導波路素子は、マッハツェンダ型光導波路を用いる光変調器だけでなく、方向性結合器やY分岐を構成する光導波路を用いた光変調器、あるいは光スイッチ等の種々の光導波路素子であり得る。
【0013】
そして、光導波路素子の更なる小型化、多チャンネル化、及び又は高集積化に伴って光導波路パターン及び電極パターンが複雑化すれば、基板上における交差部の数は増々増加し、擾乱変調による雑音は、無視し得ない要因となって光導波路素子の性能を制限することとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007-264548号公報
【特許文献2】国際公開第2018/031916号明細書
【特許文献3】特開2019-152732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記背景より、凸状光導波路と電気信号を伝搬する信号電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一の態様は、基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、前記基板上に形成された、前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、を有する光導波路素子であって、前記光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、前記信号電極は、前記湾曲部において前記2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、前記2本の信号線路と前記2本の並行導波路とが交差する前記基板上の領域である交差領域において、前記2本の信号線路の少なくとも一方が前記交差領域以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有するか、または、前記2本の信号線路の一方が他方よりも速い信号伝搬速度を有する。
本発明の他の態様によると、前記基板には、前記基板と前記信号線路との間に中間層が設けられており、前記交差領域における前記中間層の厚さは、前記交差領域以外の部分における厚さより大きい。
本発明の他の態様によると、前記交差領域には、前記基板と前記信号線路との間に中間層が設けられており、前記基板上において、前記中間層は、前記交差領域以外の部分には設けられていない。
本発明の他の態様によると、前記交差領域における前記中間層の厚さは、前記交差領域以外の部分における厚さの2倍以上大きい。
本発明の他の態様によると、前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、前記交差領域における前記中間層は、前記2本の信号線路の前記一方の下部における厚さが、前記他方の下部における厚さより大きい。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路は、前記交差領域における厚さが、前記交差領域以外の部分における厚さより大きい。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路は、前記交差領域における厚さが、前記交差領域以外の部分における厚さより2倍以上大きい。
本発明の他の態様によると、前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方の厚さは、前記2本の信号線路の他方の厚さより大きい。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路は、前記交差領域における幅が、前記差動信号の伝搬方向に沿って前記交差領域より上流の部分における幅よりも狭い。
本発明の他の態様によると、前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方の幅は、前記2本の信号線路の他方の幅よりも狭い。
本発明の他の態様によると、前記基板上にはグランド電極が設けられ、前記交差領域における前記2本の信号電極と前記グランド電極との間隔は、前記交差領域以外の部分における間隔より広い。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である上記いずれかの態様の光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器である。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である上記いずれかの態様の光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュールである。
本発明の他の態様は、上記の光変調器または光変調モジュールと、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、凸状光導波路と電気信号を伝搬する電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光変調器に用いられる光変調素子の構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す光変調素子の光変調部Aの部分詳細図である。
【
図4】
図2に示す光変調素子の光折り返し部Bの部分詳細図である。
【
図6】
図5に示す交差領域のVI-VI断面矢視図である。
【
図7】第1の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
【
図8】第2の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
【
図9】
図8に示す交差領域のIX-IX断面矢視図である。
【
図10】第3の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
【
図11】
図10に示す交差領域のXI-XI断面矢視図である。
【
図12】第4の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
【
図13】
図12に示す交差領域のXIII-XIII断面矢視図である。
【
図14】第5の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
【
図15】第6の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
【
図16】第7の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態に係る光変調モジュールの構成を示す図である。
【
図18】本発明の第3の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【
図19】交差領域における擾乱変調の相殺効果の低下または消滅について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[1.第1実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、光導波路素子である光変調素子を用いた光変調器100の構成を示す図である。光変調器100は、筐体102と、当該筐体102内に収容された光変調素子104と、中継基板106と、を有する。光変調素子104は、例えば、DP-QPSK変調器構成である。筐体102は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0020】
光変調器100は、また、光変調素子104の変調に用いる高周波電気信号を入力するための信号ピン108と、光変調素子104の動作点の調整等に用いる電気信号を入力するための信号ピン110と、を有する。
【0021】
さらに、光変調器100は、筐体102内に光を入力するための入力光ファイバ114と、光変調素子104により変調された光を筐体102の外部へ導く出力光ファイバ120と、を筐体102の同一面に有する。
【0022】
ここで、入力光ファイバ114及び出力光ファイバ120は、固定部材であるサポート122及び124を介して筐体102にそれぞれ固定されている。入力光ファイバ114から入力された光は、サポート122内に配されたレンズ130によりコリメートされた後、レンズ134を介して光変調素子104へ入力される。ただし、これは一例であって、光変調素子104への光の入力は、従来技術に従い、例えば、入力光ファイバ114を、サポート122を介して筐体102内に導入し、当該導入した入力光ファイバ114の端面を光変調素子104の基板220(後述)の端面に接続することで行うものとすることもできる。
【0023】
光変調器100は、また、光変調素子104から出力される2つの変調された光を偏波合成する光学ユニット116を有する。光学ユニット116から出力される偏波合成後の光は、サポート124内に配されたレンズ118により集光されて出力光ファイバ120へ結合される。
【0024】
中継基板106は、当該中継基板106に形成された導体パターン(不図示)により、信号ピン108から入力される高周波電気信号および信号ピン110から入力される動作点調整用等の電気信号を、光変調素子104へ中継する。中継基板106上の上記導体パターンは、例えばワイヤボンディング等により、光変調素子104の電極の一端を構成するパッド(後述)にそれぞれ接続される。また、光変調器100は、所定のインピーダンスを有する終端器112を筐体102内に備える。
【0025】
図2は、
図1に示す光変調器100の筐体102内に収容される光変調素子104の、構成の一例を示す図である。また、
図3および
図4は、それぞれ、
図2に示す光変調素子104の光変調部A及び光折り返し部B(後述)の部分詳細図である。
【0026】
光変調素子104は、基板220上に形成された光導波路230(図示太線点線の全体)で構成され、例えば200GのDP-QPSK変調を行う。基板220は、例えば、20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化された、電気光学効果を有するZカットのLN基板である。また、光導波路230は、薄膜化された基板220の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。ここで、LN基板は、応力が加わると光弾性効果により屈折率が局所的に変化し得るため、基板全体の機械強度を補強すべく、一般的にはSi(シリコン)基板やガラス基板、LN等の支持板に接着される。本実施形態では、後述するように、基板220は、支持板500に接着されている。
【0027】
基板220は、例えば矩形であり、図示上下方向に延在して対向する図示左右の2つの辺280a、280b、および図示左右方向に延在して対向する図示上下の辺280c、280dを有する。
【0028】
光導波路230は、基板220の図示左方の辺280aの図示上側において入力光ファイバ114からの入力光(図示右方を向く矢印)を受ける入力導波路232と、入力された光を同じ光量を有する2つの光に分岐する分岐導波路234と、を含む。また、光導波路230は、分岐導波路234により分岐されたそれぞれの光を変調する2つの変調部である、いわゆるネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bを含む。
【0029】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bは、それぞれ、一対の並行導波路を成す2つの導波路部分に設けられたそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路244a、244b、および244c、244dを含む。マッハツェンダ型光導波路244a及び244bは、それぞれ、並行導波路246a1と246a2、及び並行導波路246b1と246b2、を有する。また、マッハツェンダ型光導波路244c及び244dは、それぞれ、並行導波路246c1と246c2、及び並行導波路246d1と246d2、を有する。
【0030】
以下、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240aおよび240bを総称してネスト型マッハツェンダ型光導波路240ともいい、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、および244dを総称してマッハツェンダ型光導波路244ともいうものとする。また、並行導波路246a1と246a2とを総称して並行導波路246aともいい、並行導波路246b1と246b2とを総称して並行導波路246bともいうものとする。また、並行導波路246c1と246c2とを総称して並行導波路246cともいい、並行導波路246d1と246d2とを総称して並行導波路246dともいうものとする。さらに、並行導波路246a、246b、246c、および246dを総称して、並行導波路246ともいうものとする。
【0031】
図2に示すように、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240は、光変調部Aと光折り返し部Bとを含む(それぞれ、図示二点鎖線の矩形で示された部分)。光折り返し部Bは、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路240における光の伝搬方向を変える部分である。具体的には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240を構成するマッハツェンダ型光導波路244のそれぞれは、湾曲部を有する2本の並行導波路246を有し、光折り返し部Bは、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路240を構成する合計8本の並行導波路246の湾曲部により構成されている。
【0032】
本実施形態では、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240は、分岐導波路234により2つに分岐された入力光のそれぞれについて、光折り返し部Bにおいて光の伝搬方向を180度折り返したのち、光変調部AにおいてQPSK変調し、変調後の光(出力)をそれぞれの出力導波路248a、248bから図示左方へ出力する。これら2つの出力光は、その後、基板220外に配された光学ユニット116により偏波合成されて一つの光ビームにまとめられる。
【0033】
基板220上には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bを構成する合計4つのマッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、244dのそれぞれに変調動作を行わせるための、4つの信号電極250a、250b、250c、250dが設けられている。以下、信号電極250a、250b、250c、250dを総称して信号電極250ともいうものとする。
【0034】
信号電極250のぞれぞれは、2つの信号線路を含む。すなわち、信号電極250aは、信号線路252a1と252a2とを含み、信号電極250bは、信号線路252b1と252b2とを含む。また、信号電極250cは、信号線路252c1と252c2とを含み、信号電極250dは、信号線路252d1と252d2とを含む。以下、信号線路252a1と252a2とを総称して信号線路252aともいい、信号線路252b1と252b2とを総称して信号線路252bともいうものとする。また、信号線路252c1と252c2とを総称して信号線路252cともいい、信号線路252d1と252d2とを総称して信号線路252dともいうものとする。さらに、信号線路252a、252b、252c、および252dを総称して、信号線路252ともいうものとする。
【0035】
信号電極250のそれぞれには、対応するマッハツェンダ型光導波路244に変調動作を行わせるための高周波電気信号が入力される。この高周波電気信号は、互いに180°の位相差を有する2つの電気信号、すなわち差動信号で構成される。信号電極250のそれぞれを構成する2つの信号線路252は、その信号電極250に入力された、上記差動信号を構成する2つの電気信号のそれぞれを伝送する。
【0036】
なお、理解を容易にするため、一例として、以下においては差動信号がパルス信号であるものとして説明するが、差動信号はパルス信号には限られない。差動信号は、2つの信号線路において電気信号の相互の位相情報が変調に影響する任意の波形を有するものであり得る。
【0037】
基板220上には、基板220と信号線路252との間に、中間層260が形成されている。中間層260は、例えばバッファ層であり、二酸化ケイ素(SiO2)または樹脂等により構成することができる。本実施形態では、中間層260は、樹脂である。具体的には、中間層260は、フォトレジストであって、カップリング剤(架橋剤)を含み、熱により架橋反応が進行して硬化する、いわゆる感光性永久膜である。以下、この感光性永久膜を、永久レジストともいうものとする。本実施形態では、基板220の全面に、永久レジストである中間層260が形成されている。ただし、これは一例であって、中間層260は、基板220と信号線路252との間に配されるように、基板220上に部分的に形成されていてもよい。
【0038】
図3に示すように、光変調部Aにおいて、信号電極250aを構成する信号線路252a1と252a2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244aの並行導波路246a1および246a2の上部に形成された作用部300aおよび300b(図示斜線ハッチング部分)を有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244aに変調動作を行わせる。また、信号電極250bを構成する信号線路252b1と252b2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244bの並行導波路246b1および246b2の上部に形成された作用部300cおよび300dを有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244bに変調動作を行わせる。
【0039】
同様に、信号電極250cを構成する信号線路252c1と252c2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244cの並行導波路246c1および246c2の上部に形成された作用部300eおよび300fを有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244cに変調動作を行わせる。また、信号電極250dを構成する信号線路252d1と252d2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244dの並行導波路246d1および246d2の上部に形成された作用部300gおよび300hを有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244dに変調動作を行わせる。
【0040】
以下、作用部300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g、および300hを総称して、作用部300ともいうものとする。
【0041】
図2を参照し、信号線路252a1、252a2、252b1、252b2、252c1、252c2、252d1、252d2は、それぞれ、基板220の図示右方へ延在し、光折り返し部Bにおいて8本の並行導波路246の上を交差したのち、辺280bまで延在してパッド254a、254b、254c、254d、254e、254f、254g、254hに接続されている。
【0042】
以下、パッド254a、254b、254c、254d、254e、254f、254g、254hを総称してパッド254ともいうものとする。パッド254のそれぞれは、ワイヤボンディング等により、
図1に示す光変調器100の中継基板106と接続される。
【0043】
信号線路252a1、252a2、252b1、252b2、252c1、252c2、252d1、252d2の図示左方は、図示下方へ折れ曲がって基板220の辺280dまで延在し、パッド258a、258b、258c、258d、258e、258f、258g、258hに接続されている。以下、パッド258a、258b、258c、258d、258e、258f、258g、258hを総称してパッド258ともいうものとする。パッド258のそれぞれは、ワイヤボンディング等により、終端器112を構成する終端抵抗(不図示)のそれぞれと接続される。終端抵抗は、8本の信号線路252のそれぞれとグランド電極(
図2では不図示)との間に挿入される場合は8個で構成され、差動信号を伝搬するそれぞれ2本の信号線路252a、252b、252c、252dの間に挿入される場合には4個で構成され得る。
【0044】
図2において、信号線路252のそれぞれは、従来技術に従い、基板220の面上においてこれらの信号線路252を一定距離離れた位置からそれぞれ挟むように形成されたグランド電極(不図示)と共に、所定のインピーダンスを有する分布定数線路を構成している。本実施形態では、この分布定数線路は、コプレーナ伝送線路である。
【0045】
これにより、信号ピン108から中継基板106を介してパッド254のそれぞれに入力される高周波電気信号は、進行波となって信号線路252のそれぞれを伝搬し、作用部300のそれぞれにおいて、対応するマッハツェンダ型光導波路244を伝搬する光波をそれぞれ変調する。
【0046】
光変調素子104には、また、いわゆるDCドリフトによるバイアス点の変動を補償して動作点を調整するためのバイアス電極270a、270b、270cが設けられている。バイアス電極270aは、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bのバイアス点変動の補償に用いられる。また、バイアス電極270bおよび270cは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、および244c、244dのバイアス点変動の補償に用いられる。
【0047】
これらのバイアス電極270a、270b、270cは、それぞれ、基板220の図示上側の辺280cまで延在し、中継基板106を介して信号ピン110のいずれかと接続される。対応する信号ピン110は、筐体102の外部に設けられるバイアス制御回路と接続される。これにより、当該バイアス制御回路によりバイアス電極270a、270b、270cが駆動されて、対応する各マッハツェンダ型光導波路に対しバイアス点変動を補償するように動作点が調整される。以下、バイアス電極270a、270b、270cを総称してバイアス電極270ともいうものとする。
【0048】
上述したように、本実施形態の光変調素子104では、光折り返し部Bにおいて、マッハツェンダ型光導波路244のそれぞれは、湾曲部を有する2本の並行導波路246を有する。このため、基板220上には、並行導波路246と信号電極250と交差部が複数存在することとなる。具体的には、基板220上には、光変調部Aの図示右方および光折り返し部Bにおいて、信号電極250を構成する2本の信号線路252のそれぞれは、4つのマッハツェンダ型光導波路244を構成するそれぞれ2本の並行導波路246と交差している。ここで、基板220の面上において、差動信号を伝搬する2本の信号線路252と、一のマッハツェンダ型光導波路244を構成する2本の並行導波路246と、が交差する部分を、交差領域ともいうものとする。
【0049】
図2において、光変調部Aの図示右方には、差動信号を伝搬する2本の信号線路252c(すなわち、信号線路252c1と252c2)と、マッハツェンダ型光導波路244cを構成する2本の並行導波路246c(すなわち、並行導波路246c1および246c2)とが交差する交差領域400c1が存在する。また、それぞれ2本の信号線路252cおよび252dと、2本の並行導波路246bと、がそれぞれ交差する交差領域400b1および400b2が存在する。また、それぞれ2本の信号線路252b、252c、および252dと、2本の並行導波路246aと、がそれぞれ交差する交差領域400a1、400a2、および400a3が存在する。
【0050】
同様に、光折り返し部Bには、
図4に示すように、2本の並行導波路246aが、差動信号を伝搬するそれぞれ2本の信号線路252d、252c、252b、および252aと交差する交差領域400a4、400a5、400a6、400a7が存在する。また、並行導波路246bが、信号線路252d、252c、252b、および252aと交差する交差領域400b3、400b4、400b5、400b6が存在する。
【0051】
また、並行導波路246cが、信号線路252d、252c、252b、および252aと交差して形成される交差領域400c2、400b4、400b5、400b6が存在する。また、並行導波路246dが、信号線路252d、252c、252b、および252aと交差する交差領域400d1、400d2、400d3、400d4が存在する。
【0052】
以下、交差領域400a1、400a2、400a3、400a4、400a5、400a6を総称して交差領域400aともいい、交差領域400b1、400b2、400b3、400b4、400b5、400b6を総称して交差領域400bともいうものとする。また、交差領域400c1、400c2、400c3、400c4、400c5を総称して交差領域400cともいい、交差領域400d1、400d2、400d3、400d4を総称して交差領域400dともいうものとする。さらに、交差領域400a、400b、400c、400dを総称して交差領域400ともいうものとする。
【0053】
光変調素子104では、これらの交差領域400において、並行導波路246と信号線路252との交差に起因した擾乱変調が発生し得る。上述したように、擾乱変調は、それぞれ2本の並行導波路246で構成されるマッハツェンダ型光導波路244においては、これら2本の並行導波路246を伝搬するそれぞれの光信号に雑音を発生させるだけでなく、これら2つの信号光間の位相差にも雑音を生じさせるため、変調動作に与える影響が大きい。
【0054】
交差領域400においては、2本の信号線路252には差動信号が伝搬されるので、一方の信号線路252が2本の並行導波路246に発生させた擾乱変調は、他方の信号線路252が当該2本の並行導波路246に発生させる擾乱変調により相殺され得る。
【0055】
ただし、このような相殺作用が効果を奏するのは、理想的には、上記2本の信号線路252を伝搬する差動信号が上記2本の並行導波路246のそれぞれへ同時に到達する場合、すなわち、並行導波路246に到達する差動信号間に位相差がない場合である。そのような理想的な状態を実現するには、交差領域400において、一方の信号線路252における2本の並行導波路246との交差部間の長さ(交差間隔)と、他方の信号線路252における2本の並行導波路246との交差部間の長さ(交差間隔)とが、互いに等しいことが望ましい。
【0056】
しかしながら、本実施形態のように湾曲した並行導波路246を有する複数のマッハツェンダ型光導波路244と、差動信号を伝搬するそれぞれ2本の信号線路252で構成される複数組の信号線路252と、が交差する場合には、信号線路252および並行導波路246のパターン配置の都合上、2本の信号線路252のそれぞれの交差間隔は、必ずしも互いに等しいものとはならないことが多い。
【0057】
図19は、2本の信号線路と2本の並行導波路とが交差する際の電気信号の伝搬について説明するための図である。図示の例では、差動信号を伝搬する2本の信号線路910a、910bが、マッハツェンダ型光導波路を構成する2本の並行導波路920a、920bのそれぞれと交差している。以下、信号線路910aと910bとを総称して信号線路910ともいい、並行導波路920aと920bとを総称して並行導波路920ともいうものとする。
【0058】
図19では、一方の信号線路910bにおける2本の並行導波路920a、920bとの交差部間の長さである交差間隔L2は、他方の信号線路910aにおける2本の並行導波路920a、920bとの交差間隔L1より長い。
【0059】
このため、例えば、差動信号パルスとして信号線路910aを伝搬する非反転パルス930aと、信号線路910bを伝搬する反転パルス930bとが、一方の並行導波路920aを同時に通過して、並行導波路920aにおける擾乱変調が完全に相殺されたとしても、反転パルス930bが並行導波路920bに到達するときには、非反転パルス930aは並行導波路920bを通り過ぎた位置に存在することとなる。その結果、並行導波路920bにおいては、これらの差動信号パルスによる擾乱変調の相殺効果は発揮されない。
【0060】
これを時間的側面から見ると、上記のような擾乱変調の相殺効果の消滅または低下の現象は、並行導波路920aを通過してから920bに到達するまでの差動信号パルス間における伝搬遅延時間を用いて、以下のように説明することができる。
【0061】
一方の信号線路910aにおいて交差間隔L1の区間を伝搬する非反転パルス930aに対し、他方の信号線路910bにおいて交差間隔L2(>L1)の区間を伝搬する反転パルス930bの伝搬遅延時間ΔTは、これら信号線路910における電気信号の信号伝搬速度をVとすると、次式で与えられる。
ΔT=(L2-L1)/V (1)
【0062】
すなわち、2つの信号線路910を伝搬する差動信号は、一方の並行導波路920aへの到達時点において互いの位相が正確に反転位相の状態(以下、理想反転状態という)であったとしても、他方の並行導波路920bに到達する時点では、伝搬遅延時間ΔTに対応する位相分だけ理想反転状態からずれることとなる。その結果、上記他方の並行導波路920bにおいては、差動信号を伝搬する2つの信号線路910による、擾乱変調の相殺効果は消滅または低下することとなる。
【0063】
他方の並行導波路920bの到達時点における上記理想反転状態からのずれを低減するため、一方の並行導波路920aの到達時点における差動信号の間にオフセット位相を持たせておくことも考えられるが、この場合には、2本の並行導波路920の双方に擾乱変調が残ることとなる。その結果、それらの擾乱変調は、並行導波路920が構成するマッハツェンダ型光導波路の変調動作に対し加算的に影響を与えることとなり得る。
【0064】
このような擾乱変調の相殺効果の低下又は消滅を抑制して当該擾乱変調の相殺効果を向上するため、本実施形態及び後述する変形例では、交差領域400において、2本の信号線路252が交差領域400以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有するように構成されるか、または、2本の信号線路252の一方が他方よりも速い信号伝搬速度を有するように構成される。
【0065】
これにより、2本の信号線路252が交差領域400において交差領域400以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有する場合には、式(1)にけるVは、交差領域400以外の部分に比べて交差領域400において大きくなるので、交差領域400における伝搬遅延時間ΔTが低減される。また、2本の信号線路252の一方が他方よりも速い信号伝搬速度を有する場合には、2本の信号線路において、それぞれの交差間隔の区間を伝搬する差動信号の伝搬時間差を低減できるので、交差領域400における伝搬遅延時間ΔTが低減される。
【0066】
その結果、2本の信号線路252を伝搬する差動信号は、2本の並行導波路246と交差する際の理想反転状態からのずれが低減されることとなり、擾乱変調の相殺効果は、基板上の全体に亘って同一の厚さで中間層が形成される従来の光変調素子に比べて向上される。
【0067】
一例として、
図2における交差領域400a3の構成について説明する。
図5は、
図2における交差領域400a3の部分詳細図である。
図5において、中間層260の図示は省略されている。また、
図5では、
図2には図示しないグランド電極290a、290b、290cが示されている。上述したように、基板220上には、信号線路252のそれぞれを、一定の間隔(離間距離)をもって離れた位置から挟むようにグランド電極が形成されており、信号線路252は、これらのグランド電極と共に、所定のインピーダンスを有する分布定数線路(例えばコプレーナ線路)を構成している。グランド電極290a、290b、290cは、そのようなグランド電極の一部である。
【0068】
図5の例では、グランド電極290aおよび290bは、信号線路252d1を一定の離間距離g10離れた位置から挟むように形成され、グランド電極290bおよび290cは、信号線路252d2を一定の離間距離g10離れた位置から挟むように形成されている。
【0069】
図6は、
図5におけるVI-VI断面矢視図であり、信号線路252d2に沿った基板220の断面構造を示している。なお、信号線路252d1に沿った基板220の断面構造は、
図6に示す信号線路252d2に沿った断面構造と同様に構成されている。
図6に示すように、基板220は、支持板500に固定されている。
【0070】
交差領域400a3では、マッハツェンダ型光導波路244aを構成する並行導波路246a1および246a2に対し、差動信号を伝搬する2つの信号線路252d1および252d2が、それぞれ、互いに異なる交差角をもって交差している。これにより、信号線路252d2における、並行導波路246a1および246a2との交差部間の距離である交差間隔L20は、信号線路252d1における、並行導波路246a1および246a2との交差部間の距離である交差間隔L10よりも大きい。
【0071】
また、本実施形態では、特に、バッファ層等の中間層が基板上に一様な厚さで形成される従来の光変調素子とは異なり、交差領域400a3において、基板220と信号線路252との間の中間層260の厚さt20が、交差領域400a3以外の部分における厚さt10よりも大きい。ここで、厚さt10は、従来の光変調素子と同様に、並行導波路246において信号線路252を構成する金属に起因する光吸収損失が実質的に発生しない程度の厚さ(例えば、1μm以下)であり得る。
【0072】
バッファ層等である中間層260に用いられるSiO2や永久レジスト等の比誘電率は、基板220に用いられるLN等の強誘電材料の比誘電率(数十)より一桁程度小さい。このため、信号線路252の下部の中間層を厚くすると、その信号線路252を伝搬する電気信号(マイクロ波帯域の高周波電気信号)は、その信号線路252における実行屈折率が低減されるため、より速く伝搬する(すなわち、信号伝搬速度がより速くなる)。
【0073】
本実施形態では、信号線路252d1および252d2と基板220との間の中間層の厚さは、交差領域400a3における厚さt20が、交差領域400a3以外の部分の厚さt10よりも大きい。このため、2本の信号線路252d1、252d2は、交差領域400a3における信号伝搬速度V10が、交差領域400a3以外の部分における信号伝搬速度V0よりも速くなる(すなわち、V10>V0)。これにより、式(1)において信号伝搬速度VはV0からV10に増加するため、伝搬遅延時間ΔTが減少する。
【0074】
その結果、交差領域400a3では、2本の信号線路252d1、252d2を伝搬する差動信号は、2本の並行導波路246のそれぞれと交差する際の理想反転状態からのずれが低減されることとなり、擾乱変調の相殺効果は、基板上の全体に亘って同一の厚さ(例えばt10)で中間層が形成される従来の光変調素子に比べて向上される。
【0075】
なお、擾乱変調についての有効な相殺効果を得る観点からは、伝搬遅延時間ΔTは、差動信号における信号パルス幅Δtの1/2以下(すなわち、ΔT≦Δt/2)であることが望ましい。ΔTがΔt/2を超える場合には、互いに位相反転した2つの差動信号パルスは、その位相差がパルス幅の半分を超えることとなり、並行導波路246を通過する際の擾乱変調の相殺効果が半分以下に低下してしまうためである。
【0076】
また、擾乱変調の相殺効果についての有効な向上効果を得るためには、中間層260は、交差領域400a3における厚さt20が、交差領域400a3以外の部分の厚さt10の2倍以上(すなわち、t20≧2×t10)であることが望ましい。本実施形態では、例えば、t10は0.5μmであり、t20は1μmである。
【0077】
また、本実施形態では、中間層260は、単層で構成されるものとしたが、多層であってもよい。例えば、中間層260は、基板220上に形成されたSiO2から成る第1中間層と、交差領域400において第1中間層の上に形成された永久レジストである第2中間層と、により構成されるものとすることができる。この場合、第1中間層は厚さt10で形成され、第2中間層は、第1中間層を含む中間層260全体の厚さがt20となるように形成され得る。
【0078】
なお、
図2において、交差領域400a3以外の交差領域400は、差動信号を伝搬する2つの信号線路252の、2つの並行導波路246との交差部間の交差間隔が互いに等しいように描かれている。ただし、これは一例であり、基板220上における光導波路230及び信号線路252のパターン配置に依存して、交差領域400a3以外の交差領域400も、交差領域400a3と同様に、2つの信号線路252における交差間隔は互いに異なるものとなり得る。この場合には、そのような2つの信号線路252における交差間隔が相異なる任意の交差領域400についても、上述した交差領域400a3の構成及び後述する変形例の構成を用いることにより、それらの交差領域400における擾乱変調の相殺効果を向上することができる。
【0079】
次に、交差領域400の構成の変形例について説明する。理解を容易にするため、以下の変形例は、交差領域400a3についての変形例であるものとして説明するが、上記のように、これらの変形例も、2つの信号線路252における交差間隔が相異なる任意の交差領域400について適用することができる。
[1.1 第1変形例]
図7は、
図5および
図6に示す交差領域400a3の第1の変形例に係る、交差領域400a3-1の構成を示す図である。
図7に示す交差領域400a3-1の構成は、光変調素子104において、
図5及び
図6に示す交差領域400a3の構成に代えて用いることができる。
図7は、
図6に示す交差領域400a3のVI-VI断面図に相当する図であり、信号線路252d2に沿った基板220の断面構造を示している。なお、信号線路252d1に沿った基板220の断面構造は、
図7に示す信号線路252d2に沿った断面構造と同様である。
図7において、
図6と同じ構成要素については、
図6における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図6についての説明を援用する。
【0080】
交差領域400a3-1は、交差領域400a3と同様の構成を有するが、中間層260に代えて、中間層260-1を有する点が異なる。中間層260-1は、中間層260と同様の構成を有するが、
図6に示す中間層260が交差領域400a3の周囲まで延在しているのに対し、中間層260-1は、交差領域400a3-1の部分にのみ形成されている。すなわち、中間層260-1は、交差領域400a3-1以外の部分には設けられていない。
【0081】
交差領域400a3-1の構成は、例えば、基板上に中間層260又は260-1のようなバッファ層がなくても、信号線路252を構成する金属に起因して並行導波路246に発生する光吸収損失が実用上問題ないレベルに抑制され得る場合に有用である。
【0082】
[1.2 第2変形例]
図8および
図9は、
図5および
図6に示す交差領域400a3の第2の変形例に係る、交差領域400a3-2の構成を示す図である。
図8および
図9に示す交差領域400a3-2の構成は、光変調素子104において、
図5及び
図6に示す交差領域400a3の構成に代えて用いることができる。
図8は、
図5に対応する交差領域400a3-2の平面図である。なお、
図8では、グランド電極の図示を省略しているが、
図5に示す同様の位置に、グランド電極290a、290b、290cが配されているものとする。
【0083】
図9は、
図8におけるIX-IX断面矢視図であり、並行導波路246a2に沿った基板220の断面構造を示す図である。なお、並行導波路246a1に沿った基板220の断面構造は、
図9に示す並行導波路246a2に沿った基板220の断面構造と同様である。
図8および
図9において、
図5および
図6と同じ構成要素については、
図5および
図6における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図5および
図6についての説明を援用する。
【0084】
上述した交差領域400a3およびその変形例である交差領域400a3-1では、2本の信号線路252の双方が、これらの交差領域以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有するように構成されている。これに対し、第2の変形例に係る交差領域400a3-2では、2本の信号線路252のうち、交差間隔が長い一方の信号線路252が、交差間隔の短い他方の信号線路よりも、速い信号伝搬速度を持つように構成されている。
【0085】
具体的には、交差領域400a3-2は、交差領域400a3と同様の構成を有するが、中間層260に代えて、中間層260-2を有する点が異なる。中間層260-2は、中間層260と同様の構成を有するが、中間層260が交差領域400a3の周囲まで延在しているのに対し、中間層260-2は、交差領域400a3-1の部分にのみ形成されている。
【0086】
また、特に、中間層260-2は、交差間隔L10を有する信号線路252d1の下部における厚さt11に対し、交差間隔L10よりも長い交差間隔L20を有する信号線路252d2の下部における厚さt21が大きい(すなわち、t21>t11)。これにより、長い交差間隔L20を有する信号線路252d2は、短い交差間隔L10を有する信号線路252d1よりも速い信号伝搬速度を持つ。
【0087】
このため、交差領域400a3-2では、信号線路252d1および252d2において、それぞれの交差間隔を伝搬する電気信号間の伝搬時間差、すなわち、伝搬遅延時間ΔTが低減または解消される。その結果、交差領域400a3-2では、擾乱変調の相殺効果を向上することができる。
【0088】
[1.3 第3変形例]
図10および
図11は、
図5および
図6に示す交差領域400a3の第3の変形例に係る、交差領域400a3-3の構成を示す図である。
図10および
図11に示す交差領域400a3-3の構成は、光変調素子104において、
図5及び
図6に示す交差領域400a3の構成に代えて用いることができる。
図10は、
図5に相当する交差領域400a3-3の平面図である。なお、
図10では、グランド電極の図示を省略しているが、基板220上には、
図5に示すグランド電極290a、290b、290cと同様に、信号線路252d1-1および252d2-1から一定の間隔距離離れた位置においてこれらの信号線路をそれぞれ挟むグランド電極が配されているものとする。
【0089】
図11は、
図10におけるXI-XI断面矢視図であり、信号線路252d2-1に沿った基板220の断面構造を示す図である。なお、信号線路252d1-1に沿った基板220の断面構造も、
図11と同様である。
図10および
図11において、
図5および
図6と同じ構成要素については、
図5および
図6における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図5および
図6についての説明を援用する。
【0090】
交差領域400a3-3は、交差領域400a3と同様の構成を有するが、中間層260に代えて、中間層260-3を有する点が異なる。中間層260-3は、中間層260と同様の構成を有するが、中間層260が交差領域400a3の周囲まで延在しているのに対し、交差領域400a3-3の部分にのみ形成されている。
【0091】
また、交差領域400a3-3は、信号線路252d1および252d2に代えて、信号線路252d1-1および252d2-1を有する。信号線路252d1-1および252d2-1は、信号線路252d1および252d2と同様の構成を有するが、その厚さが、信号線路252d1および252d2と異なる。
【0092】
信号線路252d1-1および252d2-1は、それぞれ、信号線路252d1および252d2と同様の構成を有するが、それらの厚さは一様ではなく、交差領域400a3-3における厚さt40が、交差領域400a3-3以外の部分における厚さt30より大きい。
【0093】
信号線路252は、その厚さを厚くするにつれて、基板220より小さな比誘電率を有する環境(例えば、筐体102内の気体)との接触面積が大きくなり、電気信号に対する実行屈折率が減少するので、その部分の信号伝搬速度が速くなる。
【0094】
信号線路252d1-1、252d2-1は、交差領域400a3-3における厚さt40が、交差領域400a3-3以外の部分における厚さt30より大きいため、交差領域400a3-3における信号伝搬速度が速くなる。これにより、交差領域400a3-3に中間層260-3が設けられていることと相まって、交差領域400a3-3おける擾乱変調の相殺効果がより向上する。
【0095】
なお、擾乱変調の相殺効果についての有効な向上効果を得るためには、信号線路252d1-1および252d2-1は、交差領域400a3-3における厚さt40が、交差領域400a3-3以外の部分の厚さt30の2倍以上(すなわち、t40≧2×t30)であることが望ましい。本変形例では、例えば、t30は5μm、t40は10μmである。このような、厚さの厚い信号線路252は、例えば、金(Au)の電解メッキにより形成することができる。
【0096】
[1.4 第4変形例]
図12および
図13は、
図5および
図6に示す交差領域400a3の第4の変形例に係る、交差領域400a3-4の構成を示す図である。
図12および
図13に示す交差領域400a3-4の構成は、光変調素子104において、
図5及び
図6に示す交差領域400a3の構成に代えて用いることができる。
図12は、
図5に相当する交差領域400a3-4の平面図である。なお、
図12では、グランド電極の図示を省略しているが、基板220上には、
図5に示すグランド電極290a、290b、290cと同様に、信号線路252d1-2および252d2-2から一定の間隔距離離れた位置においてこれらの信号線路をそれぞれ挟むグランド電極が配されているものとする。
【0097】
図13は、
図12におけるXIII-XIII断面矢視図であり、並行導波路246a2に沿った断面構造を示す図である。なお、並行導波路246a1に沿った断面構造も、
図13と同様である。
図12および
図13において、
図5および
図6と同じ構成要素については、
図5および
図6における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図5および
図6についての説明を援用する。
【0098】
交差領域400a3-4は、交差領域400a3と同様の構成を有するが、中間層260に代えて、中間層260-4を有する点が異なる。中間層260-4は、中間層260と同様の構成を有するが、中間層260が交差領域400a3の周囲まで延在しているのに対し、交差領域400a3-4の部分にのみ形成されている。
【0099】
また、交差領域400a3-4は、信号線路252d1および252d2に代えて、信号線路252d1-2および252d2-2を有する。信号線路252d1-1および252d2-1は、信号線路252d1および252d2と同様の構成を有するが、それらの厚さが互いに異なっている。
【0100】
具体的には、交差領域400a3-4において、長い交差間隔L20を有する信号線路252d2-2の厚さt41が、交差間隔L20より短い交差間隔L10を有する信号線路252d1-2の厚さt31よりも大きい。これにより、交差領域400a3-4では、差動信号を伝搬する2本の信号線路252d1-2、252d2-2のうち、交差間隔が長い一方の信号線路252d2-2が、交差間隔の短い他方の信号線路252d1-2よりも速い信号伝搬速度を持つ。
【0101】
これにより、交差領域400a3-4では、信号線路252d1-2および252d2-2において、それぞれの交差間隔を伝搬する電気信号間の伝搬時間差、すなわち、伝搬遅延時間ΔTが、低減または解消される。その結果、交差領域400a3-4では、擾乱変調の相殺効果をより向上することができる。
【0102】
なお、擾乱変調の相殺効果についての有効な向上効果を得るためには、交差領域400a3-4において、信号線路252d2-2の厚さt41が、信号線路252d1-2の厚さt31の2倍以上(すなわち、t41≧2×t31)であることが望ましい。
【0103】
[1.5 第5変形例]
図14は、
図5および
図6に示す交差領域400a3の第5の変形例に係る、交差領域400a3-5の構成を示す図である。
図14に示す交差領域400a3-5の構成は、光変調素子104において、
図5及び
図6に示す交差領域400a3の構成に代えて用いることができる。
図14は、
図5に相当する交差領域400a3-5の平面図である。
図14において、
図5と同じ構成要素については、
図5における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図5についての説明を援用する。
【0104】
なお、
図14では、グランド電極の図示を省略しているが、基板220上には、
図5に示すグランド電極290a、290b、290cと同様に、信号線路252d1-3および252d2-3から一定の間隔距離離れた位置においてこれらの信号線路をそれぞれ挟むグランド電極が配されているものとする。また、
図14に示す交差領域400a3-5の構成において、基板220と信号線路252との間にバッファ層等の中間層は、あってもよいし無くても良い。
【0105】
交差領域400a3-5は、交差領域400a3と同様の構成を有するが、信号線路252d1および252d2に代えて、信号線路252d1-3および252d2-3を有する。信号線路252d1-3および252d2-4は、信号線路252d1および252d2と同様の構成を有するが、その幅が、信号線路252d1および252d2と異なる。
【0106】
具体的には、交差領域400a3-5において、差動信号を伝搬する信号線路252d1-3および252d2-3は、それらの幅w20が、差動信号の伝搬方向に沿って交差領域400a3-5より上流の部分における幅w10よりも狭い。
【0107】
信号線路252は、その幅を狭くすると、信号伝搬速度が増大する。このため、信号線路252d1-3および252d2-3は、交差領域400a3-5における信号伝搬速度が、交差領域400a3-5より上流の部分における信号伝搬速度よりも速くなる。したがって、交差領域400a3-5では、伝搬遅延時間ΔTが低減されるので、擾乱変調の相殺効果が向上される。
【0108】
なお、擾乱変調の相殺効果についての有効な向上効果を得るためには、信号線路252d1-3および252d2-3において、交差領域400a3-5における幅w20は、交差領域400a3-5の上流における幅w10の1/2以下(すなわち、w20≦1/2×w10)であることが望ましい。本変形例では、例えば、w10は20μm、w10μmである。
【0109】
また、
図14に示す構成において、信号線路252d1-3および252d2-3は、差動信号の伝搬方向に沿って交差領域400a3-5より下流の部分における幅が、交差領域400a3-5より上流の部分における幅w10と同じ幅で構成されていてもよい。
【0110】
[1.6 第6変形例]
図15は、
図5および
図6に示す交差領域400a3の第6の変形例に係る、交差領域400a3-6の構成を示す図である。
図15に示す交差領域400a3-6の構成は、光変調素子104において、
図5及び
図6に示す交差領域400a3の構成に代えて用いることができる。
図15は、
図5に相当する交差領域400a3-6の平面図である。
図15において、
図5と同じ構成要素については、
図5における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図5についての説明を援用する。
【0111】
なお、
図15では、グランド電極の図示を省略しているが、基板220上には、
図5に示すグランド電極290a、290b、290cと同様に、信号線路252d1-4および252d2-4から一定の間隔距離離れた位置においてこれらの信号線路をそれぞれ挟むグランド電極が配されているものとする。また、
図15に示す交差領域400a3-6の構成において、基板220と信号線路252との間にバッファ層等の中間層は、あってもよいし無くても良い。
【0112】
交差領域400a3-6は、交差領域400a3と同様の構成を有するが、信号線路252d1および252d2に代えて、信号線路252d1-4および252d2-4を有する。信号線路252d1-4および252d2-4は、信号線路252d1および252d2と同様の構成を有するが、互いにおける線路幅の関係が、信号線路252d1および252d2と異なる。
【0113】
具体的には、交差領域400a3-6において、長い交差間隔L20を有する一方の信号線路252d2-4の幅w21が、短い交差間隔L10を有する他方の信号線路252d1-4の幅w11よりも狭い。
【0114】
これにより、交差領域400a3-6では、差動信号を伝搬する2本の信号線路252d1-4、252d2-4のうち、交差間隔が長い一方の信号線路252d2-4が、交差間隔の短い他方の信号線路252d1-4よりも、速い信号伝搬速度を持つように構成される。
【0115】
したがって、交差領域400a3-6では、信号線路252d1-4および252d2-4において、それぞれの交差間隔を伝搬する電気信号間の伝搬時間差、すなわち、伝搬遅延時間ΔTが、低減または解消される。その結果、交差領域400a3-6では、擾乱変調の相殺効果が向上する。
【0116】
なお、擾乱変調の相殺効果についての有効な向上効果を得るためには、交差領域400a3-6において、信号線路252d2-4の幅w21は、信号線路252d1-4の幅w11の1/2以下(すなわち、w21≦1/2×w11)であることが望ましい。
【0117】
[1.7 第7変形例]
図16は、
図5および
図6に示す交差領域400a3の第7の変形例に係る、交差領域400a3-7の構成を示す図である。
図15に示す交差領域400a3-7の構成は、光変調素子104において、
図5及び
図6に示す交差領域400a3の構成に代えて用いることができる。
図16は、
図5に相当する交差領域400a3-7の平面図である。
図16において、
図5と同じ構成要素については、
図5における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図5についての説明を援用する。なお、
図16に示す交差領域400a3-7の構成において、基板220と信号線路252との間にバッファ層等の中間層は、あってもよいし無くても良い。
【0118】
交差領域400a3-7は、交差領域400a3と同様の構成を有するが、グランド電極290a、290b、および290cに代えて、グランド電極290a-1、290b-1、および290c-1を有する。以下、グランド電極290a、290b、および290cを総称してグランド電極290ともいい、グランド電極290a-1、290b-1、および290c-1を総称してグランド電極290-1ともいう。
【0119】
信号線路252d1および信号線路252d2は、グランド電極290-1と共に所定のインピーダンスを有する分布定数線路(例えばコプレーナ線路)を構成している。グランド電極290-1は、グランド電極290と同様の構成を有するが、信号線路252との離間距離が、
図5に示すグランド電極290のように一定ではなく、交差領域400a3-7における離間距離g20が、交差領域400a3-7以外の部分における離間距離g10より広い(すなわち、g20>g10)。
【0120】
信号線路252は、グランド電極との間隔を広くすると、その部分における信号伝搬速度が増大する。このため、信号線路252d1および252d2は、交差領域400a3-7における信号伝搬速度が、交差領域400a3-7以外の部分における信号伝搬速度よりも速くなる。したがって、交差領域400a3-7では、伝搬遅延時間ΔTが低減されるので、擾乱変調の相殺効果が向上される。
【0121】
なお、信号線路252とグランド電極290-1との離間距離g10、g20は、離間距離の変化に伴う信号線路252のインピーダンス変化を抑制するため、基板220上に形成され得るバッファ層等の中間層の厚さや、信号線路252の幅等を勘案して慎重に設定する必要が有る。本変形例においては、例えば、離間距離g10は5μm、離間距離g20は7μmである。
【0122】
[2.第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100が備える光変調素子104を用いた光変調モジュール1000である。
図17は、本実施形態に係る光変調モジュール1000の構成を示す図である。
図17において、
図1に示す第1の実施形態に係る光変調器100と同一の構成要素については、
図1に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1についての説明を援用する。
【0123】
光変調モジュール1000は、
図1に示す光変調器100と同様の構成を有するが、中継基板106に代えて、回路基板1006を備える点が、光変調器100と異なる。回路基板1006は、駆動回路1008を備える。駆動回路1008は、信号ピン108を介して外部から供給される例えば変調信号に基づいて、光変調素子104を駆動する高周波電気信号である差動信号を生成し、当該生成した差動信号を光変調素子104へ出力する。
【0124】
上記の構成を有する光変調モジュール1000は、上述した第1の実施形態に係る光変調器100と同様に、光変調素子104を備えるので、光変調器100と同様に、交差領域400において発生する擾乱変調を効果的に低減して良好な変調動作を実現することができる。
【0125】
なお、本実施形態では、光変調モジュール1000は、一例として光変調素子104を備えるものとしたが、
図7ないし
図16に示す変形例に係る交差領域を有する光変調素子を備えるものとしてもよい。
【0126】
[3.第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100を搭載した光送信装置1100である。
図18は、本実施形態に係る光送信装置1100の構成を示す図である。この光送信装置1100は、光変調器100と、光変調器100に光を入射する光源1104と、変調器駆動部1106と、変調信号生成部1108と、を有する。なお、光変調器100及び変調器駆動部1106に代えて、第2の実施形態に係る光変調モジュール1000を用いることもできる。
【0127】
変調信号生成部1108は、光変調器100に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路であり、外部から与えられる送信データに基づき、光変調器100に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、変調器駆動部1106へ出力する。
【0128】
変調器駆動部1106は、変調信号生成部1108から入力される変調信号を増幅して、光変調器100が備える光変調素子104の4つの信号電極250を駆動するための4組の高周波電気信号である差動信号を出力する。尚、上述したように、光変調器100および変調器駆動部1106に代えて、例えば変調器駆動部1106に相当する回路を含む駆動回路1008を筐体102の内部に備えた、光変調モジュール1000を用いることもできる。
【0129】
当該4組の差動信号は、光変調器100の信号ピン108に入力されて、光変調素子104の4組の信号線路252(すなわち、信号線路252a、252b、252c、および252d)を伝搬し、光変調素子104を駆動する。これにより、光源1104から出力された光は、光変調器100により、例えばDP-QPSK変調され、変調光となって光送信装置1100から出力される。
【0130】
特に、光送信装置1100では、上述した第1の実施形態に係る光変調器100又は光変調モジュール1000を用いているので、光変調器100又は光変調モジュール1000と同様に、良好な変調特性を実現して良好な光伝送を行うことができる。
【0131】
なお、本発明は上記実施形態の構成およびその代替構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0132】
例えば、上述した実施形態およびその変形例においては、中間層260、260-1、260-2、260-3、260-4を構成する樹脂は、一例として永久レジストであるものとしたが、これらの中間層を構成する樹脂は、永久レジストには限られない。例えば、これらの中間層を構成する樹脂として、永久レジスト以外の熱硬化性又は熱可塑性の樹脂を用いてもよい。
【0133】
また、上述した実施形態およびその変形例においては、中間層260、260-1、260-3の角部は直角に描かれているが(
図6、
図7、
図11)、それらの上部に形成される信号線路252の信号伝送特性(特に、電気信号の放射損失)の観点からは、これらの中間層260等の角部は、直角でなく曲線であることが望ましい。このような、曲線の角部を有する中間層は、その素材として永久レジスト等の樹脂を用いる場合には、熱処理等により容易に実現することができる。
【0134】
また、上述した実施形態およびその変形例から明らかなように、差動信号を伝搬する2本の信号線路252が交差領域400において交差領域400以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有するか、または、交差領域400において上記2本の信号線路252の一方が他方よりも速い信号伝搬速度を有していれば、交差領域400における擾乱変調の相殺効果を向上することができる。
【0135】
したがって、例えば、
図16に示す第7変形例を修正し、交差領域400a3-7において、信号線路252d2の信号伝搬速度が信号線路252d1よりも速くなるように構成してもよい。このような構成は、例えば、交差領域400a3-7において、信号線路252d1とグランド電極290a-1および290b-1との離間距離が、信号線路252d2とグランド電極290b-1および290c-1との離間距離g20よりも小さくなるように構成することで実現され得る。
【0136】
また、上述した第1の実施形態およびその変形例に示した交差領域400a3、400a3-1、400a3-2、400a3-3、400a3-5、400a3-6、および400a3-7の構成は、交差領域400a3以外の他の任意の交差領域400にも適用することができ、かつ、これらの構成が、一つの光変調素子104の中に混在していてもよい。
【0137】
また、上述したように、信号線路252を伝搬する差動信号は、パルス信号には限られず、2つの信号線路において電気信号の相互の位相情報が変調に影響する任意の波形を有するものであり得る。すなわち、光変調素子104は、作動動作が可能な信号電極を有する任意の構成の変調素子であり得る。
【0138】
また、上述した実施形態では、光導波路素子の一例として、LN(LiNbO3)である基板220により形成された光変調素子104を示したが、これには限られない、光導波路素子は、任意の材料(LNのほか、InP、Siなど)の基板で構成される、任意の機能(光変調のほか、光スイッチ、光方向性結合器など)を有する素子であるものとすることができる。そのような素子は、例えば、いわゆるシリコン・フォトニクス導波路デバイスであり得る。
【0139】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記の実施形態および変形例は、以下の構成をサポートする。
【0140】
(構成1)基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、前記基板上に形成された、前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、を有する光導波路素子であって、前記光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、前記信号電極は、前記湾曲部において前記2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、前記2本の信号線路と前記2本の並行導波路とが交差する前記基板上の領域である交差領域において、前記2本の信号線路の少なくとも一方が前記交差領域以外の部分よりも速い信号伝搬速度を有するか、または、前記2本の信号線路の一方が他方よりも速い信号伝搬速度を有する、光導波路素子。
構成1の光導波路素子によれば、凸状光導波路と電気信号を伝搬する電極との複数の交差領域を有する光導波路素子において、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することができる。
(構成2)前記基板には、前記基板と前記信号線路との間に中間層が設けられており、前記交差領域における前記中間層の厚さは、前記交差領域以外の部分における厚さより大きい、構成1に記載の光導波路素子。
構成2の光導波路素子によれば、中間層の厚さにより信号線路における信号伝搬速度を調整して、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成3)前記交差領域には、前記基板と前記信号線路との間に中間層が設けられており、前記基板上において、前記中間層は、前記交差領域以外の部分には設けられていない、構成1に記載の光導波路素子。
構成3の光導波路素子によれば、基板上にバッファ層等の中間層を設けない場合にも、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成4)前記交差領域における前記中間層の厚さは、前記交差領域以外の部分における厚さの2倍以上大きい、構成2に記載の光導波路素子。
構成4の光導波路素子によれば、交差領域における擾乱変調の発生をより効果的に抑制することができる。
(構成5)前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、前記交差領域における前記中間層は、前記2本の信号線路の前記一方の下部における厚さが、前記他方の下部における厚さより大きい、構成2ないし4のいずれかに記載の光導波路素子。
構成5の光導波路素子によれば、交差間隔が短い方の信号線路に対し、交差間隔が長い方の信号線路の信号伝搬速度を高めて、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成6)前記2本の信号線路は、前記交差領域における厚さが、前記交差領域以外の部分における厚さより大きい、構成1に記載の光導波路素子。
構成6の光導波路素子によれば、信号線路の厚さにより信号伝搬速度を調整して、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成7)前記2本の信号線路は、前記交差領域における厚さが、前記交差領域以外の部分における厚さより2倍以上大きい、構成6に記載の光導波路素子。
構成7の光導波路素子によれば、交差領域における擾乱変調の発生をより効果的に抑制することができる。
(構成8)前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方の厚さは、前記2本の信号線路の他方の厚さより大きい、構成6または7に記載の光導波路素子。
構成8の光導波路素子によれば、交差間隔が短い方の信号線路に対し、交差間隔が長い方の信号線路の信号伝搬速度を高めて、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成9)前記2本の信号線路は、前記交差領域における幅が、前記差動信号の伝搬方向に沿って前記交差領域より上流の部分における幅よりも狭い、構成1に記載の光導波路素子。
構成9の光導波路素子によれば、信号線路の線路幅により信号伝搬速度を調整して、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成10)前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方は、他方に比べて、前記2本の並行導波路との交差位置の間隔である交差間隔が長く、前記交差領域において、前記2本の信号線路の一方の幅は、前記2本の信号線路の他方の幅よりも狭い、構成1に記載の光導波路素子。
構成10の光導波路素子によれば、交差間隔が短い方の信号線路に対し、交差間隔が長い方の信号線路の信号伝搬速度を高めて、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成11)前記基板上にはグランド電極が設けられ、前記交差領域における前記2本の信号電極と前記グランド電極との間隔は、前記交差領域以外の部分における間隔より広い、構成1に記載の光導波路素子。
構成11の光導波路素子によれば、信号線路とグランド電極との離間距離により信号伝搬速度を調整して、交差領域における擾乱変調の発生を効果的に抑制することができる。
(構成12)光の変調を行う光変調素子である構成1ないし11のいずれかに記載の光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器。
構成12の光変調器によれば、擾乱変調の発生を低減して良好な光変調特性を実現することができる。
(構成13)光の変調を行う光変調素子である構成1ないし11のいずれかに記載の光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュール。
構成13の光変調モジュールによれば、擾乱変調の発生を低減して良好な光変調特性を実現することができる。
(構成14)
構成12に記載の光変調器または構成13に記載の光変調モジュールと、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置。
構成14の光送信装置によれば、良好な光伝送特性を実現することができる。
【符号の説明】
【0141】
100、…光変調器、102…筐体、104…光変調素子、106…中継基板、108、110…信号ピン、112…終端器、114…入力光ファイバ、116…光学ユニット、118、130、134…レンズ、120…出力光ファイバ、122、124…サポート、220…基板、230…光導波路、232…入力導波路、234…分岐導波路、240、240a、240b…ネスト型マッハツェンダ型光導波路、244、244a、244b、244c、244d…マッハツェンダ型光導波路、246、246a、246a1、246a2、246b、246b1、246b2、246c、246c1、246c2、246d、246d1、246d2、920a、920b…並行導波路、248a、248b…出力導波路、250a、250b、250c、250d…信号電極、252、252a、252a1、252a2、252b、252b1、252b2、252c、252c1、252c2、252d、252d1、252d1-1、252d1-2、252d1-3、252d1-4、252d2、252d2-1、252d2-2、252d2-3、252d2-4、910a、910b…信号線路、254a、254b、254c、254d、254e、254f、254g、254h、258a、258b、258c、258d、258e、258f、258g、258h…パッド、270a、270b、270c…バイアス電極、290、290a、290b、290c、290-1、290a-1、290b-1、290c-1…グランド電極、280a、280b、280c、280d…辺、300、300a、300b、300c、300d…作用部、400、400a、400a1、400a2、400a3、400a3-1、400a3-2、400a3-3、400a3-4、400a3-5、400a3-6、400a3-7、400a4、400a5、400a6、400a7、400b、400b1、400b2、400b3、400b4、400b5、400b6、400c、400c1、400c2、400c3、400c4、400c5、400d、400d1、400d2、400d3、400d4…交差領域、500…支持板、260、260-1、260-2、260-3、260-4…中間層、1000…光変調モジュール、1006…回路基板、1008…駆動回路、1100…光送信装置、1104…光源、1106…変調器駆動部、1108…変調信号生成部。