(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034940
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141438
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA39
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB13
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】定着ベルト内周面の潤滑剤が定着ベルト画像面側の記録媒体の通過領域まで漏れ出ることを防止する定着装置を提供すること。
【解決手段】定着装置は、回転可能な無端状の定着ベルト21と、定着ベルト21の内周面に潤滑剤を介して対向する押圧部材(ニップ形成部材)と、押圧部材との間に定着ベルト21を挟持し、記録媒体を搬送する加圧領域を形成する加圧ローラ22と、定着ベルト21の端部に設けられ、定着ベルト21の端面に対向する対向面を有するキャップ部材と、上面または底面が対向面に対向する筒形状であり、内周面の少なくとも一部分が定着ベルト21の外周面と接触し、キャップ部材と定着ベルトとの間を塞ぐシール部材50と、を備える。シール部材50は、筒形状の側面の上面と底面との間に隙間51を有し、隙間51は、定着ベルトの軸方向に対して傾斜した傾斜部(非垂直部511)を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内周面に潤滑剤を介して対向する押圧部材と、
前記押圧部材との間に定着ベルトを挟持し、記録媒体を搬送する加圧領域を形成する加圧ローラと、
前記定着ベルトの端部に設けられ、前記定着ベルトの端面に対向する対向面を有するキャップ部材と、
上面または底面が前記対向面に対向する筒形状であり、内周面の少なくとも一部分が前記定着ベルトの外周面と接触し、前記キャップ部材と前記定着ベルトとの間を塞ぐシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
前記筒形状の側面の前記上面と前記底面との間に隙間を有し、
前記隙間は、前記定着ベルトの軸方向に対して傾斜した傾斜部を有する
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記軸方向に対して30度以上の傾斜を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記シール部材は、前記軸方向において、前記定着ベルトの前記記録媒体の通過領域よりも外側に位置する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記シール部材は潤滑剤を吸収する多孔質弾性部材である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを記録媒体に定着させる定着装置として、定着ベルトの内周面に潤滑剤を介して対向する押圧部材に、定着ベルトを挟んだ状態で加圧ローラを圧接させて加圧領域を形成する方式が知られている。このような定着装置では、潤滑剤が定着ベルト端面から外周面に回り込み、画像への異常や定着ベルトと加圧ローラのスリップを発生させる不具合が懸念される。
例えば、特許文献1には、潤滑剤が定着ベルトの外周面に漏れることを抑制する構成が開示されているが、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、定着ベルト内周面の潤滑剤が定着ベルト画像面側の記録媒体の通過領域まで漏れ出ることを防止する定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明の定着装置は、
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内周面に潤滑剤を介して対向する押圧部材と、
前記押圧部材との間に定着ベルトを挟持し、記録媒体を搬送する加圧領域を形成する加圧ローラと、
前記定着ベルトの端部に設けられ、前記定着ベルトの端面に対向する対向面を有するキャップ部材と、
上面または底面が前記対向面に対向する筒形状であり、内周面の少なくとも一部分が前記定着ベルトの外周面と接触し、前記キャップ部材と前記定着ベルトとの間を塞ぐシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
前記筒形状の側面の前記上面と前記底面との間に隙間を有し、
前記隙間は、前記定着ベルトの軸方向に対して傾斜した傾斜部を有する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、定着ベルト内周面の潤滑剤が定着ベルト画像面側の記録媒体の通過領域まで漏れ出ることを防止する定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の構成例を説明する断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る定着装置が備えるシール部材を説明する断面図である。
【
図4】本実施形態の隙間の一例を説明する模式図である。
【
図6】本実施形態の隙間の他の例を説明する模式図である。
【
図7】本実施形態の隙間のさらに他の例を説明する模式図である。
【
図8】シール部材の他の例を説明する図であり、(A)は、上面側の内周が大きい一例であり、(B)は、底面側の内周が大きい一例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、画像形成装置本体の中央には、トナー画像を形成する4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。
各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0009】
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。
【0010】
なお、
図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
【0011】
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、形成されたトナー画像を記録媒体へ転写する転写装置3が配設されている。転写装置3は、中間転写ベルト30と、4つの一次転写ローラ31と、二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34と、ベルトクリーニング装置35とを備える。
【0012】
中間転写ベルト30は、無端状のベルト部材であり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30上の残留トナーを除去する
【0013】
プリンタ本体の上部には、補給用のトナーを収容した4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kがボトル収容部へ着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kは、各現像装置7へトナーを補給するように設けられる。
【0014】
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けられている。ここで、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
【0015】
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。
搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ12が配設されている。
【0016】
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。
さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙Pを装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙Pをストックするための排紙トレイ14が設けてある。
【0017】
次に、定着装置20の構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係る定着装置20の構成例を説明する断面図である。
定着装置20は、内部が中空な表面無端移動体である定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して回転可能に設けられた対向回転体からなる加圧部材としての加圧ローラ22とを備えている。
【0018】
定着ベルト21の内側には、定着ベルト21を加熱する熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21を介して対向する加圧ローラ22とニップ部Nを形成するニップ形成部材24とが設けられている。さらに、定着ベルト21の内側には、ハロゲンヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26が設けられている。ハロゲンヒータ23は、定着装置20の側板に固定支持されている。
【0019】
また、定着ベルト21のおもて面に対向して配置され、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ27を備えている。さらに、定着ベルト21から用紙Pを分離する記録媒体分離手段としての分離板28や、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する加圧手段なども備えている。
【0020】
定着ベルト21としては、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)が用いられる。定着ベルト21は、ニッケルやステンレス鋼等の金属材料またはポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材を有している。また、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層を備えている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0021】
加圧ローラ22は、ニップ形成部材24との間に定着ベルト21を挟持し、記録媒体を搬送するための加圧領域を形成し、定着ベルト21を従動回転させる。加圧ローラ22は、芯金22a、弾性層22b及び離型層22cによって構成されている。なお、弾性層22bは芯金22aの表面に配置されており、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴム等が用いられる。また、離型層22cは弾性層22bの表面に設けられ、PFAまたはPTFE等が用いられる。
【0022】
加圧ローラ22は、加圧手段としてのスプリングなどによって定着ベルト21側に向けて加圧されることにより、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。
【0023】
加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられているモータ等の駆動源によって回転駆動される。加圧ローラ22が回転駆動されると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
【0024】
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の熱源を配設してもよい。
【0025】
図2に示す定着装置20では、ハロゲンヒータ23からの輻射熱(ヒータ光)で定着ベルト21を直接加熱する方式であって、定着ベルト21の内側に熱源としてのハロゲンヒータ23が設けられている。
【0026】
ハロゲンヒータ23は、画像形成装置1の本体に設けられた電力供給手段である電源により電力が供給されて出力制御され、発熱するように構成されている。
【0027】
この電源によるハロゲンヒータ23の出力制御は、例えば温度センサによる定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて、ハロゲンヒータ23のオン/オフまたは通電量を制御するように行われる。このようなハロゲンヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度を所望の温度(定着温度)に設定できるようになっている。
【0028】
また、定着ベルト21を加熱する熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH(電磁誘導加熱)ヒータ、抵抗発熱体、セラミックヒータ、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
【0029】
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の軸方向または加圧ローラ22の軸方向にわたって長手状に配設され、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。なお、ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましいが、ステー25を樹脂製とすることも可能である。ステー25は定着装置20の側板に固定支持されている。
【0030】
上記反射部材26は、ステー25とハロゲンヒータ23との間に配設されている。本実施形態では、反射部材26をステー25に固定している。また、反射部材26は、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。このように反射部材26を配設していることにより、ハロゲンヒータ23からステー25側に放射された光が定着ベルト21へ反射される。これにより、定着ベルト21に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。また、ハロゲンヒータ23からの輻射熱がステー25等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。
【0031】
また、本実施形態のような反射部材26を設けずに、ステー25のハロゲンヒータ23側の面を研磨又は塗装などの鏡面処理をし、反射面を形成してもよい。また、上記反射部材26又はステー25の反射面の反射率は、90%以上であることが望ましい。
【0032】
ニップ形成部材24と定着ベルト21との間に潤滑剤が含浸された摺動シート29が設けられている。摺動シート29は、耐熱性を有する微細なフッ素系繊維を織り込んだシートや、耐熱性を有する多孔質樹脂からなり、潤滑剤を毛細管現象によって吸収させている。
【0033】
潤滑剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられ、耐熱性及び耐久性及び潤滑能力としては望ましく、使用条件により様々な粘度のものを選択することが可能なため良い。
その他の潤滑剤としては、フッ素系・シリコン系のグリスも挙げられる。
【0034】
本実施形態においては、定着ベルト内周面とニップ形成部材24は圧接するように構成されているため、定着ベルト内周面とニップ形成部材表面との間の摩擦が大きいと定着ベルト21の走行を妨げ、定着不良や紙しわ等を発生させてしまう。また、摩擦が大きいことによるトルク上昇により定着装置の寿命が短くなってしまう。そこで、上述したように、潤滑剤を含浸した摺動シート29を設けて、摺動シート29からベルト内周面に潤滑剤を塗布して、潤滑剤により、ニップ形成部材24と定着ベルト内周面との摩擦を低減させている。これにより、定着ベルト21のスムースな走行を行うことができる。
【0035】
なお、定着装置20は、ニップ形成部材24と定着ベルトとの間に、均熱部材が設けられていてもよい。均熱部材は、金属などの良熱伝導性材料からなっているとよい。
【0036】
次に、キャップ部材とシール部材とについて説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る定着装置が備えるシール部材を説明する断面図である。
図3では、定着装置20の構成要素のうち、定着ベルト21と、定着ベルト21の内周面に潤滑剤61を介して対向する押圧部材としてのニップ形成部材24と、定着ベルト21を支持するためのステー25と、ニップ形成部材24と定着ベルト21との摺動性を確保するための潤滑剤61と、キャップ部材40と、シール部材50とを示し、その他を省略している。
【0037】
また、キャップ部材40とシール部材50とは、定着ベルト21の軸方向の両端部に設けられる一対の部材であるが、
図3では、定着ベルト21の一方の端部を示す。
潤滑剤61は、
図2に示すような摺動シート29に吸収されたものであってもよいし、定着ベルト21に塗布されたものであってもよい。
【0038】
キャップ部材40は、定着ベルト21の端部位置を規制する部材であり、定着ベルト21の端面に対向する円板部41と、円板部41から定着ベルト21の中央側に伸び、定着ベルト21の外周面と対向する円筒部43とを有する。キャップ部材40は、円板部41に、定着ベルト21の端面と対向する対向面45を有する。
【0039】
シール部材50は、定着ベルト21の端部の外周面に接触し、潤滑剤61が記録媒体の通過領域(「用紙通過領域」とも称する)へ漏れ出すことを抑制する。シール部材50は、上面または底面が対向面45に対向する筒形状であり、内周面の少なくとも一部分が定着ベルト21の外周面と接触し、キャップ部材40と定着ベルト21との間を塞ぐ。
図3では、シール部材50は、キャップ部材40の円筒部43の内周面から定着ベルト21に向かって形成され、内周面が定着ベルト21の外周面と接触する円筒状としている。
【0040】
また、シール部材50は、筒形状の側面の一部、詳細には、筒形状の側面の上面と底面との間に隙間を有する。
隙間は、定着ベルト21の軸方向に対して傾斜した傾斜部を有する。隙間については、
図4から
図7を参照して後述する。
【0041】
シール部材50は、シリコンゴムやフッ素ゴム等から形成されるとよい。このようにすると、定着ベルト回転時の摩擦抵抗により、シール部材50とキャップ部材40とは、定着ベルト21と連れまわる。
シール部材50は、端面(上面または底面)と、キャップ部材40の対向面45との間に空間を有するように形成されている。
【0042】
次に、シール部材50に設けられる隙間について説明する。
シール部材50は、キャップ部材40に取り付ける際の組み立て性の観点、または、定着ベルト21と異なる熱膨張率を有するため、熱膨張時及び収縮時にも過不足なく押圧するという観点から、円周上の一部に隙間を設ける。
一方で、隙間があることにより、定着ベルト21の端部において、内周面から外周面に染み出した潤滑剤61がシール部材50の隙間51を通って定着ベルト21の中央側の用紙通過領域まで漏れ出すことが懸念される。用紙通過領域まで潤滑剤61が漏れ出すと、画像への異常が現れ、さらに漏れ出し量が増加すると定着ベルト21と加圧ローラ22とのスリップを引き起こす可能性がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、隙間51に、定着ベルト21の軸方向に対して傾斜角度を有する傾斜部を設けることにより、潤滑剤61の用紙通過領域への漏れ出しを抑制する。以下に詳細を説明する。
【0044】
図4は、本実施形態の隙間の一例を説明する模式図である。
図5は、比較例の隙間を説明する模式図である。
図4は、定着ベルト21の外周面とシール部材50の内周面とが接触する部分を拡大し、模式的に表している。定着ベルト21は、図の左側を端面とし、他方の端部を省略している。また、潤滑剤611は、定着ベルト21の内周面の潤滑剤61のうち、漏れ出たものとして示す。
図4は、潤滑剤611が、キャップ部材40とシール部材50との間の空間に漏れ出し、一部がシール部材の隙間51に入り込み、定着ベルト21の外周面側に漏れ出す状態例を示す。
【0045】
シール部材50は、隙間51に、傾斜部として、定着ベルト21の円周方向に対して非垂直部511を有する。
図4の例では、隙間51全体が非垂直部511となっている。このようにすると、シール部材50よりも定着ベルト21の中央側への潤滑剤61の漏れ出しをせき止めることができる。
隙間51は、垂直部511として、定着ベルト21の軸方向に対して、傾斜角度θが30度以上の傾斜を持つことが望ましく、傾斜が90度に近くなるにつれて潤滑剤611の漏れ出しの抑制効果向上が期待できる。
【0046】
一方、
図5の比較例は、シール部材50Pの隙間51Pを、定着ベルト21の円周方向に対して垂直に設けた例であり、潤滑剤611の漏れ出しを模式的に示している。
図5に示すように、定着ベルト21の端面から漏れ出した潤滑剤611が隙間51Pを通り、定着ベルト21の用紙通過領域まで漏れ出してしまう。
【0047】
上述したように、本実施形態の定着装置は、キャップ部材40に、定着ベルト21の外周面に内周面が接触する筒形状のシール部材を設け、シール部材50は筒形状の側面の一部に熱膨張時にも過不足なく押圧するための隙間51を備え、隙間51は、非垂直部511を有する。
隙間51に非垂直部511を持つことにより、潤滑剤611が定着ベルト21の軸方向中央側に漏れ出してくるのをせき止めることが可能となる。
このように、本実施形態によれば、簡易な構成で潤滑剤が定着ベルトの画像接触領域(用紙通過領域)を汚染することを抑制できる。
【0048】
次に、隙間の変形例を説明する。
図6は、本実施形態の隙間の他の例を説明する模式図である。
図7は、本実施形態の隙間のさらに他の例を説明する模式図である。
図6、7は、
図4と同様に表した模式図である。
図6、7に示す隙間51A、51Bは、
図4の隙間51の改良パターンであり、隙間として、非垂直部511Aを有するコの字を組み合わせるようなパターン、または、定着ベルト21の軸方向に対して、平行な部分と垂直とする非垂直部511Bとを組み合わせるパターンとする。このようにすると、より高い潤滑剤611の漏れ出し効果を期待できる。
【0049】
上述した実施形態において、シール部材50、50A、50Bは、多孔質材料であることが望ましい。多孔質材料であることにより、隙間51、51A、51Bのパターンで潤滑剤611をせき止める効果に加えて潤滑剤611をシール部材50、50A、50Bに吸収させ、さらに潤滑剤611の漏れ出しを抑制する効果を期待できる。
【0050】
また、シール部材50、50A、50Bは定着ベルト21の軸方向に対して最大通紙幅の外側(用紙通過領域より端部に近い位置)の両端部に設けることが望まれる。このようにすると、潤滑剤が用紙通過領域まで漏れ出すことを防ぐことができる。
【0051】
その他の実施形態.
シール部材の変形例について説明する。
図3では、シール部材50は、上面と底面とが同様の大きさとなる円筒状の例を説明したが、上面と底面との大きさまたは形状が異なる筒形状であってもよい。例えば、シール部材は、筒形状の上面と底面との間に段差を有する形状であってもよい。
図8は、シール部材の他の例を説明する図である。
図8の説明では、キャップ部材40、40Cの対向面45、45Cと対向する端面を上面、反対側となる、定着ベルト21の用紙通過領域に近い端面を底面とし、円筒形であることを前提として説明する。
【0052】
図8において、(A)は、上面側の内周が大きい一例であり、(B)は、底面側の内周が大きい一例である。
図8(A)のシール部材50Cは、内周面に段差を有し、上面53Cの内周の長さ(上上面の直径)が、底面55Cに内周の長さ(底面の直径)より大きい。
図8(B)のシール部材50Dは、内周面に段差を有し、上面53Dの内周の長さ(上上面の直径)が、底面55Dの内周の長さ(底面の直径)より小さい。
【0053】
また、
図3では、シール部材50の内周面の全部が、定着ベルト21の外周面と接触しているが、
図8では、シール部材50C、50Dの内周面の一部が定着ベルト21の外周面と接触することになる。
【0054】
図8(A)、(B)に示すように、シール部材は、筒形状の内周の長さが、上面または底面のいずれかの内周の長さより小さい段差部を内周面に有する。
また、
図8に示すものに限られず、シール部材の内周面に二つの段差を有し、中央部の内周の長さが、シール部材の両端部(上面および底面)の内周の長さより小さいものであってもよい。
【0055】
このようにすることで、キャップ部材40Cのようなキャップ部材の形状、または、定着ベルト21Dのような定着ベルトの端部の形状に、シール部材を対応させることが容易になる。
【0056】
なお、上述の実施形態では、シール部材50、50A~50Dは、円筒状として説明したが、これに限られるものではない。シール部材は、中空であり、内周面が、定着ベルト21と接触する部分の外周面に沿った筒形状であればよい。
【0057】
また、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。上述の実施形態は、2以上の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0058】
21、21D 定着ベルト
22 加圧ローラ
24 ニップ形成部材
25 ステー
40、40C キャップ部材
41 円板部
43 円筒部
45 対向面
50、50A~50D シール部材
61、611 潤滑剤
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】