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特開2023-34566超音波洗浄機及びこれを用いた自動分析装置並びに分注ノズルの洗浄方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034566
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】超音波洗浄機及びこれを用いた自動分析装置並びに分注ノズルの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01N35/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140867
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 陽介
(72)【発明者】
【氏名】野島 彰紘
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋行
(72)【発明者】
【氏名】野中 昂平
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058FB05
2G058FB12
2G058FB15
(57)【要約】
【課題】搬送ラックのような狭小空間への搭載に適した構成を有し、液面の揺れが少なく、ノズルの外周部に強力な超音波を照射可能な超音波洗浄機を提供する。
【解決手段】洗浄の対象である分注ノズルを挿入可能な凹部を有する洗浄槽と、圧電素子及びフロントマスを有する超音波振動子と、を含む超音波洗浄機であって、洗浄槽の側面部には、洗浄槽の外壁面及び凹部の内壁面に開口部を有する貫通孔が設けられ、貫通孔には、フロントマスが挿入され、フロントマスの先端部は、分注ノズルの側方から超音波を照射するように配置されている。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄の対象である分注ノズルを挿入可能な凹部を有する洗浄槽と、
圧電素子及びフロントマスを有する超音波振動子と、を含み、
前記洗浄槽の側面部には、前記洗浄槽の外壁面及び前記凹部の内壁面に開口部を有する貫通孔が設けられ、
前記貫通孔には、前記フロントマスが挿入され、
前記フロントマスの先端部は、前記分注ノズルの側方から超音波を照射するように配置されている、超音波洗浄機。
【請求項2】
前記洗浄槽の前記側面部には、前記超音波振動子が複数個設置されている、請求項1記載の超音波洗浄機。
【請求項3】
複数個の前記超音波振動子の前記フロントマスの先端面が接する共通の円の直径が、前記フロントマスの前記先端面の直径と略等しい、請求項2記載の超音波洗浄機。
【請求項4】
前記超音波振動子は、2個が同軸上に配置された構成である、請求項3記載の超音波洗浄機。
【請求項5】
前記フロントマスは、段差部を有し、
前記段差部には、シールが設置されている、請求項1記載の超音波洗浄機。
【請求項6】
前記凹部の上端部は、前記フロントマスの前記先端面の上端部から0.5~1mmである、請求項3記載の超音波洗浄機。
【請求項7】
揺れ検知ユニットを更に含み、
前記揺れ検知ユニットが揺れを検知したときには、前記超音波振動子の駆動を停止するように構成されている、請求項1記載の超音波洗浄機。
【請求項8】
超音波振動子制御部と、駆動電源と、を更に含む、請求項1記載の超音波洗浄機。
【請求項9】
搬送ベースを更に含む、請求項8記載の超音波洗浄機。
【請求項10】
前記洗浄槽及び前記超音波振動子と、前記超音波振動子制御部及び前記駆動電源と、を分離して設置することができる構成を有する、請求項8記載の超音波洗浄機。
【請求項11】
種別の判別が可能なバーコード、QRコード(登録商標)又はICチップを更に含む、請求項1記載の超音波洗浄機。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の超音波洗浄機を有する、自動分析装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の超音波洗浄機を搬送により使用する構成を有する、自動分析装置。
【請求項14】
自動分析装置制御部からの信号により請求項1記載の超音波洗浄機を用いて前記分注ノズルを洗浄する方法であって、
前記凹部に注入された洗浄液に前記分注ノズルを浸漬する工程と、
前記フロントマスの前記先端部から前記超音波を照射する工程と、を含む、分注ノズルの洗浄方法。
【請求項15】
前記分注ノズルを浸漬する工程の前に、前記凹部に前記分注ノズルを挿入可能な位置に前記超音波洗浄機を搬送する工程を更に含む、請求項14記載の分注ノズルの洗浄方法。
【請求項16】
前記超音波洗浄機は、複数個の前記超音波振動子を有し、
前記複数個の前記超音波振動子から同時に前記超音波を照射する、請求項14記載の分注ノズルの洗浄方法。
【請求項17】
前記超音波洗浄機は、複数個の前記超音波振動子を有し、
前記複数個の前記超音波振動子のうちの一部から交互に前記超音波を照射する、請求項14記載の分注ノズルの洗浄方法。
【請求項18】
前記フロントマスの前記先端部の方向が異なる2個以上の前記超音波洗浄機を用いて、異なる方向から前記分注ノズルに向かって前記超音波を照射する、請求項14記載の分注ノズルの洗浄方法。
【請求項19】
洗浄の対象である分注ノズルを挿入可能な凹部を有する洗浄槽と、
圧電素子及びフロントマスを有する超音波振動子と、を含み、
前記洗浄槽の前記凹部には、前記超音波振動子が設置され、
前記フロントマスの先端部は、前記分注ノズルの側方から超音波を照射するように配置されている、超音波洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波洗浄機及びこれを用いた自動分析装置並びに分注ノズルの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血清や尿などのサンプルと試薬とを混合し、その混合液に照射した光の透過率等を測定することにより、成分分析を行う。自動分析装置においては、同一ノズルを繰り返し使用してサンプルを分注するため、別のサンプルを吸引する前にはノズル先端を水流で洗い流すノズル洗浄処理を行う。しかしながら、高スループット性能の自動分析装置では、高速に分注処理を行うため、ノズル洗浄に十分な時間を使うことができない。そのため、ノズル先端には、サンプル成分由来の汚れが蓄積することがあり、日々の清掃メンテナンスで除去するなどして対処している。
【0003】
ノズル先端に汚れが蓄積すると、分注量のばらつきや前のサンプル成分を次のサンプルに持ち込むキャリーオーバが発生しやすくなり、測定精度が低下する。
【0004】
特許文献1には、ボルト締めランジュバン振動子(BLT)を取り付けたダイアフラムを有する超音波洗浄器であって、洗浄液を貯水する洗浄槽の側面に開口部を設け、この開口部をダイアフラムで塞いだ構成を有し、超音波によるキャビテーション(液中に生じた圧力差で泡の発生と消滅が起きる現象)を発生させ、分注ノズルを洗浄するものが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、メンテナンス作業を自動化するため、洗浄槽と、超音波発生素子と、超音波発生素子の制御を行う電子回路とを備え、試料又は試薬の吸引及び吐出に用いるノズルを洗浄槽にて洗浄する洗浄用ラックであって、搬送ラインに沿って移動可能としたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/002740号
【特許文献2】特開2014-89200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既に納品され実際に使用されている自動分析装置に、新たにノズルの清掃メンテナンスができるユニットを追加する場合には、配置されている部品の間に残る狭い空間に小型の洗浄ユニットを追加することや、メンテナンス時に一時的に追加することが望ましい。大掛かりなハードウェアの変更は、改造費用が高くなること、分析ができない期間が生じることなどの問題があるからである。
【0008】
特許文献2に記載の洗浄用ラックは、洗浄槽の底面又は側面に超音波発生素子(圧電素子)を直接設置する構成を有する。
【0009】
一般の超音波洗浄器で圧電素子を設置する場合、洗浄槽の底面などの広い面積部分をダイアフラムとして利用することで超音波照射面の振幅を増幅して、さらにその振動で液中に定在波を生じさせる。定在波には、音圧が高くなる領域(定在波の腹の部分)があり、同領域でキャビテーションが発生する。このような原理で洗浄するため、市販の超音波洗浄器に比べ底面(あるいは側面)の小型化(面積が小さいこと)が要求されるラックでは、十分な振幅が生じずキャビテーション発生による洗浄効果が得られにくい。特に、1mm以下の小径のノズルの先端を集中的に洗浄するには、洗浄効率が低い。
【0010】
手作業の清掃メンテナンスに代えて、ノズルの外周を超音波で洗浄するには、超音波キャビテーションが安定して発生する高い音圧領域をノズル先端の外周部に生じさせる必要がある。
【0011】
特許文献1に記載の超音波洗浄器では、ノズル先端を集中的に洗浄するために超音波振動子の先端に備えた洗浄ヘッドを振動させ、ノズルを挿入する中空部内に超音波キャビテーションを発生させる構成例が示されている。同構成では、洗浄ヘッドで増幅した振動を利用し、ノズル先端の外周に強力なキャビテーションを発生させる。しかしながら、洗浄槽内の液面の上方より洗浄ヘッドを挿入する構成であり、液面を挟んで液中と気中で洗浄ヘッドが振動するため、液面の揺動が大きく液位の変動や液が飛散するリスクがあるため、搬送型の洗浄方法には向かない。同構成のように、液の揺動が大きい洗浄器には液位を一定に保つため液をオーバーフローできる洗浄槽が用いられるが、サイズが限定される搬送型の洗浄では利用が難しい。
【0012】
本開示は、搬送ラックのような狭小空間への搭載に適した構成を有し、液面の揺れが少なく、ノズルの外周部に強力な超音波を照射可能な超音波洗浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の超音波洗浄機は、洗浄の対象である分注ノズルを挿入可能な凹部を有する洗浄槽と、圧電素子及びフロントマスを有する超音波振動子と、を含み、洗浄槽の側面部には、洗浄槽の外壁面及び凹部の内壁面に開口部を有する貫通孔が設けられ、貫通孔には、フロントマスが挿入され、フロントマスの先端部は、分注ノズルの側方から超音波を照射するように配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、搬送ラックのような狭小空間への搭載に適した構成を有し、液面の揺れが少なく、ノズルの外周部に強力な超音波を照射可能な超音波洗浄機を提供することができる。
【0015】
また、本開示によれば、超音波振動子の最大振幅が生じる円柱部の端面に接近した領域にノズルを挿入することができ、二方向以上の照射によりノズル全周における洗浄効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の自動分析装置を示す斜視図である。
図2A】実施例1の超音波洗浄機の洗浄部の構成の一例を示す上面図である。
図2B図2AのA-A断面図である。
図2C図2Aの洗浄部を示す正面図である。
図2D図2Aの洗浄部に用いられる超音波振動子を示す斜視図である。
図2E図2Aの洗浄部を示す斜視図である。
図2F図2Aの洗浄部を示す側面図である。
図3】実施例1の超音波洗浄機を有する洗浄ラックの一例を示す構成図である。
図4A】超音波洗浄機の超音波振動子が1個の場合を示す模式図である。
図4B】超音波洗浄機の超音波振動子が2個の場合を示す模式図である。
図5A】実施例1の超音波洗浄機による分注ノズルの洗浄方法を示すフロー図である。
図5B】洗浄ラックの揺れに対処する方法を示すフロー図である。
図6A】実施例1の超音波洗浄機が有する2個の超音波振動子の駆動パターンの例を示すグラフである。
図6B】2個の超音波振動子の駆動パターンの他の例を示すグラフである。
図7】実施例1の搬送ラックに内蔵した超音波洗浄機を用いる場合に対応する自動分析装置を示す構成図である。
図8A】実施例2の超音波洗浄機を示す部分断面図である。
図8B】実施例2の超音波洗浄機を示す部分断面図である。
図8C図8Aに対応する洗浄モードを示す模式図である。
図8D図8Bに対応する洗浄モードを示す模式図である。
図8E図8Bの超音波洗浄機の変形例を示す模式図である。
図9】実施例3の洗浄部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の実施例について詳細に説明する。
【実施例0018】
図1は、実施例1の自動分析装置を示す斜視図である。
【0019】
本図に示すように、自動分析装置10は、複数の試薬容器11を設置する試薬ディスク12と、試薬とサンプルとを混ぜ合わせて反応を測定する反応ディスク13と、試薬の吸引や吐出を行う試薬分注機構14と、サンプルの吸引や吐出を行うサンプル分注機構15と、から構成されている。
【0020】
試薬分注機構14は、試薬を分注するための試薬用ノズル21を備える。サンプル分注機構15は、サンプルを分注するためのサンプル用ノズル22を備える。ここで、試薬用ノズル21、サンプル用ノズル22等のノズルを「分注ノズル」と総称する。
【0021】
装置に投入されたサンプルは、サンプル容器23(試験管)に入れた状態でラック24に設置され、搬送ライン25で搬送される。ラック24には、複数のサンプル容器23が設置される。なお、サンプルは、血清や全血などの血液由来のサンプル又は尿などである。
【0022】
サンプル分注機構15は、サンプル用ノズル22を、サンプル容器23からサンプル吸引を行う吸引位置、セル26(図中にて拡大して示すように、1つ1つが小さく区切られた容器である。)に吐出を行う吐出位置、及びサンプル用ノズル22の先端を水で洗い流す洗浄槽27がある洗浄位置に移動させる。さらに、サンプル分注機構15は、吸引位置ではサンプル容器23の高さ、吐出位置ではセル26の高さ、洗浄位置では洗浄槽27の高さに合わせて、サンプル用ノズル22を下降させる。
【0023】
まとめると、サンプル分注機構15は、回転移動及び上下移動によりサンプル用ノズル22を各停止位置に移動できる構成となっている。
【0024】
なお、サンプル分注機構15の制御や搬送ライン25などの装置の制御は、制御部(図示せず)により行われる。また、自動分析装置10は、測定部(図示せず)を有し、セル26内に収容されたサンプルと試薬との混合液を測光することで、サンプルに含まれる所定成分の濃度などを分析する。測定部は、例えば光源と光度計を有する。光度計は、例えば吸光光度計又は散乱光度計である。
【0025】
超音波洗浄機を搭載した洗浄ラック30は、後述する洗浄部を備え、サンプルと接触したサンプル用ノズル22の先端部を洗浄するために使用される。使用するタイミングは、自動分析装置10の日々のメンテナンスのタイミングで、多くは分析前や分析終了後に実施する。一日に扱うサンプル数が多い場合は、分析の合間に洗浄ラック30を搬送ライン25に流して用いてもよい。これにより、サンプル用ノズル22の清浄度を保つことができる。
【0026】
洗浄ラック30は、搬送ライン25にアクセスできるサンプル用ノズル22あるいは試薬用ノズル21であれば、サンプルに限定することなく洗浄することができる。また、1回の搬送中に複数のサンプル用ノズル22を洗浄可能であるが、洗浄によって汚れた洗浄液を再利用することで、汚れの再付着が発生する可能性があるため、ノズルごとに洗浄液を交換することが望ましい。この場合、1つの洗浄ラック30を搬送ライン25に複数回流すか、複数個の洗浄ラック30を流す方法などがある。また、搬送ライン25にアクセスできない試薬用ノズル21は、後述の実施例2で説明する。
【0027】
なお、搬送ライン25の搬送方式としては、搬送ライン25に沿って移動するベルト、押し爪等によるもの、電磁気力を利用するもの等が適用できる。
【0028】
図2Aは、本実施例の超音波洗浄機の洗浄部の構成の一例を示す上面図である。
【0029】
本図においては、洗浄部は、2個の超音波振動子201A、201B(加振部)と、洗浄槽202と、を備えている。洗浄槽202には、上面に開口部を有する貯液穴210(凹部)が設けられている。
【0030】
図2Bは、図2AのA-A断面図である。
【0031】
本図に示すように、洗浄槽202には、図中の左側及び右側から貯液穴210に貫通する貫通孔211が設けられている。言い換えると、貫通孔211は、洗浄槽202の側面部には、洗浄槽202の外壁面及び貯液穴210(凹部)の内壁面に開口部を有する。2つの貫通孔211には、超音波振動子201A、201Bがそれぞれ挿入されている。超音波振動子201A、201Bは、フランジ203及びシール204(Oリング)により洗浄槽202の側面に固定されている。この構成により、貫通孔211からの液漏れを防止することができる。
【0032】
超音波振動子201A、201Bは、同様の構成を有している。
【0033】
超音波振動子201A、201Bは、フロントマス205(前面の金属ブロック)と、バックマス206(背面の金属ブロック)と、複数の圧電素子207と、複数の電極208(銅板)と、締結用ボルト209と、から構成されている。圧電素子207及び電極208は、それぞれ2枚を交互に積層した構成を有している。積層された圧電素子207及び電極208は、フロントマス205とバックマス206との間に挟み込まれ、締結用ボルト209により固定されている。
【0034】
なお、圧電素子207及び電極208の枚数は、本図においてはそれぞれ2枚を交互に積層した構成を示しているが、本開示に係る超音波振動子は、これに限定されるものではなく、4枚を交互に積層した構成やそれ以外の枚数であってもよい。
【0035】
まとめると、超音波振動子201A、201Bは、一般的なボルト締めランジュバン型振動子(BLT:Bolt-clamped Langevin Type Transducer)と同様に、ボルト締めして固定された構成を有する。BLTの構成は、振幅の増幅に有利であるため、強力超音波を利用する場合に用いられ、強力な洗浄性能が必要となる産業用の超音波洗浄機でも用いられる。
【0036】
超音波振動子201は、共振周波数で駆動することにより、フロントマス205の先端面214の振幅を最大化することができる。
【0037】
フロントマス205の貫通孔211に挿入された部分である細い円柱部は、シール204により位置決めされている。このため、当該円柱部と貫通孔211の壁面との間には、略一様な隙間が形成されている。また、シール204は、当該円柱部の根元に配置されている。これにより、当該円柱部は、貫通孔211の壁面に接触することなく貯液穴210の液に振動を伝えることができる。また、この隙間があるため、超音波振動子201の駆動によって生じる円柱部212の変形が阻害されることはない。
【0038】
なお、貯液穴210の液は、貯液穴210の上端部215の近くまで注入することができる。これにより、貫通孔211に挿入されたフロントマス205の円柱部の周囲に形成された隙間が液で満たされるようになっている。
【0039】
図2Cは、図2Aの洗浄部を示す正面図である。
【0040】
図2Cに示すように、洗浄部200の洗浄槽202の上部は、中央部に切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は、貯液穴210の液面の位置を貯液穴210の上端部215に保つために形成されている。
【0041】
図2Dは、図2Aの洗浄部に用いられる超音波振動子を示す斜視図である。
【0042】
図2Dに示すように、超音波振動子201のフロントマス205には、円柱部212が形成されている。円柱部212の根元の部分は、段差部213である。円柱部212の先端面214は、接触する液に超音波を照射する部分である。
【0043】
洗浄槽202の側面には、シール204が埋め込まれている。貯液穴210に貯められた液は、円柱部212の根元の段差部213付近で接するシール204により封止される。言い換えると、シール204は、円柱部212の根元部に設置されている。更に言い換えると、シール204は、円柱部212の根元部と貫通孔211の内壁面との間に挟み込まれている。
【0044】
超音波振動子201は、一般的なBLTと同じく、先端面214の振幅が最大となり、円柱部212は変形する。
【0045】
もし円柱部212が洗浄槽の貫通孔211で完全に拘束される構成であるとすると、超音波振動子201の駆動の大きな負荷となり、その振動を阻害し、十分な洗浄効果が得られない。
【0046】
本実施例の超音波振動子201は、段差部213付近に振動の節(常に振幅が小さい領域)が設けられている。また、シール204は、弾性材料で構成されている。このため、円柱部212とシール204との接触による影響は小さい。まとめると、フロントマス205は、段差部213を有し、段差部213には、シール204が設置されている、
このような構成により、超音波振動子201の振動は、ほとんど阻害されることなく液に伝播される。
【0047】
図2Eは、図2Aの洗浄部を示す斜視図である。
【0048】
図2Eにおいては、超音波振動子201の円柱部212の先端面214が貫通孔211を介して貯液穴210の内壁面の位置に達している。
【0049】
なお、先端面214が貯液穴210の内壁面の位置に達していない場合であっても、言い換えると、貫通孔211内に円柱部212の先端面214がある構成であっても、後述する2つの先端面214間の距離の条件を満たせば、所望の効果が得られる。
【0050】
図2Fは、図2Aの洗浄部を示す側面図である。
【0051】
図2Fにおいては、超音波振動子201の締結用ボルト209及びフランジ203の配置が示されている。
【0052】
貯液穴210に液を注入すると、フロントマス205の先端面214は、液中に没する。この状態で2個の超音波振動子201を駆動して、先端面214から超音波を液中に照射する。超音波の照射部である先端面214は、その上端部が液面(貯液穴210の上端部215)から0.5~1mm程度となることが望ましい。このように配置することで、サンプル用ノズル22の液に浸漬した部分だけを集中的に洗浄することができる。
【0053】
もし、先端面214を液面から深く配置した場合は、洗浄領域が液面から遠ざかるため、サンプル用ノズル22の先端部を洗うには、サンプル用ノズル22を深く液に挿入する必要がある。このような配置にすると、サンプル用ノズル22の濡れる範囲が増える。サンプル用ノズル22は、液に濡れる範囲を限定することで分注精度を確保する設計となっているため、広い範囲を濡らさないことが望ましい。このため、液面付近に洗浄領域を設けることが望ましい。
【0054】
2個の超音波振動子201の円柱部212は、貯液穴210を中心軸に対称に配置されている。また、2つの円柱部212の中心軸が一致するように配置されている。言い換えると、2つの円柱部212の中心軸は、同軸上に配置されている。この構成により、サンプル用ノズル22に対して180度異なる二方向から超音波を照射でき、サンプル用ノズル22の全周を洗浄できる。
【0055】
なお、洗浄部200の寸法は、ラック24に収まるものであることが望ましい。このような寸法にすることにより、洗浄部200をサンプル用ノズル22の位置に移動し、その洗浄を行うことができる。
【0056】
サンプル用ノズル22は、貯液穴210の鉛直方向の中心軸に挿入することが望ましい。2個の超音波振動子201から均等に超音波の照射を受けることができ、適切かつ十分な洗浄効果を得ることができるからである。なお、2つの円柱部212の中心軸が同軸上にない場合でも、洗浄効果を得ることはできる。
【0057】
図3は、本実施例の超音波洗浄機を有する洗浄ラックの一例を示す構成図である。
【0058】
本図に示すように、洗浄ラック30は、洗浄部200と、超音波振動子制御部301と、駆動電源302(バッテリー)と、搬送ベース303と、を備えている。超音波振動子制御部301は、超音波振動子201A、201B(図2A)の駆動を制御するものである。
【0059】
超音波振動子制御部301は、超音波振動子201A、201Bの共振周波数の正弦波を生成して超音波振動子201を駆動する。また、超音波振動子制御部301は、超音波振動子201の駆動電流を増大させ、振幅を増幅するためのインピーダンス整合回路や共振周波数の自動追尾を行う回路も有している。
【0060】
駆動電源302は、充電式のバッテリーであり、洗浄ラック30を使用するたびに充電される。サンプル用ノズル22の洗浄時間は、数分以下の範囲であり、長時間駆動する必要はないため、小型バッテリーで十分である。駆動電源302の充電は、搬送ライン25に隣接する所定の位置に無線給電ユニットを設置して行うように構成してもよい。
【0061】
搬送ベース303は、サンプル容器23に用いるラック24の底部と同じ形状を有する。したがって、搬送ライン25のハードウェアを変更する必要はない。なお、洗浄部200と超音波振動子制御部301と駆動電源302とを含む洗浄ラック30は、従来のサンプル容器23を設置した状態のラック24以下のサイズである。
【0062】
洗浄部200は、カバー304で覆われている。カバー304は、ピペット等による貯液穴210への液の供給や排出の際に、圧電素子207や電極208に液がかかることを防ぐものである。
【0063】
前述のとおり、超音波振動子201を振動の節でシールしているため、振動増幅効率が高くなる。また、超音波振動子201の先端面214をサンプル用ノズル22の側面部に近接した配置とすることにより、サンプル用ノズル22に対して強い超音波を照射することができ、洗浄効果が高めることができる。さらに、二方向から超音波を照射することにより、小型の洗浄ラック30のような狭小空間でも洗浄できる構成を実現する。
【0064】
なお、洗浄に必要な洗浄液の液量は、貯液穴210のサイズにより前後するが、数百μLから数mL程度である。また、洗浄液は、水であっても洗浄効果が得られるが、洗剤を混ぜたものや洗剤そのものを利用してもよい。洗剤を利用する場合は、貯液穴210の上面にも液の飛散を防止するカバーを設けることが望ましい。
【0065】
以上のように、本開示に係る自動分析装置は、本実施例の超音波洗浄機を搬送により使用する構成を有する。
【0066】
図4Aは、超音波洗浄機の超音波振動子が1個の場合を示す模式図である。
【0067】
本図においては、図2Aとは異なり、片側のみに超音波振動子を配置した場合を示している。この場合、1個の超音波振動子の先端面214から超音波が照射されるため、貯液穴210に挿入されたサンプル用ノズル22は、片側のみが洗浄される。この場合、照射面と反対側のサンプル用ノズル22の外面には、直接超音波が照射されないため、汚れが残ることがある。この場合、先端面214の向きが異なる洗浄部を有する洗浄ラックを用いて、再度、サンプル用ノズル22の洗浄を行う必要がある。
【0068】
図4Bは、超音波洗浄機の超音波振動子が2個の場合を示す模式図である。
【0069】
本図においては、図2Cの洗浄部200と同様の構成を有する場合を示している。すなわち、サンプル用ノズル22の両側(二方向)から超音波を照射することにより、小径(1mm程度)のサンプル用ノズル22であれば全周を洗うことができる。
【0070】
先端面214Aと先端面214Bとの距離は、円柱部212A、212Bの径と同程度が望ましい。例えば、円柱部が直径3mmであれば先端面214Aと先端面214Bとの距離を3mmとし、円柱部が直径5mmであれば先端面214Aと先端面214Bとの距離を5mmとする。先端面214からは、半球状に音圧が集中する領域が生じる。このときの半球の直径は、先端面214の径と同程度となり、同軸上の2面から超音波が照射される場合、2つの半球が干渉しない距離は、2つの半球の半径×2(半球の直径)となる。また、同軸上にある先端面214Aと先端面214Bとは、互いに照射される超音波の反射面としても作用するため、対向する先端面214Aと先端面214Bとの距離が近すぎると、洗浄効率が下がる要因となる。
【0071】
図4Bにおいては、サンプル用ノズル22と先端面214Aとの距離及びサンプル用ノズル22と先端面214Bとの距離を近づけることにより、サンプル用ノズル22の外周部に強力な超音波を照射することができるが、前述のとおり、円柱部212の径と同じ距離を目安に距離を設定する。つまり、洗浄効率が高い条件は、先端面214Aと先端面214Bとの距離が、円柱部212A、212Bの径と同程度としたときである。
【0072】
ただし、後述するように、2個の超音波振動子を交互に駆動する場合は、先端面214Aと先端面214Bとの距離は、円柱部212の径より近い構成としてもよい。
【0073】
また、図4Aにおいては、先端面214Aと洗浄槽210の壁面までの距離を円柱部212の径と同程度とすることで、洗浄槽210の壁面からの超音波の反射の影響を抑えることができる。
【0074】
図5Aは、本実施例の超音波洗浄機による分注ノズルの洗浄方法を示すフロー図である。
【0075】
本図に示すように、洗浄部200の貯液穴210に洗浄液を注入する(工程S501)。そして、超音波振動子制御部301の信号出力をONにする(工程S502)。信号出力のONは、洗浄ラック30にあるスイッチや外部端末との通信などで行う。洗浄ラック30を搬送ライン25に設置する(工程S503)。その後、自動分析装置10の端末から自動洗浄機能をスタートする(工程S504)。
【0076】
ここで、工程S501~S503は、手動で行うこともできるが、自動分析装置10に設置された洗浄液分注ユニット等を用いて自動で行うこともできる。この場合、工程S504のように自動分析装置10の端末から自動洗浄機能のスタートの指令信号を送ると、自動的に洗浄ラック30が搬送ライン25に設置され、洗浄部200の貯液穴210に洗浄液が自動的に注入される。
【0077】
自動洗浄が開始すると、洗浄ラック30は、対象のサンプル用ノズル22がある位置まで搬送される(工程S505)。なお、通常のラック24を搬送するときには、ラック24の側面に貼られたバーコードを読み取ることで、その後の分析・搬送処理を分岐させている。そのため、洗浄ラック30にも通常のラック24と同様の位置にバーコードを貼り付けておくことで、自動分析装置10内で検査に使うラック24と洗浄に使う洗浄ラック30とを区別することができ、洗浄用の動作を実行することができる。
【0078】
洗浄ラック30を対象のサンプル用ノズル22の近くまで搬送した後は、貯液穴210に向けてサンプル用ノズル22を下降し、一定時間サンプル用ノズル22の先端部を洗浄液に浸漬して洗浄を行う(工程S506)。洗浄終了後は、サンプル用ノズル22を上昇させてから、洗浄ラック30を搬出する(工程S507)。そして、搬出された洗浄ラック30を回収する(工程S508)。その後、超音波の信号出力をOFFにする(工程S509)。
【0079】
このあと、必要に応じて洗浄液の交換を行い、別のサンプル用ノズル22の洗浄を実施してもよい。洗浄しない場合には、貯液穴210の洗浄液を排出して終了する。終了時には、貯液穴210に新しい洗浄液を入れて、超音波振動子201を駆動することで、隙間に入った汚れの付着を抑制することができる。このため、洗浄部200自体のメンテナンスとして、搬送中以外に駆動してもよい。
【0080】
本図に示す工程においては、洗浄液を保持した状態で搬送ライン25を移動するため、洗浄ラック30の揺れを検知して超音波の出力を停止する制御を設けることが望ましい。洗浄ラック30が大きく揺れた状態で、超音波を照射し続けると、洗浄液が飛散して装置内を濡らすことが懸念される。
【0081】
図5Bは、洗浄ラックの揺れに対処する方法を示すフロー図である。
【0082】
本図においては、超音波振動子201の駆動を行っている間に(工程S511)、洗浄ラック30の揺れの検出もしくは洗浄OFF信号(スイッチのOFFを含む。)の受け取りを検出した場合には(工程S512)、超音波振動子201の駆動を停止する(工程S513)。なお、工程S512において洗浄ラック30の揺れ等を検出しない場合は、超音波振動子201の駆動を継続する(工程S511)。
【0083】
洗浄ラック30の揺れ等の検出以外の方法としては、自動分析装置10の制御と通信を行い、超音波振動子201を駆動するタイミングを限定する方法などがある。
【0084】
なお、洗浄後に貯液穴210内に残った汚れが、貯液穴210やフロントマス205などに付着することを防ぐためにも、洗浄液を排出する直前まで超音波振動子201の駆動を続けることが望ましい。
【0085】
図6Aは、本実施例の超音波洗浄機が有する2個の超音波振動子の駆動パターンの例を示すグラフである。
【0086】
本図においては、2個の超音波振動子A、Bを交互に駆動している。
【0087】
図6Bは、2個の超音波振動子の駆動パターンの他の例を示すグラフである。
【0088】
本図においては、2個の超音波振動子A、Bを同時に駆動している。
【0089】
いずれの駆動パターンも、サンプル用ノズル22が貯液穴210内に下降してから上昇するまでの間が洗浄するタイミングである。
【0090】
前述のとおり、搬送前に駆動をONにする方法では、サンプル用ノズル22の下降前から超音波振動子A、Bの駆動を繰り返している。自動分析装置10の制御と通信を行い超音波振動子A、Bの駆動タイミングを限定した場合は、サンプル用ノズル22が貯液穴210内に下降してから上昇するまでの間が洗浄するタイミングである。この場合、ON-OFFのタイミングが多少の前後することは、許容される。
【0091】
図6Aに示すように交互に駆動するパターンでは、超音波振動子Aの駆動と超音波振動子Bの駆動とが重ならないように制御する。制御回路内には、信号を出力する対象の超音波振動子A、Bを切り替える回路があり、一定時間ごとに出力を切り替える。この場合、超音波振動子制御部301では、駆動している一方の超音波振動子の共振周波数を自動追尾し、駆動を切り替えるたびに自動追尾の対象の超音波振動子を切り替える。前述のとおり、超音波振動子A、Bは、共振周波数で駆動するときに最大化できるため、それぞれの超音波振動子A、Bから照射される超音波による洗浄効果も高まる。
【0092】
超音波振動子A、Bの駆動の切り替えは、洗浄中に、例えば数百ミリ秒乃至数秒ごとに行ってもよい。この場合、1回の洗浄中に切り替えを複数回行ってもよい。サンプル用ノズル22の下降のタイミングに合わせて、超音波振動子A、Bのいずれかの駆動を開始するには、前述のような自動分析装置10の制御と通信を行うことで実現可能である。
【0093】
同時に駆動するパターンでは、超音波振動子A、Bの駆動を同じ出力で駆動させることが望ましい。制御回路から出力される振動子の駆動信号は1つで、その信号を分岐して、超音波振動子A、Bに出力する。この場合、超音波振動子制御部301では、超音波振動子A、Bのいずれかの共振周波数を自動追尾するか、2個の超音波振動子A、Bの共振周波数付近(あるいは中間)の周波数で駆動する。2個の超音波振動子A、Bの共振周波数付近の周波数で駆動するには、事前に測定した周波数から駆動周波数を決定する方法と、駆動時に共振周波数を検出する回路を加えて随時変更する方法とがある。
【0094】
本実施例の超音波振動子A、Bは、単純な形状であるため、振動子の製造や組み立てによる共振周波数のばらつきは小さい。そのため、2個の超音波振動子A、Bの共振周波数付近の駆動周波数であれば、2個の超音波振動子A、Bは大振幅で駆動できる。
【0095】
超音波振動子A、Bの圧電素子207は、発熱によりその特性が変化することがあり、長時間駆動を行うと共振周波数がずれることがある。本実施例においては、搬送ラインに設置してからサンプル用ノズル22が下降するまでは、数十秒程度の短時間で、洗浄時間も、搬送時間を入れても数分以下であり、洗浄工程において共振周波数が大きくずれることはない。そのため、駆動周波数が固定値であっても実用上の問題が発生することは少ない。しかし、年間を通して室温の変化がある環境を想定すると、共振周波数の検出機能を有することが望ましい。
【0096】
なお、超音波振動子201の製造や組み立てなどによるインピーダンスのばらつきは、出荷検査などである程度の範囲に抑えられるが、2つのインピーダンスの差が分かれば、それぞれの駆動電圧や洗浄時間を調整することで、2つの超音波振動子201の洗浄力のバランス調整も可能であるが、前述の通り製造や組み立てによるばらつきは小さいため、十分な洗浄時間(例えば数十秒以上)を設けることで、サンプル用ノズル22の全周を洗うことができる。
【0097】
なお、超音波振動子201は、3つ以上であってもよい。この場合も、超音波振動子201から同時に超音波を照射してもよいし、3つ以上の超音波振動子201のうちのいずれか2つ以下から超音波を照射してもよい。言い換えると、交互にいずれか1つ以上の超音波振動子201を休止し、一部の超音波振動子201から交互に超音波を照射してもよい。
【0098】
図7は、本実施例の搬送ラックに内蔵した超音波洗浄機を用いる場合に対応する自動分析装置を示す構成図である。
【0099】
本図において、自動分析装置は、自動分析装置制御部701で制御される。自動分析装置のユーザは、グラフィカルユーザインタフェイス702(GUI)から分析処理や洗浄処理の指示を行うことができる。通常の分析処理と本実施例に係る洗浄メンテナンスモードとの切り替えは、通常モード/自動洗浄メンテナンスモード切替手段703(通常モード/自動洗浄メンテナンスモード切替ユニット)によって行われ、各モードに応じてサンプル分注機構15や搬送ライン25の制御を行う。
【0100】
サンプル分注機構15は、分注アーム制御手段704(分注アーム制御ユニット)から、分注アーム水平移動手段705(分注アーム水平移動ユニット)や分注アーム上下移動手段706(分注アーム上下移動ユニット)を介して、サンプル用ノズル22の位置を制御する。洗浄メンテナンスモードでは、サンプル用ノズル22の先端部の洗浄範囲が貯液穴210内の液に浸漬されるようにサンプル用ノズル22の水平位置と上下位置を制御する。サンプル用ノズル22の水平位置は、2つの先端面214の中間位置が望ましいが、浸漬しながら水平に移動させ、先端面214Aや先端面214Bに近づけるなどの制御を行うことも可能である。
【0101】
搬送ライン25は、ラック搬送制御手段707(ラック搬送制御ユニット)から、ラック搬送手段708(ラック搬送ユニット)を介して駆動する。搬送ライン25上に設置したラック情報取得手段709(バーコードリーダ)で、搬送されてきたラック24や洗浄ラック30に設けたバーコードを読み取り、ラックの種別をラック種別検知手段710(ラック種別検知ユニット)で判別し、通常モード/自動洗浄メンテナンスモード切替手段703にラック種別の情報を送る。この情報を基に、洗浄メンテナンスモードへの切り替えを行う。なお、事前にGUIから洗浄メンテナンスモードへの切り替えを行うことも可能である。また、バーコードの代わりに、QRコード(登録商標)、ICチップ等を用いてもよい。また、カメラによる画像認識による判別でもよい。なお、ラック情報取得手段709は、「ラック情報取得ユニット」ともいう。
【0102】
洗浄ラック30は、自動分析装置制御部701とは独立に、前述の揺れを検知したときに超音波振動子201の駆動を停止する揺れ検知手段721(揺れ検知ユニット)や、超音波振動子201の共振周波数の検知や駆動を行う振動子駆動手段722(振動子駆動ユニット)、2個の超音波振動子201の駆動を切り替える駆動制御手段723(駆動制御ユニット)を有する。揺れ検知手段721は、加速度センサ等が好適である。
【0103】
以上の構成によって、洗浄ラック30はサンプル用ノズル22がアクセスできる搬送ライン25上の位置まで搬送され、サンプル用ノズル22を貯液穴210に浸漬することで、サンプル用ノズル22の洗浄領域を洗浄できる。
【0104】
なお、試薬用ノズル21についても、搬送ライン25にアクセスできれば、同様の構成にて実施可能である。
【0105】
なお、本実施例においては、試薬用ノズル21及びサンプル用ノズル22が別個に設けられている場合について説明しているが、分析装置によっては試薬及びサンプルの分注を1つの共用ノズルにより行う場合もある。このような装置でも、試薬やサンプルを分注するたびに水流での洗浄を行うが、日々のメンテナンスは必要であり、本発明の超音波洗浄を行うことで、分注精度を維持できる。
【実施例0106】
図8Aは、実施例2に係る2種類の超音波洗浄機のうちの1つを示す部分断面図である。
【0107】
本図に示す洗浄ラック801Aにおいては、洗浄部802Aには、1個の超音波振動子201が設置されているが、搬送ベース303の進行方向側に超音波振動子201が配置されている。
【0108】
図8Bは、本実施例に係る2種類の超音波洗浄機のうちの他のものを示す部分断面図である。
【0109】
本図に示す洗浄ラック801Bにおいては、洗浄部802Bには、1個の超音波振動子201が設置されているが、搬送ベース303の進行方向とは反対側に超音波振動子201が配置されている。
【0110】
図8Cは、図8Aに対応する洗浄モードを示す模式図である。
【0111】
図8Cにおいては、貯液穴210Cの液に浸漬したサンプル用ノズル22に対して、円柱部212Cの先端面214C(図中左側)から超音波を照射する。
【0112】
図8Dは、図8Bに対応する洗浄モードを示す模式図である。
【0113】
図8Dにおいては、貯液穴210Dの液に浸漬したサンプル用ノズル22に対して、円柱部212Dの先端面214D(図中右側)から超音波を照射する。
【0114】
図8Eは、図8Aの超音波洗浄機の変形例を示す模式図である。
【0115】
図3に示す洗浄ラック30のように、洗浄部200とともに超音波振動子制御部301及び駆動電源302が一体化されている場合、寸法が大きくなり、1つの試薬容器には入り切らない場合がある。
【0116】
図8Eの超音波洗浄機は、構成要素を分けて2つの容器に入れたものである。すなわち、洗浄部を1つの容器811に入れ、超音波振動子制御部及び駆動電源を別の容器812に入れた構成としている。言い換えると、超音波洗浄機は、洗浄槽及び超音波振動子と、超音波振動子制御部及び駆動電源と、を分離して設置することができる構成を有する。
【0117】
このように2つに分けることにより、試薬ディスク12(図1)に設置される2つの試薬容器11の代わりに、2つの容器811、812を試薬ディスク12に設置することができる。
【0118】
試薬容器11は、図1に示すように隣接するように設置することができるため、容器811と容器812とを配線により接続する構成とすることが可能である。
【0119】
したがって、図8Eの例は、2つの容器811、812を合わせて、試薬容器型洗浄機810と呼ぶことができるものである。
【0120】
本実施例の超音波洗浄機は、1つの洗浄部に1つの超音波振動子を設けた構成である。この場合、2つの洗浄ラック801A、801Bを用いた洗浄を行う。
【0121】
洗浄ラック801A、801Bにおいては、進行方向は同じであるが、超音波を照射する方向が異なっている。自動分析装置10の搬送ライン25は、一方向にしか搬送できない構造である。このため、搬送ベース303には、切り欠きなどがあり、間違った方向にラック24を設置できない構造になっている。そのため、洗浄ラック801Aと洗浄ラック801Bとでは、搬送ベース303の形状のみが異なる。
【0122】
貯液穴210のサンプル用ノズル22の挿入位置は、先端面214から円柱部212の径の半分の距離より短い位置である。前述の通り、先端面214から半球状に音圧が強い領域が生じるため、離れた位置にサンプル用ノズル22を挿入すると、洗浄効率が低下する。
【0123】
また、サンプル用ノズル22の挿入位置が洗浄ラックの中心とすることで、2回(あるいは複数回)のサンプル用ノズル22下降時の水平位置を変えずに制御することができる。
【0124】
本実施例による洗浄効果は、実施例1の超音波振動子201を交互に駆動したときと同様に、別方向から2回に分けて洗浄することでサンプル用ノズル22の全周を洗浄できる。図1には示していないが、搬送ライン25には、ラック24を投入した位置まで戻す戻りの搬送ラインもあるため、洗浄ラック801Aと洗浄ラック801Bを周回させることで、複数回交互に洗浄することも可能である。
【0125】
搬送ベース303あるいは洗浄部を180度回転できる構造とすれば、1つの洗浄ラックでも進行方向を変えることは可能である。その場合は、洗浄ラックの中心に軸を設け、搬送ベース303のみ(あるいは洗浄部802)が回転する構造とすればよい。この場合は、洗浄ラックの中心線とサンプル用ノズル22の下降位置が重なるように配置する。つまり、前述のように、先端面214は、中心線から円柱部212の径の半分の距離より短い位置である。
【0126】
本実施例の洗浄部は、実施例1に比べて幅が小さくなり、試薬容器11と同様に、試薬ディスク12に設置することができる。この場合においても、2つの異なる照射方向を持つ試薬容器型洗浄機を設置することで、図8A及び8Bと同様に二方向から洗浄することができる。
【0127】
また、試薬容器型洗浄機は、試薬ディスク12に設置することができるため、試薬用ノズル21の洗浄に好適である。
【0128】
本実施例の構成によれば、サンプル用ノズル22および試薬用ノズル21の洗浄において、2回以上に分けて超音波を別方向から照射することで、試薬用ノズル21およびサンプル用ノズル22の先端部の全周洗浄することができる。
【実施例0129】
図9は、実施例3の洗浄部を示す断面図である。
【0130】
本図においては、洗浄部900は、洗浄槽901の中に2個の超音波振動子201を設置した構成を有する。2個の超音波振動子201は、防水のための構成を有する。超音波振動子201は、圧電素子207と、バックマス206と、フロントマス205の一部と、をカバー902により覆った構成を有する。フロントマス205の大径部と押さえ部904との間にシール部903を設けることにより防水している。フロントマス205の小径部である円柱部は、洗浄槽901内の液910と接するようになっている。このような構成により、圧電素子207や電極208の電気部品に液910が触れることはないようになっている。なお、押さえ部904と円柱部212との間には隙間を設け、接触しないようにしている。
【0131】
2個の超音波振動子201の配置や洗浄方法および制御方法に関しては、前述の実施例と同じである。
【0132】
以上の3つの実施例の洗浄部は、洗浄液を自動供給・排出する手段を追加することにより、自動分析装置10内に固定して使用することもできる。また、実施例では、二方向を例に説明したが、二方向以上から超音波を照射してもよく、更に確実にノズルの全周を洗浄することができる。三方向であれば、120度間隔で照射面を設置することで洗浄効率が上がる。すなわち、超音波振動子は、1つの洗浄部に3個以上設置してもよい。
【0133】
3個以上(複数個)の超音波振動子のフロントマスの先端面が接する共通の円の直径は、フロントマスの先端面の直径と略等しいことが望ましい。ここで、共通の円とは、洗浄槽202の貯液穴210(凹部)の周囲に配置された複数のフロントマスの先端面がともに接する円をいう。この円の中心は、当該凹部が上方から見て円形の場合、当該凹部の中心軸と一致する。
【0134】
超音波振動子が2個の場合であって、フロントマスの先端面が対向している場合は、2つの先端面の距離が共通の円の直径に該当する。
【符号の説明】
【0135】
10:自動分析装置、11:試薬容器、12:試薬ディスク、13:反応ディスク、14:試薬分注機構、15:サンプル分注機構、21:試薬用ノズル、22:サンプル用ノズル、23:サンプル容器、24:ラック、25:搬送ライン、26:セル、27:洗浄槽、201:超音波振動子、202:洗浄槽、203:フランジ、204:シール、205:フロントマス、206:バックマス、207:圧電素子、208:電極、209:締結用ボルト、210:貯液穴、211:貫通孔、212:円柱部、213:段差部、214:先端面、301:超音波振動子制御部、302:駆動電源、303:搬送ベース、304:カバー、701:自動分析装置制御部、702:グラフィカルユーザインタフェイス、703:通常モード/自動洗浄メンテナンスモード切替手段、704:分注アーム制御手段、705:分注アーム水平移動手段、706:分注アーム上下移動手段、707:ラック搬送制御手段、708:ラック搬送手段、709:ラック情報取得手段、710:ラック種別検知手段、721:揺れ検知手段、722:振動子駆動手段、723:駆動制御手段、801A、801B:洗浄ラック、802A、802B:洗浄部、810:試薬容器型洗浄機、811、812:容器、900:洗浄部、901:洗浄槽、902:カバー、903:シール部、904:押さえ部。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9